説明

操作装置

【課題】操作感の向上と、全体の小形化、並びにコストの低廉化ができるようにする。
【解決手段】ダイヤル101の操作を、ダイヤル101の係合部である係合孔122とプーリ108(被回転体)の被係合部である係合突起132との係合部分を介してプーリ108に直に伝達されるようにし、プーリ108には中空状のものを使用して、その空洞部108aにハウジング107の角筒部107b(電装部材)を挿入して設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤル式の操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両の空調操作に供する操作装置として、図4に示すものが供されている。このものにおいては、図で左側より順に、ダイヤル1、指示ピース2、表示パネル3、パネル支え4、ボディ5、プッシュボタン6、導光ピース7及び中間ギヤ8、スイッチ9並びにLED10及び抵抗11〜13、インシュレータ14、ランプ15、終段ギヤ16、ハウジング17、プーリユニット18が存在している。
【0003】
そのうち、ダイヤル1は、中空の短円筒状を成すもので、内周部の一箇所に指示ピース2が装着され、この指示ピース2の前端部がダイヤル1前縁の凹欠部19から前方に露出される。又、このダイヤル1の後部の内周部にはギヤ歯20が形成されている。
表示パネル3は、中央部に孔21を有する円形のシートから成るもので、その前面には、この場合、車室内の設定温度の高低を表す表示22が複数、環状に配列して設けられており、この表示パネル3がパネル支え4の前面に取付けられる。パネル支え4は表示パネル3の孔21と同心で且つほゞ同径のリング部23を有している。
【0004】
ボディ5は、多角形箱状部5aの前方に大円筒状部5bと小円筒状部5cとを同心状に有するもので、小円筒状部5cの前縁にパネル支え4が固着され、大円筒状部5bの外周にダイヤル1が回転可能に嵌装される。その結果、ダイヤル1の前面の開口部1aから表示パネル3が前方に露出される。
【0005】
プッシュボタン6には、この場合、前面にエアコンの文字(A/C)による表示24と透光窓25とが設けられ、そのうちの透光窓25に連なる部分に導光ピース7が挿着され、このプッシュボタン6が、上記ボディ5の小円筒状部5cからパネル支え4のリング部23に挿通されて表示パネル3の孔21から前方に露出される。
中間ギヤ8は前部にギヤ歯8aを有し、後部にギヤ歯8bを有するもので、その前部のギヤ歯8aが、ボディ5の多角形箱状部5aの下部に形成された孔(図示せず)に挿通されて、前記ダイヤル1のギヤ歯20に噛合される。
【0006】
スイッチ9、LED10、及び抵抗11〜13はインシュレータ14に実装され、インシュレータ14にはランプ15も装着される。又、インシュレータ14には、下部に切欠部26が形成され、この切欠部26に上記中間ギヤ8の後部のギヤ歯8bが挿通されるようにしてインシュレータ14がボディ5に結合される。更に、インシュレータ14には、外周部の一箇所にコネクタ27が一体に形成されており、このコネクタ27に図示しない相手コネクタが接続され、上記スイッチ9、LED10、抵抗11〜13、及びランプ15に導電するようになっている。
【0007】
終段ギヤ16は、有底の短円筒状を成すもので、内周部にギヤ歯28が形成されており、このギヤ歯28が上記中間ギヤ8の後部のギヤ歯8bに噛合される。又、この終段ギヤ16の中心部には、非円形のプーリ軸挿着孔29が形成されている。
ハウジング17は、上記終段ギヤ16を収容して前記インシュレータ14を挟み前記ボディ5の多角形箱状部5aに結合される多角形箱状を成すもので、その中心部には円形のプーリ軸挿通孔30が形成されている。
【0008】
プーリユニット18は、プーリケース18aに被回転体であるプーリ(図示せず)を内蔵しており、そのプーリの非円形で中空の軸31がプーリケース18aの中心部から外部に導出され、このプーリ軸31が、上記ハウジング17のプーリ軸挿通孔30を貫通して前記終段ギヤ16のプーリ軸挿着孔29に挿着される。又、プーリユニット18は、プーリに掛けたケーブル32をプーリケース18aの周側部の一箇所から外部に導出している。そして、ケーブル32には、車両の車室内に供給される空気の温度を調節するための図示しないダンパが先端部に取付けられる。
【0009】
以上の構成で、ダイヤル1を操作者が手で持って回転操作すれば、ギヤ歯20から中間ギヤ8の前部のギヤ歯8aに回転が伝達され、更に、中間ギヤ8の後部のギヤ歯8bから終段ギヤ16のギヤ歯28に回転が伝達されて、終段ギヤ16が回転することにより、該終段ギヤ16のプーリ軸挿着孔29とプーリユニット18のプーリ軸31との非円形係合部分を介して図示しないプーリが回転される。これにより、ケーブル32が巻き引かれ、該ケーブル32の先端部に取り付けた図示しないダンパが動かされて、車両の車室内に供給される空気の温度が調節される。
【0010】
なお、表示パネル3の表示22は、その調節される温度を表示するものであり、この表示パネル3の表示22のいずれか(ダイヤル1の回転角度に応じた)の位置、すなわち、設定温度位置を、指示ピース2がダイヤル1の回転に伴って指示する。又、このとき、ランプ15は表示22の全部を裏側より照明する。従って、表示22は透光性を有している。
【0011】
そして、プッシュボタン6を操作者が指先で押圧操作すれば、インシュレータ14に装着されたスイッチ9が押圧されて作動し、エアコンを作動させる。それと共に、LED10が発光し、その光が導光ピース7を透過してプッシュボタン6の透光窓25に現れ、上記エアコンの作動を表示する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−96579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来のものの場合、ダイヤル1の操作が数段のギヤ歯の噛合を経てプーリユニット18の被回転体であるプーリに伝達される構造であり、その各段のギヤ歯の噛合にはそれぞれガタが不可避的に存在するため、その各ガタの分、ダイヤル1によるプーリの操作が直接的にできず、操作感が良くなかった。又、その数段のギヤ歯の噛合を経る分、装置が大形化し、コスト高ともなっていた。その上、中間ギヤ8の後部のギヤ歯8bから回転力が伝達される終段ギヤ16は、そのギヤ歯8bと噛合するギヤ歯28を内周部に有していて、中心部にプーリ軸31を連結した構造であり、その関係上、電装部材であるインシュレータ14には、コネクタ27がインシュレータ14の中心部を避けて外周部に設けられており、これによっても装置が大形化するという欠点を有していた。
【0014】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、操作感の向上と、全体の小形化、並びにコストの低廉化ができる操作装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の操作装置は、周囲部に係合部が設けられたダイヤルと、中空状を成し、周囲部に前記ダイヤルの係合部に係合される被係合部が設けられ、その係合部分を介して前記ダイヤルの回転が伝達される被回転体と、この被回転体の空洞部に挿入して設けられた電装部材とを具備して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記手段によれば、ダイヤルの操作は、ダイヤルの係合部と被回転体の被係合部との係合部分を介して被回転体に直に伝達されるので、複数段のギヤの噛合を介したもののようなガタによる不具合が出ず、操作感を向上できる。又、そのギヤを廃止できることで、全体の小形化ができると共に、コストの低廉化ができる。加えて、ギヤを廃止できることと、上記ダイヤルの係合部及び被回転体の被係合部をともにダイヤル及び被回転体のそれぞれ周囲部に設けたことで、被回転体には中空状のものを使用でき、その空洞部に電装部材を挿入して設けたことで、電装部材を装置の中心部に配設でき、全体の一層の小形化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示す縦断側面図
【図2】正面図
【図3】分解斜視図
【図4】従来例を示す図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例(一実施形態)につき、図1ないし図3を参照して説明する。
まず、図3は、車両用、特には自動車用の、空調操作、中でも車内の温度調節操作に供する操作装置の全体を分解状態で示しており、左側より順に、ダイヤル101、表示パネル102、プッシュボタン103、ボディ104、ロータ105、回路基板106、ハウジング107、プーリ108、プーリケース109を示している。
【0019】
そのうち、ダイヤル101は、中空の短円筒状を成すもので、前縁部の一箇所に指示部110を有し、後端の径大縁部の数箇所に係合孔111を有している。
表示パネル102は、円形のシートから成るもので、その前面の周囲部には、この場合、図2に詳細に示すように、車室内の設定温度の高低を表す、透光性を有する表示112を複数、環状に配列して設けており、中央部に、エアコンの文字(A/C)による表示113と透光窓114とを設けている。
【0020】
