説明

撹拌装置

【課題】容易に均一混合を行なうことが可能となるとともに、排出時には、混合によって得られた流体を槽内へ極力滞留させず、速やかに排出させることが可能となる撹拌装置を提供する。
【解決手段】槽10と、撹拌翼5と、底部排出口3とからなる、流体を撹拌する撹拌装置100であって、25℃における粘度の最大値は、20〜60mPa・secである。撹拌翼5は、槽10の中心に槽外から垂下した回転軸4に配置され、回転軸4の延長線と槽10の下部傾斜面2の延長線とのなす角θは、10°から55°、好ましくは15〜50°である。撹拌翼5は、好ましくはアンカー翼を少なくとも含む。アンカー翼5と、槽10内部の壁面1とのクリアランスaは、好ましくは1から50mmであり、アンカー翼5と、槽10内部の底面とのクリアランスは、好ましくは1から50mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の撹拌装置に関し、特に、25℃における粘度の最大値が約20〜約60ミリパスカル秒の粘凋な流体を混合撹拌する撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業において、各種流体の撹拌は、一般に円筒形の壁面を有する直胴部と、その下端に連接し、縦断面が半楕円形の底面を有する下部からなる槽を備え、槽の中心に槽外から回転可能に配置した回転軸に撹拌翼が設けられた撹拌装置で行われる。
【0003】
撹拌翼は混合する流体の状態、物性に応じて適するさまざまな種類のものが好適に用いられている。
【0004】
ところで、流体は一般に、その粘度挙動に着目すると、ニュートンの粘性法則が成立するニュートン流体と、ニュートンの粘性法則が成立しない非ニュートン流体とに大別することができる。非ニュートン流体はさらに、いくつかの流体に分類することができ、例えば、擬塑性流体(構造粘性)、ダイラタント(ダイラタンシー)、ビンガム、非ビンガムのように細分することができる。これらの非ニュートン流体は、撹拌スピードの違いによって生じるずり応力の相違によりその挙動が異なるため、使用する撹拌翼については、その形状や槽に対する大きさおよび位置の選択が重要となる。特に、流体に特有の降伏値を有する、ビンガム、非ビンガムにおいては、降伏値以上のずり応力が与えられてはじめて、流動するものであるため、槽の排出性能を向上させるためには、撹拌翼の形状のほか、槽の形状についても重要となる。
【0005】
各種流体の中でも、特に、付着性が強く、流動性の劣る流体を、槽内壁に付着させることなく均一に撹拌させることが、従来からの課題であり、これを解決する手段として、例えば、特許文献1が挙げられる。
【0006】
特許文献1においては、粘度が高く、付着性が強い液体を撹拌するという観点で従来の撹拌翼を考察している。
【0007】
パドル翼は吐出性能が良くないほか、粘度の高い液体に使用すると翼のまわりだけ撹拌され、槽の内壁にある液体は動かないという難点がある。また、アンカー翼は槽底部や内壁の液体を良く撹拌する反面、上下の混合が悪く、特に粘度の高い液体では翼と液体とが共まわりしてしまい、撹拌作用が低下するおそれがある。一方、タービン翼のうち平羽根は剪断性に優れるが、吐出性能が良くないのに対し、傾斜翼はその逆の傾向、つまり、吐出性能に優れるが、剪断性が良くない。リボン翼は比較的高粘度液に向くけれども、構造が複雑で製作費が嵩み割高となる欠点がある。
【0008】
したがって、高粘度な液体を、槽内壁に付着させずに、水平方向とともに上下方向の混合を行って均一な撹拌を実施できる撹拌槽の出現が望まれており、アンカー翼・邪魔板・パドル翼を組み合わせることで、アンカー翼・邪魔板による平面的な全体混合と、パドル翼による上下混合との組み合わせで、均一撹拌を獲得していた。
【0009】
【特許文献1】特開平5−212261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来技術においては、均一撹拌は達成するものの、次工程に液体を供給する際に、邪魔板裏の付着が多く、撹拌槽内から全量排出できずに、生産性の低下を招くといった懸念があった。特に連続生産を行う場合には、さらに槽内へ長時間残液が滞留し、品質を損なうといった懸念もあった。また、次工程へ定量供給が必要な場合において、供給する液体の量が少なくなってきた時に、撹拌翼先端から撹拌槽底部とのクリアランスがあると、重力方向への流れが弱くなり、定量的な供給ができずに品質を損なうといった問題があった。
【0011】
本発明は、流体を均一に撹拌混合させるとともに、撹拌混合によって得られた流体を槽内へ極力滞留させず、速やかに排出させることの可能な撹拌装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、槽と、撹拌翼と、底部排出口とからなる撹拌装置であって、25℃における粘度の最大値が20ミリパスカル秒から60ミリパスカル秒である流体を撹拌することを特徴とする。
【0013】
上記撹拌装置において、撹拌翼は、前記槽の中心に槽外から垂下した回転軸に配置され、回転軸の延長線と槽の下部傾斜面の延長線とのなす角が、10°から55°であることが好ましい。
【0014】
上記撹拌装置において、撹拌翼は、槽内部の底面近傍の流体および壁面近傍の流体を掻きとるアンカー翼を少なくとも含むことが好ましい。
【0015】
上記撹拌装置において、アンカー翼と、槽内部の壁面とのクリアランスは、1から50mmであり、アンカー翼と、槽内部の底面とのクリアランスは、1から50mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撹拌時には、邪魔板等の、流体の排出に妨げとなる部材を極力用いることなく容易に均一混合を行なうことが可能となるとともに、排出時には、混合によって得られた流体を槽内へ極力滞留させず、速やかに排出させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態における流体の撹拌装置100の構成の概略を示す縦断面図である。撹拌装置100は、槽10と、底部排出口3と、撹拌翼5と、からなる。槽10は、円筒形の壁面1と、その下端から連接する円錐状の下部傾斜面2を有している。底部排出口3は、下部傾斜面2の円錐状頂点部分に備えられている。撹拌翼5は、槽10の中心に槽外から配置した回転軸4を含み、回転可能に設けられている。
