説明

撮影補助具

【課題】ディフューザ部がアーチ状に構成されることにより光を均質に拡散するとともに、バックスクリーン部が大きく湾曲して背景色に濃淡が生じるのを防止できるようにする。そして、畳み込み可能となるようにして組み立てが容易であり、コンパクトで可搬性に優れた撮影補助具を提供する。
【解決手段】中心線上で相対向する端部が凹湾曲底部となり、前記中心線に直交して相対向する端部が頂部となるように曲成したループ状可撓性枠材の前記凹湾曲底部にU字状可撓性枠材の両端を固定し、前記ループ状可撓性枠材に光拡散シートを張設してアーチ状のディフューズ部を構成する一方、前記U字状可撓性枠材および前記アーチ状部奥行き側の開口部に連続してマットシートを張設してバックスクリーン部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影対象とした被写体の撮影結果に陰影やハレーションが生じないようにする撮影補助具に関するもので、組み立ておよび収納を簡便に行うことができ、しかも、被写体の撮影において重要となるバックスクリーンのスロープが理想的な状態で形成されるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
撮影した被写体に陰影やハレーションがあると写真としての品質が低下し、特に撮影結果が商品のイメージを左右するような商業写真では、陰影やハレーションが生じないようにすることが重要である。特に照明器具を用いて撮影する場合は陰影やハレーションが生じ易いため、複数の照明器具、リフレクターを用いて光を拡散するようにした撮影手段が採用されている。しかしながら、かかる撮影手段は大掛かりな撮影システムとなり、多額の機材費を必要とするものであった。
【0003】
ところで、比較的小型の被写体を撮影対象する場合は、このような大掛かりな撮影システムを必要としないため、簡易に組み立てられて陰影やハレーションが生じないようにすることを目的とした簡易撮影台なるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に開示された技術は、上面および左、右側面にそれぞれ位置すべき3枚の矩形デフューザー板と、背面に位置すべき矩形背面板とを有し、これら4枚をそれぞれ当該位置に配置して前面および下面を開放する箱形に組立て分解自在とし、上記デフューザー板は、表裏両面に多数の微細凹凸をほぼ均等分布で有する半透明デフューザーシートを張設してなり、上記背面板の上辺部に一端部を着脱自在に止着して該背面板内面から下面を覆って延長する長さのスクリーンであって、互いに異なる色を施した柔軟な複数枚のバックスクリーンを備えるとするものである。
【特許文献1】実用新案登録第3074934号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構成による場合は、背面板と左、右側面デフューザー板を互いに平行に開いてテーブル上に配置し、各側辺をフックテープおよびループテープにより係止して前面と下面が開放した箱形のデフューザーボックスに組み立てられる。そして、このデフューザーボックス内にバックスクリーンを背面板のフックテープに係止して配設するようにしている。
【0006】
以上のように構成されていることから理解できるように、背面板と左、右側面デフューザーは各々独立の構成要素となっており、これを組み立てるようにしていることから撮影を行う毎に組立作業が必要となる。また、撮影を終了した場合は、組立状態から分解作業を行ってケースに収容するという煩雑な作業を要求されるものであった。
【0007】
また、デフューザーが箱形となるため、矩形デフューザー板の各側辺部分と中央部とで光の透過状態が相違し、均質に光を拡散させることができない。また、バックスクリーンは床面から大きく湾曲するスロープとなるようにするのが理想であるが、上記従来の構成においてはバックスクリーンが背面板の上端部から垂下する状態となり、スロープは床面に近い一部に形成されるのみである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記従来の問題に鑑みなされたもので、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、中心線上で相対向する端部が凹湾曲底部となり、前記中心線に直交して相対向する端部が頂部となるように曲成したループ状可撓性枠材の前記凹湾曲底部にU字状可撓性枠材の両端を固定し、前記ループ状可撓性枠材に光拡散シートを張設してアーチ状のディフューズ部を構成する一方、前記U字状可撓性枠材および前記アーチ状部の奥行き側の開口部に連続してマットシートを張設してバックスクリーン部を構成した撮影補助具となるようにする。
【0009】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の撮影補助具において、前記ループ状可撓性枠材が楕円形状であるようにする。
【0010】
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の撮影補助具において、前記ディフューズ部の前端開口部の端部と前記バックスクリーン部との間にウェブを張設する。
【0011】
請求項4記載の発明では、上記請求項1記載の撮影補助具において、前記バックスクリーン部に弾性ループを備えるようにする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、ディフューズ部がアーチ状に構成されるため、光を均質に拡散させることができるとともに、バックスクリーン部が大きく湾曲するスロープとなり背景色に濃淡が生ずるのを防ぐことができる。また、枠材が可撓性であることから捻転して畳み込むことができるとともに、組み立てがきわめて容易であり、コンパクトな可搬性に優れた撮影補助具とすることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、ループ状可撓性枠材を楕円形状のものを採用することによりディフューズ部の横幅および高さを大きくすることができ、サイズの異なる撮影補助具を製造することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、ディフューズ部とバックスクリーン部との間にウェブを張設したので、側部から進入する光を遮断することができ、被写体の照明状態を安定に保つことができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、バックスクリーン部に弾性ループを備えたので、この弾性ループにより撮影補助具の畳まれた状態を保持することができ、キャリングケースへの収容が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を図にもとづいて詳細に説明する。