プッシュボタン103は、透光材で中空の有蓋短円筒状に形成したもので、その周側部の前部にはつば部103aを有し、それより後方の複数箇所(一箇所のみ図示)に連結孔115を有している。又、図1に示すように、このプッシュボタン103の内周部の数箇所には、軸方向である前後方向に延びる突条116を設けており、中心部にスイッチ操作突起117と遮光壁118とを設けている。
【0021】
ボディ104は、前部に大円筒部104aを有し、後部に小円筒部104bを有し、それらの境界部の外周につば部104cを有するもので、そのうちの大円筒部104aの外周部には、上記プッシュボタン103の連結孔115と対応する連結突起119と、突条116と対応する凹条120とを設けている。なお、プッシュボタン103の連結孔115は連結突起119よりも前後方向に長いものである。又、このボディ104の小円筒部104bの数箇所(一箇所のみ図示)には、連結孔121を設けている。
【0022】
ロータ105は、リング状のもので、外環部105aと内環部105bとを有しており、図1に示すように、その両環部105a,105b間の複数箇所(この場合、2箇所)に、係合部たる係合孔122を有している。又、図3に示すように、このロータ105の外環部105aの外周には、前記ダイヤル101の係合孔111と対応する係合突起123を設けている。
【0023】
回路基板106は、円盤状のもので、その前面には、中心部にスイッチ(例えばタクトスイッチ)124を実装し、その周囲に前記表示パネル102の透光窓114に対応する発光体(例えばLED)125と、前記表示112に対応する発光体(例えばLED)126とを実装している。又、この回路基板106の外周部の数箇所には、嵌合凹部127を設けている。
【0024】
ハウジング107は、前部に円筒部107aを有し、後部に角筒部107bを有するもので、そのうちの円筒部107aの内周部に、前記ボディ104の連結孔121と対応する連結突起128と、前記回路基板106の嵌合凹部127と対応する嵌合凸部129とを設けている。又、このハウジング107の角筒部107bの内部には、図1に示すように接続端子130を必要数設けると共に、前記回路基板106との電気接続に供する接続導体(図示せず)を内蔵する接続部131を設けている。接続端子130には図示しない相手コネクタの雌側接続端子を嵌合接続するようになっている。
【0025】
プーリ108は、前記ロータ105とほゞ同じ大きさのリング状を成すもので、要するに内部に空洞部108aを有する中空状のものであり、前部の周囲部にロータ105の前記係合孔122と対応する被係合部たる係合突起132を有している。又、このプーリ108は、外周部にケーブル掛け溝133を有しており、このケーブル掛け溝133に図1に示すケーブル134を掛けている。そのほか、このプーリ108は、後部に次に述べるプーリケース109との連結に供する連結部135を有している。
【0026】
プーリケース109は、プーリ108より大きいリング状を成すもので、これも又、要するに内部に空洞部109aを有する中空状のものであり、この空洞部109aと外周部との間の中間部に環状のプーリ支え部109bを有している。
【0027】
以上の構成で、図1に示すように、プッシュボタン103の前面に表示パネル102を貼付け、このプッシュボタン103をダイヤル101に挿入している。次いで、ダイヤル101にはボディ104を挿入し、このボディ104の凹条120をプッシュボタン103の突条116に嵌合して、大円筒部104aをプッシュボタン103に挿入している。又、このとき、ボディ104の連結突起119をプッシュボタン103の連結孔115に係合させて、プッシュボタン103及び表示パネル102を回り止めするようにしている。
【0028】
一方、ハウジング107の円筒部107aには回路基板106を挿入して、嵌合凸部129に回路基板106の嵌合凹部127を嵌合することにより、ハウジング107に回路基板106を装着し回り止めするようにしている。このとき、回路基板106に実装したスイッチ124と発光体125,126は、ハウジング107の接続部131によって接続端子130に接続される。従って、これら回路基板106とハウジング107は電装部材たるものである。
【0029】
この後、ハウジング107の円筒部107aにロータ105を被嵌し、その上で、ハウジング107の円筒部107aをボディ104の小円筒部104bに被嵌して、連結突起128を前記ボディ104の連結孔121に係合させ、回り止めするようにしている。又、ロータ105をダイヤル101の後部に挿入して、係合突起123をダイヤル101の係合孔111に係合させることもしており、その結果、ダイヤル101の周囲部に係合部(係合孔122)が設けられた構成ともしている。
【0030】
更に、プーリケース109のプーリ支え部109bをプーリ108の連結部135に被合し、その上で、プーリケース109の空洞部109aをハウジング107の角筒部107bに嵌合することによって、電装部材(ハウジング107)がプーリケース109の空洞部109a及びプーリ108の空洞部108aに挿入して設けられた構成としている。
【0031】
そして、ロータ105の係合孔122にはプーリ108の係合突起132を挿入して係合させている。
なお、図示を省略するが、プーリケース109からは、プーリ108に掛けたケーブル134を導出し、その先端部を車両の車室内に供給される空気の温度を調節するための図示しないダンパに取付けている。
【0032】
上述のように構成したものの場合、ダイヤル101を操作者が手で持って指示部110により表示パネル102の表示112のいずれかを指示するように回転操作すれば、ダイヤル101の係合孔111とロータ105の係合突起123との係合部分を介して、ロータ105が回転し、そして、そのロータ105の係合孔122(ダイヤル101の周囲部に設けられた係合部)とプーリ108の係合突起132(被係合部)との係合部分を介してプーリ108が回転されることにより、プーリ108にダイヤル101の回転が伝達される。従って、プーリ108はダイヤル101の回転が伝達される被回転体であり、この被回転体であるプーリ108が回転されることにより、ケーブル134が巻き引かれ、該ケーブル134の先端部に取付けた図示しないダンパが動かされて、車両の車室内に供給される空気の温度が設定される。表示112は発光体126で照明される。
【0033】
又、表示パネル102の前面からプッシュボタン103を押し込み操作すると、突条116がボディ104の凹条120にガイドされつつ該プッシュボタン103が後方に移動し、その移動により、スイッチ操作突起117で回路基板106前面のスイッチ124を押圧して図示しないエアコンを作動させる。更に、そのとき、発光体125が発光して、その光がプッシュボタン103の透光性を有する前壁から表示パネル102の透光窓114を透過して前面に現れ、上記エアコンの作動を表示する。なお、プッシュボタン13の押し込み操作を解除すると、スイッチ124の復元力で、プッシュボタン103が戻される。
【0034】
上述のように本構成の操作装置によれば、ダイヤル101の操作は、ダイヤル101の係合部である係合孔122とプーリ108(被回転体)の被係合部である係合突起132との係合部分を介してプーリ108に直に伝達されるので、従来の複数段のギヤの噛合を介したもののようなガタによる不具合が出ず、操作感を向上することができる。又、その従来のギヤを廃止できることで、全体の小形化ができると共に、コストの低廉化ができる。加えて、ギヤを廃止できることと、上記ダイヤル101の係合孔122及びプーリ108の係合突起132をともにダイヤル101及びプーリ108のそれぞれ周囲部に設けたことでプーリ108には中空状のものを使用でき、その空洞部108aにハウジング107の角筒部107b(電装部材)を挿入して設けたことで、ハウジング107の角筒部107bを装置の中心部に配設でき、全体の一層の小形化ができる。
【0035】
なお、ダイヤル101の係合部は係合孔122から係合突起132に変え、プーリ108(被回転体)の被係合部を係合突起132から係合孔122に変えて実施するようにしても良い。又、ダイヤル101の係合部はダイヤル101に直に設けて実施するようにしても良い。更に、被回転体はプーリ108以外のものに変えて実施するようにしても良い。加えて、プッシュボタン103を具えずに実施するようにしても良い。
そのほか、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0036】
図面中、101はダイヤル、107はハウジング(電装部材)、108はプーリ(被回転体)、108aは空洞部、122は係合孔(係合部)、132は係合突起(被係合部)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲部に係合部が設けられたダイヤルと、
中空状を成し、周囲部に前記ダイヤルの係合部に係合される被係合部が設けられ、その係合部分を介して前記ダイヤルの回転が伝達される被回転体と、
この被回転体の空洞部に挿入して設けられた電装部材と、
を具備して成ることを特徴とする操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−210910(P2012−210910A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78654(P2011−78654)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】