説明

撹拌装置及びこれを用いた監視システム

【課題】 経時経年変化に伴う撹拌翼の軸や軸受の摩耗進行度合を正確に把握する。
【解決手段】 撹拌液2が収容可能な撹拌槽1内に撹拌翼3を軸受4を介して回転自在に配設する撹拌装置において、撹拌槽1外に設けられて駆動源6からの駆動力に基づいて回転する駆動側ローター7及び撹拌槽1内にて撹拌翼3に連結される従動側ローター8を有し、駆動側ローター7及び従動側ローター8との間を撹拌槽1の隔壁1aを介して磁気カップリング9にて非接触結合させる磁気カップリング駆動伝達機構5と、従動側ローター8の回転軸方向端部に対向する撹拌槽1の隔壁1aに設けられる高周波発振型の近接センサー10と、従動側ローター8の回転軸方向端部寄りに磁気カップリング9とは別に設けられて近接センサー10側に向かう補助磁界を生成する補助磁界生成部材11とを備える。また、これを用いた監視システムをも対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、食品、化粧品、ファインケミカル、石油化学等の各業界で用いられる撹拌装置に係り、特に、大気遮断タンク(撹拌槽)条件で且つ無人化による各種コントロール操作で撹拌処理が可能な密閉型タイプに対して有効な撹拌装置及びこれを用いた監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今般、医薬、食品、化粧品、ファインケミカル、石油化学等の各業界では、撹拌装置による撹拌処理が多岐に亘り行われている。
この種の撹拌装置においては、大気遮断タンク(撹拌槽)条件且つ無人化による各種コントロール操作(例えばバクテリアコントロール操作など)にて撹拌処理が行われることが多い。
従来この種の密閉型撹拌槽を使用する撹拌装置(以下密閉型撹拌装置という)としては、撹拌液が収容可能な撹拌槽内に撹拌翼を軸受を介して回転自在に配設し、磁気カップリング駆動伝達機構を介して撹拌翼へ回転駆動力を伝達するようにしたものが既に提供されている(特許文献1参照)。
本態様においては、撹拌槽内の撹拌翼に従動側磁気カップリングを装着する一方、撹拌槽の外部に駆動側磁気カップリングを配置し、これらの磁気カップリングを介して撹拌翼を非接触駆動可能としたので、メカニカルシールを使用せずに液漏洩及び汚染物混入防止の撹拌処理を行うことができる点で極めて有効である。
【0003】
【特許文献1】特開2001−353432号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献2】特開2000−185223号公報(発明の実施の形態,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の密閉型撹拌装置にあっては、経時経年変化により撹拌翼の回転軸や軸受が摩耗することは回避できず、また、撹拌液種(薬液等)によっては、これらの摩耗進行度合は撹拌液の化学的性状等の複雑な因子により予測が極めて困難である。
従って、この種の密閉型撹拌装置では定期的なメンテナンスが必要不可欠である。
このとき、メンテナンス時機を失した場合には撹拌装置の破損に繋がり、その結果、撹拌液の汚染及び変質に繋がる懸念があるため、メンテナンスとしては、過度な定期分解点検を強いられて設備保全費が嵩むという技術的課題があった。
【0005】
このような技術的課題を解決する手段として、振動検知センサーにて撹拌装置の回転部の振動情報を捉え、回転機構の異常や軸受等の異常を検知するものが既に提案されている(例えば特許文献2参照)。
この特許文献2記載の先行技術は、撹拌槽の底部に配設された外筒に振動検知センサーを設置し、軸受の振動を可動支持部を介して外筒に設けられた振動検知センサーに伝達するものであるため、他の要因によって外筒自体が振動してしまうと、振動検知センサーが誤検知するという懸念がある。
【0006】