図1は本発明の撮影補助具1の構成要素であるループ状可撓性枠材2およびU字状可撓性枠材3の曲成状態を示すもので、両枠材2、3は合成樹脂などの素材により細長いリム状に形成されている。ループ状可撓性枠材2の曲成前の二次元形状は円または楕円であり、この円または楕円のループ状可撓性枠材2の中心線上で相対向する端部が凹湾曲底部2aとなり、前記中心線に直交して相対向する端部が頂部2bとなる三次元形状に曲成する。
【0017】
そして、U字状可撓性枠材3の端部3aはループ状可撓性枠材2の凹湾曲底部2aに接着などの適宜手段により固定され、U字状の二次元形状が保たれる。このように曲成されたループ状可撓性枠材2には図2に示すように、例えば、ポリエステルタフタ210Dのような光拡散効果のある光拡散シート4をループ状可撓性枠材2の外形に沿って張設する。このようにして張設された光拡散シート4はアーチ状となり、ディフューズ部Aが構成されることになる。
【0018】
一方、U字状可撓性枠材3には、例えば、ポリエステル(ニット生地)のようなマットシート5を、U字状可撓性枠材および前記ループ状可撓性枠材2により形成されたアーチ状部の奥行き側の開口部に連続して張設することによりバックスクリーン部Bを構成する。このように構成したことから、図3に示すようにバックスクリーン部Bは後部が大きく湾曲するスロープとなり、また、ループ状可撓性枠材2の弾性作用によりマットシート5が引張され弛みのない状態が形成される。
【0019】
なお、符号6は光拡散シート4と同様の素材からなる ウエブであり、前記ディフューズ部Aの前端開口部の端部と前記バックスクリーン部Bとの間に張設し、側部から進入する光を遮断するようにしてある。また、ディフューズ部Aの前端には結束用の弾性ループ7が接続されている。
【0020】
本発明の撮影補助具1は以上のように構成されており、この撮影補助具1を畳み込む場合の作業手順を以下に説明する。ループ状可撓性枠材2の弾性作用により成立状態となり、使用が可能となっている図4に示す状態において、ディフューズ部Aの前端部A1とバックスクリーン部Bの前端部B1とを重ね合わせ(A1+B1)、図5に示すように保持する。そして、さらに前記重ね合わせ部分(A1+B1)とディフューズ部Aの後端部A2とを重ね合わせ、図6に示すように右手で重ね合わせ部分(A2+(A1+B1))を保持する。
【0021】
つぎに、前記重ね合わせ部分(A2+(A1+B1))を保持したまま、左手でC部を図7に示すように畳むように曲げ込む。そして、図8に示すように左手でC部をさらに押し込み、右手でD部を被せるように上から重ね合わせると、A1、A2、B1、C、Dの各部分が重なる3重の輪となり、畳み込みが完了した状態となる。そこで、ディフューズ部Aの前端の弾性ループ7を引張して図10に示すように撮影補助具1の本体に掛け止めして畳まれた状態を保持し、キャリングケースEへ収容する。
【0022】
以上は成立状態の撮影補助具1の収容作業であるが、キャリングケースEに収容されている撮影補助具1を使用できる状態にするには、取り出した撮影補助具1の弾性ループ7の掛け止めを外すことにより、ループ状可撓性枠材2の弾性力が開放されるため、U字状可撓性枠材3とともに一瞬に展開して図2に示す成立状態に至り、直ちに撮影の用に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の構成要素であるループ状可撓性枠材およびU字状可撓性枠材の曲成状態を示す図である。
【図2】本発明の撮影補助具の完成状態を示す図である。
【図3】本発明の撮影補助具の断面図である。
【図4】本発明の撮影補助具を畳み込む手順の第1工程を示す図である。
【図5】本発明の撮影補助具を畳み込む手順の第2工程を示す図である。
【図6】本発明の撮影補助具を畳み込む手順の第3工程を示す図である。
【図7】本発明の撮影補助具を畳み込む手順の第4工程を示す図である。
【図8】本発明の撮影補助具を畳み込む手順の第5工程を示す図である。
【図9】本発明の撮影補助具を畳み込む手順の第6工程を示す図である。
【図10】本発明の撮影補助具を畳み込む手順の第7工程を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・・・・撮影補助具
2・・・・・・ループ状可撓性枠材
3・・・・・・U字状可撓性枠材
4・・・・・・光拡散シート
5・・・・・・マットシート
6・・・・・・ウエブ
7・・・・・・弾性ループ
A・・・・・・ディフューズ部
B・・・・・・バックスクリーン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心線上で相対向する端部が凹湾曲底部となり、前記中心線に直交して相対向する端部が頂部となるように曲成したループ状可撓性枠材の前記凹湾曲底部にU字状可撓性枠材の両端を固定し、
前記ループ状可撓性枠材に光拡散シートを張設してアーチ状のディフューズ部を構成する一方、前記U字状可撓性枠材および前記アーチ状部の奥行き側の開口部に連続してマットシートを張設してバックスクリーン部を構成したことを特徴とする撮影補助具。
【請求項2】
前記ループ状可撓性枠材が楕円形状であることを特徴とする請求項1記載の撮影補助具。
【請求項3】
前記ディフューズ部の前端開口部の端部と前記バックスクリーン部との間にウエブを張設したことを特徴とする請求項1記載の撮影補助具。
【請求項4】
前記バックスクリーン部に弾性ループを備えたことを特徴とする請求項1記載の撮影補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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