説明

改修工法提案システム

【課題】建物の改修工事について、顧客に可能な限り分かりやすく納得のいく選択ができるような資料を出力する。
【解決手段】改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシート28を表示し、それぞれの項目について改修が求められる原因となり得る建物の部位とその弱点を示す診断データ30と、部位の弱点を改善するための改修工法と改修費用の段階評価と改修による効果の段階評価とを含む評価データ40を準備する。診断データ30を参照して、チェックシート28で指摘された項目について改修が求められる部位を抽出し工法を選択する工法選択手段52と、評価データ40を参照して、選択された工法が複数あるときは、費用対効果の優れた順に、複数の工法を配列する順位付け手段54を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフォーム工事の依頼を受けたときに、顧客の要望を満たす改修工法を適切に選択するための改修工法提案システムと、改修工法提案ツールと、改修工法提案プログラムと、プログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の住宅をより快適に改修するよう希望する顧客は、気がついている不具合を指摘して、リフォーム施工業者に相談をする。リフォーム施工業者は、こうした不具合を解決するための改修提案をする。そのために、顧客の要望を入力すると改修工法と費用の見積もりを出力するシステムが紹介されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−234281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
顧客は、リフォーム施工業者相談を始めた当初、どんな改修が適切かを理解しようとする。予算の範囲で最も効果的な改修を望んでいる。しかしながら、不具合を指摘したときにただちに改修項目を列挙して見積もりを提示されると、顧客の選択の余地が少なくなる。どの部分をどう改修すると、どれだけの費用がかかるか、予算を考慮した場合に、どの部分の改修を優先するのかといった点を理解するのは容易でない。これでは、十分に納得のいかない改修がされたり、改修工事の途中で追加変更等が生じる。また、見積もりの段階で顧客の決心がつかず、成約に至らないケースも生じる。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は次のような改修工法提案システムと、改修工法提案ツールと、改修工法提案プログラムと、プログラム記録媒体とを提供することを目的とする。
(1)顧客に可能な限り分かりやすく、建物の改修部位と改修方法を提案する。
(2)様々な改修方法について、費用対効果を提示して、顧客が納得のいく選択ができるような資料を出力する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシートを表示し、いずれかの前記項目を指摘するための操作を受け付ける項目指摘手段と、前記チェックシートに列挙された全ての項目に対する診断データと評価データを記憶する記憶装置とを備え、前記診断データは、前記それぞれの項目について改修が求められる原因となり得る建物の部位とその弱点を示し、前記評価データは、前記部位の弱点を改善するための工法と、前記工法による改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを含むものであって、前記診断データを参照して、改修が求められる建物の全ての部位を抽出し、前記評価データを参照して、該当する部位の弱点を改善するための工法を選択する工法選択手段と、前記評価データを参照して、前記工法選択手段により選択された工法と、その工法による前記改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを取得し、選択された工法が複数あるときは、前記改修費用の段階評価と前記改修による効果の段階評価とから算出された費用対効果の優れた順に、前記複数の工法を配列する順位付け手段と、前記費用対効果の優れた順に配列した工法を表示する工法選択シートを出力するデータ出力手段とを備えたことを特徴とする改修工法提案システム。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載の改修工法提案システムにおいて、前記工法選択シートは、改修が求められる建物の全ての部位を、費用対効果の優れた順に配列し、各部位についてその部位の弱点を改善するための工法を、費用対効果の優れた順に配列することを特徴とする改修工法提案システム。
【0008】
〈構成3〉
構成2に記載の改修工法提案システムにおいて、前記順位付け手段は、前記部位毎に、その部位の弱点を改善するための複数の工法を相対比較して得られた、前記改修費用の段階評価と前記改修による効果の段階評価とを使用し、段階評価が高いほど費用対効果が大きいとみなして、前記各工程を、改修費用の段階評価の高い順に配列し、改修費用の段階評価が同一のものについては、改修による効果の段階評価の高い順に配列することを特徴とする改修工法提案システム。
【0009】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載の改修工法提案システムにおいて、前記項目指摘手段により前記チェックシートの項目が指定されたとき、前記データ出力手段は、前記チェックシートにより指摘された項目について弱点のある部位と、その部位の改修方法を例示した根本療法と、改修以外の方法であって、顧客独自に対処できる対処療法とを列挙した療法提案シートを出力することを特徴とする改修工法提案システム。
【0010】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の改修工法提案システムにおいて、前記工法選択手段は、チェックシートにより指摘された建物の状態を示す項目と、顧客がその改修を希望するかどうかを確認する欄と、顧客が改修を希望する場所を確認する欄を含む意思確認シートにより、前記顧客が改修を希望する場所に存在する部位を、前記工法選択シートに列挙することを特徴とする改修工法提案システム。
【0011】
〈構成6〉
下記のシートはいずれも、建物の改修を希望する顧客に対して印刷して出力するものであって、改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシートと、前記チェックシートにより指摘された項目について弱点のある部位と、その部位の改修方法を例示した根本療法と、改修以外の方法であって、顧客独自に対処できる対処療法とを列挙した療法提案シートと、前記改修が求められる建物の全ての部位を、費用対効果の優れた順に配列し、各部位について、その部位の弱点を改善するための工法を、費用対効果の優れた順に配列した工法選択シート、前記チェックシートにより指摘された建物の状態を示す項目と、顧客がその改修を希望するかどうかを確認する欄と、顧客が改修を希望する場所を確認する欄を含む意思確認シートと、を備えたことを特徴とする改修工法提案ツール。
【0012】
〈構成7〉
コンピュータを、改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシートを表示し、いずれかの前記項目を指摘するための操作を受け付ける項目指摘手段と、前記チェックシートに列挙された全ての項目に対する診断データと評価データを記憶する記憶装置と、前記診断データは、前記それぞれの項目について改修が求められる原因となり得る建物の部位とその弱点を示し、前記評価データは、前記部位の弱点を改善するための工法と、前記工法による改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを含むものであって、前記診断データを参照して、改修が求められる建物の全ての部位を抽出し、前記評価データを参照して、該当する部位の弱点を改善するための工法を選択する工法選択手段と、前記評価データを参照して、前記工法選択手段により選択された工法と、その工法による前記改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを取得し、選択された工法が複数あるときは、前記改修費用の段階評価と前記改修による効果の段階評価とから算出された費用対効果の優れた順に、前記複数の工法を配列する順位付け手段と、前記費用対効果の優れた順に配列した工法を表示する工法選択シートを出力するデータ出力手段、として機能させる改修工法提案プログラム。
【0013】
〈構成8〉
構成7に記載の改修工法提案プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0014】
〈構成1の効果〉
改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したものから、気になる項目を指摘するのは容易である。この情報を利用して、改修すべき部位と費用と効果とを自動的に抽出して、費用対効果の優れた順に配列したものを出力するので、顧客は、予算に応じた工法を選択できる。
〈構成2の効果〉
改修をする複数の部位が選択できるとき、まず、各部位の費用対効果を比較する。そして、各部位の改修工法が複数選択できるときは、各工法の費用対効果を比較する。この工法選択シートを顧客に提示することにより、適切な工法を選択し易くなる。
〈構成3の効果〉