【0019】
本発明の実施の形態において、回転軸4の延長線xと下部傾斜面2の延長線mとのなす角θは、好ましくは10〜55°であり、より好ましくは15〜50°である。θを10°未満とした場合には、槽10の容量が低下する為、容量を確保しようとすると縦方向に長い撹拌槽となってしまう。特に、壁面1の大きさを一定とした場合には、下部傾斜面2の長さが長くなるため、やはり全体として縦方向に長い撹拌槽となってしまう。いずれにしても、θを10°未満とすることは、現実的ではない。一方、θが55°を越えると、円錐状の下部傾斜面2の、水平面に対する角度が緩やかになるため、重力方向の流動性が低下し、流体が底部排出口3まで到達せずに下部傾斜面2上に滞留してしまい、全量排出が容易でない。
【0020】
撹拌翼5は、その先端部が、流体と接する槽10内部において、壁面1、下部傾斜面2および底部排出口3全てに近接していればいかなる形状のものでも良い。つまり、槽10内部の壁面1近傍の流体および下部傾斜面2、底部排出口3で規定される底面近傍の流体を掻きとり、槽10内部を均一に混合撹拌することができるものであれば、いかなるものでもよいが、構造が複雑になると撹拌翼への付着が多くなる為、簡単なものが好ましい。例えば、壁面1、下部傾斜面2および底部排出口3に近接し、一続きに沿った錨型の垂直平板からなる翼で構成された、図1に示すようなアンカー翼などが適している。必要に応じて、槽10の深さ方向の撹拌を補助するパドル翼などを併用しても良い。
【0021】
また、撹拌翼5の先端部と槽内壁とのクリアランスは、好ましくは1〜50mmである。より好ましくは、撹拌翼5と壁面1とのクリアランスaは1〜10mm、撹拌翼5と下部傾斜面2とのクリアランスbは1〜10mm、撹拌翼5と底部排出口3とのクリアランスcは1〜10mmである。撹拌翼5の先端部と槽内壁とのクリアランスが1mm未満の時には、撹拌時の振動により槽内壁と撹拌翼とが接触してしまい、槽や撹拌翼を傷つけてしまうおそれがある。また、撹拌翼5の先端部と槽内壁とのクリアランスが50mm以上の時には、槽内壁近傍の撹拌作用が弱くなる為、槽内壁への流体付着が多くなってしまうおそれがあるばかりか、高粘度溶液については均一混合が行なえないおそれもある。
【0022】
底部排出口3は、槽10内部の流体を排出可能な開口を有していればいかなるものでも良いが、例えば、フラッシュバルブやシャットノズルなどを設けて、槽10からの流体の排出を制御可能としてもよい。
【0023】
内容物の流体が発熱を伴う場合、槽10の周囲に図示しないジャケットを設け、冷却水を通水させて冷却できるように構成してもよい。このとき、内容物の流体を加熱する必要があれば、温水、蒸気、熱媒体をジャケットへ導入することもできる。
【0024】
本実施の形態における撹拌槽装置100の材質、特に流体と直接接触する部分の材質は、耐食性を有する、例えばSUS304などのステンレス鋼が好ましい。
【0025】
また、本実施の形態において、図1に示すように、槽10の壁面1の内径をB、底部排出口3の内径をAとすると、0.1B<A<0.5Bであることが好ましい。Aが0.1B以下の時には、底部排出口3の内径が狭くなり、流体の排出時に抵抗が増し、スムーズな排出が阻害されるおそれがある。一方、Aが0.5B以上の時には、円錐状の下部傾斜面2の長さが短くなってしまうため、重力方向の流動性が低下する。
【0026】
図2は、本発明の他の実施の形態における流体の撹拌装置200の構成の概略を示す縦断面図である。撹拌装置200は、傾斜した平板4枚傾斜パドルからなる撹拌翼6を備えたことを除いて、あとは図1に示した撹拌装置100の構成と略同一である。
【0027】
本実施の形態において、底部排出口3にはフラッシュバルブが設けられている。また、槽10の中心に垂下した垂線を回転軸4として、槽外から可変速電動機によって回転駆動される、撹拌翼5が設けられている。本実施の形態において使用した可変速電動機は、回転数を0〜30rpmの範囲で調整可能である。回転軸4にはまた、回転軸4と垂直方向の回転軸を有する撹拌翼6が設けられており、撹拌翼5と伴って回転する。
【0028】
撹拌翼5は、壁面1、下部傾斜面2、底部排出口3それぞれの槽10の内部近傍を掻きとり可能に一続きに沿った錨型の垂直平板からなるアンカー翼で構成されており、攪拌翼5の幅dは、好ましくは80mm〜100mmである。撹拌翼6は、撹拌翼5より上部の位置に、鉛直方向より60°傾斜した平板4枚傾斜パドルで構成されており、攪拌翼6の幅eは、好ましくは80mm〜100mmである。
【0029】
回転軸4の延長線xと下部傾斜面2の延長線mとのなす角をθとし、撹拌翼5と壁面1内部とのクリアランスをa、撹拌翼5と下部傾斜面2とのクリアランスをb、撹拌翼5と底部排出口3とのクリアランスをcとした。また、底部排出口3の内径をA、壁面1の内径をBとした。
【実施例】
【0030】
図2に示す撹拌装置200において、A、B、θ、a、bおよびcの値をそれぞれ変化させたものを用いて、本発明の実施の形態における撹拌装置の実施例と、これとは異なる参考例および比較例について、以下に説明する。なお、d、eについては、いずれも0.1Bになるよう一定になるようにし、例えば85mmで一定とした。
【0031】
[実施例1]
A=210mm、B=880mm、θ=30°、容積約0.7mの、SUS304製の槽を備えた撹拌装置を使用した。シリカ(SiO)20%水溶液(スノーテックスXS(商品名)、体積平均粒径4nm、日産化学工業株式会社製)75重量%、ポリ塩化アルミニウム水溶液(PAC100W(商品名)、浅田化学工業株式会社製)2.5重量%および0.02mol/リットルHNO水溶液22.5重量%を、総仕込み量が520kg(槽容積の約70%)となるように用意し、これを試料とした。
【0032】
槽の内部とのクリアランスをそれぞれa=10mm、b=10mm、c=10mmとなるように設けた、SUS304製の撹拌翼5を回転数25rpmで20分間回転させて上記試料の混合撹拌を行い、シリカ凝集溶液を調製した。
【0033】
このシリカ凝集溶液は、撹拌を続けると粘度が一旦上昇し、その後下降するという性質を有しており、通常の測定での数値ではばらつきが生じる場合も多い。このため、本明細書でいう「粘度」とは、被験試料をB型粘度計(トキメック社製、VISCONIC-ED型)によって、せん断速度5〜400s−1の条件下で測定を行なったときの最大値をいう。
【0034】
得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示す流体であった。また、この溶液は、容器を傾けてもしばらく流動しないが、水平から40°を超える程度まで液面を傾けるとはじめて、流動性を示す。つまり、得られたシリカ凝集溶液は、ある特定の降伏値を有する流体であると考えられる。
【0035】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出率(排出量/仕込み量)が97%以上となった時点でほぼ排出がなされたものとみなし、排出開始からの時間を計測すると、38秒であった。また、底部排出口3より排出されたシリカ凝集溶液の全量を計量し、最終排出率を算出した結果、98%であり、槽内の付着がなく、ほぼ全量排出することができた。なお、最終排出率の評価は、98%以上を◎、97%〜98%未満を○、90%〜97%未満を△、90%未満を×とし、これらの結果を表1、表3に示した。
【0036】
[実施例2]
θ=15°、槽の容積約0.7mである槽を有することを除いて、実施例1と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が520kg(槽容積の約70%)となるように実施例1と同様の試料を用意して撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0037】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、32秒であった。また、最終排出率は、98.5%であった。結果を表1に示した。
【0038】
[実施例3]
θ=50°、槽の容積約0.7mである槽を有することを除いて、あとは実施例1と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が520kg(槽容積の約70%)となるように実施例1と同様の試料を用意し、撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0039】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、43秒であった。また、最終排出率は、97.5%であった。結果を表1に示した。
【0040】
[実施例4]
シリカ20%水溶液70重量%、ポリ塩化アルミニウム水溶液3.0重量%および0.02mol/リットルHNO水溶液27.0重量%を、総仕込み量が520kgとなるように用意した。撹拌装置は、実施例1と同様のものを使用し、撹拌翼5を回転数25rpmで20分間回転させて上記試料の混合撹拌を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH2.5、比重1.16、粘度55mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、降伏値を有する流体であった。
【0041】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、50秒であった。また、最終排出率は、98.3%であった。結果を表1、表3に示した。
【0042】
[参考例1]
θ=60°、槽の容積約0.7mである槽を有することを除いて、あとは実施例1と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が520kg(槽容積の約70%)となるように実施例1と同様の試料を用意し、撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0043】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。最終排出率は、92.6%であり、下部傾斜面2に若干滞留しているスラリーが見られた。結果を表1に示した。
【0044】
[比較例1]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=80mm、b=80mm、c=80mmとすることを除いて、あとは参考例1と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が520kg(槽容積の約70%)となるように実施例1と同様の試料を用意し、撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0045】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。最終排出率は、80.0%であり、実施例と比較しても、明らかに壁面への付着および下部傾斜面に堆積したシリカ凝集溶液が増えた。結果を表1に示した。
【表1】

【0046】
