説明

撹拌子および撹拌装置

【課題】高粘度の試料であっても良好に撹拌することができる撹拌子および撹拌装置を提供する。
【解決手段】容器60に収容された液状の試料bを回転により撹拌する撹拌子1であって、水平回転可能な棒状体10と、着磁方向が棒状体10の回転軸と平行するように棒状体10に配置されている撹拌用磁石5a、5bとを備える撹拌子1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収容された液状の試料を撹拌する撹拌子および撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内に収容された液状の試料を撹拌するものとして、回転する磁力を受けて回転することにより試料を撹拌する撹拌子が一般的に知られている(例えば、特許文献1の従来技術参照)。
【0003】
このような撹拌子106は、図3に示すように、長手方向の両端部に異なる磁性を有する棒状の磁石105をプラスチックで被覆したものであり、液状の試料103が入った容器102の底面に沈められ、容器102の下方に設置されたマグネチックスターラー108の磁石体107の回転により回転し、試料103を撹拌するものである。
【特許文献1】特開平3−232524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の撹拌子106は、磁石105の着磁方向が長手方向と一致しており、この着磁方向は、マグネチックスターラー108の磁石体107の着磁方向と直交するので、磁石間に作用する引力が弱くなり、マグネチックスターラー108の回転力を撹拌子106に十分に伝達できないという問題があった。特に試料103が高粘度の場合には、この問題が顕著となっていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、高粘度の試料であっても良好に撹拌することができる撹拌子および撹拌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、容器に収容された液状の試料を回転により撹拌する撹拌子であって、水平回転可能な撹拌用回転体と、着磁方向が前記撹拌用回転体の回転軸と平行するように前記撹拌用回転体に配置されている撹拌用磁石とを備える撹拌子により達成される。
【0007】
また、前記撹拌用回転体は、棒状体であり、前記棒状体の長手方向の両端部に一対の前記撹拌用磁石がそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0008】
また、上記各撹拌子は、前記撹拌用回転体と一体的に回転する撹拌手段を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、前記撹拌手段は、回転時に試料に上下方向の撹拌流を生じさせるように設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記撹拌手段は、前記撹拌用回転体の回転軸線に沿って延びる支持体と、該支持体に取り付けられた撹拌羽根とを備えており、前記撹拌羽根は、前記支持体の軸線方向に対して傾斜していることが好ましい。
【0011】
また、前記支持体は、先端部に把持部を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記撹拌羽根は、前記支持体の軸線方向に沿って多段に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記撹拌羽根は、前記支持体に対して着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
【0014】
また、上記各撹拌子において、前記撹拌用回転体の回転中心には、容器と接触する側に突出する支持突部が設けられていることが好ましい。
【0015】
また、前記撹拌用回転体の端部には、容器と接触する側に前記支持突部より高さが低い複数の安定化突起が設けられていることが好ましい。
【0016】