本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、経時経年変化に伴う撹拌翼の軸や軸受の摩耗進行度合を正確に把握することが可能な撹拌装置及びこれを用いた監視システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、図1に示すように、撹拌液2が収容可能な撹拌槽1内に撹拌翼3を軸受4を介して回転自在に配設する撹拌装置において、撹拌槽1外に設けられて駆動源6からの駆動力に基づいて回転する駆動側ローター7及び撹拌槽1内にて撹拌翼3に連結される従動側ローター8を有し、駆動側ローター7及び従動側ローター8との間を撹拌槽1の隔壁1aを介して磁気カップリング9にて非接触結合させる磁気カップリング駆動伝達機構5と、従動側ローター8の回転軸方向端部に対向する撹拌槽1の隔壁1aに設けられる高周波発振型の近接センサー10と、従動側ローター8の回転軸方向端部寄りに磁気カップリング9とは別に設けられて近接センサー10側に向かう補助磁界を生成する補助磁界生成部材11と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような技術的手段において、本件は磁気カップリング駆動伝達機構5を備えた態様を前提とする。
ここで、磁気カップリング駆動伝達機構5としては、駆動側ローター7、従動側ローター8を上下方向に配置する態様も含むが、撹拌翼3の回転軸に直交する径方向に対して内側に配置される駆動側ローター7としてのインナーローターと、このインナーローターの外側周囲に配置される従動側ローター8としてのアウターローターとを有する態様が好ましい。このようなインナーローター、アウターローター方式を用いるようにすれば、磁気カップリング9による磁場作用面積を広く確保でき、駆動効率を良好に保つことができる。
【0009】
また、近接センサー10は高周波発振型を前提とする。ここで、高周波発振型とは、検出コイルにより高周波磁界を生成し、この磁界に検出物体が近づくと、電磁誘導により検出物体に誘導電流が流れ、この電流により検出コイルのインピーダンスが変化する態様をいう。そしてまた、近接センサー10はシールド型、非シールド型のいずれをも対象とするが、耐熱性、耐食性などを考慮すると、シールド型であることが好ましい。但し、非シールド型で別部品であるシールド部品を用いるようにしても差し支えない。
更に、補助磁界生成部材11としては、磁気カップリング9とは別に設けられるもので、永久磁石が代表的であるが、補助磁界を生成するものであれば広く含む。
【0010】
また、従動側ローター8の好ましい態様としては、非磁性金属にて構成され、磁気カップリング9を構成する磁界生成部材近傍に磁性金属製ヨークを配設したものが挙げられる。
一般に、従動側ローター8自体が磁性金属製であると、磁気カップリング9を構成する磁界生成部材からの磁力線は勿論、補助磁界生成部材11からの磁力線が封じ込まれてしまう懸念がある。このため、通常は従動側ローター8自体は非磁性金属製で構成され、必要に応じて磁性金属製ヨークを用いて磁力線を捕捉する方式が採られる。
特に、従動側ローター8のうち近接センサー10に対向する回転軸方向端部については、厚過ぎるヨークを配設すると、補助磁界生成部材11からの補助磁界がヨークに封じ込まれ、近接センサー10側に向かう補助磁界が生成されない懸念があるため、配設するヨークについて留意することが必要である。
【0011】
また、撹拌液2が加熱される態様の近接センサー10の好ましい態様としては、撹拌槽内壁面に対し耐食性カバーを介して近接センサー10を配置する態様がある。この場合、耐食性カバーは近接センサーの一要素として設けてもよいし、近接センサーとは別部品のシールド部品でもよい。
更に、近接センサー10の検出精度を確保する態様としては、従動側ローター8と近接センサー10の検出面との間の距離が安定検出距離d以上であることが好ましい。ここで、安定検出距離dとは近接センサー10による検出動作が安定的に行われる距離を示し、近接センサー10の種類によって異なるが、特に、耐熱性シールドを用いる近接センサー10にあっては5mm以上であることが好ましい。
【0012】
本発明は、上述したような撹拌装置に限られず、これを用いた監視システムをも対象とする。
