説明

支柱キャップ

【課題】
野生動物の侵入を防ぐネット式の防護柵において、そのネットを張るためのロープを簡単かつ強固に支柱に固定するために使用する支柱キャップを提供する。
【解決手段】
支柱キャップは、前記支柱の頂面にかぶさるキャップの働きをする円板部と、この円板部の下面に突設されて前記支柱に固定可能な取付け脚部と、前記円板部の上面に突設されかつ上方に行くにしたがって太くなることにより形成される傾斜外周面を有する円柱状のロープ係止部と、このロープ係止部の下部に横向きに穿けられてロープが二本分通る大きさを有するロープ通し穴とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猪、鹿、山羊などの野生動物の侵入を防ぐための防護柵の支柱キャップに関し、特に防護柵のネットを張るためのロープを簡単かつ強固に係止するための支柱キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野生動物の侵入を防ぐための防護柵としては、支柱間にネットを張り、ロープで支柱間のネットを支柱に固定するネット式の防護柵が一般的である。
従来のこの種のネット式防護柵は、例えば図12に示すように支柱1に渡した上下二本のロープ2、3を用いてネット4を張る構成のものが一般的で、支柱1の頂部には支柱キャップ5がかぶせられている。ロープ2は延々と続く長いもので、ネット4の網目に通して各支柱1にそれぞれ止められている。したがって、各支柱1においては、ロープ2を他のもので結び止めるとか、金具を用いて止めるようにしている。
【0003】
しかしながら、前記した従来のロープを金具などを用いて支柱に固定する方法では、長いロープを多くの支柱に順次固定するのに一本の支柱毎のロープ固定に多大な手間が掛かり、また、金具などの取付部品も一本の支柱毎に必要となり、極めて煩わしかった。また、金具などの特別な部品を用いずにロープを支柱に固定した場合は、支柱へのロープの固定が不十分であったり、ロープが緩んでネットがはずれるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み創案されたものであり、その目的は、野生動物の侵入を防ぐネット式の防護柵において、そのネットを張るためのロープを簡単かつ強固に支柱に固定するために使用する支柱キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、支柱キャップの構造を工夫することにより、ロープの固定作業が容易になり、かつロープの固定が強固になることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)の構成を有するものである。
(1)ネット式の防護柵において、そのネットを張るためのロープを止める支柱の支柱キャップであって、
前記支柱の頂面にかぶさるキャップの働きをする円板部と、この円板部の下面に突設されて前記支柱に固定可能な取付け脚部と、前記円板部の上面に突設されかつ上方に行くにしたがって太くなることにより形成される傾斜外周面を有する円柱状のロープ係止部と、このロープ係止部の下部に横向きに穿けられてロープが二本分通る大きさを有するロープ通し穴とを備えたことを特徴とする支柱キャップ。
(2)ロープ係止部の上面に凹みを設けてロープ係止部の円柱状の上半分を円筒状とし、かつこの円筒状により形成されるロープ係止部の環状上面にロープが嵌まる幅を有する少なくとも2個のロープ掛け凹部を設けたことを特徴とする(1)に記載の支柱キャップ。
(3)支柱と、この支柱の頂面にかぶせるための(1)または(2)に記載の支柱キャップとを含むことを特徴とする支柱セット。
(4)(3)に記載の支柱セットと、各支柱間に張られるネットと、ネットの網目を通して各支柱キャップに係止されるロープとを含むことを特徴とする防護柵セット。

【発明の効果】
【0007】
本発明の支柱キャップは、ロープを支柱キャップの横穴に通して一捻りする簡単な作業だけでロープを固定できるので、長いロープで多数の支柱があっても各支柱へのロープの取付け施工が特別な部品を使用したりロープを結ばなくても簡単に行えるし、また円柱状のロープ係止部が下方に行くにしたがって細くなるのでロープを引けば引くほどロープが円柱状の傾斜外周面部分に締まって強固に固定されて支柱キャップ部においてロープが緩まないという効果がある。さらに、作業時にロープを支柱キャップ部に固定する際に手で押さえていなくてもロープを仮固定することができ、ネットを張る作業がやりやすいという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1を示す支柱キャップの側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の支柱キャップのロープ掛け止め方を説明する図である。
【図4】図1の支柱キャップのロープ掛け止め方を説明する図である。
【図5】図1の支柱キャップのロープ掛け止め方を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態2を示す支柱キャップの側面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】図6の支柱キャップのロープ掛け止め方の一例を説明する図である。
【図9】図6の支柱キャップのロープ掛け止め方の一例を説明する図である。
【図10】図6の支柱キャップのロープ掛け止め方の別の例を説明する図である。
【図11】図6の支柱キャップのロープ掛け止め方の別の例を説明する図である。
【図12】従来のネット式の防護柵を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の支柱キャップは、ネットを張るためのロープを止める支柱の頂面にかぶせるものであり、キャップの働きをする円板部と、この円板部の下面に突設されて支柱に固定可能な取付け脚部と、円板部の上面に突設されかつ上方に行くにしたがって太くなることにより形成される傾斜外周面を有する円柱状のロープ係止部と、このロープ係止部の下部に横向きに穿けられてロープが二本分通る大きさを有するロープ通し穴とを備えることにより、実現されるものである。また、本発明の支柱セットは、支柱と、この支柱の頂面にかぶせるための支柱キャップとを含むものである。さらに、本発明の防護柵セットは、この支柱セットと、各支柱間に張られるネットと、ネットの網目を通して各支柱キャップに係止されるロープとを含むものである。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1を示す支柱キャップの側面図、図2は図1の平面図、図3〜図5は支柱キャップへのロープの掛け止め方を説明する図で、各図中、図12に示す従来のものと同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0011】
図において、5Aは支柱キャップで、支柱1の頂面にかぶさるキャップの働きをする円板部6と、この円板部6の下面に突設されて支柱1に固定可能な取付け脚部7と、円板部6の上面に突設されかつ上方に行くにしたがって太くなることにより形成される傾斜外周面8aを有する円柱状のロープ係止部8と、このロープ係止部8の下部に横向きに穿けられてロープが二本分通る大きさを有するロープ通し穴9とを備えて構成される。支柱キャップは一般にプラスチック樹脂から構成される。
【0012】
支柱キャップ5Aは、施工現場において、支柱1を設置した後に支柱1の頂部に取付けが可能であり、しかも取付け後は支柱1から容易に外れない構造を有する。つまり、支柱キャップ5Aの取付け脚部7は図1に示すように円筒状になっていて、しかも内周面には縦溝7aが設けられているので、この縦溝7aに支柱1の外周面にある凸部1aが係合することにより支柱キャップ5Aが支柱1に強固に取付けられるようになっている。
【0013】
施工現場においては、支柱キャップ5Aの円板部6上にロープ2が張られるようになっている。まず、このロープ2を図3に示すようにロープ通し穴9に挿し込み、反対側にロープ2のループ部2aを形成する。このループ部2aを上向きに折り返して図4に示すようにロープ係止部8の傾斜外周面8aに掛け止める。こうして掛け止めた状態を図1と同じ側からみると図5に示すようになる。
【0014】
このようにロープ2のループ部2aをロープ係止部8の傾斜外周面8aに掛け止めた後、ロープ2を支柱1の左右両側あるいは一方側から(矢印方向Aに)引くと、ループ部2aが傾斜外周面8aに沿って(矢印方向Bに)下がって締まるので、このループ部2aが強固にロープ係止部8に固定される。その際、ロープ2を引けば引くほどこの締りが強くなるので、ロープ2が支柱キャップ5Aから緩むことがない。
【0015】
本支柱キャップ5Aにおいては、以上説明したようにロープ2にループ部2aを作ってこのループ部2aを上向きに折り返してロープ係止部8に掛け止めるだけで、簡単にロープ2を支柱キャップ5Aに固定できる。したがって、手で支える必要がない手軽な作業で支柱1の位置においてロープ2を一捻りするだけでロープ2を支柱キャップ5Aに簡単に固定でき、長いロープ2で多数の支柱1があっても各支柱1へのロープ2の取付け施工が簡単に行える。また、円柱状のロープ係止部8が下方に行くにしたがって細くなっているので、ロープ2を引けば引くほどロープ2が円柱状の傾斜外周面部分に締まって強固に固定されて支柱キャップ部においてロープ2が緩まないし、さらに時が経って万一ネット4が緩んでもロープ2の締め直しが支柱キャップ5Aの部分において引くだけで簡単にできる。
【0016】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2を示す支柱キャップの側面図、図7は図6の平面図、図8、図9は支柱キャップへのロープの掛け止め方の一例を説明する図、図10、図11は支柱キャップへのロープの掛け止め方の別の例を説明する図で、各図中、前記実施形態1のものと同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0017】
図において、5Bは支柱キャップで、前記実施例1の支柱キャップ5Aと同様に円板部6と取付け脚部7とロープ係止部8とロープ通し穴9とを備えると共に、上面の凹み10により円筒状となるロープ係止部8の環状上面にロープ2が嵌まる幅を有する4個のロープ掛け凹部11を有している。
【0018】
次に、支柱キャップ5Bのロープの掛け止め方の一例(図8、図9)について説明する。
このロープの掛け止め方においては、ロープ2をロープ係止部8の上方からその2個のロープ掛け凹部11に嵌めて、ロープ係止部8の凹み10内でループ部2bを形成し、再び残りの2個のロープ掛け凹部11を利用してループ部2bを外側に回し嵌めて図8に示すように4個のロープ掛け凹部11にロープ2を渡し止める。
【0019】
このように4個のロープ掛け凹部11にロープ2をそのループ部2bを利用して渡し止めると、側面からみると図9に示すように浮いた状態にはなるが、ロープ2が4個のロープ掛け凹部11に四ヶ所で掛け止めされることになるので、ロープ2はロープ係止部8に強固に固定される。
【0020】
支柱キャップ5Bのロープの掛け止め方は、図8,9に示す例に限らず、例えばロープ2をロープ係止部8の上方から図10のように対向する2つのロープ掛け凹部11に嵌めたり、または図11のように隣り合う2つのロープ掛け凹部11に嵌めたりして、ロープを渡し止めることもできる。
【0021】
なお、本実施形態の支柱キャップ5Bは、その構造上ロープ係止部8の傾斜外周面8aを有しているので、前記実施形態1のロープ掛け止め方(図3〜図5に示すロープの掛け止め方)でロープ2をロープ係止部8に固定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、猪、鹿、山羊などの野生動物の侵入を防ぐためのネット式の防護柵において、ネットをロープで支柱に止める際の支柱キャップとして広く活用することができ、本発明の支柱キャップを使用することにより、防護柵の設置作業の労力や時間を大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 :支柱
1a:凸部
2 :ロープ
2a:ループ部
2b:ループ部
3 :ロープ
4 :ネット
5 :従来の支柱キャップ
5A:本発明の支柱キャップ
5B:本発明の支柱キャップ
6 :円板部
7 :取付け脚部
7a:縦溝
8 :ロープ係止部
8a:傾斜外周面
9 :ロープ通し穴
10:凹み
11:ロープ掛け凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネット式の防護柵において、そのネットを張るためのロープを止める支柱の支柱キャップであって、
前記支柱の頂面にかぶさるキャップの働きをする円板部と、この円板部の下面に突設されて前記支柱に固定可能な取付け脚部と、前記円板部の上面に突設されかつ上方に行くにしたがって太くなることにより形成される傾斜外周面を有する円柱状のロープ係止部と、このロープ係止部の下部に横向きに穿けられてロープが二本分通る大きさを有するロープ通し穴とを備えたことを特徴とする支柱キャップ。
【請求項2】
ロープ係止部の上面に凹みを設けてロープ係止部の円柱状の上半分を円筒状とし、かつこの円筒状により形成されるロープ係止部の環状上面にロープが嵌まる幅を有する少なくとも2個のロープ掛け凹部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の支柱キャップ。
【請求項3】
支柱と、この支柱の頂面にかぶせるための請求項1または2に記載の支柱キャップとを含むことを特徴とする支柱セット。
【請求項4】
請求項3に記載の支柱セットと、各支柱間に張られるネットと、ネットの網目を通して各支柱キャップに係止されるロープとを含むことを特徴とする防護柵セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−152131(P2012−152131A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13733(P2011−13733)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(597127650)正和商事株式会社 (1)
【出願人】(000183842)初田工業株式会社 (5)
【出願人】(303060354)有限会社東製作所 (6)
【Fターム(参考)】