説明

操業分析装置、操業分析方法、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】操業因子により品質データのばらつきが変化するプロセスにおいて品質データのばらつきが大きくなる操業因子の値の範囲を効率よく見出すことが可能な操業分析装置を提供する。
【解決手段】本発明の操業分析装置は、操業因子データおよび品質データが入力されるデータ入力部と、操業因子空間を分割する分割候補点を複数設定する操業因子空間分割部と、分割候補点で分割された操業因子空間の各局所領域について、品質データを確率変数とする確率密度関数を用いて局所領域におけるばらつき指標を算出する確率密度関数算出部と、各局所領域について算出されたばらつき指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、操業因子空間を確定分割する最大ばらつきモデル選択部と、確定分割された操業因子空間の局所領域について再分割の要否を判定する再分割対象領域判定部と、解析結果を表示させる解析結果表示部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操業分析装置、操業分析方法、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関し、特に、操業結果として品質が決まるプロセス全般において、複数の操業因子と品質のばらつきとの関係性を明らかにすることによって、操業改善を必要とされる製造条件・操業条件を効率よく見出すために用いられる操業分析装置、操業分析方法、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
操業結果として品質が決まるプロセスにおいて、複数の操業因子と品質のばらつきとの関係性を明らかにすることは、改善の必要な製造条件や操業条件を効率的に見出すために有効な手段である。品質のばらつきは製造条件や操業条件によって生じるが、領域依存性が高く、ばらつきが操業因子空間のどの領域において生じているかを抽出することは、効率的な操業改善につながる。
【0003】
操業因子空間を分割して生成された領域を考慮した操業解析手法として、例えば特許文献1、2のような手法が提案されている。特許文献1には、操業因子空間を分割して、各局所領域における操業データと品質データとの関係式を構築し、操業データと品質データとの関係を明らかにする操業分析装置が開示されている。また、特許文献2には、与えられた層別で操業因子空間を分割し、各局所領域における品質データの確率密度関数を求めて、確率密度に基づく品質指標を算出し、操業因子を品質影響度の大きいものから並べることにより、品質指標への影響の大きい操業因子を抽出しやすくする操業分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−151383号公報
【特許文献2】特開2008−146621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の手法は、操業条件に対してどのような品質結果となるかといった操業データと品質データとの因果関係を知るための操業解析手法であり、ある操業条件で操業した際に、どの領域において品質のばらつきが大きくなっているかといったばらつきそのものを知るための手法ではなかった。
【0006】
操業因子の分け方が所与であれば、例えば等分散の検定などの一般的な統計検定手法を用いて品質のばらつきの大小を評価することができる。従来は、操業知見等に基づき、製造条件、操業条件を層別して、グラフ化したり、総計検定手法を用いたりする等して、品質のばらつきの大きい領域を抽出していた。
【0007】
しかしながら、製造条件、操業条件の数が多くなり、様々な品種を抽出するために各操業因子の層別が細かくなってくると、それらの組合せにより領域の分割方法が膨大となってしまう。このため、人手に頼る解析手法では、時間もかかり、また試行錯誤的になるため、人によって適切な結果が得られるとは限らなくなる。したがって、体系的に操業領域に依存したばらつきの大きさを解析して、最もばらつきの大きい領域を抽出する装置が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、操業因子により品質データのばらつきが変化するようなプロセスにおいて、操業改善を必要とされる、品質データのばらつきが大きくなる操業因子の値の範囲を効率よく見出すことが可能な、新規かつ改良された操業分析装置、操業分析方法、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、製造プロセスにおいて、品質データのばらつきを解析する操業分析装置が提供される。かかる操業分析装置は、操業因子データおよび品質データが入力されるデータ入力部と、操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する操業因子空間分割部と、分割候補点で分割された操業因子空間の各局所領域について、品質データを確率変数とする確率密度関数を用いて、局所領域における品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出する確率密度関数算出部と、各局所領域について算出されたばらつき指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、確定分割点により操業因子空間を確定分割する最大ばらつきモデル選択部と、最大ばらつきモデル選択部により確定分割点にて確定分割された操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定部と、操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示部と、を備え、再分割対象領域判定部により再分割が必要と判定された局所領域に対して、操業因子空間分割部による分割候補点設定と、確率密度関数算出部によるばらつき指標算出と、最大ばらつきモデル選択部による確定分割と、再分割対象領域判定部による再分割の要否判定とを繰り返すことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、操業因子空間を各操業因子により分割し、分割された各局所領域について確率密度関数をあてはめて品質のばらつきを評価する。これにより、品質のばらつきの大きい領域が切り出され、品質のばらつきの大きい製造条件、操業条件の範囲を効率よく見出すことができる。
