説明

支持柱及びその設置方法

【課題】建物の壁面に設置可能であり、屋上床面の基礎工事が不要なアンテナ等の支持柱及びその設置方法を提供すること。
【解決手段】上部に搭載品を取り付けたポール5と、建物の壁面28と結合した連結固定金具17と、前記ポール5上に設けた連結金具7と、前記連結金具7と前記連結固定金具17とを結合するための連結部材10とを有する、建物の壁面28に設置する支持柱1であり、前記連結部材10と結合した前記連結金具7及び前記連結固定金具17は、前記連結部材10の支点としてピン接合を成し、前記連結部材10により立体トラス構造に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の建物の屋上における通信用のアンテナ等の支持柱及びその設置方法に関し、特に、建物の壁面に設置可能であり、屋上床面の基礎工事が不要なアンテナ等の支持柱及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、無線LAN、無線標識等の通信用のアンテナ等の支持柱は、既存のビルの屋上等に設置される。図10は、アンテナ用支持柱を固定するためのコンクリート基礎部を屋上のコンクリートスラブ上に新設して、ビルの屋上にアンテナの支持柱を設置した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は、一部断面図を含む正面図である。図10(a),(b)に示すように、ビルの屋上でのアンテナ20を搭載した支持柱50の設置では、RC造(鉄筋コンクリート構造)建物の屋上の床面のコンクリートスラブ53(図10(b)に示す)上に、アンテナの支持柱50をアンカーボルト58(図10(b)に示す)で固定するためのコンクリート基礎部54aを設けるようにする。尚、図10(a),(b)に示す支持柱50は、屋上のパラペット62のコーナー付近に設置したものである。コンクリート基礎部の新設は、屋上の仕上げ材、保護材、防水層60(図10(b)に示す)などを除去して施工する必要がある。更に、支持柱50を補強するステー57を設置するためのコンクリート基礎部54bも屋上の床面に設ける必要がある。
【0003】
また、アンテナ設置の他の工法として、屋上のコンクリートスラブに、アンテナの支持柱のアンカーボルトをコンクリートスラブ等に直接取り付ける後施工アンカー工法が知られている。尚、後施工アンカー工法でのアンカーボルトをコンクリートスラブ等に直接取り付ける際には、屋上の仕上げ材などを除去してアンカーボルトを設けるようにする。
【0004】
また、特許文献1には、既存防水層上にアンテナ、ポールその他の設置物を固定掛止するための支点ないしは拠点を既存防水層を通して打ち込んだアンカーボルトに連結固定して、防水性能を損なうことなく必要に応じた所望の位置に設置することができる引張装置の取り付け構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、電気的な絶縁特性を有するFRP製パイプを使用して軽量化を図り、複数本のFRPパイプと、これらのFRPパイプを相互に接続するための継ぎ手用フランジにより支持柱を構成して、施工時の搬送、組み立てを容易に実施することができるアンテナ用支持柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−219822号公報
【特許文献2】特開2005−318077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、RC造建物の屋上にアンテナ等の支持柱を建設する場合には、屋上の仕上げ材、保護材、防水層などを除去した後に、コンクリート基礎部を施工するようにしている。このため、アンテナ等の支持柱の施工は、屋上での防水層等を除去する必要があり、工事期間中の降雨などによる漏水を防止しながら進める必要がある。また、基礎部分にコンクリートを使用するため、コンクリートが所定の強度を有するのに時間が必要となり施工期間が長くなる。また、コンクリート基礎部の施工は床面に対して行うため、後に床面のひび割れ等が発生し防水性が損なわれる懸念もある。
【0008】
さらに、屋上の床面は、雨水の排水を確保するために勾配を設けているため、屋上の仕上げ材、保護材、防水層などの除去時、コンクリート基礎部の施工時に水平面を確保する必要があり、作業が煩雑となる懸念もある。