また、前記撹拌用磁石は、前記撹拌用回転体の回転軸を中心とする円周に沿って等間隔に複数配置されており、かつ、同心円上にあるものの同極が全て同方向を向くように配置されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の前記目的は、上記のいずれかの撹拌子と、該撹拌子が容器に収容された状態で回転するように回転磁場を発生させる回転磁場発生手段とを備える撹拌装置であって、前記回転磁場発生手段は、水平回転可能な駆動用回転体と、前記駆動用回転体を回転駆動する回転駆動手段と、前記撹拌用磁石に対応して前記駆動用回転体に配置されている駆動用磁石とを備え、前記駆動用磁石は、着磁方向が前記駆動用回転体の回転軸と平行するように配置されており、かつ、対応する前記撹拌用磁石と異なる磁極同士が対向可能であるように配置されている撹拌装置により達成される。
【0018】
また、前記駆動用回転体は、回転軸に沿って昇降可能に支持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の撹拌子および撹拌装置によれば、高粘度の試料であっても良好に撹拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る撹拌子1およびマグネチックスターラー40を備える撹拌装置の縦断面図であり、図2は、撹拌子1の平面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、この撹拌子1は、棒状体10と、棒状体10に備えられた一対の撹拌用磁石5a、5bと、棒状体10の中心部に設けられた撹拌手段2とを備えている。また、この撹拌子1は、液状の試料bが収容されたビーカー等の容器60内に配置され、容器60は、マグネチックスターラー40の上面に載置される。
【0022】
棒状体10及び撹拌手段2は、例えば、フッ素樹脂やポリプロピレン等の、容器60に対する摩擦係数が低く、かつ、優れた耐薬品性、耐摩耗性を有するプラスチックから形成されている。
【0023】
棒状体10は、平面視において長方形部分の両端部に円形部分を有した棒状の部材であり、両端部の円形部分により一対の撹拌用磁石5a、5bがそれぞれ収容される磁石収容部15a、15bが形成されている。棒状体10の回転中心には、容器60と接触する側に突出する円錐状の支持突部21が設けられている。また、磁石収容部15a、15bには、容器60と接触する側に支持突部21より高さが低い一対の安定化突起23a、23bがそれぞれ円弧状に設けられている。支持突部21及び安定化突起23a、23bは、棒状体10と同様の材質から形成されている。
【0024】
各撹拌用磁石5a、5bは、着磁方向が棒状体10の長手方向と直交するように配置されている。すなわち、図1に示すように、棒状体10の支持突部21と容器60の底面とを接触させて撹拌子1を配置した状態では、一方の磁極(例えばN極)が棒状体10の上面側に配置され、他方の磁極(例えばS極)が棒状体10の下面側に配置されている。また、一対の撹拌用磁石5a、5bは、着磁方向が互いに逆方向となるように配置されている。すなわち、撹拌子1を上記と同様に配置した状態において、一方の撹拌用磁石5a(図1における左側の撹拌用磁石)のS極が下面側に配置されている場合には、他方の撹拌用磁石5b(図1における右側の撹拌用磁石)の下面側には、N極が配置されている。
【0025】
撹拌手段2は、棒状体10の回転軸線に沿って延びる支持体11と、支持体11に取り付けられた一対の撹拌羽根3とを備えており、撹拌羽根3は、回転時に試料bに上下方向の撹拌流を生じさせるように、支持体11の軸線方向に対して所定の角度で傾斜している。また、支持体11は、先端部に把持部35を備えており、指で把持可能なように構成されている。
【0026】
また、マグネチックスターラー40は、上面が水平な本体41と、本体41の内部に配置された磁場発生部42とを備えている。磁場発生部42は、水平方向に延びる板状の駆動用回転体43を備えており、駆動用回転体43の中心部には鉛直方向に延びる軸部44が設けられている。駆動用回転体43は、この軸部44の下端部が本体41の底面に設置されたモータ45に連結されることにより、水平面上を回転可能なように支持されている。また、駆動用回転体43の両端部上面には、一対の駆動用磁石46a、46bがそれぞれ取り付けられており、これらの駆動用磁石46a、46bは、着磁方向が互いに逆方向となるように配置されている。本実施形態では、図1に示すように、駆動用回転体43の左側端部の駆動用磁石46aがN極を上方に向ける一方、右側端部の駆動用磁石46bがS極を上方に向けている。