この場合、本発明は、上述した撹拌装置15と、近接センサー10からの検出出力変化を遠隔にて監視する監視装置16とを備えたものであればよい。
この監視システムの代表的態様としては、監視装置16は、近接センサー10の検出出力変化が許容範囲を超えた条件下で、撹拌装置15が異常であると判別する異常処理を行うものがある。ここでいう異常処理には警報発信や警告表示などの警告処理や撹拌装置15の動作停止制御などが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁気カップリング駆動伝達機構を介して撹拌翼を回転駆動させ、磁気カップリング駆動伝達機構の従動側ローターの回転軸方向端部に対向した撹拌槽の隔壁に近接センサーを配置すると共に、従動側ローターの近接センサー寄りに近接センサー側に向かう補助磁界が生成可能な補助磁界生成部材を設けるようにしたので、メカニカルシールを用いずに液漏洩及び汚染物混入防止の撹拌処理を行うことができることは勿論、近接センサーにて磁気カップリング駆動伝達機構の従動側ローターとの間の位置関係変化を検出することにより、撹拌翼の軸や軸受の経時経年変化に伴う摩耗進行度合を把握することができる。
特に、本発明にあっては、補助磁界生成部材による補助磁界は近接センサーの高周波磁界と干渉するように働き、従動側ローターと近接センサーとの間をある程度離間配置したとしても、近接センサーの感度を確保することができるため、レイアウト上、従動側ローターと近接センサーが配置される撹拌槽隔壁面との間の距離を延ばすことが可能になる。このため、撹拌翼の軸、軸受の経時経年変化に伴う摩耗により撹拌翼が回転振れしたとしても、撹拌槽隔壁に対して従動側ローターが回転接触する虞れはなく、従動側ローターや撹拌槽が破損する事態を有効に防止しながら、任意の撹拌液種に対して撹拌翼の軸や軸受の経時経年変化に伴う摩耗進行度合を確実に把握することができる。
【0014】
また、このような撹拌装置を用いれば、近接センサーからの検出出力を監視装置にて監視することが可能になるため、任意の撹拌液種に対して撹拌翼の軸や軸受の経時経年変化に伴う摩耗進行度合を遠隔にて監視する監視システムを簡単に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図2は本発明が適用された撹拌装置の監視システムの実施の一形態を示す説明図である。
同図において、撹拌装置20は、例えば加熱される撹拌液22が収容可能な撹拌槽21と、この撹拌槽21の一部、例えば底部に配設される撹拌翼ユニット23とを備えている。
本実施の形態において、撹拌翼ユニット23は、図2、図3、図4に示すように、撹拌槽21の底部に中空状の支持台24を撹拌槽21内に膨出した状態で固定し、この支持台24にて撹拌槽21の底部の一部を構成すると共に、この支持台24の頂部には固定軸25を上方に向けて突出配置し、この固定軸25の周囲にブッシュ状の軸受26を介して撹拌翼27を回転自在に支承したものである。
更に、図4に示すように、撹拌翼27は、軸受26に回転支承される回転軸体27aを有し、この回転軸体27aに周囲に延びる円板状フランジ27bを設けると共に、この円板状フランジ27bには所定数(本例では四つ)の翼材27cを所定角度間隔にて取り付けたものである。尚、符号27d、27eは円板状フランジ27bに開設された所定数の撹拌液流通孔である。
【0016】
また、撹拌翼ユニット23は磁気カップリング駆動伝達機構30を有し、この磁気カップリング駆動伝達機構30を介して駆動モータ40に駆動連結されている。
本実施の形態において、磁気カップリング駆動伝達機構30は、支持台24内(撹拌槽21外に相当)に設けられて駆動モータ40からの駆動力を駆動方向変換機構41を介して伝達する駆動側ローター(インナーローター)31及び撹拌槽21内にて撹拌翼27に連結される従動側ローター(アウターローター)32を有し、両ローター31,32間を支持台24の隔壁を挟んで磁気カップリング33にて非接触結合するものである。
【0017】
本例では、駆動側ローター31は、支持台24の固定軸25と同軸に回転自在に設けられ且つ駆動モータ40からの駆動力に基づいて回転駆動される非磁性金属製(例えばステンレス/アルミニウム製)の駆動シャフト311を有し、この駆動シャフト311のうち撹拌槽21内に膨出した部位に対向する周囲には磁気カップリング33のインナー側カップリング磁石(例えば回転力と軸方向の直進力を伝達すべく上下方向にNS極が位置する湾曲状磁石を使用)331を円周方向に沿って所定間隔毎に配設したものである。
一方、従動側ローター32は、撹拌翼27の円板状フランジ27bから下方に垂下した支持アーム321を介して非磁性金属製(例えばSUS−316L)のローターリング322を支持し、このローターリング322には磁気カップリング33のアウター側カップリング磁石332(例えば回転力と軸方向の直進力を伝達すべく上下方向にSN極が位置する湾曲状磁石を使用)をインナー側カップリング磁石331に対し相互に磁気吸引するように相対向配置し、更に、このアウター側カップリング磁極332の背面側には磁性金属製(例えばSS−400)の湾曲状ヨーク323を配設し、磁気カップリング33の磁着力を増大させるようにしたものである。
本実施の形態において、各カップリング磁石331,332としてはネオジウムを始め適宜選定して差し支えない。
【0018】
また、本実施の形態では、撹拌槽21の底部を構成する支持台24のうち従動側ローター32の回転軸方向端部に対向する部位には近接センサー50が配設されている。
この近接センサー50としては耐熱性シールドを有する高周波発振型のものが用いられる。
つまり、この近接センサー50は、図5(a)(b)に示すように、センサー本体51の検出面を構成する検出コイル52、及び、内部回路53を内蔵させ、センサー本体51の検出面を耐食性カバー(例えばテフロン(登録商標)を使用)54にて被覆するようにしたものである。尚、本実施の形態では、この耐食性カバー54は撹拌槽21内壁面に露呈配置されているが、撹拌液22に対して耐食性を有する物で、高周波磁界に影響を及ぼさない材質であれば差し支えない。仮に、耐食性カバー54が撹拌液22に対して耐食性を有していない場合には、撹拌槽21内壁面に対し直接露呈しないように配置すればよい。
ここで、内部回路53は、発振回路531と、この発振回路531の発振状態を検出する検出回路532と、この検出回路532の出力を増大して出力する出力回路533とを備えている。
本態様の近接センサー50の動作原理は、検出コイル52により発生する高周波磁界56に検出物体(金属)55が近づくと、電磁誘導により検出物体55に誘導電流(渦電流)が流れ、この電流によって検出コイル52のインピーダンスが変化し、発振が停止すること、あるいは、発振周波数の変化状態を検出するものである。
【0019】
更に、本実施の形態では、図6に示すように、従動側ローター32のローターリング322の回転軸方向端部には補助磁界磁石60が配設されている。この補助磁界磁石60は近接センサー50側に向かって補助磁界70を生成するものであり、特に、本実施の形態では、ヨーク323が補助磁界磁石60に隣接した部位まで延びており、補助磁界磁石60からの補助磁界70の磁着力がヨーク323によって増大するようになっている。
【0020】
また、本実施の形態では、近接センサー50からの検出出力は、図2に示すように、遠隔監視可能な監視装置100へ入力されており、この監視装置100は、警報発信部や警告表示部を備えており、近接センサー50の検出出力が所定範囲を超えた条件下で、警報発信部による警報発信や、傾向表示部による警告表示などの異常処理を行うようになっている。ここで、異常処理としては、これらの処理に限られるものではなく、例えば撹拌装置20による撹拌処理を直ちに停止させるようにしてもよい。
尚、監視装置100は、近接センサー50の検出出力が所定範囲内であれば上述した異常処理を行わない。
【0021】
次に、本実施の形態に係る撹拌装置の監視システムの作動について説明する。
今、撹拌槽21内に加熱される撹拌液22を収容し、この撹拌槽21を大気遮断条件で且つ無人化による各種コントロール操作にて撹拌処理するものと仮定する。
ここで、撹拌翼ユニット23が安定的に動作している場合には、撹拌翼27による撹拌処理がスムーズに行われる。
このとき、撹拌翼27が安定回転しているため、従動側ローター32と近接センサー50との間の距離は一定に保たれることになり、近接センサー50は従動側ローター32の位置変動を検出することはない。
【0022】
これに対し、例えば撹拌翼27の固定軸25又は軸受26が経時経年変化すると、従動側ローター32の回転動作に面振れが起こり、撹拌翼ユニット23の動作が不安定になる懸念がある。
このとき、図6に示すように、従動側ローター32のローターリング322の回転軸方向端部が近接センサー50側に接近すると、電磁誘導により検出物体であるローターリング322の底面Aに誘導電流が流れる。この誘導電流によって、近接センサー50の検出コイル52のインピーダンスが変化し、近接センサー50からの発振が停止あるいは発振周波数が変化する。
監視装置100は、このような近接センサー50の検出出力の変化を認識し、リアルタイムで所定の異常処理(例えば警報発信)を実行する。これにより、撹拌装置20は監視装置100にて自己診断遠隔監視されることになり、運転上の安全が確保される。
【0023】
特に、本実施の形態では、耐食性カバー54を有する近接センサー50を用いているが、この種の近接センサー50(特に耐熱性シールド型)では検出距離が著しく小さく、しかも、薬液等の撹拌液22に直接接触することが不可であることから、前記耐食性カバー54を保護カバーとして必要とする。このため、近接センサー50の検出距離が更に少なくなり、構造上の不具合に繋がる懸念がある。
つまり、図7に示す比較の形態モデル(補助磁界磁石60無しのモデル)では、近接センサー50の検出面と検出物体である従動側ローター32の底面Aとの間隔を安定検出距離m’(例えば5mm:検出物体が磁性金属)だけ確保しようとする場合、耐食性カバー54の厚さm1’(例えば2mm)を差し引くと、撹拌槽21の内壁面(支持台24の内面に相当)Bと従動側ローター32の底面Aとの間隔が実質的にm2’(m’−m1:本例では3mm)となり、しかも、検出物体である従動側ローター32の底面Aの材質が非磁性金属(SUS−316L)であるため、安定検出距離m’は更に低下することになり、撹拌槽21の内壁面(支持台24の内面に相当)Bと従動側ローター32の底面Aとの間隔は実質的にm2’未満(例えば2mm)となる。
【0024】
従って、撹拌翼27が中速領域回転数100〜300RPMで回転する条件で、撹拌液22が化学反応及び溶液の粘性が変化して高くなり、過負荷状態に陥った時、駆動側ローター31及び従動側ローター32同士の磁気カップリング保持力が過負荷に負けてスリップを起こし、撹拌翼27が激しく大きな振動を起こす。
この場合、撹拌翼ユニット23の固定軸25及び軸受26が経時経年変化で摩耗した条件下では、撹拌槽21の内壁面(支持台24の内面に相当)Bと従動側ローター32の底面Aとの間隔は実質的にm2’未満(例えば2mm)であるため、従動側ローター32が面振れすると、従動側ローター32の底面Aと撹拌槽21の内壁面B(近接センサー50の耐食性カバー54表面)とが面振れにより回転接触する虞れが生じ、従動側ローター32又は撹拌槽21の底部が破損する懸念が非常に高くなり、万が一破損した場合には、攪拌液22の汚染及び変質に繋がり多大な損害を被る事が予測される。
【0025】
これに対し、本実施の形態では、図6に示すように、従動側ローター32の回転軸方向端下部に近接センサー50側に補助磁界が向かう補助磁界磁石60を組込み、従動側ローター32の底面Aに補助磁界70を生成し、この補助磁界70と近接センサー50の高周波磁界56とを干渉させる条件を作り、安定検出距離mの延長を可能としたものである。