評価データは、改修費用の段階評価と効果の段階評価とを含むが、改修費用の段階評価のほうを優先して主配列キーとし、効果の段階評価のほうを従配列キーとした。これにより、自動的に、各工程を費用対効果の順に配列できる。
〈構成4の効果〉
チェックシートの項目が指定されたとき、根本療法と対処療法とを列挙したものを顧客に提示する。顧客には、改修費用のかかる根本療法のかわりに、独自に対処できる対処療法を選択する余地があることを伝えることができる。従って、何もかも改修が必要という印象を与えない効果がある。
〈構成5の効果〉
チェックシートにより指摘された建物の状態が、どの場所で発生しているかという情報を取得することにより、工法選択シートに改修の必要な部位を漏れなく列挙できる。
〈構成6の効果〉
チェックシートと療法提案シートと工法選択シートと意思確認シートとを使用して、顧客に分かりやすく改修工事の必要な部位と工法を説明して、希望を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の改修工法提案システムの機能を示すブロック図である。
【図2】改修工法提案システムを実現するコンピュータの機能ブロック図である。
【図3】チェックシートの具体例を示す説明図である。
【図4】診断データの具体例を示す説明図である。
【図5】療法提案シートの具体例を示す説明図である。
【図6】意思確認シートの具体例を示す説明図である。
【図7】再確認シートの具体例を示す説明図である。
【図8】評価データの具体例を示す説明図である。
【図9】工法選択シートの具体例を示す説明図である。
【図10】前半の演算処理動作を説明するフローチャートである。
【図11】後半の演算処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は実施例1の改修工法提案システムの機能を示すブロック図である。
この図は、ヒアリング担当者24が顧客26と面談しながら、顧客26のリフォームの相談を受ける状態を示している。ヒアリング担当者24はコンピュータ12を操作して、ヒアリングの結果をコンピュータ12に入力する。そして、ヒアリングをすすめながら、チェックシート28、療法提案シート34、意思確認シート36、再確認シート38、工法選択シート42をコンピュータ12に表示し、必要に応じてプリンタ22を用いてこれらを印刷し、顧客26に手渡す。
【0017】
図の項目指摘手段46は、上記のチェックシート28をコンピュータ12のディスプレイに表示して、いずれかの項目を指摘するための操作を受け付ける機能を持つ。データ出力手段50は、療法提案シート34や再確認シート38や工法選択シート42をコンピュータ12のディスプレイに表示したり、プリンタ22を用いて印刷したりする機能を持つ。工法選択手段52は、項目指摘手段46により指摘された項目について、工法を選択する機能を持つ。順位付け手段54は、費用対効果の優れた順に複数の工法を配列して、工法選択シート42を編集する機能を持つ。これらの手段の具体的な動作は後で説明する。
【0018】
一般に、リフォームを希望する顧客には、「・・したい」という漠然とした希望がある。始めに、項目選択式のチェックシート28を用いて、この希望を抽出する。次に、その希望から、具体的な改修を薦める部位や様々な工法を自動的に導き出す。そして、療法提案シート34を用いて、根本的な改修方法と、改修をしない対処方法とを提示する。顧客の希望は、例えば、「もっと暖かく暮らしたい」、「もっと涼しく暮らしたい」、「採光を良くしたい」、「省エネ効果を高めたい」、「騒音をシャットアウトしたい」、「バリアフリーにしたい」、「耐震性を強化したい」、「耐火性を強化したい」といったものである。
【0019】
リフォーム施工業者は、チェックシート28によりこれらの希望を受け付けて、建物の改修部位や改修方法を提案する。各種の工法がある場合にはそれらを列挙して、費用対効果を比較できる工法選択シート42を提示する。こうして、顧客が納得をする改修工法を選択できるようにする。以下、「もっと暖かく暮らしたい」、「もっと涼しく暮らしたい」といった、温熱環境の改善を希望を持つ顧客を対象にした例を用いて、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0020】
[システム構成]
図2は、改修工法提案システムを実現するコンピュータの機能ブロック図である。
図1に示したコンピュータ12は、入力されたデータを使用し、上記の各シートを編集して出力する。即ち、コンピュータ12は、[記憶データ]の項で説明するデータを処理して、[演算処理]の項で説明する演算処理を実行する。以下の実施例において、このコンピュータ12は、顧客26の意思確認のために、リフォーム会社のヒアリング担当者24が顧客と面談しながら操作する。しかしながら、例えば、顧客26が自らコンピュータ12に表示された各シートを参照しながら、各種データを入力するようにしても構わない。
【0021】
コンピュータ12は、図2に示すように、周知のディスプレイ18やキーボード20といったマンマシンインタフェース用ハードウエアを備えているキーボード20は、顧客26の希望等を入力するために使用される。ディスプレイ18とプリンタ22は、コンピュータ12が演算処理をして編集をした各種シートを出力して表示するために使用される。コンピュータ12には、記憶装置14と演算処理装置16とが格納されている。記憶装置14には、改修工法提案システム10を動作させるために必要なデータが記憶されている。コンピュータ12には、コンピュータ12を図の演算処理装置14内に列挙した手段として機能させるコンピュータプログラムがインストールされている。
【0022】
[記憶データ]
図2に示すように、記憶装置14には、チェックシート28と診断データ30と療法提案データ32と療法提案シート34と意思確認シート36と再確認シート38と評価データ40と工法選択シート42と工法選択結果44とが記憶されている。診断データ30と療法提案データ32と評価データ40とは、予め専門家により作成されて準備されている。これらのデータは演算処理の過程で参照される。各シートは、データシートであって、コンピュータ12のディスプレイ18に表示されたり、プリンタ22で印刷されて顧客26に手渡されたりする。それぞれのシートは、顧客26が納得をして改修を希望する部位を選択し決定をするための過程で、重要な役割を果たす。以下これらのデータやシートについて説明する。
【0023】
「チェックシート」
図3は、チェックシート28の具体例を示す説明図である。
チェックシート28は、改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したものである。チェックシート28は、コンピュータ12のディスプレイ18に表示され、顧客26自身により、あるいはヒアリング担当者24により、いずれかの項目を指摘するための操作を受け付ける。例えば、「冬の寒さについて気になることがありますか?」という問いに対して、「すきま風が気になる」といった項目にチェックマークを入力する。その結果がコンピュータ12に入力される。リフォームのための相談を受け付けるときに、顧客はどの部位を改修すべきか分からない。従って、具体的に、最初に顧客26が気になっている事項を、建物の状態を示す表現で問いかける。建物の状態を示す項目は、顧客26が五感により直感的に感じ取ることができる状態であることが好ましい。なお、チェックシート28に、建物の建設年代等の客観的な事実を問う項目も含めるとよい。
【0024】
「診断データ」
図4は、診断データの具体例を示す説明図である。
診断データ30は、チェックシート28に列挙されている全ての項目について、改修が求められる原因となり得る建物の部位とその弱点を示したデータである。図の「質問の内容」の部分が、チェックシート28に列挙された項目である。「弱点部位」の部分が改修が求められる原因となり得る建物の部位である。「弱点性能」の部分が建物の部位の弱点を示す。
【0025】
診断データ30は、記憶装置14に記憶されており、チェックシート28で指摘された項目について、対応する建物の部位とその弱点を読み出すために参照される。例えば、チェックシート28で「すきま風が気になる」という項目が指摘されたときには、図のように、窓、床、壁が該当する部位で、弱点は気密性であるという情報が読み出せる。診断データ30で弱点とされる部位が特定されると、後で説明する「療法提案シート」の該当する部位の療法の提案ができる。
【0026】
「療法提案シート」
図5は、療法提案シートの具体例を示す説明図である。
療法提案シート34は、チェックシート28により指摘された項目について弱点のある部位と、その部位の改修方法を例示した根本療法と、改修以外の方法であって、顧客26が独自に対処できる対処療法とを列挙したものである。療法提案シート34は、チェックシート28で指摘された項目について、対策の具体的な提案をするためのシートである。この内容は、予め専門家により編集されている。図の例にはその一部のみを示した。部位毎に分けて編集されているから、部位を特定すると、該当する対処療法と根本療法とが抽出されるデータ形式が好ましい。
【0027】
記憶装置14に記憶された療法提案データ32から、該当する部分を抽出してディスプレイ18に表示され、あるいは印刷出力される。これは顧客26に直接手渡すよりも、ヒアリング担当者24が顧客26に対して説明をするために使用するとよい。従来は、チェックシート28を受け付けた段階で、顧客26に、改修すべき部分と費用を提示していた。しかし、この療法提案シート34は、診断データ30により弱点があるとされた部位について、顧客26独自に対処できる療法と改修する療法とを表示する。
【0028】
例えば、「すきま風が気になる」という項目が指摘されたときには、「すきまテープで埋める」といった対処療法と、「サッシの入れ替え」といった根本療法とが表示される。これにより、顧客26は、該当する部位について、改修以外の療法で対処できるかどうかを知り、いずれかを選択することによって、予算に応じた改修依頼をすることができる。
【0029】
「意思確認シート」
図6は、意思確認シートの具体例を示す説明図である。
意思確認シート36は、チェックシート28により指摘された建物の状態を示す項目と、顧客26がその改修を希望するかどうかを確認する欄と、顧客26が改修を希望する場所を確認する欄を含む。「こんな現象はありませんか?」という部分がチェックシート28により指摘された建物の状態を示す項目に相当する。この意思確認シート36を使用することにより、顧客26がこれまでの説明を聞いた結果、チェックシート28により指摘した項目を再確認して、追加したり、削除や変更をすることができる。
【0030】
「改善ご希望」という欄は、顧客26が上記の根本療法による改修を希望するかどうかを確認する欄である。「どの部屋・場所で感じますか?」という欄は、改修を希望する場所を確認する欄である。これまでは、窓、床、壁といった部位の一般的な説明が主であったが、この欄により、顧客が改修を希望する場所と部位を特定できる。
【0031】
意思確認シート36は、コンピュータ12のディスプレイ18に表示されて、顧客26自身により、あるいはヒアリング担当者24により、確認事項を入力する操作を受け付ける。これにより、チェックシート28により指摘された項目毎に、顧客26が根本療法を希望していることを確認する。このデータは顧客26の意思確認情報として、以下のシートの生成に利用される。
【0032】
「再確認シート」
図7は、再確認シートの具体例を示す説明図である。
再確認シート38は、チェックシート28により指摘された建物の状態を示す項目と、意思確認シート36により意思確認された改修が希望される部位と、該当する部位の弱点を改善するための単数または複数の工法とを列挙したものである。これらの工法は、上記の根本療法に含まれる。
【0033】
再確認シート38は、意思確認シート36に従って、具体的に該当する部位の改修をするための工法を紹介する。部位毎にその根本療法として複数の改修工法がある場合にそれらを全て、列挙する。例えば、参考のために、それらを採用した場合のシミュレーションデータも含めるとよい。顧客26は、改修を希望する場合であっても、複数の工法があるときには、そのいずれかを選択することができる。顧客26は、この再確認シート38と工法選択シート42を見比べて、最終的な改修内容を決定する。
【0034】
「評価データ」
図8は、評価データの具体例を示す説明図である。
評価データ40は、部位の弱点を改善するための工法と、その工法による改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを含む。図の(a)のデータ40Aと(b)のデータ40Bとが、評価データ40に含まれる。図のデータ40Aで、「手法No.」と記載した項目は、全ての工法の整理番号である。図では、その一部のみを例示した。
【0035】
「工法」と記載した欄に、全ての工法が列挙される。「対策」と記載した欄に、各工法の目的や具体的な対策が表示されている。図の(b)のデータ40Bには、改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価を示す。改修費用と改修による効果は、実際の数値ではなくて、5段階程度の相対評価値が好ましい。この評価データ40により、後で説明する費用対効果の順位付けを自動的に実行できる。
【0036】
例えば、日当たりが悪いという項目について、外部サッシ、小屋裏、気流止め、床下、壁という6種類の対象部位がある場合に、これらを比較して相対評価値を決める。例えば、これらの改修費用の段階評価はそれぞれ「5,4,3,2,1」となる。数値が高いほど、改修費用が安い。また、改修効果の段階評価はそれぞれ「5,3,4,1,1」となる。部位毎に、工法毎に、評価データを準備するとよい。また、相対評価値は、建物の種類や建設年代により異なる。木造軸組工法の建物、ツーバイフォー工法の建物、鉄骨構造の建物により異なるから,評価データを複数種類準備しておくことが好ましい。
【0037】
「工法選択シート」
図9は、工法選択シートの具体例を示す説明図である。
工法選択シート42は、再確認シート38に列挙された工法を、費用対効果の優れた順に配列したシートである。顧客26に再確認シート38を提示し、同時に、この工法選択シート42を提示して、改修部位毎に、選択可能な工法と、その費用対効果を示す。顧客26が予算を含めて最終的な改修希望部位等を決定するための判断資料になる。
【0038】
工法選択シート42には、チェックシート28や再確認シート38により改修が求められる建物の全ての部位を列挙する。再確認シート38無しでも顧客の意思確認ができるときは、チェックシート28の指摘のみに基づいて、項目を列挙しても構わない。図の実施例では、工法選択シート42に、各部位を費用対効果の優れた順に配列した。さらに、各部位について、その部位の弱点を改善するための工法を、費用対効果の優れた順に配列した。
【0039】
図のように、「日当たりが悪い」という項目について、改修をするべき複数の部位、例えば、5種類の部位があるとき、まず、各部位の費用対効果を比較する。そして、費用対効果の大きいものほど先に表示されるように、部位を配列する。さらに、各部位毎に、工法が表示される。各部位の改修工法が複数選択できるときは、各工法の費用対効果を比較する。そして、費用対効果の大きいものほど先に表示されるように、工法を配列する。
【0040】
なお、上記の評価データ40には、改修費用の段階評価と前記改修による効果の段階評価とが表示されている。使用対効果の順に各工法を自動的に配列するには、例えば、次のような論理を採用するとよい。まず、改修費用の段階評価を比較して、その段階評価が高いほど費用対効果が大きいとみなす。そして、改修費用の段階評価が同一のものについては、改修による効果の段階評価を比較して、その段階評価が高いほど費用対効果が大きいとみなす。
【0041】
改修費用の段階評価と効果の段階評価とがあるが、改修費用の段階評価のほうを優先して主配列キーとし、効果の段階評価のほうを従配列キーとすれば、自動的に、各工程を費用対効果の順に配列できる。なお、例えば、改修費用の段階評価と効果の段階評価とを加算した値を費用対効果を示す値としたり、改修費用の段階評価と効果の段階評価とを乗算した値を費用対効果を示す値としたりしても構わない。一定の演算式により費用対効果を示す値を算出できれば、各工法を自動的に比較できる。以上により、改修工法提案ツールの説明をした。以下に、改修工法提案プログラムによる処理動作を具体的に説明する。
【実施例2】
【0042】
[演算処理]
図10と図11は、演算処理動作を説明するフローチャートである。
改修工法提案システム10を機能させるために、図2に示すように、演算処理装置は、項目指摘手段46とデータ出力手段50と工法選択手段52と順位付け手段54とデータ受付手段56とを備える。図10のステップS11に示すように、項目指摘手段46は、改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシート28(図3)をディスプレイ18に表示する。
【0043】
改修を求める顧客は、例えば、日当たりが悪い、ニ階が極端に暑いといった項目のチェックボタンをクリックして、その項目を指摘する。ステップS12で、このような項目を指摘するための操作を受け付ける。即ち、項目指摘済みのチェックシート28を記憶装置14に記憶する。なお、記憶装置14に記憶するデータは、チェックシート28全体でなくて、指摘された項目が特定できるデータであればよい。
【0044】
次に、データ出力手段50は、チェックシート28により指摘された項目について、ステップS13で診断データ30を参照する。さらに、ステップS14で、療法提案データ32を参照する。こうして、ステップS15で、療法提案データ32から該当する部位の対処療法と根本療法を選択する。ステップS16では、該当する療法提案シート34を表示する。
【0045】
次に、データ受付手段56は、ステップS17で意思確認シート36を表示する。意思確認シート36は、定型のものをそのまま表示してもよいし、チェックシート28により指摘された項目の部分のみを選択して表示してもよい。そして、ステップS18で、顧客の意思確認によるチェックが入力された意思確認シート36を記憶装置14に記憶する。データ出力手段50は、取得した意思確認シート中のデータを使用して、ステップS19で再確認シート38を生成する。即ち、改修の希望が確認された部位の説明を選択し、ステップS20で、ディスプレイ18に再確認シート38を表示する。
【0046】
次に、図11の処理に進む。工法選択手段52は、ステップS21で、チェックシート28を用いて指摘された項目の取得をする。さらに、ステップS22で、意思確認シート36に入力されたデータを取得する。なお、チェックシート28により取得されたデータと意思確認シート36により取得されたデータのいずれか一方のデータのみを利用しても構わない。ステップS23では、工法選択シート42に表示する項目の決定をする。
【0047】