【0011】
ここで、操業因子空間分割部は、局所領域の再分割時に、ばらつき指標が所定の閾値以上である局所領域を分割対象から除外してもよい。
【0012】
また、ばらつき指標は、例えば確率密度関数の累積確率が予め設定された値であるときの確率変数値と確率分布の最頻値との差分で表すことができる。
【0013】
さらに、操業因子空間分割部は、操業因子空間を、分割候補点において、それぞれ2つの局所領域に分割してもよい。
【0014】
さらに、確率密度関数算出部は、分割候補点で分割された局所領域のうち少なくともいずれか一方の局所領域に属するデータ点数が基準値未満となるとき、当該分割候補点を候補から除外してもよい。
【0015】
さらに、再分割対象領域判定部は、操業因子空間の分割回数が所定数となったとき、分割処理を終了するようにしてもよい。
【0016】
また、操業因子空間分割部は、局所領域の再分割時において、操業因子空間分割部により設定された分割候補点のうち分割しようとする局所領域の領域外となる分割候補点を候補から除外してもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、製造プロセスにおいて、品質データのばらつきを解析する操業分析方法が提供される。かかる操業分析方法は、操業因子データおよび品質データが入力される入力ステップと、操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する分割候補点設定ステップと、分割候補点で分割された操業因子空間の各局所領域について、確率密度関数を用いて、局所領域における品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出するばらつき指標算出ステップと、各局所領域について算出されたばらつき指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定する確定分割点決定ステップと、確定分割点により操業因子空間を確定分割する確定分割ステップと、確定分割点にて確定分割された操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割判定ステップと、操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示ステップと、を含み、再分割判定ステップにより再分割が必要と判定された局所領域に対して、分割候補点設定ステップ、ばらつき指標算出ステップ、確定分割点決定ステップ、確定分割ステップ、および再分割判定ステップが繰り返されることを特徴とする。
【0018】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、操業因子データおよび品質データが入力されるデータ入力手段と、操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する操業因子空間分割手段と、分割候補点で分割された操業因子空間の各局所領域について、確率密度関数を用いて、局所領域における品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出する確率密度関数算出手段と、各局所領域について算出されたばらつき指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、確定分割点により操業因子空間を確定分割する最大ばらつきモデル選択手段と、最大ばらつきモデル選択手段により確定分割点にて確定分割された操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示手段と、を備え、再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、操業因子空間分割手段による分割候補点設定と、確率密度関数算出手段によるばらつき指標算出と、最大ばらつきモデル選択手段による確定分割と、再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返すことを特徴とする、操業分析装置として機能させるためのコンピュータプログラムが提供される。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータに、操業因子データおよび品質データが入力されるデータ入力手段と、操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する操業因子空間分割手段と、分割候補点で分割された操業因子空間の各局所領域について、確率密度関数を用いて、局所領域における品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出する確率密度関数算出手段と、各局所領域について算出されたばらつき指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定し、確定分割点により操業因子空間を確定分割する最大ばらつきモデル選択手段と、最大ばらつきモデル選択手段により確定分割点にて確定分割された操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示手段と、を備え、再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、操業因子空間分割手段による分割候補点設定と、確率密度関数算出手段によるばらつき指標算出と、最大ばらつきモデル選択手段による確定分割と、再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返すことを特徴とする、操業分析装置として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、操業因子により品質データのばらつきが変化するようなプロセスにおいて、操業改善を必要とされる、品質データのばらつきが大きくなる操業因子の値の範囲を効率よく見出すことが可能な操業分析装置、操業分析方法、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る操業分析装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】同実施形態に係る操業分析装置による分析方法を示すフローチャートである。