表1に示すように、本発明の撹拌装置は、回転軸4の延長線xと下部傾斜面2の延長線mとのなす角θは60°未満である槽を有することが好ましく、θの値が小さくなるにつれて排出時間が短縮されることがわかる。特に、θが10°から55°に範囲においては、粘度60mPa・sec程度以下の流体、特に、25℃における粘度の最大値が20〜60mPa・secの流体をほぼ全量排出させることが可能である。また、θの値だけでなく、槽と撹拌翼とのクリアランスの幅についても、排出性能に影響を及ぼすことがわかる。
【0047】
[実施例5]
A=105mm、B=440mm、θ=30°、容積約0.1mである槽を有することを除いて、あとは実施例1と同様の撹拌装置を使用した。また、総仕込み量が80kg(槽容積の約70%)となるように、実施例1と同様の試料を用意した。
【0048】
槽内部とのクリアランスをそれぞれa=1mm、b=1mm、c=1mmとした撹拌翼5を回転数20rpmで20分間回転させて上記試料の混合撹拌を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0049】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を20rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、22秒であった。また、最終排出率は、98.5%であった。結果を表2に示した。
【0050】
[実施例6]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=10mm、b=10mm、c=10mmとすることを除いて、あとは実施例5と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が80kg(槽容積の約70%)となるように実施例5と同様の試料を用意し、回転数20rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0051】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を20rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、23秒であった。また、最終排出率は、98.0%であった。結果を表2に示した。
【0052】
[実施例7]
A=157.5mm、B=660mm、θ=30°、容積約0.3mの槽を有することを除いて、あとは実施例5と同様の撹拌装置を使用した。また、総仕込み量が240kg(槽容積の約70%)となるように実施例5と同様の試料を用意した。
【0053】
槽内部とのクリアランスをそれぞれa=3mm、b=3mm、c=3mmとした撹拌翼5を回転数23rpmで20分間回転させて上記試料の混合撹拌を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0054】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を23rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、29秒であった。また、最終排出率は、98.3%であった。結果を表2に示した。
【0055】
[実施例8]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=20mm、b=20mm、c=20mmとすることを除いて、あとは実施例7と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が240kg(槽容積の約70%)となるように実施例7と同様の試料を用意し、回転数23rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0056】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を23rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、33秒であった。また、最終排出率は、97.6%であった。結果を表2に示した。
【表2】

【0057】
表2に示すように、内径Bが440〜660mm程度の比較的槽の容量の小さい撹拌装置においては、クリアランスa、b、cがそれぞれ1〜20mm程度の条件下で、好適に均一撹拌および好適な排出を図ることができる。
【0058】
[実施例9]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=3mm、b=3mm、c=3mmとすることを除いて、あとは実施例1と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が520kg(槽容積の約70%)となるように実施例1と同様の試料を用意し、回転数25rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0059】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、36秒であった。また、最終排出率は、98.9%であった。結果を表3に示した。
【0060】
[実施例10]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=30mm、b=30mm、c=30mmとすることを除いて、あとは実施例9と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が520kg(槽容積の約70%)となるように実施例9と同様の試料を用意し、回転数25rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0061】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を25rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、40秒であった。また、最終排出率は、98.0%であった。結果を表3に示した。
