説明

操縦可能掘削システム

操作可能掘削システムは、上部部分22及びステアリング部分24を含むボトムホールアセンブリ18と、上部部分22の軸線に対するステアリング部分24の軸線の向きの調整を可能にするスイベル26と、ステアリング部分24を上部部分22に対して回転可能に駆動するように作動するダウンホールモーターと、上部部分22の軸線に対してステアリング部分24の軸線の向きを制御するように作動する複数のアクチュエーター34とを備え、アクチュエーター34はステアリング部分24及び上部部分22の一方に設けられ、高速滑り接触がアクチュエーター34とステアリング部分24及び上部部分22の他方との間に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、炭化水素の抽出でその後の使用のためのボーリングホールの形成用の操縦可能掘削システムに関する。
【背景技術】
【0002】
英国特許第2399121号明細書は、ボトムホールアセンブリが、その上部部分とステアリング部分の間に配置されたスイベルジョイント又はユニバーサルジョイントを有する操縦可能掘削システムを記載している。ダウンホールモーターが上部部分に配置され、ステアリング部分によって回転自在に担持されたドリルビットを駆動する。一連のピストンが上部部分に設けられ、ピストンは、上部部分の軸線に対してステアリング部分の軸線の角度を調整するように作動する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、簡単かつ簡便な形態のものであるこの一般的なタイプの操縦可能な掘削システムを提供することである。
【0004】
本発明によれば、上部部分及びステアリング部分を含むボトムホールアセンブリと、上部部分の軸線に対するステアリング部分の軸線の向きの調整を可能にするスイベルと、ステアリング部分を上部部分に対して回転駆動するように作動するダウンホールモーターと、上部部分の軸に対するステアリング部分の軸の方向を制御するように作動する複数のアクチュエーターと、を含み、アクチュエーターは、ステアリング部分及び上部部分の一方に設けられ、ステアリング部分及び上部部分の他方に対して作用するように構成されている操縦可能掘削システムを提供する。
【0005】
高速滑り接触が、アクチュエーターと、前記ステアリング部分及び上部部分の他方との間に形成されるのがよい。
高速滑り接触は、流体力学的ベアリングを形成し、それにより、アクチュエーター及び/又はこれとした接触した面の過度の磨耗を回避するのがよい。
【0006】
アクチュエーターは、好ましくは、例えば、掘削流体又は泥を用いて駆動されるように構成されたピストンを含む。流体は、ピストンの中を通って供給され、ピストンと、前記ステアリング部分及び上部部分の他方との間の接触を潤滑にするのがよい。
【0007】
これに代えて、アクチュエーターと、前記ステアリング部分及び上部部分の他方との間にころ軸受装置が設けられるのがよい。スイベルを中心とする上部部分に対するステアリング部分の角度移動に順応するように、柔軟な材料がベアリング装置に組み込まれるのがよい。
【0008】
ダウンホールモーターは、或る範囲の形態をとるのがよい。それは、例えば、流体又は泥用動力モーター、タービン、又は、電動モーターを含むのがよい。
本発明は、例示により、添付の図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による操縦可能掘削システムを有する掘削装置を示す。
【図2】図1の操縦可能掘削システムを示す図である。
【図3】他の構成を示す図(その1)である。
【図4】他の構成を示す図(その2)である。
【図5】他の構成を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す掘削装置は、地表配置装置14によって坑井12内に支持されたドリルストリング10を含む。ドリルストリング10は、一連のスタビライザー16及び他の構成要素を担持し、その下端がボトムホールアセンブリ18に連結され、且つ、これを支持している。地表配置装置14は、ドリルストリング10及びこれに固定された構成要素を回転させるように構成され、また、掘削流体20を、ドリルストリング10に沿って、ダウンホールに位置する構成要素へ供給するように構成されている。
【0011】
ボトムホールアセンブリ18が、図2により詳細に示されており、上部部分22及びステアリング部分24を含む。ユニバーサルジョイント26がステアリング部分24を上部部分22に連結している。ユニバーサルジョイント26により、ステアリング部分24の向きが、上部部分22に対して少なくとも±2°の角度で調整させる。上部部分22は、ダウンホールモーター(図示せず)を収容する。モーターは、ある範囲の形態を取るとよい。例えば、モーターは掘削流体又はマッド用モーター、タービン又は電動モーターからなるとよい。モーターのローターは、上部部分22を貫いて延び、上部部分22に対して回転できる出力シャフト28に連結され、シャフト28はダウンホールモーターからの回転駆動を、ユニバーサルジョイント26を通してステアリング部分24へ加える。ドリルビット30がステアリング部分24に連結される。ダウンホールモーターの作動により、ドリルビット30を上部部分22に対して回転駆動させることが認識できるだろう。
【0012】
使用中、上部部分22はドリルストリング10に固定され、これとともに回転可能である。掘削システムの操作は以下の通りである。ビット重量荷重がドリルストリングを介して上部部分22に加えられ、ビット重量荷重がユニバーサルジョイント26を介してステアリング部分24、そしてドリルビット30に伝達される。ダウンホールモーターの運転による、及び、ドリルストリング10の回転によるドリルビット30の回転とともに、ビット荷重が作用することにより、ビット30が、坑井12を形成している地層から物質を彫り、削り、さもなれば、除去し、かくして坑井12の長さを延ばす。
【0013】
複数のアクチュエーター34が上部部分22に設けられ、これらアクチュエーター34はステアリング部分24の一部と係合するように構成され、且つ、上部部分22の軸線に対してステアリング部分24の軸線の位置及び向きを制御するように作動できる。アクチュエーター34が、ドリルストリング10とともに回転できる上部部分22の一部に設けられ、アクチュエーター34がダウンホールモーターの作動によって駆動されるステアリング部分24の一部を圧迫するため、使用中、アクチュエーター34とステアリング部分24との間に高速滑り接触が存在する。高速滑り接触により、アクチュエーター34及びステアリング部分24の関連部分の磨耗を最小にするのに役立つ流体力学ベアリングを形成する。