【図3】操業因子空間の領域分割決定方法を示す説明図である。
【図4】操業因子空間の領域再分割方法を示す説明図である。
【図5】熱間圧延ラインの概略を示す説明図である。
【図6】材料の波高さhを示す説明図である。
【図7】厚板平坦度指標による操業因子空間の分割実行結果の決定木を示す説明図である。
【図8A】厚板平坦度指標による操業因子空間の分割実行結果(領域1〜3)を示す表である。
【図8B】厚板平坦度指標による操業因子空間の分割実行結果(領域4〜6)を示す表である。
【図8C】厚板平坦度指標による操業因子空間の分割実行結果(領域7〜10)を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
[1.操業分析装置による操業分析方法の概要]
はじめに、本実施形態に係る操業分析装置による操業分析方法の概要を説明する。本実施形態に係る操業分析装置は、様々な製造条件・操業条件の下での大量の操業データから、品質のばらつきが大きく、改善を必要とする製造条件・操業条件(操業因子の範囲)を抽出するために、各操業因子による空間分割を行い、改善を必要とする製造条件・操業条件(操業因子の範囲)を見出す装置である。この際、分割された領域内の品質データの期待値や中央値、最頻値等の代表値ではなく、確率分布に着目し、ばらつきの指標を評価基準として、ばらつきの大きくなる分割領域の選択を繰り返して行う。これにより、本実施形態にかかる操業分析装置では、品質データの代表値に影響しにくい品質のばらつきを見落とさずに、ばらつきの大きい領域を的確に抽出することが可能となる。以下、操業分析装置の構成と、これによる操業分析方法について、詳細に説明していく。
【0024】
[2.操業分析装置の構成]
まず、図1に基づいて、本発明の実施形態に係る操業分析装置100の構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係る操業分析装置100の構成を示す機能ブロック図である。
【0025】
本実施形態に係る操業分析装置100は、図1に示すように、データ入力部101と、操業因子空間分割部102と、確率密度関数算出部103と、最大ばらつきモデル選択部104と、再分割対象領域判定部105と、解析結果表示部106とを備える。
【0026】
データ入力部101には、データ蓄積部(図示せず。)より、解析対象となる操業因子データおよび品質データが入力される。データ入力部101は、入力された操業因子データおよび品質データを、操業因子空間分割部102へ出力する。
【0027】
操業因子空間分割部102は、データ入力部101から入力された操業因子データについて、各操業因子についての分割候補点を設定する。操業因子空間分割部102は、操業因子の分割候補点を、例えば離散データにおいては離散するデータの取り得る値の中間値としたり、データを一定間隔で分割する点としたり、一定データ数の間隔で分割する点としたりして、決定することができる。また、分割候補点は、操業知見によって決定することもでき、これらの組合せによって決定することもできる。また、操業因子空間分割部102は、分割候補点が分割対象である局所領域内にあるかを判定して、後述する確率密度関数の算出対象としない分割点を分割候補点から除外する。そして、分割候補点を決定すると、操業因子空間分割部102は、確率密度関数算出部103に対して、分割候補点で分割された各領域の確率密度関数を算出させる。
【0028】
確率密度関数算出部103は、各操業因子の各分割候補点で操業因子空間を複数に分割して複数の局所領域を設定し、各局所領域それぞれに操業因子値が属する品質データに対して確率密度関数をあてはめる。本実施形態では、操業因子空間を2分割する場合について説明する。そして、確率密度関数算出部103は、各局所領域について、確率密度関数に基づき局所領域における品質のばらつきを表すばらつき指標をそれぞれ算出する。これにより、各局所領域における品質のばらつきを把握することが可能となる。
【0029】
最大ばらつきモデル選択部104は、確率密度関数算出部103により算出された各局所領域のばらつき指標に基づいて、ばらつき指標が最大となる局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として採用する。そして、最大ばらつきモデル選択部104は、採用した確定分割点での操業因子空間の分割処理を行う。
【0030】
再分割対象領域判定部105は、最大ばらつきモデル選択部104の確定分割処理により得られた2つの局所領域に対して、さらに局所領域に分割する再分割処理の実行が必要か否かを判定する。再分割処理の実行の要否は、例えば、局所領域内のばらつき指標が閾値よりも小さいとき、あるいは、領域分割深さ(領域を局所領域に分割した回数)が所定値以下であるときに領域を再分割する、等の再分割条件に基づき判定される。再分割対象領域判定部105は、再分割条件を満たす場合には、操業因子空間分割部102に対してさらに領域分割を行うように指示する。一方、再分割条件を満たしていない場合には、再分割対象領域判定部105は、分割処理を終了し、解析結果表示部106へ解析結果を出力する。
【0031】
解析結果表示部106は、再分割対象領域判定部105から出力された解析結果を表示させる。解析結果表示部106は、最終的に得られた操業因子空間の局所領域毎の操業因子の範囲、データ数、ばらつき指標、ヒストグラム等の解析結果を、例えばディスプレイ等の表示装置(図示せず。)に表示させる。
【0032】
[3.操業分析方法]