【0009】
このため、床面の工事を避けるべく、支持柱を建物の壁面に取り付けるようにしている。しかしながら、ポールを取付固定金具を介して建物の壁面に取り付けた支持柱では、ポール等の部材の軽量化が求められ、また、ポールに発生する曲げモーメント等による応力が取付固定金具及びアンカーボルトを介して壁面に加わるため、壁面が劣化したり、取付固定金具によるポールの保持力が低下したりする懸念がある。
【0010】
そこで本発明は、屋上の塔屋等の壁面に設置され、支持柱を構成する部材の軽量化が可能であり、更に、支持柱の連結金具と屋上の塔屋等の壁面に設けた連結固定金具とを連結部材を介して結合し、連結部材の支点である連結金具及び固定金具を回転可能なピン接合により立体トラス構造を成すようにして、ポールに発生する曲げモーメント等の影響を受けないようにして、建物屋上の床面にコンクリート基礎を設けたり、床面上にアンカーを設置することが不要な支持柱を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目標達成のため、本発明の支持柱は、建物の壁面に設置する支持柱であって、前記支持柱は、上部に搭載品を取り付けたポールと、建物の壁面と結合した連結固定金具と、前記ポール上に設けた連結金具と、前記連結金具と前記連結固定金具とを結合するための連結部材と、を有し、前記連結部材と結合した前記連結金具及び前記連結固定金具は、前記連結部材の支点としてピン接合を成し、前記連結部材により立体トラス構造に構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の支持柱の前記連結固定金具は、正面視において、前記ポールの長手方向に対して左右対称に間隔を持って設けられており、前記連結固定金具の間隔は、前記連結部材と結合する前記ポールの上に設けられた連結金具の間隔よりも広くなるように設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の支持柱の前記連結固定金具は、壁面に固定され、平面又は格子状に形成された平面板からなる壁面取付金具を介して壁面と結合していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の支持柱の前記連結金具及び前記連結固定金具は、回転、揺動運動が可能なユニバーサルジョイントであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の支持柱は、前記ポールの下部の端部を、建物の床面に非接触又は接触するように構成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の支持柱の前記連結部材は、正面視において、前記ポールの長手方向に対して前記連結金具を中心に上下左右に広がるように斜め方向に放射状に張設されてことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の支持柱の設置方法は、上部に搭載品を取り付けたポールと、壁面に固定され、平面又は格子状に形成された平面板からなる壁面取付金具を介して壁面と結合しているユニバーサルジョイントから成る連結固定金具と、前記ポール上に設けたユニバーサルジョイントから成る連結金具と、前記連結金具と前記連結固定金具とを結合するための連結部材とを有する支持柱の設置方法であって、前記壁面取付金具を壁面に固定して、前記ポールの長手方向に対して前記連結金具を中心に上下左右に広がるように斜め方向に放射状に前記連結部材を前記連結金具と前記連結固定金具間に張設して、立体トラス構造を成すように設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の支持柱によれば、支持柱を構成する部材の軽量化を図ったことにより、壁面に加わる圧力が軽減され、更に、連結部材により立体トラス構造を構成しているため、ポールからの曲げモーメントによる応力が発生しないため、壁面が劣化したり、壁面取付金具によるポールの保持力の低下を防止することができる。
【0019】
また、本発明の支持柱は、建物の壁面に設置するようにしたことにより、屋上の床面にポールを固定するためのコンクリート基礎及びアンカーを設ける必要がないため、屋上の床面に用いられている仕上げ材、防水層に損傷を与えることがなく、敷設工事により既存の床面にひび割れ等が発生することがなく防水性が損なわれることがない。