【0014】
アクチュエーター34は、使用中、圧力下の流体が上部部分22に設けられた供給管36に沿って、供給される一連のピストンの形態をとる。供給管36に沿う流体の供給は、例えば、ダウンホールモーターの上方か下方に位置する回転バルブ又は一連の双安定アクチュエーターバルブを使用して、簡便に制御される。
【0015】
図示していないが、ボトムホールアセンブリ18は流路手段を有し、それにより、掘削流体をボトムホールアセンブリ18を通してドリルビット30に供給し、ドリルビットに形成された流路又はノズルから送出する。例えば、これは、流体をシャフト28に形成された流路に沿って、ユニバーサルジョイント26の中をステアリング部分24まで通る可撓性パイプを通して供給することにより達成されてもよい。このように供給された掘削流体は、切削された地層物質をドリルビット30から洗浄するのに役立ち、掘削流体及び切削された地層物質はドリルストリング10と坑井12の壁の間に形成された環状部を通じて坑井12に沿って地表又は他の好適な場所まで逆流する傾向があり、それにより、切削された地層物質をドリルビット30から運び去る。
【0016】
操縦は、英国特許第2399121号明細書に記載されているように、2つの異なる技術を用いて成し遂げるのがよい。一つの技術では、アクチュエーター34をドリルビット30のツール面を所望の向きに又は先端を所望の向きに保つように制御し、モーターを作動してドリルビット30を回転駆動させ、ビット加重負荷が前記したように加えられる。この操作の間、ドリルストリング10は連続的に又は間欠的に回転するのがよく、アクチュエーター34は、ステアリング部分24を所望の向きに確実に保持するため、連続的又は周期的な調整を要求することが予期されるだろう。坑井の比較的直線部分が要求される場合には、アクチュエーター34を作動してステアリング部分24及び上部部分22を互いに実質的に同軸に保持するのがよい。しかしながら、この操作モードでも、例えば、ドリルビット30が異なるタイプの地層材質の層の中を移動することにより、形成された坑井の部分は真の直線からずれるだろう。
【0017】
英国特許2399121号明細書に記載された装置では、スタビライザーが、上部部分及び/又はステアリング部分に設けられ、或いはそれらと関連しているため、スタビライザーの位置は、或る程度、用いることのできる操縦技術のタイプを決定する。スタビライザーがステアリング部分に設けられる場合には、スタビライザーは、ユニバーサルジョイントの中心位置の上方に、その位置に、又はその位置の下方に配設されるのがよい。
【0018】
上部部分22に対するステアリング部分24の角度の感知を可能にする角度センサー(図示せず)を設け、それにより、ビットが向けられる方向の測定を行うことができる。この情報は、フィードバックループに用いられ、掘削システムの操作を制御する。角度センサーは、例えば、ステアリング部分24に設けられたコイル及び上部部分24に設けられた非同一平面センサーからなる、或いは、その逆からなる誘導形態のものでもよい。
【0019】
ケーブル又はワイヤーが、例えば、ドリルビット30に配設されたセンサーとの電気接続を可能にするため、ローター及びシャフト28の長さに沿って延びるのがよい。ケーブル又はワイヤーと接続をさせるスリップリング又は誘導カップリングを設けるのがよい。ケーブル又はワイヤーは、センサーを作動し、及び/又は、そこから信号を伝達するのに用いられるのがよい。
【0020】
前に例示及び記載した装置は、ユニバーサルジョイント26の上方に配置されたピストンの形態の、アクチュエーター34を使用したが、いくつかの又は全てのアクチュエーター34をユニバーサルジョイント26の位置の下方に、及び/又は、ユニバーサルジョイント26から異なる距離に配置することが可能である。アクチュエーター34の位置をジグザグにすることで、ボトムホールアセンブリ18の直径を不必要に増大させることなく、設けられるアクチュエーター34の数を増やすことができる。
【0021】
他の実施形態では、ドリルストリング10とともに回転できる上部部分22の一部にアクチュエーター34を設けるよりもむしろ、アクチュエーター34をステアリング部分24に、これとともに回転できるよう設けるとよく、アクチュエーター34は、使用中、上部部分22の一部に当たる。
【0022】
図3は、アクチュエーター34がピストンの形態であり、流路40を設けた例を示し、この流路40により、アクチュエーター34の操作を制御するために用いられる多量の流体がステアリング部分24との接点に供給され、これにより、これらの間の高速滑り接触を潤滑にし、流体力学的ベアリング効果を高める。
【0023】
図4は、高速滑りベアリングが、アクチュエーター34によって担持された内側レース44及びステアリング部分24に設けられた外側レース46を含むころ軸受42で置換えられた変形例を示す。また、ユニバーサルジョイント26を中心とするステアリング部分24の角度移動に順応するため、柔軟な材料要素48を、ころ軸受42に組み込むのがよい。
【0024】
前に記載した各装置では、アクチュエーター34としてピストンの使用ではなく、図5に示すように、親ねじ装置50を用いてもよい。装置50は、各々、モーター54により回転でき、ねじスリーブ56と噛み合ったねじ52を含み、これによりモーター54の作動がねじ52を伸長又は収縮させる。ころ軸受又は滑りベアリングを、前記したように使用するのがよい。
【0025】
親ねじ装置の使用は、液圧駆動装置よりも反応速度が遅いが、上方スリーブに設けられ、かつ、上方スリーブがかなりゆっくりと回転する装置に用いられる場合には、反応速度は適当であり、ステアリング部分の向きを調整するのに用いられる力はとても小さい。このような装置は、高温での適用で特に有益であるだろう。
【0026】
他の可能性は、液圧オイルをアクチュエーターを動かすのに用いることを含み、オイルは、例えば、低出力ポンプにより供給される。
【0027】