次に、上述した操業分析装置100による操業分析方法を、図2〜図4に基づき説明する。なお、図2は、本実施形態に係る操業分析装置100による分析方法を示すフローチャートである。図3は、操業因子空間の領域分割決定方法を示す説明図である。図4は、操業因子空間の領域再分割方法を示す説明図である。
【0033】
本実施形態に係る操業分析装置100による処理は、図2に示すように、まず操業因子データおよび品質データがデータ入力部101に入力されることにより開始される(ステップS100)。操業因子データは、複数(p個)のデータ(u,u,・・・,u)からなり、これらは連続値、離散値のいずれであってもよい。以下では、p個の操業因データをまとめてp次元ベクトルu=(u,u,・・・,u)と表現する。データ入力部101には、全体でN個の操業因子データu,u,・・・,uが入力されるとする。一方、品質データyは、N個の操業因子データu,u,・・・,uに対応して取得されている(y,y,・・・,y)とし、これらも連続値、離散値のいずれであってもよい。品質データyは確率変数とみなされ、その確率密度関数は操業因子による空間の領域に依存して決定されるものとする。
【0034】
データ入力部101に操業因子データおよび品質データが入力されると、操業因子空間分割部102は、操業因子データuを構成する各操業因子(u,u,・・・,u)の分割候補点を作成する(ステップS102)。分割候補点は、例えば、操業知見に基づき決定することもでき、また、離散データの場合にはデータの取り得る値の中間値としたり、一定間隔でデータを分割する値に設定したり、一定データ数間隔でデータを分割する値に設定したり、あるいはこれらの組合せによっても決定することができる。各操業因子(u,u,・・・,u)に対し分割候補点がそれぞれm,m,・・・,m個であったとすると、すべての分割候補点数は、下記数式1により表される。
【0035】
【数1】

・・・(数式1)
【0036】
一例として、2つの操業因子(u,u)からなる操業因子空間において分割候補点を設定した場合を考える。操業知見や取り得る値の中間値とする等の方法を用いて分割候補点を設定したとき、例えば図3に示すように、操業因子uについて3つの分割候補点u11,u12,u13が、操業因子uについては2つの分割候補点u21,u22が設定されたとする。したがって、かかる操業因子空間に設定された分割候補点の総数は5つとなる。
【0037】
操業因子空間分割部102により分割候補点が設定されると、確率密度関数算出部103は、操業因子空間を各操業因子の各分割候補点で2分割する(ステップS108)。なお、ステップS104およびS106の処理については、操業因子空間の分割が2回目以降である場合に行われる処理であり、これらの処理については後述することにする(段落0059〜0063)。ステップS108で行われる分割は正式な分割点(確定分割点)を決定するための仮の分割である。図3の例では、確率密度関数算出部103は、操業因子空間を分割候補点u11、u12、u13、u21、u22でそれぞれ2分割して、分割候補1−1〜1−5を作成する。
【0038】
次いで、確率密度関数算出部103は、各分割候補1−1〜1−5について、分割して得られた2つの局所領域のいずれかに属するデータ点数が基準値以上であるか否かを判定する(ステップS110)。局所領域に属するデータ点数が基準値より少ない場合には、確率密度関数をあてはめても精度が低いため、ステップS110では、確率密度関数のあてはめを行わない分割候補を外す処理を行っている。なお、基準値は、例えば10〜100程度の数に設定するのがよく、全体のデータ数が多い場合にはデータ数の数パーセント程度の値に設定してもよい。
【0039】
ステップS110で局所領域に属するデータ点数が基準値より少ないと判定した分割候補については、確率密度関数算出部103は、確率密度関数のあてはめは行わず、ステップS118の処理を実行する。一方、局所領域に属するデータ点数が基準値以上であると判定した分割候補については、確率密度関数算出部103は、確率密度関数のあてはめを行う(ステップS112)。
【0040】
ステップS112では、各分割候補について、分割された2つの局所領域それぞれに操業因子ベクトルが属する品質データyに対して確率密度関数f(y;β)をあてはめる。ここで、βは確率密度関数fのパラメータ(以下、「確率パラメータ」とも称する。)である。βは確率密度関数によって1または複数の確率パラメータからなるが、ここではこれらをまとめて表現している。
【0041】
確率密度関数の例としては、正規分布、対数正規分布、指数分布等がある。例えば、正規分布の確率密度関数は、下記数式2で表される。
【0042】
【数2】

・・・(数式2)
【0043】
この場合、確率密度関数fの確率パラメータは、平均μおよび標準偏差σの2つである。したがって、これらの2つの確率パラメータをまとめてβ=(μ、σ)と表現する。また、expは指数関数を表す。
【0044】
また、例えば、対数正規分布の確率密度関数は、下記数式3で表される。
【0045】
【数3】

・・・(数式3)
【0046】
この場合、確率密度関数fの確率パラメータは、対数平均μ´および対数標準偏差σ´の2つである。したがって、これらの2つの確率パラメータをまとめてβ=(μ´、σ´)と表現する。また、lnは自然対数を表す。
【0047】
さらに、例えば、指数分布の確率密度関数は、下記数式4で表される。
【0048】
【数4】

・・・(数式4)
【0049】
この場合、確率密度関数fの確率パラメータはλである。確率パラメータは1つであるが、他の確率密度関数と同様に、β=λと表現される。
【0050】
なお、本実施形態では、対数正規分布の確率密度関数を用いている。確率密度関数の確率パラメータβは、対象となる領域Mに属する操業因子ベクトルu=(ui1,ui2,・・・,uip)に対応する品質データ{y|u∈M}を用いて、統計確率手法により決定することができる。統計確率手法には、例えば最尤法がある。確率パラメータβは、領域Mごとに決定されるので、βと表現することができる。
【0051】