【0020】
また、本発明の支持柱は、部品点数も少なく、構造が複雑な部品を使用しないため、安価に製作することができる。
【0021】
また、本発明の支持柱は、ポール上部の搭載品として通信用のアンテナ以外にも、照明灯、受信アンテナ、スピーカ、カメラ、旗等の搭載に使用することができる。
【0022】
また、本発明の支持柱の設置方法によれば、建物の壁面に壁面取付金具を取り付けることにより立体トラス構造を有する支持柱の設置が可能であり、かつ、屋上の床面にポールを固定するためのコンクリート基礎工事も必要がないため、施工期間が短く、作業効率も良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】建物の屋上の壁面に支持柱を設置した状態を示す斜視図である。
【図2】建物の屋上の壁面に設置した支持柱を正面右上から見た斜視図である。
【図3】建物の屋上の壁面に設置した支持柱を正面左上から見た斜視図である。
【図4】建物の屋上の壁面に設置した支持柱の構成を示す正面図である。
【図5】図4に示すA−Aに沿う断面図である。
【図6】建物の屋上の壁面に設置した支持柱の構成を示す側面図である。
【図7】図4に示す支持柱の取付状態を示す拡大図である。
【図8】図6に示す支持柱の取付状態を示す拡大図である。
【図9】固定金具に連結固定金具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図10】アンテナ用支持柱を固定するためのコンクリート基礎部を屋上のコンクリートスラブ上に新設して、ビルの屋上にアンテナの支持柱を設置した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は、一部断面図を含む正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面を参照して、本発明による支持柱及びその設置方法を実施するための形態について説明する。尚、本発明の支持柱は、建物の屋上に設けられている塔屋等の壁面に設置するものであり、支持柱の連結金具と屋上の塔屋等の壁面に設けた連結固定金具とを連結部材を介して結合し、連結部材の支点である連結金具及び連結固定金具を回転可能なピン接合により立体トラス構造を成すようにして、支持柱のポールに発生する曲げモーメントの影響を軽減するようにしたものである。
【0025】
図1は、建物の屋上に設けられている塔屋の壁面に支持柱を設置した状態を示す斜視図である。図1に示すように、建物25の屋上26には、屋上から部分的に突出している建物である塔屋(ペントハウス)27が設けられている。図1に示す支持柱1は、建物25の屋上26の塔屋27の壁面28に設置され、携帯電話の基地局における通信用のアンテナ20を搭載したものである。
【0026】
尚、支持柱1の設置場所は、建物の屋上等に設置されている構造物の壁面であって、構造物としては、例えば、屋上に出入りするための出入口用の塔屋、昇降機等の設備を収納した塔屋等である。
【0027】
[支持柱の構成]
以下に、支持柱の構成について図2乃至図9を用いて説明する。図2は、建物の屋上の壁面に設置した支持柱を正面右上から見た斜視図、図3は、建物の屋上の壁面に設置した支持柱を正面左上から見た斜視図、図4は、建物の屋上の壁面に設置した支持柱の構成を示す正面図、図5は、図4に示すA−Aに沿う断面図、図6は、建物の屋上の壁面に設置した支持柱の構成を示す側面図、図7は、図4に示す支持柱の取付状態を示す拡大図、図8は、図6に示す支持柱の取付状態を示す拡大図、図9は、固定金具に連結固定金具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【0028】
図2乃至図4に示すように、支持柱1は、上部に搭載品としてのアンテナ20を取り付けたポール5と、屋上の塔屋27等の壁面28に壁面取付金具12を介して設けられた連結固定金具17と、ポール5上に設けた連結金具7と、連結金具7と連結固定金具17とを結合するための連結部材10とを有して構成されている。
【0029】