【0062】
[実施例11]
A=225mm、B=950mm、θ=30°、容積約0.95mの槽を有することを除いて、あとは実施例9と同様の撹拌装置を使用した。また、総仕込み量が760kg(槽容積の約70%)となるように、実施例9と同様の試料を用意した。
【0063】
槽内部とのクリアランスをそれぞれa=5mm、b=5mm、c=5mmとした撹拌翼5を回転数27rpmで20分間回転させて上記試料の混合撹拌を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0064】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を27rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、32秒であった。また、最終排出率は、98.2%であった。結果を表3に示した。
【0065】
[実施例12]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=35mm、b=35mm、c=35mmとすることを除いて、あとは実施例11と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が760kg(槽容積の約70%)となるように実施例11と同様の試料を用意し、回転数27rpmで25分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0066】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を27rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、34秒であった。また、最終排出率は、97.7%であった。結果を表3に示した。
【表3】

【0067】
表3に示すように、内径Bが880〜950mm程度の槽を有する撹拌装置においては、クリアランスa、b、cが、それぞれ例えば33〜35mm程度の条件下で、好適に均一撹拌および好適な排出を図ることができる。
【0068】
[実施例13]
A=240mm、B=1000mm、θ=30°、容積約1.1mの槽を有することを除いて、あとは実施例1と同様の撹拌装置を使用した。また、総仕込み量が880kg(槽容積の約70%)となるように、実施例1と同様の試料を用意した。
【0069】
槽内部とのクリアランスをそれぞれa=4mm、b=4mm、c=4mmとした撹拌翼5を回転数27rpmで20分間回転させて上記試料の混合撹拌を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0070】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を27rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、46秒であった。また、最終排出率は、98.0%であった。結果を表4に示した。
【0071】
[実施例14]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=45mm、b=45mm、c=45mmとすることを除いて、あとは実施例13と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が880kg(槽容積の約70%)となるように実施例13と同様の試料を用意し、回転数27rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0072】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を27rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、49秒であった。また、最終排出率は、98.0%であった。結果を表4に示した。
【0073】
[実施例15]
A=260mm、B=1100mm、θ=30°、容積約1.4mの槽を有することを除いて、あとは実施例1と同様の撹拌装置を使用した。また、総仕込み量が1120kg(槽容積の約70%)となるように、実施例1と同様の試料を用意した。
【0074】
槽内部とのクリアランスをそれぞれa=5mm、b=5mm、c=5mmとした撹拌翼5を回転数30rpmで20分間回転させて上記試料の混合撹拌を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0075】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を30rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、50秒であった。また、最終排出率は、98.2%であった。結果を表4に示した。
【0076】
[実施例16]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=50mm、b=50mm、c=50mmとすることを除いて、あとは実施例15と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が1120kg(槽容積の約70%)となるように実施例15と同様の試料を用意し、回転数30rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1で得られた溶液と同様の流体であった。