ステップS24で、工法選択手段52は、診断データ30を参照する。さらに、ステップS25では、評価データ40を参照する。即ち、工法選択手段52は、診断データ30を参照して、改修が求められる建物の全ての部位を抽出し、評価データ40を参照して、該当する部位の弱点を改善するための工法を選択する。続いて、順位付け手段54は、ステップS26で、各工法について、費用対効果に着目した順位付けをし、ステップS27で工法選択シート42を生成する。
【0048】
即ち、順位付け手段54は、評価データ40を参照して、工法選択手段52により選択された工法と、その工法による改修費用の段階評価と、改修による効果の段階評価とを取得する。選択された工法が複数あるときは、改修費用の段階評価と改修による効果の段階評価とから、費用対効果を算出する。そして、費用対効果の優れた順に複数の工法を配列する。費用対効果の算出方法は、実施例1で説明したとおりである。
【0049】
データ出力手段50は、ステップS28で、部位別に配列した工法を表示する工法選択シート42をディスプレイ18に表示する。工法の配列方法は、実施例1で説明したとおりである。その後、図9に示した工法選択シート42を用いて、顧客が最終的に改修を希望する工法を決定する。即ち、該当する工法にチェックマークを入力する。データ受付手段56は、ステップS29で、その工法選択結果44を取得する。その結果は記憶装置14に記憶される。ステップS30で、後処理を実行する。この後処理は、例えば、既知の見積書作成プログラムを起動して、見積書を作成するといった手順になる。
【0050】
以上のようなツールを使用して、顧客の建物の改修に対する理解を求める。療法提案シート34により改修をする場合としない場合の説明をしてから、工法選択シート42を用いて、選択し得る工法を列挙する。それらの工法の費用対効果が一目瞭然であるから、顧客は十分に納得をした上で、予算に応じた改修を求めることができる。各シートを自動的に生成して表示をしたり印刷をするシステムをコンピュータに組み込めば、顧客のヒアリングを効率良く行うことができ、リフォーム受注の成約率を高めることができる。
【0051】
なお、上記のコンピュータの演算処理装置で実行されるコンピュータプログラムは、機能ブロック単位でモジュール化されてもよいし、複数の機能ブロックを組み合わせて一体化されたものでもよい。また、上記のコンピュータプログラムは、既存のアプリケーションプログラムの一部に組み込んで使用してもよい。本発明を実現するためのコンピュータプログラムは、例えばCD−ROMのようなコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、コンピュータを使用する各種の情報処理装置にインストールして利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 改修工法提案システム
12 コンピュータ
14 記憶装置
16 演算処理装置
18 ディスプレイ
20 キーボード
22 プリンタ
24 ヒアリング担当者
26 顧客
28 チェックシート
30 診断データ
32 療法提案データ
34 療法提案シート
36 意思確認シート
38 再確認シート
40 評価データ
42 工法選択シート
44 工法選択結果
46 項目指摘手段
50 データ出力手段
52 工法選択手段
54 順位付け手段
56 データ受付手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシートを表示し、いずれかの前記項目を指摘するための操作を受け付ける項目指摘手段と、
前記チェックシートに列挙された全ての項目に対する診断データと評価データを記憶する記憶装置とを備え、
前記診断データは、前記それぞれの項目について改修が求められる原因となり得る建物の部位とその弱点を示し、前記評価データは、前記部位の弱点を改善するための工法と、前記工法による改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを含むものであって、
前記診断データを参照して、改修が求められる建物の全ての部位を抽出し、前記評価データを参照して、該当する部位の弱点を改善するための工法を選択する工法選択手段と、
前記評価データを参照して、前記工法選択手段により選択された工法と、その工法による前記改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを取得し、選択された工法が複数あるときは、前記改修費用の段階評価と前記改修による効果の段階評価とから算出された費用対効果の優れた順に、前記複数の工法を配列する順位付け手段と、
前記費用対効果の優れた順に配列した工法を表示する工法選択シートを出力するデータ出力手段とを備えたことを特徴とする改修工法提案システム。