局所領域に対して確率密度関数のあてはめがされると、確率密度関数算出部103により各局所領域についてのばらつき指標が算出され、最大ばらつきモデル選択部104により各局所領域についてばらつき指標の評価がなされる(ステップS114)。ばらつき指標は、領域に含まれる品質データのばらつきの度合いを示す指標であって、本実施形態では、確率密度関数より得られる「累積確率90%の値−確率分布の最頻値」(これを「F‐M値」とも称する。)をばらつき指標として用いる。例えば、図3に示す、確率密度関数の累積確率90%の値yと確率分布の最頻値yとの差分がF‐M値(ばらつき指標)Vとなる。
【0052】
本実施形態では、「累積確率90%の値−確率分布の最頻値」をF‐M値として規定しているが、ばらつき指標としては、上記累積確率を70%〜95%の間に設定してもよい。累積確率を95%より大きくすると、異常値を含む可能性が高く、異常値を除いた上で品質データのばらつきを評価するための適正な範囲を規定することができない。一方、累積確率を70%より小さくすると、本来の品質データのばらつきの評価をすることができない。これより、70%〜95%の間で予め設定された累積確率の値と確率分布の最頻値との差分をばらつき指標として設定することも可能である。
【0053】
また、ばらつき指標としては、F‐M値以外にも、例えば、「累積確率90%の値‐累積確率50%の値」や、「累積確率80%の値‐累積確率20%の値」、「累積確率90%の値‐累積確率10%の値」等より導かれる値といったように、ばらつきの大きい領域を見落とさないように設定された確率分布の範囲を設定することができる。また、ばらつき指標として、標準偏差を用いることも可能である。
【0054】
確率密度関数算出部103は、このような手法により各局所領域のばらつき指標を算出する。そして、最大ばらつきモデル選択部104は、各局所領域について算出されたばらつき指標のうち、ばらつき指標が最大であった局所領域を生成する分割候補点を確定分割点として決定する。
【0055】
なお、本実施形態では、ステップS106〜S116の処理を、分割候補毎に実施している。このため、ステップS114では、1つの分割候補についてのばらつき指標が算出されると、それ以前に算出された分割候補のばらつき指標のうち最大のものと比較し、ばらつき指標が大きい方の分割候補点でのデータを分割候補点データとして保存しておく。このとき、分割候補点、確率パラメータ、F‐M値等が分割データとして保存される。そして、すべての分割候補点についての判定を終えたとき、ばらつき指標が最大であった分割候補点が確定分割点として採用される。
【0056】
ばらつき指標がそれ以前に算出されたばらつき指標の最大値より小さい場合には、当該分割候補点における分割データは保存せず、ステップS118の処理へ進む。一方、ばらつき指標がそれ以前に算出されたばらつき指標の最大値以上である場合には、当該分割データをメモリ(図示せず。)に保存する(ステップS116)。そして、最大ばらつきモデル選択部104は、全操業因子の全分割候補点についてステップS106〜S116の処理を実行したか否かを判定する(ステップS118)。全操業因子の全分割候補点についてステップS106〜S116の処理が終了していなければ、ステップS106に戻り、処理を繰り返す。一方、全操業因子の全分割候補点についてステップS106〜S116の処理が終了している場合には、確定分割点において局所領域を確定分割する領域分割処理を実行する(ステップS120)。
【0057】
ステップS104〜S120の処理は、分割対象である全領域について行われる(ステップS122)。初回の操業因子空間の分割のときには、分割対象となる領域は1つしかないため、ステップS122の判定処理は必ずYESとなる。一方、2回目以降の操業因子空間の分割のときには、ステップS122において、直前の回で決定された確定分割点で操業因子空間を分割することにより生成した2つの局所領域それぞれについて、ステップS104〜S120の処理を実行したかを判定している。
【0058】
例えば、図4において、直前の回で操業因子uの値u13が確定分割点として決定されたとき、操業因子空間は局所領域A、Aの2つに確定分割される。そして、分割深さが1増加され、次の領域の確定分割点を決定する際には、局所領域A、AそれぞれについてステップS104〜S120の処理が実行される。なお、図4の例では、局所領域Aについては、ばらつき指標が閾値以上であるため分割対象から除外されるので、実際はステップS104の処理のみが実行されることになる。
【0059】
ステップS122において、全局所領域についてステップS104〜S120の処理が実行されていないと判定されればステップS104に戻り、処理を繰り返す。一方、全局所領域についてステップS104〜S120の処理が実行されたと判定された場合には、分割深さを1増加して(ステップS124)、領域分割深さが最大分割深さに到達したか否かが判定される(ステップS126)。ステップS126は、図2に示す分割処理を終了するか否かを判定する処理である。最大分割深さは、初期値を10程度として、得られた結果に応じて順次増加させるのが適当である。
【0060】
ここで、ステップS126にて、領域分割深さが最大分割深さに到達しておらず、分割処理をさらに実施すると判定された場合には、ステップS104以降の処理を行う。すなわち、操業因子空間の分割が2回目以降である場合(局所領域の再分割の場合)、領域のばらつき指標が閾値より小さい局所領域すべてを分割対象とする(ステップS104)。本実施形態では、ばらつき指標としてF‐M値を用いている。品質のばらつきを大きくする製造条件・操業条件のデータ数が比較的少なかったり、品質のばらつきが大きくなる確率が比較的小さい場合には、操業因子空間の中の広い領域の中では品質ばらつきの大きいデータが全体に埋もれてしまい、ばらつき指標にも表れてこないことがある。このため、ばらつき指標が閾値より小さい局所領域の中にも、品質のばらつきの大きい領域が含まれている可能性が考えられる。そこで、ばらつき指標が閾値より小さい局所領域については、領域を再分割することにより、品質のばらつきの大きい領域を切り出していく。
【0061】