つまり、補助磁界70と近接センサー50の高周波磁界56とを干渉させることにより、近接センサー50の高周波磁界56の作用距離を拡げることが可能になり、これにより、近接センサー50の安定検出距離mを延長することができ、もって、従動側ローター32と撹拌槽21との回壁面との間の距離をある程度離間することが可能になり、両者間の接触は有効に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る撹拌装置及びこれを用いた監視システムの概要を示す説明図である。
【図2】本発明が適用された撹拌装置及びこれを用いた監視システムの実施の形態を示す説明図である。
【図3】本実施の形態で用いられる撹拌装置の詳細を示す説明図である。
【図4】図3の撹拌装置の平面説明図である。
【図5】(a)は本実施の形態で用いられる近接センサーの動作原理を示す説明図、(b)はその内部回路例を示す説明図である。
【図6】本実施の形態に係る撹拌装置の近接センサーの周辺要部を示す説明図である。
【図7】比較の形態に係る撹拌装置の近接センサーの周辺要部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1…撹拌槽,1a…隔壁,2…撹拌液,3…撹拌翼,4…軸受,5…磁気カップリング駆動伝達機構,6…駆動源,7…駆動側ローター,8…従動側ローター,9…磁気カップリング,10…近接センサー,11…補助磁界生成部材,15…撹拌装置,16…監視装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌液が収容可能な撹拌槽内に撹拌翼を軸受を介して回転自在に配設する撹拌装置において、
撹拌槽外に設けられて駆動源からの駆動力に基づいて回転する駆動側ローター及び撹拌槽内にて撹拌翼に連結される従動側ローターを有し、駆動側ローター及び従動側ローターとの間を撹拌槽の隔壁を介して磁気カップリングにて非接触結合させる磁気カップリング駆動伝達機構と、
従動側ローターの回転軸方向端部に対向する撹拌槽の隔壁に設けられる高周波発振型の近接センサーと、
従動側ローターの回転軸方向端部寄りに磁気カップリングとは別に設けられて近接センサー側に向かう補助磁界を生成する補助磁界生成部材と、を備えたことを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
請求項1記載の撹拌装置において、
磁気カップリング駆動伝達機構は、撹拌翼の回転軸に直交する径方向に対して内側に配置される駆動側ローターとしてのインナーローターと、このインナーローターの外側周囲に配置される従動側ローターとしてのアウターローターとを有することを特徴とする撹拌装置。
【請求項3】
請求項1記載の撹拌装置において、
従動側ローターは非磁性金属にて構成され、磁気カップリングを構成する磁界生成部材近傍に磁性金属製ヨークを配設したものであることを特徴とする撹拌装置。
【請求項4】
請求項1記載の撹拌装置のうち撹拌液が加熱される態様において、
近接センサーは撹拌槽内壁面に対し耐食性カバーを介して配置されることを特徴とする撹拌装置。
【請求項5】
請求項1記載の撹拌装置において、
従動側ローターと近接センサーの検出面との間の距離が安定検出距離以上であることを特徴とする撹拌装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれかに記載の撹拌装置と、
近接センサーからの検出出力変化を遠隔にて監視する監視装置とを備えた撹拌装置の監視システム。
【請求項7】
請求項6記載の撹拌装置の監視システムにおいて、
監視装置は、近接センサーの検出出力変化が許容範囲を超えた条件下で、撹拌装置が異常であると判別する異常処理を行うものであることを特徴とする撹拌装置の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−29870(P2007−29870A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217761(P2005−217761)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(505284666)有限会社OS技研 (2)
【Fターム(参考)】