説明

操作棒用グリップ

【課題】コストを低減することができるとともに、品質及び設計の自由度を向上することができる操作棒用グリップを提供する。
【解決手段】予め分割形成された第1グリップ片13、第2グリップ片14及び第3グリップ片15を互いに直列に連結して、一つのグリップ11を構成する。このグリップ11の内部に操作棒12の基端部を挿入し、接着剤によりグリップ11を操作棒12に固定する。操作棒をセットする大掛かりな成形装置が不要となり、コストを低減することができる。又、グリップ片13,14,15をそれぞれ単体で成形すればよいので、成形装置によるグリップ片の成形時にキャビティ内への樹脂の注入時間の差が短くなり、品質を向上することができる。さらに、各グリップ片の内部の操作棒の挿入孔を成形するインサート成形型の形状の制約を緩和して、設計の自由度を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作棒用グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃用具として、操作棒(柄)付きモップ保持具が用いられている。長尺寸法の前記操作棒の基端部には樹脂製のグリップが取り付けられている。このグリップの長さ寸法は、仕様に応じて例えば20cm程度のものから60cm程度に長く設定される。モップ保持具においては、床面上でモップを前後方向又は左右方向に移動することにより清掃が行われるので、操作棒に大きな操作力を加える必要がなく、従って、グリップが短くても特に操作上問題は無かった。しかしながら、大型のモップをあたかも箒のような動作により用いる場合には、操作性を良くするために長いグリップが必要となる。この長い寸法のグリップの形成方法として、操作棒の基端部をインサート成形型のキャビティ内に挿入した状態で、該キャビティ内に樹脂を注入し、グリップを一体的に成形する方法がある。又、グリップを単体で成形すると共に、グリップの中心穴に操作棒の基端部を挿入して接着剤により接着する方法も提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前者の方法は、インサート成形型のキャビティ内に長尺の操作棒の基端部を挿入する必要があるので、大がかりな成形装置が必要となり、コストの低減を図ることができないという問題があった。
【0004】
一方、後者の方法は、グリップを単体で成形するため、長尺の操作棒をセットする必要がなく、成形作業を容易に行うことができる。しかしながら、この後者の方法は、単体のグリップが長尺寸法のため、キャビティ内への樹脂の注入時間の差が大きく、品質が低下したり、グリップの内部に操作棒用の挿入孔を成形するインサート成形型の形状に制約が生じて、設計の自由度が低下したりするという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、コストを低減することができるとともに、品質及び設計の自由度を向上することができる操作棒用グリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、筒状に形成された複数のグリップ片を直列に連結したことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記各グリップ片の連結端部には、相対回動を阻止する手段と、軸方向の相対移動を阻止する手段が設けられていることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記相対回動を阻止する手段は、グリップ片の連結孔の内周面に形成された突条と、前記連結孔に嵌入されるグリップ片のボス部の外周面に形成された係止溝とにより形成され、軸方向の相対移動を阻止する手段は、グリップ片の連結孔の内周面に形成された係止溝と、グリップ片のボス部の外周面に形成された抜け止め突条とにより形成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記各グリップ片の接合端縁のいずれか一方の端縁には、滑り止め用の突条が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のグリップ片を連結してグリップを形成するようにしたので、操作棒をセットする大掛かりな成形装置が不要となり、コストを低減することができる。又、グリップ片をそれぞれ単体で成形すればよいので、成形装置によるグリップ片の成形時にキャビティ内への樹脂の注入時間の差が短くなり、品質を向上することができる。さらに、各グリップ片の内部の操作棒の挿入孔を成形するインサート成形型の形状の制約を緩和して、設計の自由度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を清掃用具の操作棒用グリップに具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、この操作棒に用いられるグリップ11は、長尺の操作棒12の基端部外周面に図示しない接着剤により接着されている。このグリップ11は、緩やかなテーパ円筒状をなす第1グリップ片13と、この第1グリップ片13の後端部(図1の右端部)に直列に連結され、かつ、緩やかなテーパ円筒状をなす第2グリップ片14と、この第2グリップ片14の後端部に直列に連結され、かつ緩やかなテーパ円筒状をなす第3グリップ片15とによって構成されている。この第3グリップ片15の後端部からは、掛止用の紐16が導出されている。
【0011】
次に、前記第1〜第3グリップ片13〜15について順次説明する。