支持柱1のポール5は、大きな曲げ応力に対する耐性を有するもので、且つ、軽量な部材を使用する。ポール5の部材としては、例えば、FRP(fiber−reinforced plastics、繊維強化プラスチック)が挙げられる。FRPは、カーボン繊維やガラス繊維を強化剤として、不飽和ポリエステル系の熱硬化性樹脂からなる複合材料である。図5に示すように、例として示したFRPから成るポール5は、その内部が中空の円筒状に形成されている。尚、ポール5は、FRP以外の部材であってもよいことは当然である。
【0030】
尚、図2乃至図8に示すポール5は、FRPで一体に形成されているが、ポール5を長手方向に複数のパイプに分割して、分割したパイプを継ぎ手により結合してポール5を構成するようにしてもよい。また、ポール5上部のアンテナ20を搭載する部分をFRPを使用し、連結金具7を有するポール5下部をFRP以外の他の部材で構成するようにしてもよい。
【0031】
図2に示すように、ポール5は、その上部にアンテナ取付金具21を介して搭載品としての通信用のアンテナ20が設けられている。尚、ポール5の搭載品として通信用のアンテナ20以外にも、照明灯、受信アンテナ、スピーカ、カメラ、旗等のいずれかであってもよい。ポール5は、その長手方向が屋上等の床面に対し、垂直を成すように設けられている。
【0032】
図4及び図7に示すように、ポール5の下部には、連結部材10と結合するための一対の連結金具7が上下に2組取り付けられている。ポール5上の表面には、一対の連結金具7を取り付けるためのねじ孔が2箇所設けられており、連結金具7は、ポール5のねじ孔にボルトによって固定され、ポール5の表面に取り付けられている。尚、ポール5上の連結金具7は、ポール5の長手方向における中心に対して左右対称の位置に設けられている。ポール5上に取り付けられている連結金具7は、回転、揺動運動が可能なユニバーサルジョイントからなり、連結部材10の支点としてピン接合を成すようになっている。尚、ユニバーサルジョイントとしてロッドエンドが好適である。ユニバーサルジョイントとしてのロッドエンド(図9に示す符号17)は、開口部を有する内輪と、ハウジングを形成する外輪とからなり、内輪の開口部をボルトにより固定し、ハウジングに設けられているネジ部(めねじ)により連結部材10と結合するようになっている。
【0033】
尚、ポール5の表面に連結金具7を取り付けているが、ポール5の外周にリング状の形状を成す金具を固定して設けるようにして、ねじ孔を設けた金具を介して連結金具7をポール5に取り付けるようにしてもよい。
【0034】
また、図4に示すポール5上には、2組の連結金具7が設けられているが、ポール5上の連結金具7は、少なくとも2組以上設けるようにする。
【0035】
一方、図6乃至図8に示すように、塔屋27の壁面28にはポール5を固定するための壁面取付金具12が取り付けられている。壁面取付金具12は、ポール5を連結部材10を介して壁面28に固定するためのものであり、壁面取付金具12は、壁面28上で床面に対して水平方向に配されたL字金具13と、壁面上で床面に対して垂直方向に配された板状の連結ステー15から構成されている。床面に対して水平方向に配されたL字金具13は、壁面取付金具12の底辺及び上辺に設けられており、更に、底辺と上辺との中間にも設けられている。また、床面に対して垂直方向に配された連結ステー15は、壁面取付金具12の左辺及び右辺を構成し、更に、左辺と右辺間に複数本の連結ステー15が等間隔に設けられている。壁面取付金具12は、L字金具13と連結ステー15とが溶接等により結合されており、連結ステー15が壁面28と接触するように取り付けられる。このように、壁面取付金具12は、正面視において、L字金具13と連結ステー15とにより、格子状に形成された平面板からなる。壁面取付金具12は、各L字金具13の両端面付近に壁面に固定するための孔が設けられている。孔は、L字金具13及び連結ステー15を貫通して設けられている。
【0036】
図7及び図8に示すように、壁面に対して垂直を成すL字金具13の面の上面には、連結固定金具17を取り付けるための固定金具13aが一定の間隔で配されている。L字金具13の上面に設けられている固定金具13aは、直交する2つの面により側面視L字状に形成されており、一方の面がボルトとナットによりL字金具13に結合されている。固定金具13aにおけるL字金具13と連結される一方の面と直交する他方の面の中心付近には、連結固定金具17を固定するための孔(開口部)を有している。L字金具13における固定金具13aの開口部には、連結固定金具17が取り付けられている。
【0037】
