説明

改修用ドレン、および改修用ドレンによる既設中継ドレンの改修方法

【課題】既設中継ドレンの改修を容易に行うことができるとともに、排水溝を流れる排水が既設中継ドレンへ流れ込むことを防止する改修用ドレンを提供する。
【解決手段】排水溝20の底面部21に設けられる既設中継ドレン30の改修に用いられ、既設中継ドレン30に挿入される管状部11と、管状部11の一端が接続される開口部17を有し、既設中継ドレン30を覆い、かつ排水溝20の底面部21および各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)に沿うように排水溝20内に配置可能に構成される溝配置部12と、を具備する改修用ドレン10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水溝に設けられる既設中継ドレンの改修に用いられる改修用ドレンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の屋上やベランダ等の排水設備に設けられる中継ドレン(既設中継ドレン)が損傷し、または経年劣化して改修が必要な場合には、当該既設中継ドレンを排水設備から全面撤去する方法がある。しかし、当該方法は、既設中継ドレンが建物の屋上やベランダの床部に埋まっているため、既設中継ドレンを撤去するだけでなく、既設中継ドレン周辺のコンクリート、防水シート等も撤去しなければならず、既設中継ドレンの改修が煩雑であるという問題があった。また、既設中継ドレンの損傷または劣化の程度によっては、既設中継ドレンを完全に排水設備から撤去することができず、既設中継ドレンの改修が困難であるという問題もあった。
そこで、既設中継ドレンの上部に改修用ドレンを取り付けることにより、排水設備から既設中継ドレンを撤去することなく既設中継ドレンの改修を行う方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1においては、建物の排水管の内側に嵌められる管部と、該管部の上端から半径方向に外方に広がる鍔部と、を具備する改修用ドレンが開示されている。
特許文献1においては、当該改修用ドレンを既設中継ドレンに取り付けてから、固定ネジ等により当該改修用ドレンを既設中継ドレンおよび建物に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような改修用ドレンは、排水溝内に設けられた既設中継ドレンに取り付ける際に、当該改修用ドレンの鍔部を排水溝の形状に合わせて変形させながら既設中継ドレンに取り付けるものではない。そのため、特許文献1に示すような改修用ドレンを排水溝内に設けられた既設中継ドレンに取り付けた場合、改修用ドレンの下面(裏面)と、排水溝との間に間隙が生じ易くなるとともに、当該隙間を水密にすることが困難である。そして、当該隙間が生じ易くなることで、排水溝を流れる排水が、改修用ドレンの上面を流れずに、当該間隙へ流れ込むこととなり、当該排水が、改修用ドレンの下側(裏側)の既設中継ドレンへ流れ込み易くなるという問題があった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、既設中継ドレンの改修を容易に行うことができるとともに、排水溝を流れる排水が既設中継ドレンへ流れ込むことを防止する改修用ドレンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上であり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、排水溝の底面部に設けられる既設中継ドレンの改修に用いられる改修用ドレンであって、前記既設中継ドレンに挿入される管状部と、前記管状部の一端が接続される開口部を有し、前記既設中継ドレンを覆い、かつ前記排水溝の底面部および側面部に沿うように前記排水溝内に配置可能に構成される溝配置部と、を具備するものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記溝配置部は、前記排水溝の形状および前記既設中継ドレンの形状に合わせて変形可能な柔軟な材質で構成されるものである。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記開口部は、前記溝配置部の底部から下方に向けて湾曲状に突出する突出部の先端に配置されるものである。
【0011】
第4の発明は、第1から第3のいずれか1つの発明による既設中継ドレンの改修方法であって、前記改修用ドレンを前記排水溝および前記既設中継ドレンに配置し易くするために、前記排水溝および前記既設中継ドレンを加工する工程と、前記改修用ドレンの管状部を前記加工した既設中継ドレンに挿入するとともに、前記改修用ドレンの溝配置部を、前記既設中継ドレンを覆うように、かつ前記加工した排水溝の底面部および側面部に沿うように前記加工した排水溝内に配置する工程と、前記配置した改修用ドレンと、前記加工した排水溝および既設中継ドレンとの間を水密にする工程と、を具備する、ものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明に係る改修用ドレンによれば、既設中継ドレンの改修を容易に行うことができるとともに、排水溝を流れる排水が既設中継ドレンへ流れ込むことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る改修用ドレン、既設中継ドレン、および排水溝の斜視図。
【図2】(a)第1実施形態に係る改修用ドレンの背面断面図。(b)第1実施形態に係る改修用ドレンの側面断面図。
【図3】第1実施形態に係る改修用ドレンを既設中継ドレン、および排水溝に取り付けた際の斜視図。
【図4】(a)第1実施形態に係る改修用ドレンを既設中継ドレン、および排水溝に配置した際の側面断面図。(b)第1実施形態に係る改修用ドレンを既設中継ドレン、および排水溝の形状に合わせて変形させて取り付けた際の側面断面図。
【図5】第1実施形態に係る改修用ドレンの溝配置部の上部を外方向に折り曲げて、既設中継ドレン、および排水溝に取り付けた際の斜視図。
【図6】第1実施形態に係る改修用ドレンによる既設中継ドレンの改修が完了した際の斜視図。
【図7】第1実施形態に係る改修用ドレンによる既設中継ドレンの改修が完了した際の側面断面図。
【図8】(a)第1実施形態に係る改修用ドレンの管状部と溝配置部とを接続する前の側面断面図。(b)第1実施形態に係る改修用ドレンの管状部と溝配置部とを接続した後の側面断面図。
【図9】第1実施形態に係る改修用ドレンを既設中継ドレン、および排水溝の形状に合わせて変形させた際の改修用ドレンの斜視図。
【図10】第1実施形態に係る改修用ドレンを用いた既設中継ドレンの改修方法を示すフロー図。
【図11】第2実施形態に係る改修用ドレン、既設中継ドレン、および排水溝の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明に係る改修用ドレンの第1実施形態である改修用ドレン10について説明する。以下では、図1に示すように、改修用ドレン10を排水溝20に配置した際に、排水溝20を流れる排水が改修用ドレン10へ流れ込む側を改修用ドレン10の前側として前後左右方向を規定する。
【0016】
改修用ドレン10は、排水溝20に設けられる既設中継ドレン30の改修に用いられるものである。
【0017】
ここで、排水溝20は、排水が流れる溝であり、図1に示すように、ベランダや廊下を構成する平面状の床部1に設けられる。既設中継ドレン30は、排水溝20に設けられる。排水溝20を流れる排水は、既設中継ドレン30を介して、既設中継ドレン30の下方に設けられる雨樋に流れる。また、既設中継ドレン30の上方に設けられる雨樋を流れる排水は、既設中継ドレン30を介して、前記既設中継ドレン30の下方の雨樋に流れる。
排水溝20は、底面部21と、右側面部22と、左側面部23と、傾斜低位側面部24と、から構成される。
【0018】
図1に示すように、排水溝20の底面部21は、排水溝20の底面部分であり、排水が流れるようにその一端から他端に向けて傾斜している。
排水溝20の右側面部22は、排水溝20の第1側面部であり、排水が流れる方向に対して平行する側面部のうち一方の側面部である。右側面部22は、排水溝20内を流れる排水の流れ方向に対して右側に形成される。
排水溝20の左側面部23は、排水溝20の第2側面部であり、排水が流れる方向に対して平行する側面部のうち他方の側面部である。左側面部23は、排水溝20内を流れる排水の流れ方向に対して左側に形成される。
排水溝20の傾斜低位側面部24は、排水溝20の第3側面部であり、排水が流れる方向の終端側の側面部である。傾斜低位側面部24は、排水溝20の傾斜低位側、すなわち、排水溝20の長手方向(排水の流れ方向)の終端側に形成される。
【0019】
また、図1に示すように、既設中継ドレン30は、排水溝20の長手方向(排水の流れ方向)の終端側(傾斜低位側面部24の近傍)であって、排水溝20の底面部21に配置される。すなわち、既設中継ドレン30は、排水溝20を流れる排水が、既設中継ドレン30の前側から既設中継ドレン30内に流れ込むように配置される。
既設中継ドレン30は、鍔部31と、管部32と、から構成される。
既設中継ドレン30の鍔部31は、排水溝20を流れる排水を受ける部分であり、排水溝20の底面部21に配置される。
既設中継ドレン30の管部32は、鍔部31において受けた排水を、既設中継ドレン30の下方に設けられる雨樋へ排出する部分である。管部32は、筒状の部分であり、上端が鍔部31の下部に接続されるとともに、下端が雨樋に接続される。
【0020】
一方、図1および図2に示すように、改修用ドレン10は、管状部11と、溝配置部12と、を具備する。改修用ドレン10は、排水溝20を流れる排水が排水溝20の傾斜高位側から溝配置部12の前側へ流れ込み、流れ込んだ排水が管状部11から排出されるように、排水溝20および既設中継ドレン30に取り付けられる。
改修用ドレン10の管状部11は、既設中継ドレン30の管部32に挿入される部分である。
改修用ドレン10の溝配置部12は、既設中継ドレン30を覆うように配置され、かつ排水溝20の底面部21および排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)に沿うように排水溝20内に配置可能に構成される部分である。溝配置部12は、排水溝20内を流れる排水が排水溝20の傾斜高位側から溝配置部12の前側へ(図4の矢印A方向へ)流れ込むように、排水溝20内に配置される。また、溝配置部12は、その底部13に開口部17を有する。