【0077】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を30rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。排出開始から、排出率が97%以上となった時点までの時間を計測すると、54秒であった。また、最終排出率は、97.1%であった。結果を表4に示した。
【0078】
[参考例2]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=60mm、b=60mm、c=60mmとすることを除いて、あとは実施例15と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が1120kg(槽容積の約70%)となるように実施例15と同様の試料を用意し、回転数30rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液は、pH3.0、比重1.14、粘度40mPa・sec(いずれも25℃で測定)を示し、実施例1と同様の流体が得られた。
【0079】
得られたシリカ凝集溶液を、撹拌翼5を30rpmで回転させながら底部排出口3より排出した。最終排出率は、93.5%であり、下部傾斜面2に若干滞留しているスラリーが見られた。結果を表4に示した。
【0080】
[比較例2]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=70mm、b=70mm、c=70mmとすることを除いて、あとは実施例15と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が1120kg(槽容積の約70%)となるように実施例15と同様の試料を用意し、回転数30rpmで撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行ったが、槽の壁面近傍および下部傾斜面近傍が十分に撹拌されず、均一なシリカ凝集溶液を調製することができなかった。結果を表4に示した。
【0081】
[比較例3]
槽内部と撹拌翼5とのクリアランスをそれぞれa=0.5mm、b=0.5mm、c=0.5mmとすることを除いて、あとは実施例15と同様の撹拌装置を使用した。総仕込み量が1120kg(槽容積の約70%)となるように実施例15と同様の試料を用意し、回転数30rpmで20分間撹拌翼5を回転させて上記試料の撹拌混合を行い、シリカ凝集溶液を調製した。得られたシリカ凝集溶液には、金属片らしき異物が混入しており、槽内部または撹拌翼の一部が削られたものであると認められた。結果を表4に示した。
【表4】

【0082】
表4に示すように、内径Bが1000〜1100mm程度の撹拌装置においては、クリアランスa、b、cが、それぞれ例えば4〜50mm程度の条件下で、好適に均一撹拌および好適な排出を図ることができる。一方、クリアランスa、b、cが、60mm程度になると、槽内部の流体は97%以上の排出率を達成することができず、70mmを超えてしまうと、もはや均一混合さえ困難となってしまう。
【0083】
このように、本発明によれば、回転軸4の延長線xと下部傾斜面2の延長線mとのなす角θが10〜55°であり、好ましくは15〜50°である槽を有する撹拌装置において、槽内部と撹拌翼とのクリアランスを1〜50mmとすることにより、槽内部の壁面や底面、および撹拌翼などに付着しやすい流体を容易に排出することが可能となる。
【0084】
なお、本発明の他の実施の形態における撹拌装置は、バッチ処理に限らず、排出および混合を同時に行なう連続処理においても好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、得られる流体が降伏値を有し、特に粘度の最大値が、20〜60mPa・secである流体の均一混合および排出に好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態における流体の撹拌装置100の構成の概略を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における流体の撹拌装置200の構成の概略を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 壁面、2 下部傾斜面、3 底部排出口、4 回転軸、5,6 撹拌翼、10,20 槽、100,200 撹拌装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽と、撹拌翼と、底部排出口とからなる撹拌装置であって、
25℃における粘度の最大値が20ミリパスカル秒から60ミリパスカル秒である流体を撹拌する撹拌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撹拌装置において、
前記撹拌翼は、前記槽の中心に槽外から垂下した回転軸に配置され、
前記回転軸の延長線と前記槽の下部傾斜面の延長線とのなす角が、10°から55°である、撹拌装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撹拌装置において、
前記撹拌翼は、槽内部の壁面近傍の流体および底面近傍の流体を掻きとるアンカー翼を少なくとも含む、撹拌装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撹拌装置において、
前記アンカー翼と、前記槽内部の壁面とのクリアランスは、1から50mmであり、
前記アンカー翼と、前記槽内部の底面とのクリアランスは、1から50mmである、撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−83157(P2007−83157A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274555(P2005−274555)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】