【請求項2】
請求項1に記載の改修工法提案システムにおいて、
前記工法選択シートは、改修が求められる建物の全ての部位を、費用対効果の優れた順に配列し、各部位についてその部位の弱点を改善するための工法を、費用対効果の優れた順に配列することを特徴とする改修工法提案システム。
【請求項3】
請求項2に記載の改修工法提案システムにおいて、
前記順位付け手段は、前記部位毎に、その部位の弱点を改善するための複数の工法を相対比較して得られた、前記改修費用の段階評価と前記改修による効果の段階評価とを使用し、段階評価が高いほど費用対効果が大きいとみなして、前記各工程を、改修費用の段階評価の高い順に配列し、改修費用の段階評価が同一のものについては、改修による効果の段階評価の高い順に配列することを特徴とする改修工法提案システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の改修工法提案システムにおいて、
前記項目指摘手段により前記チェックシートの項目が指定されたとき、前記データ出力手段は、前記チェックシートにより指摘された項目について弱点のある部位と、その部位の改修方法を例示した根本療法と、改修以外の方法であって、顧客独自に対処できる対処療法とを列挙した療法提案シートを出力することを特徴とする改修工法提案システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の改修工法提案システムにおいて、
前記工法選択手段は、チェックシートにより指摘された建物の状態を示す項目と、顧客がその改修を希望するかどうかを確認する欄と、顧客が改修を希望する場所を確認する欄を含む意思確認シートにより、前記顧客が改修を希望する場所に存在する部位を、前記工法選択シートに列挙することを特徴とする改修工法提案システム。
【請求項6】
下記のシートはいずれも、建物の改修を希望する顧客に対して印刷して出力するものであって、
改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシートと、
前記チェックシートにより指摘された項目について弱点のある部位と、その部位の改修方法を例示した根本療法と、改修以外の方法であって、顧客独自に対処できる対処療法とを列挙した療法提案シートと、
前記改修が求められる建物の全ての部位を、費用対効果の優れた順に配列し、各部位について、その部位の弱点を改善するための工法を、費用対効果の優れた順に配列した工法選択シート、
前記チェックシートにより指摘された建物の状態を示す項目と、顧客がその改修を希望するかどうかを確認する欄と、顧客が改修を希望する場所を確認する欄を含む意思確認シートと、
を備えたことを特徴とする改修工法提案ツール。
【請求項7】
コンピュータを、
改修が求められる建物の状態を示す項目を列挙したチェックシートを表示し、いずれかの前記項目を指摘するための操作を受け付ける項目指摘手段と、
前記チェックシートに列挙された全ての項目に対する診断データと評価データを記憶する記憶装置と、
前記診断データは、前記それぞれの項目について改修が求められる原因となり得る建物の部位とその弱点を示し、前記評価データは、前記部位の弱点を改善するための工法と、前記工法による改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを含むものであって、
前記診断データを参照して、改修が求められる建物の全ての部位を抽出し、前記評価データを参照して、該当する部位の弱点を改善するための工法を選択する工法選択手段と、
前記評価データを参照して、前記工法選択手段により選択された工法と、その工法による前記改修費用の段階評価と、前記改修による効果の段階評価とを取得し、選択された工法が複数あるときは、前記改修費用の段階評価と前記改修による効果の段階評価とから算出された費用対効果の優れた順に、前記複数の工法を配列する順位付け手段と、
前記費用対効果の優れた順に配列した工法を表示する工法選択シートを出力するデータ出力手段、
として機能させる改修工法提案プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の改修工法提案プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−146186(P2012−146186A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4902(P2011−4902)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【出願人】(597007282)住友林業ホームテック株式会社 (43)