ばらつき指標の閾値としては、例えば、データ全体のばらつき指標の1.2〜2.0倍程度を設定することができ、結果として得られた領域がまだ大きく、操業改善の検討を行うには製造条件・操業条件の絞り込みが十分ではないようであれば、閾値を大きくしてより製造条件・操業条件が絞り込まれた領域が得られるように調整する。ステップS104にてばらつき指標が閾値より小さいと判定された場合には当該局所領域を分割対象とし、ステップS106の処理へ進む。一方、ばらつき指標が閾値以上であると判定された場合には、ステップS122の処理を実行する。
【0062】
例えば、図4に示すように、操業因子空間が操業因子uの値u13で確定分割されたとする。生成された2つの局所領域それぞれについて確率密度関数を算出し、ばらつき指標(F‐M値)を求めたとき、局所領域Aのばらつき指標は閾値より小さく、局所領域Aのばらつき指標は閾値以上であったとすると、局所領域Aは再分割対象となり、局所領域Aの分割は終了となる。
【0063】
また、局所領域の再分割の場合には、操業因子空間分割部102は、ステップS102で作成された分割候補点がステップS104にて分割対象とされた局所領域の領域内に設定されているか否かを判定する(ステップS106)。分割対象の局所領域外に設定された分割候補点で領域を分割しても領域は分割されないため、このような分割候補点を除外するためである。
【0064】
例えば、図4において、局所領域Aを再分割する場合では、操業因子uの分割候補点u13が除外される点となる。そこで、ステップS106にて分割対象である局所領域内に存在しない分割候補点は除外し、ステップS118の処理を実行する。一方、領域内に設定されている分割候補点はそのまま分割候補点とする。したがって、初回の分割候補点はM個であるが、再分割時の分割候補点は初回よりも少なくなる。図4の例では、4つの分割候補点により局所領域Aは再分割され、分割候補2−1〜2−4が作成される。
【0065】
このように局所領域の再分割の場合には、ステップS104およびS106の処理を行った後、ステップS108以降の処理を実行する。一方、分割深さが最大分割深さに到達した場合には、再分割対象領域判定部105は、分析結果を解析結果表示部106に出力し(ステップS128)、分割処理を終了する。解析結果表示部106は、分析結果として、例えば、最終的に得られた操業因子空間の局所領域毎に、操業因子の範囲、データ数、ばらつき指標、ヒストグラム等を、表示装置に表示させる。このとき、品質データのばらつきの大きい、あるいは異常な分布となっている領域のみを表示させるようにしてもよく、このような領域を強調して表示させるようにしてもよい。
【0066】
以上、本実施形態に係る操業分析装置100の構成と、これによる操業分析方法について説明した。本実施形態によれば、操業因子空間を各操業因子により分割し、分割された各局所領域について確率密度関数をあてはめて品質のばらつきを評価する。これにより、品質のばらつきの大きい領域が切り出され、品質のばらつきの大きい製造条件、操業条件の範囲を効率よく見出すことができる。このように抽出された品質のばらつきの大きい領域の品質改善に集中的に取り組むことにより、効率的な操業改善につながる。
【0067】
また、品質のばらつきを大きくする製造条件・操業条件のデータ数が比較的少なかったり、品質のばらつきが大きくなる確率が比較的小さい場合に、操業因子空間の中の広い領域の中で品質ばらつきの大きいデータが全体に埋もれてしまい、従来一般に用いられる品質データの平均値やばらつきなどの代表値があまり変化しないことがある。その様な場合にも、本実施形態によれば、操業改善を必要とされる、品質データのばらつきが大きくなる操業因子の値の範囲を効率よく見出すことが可能である。
【実施例】
【0068】
以下、図5〜図8Cに基づき、実施例として、鉄鋼プロセスの熱間圧延プロセスを対象とした、圧延機出側における板の平坦度データの解析例を示す。圧延ライン200は、例えば図5に示すように、連続鋳造されたスラブが搬入されるスラブヤード210と、スラブヤード210から搬送されたスラブを加熱する加熱炉220と、加熱されたスラブを圧延する圧延機230と、圧延されたスラブを冷却する冷却装置240と、さらにスラブを自然冷却する冷却床250と、を備える。冷却されたスラブは、精整ライン260に搬送されて、製品サイズに切断、検査をされて出荷される状態となる。
【0069】
ここで、精整ライン260に搬送された材料の平坦度が規格外であると、矯正機262による矯正処理が必要となり、生産性やコストに悪影響を及ぼすことになる。したがって、材料の平坦度をなるべく小さくすることが要求される。平坦度は、製品の製造条件や操業条件によって変動するが、同一の条件であっても品質のよいケースと悪いケースとがある。さらに、様々な品種・製品サイズを製造しているため、効率よく品質を改善するためには、大量の操業データから品質のばらつきの大きい製造条件や操業条件を見つけ出し、改善コストの大きい対象に注力することが有効である。
【0070】
従来は、人手で上記条件を層別して品質データを解析していたが、多大な時間がかかり、試行錯誤に依存するため、品質のばらつきの大きい条件を見つけきるのは困難であった。このような圧延ライン200の圧延機230出側における板の平坦度データを本実施形態にかかる操業解析装置100を用いて解析し、品質のばらつきが大きくなる条件を見つけることとした。
【0071】
本実施例では、約28,000件の品質データを解析した。品質データは精整ライン260で計測された材料(スラブ)10の波高さh(図6参照)であり、操業因子としては以下の29の因子を用いた。
<品質データ>
波高さh(圧延方向、0.1mm単位)
<操業因子>
製品厚、製品幅、製品長、板取りコード、冷却パターン、成分C、成分Mn、成分Nb、成分B、変態温度、スラブ厚、スラブ幅、スラブ長、加熱条件、装入温度、加熱炉在炉時間、加熱時間、加熱温度、実績抽出温度、仕上総パス回数、水冷開始温度、水冷停止温度、水冷温度降下量、水量密度1〜6
【0072】
解析結果を図7〜図8Cに示す。図7は、鋼板平坦度指標による操業因子空間の分割実行結果の決定木を示す説明図である。図8A〜図8Cは、鋼板平坦度指標による操業因子空間の分割実行結果を示す表である。計算条件として、分割実行する決定木の最大分割深さを10とし、領域の最小データ個数は100とした。また分割実行領域のF‐M値の閾値は100、すなわち波高さ10mmとした。分割可能な領域はすべて分割し、異常値については除去するものとした。
【0073】
図7は、各領域分割深さにおいて操業因子空間を分割した分割点を示す決定木である。例えば、1回目の領域分割では操業因子「実水量密度1」が0.255となる分割点で分割されている。そして、F‐M値が閾値100以上の局所領域を領域1として切り出し、F‐M値が閾値100より小さい局所領域を2回目の領域分割での分割対象とする。同様に、領域分割を行い、分割処理の終了条件である最大分割深さが10となったときに操業分析を終了した。
【0074】
図7に示すように、分割に用いられた操業因子は、29因子のうち8因子であり、品質のばらつきに影響の大きい因子が抽出されている。約20,000件のデータを含む平坦度ばらつきの小さい適正な操業範囲の操業因子空間が、分割の結果最終的に残った領域10として抽出されている。一方、品質のばらつきの大きい操業因子空間領域が領域1〜9として分離されている。図8A〜図8Cにおいて、(*)を付記したのは、各領域を分割するのに用いられた操業因子である。
【0075】
領域1〜9の領域データ数は全データ数と比較すると小さいが、波高さhが大きくなる材料が見られる。これらの材料を詳細に解析することで品質改善につなげることができる。また、図8A〜図8Cのヒストグラムに見られるように、領域1〜9のいずれも、多くのデータは波高さhの小さい領域に集中しているため、通常の操業範囲である領域10と比べて、平均値など品質データの代表値の差は小さくなっている。このような領域は、品質データの代表値に着目するだけでは抽出することは難しく、確率分布に基づいてばらつき指標を設定したことで抽出できたものと考えられる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0077】
例えば、上記実施形態では、ステップS106〜S116の処理を分割候補毎に実施して、局所領域のばらつき指標が算出される度にそれ以前に算出されたばらつき指標と比較することで、ばらつき指標が最大となる分割候補点を特定したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、すべての分割候補点において分割して生成された局所領域について確率密度関数をそれぞれ当てはめて、すべての局所領域のばらつき指標を算出した後、ばらつき指標が最大となる分割候補点を特定してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、ステップS104〜S120で行われる空間分割処理は2分割のみであったが、3分割以上する分割方法を分割候補に加えてもよい。この場合、ステップS112における確率密度関数のあてはめは分割されたそれぞれの領域に対して行えばよい。
【0079】
本発明の実施形態に係る操業分析方法の各ステップは、専用または汎用のハードウェアにより実行させてもよいが、ソフトウェアにより実行させてもよい。上記各ステップをソフトウェアにより行う場合、汎用または専用のコンピュータにプログラムを実行させることにより、上記各ステップを実行することができる。ここで、上記コンピュータの構成としては、例えば上述した操業分析装置100の構成が挙げられる。また、上記コンピュータは、例えば、自装置が備える記憶手段や着脱可能な外部記録媒体に記録された上記プログラム、またはネットワークを介して取得された上記プログラムを実行することによって、上記各処理を実行することができる。さらに、上述した操業分析装置100は、1台のコンピュータで構成することも可能であるが、ネットワークを介して接続された複数のコンピュータで構成し、上記複数のコンピュータが、操業分析装置100の各構成機能を役割分担するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
100 操業分析装置
101 データ入力部
102 操業因子空間分割部
103 確率密度関数算出部
104 最大ばらつきモデル選択部
105 再分割対象領域判定部
106 解析結果表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プロセスにおいて、品質データのばらつきを解析する操業分析装置であって、
操業因子データおよび品質データが入力されるデータ入力部と、
前記操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する操業因子空間分割部と、
前記分割候補点で分割された前記操業因子空間の各局所領域について、前記品質データを確率変数とする確率密度関数を用いて、前記局所領域における前記品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出する確率密度関数算出部と、
前記各局所領域について算出された前記ばらつき指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定し、前記確定分割点により前記操業因子空間を確定分割する最大ばらつきモデル選択部と、
前記最大ばらつきモデル選択部により前記確定分割点にて確定分割された前記操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定部と、
前記操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示部と、
を備え、
前記再分割対象領域判定部により再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記操業因子空間分割部による分割候補点設定と、前記確率密度関数算出部によるばらつき指標算出と、前記最大ばらつきモデル選択部による確定分割と、前記再分割対象領域判定部による再分割の要否判定とを繰り返すことを特徴とする、操業分析装置。
【請求項2】
前記操業因子空間分割部は、前記局所領域の再分割時に、前記ばらつき指標が所定の閾値以上である前記局所領域を分割対象から除外することを特徴とする、請求項1に記載の操業分析装置。
【請求項3】
前記ばらつき指標は、前記確率密度関数の累積確率が予め設定された値であるときの確率変数値と確率分布の最頻値との差分で表されることを特徴とする、請求項1または2に記載の操業分析装置。
【請求項4】
前記操業因子空間分割部は、前記操業因子空間を、前記分割候補点において、それぞれ2つの局所領域に分割することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の操業分析装置。
【請求項5】
前記確率密度関数算出部は、前記分割候補点で分割された前記局所領域のうち少なくともいずれか一方の前記局所領域に属するデータ点数が基準値未満となるとき、当該分割候補点を候補から除外することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の操業分析装置。
【請求項6】
前記再分割対象領域判定部は、前記操業因子空間の分割回数が所定数となったとき、分割処理を終了することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の操業分析装置。
【請求項7】
前記操業因子空間分割部は、前記局所領域の再分割時において、前記操業因子空間分割部により設定された前記分割候補点のうち分割しようとする前記局所領域の領域外となる前記分割候補点を候補から除外することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の操業分析装置。
【請求項8】
製造プロセスにおいて、品質データのばらつきを解析する操業分析方法であって、
操業因子データおよび品質データが入力される入力ステップと、
前記操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する分割候補点設定ステップと、
前記分割候補点で分割された前記操業因子空間の各局所領域について、確率密度関数を用いて、前記局所領域における前記品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出するばらつき指標算出ステップと、
前記各局所領域について算出された前記ばらつき指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定する確定分割点決定ステップと、
前記確定分割点により前記操業因子空間を確定分割する確定分割ステップと、
前記確定分割点にて確定分割された前記操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割判定ステップと、
前記操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示ステップと、
を含み、
前記再分割判定ステップにより再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記分割候補点設定ステップ、前記ばらつき指標算出ステップ、前記確定分割点決定ステップ、前記確定分割ステップ、および前記再分割判定ステップが繰り返されることを特徴とする、操業分析方法。
【請求項9】
コンピュータを、
操業因子データおよび品質データが入力されるデータ入力手段と、
前記操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する操業因子空間分割手段と、
前記分割候補点で分割された前記操業因子空間の各局所領域について、確率密度関数を用いて、前記局所領域における前記品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出する確率密度関数算出手段と、
前記各局所領域について算出された前記ばらつき指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定し、前記確定分割点により前記操業因子空間を確定分割する最大ばらつきモデル選択手段と、
前記最大ばらつきモデル選択手段により前記確定分割点にて確定分割された前記操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、
前記操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示手段と、
を備え、
前記再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記操業因子空間分割手段による分割候補点設定と、前記確率密度関数算出手段によるばらつき指標算出と、前記最大ばらつきモデル選択手段による確定分割と、前記再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返すことを特徴とする、操業分析装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
操業因子データおよび品質データが入力されるデータ入力手段と、
前記操業因子データからなる操業因子空間をそれぞれが複数の局所領域に分割する分割候補点を複数設定する操業因子空間分割手段と、
前記分割候補点で分割された前記操業因子空間の各局所領域について、確率密度関数を用いて、前記局所領域における前記品質データのばらつきの度合いを表すばらつき指標を算出する確率密度関数算出手段と、
前記各局所領域について算出された前記ばらつき指標が最大となる局所領域を生成する前記分割候補点を確定分割点として決定し、前記確定分割点により前記操業因子空間を確定分割する最大ばらつきモデル選択手段と、
前記最大ばらつきモデル選択手段により前記確定分割点にて確定分割された前記操業因子空間の局所領域について、再分割の要否を判定する再分割対象領域判定手段と、
前記操業因子空間の局所領域の品質データのばらつきを示す解析結果を表示させる解析結果表示手段と、
を備え、
前記再分割対象領域判定手段により再分割が必要と判定された局所領域に対して、前記操業因子空間分割手段による分割候補点設定と、前記確率密度関数算出手段によるばらつき指標算出と、前記最大ばらつきモデル選択手段による確定分割と、前記再分割対象領域判定手段による再分割の要否判定とを繰り返すことを特徴とする、操業分析装置として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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