図6及び図8に示すように、壁面取付金具12の壁面28への取付は、壁面取付金具12の孔にボルト等を差し込んで、壁面に取り付けた点線で示すアンカーボルト33に固定することにより、壁面取付金具12が壁面28に固着される。これにより、壁面取付金具12がアンカーボルト33により壁面に固定された状態で、L字金具13の固定金具13aを有する面は、壁面28に対して垂直を成すように延設されている。また、図4及び図7に示すように、壁面28に対して垂直を成すL字金具13の上面の左右には、所定の間隔で連結固定金具17が設けられている。
【0038】
連結固定金具17は、ポール5からの連結部材10と結合するためのものであり、L字金具13の固定金具13aに取り付けられている。連結固定金具17は、回転、揺動運動が可能なユニバーサルジョイントからなり、連結部材10の支点としてピン接合を成すようになっている。尚、ユニバーサルジョイントとしてロッドエンドが好適である。図9に示すように連結固定金具17は、開口部を有する内輪と、ハウジングを形成する外輪とからなり、内輪の開口部をボルト18により固定金具13aの開口部に固定し、ハウジングに設けられているネジ部(めねじ)により連結部材10のネジ部10aと結合するようになっている。連結固定金具17は、壁面取付金具12が壁面に固定された状態で、ポール5上の連結金具7と対応するように設けられている。
【0039】
尚、壁面取付金具12は、L字金具13及び連結ステー15とにより格子状に形成されているが、格子状に代えて1枚の平板であってもよい。壁面取付金具12に平板を用いる際には、連結固定金具17を取り付けるための固定金具13aを平板上の所定の位置に取り付けて固定するようにする。又は、平板状にそのまま連結固定金具17を取り付けてもよい。
【0040】
連結部材10は、ポールを設置する際に、連結金具7と連結固定金具17とを結合するためのものである。連結部材10は、引張強度を有し、張力に対して延びることがなく、また、圧縮荷重に対して強度を有する部材を使用するようにする。連結部材10は、例えば、金属棒を使用する。金属棒の両端には、ねじ部10a(図9に示す)が設けられている。連結部材10の一方のねじ部10aは、連結金具7と結合するためのものであり、連結部材10の他方のねじ部10aは、連結固定金具17と結合するためのものである。
【0041】
図2乃至図4に示すように、ポール5は、その長手方向が屋上等の床面に対し、垂直を成すように設けられている。また、支持柱1のポールは、連結部材10を介して壁面から離間して設置されている。
【0042】
尚、連結金具7及び連結固定金具17にユニバーサルジョイントとしてのロッドエンドを使用して、ロッドエンドと連結部材10とを結合した形態について述べたが、ロッドエンドに代えて、連結部材10の先端部分において、連結部材の軸方向に直交する方向に孔(開口部)を設けて、ポールに設けたネジ部に連結部材の先端部分の開口部をボルトで結合し、連結部材の一方の先端部の開口部を固定金具13aの開口部にボルト等を使用して、ポールと固定金具13aとを連結部材で結合して、立体トラス構造を構成するためのピン接合を実現するようにしてもよい。
【0043】
[支持柱の立体トラス構造]
図7に示すように、支持柱1は、ポール5上に設けられている一対の連結金具7の一方を頂点とし、その頂点から延設されている2本の連結部材10と結合されている連結固定金具17を支点とし、2本の連結部材10及び連結ステー15を辺とする三角形の形状を成すトラス構造となっている。この状態を図7の点線で示す三角形aで示す。また、支持柱1は、壁面取付金具12のL字金具13に左右対称に設けられている一対の連結固定金具17の一方を頂点とし、その頂点から延設されている2本の連結部材10と結合されているポール5上に設けられている連結金具7を支点とし、2本の連結部材10及びポール5を辺とする三角形の形状を成すトラス構造となっている。この状態を図7の点線で示す三角形bで示す。さらに、支持柱1は、ポール5上に設けられている一対の連結金具7を頂点とし、各連結金具7から延設されている連結部材10と結合されている連結固定金具17を支点とし、2本の連結部材10及びL字金具13を辺とする三角形の形状を成すトラス構造となっている。この状態を図7の点線で示す三角形cで示す。尚、ポール上の一対の連結金具7は、支点を共有していないが、連結金具7間の距離が短いため、トラス構造の支点として機能する。
【0044】
このように、ポール5の連結金具7及び壁面取付金具12の連結固定金具17は、連結部材10の支点としてピン接合を成し、支持柱1は、連結部材10により立体トラス構造に構成したものである。
【0045】
[支持柱の施工]
次に、塔屋等の壁面に支持柱を設置する際の施工の手順について説明する。尚、本説明において、建物の屋上の塔屋等の壁面に設置する支持柱は、図2に示す支持柱と同一のものとする。
【0046】
最初に、壁面に設置するポールを準備する。ポールは、FRPを使用するようにする。FRPは、軽量化が可能であり、また、設置場所への搬送、取り扱いも容易である。準備したポール5の下部付近に、一対の連結金具7を所定の間隔で2組取り付けるためのねじ孔を設けるようにする。尚、図7に示すように、一対の連結金具7の取付間隔がd1となるように、ねじ孔を設けるようにする。また、連結部材10を準備して、連結部材10の端部には、前もってロットエンドからなる連結金具7及び連結固定金具17を取り付けておくようにする。図9に示すように、連結部材10の両端部にはネジ部10aが設けられているため、ロットエンドのネジ部10aと結合させナット19で固定するようにする。更に、連結部材10の一端の連結金具7をポール5に取り付けるようにする。これにより、ポール5は、連結部材10が結合された状態となっている。図7に示すように、この状態でのポール5の外周に設けられている一対の連結金具7の間隔をw1とする。
【0047】
次に、壁面取付金具12を準備する。壁面取付金具12は、ポール5の長さ、ポール5上の連結金具7の組数等に応じて、大きさを決める。支持柱1に使用するポール5の長さは、4メートルから6メートル程である。ポールの長さに対して、壁面取付金具12の縦方向の大きさは、ポールの長さの1/3から1/4程度であることが望ましい。例えば、ポールの長さが約4メートルで、連結金具7が2組であれば、壁面取付金具12は、縦の長さを約1メートルとする。また、図7に示すように、ポール5上に連結金具7が2組設けられているときには、壁面取付金具12のL字金具13を3個設けるようにする。
【0048】
また、図7に示すように、壁面に固定する壁面取付金具12には、壁面に対して垂直を成すL字金具13の上面の左右の位置に連結固定金具17を取り付けるための固定金具13aを設けるようにする。尚、壁面取付金具12における左右に設けられる連結固定金具17を一対の連結固定金具17と称し、L字金具13上での一対の連結固定金具17の間隔をw2とする。尚、図7に示すように、一対の連結固定金具17の間隔w2は、連結金具7の間隔w1を越える距離となるように、L字金具13上の固定金具13aを取り付ける。また、平板からなる連結ステー15を準備する。
【0049】
次に、L字金具13と連結ステー15を用いて壁面取付金具12を組み立てる。固定金具13aを取り付けた3個のL字金具13を壁面取付金具12の底辺、上辺及び底辺と上辺との中間に位置するように設定する。また、壁面取付金具12の左辺、右辺及び壁面取付金具12の左辺と右辺間に連結ステー15が位置するように設定して、L字金具13と連結ステー15とを溶接等により接合して、壁面取付金具12を構成する。尚、図7に示すように、壁面取付金具12における一対の連結固定金具の垂直方向の間隔d2は、ポール上の一対の連結金具7の取付間隔であるd1と同様になるように、L字金具13を取り付けるようにする。但し、一対の連結固定金具の垂直方向の間隔d2は、d1以外であってもよいが、d1であることが望ましい。また、壁面取付金具12の各L字金具13及び連結ステー15の交差部分(重複部分)に、壁面に固定するための孔を設けるようにする。孔は、L字金具13及び連結ステー15を貫通して設けるようにする。多数の壁面固定用の孔により、壁面取付金具12による面としての壁面への固定を実現して、アンカーボルト33への剪断力を分散するものである。
【0050】
連結金具7を取り付けたポール5と、壁面取付金具12を準備した後、支持柱1の設置を行う。支持柱1の設置は、最初に、壁面にアンカーボルト33(図8に示す)を取り付ける。壁面取付金具12に設けられた壁面に固定するための孔の数に応じて、アンカーボルト33を所定の位置に取り付けるようにする。アンカーボルト33を壁面に取り付け後に、準備した壁面取付金具12をアンカーボルト33に固定する。図8に示すように、壁面取付金具12の連結ステー15側の面を壁面28に密着させて、壁面取付金具12に設けられている孔にアンカーボルト33を差し込んで、ボルト等によって壁面に壁面取付金具12を固定する。
【0051】
次に、連結部材10が結合されたポール5を垂直に立てて、壁面取付金具12付近に位置するようにする。このとき、壁面取付金具12の垂直方向に3個設けられたL字金具13に対して、ポール5に設けられている連結金具7が、隣り合うL字金具13間の中間に位置するように、また、ポールが壁面取付金具12の中心付近に位置するように、ポール5を位置決めする。この状態で、ポール5に結合されている連結部材10の一端に設けられている連結固定金具17を、図9に示すように、L字金具13の所定の固定金具13aにボルト18及びナットにより結合する。これにより、図7に示すように、ポール5上に結合されている2本の連結部材10は、それぞれ上又は下の斜め方向に位置する連結固定金具17に結合される。尚、図7に示すように、壁面取付金具12の最上及び最下に位置する固定金具13aには、1本の連結部材10の連結固定金具17が結合され、壁面取付金具12の中間に位置する固定金具13aには、2本の連結部材10の連結固定金具17が結合される。
【0052】
以下同様に、残りの壁面取付金具12の固定金具13aに、連結金具7と対応する連結部材10の連結固定金具17を結合するようにする。これにより、図2及び図7に示すように、支持柱1のポール5は、連結部材10によって、ポール5の長手方向に対して連結金具7を中心に上下左右に広がるように斜め方向に放射状に張設されている。また、連結金具7及び連結固定金具17に結合された連結部材10の先端部は、回転、揺動運動が可能であり、連結金具7及び連結固定金具17が連結部材10の支点としてピン接合が形成され、支持柱1は、連結部材10により立体トラス構造を構成している。
【0053】
このように、支持柱1は、正面視において、一対の連結固定金具17が、ポール5の長手方向に対して左右対称に設けられており、図7に示すように、一対の連結固定金具17の間隔w2は、連結部材10と結合する前記ポール5の外周に左右対称に設けられた連結金具7の間隔w1よりも広くなるように設けられている。
【0054】
また、ポール5は、正面視において、垂直方向における壁面取付金具12の連結固定金具17間の中間の位置となるように固定されている。また、ポール5の連結金具7は、正面視において、壁面に垂直方向に設けた連結固定金具17の間隔の中間に位置している。
【0055】
ポール5を壁面に取り付け後に、図2に示すように、ポール5の上部にアンテナ取付金具21を介してアンテナ20を取り付ける。以上により、建物の屋上の塔屋等の壁面にアンテナの支持柱が設置される。
【0056】
尚、ポールは、連結部材により壁面取付金具を介して取り付けられており、ポールの底部の端面は、床に接触せずに浮いた状態となっているが、ポールの底部の端面を床に接触するようにして、設置してもよい。ポールの底部の端面を床に接触するように設置することにより、ポールの自重を床面に分散することができるため、ポールに重量部材を用いることもできる。
【0057】
前述した支持柱の施工は、ポール及び壁面取付金具を準備して、施工場所で組み立てるものであるが、他の支持柱の施工として、ポールと壁面取付金具とを連結部材により結合して、前もって支持柱の組み立てを行って、クレーン等で支持柱を支持して、壁面に壁面取付金具12を固定することも可能である。これにより、施工期間がより短縮される。
【0058】
以上述べた本発明の支持柱は、伸縮不能の連結部材、伸縮不能の連結ステー及び伸縮不能のL字金具により三角形の各辺を成し、回転等の揺動運動が可能である連結金具及び連結固定金具を支点としてピン接合を形成することにより、立体トラス構造を構成している。これにより、ポールからの曲げモーメントによる応力が発生しないため、壁面が劣化したり、壁面取付金具によるポールの保持力の低下を防止することができる。
【0059】
また、本発明の支持柱は、支持柱を構成する部材の軽量化が可能であり、建物の壁面に設置するようにしたことにより、屋上の床面にポールを固定するためのコンクリート基礎及びアンカーを設ける必要がないため、屋上の床面に用いられている仕上げ材、防水層に損傷を与えることがなく、敷設工事により既存の床面にひび割れ等が発生することがなく防水性が損なわれることがない。
【0060】
また、本発明の支持柱は、部品点数も少なく、構造が複雑な部品を使用しないため、安価に製作することができる。
また、本発明の支持柱は、ポール上部の搭載品として通信用のアンテナ以外にも、照明灯、受信アンテナ、スピーカ、カメラ、旗等の搭載に使用することができる。
【0061】
また、本発明の支持柱の設置方法によれば、設置場所での支持柱の組立も可能であり、また、施工期間が短いため、作業効率が良い。
【0062】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
1、50 支持柱
5 ポール
7 連結金具(ユニバーサルジョイント、ロッドエンド)
10 連結部材
10a ネジ部
12 壁面取付金具
13 L字金具
13a 固定金具
15 連結ステー
17 連結固定金具(ユニバーサルジョイント、ロッドエンド)
18 ボルト
19 ナット
20 アンテナ(搭載品)
21 アンテナ取付金具
25 建物
26 屋上
27 塔屋(ペントハウス)
28 壁面
33、58 アンカーボルト
53 コンクリートスラブ
54a コンクリート基礎部(支持柱用)
54b コンクリート基礎部(ステー用)
57 ステー
60 防水層
62 パラペット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁面に設置する支持柱であって、
前記支持柱は、上部に搭載品を取り付けたポールと、
建物の壁面と結合した連結固定金具と、
前記ポール上に設けた連結金具と、
前記連結金具と前記連結固定金具とを結合するための連結部材と、を有し、
前記連結部材と結合した前記連結金具及び前記連結固定金具は、前記連結部材の支点としてピン接合を成し、前記連結部材により立体トラス構造に構成したことを特徴とする支持柱。
【請求項2】
前記連結固定金具は、正面視において、前記ポールの長手方向に対して左右対称に間隔を持って設けられており、前記連結固定金具の間隔は、前記連結部材と結合する前記ポールの上に設けられた連結金具の間隔よりも広くなるように設けられていることを特徴とする請求項1記載の支持柱。
【請求項3】
前記連結固定金具は、壁面に固定され、平面又は格子状に形成された平面板からなる壁面取付金具を介して壁面と結合していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の支持柱。
【請求項4】
前記連結金具及び前記連結固定金具は、回転、揺動運動が可能なユニバーサルジョイントであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1に記載の支持柱。
【請求項5】
前記ポールの下部の端部を、建物の床面に非接触又は接触するように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1に記載の支持柱。
【請求項6】
前記連結部材は、正面視において、前記ポールの長手方向に対して前記連結金具を中心に上下左右に広がるように斜め方向に放射状に張設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1に記載の支持柱。
【請求項7】
上部に搭載品を取り付けたポールと、壁面に固定され、平面又は格子状に形成された平面板からなる壁面取付金具を介して壁面と結合しているユニバーサルジョイントから成る連結固定金具と、前記ポール上に設けたユニバーサルジョイントから成る連結金具と、前記連結金具と前記連結固定金具とを結合するための連結部材とを有する支持柱の設置方法であって、
前記壁面取付金具を壁面に固定して、前記ポールの長手方向に対して前記連結金具を中心に上下左右に広がるように斜め方向に放射状に前記連結部材を前記連結金具と前記連結固定金具間に張設して、立体トラス構造を成すように設置することを特徴とする支持柱の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−209892(P2012−209892A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75905(P2011−75905)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(390001454)NECネッツエスアイ株式会社 (36)
【Fターム(参考)】