前に記載した全ての装置では、アクチュエーターを上方スリーブに配置することにより、アクチュエーターは、通常の使用時に、ビットの速度よりもむしろ上方スリーブの回転に合わせて動かすことだけが必要であるので、かくして、かなりの電力が節約できる。
【0028】
発明の範囲から逸脱することなく、ここに記載された装置に幅広い範囲の修正及び変形がなされるだろうことは予期されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦可能な掘削システムであって、
上部部分及びステアリング部分を含むボトムホールアセンブリと、
前記上部部分の軸線に対する前記ステアリング部分の軸線の向きの調整を可能にするスイベルと、
前記ステアリング部分を前記上部部分に対して回転可能に駆動するように作動するダウンホールモーターと、
上部部分の軸線に対する操作部分の軸線の向きを制御するように作動する複数のアクチュエーターと、を備え、
前記アクチュエーターは前記ステアリング部分及び前記上部部分の一方に設けられ、前記ステアリング部分及び前記上部部分の他方に対して作用するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムであって、
前記アクチュエーターと、前記ステアリング部分及び前記上部部分の他方との間に高速滑り接触が形成されることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムであって、
前記アクチュエーターと、前記ステアリング部分及び前記上部部分の他方との間にころ軸受装置が形成されたことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムであって、
前記ころ軸受装置は、柔軟な材質の要素を有することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のシステムであって、
アクチュエーターは、ピストンからなることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5記載のシステムであって
前記ピストンは流路を画定することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のシステムであって、
前記アクチュエーターは、親ねじ装置からなることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のシステムであって、
前記アクチュエーターは、前記スイベルから共通の距離で互いに整列されていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のシステムであって、
前記アクチュエーターは、前記スイベルから2つ又はそれ以上の距離に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のシステムであって、
少なくとも一つのアクチュエーターが前記スイベルの一方の側に設けられ、少なくとも一つのアクチュエーターが前記アクチュエーターの他方の側に設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のシステムであって、
前記スイベルは、前記ステアリング部分へビット荷重の伝達を可能にするようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のシステムであって、
前記ユニバーサルジョイントを通して、前記ステアリング部分へ流体の供給を可能にするように構成された可撓パイプをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項5又は6記載のシステムであって、
前記アクチュエーターへの流体の供給を制御するように構成されたバルブ手段をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムであって、
前記バルブ手段は、前記モーターの上方に設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項13記載のシステムであって、
前記バルブ手段は、前記モーターの下方に設けられていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項13記載のシステムであって、
前記バルブ手段は、ロータリーバルブからなることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項13記載のシステムであって、前記バルブ手段は少なく一つの双安定バルブからなることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1乃至17記載のシステムであって、前記モーターは、マッドモーター、タービン及び電力モーターの一つからなることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1乃至18記載のシステムであって、上部部分に対するステアリング部分の角度を感知するように作動する角度センサーをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19記載のシステムであって、前記角度センサーは誘導形態のものであることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項1乃至20のうち何れか1項に記載のシステムであって、前記ステアリング部分に設けられたスタビライザーを含むことを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項1乃至21のうち何れか1項に記載のシステムであって、該システムの中を延びる導電体を備えることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524477(P2011−524477A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539705(P2010−539705)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/086987
【国際公開番号】WO2009/085753
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited