説明

支持装置

【課題】屋根上設置物を取付けるための固定部材が何れの方向へ延びていても支持することが可能な支持装置を提供する。
【解決手段】屋根材2の上面に固定され屋根上に設置される屋根上設置物を固定するための固定部材3を支持する支持装置1に、屋根材2の上面に固定されるベース部材10と、ベース部材10の上面に、回転可能、且つ、回転面に沿って所定方向へスライド可能に取付けられ、屋根上設置物を固定するための固定部材3を保持する保持部材30とを具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上に設置される屋根上設置物を取付けるための固定部材を支持するための支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋根上に屋根上設置物(太陽電池モジュール、太陽熱温水器、緑化体等)を設置するには、屋根材の上面に固定された支持装置に屋根上設置物を取付けるための固定部材(枠材、長尺状の桟材、井桁状に組まれた井桁材等)を支持させた上で、固定部材に対して屋根上設置物を取付けるようにしている。
【0003】
この固定部材を支持する支持装置としては、上面に上方へ突出する支持膨部が形成された支持瓦を、既設の屋根瓦と交換した上で、十字状に打抜かれた板体の対向した二片を下側へ屈曲させると共に残りの二片を上側へ屈曲させた取付装置の下側の二片を、支持瓦の支持膨部に取付けると共に、取付装置の上側の二片に固定部材を支持させるようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
この特許文献1の支持装置では、支持膨部を備えた支持瓦を必要とし、屋根上載置物の設置に手間が掛かると共に、構成部材が多くコストが高くなる問題がある。そこで、固定部材を支持する支持金具として、屋根瓦等の屋根材の上面に固定される基板と、基板の上面から上方へ突出する支持部とを備えるようにし、支持金具の支持部に上記の取付装置を介して固定部材を支持させるようにしたものも提案されている(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の支持装置は、支持瓦や、支持金具、及び取付装置が、屋根の傾斜方向と固定部材の延びる方向とに夫々方向性を有しているので、少なくとも屋根の傾斜方向、屋根の横方向(傾斜方向に対して直角方向)の二つの種類の支持金具等を在庫として用意する必要があり、コストが増加する問題がある。また、屋根の傾斜方向と支持する固定部材が延びる方向とに合った組合せの支持瓦や支持金具等を用いる必要があり、間違った組合せの支持金具等を用意してしまったり、方向性の間違った支持金具等を屋根材等に取付けてしまったりする虞があり、支持金具等の管理に手間がかかると共に、施工性が悪くなる問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、屋根上設置物を取付けるための固定部材が何れの方向へ延びていても支持することが可能な支持装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る支持装置は、「屋根材の上面に固定され屋根上に設置される屋根上設置物を固定するための固定部材を支持する支持装置であって、屋根材の上面に固定されるベース部材と、該ベース部材の上面に、回転可能、且つ、回転面に沿って所定方向へスライド可能に取付けられ、屋根上設置物を固定するための固定部材を保持する保持部材とを具備する」ものである。
【0008】
ここで、「保持部材」としては、「固定部材の延びる方向に対して略直角方向両側から固定部材を挟持するように保持するもの」、「固定部材から延びた固定片を保持するもの」、「固定部材の底面を保持するもの」、「固定部材の一方の側面のみを保持するもの」、等を具体的に例示することができる。
【0009】
また、「回転可能、且つ、回転面に沿って所定方向へスライド可能」としては、「ベース部材又は保持部材から上方又は下方へ延出する円柱状の軸部と、軸部が挿通可能とされる共に所定方向へ長く延びた長孔状の貫通する取付孔を保持部材又はベース部材に形成し、軸部を取付孔に挿通したもの」、「ベース部材と保持部材との間に相対回転可能な回転板を配置すると共に、その回転板に対して保持部材をスライドできるようにしたもの」、等を例示することができる。
【0010】
本発明によると、屋根上載置物を固定するための固定部材を保持する保持部材が、屋根材として屋根瓦等の屋根表面材や野地板等に固定されるベース部材に対して、回転可能且つ回転面に沿ってスライド可能に取付けられているので、保持部材の回転及びスライド範囲内のどの位置及び向きに固定部材があっても確実に保持することができ、支持装置の方向性を無くすことで屋根上設置物を取付けるための固定部材が何れの方向へ延びていても支持することが可能な支持装置とすることができる。
【0011】
また、屋根材に対してベース部材をずれた位置に固定してしまったり、屋根表面材の寸法と屋根上載置物の寸法との関係上ベース部材を固定する位置が固定部材を配置する位置に対してずれた位置にしか固定できなかったり、或いは、固定部材を複数の支持装置で支持させる場合に屋根材や屋根上の状態等によって各支持装置(ベース部材)を直線状に固定することができなかったりしても、保持部材が回転可能且つ回転面に沿ってスライド可能とされているので、保持部材をスライドさせることで固定部材を所望の位置で保持することができ、屋根上載置物を固定するための固定部材を確実に決められた位置に支持することができると共に、支持装置の固定にかかる手間を簡略化することができる。
【0012】
従って、一つの支持装置で屋根の傾斜方向や屋根の横方向等へ延びた固定部材に対応させることができるので、在庫等として予め用意する支持装置の種類を、従来よりも少なくすることができると共に、支持装置の管理に対する手間を簡略化することができ、コストを低減させることができる。また、一つの支持装置で済むので、従来のように間違った支持金具を取付けてしまうのを防止することができ、屋根上載置物の設置にかかる施工性を向上させて設置コストを低減させることができる。
【0013】
なお、ベース部材を屋根材としての屋根表面材に対して固定するしても良いし、屋根材としての野地板に対して直接或いは屋根表面材を挟んで固定するしても良い。また、ベース部材の形状を、屋根表面材の上面形状と略沿った形状としても良く、これにより、屋根材に対する固定性を高めることができる。また、ベース部材の下側に弾性部材からなる所定厚のクッション材を配置するようにしても良く、これにより、屋根材に対するベース部材のがたつき等を緩和させることができる。更に、保持部材において、固定部材を上下方向へスライド可能に保持させるようにしても良く、これにより、固定部材を複数の支持装置で支持させる場合に、屋根材や屋根上の状態等によって屋根面に対して各支持装置の高さが区々になっても、固定部材を確実に保持することができる。
【0014】
また、ベース部材に上方へ突出するスペーサ部を備えるようにして、そのスペーサ部の上面に保持部材を取付けるようにしても良く、これにより、スペーサ部の高さを適宜選択することで、屋根材に対する屋根上設置物の高さを任意に調整することができ、屋根上の見栄えを良くしたり、屋根上設置物の下側の通気性或いは排水性を良くしたりすることができる。また、スペーサ部の上面を、屋根表面材を敷設した屋根の傾斜と略一致するように形成しても良く、固定部材を複数の支持装置で支持させ易くすることができる。
【0015】
また、本発明に係る支持装置は、上記の構成に加えて、「前記ベース部材は、上方へ延出する外形が円柱状の軸部を有し、且つ、前記保持部材は、前記軸部が挿通可能とされると共に所定方向へ長く延びた貫通する取付孔を有し、該取付孔に挿通された前記軸部が前記取付孔から抜けるの防止する抜止手段を更に具備する」ようにしても良い。
【0016】
ここで、「軸部」としては、外形が円柱状であれば良く、「軸方向に沿って貫通する孔を有した円筒形状のもの」、「中実とされた円柱形状のもの」、等とすることができる。また、軸部が挿通される「取付孔」としては、「矩形状の孔としたもの」、「両端が半円形のトラック形状の孔としたもの」、等とすることができる。
【0017】
また、「抜止手段」としては、「取付孔よりも先端側の軸部の外形を取付孔の短軸側の寸法よりも大径に形成したもの」、「軸部の先端に取付孔の短軸側の寸法よりも大径のナットを螺合したもの」、「軸部の先端に取付孔の短軸側の寸法よりも大きい板体を取付けたもの」、等を例示することができる。
【0018】
本発明によると、ベース部材の上面から上方へ延出した軸部に、保持部材の取付孔を挿通させた上で、抜止手段によって軸部が抜けるのを防止するようにしているので、ベース部材に対して保持部材を、回転可能且つ所定方向へスライド可能に取付けることができ、上述した作用効果を奏する支持装置を確実に具現化することができる。
【0019】
また、本発明に係る支持装置は、上記の構成に加えて、「前記保持部材と前記抜止手段との間に配置され、前記軸部が挿通可能な円形状の貫通孔を有し、前記保持部材の前記取付孔を上側から被覆可能な板状の補助部材を更に具備する」ようにしても良い。
【0020】
ところで、軸部を所定方向へ延びた取付孔へ挿通させることで、回転可能且つスライド可能とするようにした場合、抜止手段の大きさによっては、保持部材に対して取付孔における短軸方向の両側のみに抜止手段が当接し、それ以外の部分は取付孔の存在によって抜止手段が当接せず、軸部(取付孔)の全周に対してごく一部のみで保持部材が抜けるのを防止するような状態となって抜止手段による抜止強度が弱くなり、台風や強風等によって屋根上設置物が煽られて固定部材に上向きの力が強く作用した場合、支持装置によって固定部材(屋根上設置物)を充分に支持することができなくなる虞がある。
【0021】
これに対して、本発明では、保持部材と抜止手段との間に取付孔を覆う補助部材を備えるようにしているので、取付孔における短軸方向以外の部分対しては補助部材を介して抜けるのを防止させることが可能となり、抜止手段による抜止強度をより高くすることができ、台風や強風等によって屋根上設置物が煽られて固定部材に上向きの力が強く作用しても、軸部から保持部材が抜けてしまうのを確実に防止して固定部材(屋根上設置物)の支持強度をより高めることができる。
【0022】
更に、本発明に係る支持装置は、上記の構成に加えて、「前記ベース部材は、屋根材へ固定ビスを用いて固定するための複数の固定孔を有し、該固定孔の一つが前記軸部の略軸線上に配置されていると共に、前記軸部に固定ビスを挿通可能な挿通孔が形成されている」ようにしても良い。
【0023】
本発明によると、保持部材を回転可能且つスライド可能に取付ける軸部の略軸線上でもベース部材を屋根材に固定するようにしているので、軸部の軸線上から離れた位置のみで固定するようにした場合と比較して、屋根材に対する支持装置の固定強度をより高めることができ、固定部材を介して屋根上設置物をより強固に支持することができる。
【0024】
なお、軸部に形成された挿通孔の径を、固定ビスの頭部が通過不能な大きさとし、挿通孔と固定孔とに通された固定ビスで軸部と共にベース部材を屋根材へ固定するようにしても良い。或いは、軸部に形成された挿通孔の径を、固定ビスの頭部が通過可能な大きさとし、挿通孔を通過して固定孔に挿通された固定ビスでベース部材を屋根材へ固定するようにしても良く、挿通孔を介して固定ビスを固定孔に挿通させることができると共に、挿通孔を介してドライバー等の工具で固定ビスを屋根材へねじ込むことができる。
【0025】
また、本発明に係る支持装置は、上記の構成に加えて、「前記ベース部材は、屋根の傾斜と略一致する上面を備えたスペーサ部を有し、該スペーサ部の上面に前記保持部材が取付けられている」ようにしても良い。
【0026】
本発明によると、屋根の傾斜と略一致する上面を備えたスペーサ部に保持部材を取付けるようにしているので、屋根上設置物を固定するための固定部材を複数の支持装置で支持させるようにした場合、保持部材の回転面を屋根の傾斜面に沿った略同一面状に配置することができ、容易に固定部材を屋根の傾斜に沿うように支持することができると共に、固定部材に固定される屋根上設置物を屋根の傾斜に沿って支持することができ、屋根上に設置された屋根上設置物を揃えて見栄えを良くすることができる。
【0027】
また、スペーサ部を備えているので、スペーサ部の上面の高さを適宜選択することで、屋根材に対する屋根上設置物の高さを任意に調整することができ、屋根上の見栄えを良くしたり、屋根上設置物の下側の通気性或いは排水性を良くしたりすることができる。なお、ベース部材に対してスペーサ部を一体的に備えるようにしても良いし、スペーサ部を別体としてベース部材に固定するようにしても良い。
【0028】
更に、本発明に係る支持装置は、上記の構成に加えて、「前記保持部材は、固定部材の延びる方向に対して略直角方向両側から固定部材を挟持するように保持すると共に、固定部材の延びる方向に対して略直角方向へスライド可能とされている」ようにしても良い。
【0029】
本発明によると、保持部材によって固定部材の両側を保持するようにしているので、一方のみを保持するようにした場合と比較して固定部材の保持強度をより高くすることができると共に、固定部材に対する横方向の耐荷重性を高めることができる。また、保持する固定部材が延びる方向に対して略直角方向へ保持部材がスライドするようにしているので、複数の支持装置によって長尺状の固定部材を支持させる時に、屋根材に対して各支持装置を直線状に固定することができなくても、保持部材をスライドさせて保持することで固定部材を真直ぐ支持することができ、支持装置の固定にかかる手間を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明によれば、屋根上設置物を取付けるための固定部材が何れの方向へ延びていても支持することが可能な支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の支持装置を屋根材及び固定部材と共に示す断面図である。
【図2】図1の支持装置の斜視図であり、(B)は図1の支持装置を分解して示す分解斜視図である。
【図3】図1とは異なる実施形態の支持装置を示す斜視図である。
【図4】図1とは更に異なる実施形態の支持装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態である屋根上設置物を固定するための固定部材を支持する支持装置について、図1及び図2に基いて詳細に説明する。図1は、本発明の支持装置を屋根材及び固定部材と共に示す断面図である。図2(A)は図1の支持装置の斜視図であり、(B)は図1の支持装置を分解して示す分解斜視図である。本実施形態の支持装置1は、屋根瓦や野地板等の屋根材2の上面に固定され屋根上に設置される太陽電池モジュール、太陽熱温水器、及び屋根上緑化体等の屋根上設置物(図示は省略する)を固定するための長尺状の固定部材3を支持するものであって、屋根材2の上面に固定されるベース部材10と、ベース部材10の上面に備えられたスペーサ部20と、スペーサ部20の上面に、その上面に対して垂直軸周りに回転可能、且つ、回転面に沿って所定方向へスライド可能に取付けられ固定部材3を保持する保持部材30とを備えている。
【0033】
この支持装置1におけるベース部材10は、平面視で略矩形状の平らな支持面部11と、支持面部11の長手方向に対して直角方向両側から外方へ延出し詳細な図示は省略するが屋根材2における屋根表面材としての屋根瓦2aの上面形状と略沿った当接面部12と、支持面部11の長手方向の中央軸に沿って列接され上方へ突出する三つの固定ボス部13と、各固定ボス部13の中心に形成された固定孔14と、中央の固定ボス部13を囲むように支持面部11上に配置され固定ボス部13よりも上方への突出量が小さくスペーサ部20を支持するための四つの支持ボス部15と、各支持ボス部の中心に穿設された支持孔(図示は省略する)とを備えている。なお、固定ボス部13及び支持ボス部15は、その形状が、下方へ広がる円錐台形状とされている。
【0034】
この支持装置1は、高耐食メッキ鋼板やステンレス板等の所定の板金をプレス加工等によって屈曲形成したものである。また、ベース部材10における支持面部11の上面には、図示するように、支持装置1を屋根材2へ固定する際の目安となる位置決め線16と、棟側の方向を示す矢印17とが長手方向の中央軸上に夫々刻印されている。
【0035】
また、支持装置1のスペーサ部20は、ベース部材10の中央の固定ボス部13を挟んで支持面部11の長手方向両側に夫々配置された二つの支持ボス部15を跨ぐように支持ボス部15上に載置される二つの支持片21と、各支持片21の互いに対向する端部側から夫々上方へ立上る立上り片22と、立上り片22の上端同士を繋ぐ平板状の取付面部23と、取付面部23の略中央から取付面部23の面に対して垂直方向へ立上る円筒状の軸部24とを備えている。このスペーサ部20の支持片21には、立上り片22が立上る側とは反対側の端部側に、ベース部材10の固定ボス部13との接触を回避させる切欠き部25が形成されていると共に、支持ボス部15の支持孔と対応した位置に略同径の支持孔(図示せず)が形成されている。このスペーサ部20は、支持ボス部15の支持孔と支持片21の支持孔とを介してリベット26により、ベース部材20に固定されている。
【0036】
このスペーサ部20における二つの立上り片22は、図示するように、一方(屋根材2に固定した際に棟側となる方)の立上り片22が他方よりも上方へ高く立上るように形成されており、二つの立上り片22によって取付面部23が、ベース部材10の支持面部11に対して所定角度傾斜した状態となっている。詳しくは、スペーサ部20の取付面部23は、屋根の傾斜(野地板2bの傾斜)と略一致するような傾斜角度となっている。
【0037】
スペーサ部20における軸部24は、図2(B)に示すように、支持装置1の組立て前の状態では全体が略同径の円筒状に形成されており、組立て後にその上端部が拡径加工されることで、フランジ状の拡径部24aが形成され、その拡径部24aによって後述する保持部材30の取付孔34及び補助部材40の挿通孔41に挿通した軸部24が抜けるのを防止することができるようになっている(図1及び図2(A)を参照)。なお、この拡径部24aは、本発明の抜止手段に相当している。また、スペーサ部20の軸部24は、その軸線上にベース部材10における中央の固定ボス部13の固定孔14が位置するように形成されていると共に、その内径が後述する固定ビス4を通過可能な挿通孔24bとされている。更に、軸部24は、支持装置1の組立て後の高さが、保持部材30の載置片32よりも低くなるように形成されている。このスペーサ部20もまた、ベース部材10と同様に所定の板金をプレス加工等によって屈曲形成することで成形されている。
【0038】
更に、支持装置1の保持部材30は、スペーサ部20の取付面部23上に載置される矩形状の基板部31と、基板部31の短軸方向両側から上方へ立上り固定部材3の下面と当接可能な載置片32と、基板部31の長軸方向両端から上方へ載置片32よりも高く立上り固定部材3の側面と当接可能な保持片33とを備えている。この保持部材30の基板部31には、スペーサ部20の軸部24が挿通可能とされると共に基板部31の長軸方向へ長く延びた矩形状の取付孔34が形成されている。また、保持部材30の保持片33には、夫々上下方向へ延びた貫通する長孔35が形成されていると共に、一方の保持片33に止め孔36が形成されている。この保持部材30もまた、ベース部材10やスペーサ部と同様に、所定の板金をプレス加工等によって屈曲形成することで成形されている。本例の保持部材30は、支持装置1として組立てられることで、軸部24の周りを回転することができると共に、取付孔34における長軸方向の寸法の範囲内で長軸方向へスライドすることができるようになっている。
【0039】
また、本例の支持装置1は、保持部材30における基板部31の上面に配置される板状の補助部材40を更に備えている。この補助部材40は、外形が二つの載置片32の間隔と略同じ幅で、取付孔34の長軸方向の長さよりも長く二つの保持片33の間隔よりも短い長さの略矩形状とされ、中央にスペーサ部20の軸部24を挿通可能な円形状の貫通孔41が形成されており、保持部材30の基板部31に対して長軸方向へ相対的にスライドできるようになっている。
【0040】
更に、本例の支持装置1は、ベース部材10における支持面部11の下側に貼付けられた所定厚さのクッション材45を備えている。クッション材45は、スポンジ、ゴム、発泡ゴム、発泡樹脂等の弾性部材により成形されており、ベース部材10の固定ボス部13と対応する位置に円形状の開口部46が形成されている。このクッション材45によって、支持装置1におけるベース部材10と屋根材2の屋根瓦2aの上面との密着性を高めることができるようになっている。
【0041】
次に、本実施形態の支持装置1を用いて固定部材3を支持する施工方法について説明する。まず、支持部材1におけるベース部材10の下側に貼付けられたクッション材45の開口部46内に、所定のコーキング材5を充填する。そして、屋根材2の上面における固定部材3を支持する位置に、ベース部材10の支持面部11に刻設された矢印17が屋根の棟側を向くように支持装置1を配置した上で、ベース部材10の固定孔14を介して所定の固定ビス4を、屋根材2としての屋根瓦2aを貫通させて屋根瓦2aが敷設された野地板2bへねじ込むことで支持装置1を屋根材2上へ固定する。この支持装置1を取付ける際に、クッション材45を支持面部11と屋根瓦2aとで圧縮すると共に、ベース部材10の当接面部12が屋根瓦2aの上面と接触するように固定する。また、支持装置1を取付けることで、クッション材45の開口部46内に充填されたコーキング材5が固定ビス4の外周に付着し、固定ビス4周りの止水性を向上させることができる。
【0042】
なお、本例の支持装置1では、スペーサ部20の軸部24の略軸線上に、中央の固定孔14が配置されていると共に、軸部24に固定ビス4が通過可能な挿通孔24bが形成されており、この挿通孔24bを通して固定ビス4を中央の固定孔14へ挿入して屋根材2へねじ込むことができるようになっている。また、支持装置1を取付ける前に、屋根瓦2aに固定ビス4が通過可能な孔を穿設しても良い。なお、図1中、符号2cは、防水シートや防水板等の防水層である。
【0043】
このようにして屋根材2へ取付けた支持装置1に対し、保持部材30における二つの保持片33の間に固定部材3が配置されるように、保持部材30をベース部材10(スペーサ部20)に対して回転させると共に所定の位置へスライドさせる。そして、保持部材30における載置片32に固定部材3を載置させると共に、固定部材3の左右のナット保持部3aに保持されたナット6へ、保持片33の長孔35を介して外側からボルト7を締結することで、保持部材30つまり支持装置1に対して固定部材3が支持された状態となり、屋根上設置物を固定するための固定部材3の施工が完了する(図1を参照)。なお、保持部材30における保持片33の止め孔36を介して所定のビスを固定部材3へねじ込むことで、保持部材30(支持装置1)に対して固定部材3がその長手方向や上方へ移動するのが阻止された状態となる。
【0044】
このように、本実施形態の支持装置1によると、屋根上載置物を固定するための固定部材を保持する保持部材30が、屋根材2に固定されるベース部材10に対して、回転可能且つ回転面に沿ってスライド可能に取付けられているので、保持部材30の回転及びスライド範囲内のどの位置及び向きに固定部材3があっても確実に保持することができ、支持装置1の方向性を無くすことで屋根上設置物を取付けるための固定部材3が何れの方向へ延びていても支持することが可能な支持装置1とすることができる。
【0045】
また、屋根材2に対してベース部材10をずれた位置に固定してしまったり、屋根材2における屋根瓦2a等の寸法と屋根上載置物の寸法との関係上ベース部材10を固定する位置が固定部材3を配置する位置に対してずれた位置にしか固定できなかったり、或いは、固定部材3を複数の支持装置1で支持させる場合に屋根材2や屋根上の状態等によって各支持装置1(ベース部材10)を直線状に固定することができなかったりしても、保持部材30が回転可能且つ回転面に沿ってスライド可能とされているので、保持部材30をスライドさせることで固定部材3を所望の位置で保持することができ、屋根上載置物を固定するための固定部材3を確実に決められた位置に支持することができると共に、支持装置1の固定にかかる手間を簡略化することができる。
【0046】
従って、一つの支持装置1で屋根の傾斜方向や横方向等へ延びた固定部材3に対応させることができるので、在庫等として予め用意する支持装置1の種類を、従来よりも少なくすることができると共に、支持装置1の管理に対する手間を簡略化することができ、コストを低減させることができる。また、一つの支持装置1で済むので、従来のように間違った支持金具を取付けてしまうのを防止することができ、屋根上載置物の設置にかかる施工性を向上させて設置コストを低減させることができる。
【0047】
また、屋根の傾斜と略一致した取付面部23を備えたスペーサ部20に保持部材30を取付けるようにしているので、屋根上設置物を固定するための固定部材3を複数の支持装置1で支持させるようにした場合、保持部材30の回転面を夫々略同一面状に配置することができ、容易に固定部材3を屋根の傾斜に沿うように支持することができると共に、固定部材3に固定される屋根上設置物を屋根の傾斜に沿って支持することができ、屋根上に設置された屋根上設置物を揃えて見栄えを良くすることができる。
【0048】
更に、保持部材30の基板部31とスペーサ部20における軸部24の拡径部24aとの間に取付孔34を覆う補助部材40を備えるようにしているので、取付孔34における短軸方向以外の部分対しては補助部材40を介して抜けるのを防止させることが可能となり、拡径部24aによる抜止強度をより高くすることができ、台風や強風等によって屋根上設置物が煽られて固定部材3に上向きの力が強く作用しても、軸部24から保持部材30が抜けてしまうのを確実に防止して固定部材3(屋根上設置物)の支持強度をより高めることができる。
【0049】
なお、本例の支持装置1は、図1に示すように、スペーサ部20の軸部24に挿入された保持部材30の基板部31及び補助部材40に対して、スペーサ部20の取付面部23と拡径部24aとの間に隙間が形成されるようになっており、この隙間によって保持部材30が所定のガタツキを有した状態で取付けられている。これにより、支持装置1を取付ける屋根瓦2a等の屋根表面材の種類や、支持装置1を取付ける位置等によっては、スペーサ部20の取付面部23の上面が、野地板2bの傾斜と略一致しなかったり、他の支持装置1の取付面部23と略一致しなかったりしてズレてしまう場合があるが、上記のガタツキによってズレを吸収することができ、固定部材3を確実に支持することができる。
【0050】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0051】
すなわち、上記の実施形態では、支持装置1のベース部材10が屋根材2における屋根瓦2aの上面に載置固定されるものを示したが、これに限定するものではなく、図3に示すように、屋根瓦の下側で屋根材としての野地板と接するように固定されると共に、先端が屋根瓦2a同士の隙間を通して外部へ延出し、屋根瓦2aの上側へ屈曲された支持面部に円筒状の軸部51が形成されたベース部材50を備えた支持装置1aとしても良く、上述と同様の作用効果を奏することができる。なお、上記の実施例と構成が同じ部分については同一の符号を付すと共に、説明は省略する。
【0052】
また、上記の実施形態では、支持装置1における保持部材30が、上方へ立上る載置片32と保持片33とが、基板部31以外の部分(外周部分)で繋がっていないものを示したが、これに限定するものではなく、図4に示すように、載置片32aと保持片33aとが外周部分で繋がった形態の保持部材30aとしても良く、上述と同様の作用効果を奏することができると共に、載置片32aと保持片33aとが外周部分でも繋がっているので、保持片33aの面に対して直角方向の剛性を高くすることができ、保持片33aが曲り難くなり、固定部材3の長手方向に対して直角方向に大きな荷重が作用しても保持部材30aが変形することなく固定部材3を保持することができる。
【0053】
更に、上記の実施形態では、軸部24の上端全周を拡径させた拡径部24aによって抜止手段を構成したものを示したが、これに限定するものではなく、軸部24の上端を周方向に対して部分的に拡径方向へ屈曲させることで抜止手段を構成するようにしても良いし、軸部24にナットを螺合させるようにして、螺合させたナットによって抜止手段を構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 支持装置
2 屋根材
3 固定部材
4 固定ビス
10 ベース部材
11 支持面部
12 当接面部
13 固定ボス部
14 固定孔
15 支持ボス部
20 スペーサ部
21 支持片
22 立上り片
23 取付面部
24 軸部
24a 拡径部(抜止手段)
24b 挿通孔
30 保持部材
31 基板部
32 載置片
33 保持片
34 取付孔
40 補助部材
41 貫通孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2004−027843号公報
【特許文献2】特開2003−253827号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根材の上面に固定され屋根上に設置される屋根上設置物を固定するための固定部材を支持する支持装置であって、
屋根材の上面に固定されるベース部材と、
該ベース部材の上面に、回転可能、且つ、回転面に沿って所定方向へスライド可能に取付けられ、屋根上設置物を固定するための固定部材を保持する保持部材と
を具備することを特徴とする支持装置。
【請求項2】
前記ベース部材は、上方へ延出する外形が円柱状の軸部を有し、且つ、
前記保持部材は、前記軸部が挿通可能とされると共に所定方向へ長く延びた貫通する取付孔を有し、
該取付孔に挿通された前記軸部が前記取付孔から抜けるの防止する抜止手段を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記保持部材と前記抜止手段との間に配置され、前記軸部が挿通可能な円形状の貫通孔を有し、前記保持部材の前記取付孔を上側から被覆可能な板状の補助部材を更に具備することを特徴とする請求項2に記載の支持装置。
【請求項4】
前記ベース部材は、
屋根材へ固定ビスを用いて固定するための複数の固定孔を有し、
該固定孔の一つが前記軸部の略軸線上に配置されていると共に、前記軸部に固定ビスを挿通可能な挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の支持装置。
【請求項5】
前記ベース部材は、
屋根の傾斜と略一致する上面を備えたスペーサ部を有し、
該スペーサ部の上面に前記保持部材が取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか一つに記載の支持装置。
【請求項6】
前記保持部材は、
固定部材の延びる方向に対して略直角方向両側から固定部材を挟持するように保持すると共に、固定部材の延びる方向に対して略直角方向へスライド可能とされていることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れか一つに記載の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−242357(P2010−242357A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91452(P2009−91452)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(391013162)株式会社屋根技術研究所 (38)