説明

撮像部用スペーサ及び撮像装置

【課題】管理が容易で、部品点数の削減に有効な撮像部用スペーサ及び該光学系用スペーサを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像部用スペーサ(19)は、複数のポスト(16)に対して撮像部(13)を固定する際に、ポストの先端部(18)と撮像部(13)間に介在して、光軸方向の間隔を調整する。特に、複数のポストの先端部に亘って延在して形成されており、異なる位置関係で固定された場合に、前記間隔が異なるように、先端部(18)と撮像部(13)との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸に沿って延在する複数のポストに対して撮像部をネジで固定する際に、ポストの先端部と撮像部との間に介在することにより、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔を調整する撮像部用スペーサ、及び該撮像部用スペーサを備えた撮像装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像レンズによって結像された被写体像を、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの撮像素子が基板上に搭載されてなる撮像部で撮像する撮像装置が広く知られている。この種の撮像装置では、撮像素子上に被写体像が結像するように、撮像レンズと撮像部の光軸方向(又は結像方向)における間隔を調整する必要がある。この間隔は撮像装置の設計レベルにおいて大まかには規定できるものの、実際に製造される製品には個体差によるバラツキがあり、微調整を行う必要がある。
【0003】
このような光軸方向の間隔調整に関して、例えば特許文献1には、撮像部をフロントケースと一体的に形成された複数のポストにネジ止めする際に、ポストの先端部と基板との間に間隔調整用のスペーサ部材を設けた撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−9982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において光軸方向の調整を精度よく行うためには、上述したように実際に製造された撮像装置には個体差によるバラツキがあるため、調整量に応じて異なる厚みを有するスペーサ部材を多種類用意する必要がある。そのため、これらのスペーサ部材の製造コストが増大したり、その管理が非常に煩わしいものとなるという問題点がある。尚、調整に用いるスペーサ部材の種類を少なくするために、厚みの薄いスペーサ部材を重ねて対処することも考えられるが、当該方法ではスペーサ部材を複数枚重ねる必要があり、撮像装置の組み込み難易度が増大してしまうという問題点が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、管理が容易で、部品点数の削減に有効な撮像部用スペーサ及び該撮像部用スペーサを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像部用スペーサ部材は上記課題を解決するために、光軸に沿って延在する複数のポストに対して被写体像を撮像するための撮像部をネジで固定する際に、前記ポストの先端部と前記撮像部との間に介在することにより、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔を調整する撮像部用スペーサであって、前記複数のポストの先端部を亘って延在するように形成されており、前記ポストに対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔が異なるように、前記先端部と前記撮像部との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る撮像部用スペーサ部材によれば、ポストに対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、先端部と撮像部との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせたので、多種類のスペーサ部材を用いることなく、単一のスペーサ部材でありながら先端部と撮像部との光軸方向の間隔を容易に調整することができる。即ち、特許文献1のような多種類のスペーサ部材を管理する煩わしさがないので、部品点数の削減に貢献でき、撮像装置などの光学系にも組み込み難易度を増大させることなく、容易に用いることができる。
【0009】
好ましくは、前記ネジ止めされる部分の厚みは、延在方向に沿って段階的に異なるように形成されているとよい。この場合、従来、厚みの異なる多種類のスペーサ部材で行われていた、間隔の段階的な調整を、単一のスペーサ部材によって代替することができる。
【0010】
より好ましくは、前記ポストに対向する側に、前記ポストの先端部を嵌め込み可能な凹部が形成されているとよい。この場合、ポストの先端部をスペーサ部材に設けられた凹部に嵌め込むことによって光軸の交差方向における位置を安定させることができるので、組み立て時にスペーサ部材が欠落するリスクが少なくなり、より取り扱い易いスペーサ部材を実現することができる。
【0011】
また、撮像部用スペーサは環状に形成されており、周方向において前記ネジ止めされる部分の厚みが異なるように形成されていてもよい。撮像部用スペーサは環状に形成されているため、物理的強度を効果的に高める事ができる。また、環形状の内側は開口しているので、ポスト側から入射した光線を撮像部側に到達させる必要がある場合であっても、光線の進路を阻害することがない。
【0012】