【0027】
次に、以上のように構成された撹拌子1を用いて試料bを撹拌する方法を説明する。
【0028】
まず、マグネチックスターラー40の上面に、試料bが収容された容器60を載置して、容器60の中に撹拌子1を沈める。この際、棒状体10の支持突部21が容器60の底面に接触すると共に、支持体11が容器60内で起立するように撹拌子1を沈める。
【0029】
次に、マグネチックスターラー40のスイッチをオンにして、モータ45を駆動させる。モータ45の回転により、軸部44を中心として駆動用回転体43が駆動用磁石46a、46bと共に回転し、撹拌子1の下方に回転磁場が発生する。この回転磁場に撹拌用磁石5a、5bが吸引されることにより、容器60内で棒状体10が平面視において左回りに(矢示P方向)回転する。こうして、棒状体10と一体的に撹拌手段2が回転し、撹拌羽根3が容器60内の試料bを撹拌する。また、撹拌羽根3が矢示P方向に回転することにより、試料bに上昇流(矢示T参照)が生じる。
【0030】
この時、撹拌用磁石5a、5bの着磁方向が棒状体10の長手方向と直行しており、この着磁方向がマグネチックスターラー40の駆動用磁石46a、46bの着磁方向と平行になっているので、磁束密度の高い磁石の端部同士が対向することになる。これにより、磁石間に作用する引力が大きくなり、マグネチックスターラー40の回転力を棒状体10に良好に伝達することができるので、撹拌子1がスムーズに回転し、高粘度の試料bであっても良好に撹拌することができる。
【0031】
また、撹拌羽根3が棒状体10と一体的に回転するので、容器60内の底面付近の試料bだけでなく、それより上方にある液面付近の試料bにも大きな回転力を付与することができ、試料bを良好に撹拌することができる。
【0032】
また、撹拌羽根3が支持体11の軸線方向に対して傾斜しており、マグネチックスターラー40の駆動用磁石46a、46bの回転に基づいて回転することにより、試料bに上昇流を生じさせるので、試料bを容器60の周方向だけでなく上下方向にも良好に撹拌することができる。
【0033】
また、撹拌子1の回転時に支持突部21が回転中心となるので、回転時に移動しない部分で棒状体10を支持することができる。この結果、容器60の底面に作用する摩擦を低減させることができ、容器60の摩耗を防止することができる。
【0034】
また、磁石収容部15a、15bには、容器60と接触する側に一対の安定化突起23a、23bが設けられているので、撹拌子1が撹拌羽根3の重みにより側方に傾いた場合には、安定化突起23a、23bが容器60の底面に接触して姿勢を安定に保つことができ、撹拌子1が転倒することを防止できる。また、撹拌子1が回転時に側方へ傾くと、安定化突起23a、23bの先端部が容器60の底面に接触するので、棒状体10と容器60底面との接触面積を低減でき、容器60の摩耗を防止することができる。
【0035】
また、撹拌終了後は、支持体11の把持部35を指で摘むことにより、撹拌子1を容器60から容易に取り出すことができる。この場合、把持部35の位置を試料bの液面高さより高い位置にすると、試料bに触れずに撹拌子1を取り出すことができ、手を汚すことがない。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0037】
例えば、本実施形態において、棒状体10は、平面視において長方形部分の両端部に円形部分を有した部材であったが、長手方向の両端部に撹拌用磁石5a、5bをそれぞれ備えることができるのであれば、形状は特に限定されず、楕円形やひし形など種々の形状にすることができる。
【0038】
また、本実施形態において、撹拌羽根3は一対であったが、試料bを良好に撹拌することができるのであれば、その数や配置方向は特に限定されず、複数の撹拌羽根3が支持体11の中心部から放射状に延びている構成であってもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、撹拌子1が左回り(矢示P方向)に回転した時に試料bに上昇流が生じる構成であったが、試料bに上下方向の撹拌流を生じさせることができれば、その構成は特に限定されない。例えば、撹拌羽根3の傾斜方向を変更することで、試料bに下降流を生じさせることができる。また、マグネチックスターラー40の駆動用磁石46a、46bの回転方向を逆方向(平面視において右回り)にすることによっても、下降流を生じさせることができる。このような構成によれば、試料bに下降流が生じる一方、棒状体10には揚力が作用するので、試料bを良好に撹拌することができると共に、棒状体10と容器60底面との接触圧力を低減することができ、容器60底面の摩耗を防止することができる。
【0040】
また、撹拌羽根3は、傾斜方向を適宜変更可能な構成にすることができる。このような構成によれば、マグネチックスターラー40の駆動用磁石46a、46bの回転方向に応じて、試料bに生じる撹拌流を、上昇流又は下降流のいずれにするか選択することができる。
【0041】
また、本実施形態において、支持突部21は、円錐状であったが、容器60底面の摩耗を防止することができるのであれば、その形状は特に限定されず、角錐状や球面状であってもよい。
【0042】
また、本実施形態において、安定化突起23a、23bは、円弧状に設けられていたが、撹拌子1の転倒を防止することができ、容器60の摩耗を防止することができるのであれば、その構成は特に限定されない。例えば、磁石収容部15a、15bの縁部に設けた複数の突状体から構成されていてもよい。
【0043】
また、本実施形態において、撹拌手段2は、棒状体10の回転軸線に沿って延びる支持体11と、支持体11に取り付けられた撹拌羽根3とを備えた構成であったが、試料bを良好に撹拌することができるのであれば、その構成は特に限定されない。例えば、棒状体10の回転軸線方向に延びるらせん状の羽根から構成されていてもよく、この場合、回転時に試料bに上下方向の撹拌流を生じさせることができるので好ましい。また、羽根の向きを変更可能な構成にしてもよく、この場合、マグネチックスターラー40の駆動用磁石46a、46bの回転方向に応じて、試料bに生じる撹拌流を、上昇流又は下降流のいずれにするか選択することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、撹拌羽根3が支持体11に対して傾斜していたが、試料bを良好に撹拌することができるのであれば、撹拌羽根3の傾斜は必ずしも必要ではない。また、傾斜した撹拌羽根3と傾斜していない撹拌羽根3とを組み合わせてもよい。
【0045】
また、撹拌羽根3の形状は、特に限定されず、プロペラ型、ストレート型、旋回型、平型、遠心力型、溶解型、タービン型、アンカー型、半月型、スクリュー型、錨型、こね器型、ファン型など種々の形状にすることができる。
【0046】
また、本実施形態において、撹拌羽根3は、支持体11に1段取り付けられている構成であったが、図4に示すように、支持体11の軸線方向に沿って多段に取り付けられている構成であってもよい。このような構成によれば、試料bにより大きな回転力を付与することができ、更に良好に撹拌することができる。
【0047】
また、撹拌羽根3は、中心部に備えた固定ねじ25等により、支持体11に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。このような構成によれば、粘性等の試料bの特性や、試料bの種類に応じて、撹拌羽根3を適宜交換することにより、低粘度から高粘度の試料bまで、種々の試料bに応じた良好な撹拌を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態においては、棒状の部材により撹拌用回転体が構成されていたが、この撹拌用回転体は、水平回転可能な構成であれば、その形状は特に限定されず、円形状や放射形状など種々の形状にすることができる。図5は、本発明の他の実施形態に係る撹拌子1の撹拌用回転体7の平面断面図である。この撹拌子1は、中心部から放射状に延びる複数の脚部8を有する撹拌用回転体7と、着磁方向が撹拌用回転体7の回転軸と平行するように脚部8の先端部に配置された複数の撹拌用磁石5a、5b、5cとを備えている。このような撹拌子1によれば、脚部8により撹拌子1の転倒が防止され、安定して回転するので、試料bを良好に撹拌することができる。
【0049】