図2に示すように、第1グリップ片13の本体13aの内周面13bの先端部(図2の左端部)近傍には前記操作棒12の外周面に局部的に接触する突起部13cが一体に、かつ円周方向に等間隔を隔てて複数箇所(この実施形態では図4に示すように3箇所)に形成されている。この突起部13cは図3に示すように後端ほど高くなる傾状になっている。前記内周面13bの後端部には、段差部13dが形成され、該段差部13dよりも後側(図2の右側)に前記内周面13bの直径寸法よりも大きい寸法の連結孔13eが形成され、後述する第2グリップ片14のボス部14bが嵌入接合されるようになっている。この連結孔13eの内周面には、前記段差部13dから後方向に延びるように回り止め用の突条13fが円周方向に等間隔をおいて複数箇所(この実施形態では図4に示すように2箇所)に一体に形成されている。前記連結孔13eの内周面には前記第2グリップ片14のボス部14bの外周面に形成された抜け止め突条14dを係止する係止溝13gが円周方向に形成されている。前記本体13aの後端寄り外周面には清掃作業者の手の滑り止め用の突条13hが複数箇所(この実施形態では図2に示すように4箇所)に一体に形成されている。
【0012】
図5〜図7に示す第2グリップ片14の本体14aの先端部(図4の左端部)には、前記第1グリップ片13の連結孔13eに嵌入される小径寸法のボス部14bが一体に形成されている。前記ボス部14bの外周面には、前記連結孔13eにボス部14bを嵌入した状態で前記第1グリップ片13の両突条13fを係止する係止溝14cが複数箇所(この実施形態では図6に示すように2箇所)に形成され、該係止溝14cと突条13fによって、第1グリップ片13と第2グリップ片14が相対回動しないようになっている。前記ボス部14bの外周面には、前記第1グリップ片13の係止溝13gに係止される円環状の抜け止め突条14dが一体に形成されている。そして、連結孔13e内にボス部14bを所定の外力を付与して挿入することにより、抜け止め突条14dが縮径するように弾性変形されて、係止溝13gに抜け止め突条14dが弾性復元力により係止された状態で第1グリップ片13と第2グリップ片14を直列に安定して連結するようになっている。
【0013】
前記第2グリップ片14の内周面14eの先端寄り位置には、前記操作棒12の外周面に局部的に接触する突起部14fが一体に、かつ、円周方向に等間隔を隔てて、複数箇所(この実施形態では図7に示すように3箇所)に形成されている。
【0014】
第2グリップ片14の後端部と第3グリップ片15の先端部の連結構造は、前述した第1グリップ片13の後端部と、第2グリップ片14の先端部の連結構造とほぼ同様に構成されている。前記第2グリップ片14の内周面14eの後端部には、段差部14gが形成され、該段差部14gよりも後側には前記内周面14eの直径寸法よりも大きい寸法の連結孔14hが形成されている。この連結孔14hの内周面には、前記段差部14gから後方向に延びるように回り止め用の突条14iが複数箇所(図7に示すように2箇所)に、かつ円周方向に等間隔をおいて一体に形成されている。前記連結孔14hの内周面には前記第3グリップ片15の抜け出しを阻止する係止溝14jが円周方向に形成されている。
【0015】
前記本体14aの先端部外周面には前記第1グリップ片13の滑り止め突条13hと同様の滑り止め突条14kが一箇所に一体に形成されている。前記本体14aの後端寄り外周面には滑り止め用の突条14lが複数箇所(この実施形態では3箇所)に一体に形成されている。この突条14lの一つは本体14aの後端縁に形成されている。
【0016】
次に、前記第3グリップ片15を図8及び図9に基づいて説明する。
第3グリップ片15の本体15aの先端部(図8の左端部)には小径寸法のボス部15bが一体に形成されている。前記ボス部15bの外周面には、前記第2グリップ片14の両突条14iを挿入係止する係止溝15cが2箇所に形成されている。前記ボス部15bの後端寄り外周面には、前記第2グリップ片14の係止溝14jに係止される円環状をなす抜け止め突条15dが一体に形成されている。
【0017】
前記第3グリップ片15の内周面15eには挿入された操作棒12の外周面を局部的に保持する突条15fが第3グリップ片15の軸線方向と平行に、かつ、円周方向に等間隔をおいて複数箇所(この実施形態では4箇所)に一体形成されている。前記各突条15fの後端部には、前記操作棒12の後端面に当接する位置規制部15gがそれぞれ一体に形成されている。前記第3グリップ片15の後端部は図8に示すようにほぼ半球状に閉塞されていて、その中央部には、前記紐16の導出孔15hが形成されている。本体15aの外周面には、滑り止め突条15iが複数箇所に一体に形成されている。
【0018】
次に、単体で形成された第1〜第3グリップ片13〜15によってグリップ11を形成する方法について説明する。
最初に、図5に示す第2グリップ片14のボス部14bの外周面に接着剤を塗布した後、図2に示す第1グリップ片13の後端部の連結孔13eに対し第2グリップ片14の先端部のボス部14bを嵌入して、突条13fを係止溝14cに係止するとともに、係止溝13gと抜け止め突条14dを係止する。これによって、第1グリップ片13と第2グリップ片14が相対回動不能に、かつ、分離不能に直列に連結される。
【0019】
次に、図8に示す第3グリップ片15の導出孔15hを用いて前記紐16を第3グリップ片15に連結すると共に、ボス部15bの外周面に接着剤を塗布する。そして、図5に示す第2グリップ片14の連結孔14hに対し、第3グリップ片15のボス部15bを嵌入し、突条14iを係止溝15cに係止すると共に、係止溝14jに抜け止め突条15dを係止する。これによって、第2グリップ片14と第3グリップ片15が相対回動不能に、かつ、分離不能に直列に連結される。