本発明の撮像装置は上記課題を解決するために、撮像レンズと、該撮像レンズを保持するレンズ保持部と、前記撮像レンズを介して得られる被写体像を撮像する撮像部と、前記レンズ保持部と一体的に形成され、前記撮像レンズの結像方向に沿って延在する複数のポストと、前記複数のポストの先端部に亘って前記撮像部と共にネジで固定されることによって、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔を調整する撮像部用スペーサとを備え、前記撮像部用スペーサは、前記ポストに対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、前記先端部と前記撮像部との結像方向の間隔が異なるように、前記先端部と前記撮像部との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る撮像装置は、上記撮像部用スペーサ部材(各種態様を含む)を備えることにより、容易に組み上げ可能な撮像装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポストに対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、先端部と撮像部との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせたので、多種類のスペーサ部材を用いることなく、単一のスペーサ部材でありながら先端部と撮像部との光軸方向の間隔を容易に調整することができる。即ち、特許文献1のような多種類のスペーサ部材を管理する煩わしさがないので、部品点数の削減に貢献でき、撮像装置などの光学系にも組み込み難易度を増大させることなく、容易に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る撮像装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A´線断面図である。
【図3】図1からフロントケースを抽出して示す斜視図である。
【図4】図1に示す撮像装置から撮像部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】スペーサ部材を撮像側から見た斜視図である。
【図6】スペーサ部材を被写体側から見た斜視図である。
【図7】スペーサ部材の被写体側に形成された凹部のうち隣り合うものを拡大して示す断面図である。
【図8】従来から用いられているスペーサ部材の斜視図である。
【図9】図8に示す従来のスペーサ部材のフロントケースへの取り付け例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る撮像装置10の全体構成を示す斜視図であり、図2は図1のA−A´線断面図である。撮像装置10は車載カメラであり、撮像レンズ11と、該撮像レンズ11を保持するレンズ保持部であるフロントケース12と、前記撮像レンズ11を介して得られる被写体像を撮像する撮像部13とを含んでなる。
【0017】
撮像レンズ11は、被写体像を撮像部13に結像させるための光学レンズであり、フロントケース12によって保持固定されている。撮像装置10の外装は、フロントケース12が像面側から図不示のリアケースに組み合わされなり、リアケース側にて車両本体に固定されている。尚、撮像レンズ11は複数の撮像レンズからなる撮像レンズ群であってもよいし、単体の撮像レンズであってもよいし、用途に応じてズームレンズとしてもよい。フロントケース12は撮像レンズ11を保持する関係上強度が必要であり、例えばガラスフィラーが入ったポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチックなどで構成されている。
【0018】
撮像部13は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconducter)などの固体撮像素子からなる撮像素子14が、プリント回路が形成された基板15上に実装搭載されてなる。
【0019】
ここで、図3は図1からフロントケース12を抽出して示す斜視図である。フロントケース12には、該フロントケース12と一体的に形成され、撮像レンズ11の結像方向に沿って延在する複数のポスト16が設けられている。撮像部13は、図1及び図2に示すように、複数のポスト16に対してネジ17で固定されており、撮像部13の光軸方向における位置が固定されている。
【0020】
図4は図1に示す撮像装置から撮像部13を取り外した状態を示す斜視図である。図2及び図4に示すように、このようにネジ17によって固定されたポスト16の先端部18と撮像部との間には、スペーサ部材19が介在している。スペーサ部材19は、撮像部13を光軸に沿って延在する複数のポスト16に対してネジ17で固定する際に、先端部18と撮像部13との間に介在することにより、先端部18と撮像部13との光軸方向の間隔を調整する、本発明の撮像部用スペーサの一例である。
【0021】
ここで、図5及び図6を参照して、スペーサ部材19の構成を詳細に説明する。図5はスペーサ部材19を撮像側から見た斜視図であり、図6はスペーサ部材19を被写体側から見た斜視図である。
【0022】
図5に示すように、スペーサ部材19の撮像側には、撮像部13のうち基板15が当接する当接面22が設けられており、ネジ17が貫通するための貫通孔23が複数個形成されている。また、撮像側には当接面22に比べて凹状に形成されたスペース24が設けられている。スペース24は、ネジ止めされた際に基板15上に搭載された電子部品が当接面22に接触しないように設けられており、予め基板15上の部品の配置に対応して形成されている。
【0023】
図6に示すように、スペーサ部材19の被写体側(ポスト16に対向する側)には、先端部18を嵌め込み可能な凹部25が形成されている。凹部25はポスト16が嵌め込まれた際に、先端部18が底部26に接触することにより、先端部18と撮像部13との光軸方向の間隔が凹部25におけるスペーサ部材19の厚みになるように構成されている。また、凹部25は底部26を部分的に取り囲むように形成された壁部27を有しており、凹部25に嵌め込まれたポスト16が光軸の交差方向に移動しないように構成されている。但し、凹部25の大きさはポスト16がスムーズに嵌め込み可能なように所定のクリアランスを持って形成されている。
【0024】
尚、壁部27は底部26を完全に取り囲むように形成されていてもよい。この場合、凹部25の物理的強度を強くすることができる一方で、スペーサ部材19のサイズが拡大するため、それらの兼ね合いを考慮して壁部27の形状を規定するとよい。また、壁部27は凹部25aのようにスペーサ部材の内径側のみに開口するように形成されていてもよいし、凹部25b及び25cのように内径側及び外径側が双方とも開口するように形成されていてもよい。
【0025】