また、撹拌用磁石5a、5b、・・・の数や配置位置は、撹拌子1が容器60に収容された状態で回転磁場の作用により回転するのであれば特に限定されない。例えば、図5の点線で示すように、撹拌用回転体7の回転軸を中心とする円周に沿って撹拌用磁石5a、5b、5cが等間隔に複数配置されている構成であってもよい。このような構成によれば、複数の撹拌用磁石5a、5b、5cにより回転磁場との引力がより強くなるので、撹拌用回転体7を確実に回転させることができ、高粘度の試料bであっても良好に撹拌することができる。また、等間隔に配置された撹拌用磁石5a、5b、5cが回転磁場にバランス良く吸引されるので、撹拌用回転体7をスムーズに回転させることができる。また、複数の撹拌用磁石5a、5b、・・・は、同心円上にあるものの同極が全て同方向を向くように配置されていることが好ましい。このような構成によれば、高粘度の試料bであっても、撹拌子1を連続的に回転させることができ、良好に撹拌することができる。すなわち、例えば図5に示す実施形態では、高粘度の試料bにより、撹拌子1の回転時の粘性抵抗が撹拌用磁石5aとそれに対向する駆動用磁石46aとの吸引力より大きくなり、撹拌用磁石5aと駆動用磁石46aとの結合が解かれることがあるが、隣接する撹拌用磁石5a、5bの同極がいずれも同方向を向いているので、駆動用磁石46aが撹拌用磁石5aの替わりに撹拌用磁石5bをすぐに吸引することができ、撹拌子1の回転を止めることなく、試料bを良好に撹拌することができる。同様に撹拌用磁石5b、5cと駆動用磁石46b、46cとの結合が解かれても、駆動用磁石46b、46cがそれぞれ撹拌用磁石5c、5aをすぐに吸引するので、撹拌子1を連続的に回転させることができる。また、このような構成の撹拌子1によれば、撹拌用磁石5a、5b、5cがいずれの駆動用磁石46a、46b、46cとも反発しないので、撹拌子1が転倒することや回転位置がずれることを防止できる。
【0050】
また、マグネチックスターラー40の駆動用磁石46a、46b、・・・は、撹拌用磁石5a、5b、・・・に対応して駆動用回転体43に配置されており、着磁方向が駆動用回転体43の回転軸と平行するように配置されていることが好ましく、さらに、対応する撹拌用磁石5a、5b、・・・と異なる磁極同士か対向可能であるように配置されていることが好ましい。すなわち、例えば図1に示す実施形態では、駆動用磁石46a、46bは、駆動用回転体43上において、撹拌用磁石5a、5bと対応する位置にそれぞれ配置されており、さらに、撹拌子1が容器60に収容された状態で撹拌用磁石5a、5bの下面側がS極(またはN極)であれば、対応する駆動用磁石46a、46bの上面側がN極(またはS極)となるように配置されていることが好ましい。このような撹拌子1およびそれに対応するマグネチックスターラー40を備える撹拌装置によれば、撹拌用磁石5a、5b、・・・と駆動用磁石46a、46b、・・・の配置が対応しているので、駆動用回転体43の回転に対応して、撹拌子1を確実に回転させることができ、試料bを確実に撹拌することができる。
【0051】
また、マグネチックスターラー40の駆動用回転体43は、軸部44を伸縮可能な部材にすることにより、回転軸に沿って昇降可能に支持されていてもよい。また、駆動用回転体43は、昇降可能であればその構成は限定されず、モータ45と本体41の底部との間に図示しない昇降手段を設ける構成等であってもよい。このような構成によれば、駆動用回転体43を昇降させて撹拌用磁石5a、5b、・・・と駆動用磁石46a、46b、・・・との距離を適宜変更することにより、試料bの粘性に応じて効率よく撹拌することができる。例えば、試料bが低粘度のときは、駆動用回転体43を降下させ、撹拌用磁石5a、5b、・・・と駆動用磁石46a、46b、・・・との距離を長くし、磁石間の引力を弱くして撹拌子1を回転させることができる。これにより、撹拌子1と容器60底面との摩擦力が小さくなるので、撹拌子1の回転時のエネルギー損失を小さくすることができ、試料bを効率よく撹拌することができる。また、容器60底面や容器60底面に接触する支持突部21および安定化突起23a、23bの摩耗を防止することもできる。
【0052】
また、駆動用回転体43は、水平回転可能であればその構成は特に限定されず、図6に示すように、中心から水平方向に延びる長回転腕51と、長回転腕51より長さが短い短回転腕52とを備えており、長回転腕51の先端部および短回転腕52の先端部に、それぞれ撹拌用磁石5a、5bおよび5c、5dが配置されている構成であってもよい。このような構成によれば、撹拌子1の撹拌用回転体7が小さいときは、短回転腕52の回転磁場により撹拌子1を回転させ、一方、撹拌用回転体7が大きいときは、長回転腕52の回転磁場により撹拌子1を回転させることにより、撹拌用回転体7の大きさに応じて試料bを良好に撹拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る撹拌装置の縦断面図である。