【0020】
以上のようにして、第1〜第3グリップ片13〜15によってグリップ11が構成される。前記操作棒12の外周面に図示しない接着剤を塗布した後、前記グリップ11の内部に前記操作棒12の基端部を挿入し、操作棒12の端面が前記第3グリップ片15の位置規制部15gに接触した状態で、操作棒12の基端部に対するグリップ11の装着が完了する。
【0021】
上記実施形態の清掃用具の操作棒に用いるグリップによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、第1〜第3グリップ片13〜15によってグリップ11を構成したので、成形作業時に操作棒12をセットする大掛かりな成形装置が不要となり、コストを低減することができる。又、グリップ片13〜15をそれぞれ単体で成形すればよいので、成形装置によるグリップ片13〜15の成形時に、キャビティ内への樹脂の注入時間の差が短くなり、品質を向上することができる。さらに、各グリップ片13〜15の内部の操作棒12の挿入孔を成形するインサート成形型の形状の制約を緩和して、設計の自由度を向上することができる。
【0022】
(2)上記実施形態では、第1〜第3グリップ片13〜15の間に、相対回動を阻止する手段及び軸方向の相対移動を阻止する手段を設けたので、第1〜第3グリップ片13〜15の連結状態を安定して保持することができる。
【0023】
(3)上記実施形態では、第1〜第3グリップ片13〜15の接合部の接合端面の外周縁に滑り止め突条14k,14lを設けたので、接合界面が突条によって目立たなくなり、グリップ11の外観を向上することができる。
【0024】
(4)上記実施形態では、第1グリップ片13の内周面13bに対し、操作棒12の外周面を局部的に支持する突起部13cを設け、第2グリップ片14の内周面14eに対し突起部14fを設け、第3グリップ片15の内周面15eに対して、突条15fを設けた。このため、グリップ11の内部に操作棒12を挿入する際に、接触抵抗を少なくして、挿入作業を容易に行うことができると共に、グリップ11の内部に操作棒12を安定して保持することができる。
【0025】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1〜第3グリップ片13〜15のうち、第2グリップ片14を省略してもよい。又、4つ、5つ又は6つ以上のグリップ片を用いてグリップ11を構成してもよい。
【0026】
・第1〜第3グリップ片13〜15の間の相対回動を阻止する手段及び軸方向の相対移動を阻止する手段を省略し、接着剤によりグリップ片を接着してもよい。
・清掃用具の操作棒12用のグリップ11以外に、例えば天井の電球を脱着操作する操作棒、果樹園の果実を収穫するのに用いる操作棒等、各種の作業を行う操作棒用のグリップとして具体化してもよい。
【0027】
前記実施形態から把握される請求項以外の技術的思想について説明する。
(1)請求項1〜4のいずれか一項において、前記グリップ片は、3、4又は5に分割されていることを特徴とする操作棒用グリップ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明を清掃用具のグリップに具体化した一実施形態を示す半縦断面図。
【図2】第1グリップ片を示す中央部縦断面図。
【図3】第1グリップ片の先端部を拡大して示す断面図。
【図4】第1グリップ片の右側面図。
【図5】第2グリップ片の中央部縦断面図。
【図6】第2グリップ片の先端部の拡大断面図。
【図7】第2グリップ片の右側面図。
【図8】第3グリップ片の中央部縦断面図。
【図9】第3グリップ片の左側面図。
【符号の説明】
【0029】
11…グリップ、12…操作棒、13…第1グリップ片、14…第2グリップ片、15…第3グリップ片、13b,14e,15e…内周面、13e,14h…連結孔、13f,13h,14i,14l,15f…突条、13g,14c,14j,15c…係止溝、13h,14k,14l,15i…滑り止め突条、13−15…グリップ片、14b,15b…ボス部、14d,15d…抜け止め突条。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された複数のグリップ片を直列に連結したことを特徴とする操作棒用グリップ。
【請求項2】
請求項1において、前記各グリップ片の連結端部には、相対回動を阻止する手段と、軸方向の相対移動を阻止する手段が設けられていることを特徴とする操作棒用グリップ。
【請求項3】
請求項2において、前記相対回動を阻止する手段は、グリップ片の連結孔の内周面に形成された突条と、前記連結孔に嵌入されるグリップ片のボス部の外周面に形成された係止溝とにより形成され、軸方向の相対移動を阻止する手段は、グリップ片の連結孔の内周面に形成された係止溝と、グリップ片のボス部の外周面に形成された抜け止め突条とにより形成されていることを特徴とする操作棒用グリップ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記各グリップ片の接合端縁のいずれか一方の端縁には、滑り止め用の突条が形成されていることを特徴とする操作棒用グリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−54389(P2007−54389A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244573(P2005−244573)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(390005212)株式会社トーカイ (5)
【Fターム(参考)】