本実施例では特に、スペーサ部材19は、複数のポスト16の先端部18に亘って延在して、環状に形成されている。これにより、被写体側から入射した光線を阻害することなく、撮像部13側に到達させることができるように構成されている。
【0026】
スペーサ部材19の被写体側に設けられた凹部25は、スペーサ部材19がポスト16に対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、先端部18と撮像部13との光軸方向の間隔が異なるように形成されている。図7は、スペーサ部材19の被写体側に形成された凹部25のうち隣り合うものを拡大して示す断面図である。
【0027】
図7に示すように、隣り合う凹部25は延在方向(図7において右側)に沿って段階的に深くなるように形成されている。スペーサ部材19の被写体側には、このように3個ずつ隣り合うように形成された凹部25が、3本のポスト16に対応するように合計3組形成されている。そのため、ポスト16に対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、先端部18と撮像部13との光軸方向の間隔を変化させることができるように構成されている。
【0028】
従来、このような光軸方向の間隔を微調整するためには、例えば図8に示すようなスペーサ部材19´を、図9に示すようにフロントケース12の各ポスト16の先端部18に個別に設置して行う必要があった。ここで、図8は、従来から用いられているスペーサ部材19´の斜視図であり、図9は図8に示す従来のスペーサ部材19´のフロントケース12への取り付け例を示す斜視図である。
【0029】
この従来例では、実際に製造された撮像装置10には個体差によるバラツキがあるため、このようなバラツキに応じて様々な厚みを有するスペーサ部材19´を多種類用意する必要があり、製造コストが増大したり、その管理が非常に煩わしいものとなるという問題があった。また、微調整に用いるスペーサ部材19´の種類を少なくする手法として、厚みの薄いスペーサ部材19´を重ねて対処することも考えられるが、当該方法ではスペーサ部材19´を複数枚重ねる必要があり、撮像装置の組み込み難易度が増大してしまうという問題があった。
【0030】
一方、上記説明したように本発明のスペーサ部材19によれば、ポスト16に対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、先端部18と撮像部13との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせたので、多種類のスペーサ部材を用意する必要がなく、単一のスペーサ部材でありながら先端部18と撮像部13との光軸方向の間隔を容易に調整することができる。即ち、図8及び図9に示す従来例のような多種類のスペーサ部材19´を管理する煩わしさがないので、部品点数の削減に貢献でき、撮像装置10などの光学系にも組み込み難易度を増大させることなく、容易に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、光軸に沿って延在する複数のポストに対して撮像部をネジで固定する際に、ポストの先端部と撮像部との間に介在することにより、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔を調整する撮像部用スペーサ、及び該撮像部用スペーサを備えた撮像装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 撮像装置
11 撮像レンズ
12 フロントケース
13 撮像部
14 撮像素子
15 基板
16 ポスト
17 ネジ
18 先端部
19 スペーサ部材
20 スプリング
21 ワッシャ
22 当接面
23 貫通穴
24 スペース
25 凹部
26 底部
27 壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って延在する複数のポストに対して被写体像を撮像するための撮像部をネジで固定する際に、前記ポストの先端部と前記撮像部との間に介在することにより、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔を調整する撮像部用スペーサであって、
前記複数のポストの先端部を亘って延在するように形成されており、前記ポストに対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔が異なるように、前記先端部と前記撮像部との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせたことを特徴とする撮像部用スペーサ。
【請求項2】
前記ネジ止めされる部分の厚みは、延在方向に沿って段階的に異なるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像部用スペーサ。
【請求項3】
前記ポストに対向する側に、前記ポストの先端部を嵌め込み可能な凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像部用スペーサ。
【請求項4】
前記撮像部用スペーサは環状に形成されており、周方向において前記ネジ止めされる部分の厚みが異なるように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像部用スペーサ。
【請求項5】
撮像レンズと、
該撮像レンズを保持するレンズ保持部と、
前記撮像レンズを介して得られる被写体像を撮像する撮像部と、
前記レンズ保持部と一体的に形成され、前記撮像レンズの結像方向に沿って延在する複数のポストと、
前記複数のポストの先端部に亘って前記撮像部と共にネジで固定されることによって、前記先端部と前記撮像部との光軸方向の間隔を調整する撮像部用スペーサと
を備え、
前記撮像部用スペーサは、前記ポストに対して複数の異なる位置関係で固定された場合に、前記先端部と前記撮像部との結像方向の間隔が異なるように、前記先端部と前記撮像部との間でネジ止めされる部分の厚みを異ならせたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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