【図2】図1に示す撹拌装置の撹拌子の平面図である。
【図3】従来の撹拌子の縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る撹拌子の側面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る撹拌子の撹拌用回転体の平面断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る撹拌装置の駆動用回転体の平面断面図である。
【符号の説明】
【0054】
b 試料
1 撹拌子
2 撹拌手段
3 撹拌羽根
5a 撹拌用磁石
7 撹拌用回転体
10 棒状体
11 支持体
21 支持突部
23a 安定化突起
35 把持部
46a 駆動用磁石
40 マグネチックスターラー
60 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された液状の試料を回転により撹拌する撹拌子であって、
水平回転可能な撹拌用回転体と、
着磁方向が前記撹拌用回転体の回転軸と平行するように前記撹拌用回転体に配置されている撹拌用磁石とを備える撹拌子。
【請求項2】
前記撹拌用回転体は、棒状体であり、
前記棒状体の長手方向の両端部に一対の前記撹拌用磁石がそれぞれ配置されている請求項1に記載の撹拌子。
【請求項3】
前記撹拌用回転体と一体的に回転する撹拌手段を更に備える請求項1または2に記載の撹拌子。
【請求項4】
前記撹拌手段は、回転時に試料に上下方向の撹拌流を生じさせるように設けられている請求項3に記載の撹拌子。
【請求項5】
前記撹拌手段は、前記撹拌用回転体の回転軸線に沿って延びる支持体と、該支持体に取り付けられた撹拌羽根とを備えており、
前記撹拌羽根は、前記支持体の軸線方向に対して傾斜している請求項4に記載の撹拌子。
【請求項6】
前記支持体は、先端部に把持部を備える請求項5に記載の撹拌子。
【請求項7】
前記撹拌羽根は、前記支持体の軸線方向に沿って多段に取り付けられている請求項5または6に記載の撹拌子。
【請求項8】
前記撹拌羽根は、前記支持体に対して着脱可能に取り付けられている請求項5から7のいずれかに記載の撹拌子。
【請求項9】
前記撹拌用回転体の回転中心には、容器と接触する側に突出する支持突部が設けられている請求項1から8のいずれかに記載の撹拌子。
【請求項10】
前記撹拌用回転体の端部には、容器と接触する側に前記支持突部より高さが低い複数の安定化突起が設けられている請求項9に記載の撹拌子。
【請求項11】
前記撹拌用磁石は、前記撹拌用回転体の回転軸を中心とする円周に沿って等間隔に複数配置されており、かつ、同心円上にあるものの同極が全て同方向を向くように配置されている請求項1から10のいずれかに記載の撹拌子。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の撹拌子と、該撹拌子が容器に収容された状態で回転するように回転磁場を発生させる回転磁場発生手段とを備える撹拌装置であって、
前記回転磁場発生手段は、水平回転可能な駆動用回転体と、前記駆動用回転体を回転駆動する回転駆動手段と、前記撹拌用磁石に対応して前記駆動用回転体に配置されている駆動用磁石とを備え、
前記駆動用磁石は、着磁方向が前記駆動用回転体の回転軸と平行するように配置されており、かつ、対応する前記撹拌用磁石と異なる磁極同士が対向可能であるように配置されている撹拌装置。
【請求項13】
前記駆動用回転体は、回転軸に沿って昇降可能に支持されている請求項12に記載の撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−136443(P2007−136443A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16379(P2006−16379)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(397069868)アズワン株式会社 (23)
【Fターム(参考)】