改修用ドレン10の溝配置部12における開口部17は、溝配置部12の底部13の傾斜低位部である底部13の後端部に設けられる。図2に示すように、開口部17は、管状部11の一端が接続される部分である。開口部17と、管状部11の一端とが接続されることにより、管状部11内と溝配置部12内とが連通する。
【0021】
ここで、改修用ドレン10の管状部11の構成について説明する。
図1および図2に示すように、改修用ドレン10の管状部11は、管状の部材である。管状部11は、既設中継ドレン30の管部32に挿入可能となるように、その外径が既設中継ドレン30の管部32の内径より小さい。管状部11は、既設中継ドレン30の管部32の形状に合わせて変形可能な柔軟な材質(例えば、薄い鉛素材や半田素材)で構成される。
【0022】
次に、改修用ドレン10の溝配置部12の構成について説明する。
【0023】
図1および図2に示すように、改修用ドレン10の溝配置部12は、直方体の上面と正面が取り除かれた部材であり、排水溝20および既設中継ドレン30の鍔部31の形状に合わせて変形可能で、かつ切断工具により容易に切断可能な柔軟な材質(例えば、薄い鉛素材や半田素材)で構成される。溝配置部12は、底部13と、右側部14と、左側部15と、後側部16と、開口部17と、から構成される。
【0024】
図3および図4に示すように、改修用ドレン10の溝配置部12における底部13は、排水溝20の底面部21の上部および既設中継ドレン30の鍔部31の上部に配置される部分である。底部13は、その後部が略円弧状に湾曲して形成される。底部13の左右方向の長さは、溝配置部12を排水溝20に嵌め合わすことができる程度(排水溝20の底面部21の左右方向の長さと同程度)の長さとなっている。また、底部13の前後方向の長さは、既設中継ドレン30の鍔部31の上部を完全に覆うことが可能な程度の長さとなっている。底部13は、溝配置部12の前側から後側に向けて、すなわち排水溝20を流れる排水の流れ方向に傾斜している。底部13は、排水溝20の排水が流れる方向の始端側の縁部が排水溝20の底面部21に沿うように排水溝20内に配置可能に構成される。底部13は、既設中継ドレン30の上部に配置される。
【0025】
改修用ドレン10の溝配置部12における右側部14は、溝配置部12の第1側部であり、底部13の右側端部から上方向に延設される。右側部14は、底部13における排水溝20の右側面部22側の縁部から立設される。右側部14と底部13との間は水密に形成される。右側部14は、溝配置部12を排水溝20に配置した際に、排水溝20の右側面部22に沿うように排水溝20内に配置可能に構成される。右側部14の上下方向の長さは、改修用ドレン10を排水溝20に配置した際に、排水溝20を流れる排水が、改修用ドレン10の下側(右側部14の側面と右側面部22との間に生じる間隙)へ流れ込まない程度の長さである。右側部14の上下方向の長さは、右側面部22の上下方向の長さ(排水溝20の深さ)より長く構成される。そして、図3に示すように、右側部14の上端は、溝配置部12を排水溝20に固定した際には、床部1の床面に合わせて切断される。
【0026】
改修用ドレン10の溝配置部12における左側部15は、溝配置部12の第2側部であり、右側部14と対向するように、底部13の左側端部から上方向に延設される。左側部15は、底部13における排水溝20の左側面部23側の縁部から立設される。左側部15と底部13との間は水密に形成される。左側部15は、溝配置部12を排水溝20に配置した際に、排水溝20の左側面部23に沿うように排水溝20内に配置可能に構成される。左側部15の上下方向の長さは、改修用ドレン10を排水溝20に配置した際に、排水溝20を流れる排水が、改修用ドレン10の下側(左側部15の側面と左側面部23との間に生じる間隙)へ流れ込まない程度の長さである。左側部15の上下方向の長さは、左側面部23の上下方向の長さ(排水溝20の深さ)より長く構成される。そして、図3に示すように、左側部15の上端は、溝配置部12を排水溝20に固定した際には、床部1の床面に合わせて切断される。
【0027】
改修用ドレン10の溝配置部12における後側部16は、溝配置部12の第3側部であり、略平面状の部材を湾曲させて形成した部分である。後側部16は、底部13の後側端部から上方向に延設される。後側部16は、底部13における排水溝20の傾斜低位側面部24側の縁部から立設される。後側部16と底部13との間は水密に形成される。後側部16は、溝配置部12を排水溝20に配置した際に、排水溝20の傾斜低位側面部24に沿うように排水溝20内に配置可能に構成される。後側部16の上下方向の長さは、改修用ドレン10を排水溝20に配置した際に、排水溝20を流れる排水が、改修用ドレン10の下側(後側部16の側面と傾斜低位側面部24との間に生じる間隙)へ流れ込まない程度の長さである。後側部16の上下方向の長さは、傾斜低位側面部24の上下方向の長さ(排水溝20の深さ)より長く構成される。そして、図3に示すように、後側部16の上端は、溝配置部12を排水溝20に固定した際には、床部1の床面に合わせて切断される。
【0028】
改修用ドレン10の溝配置部12における開口部17は、排水溝20の傾斜高位側から溝配置部12の前側へ流れ込んできた排水が、管状部11に流れ込むための当該排水の入口部分である。
【0029】
以上のように改修用ドレン10は構成される。
そして、改修用ドレン10を用いて、既設中継ドレン30を改修する際には、既設の雨樋を既設中継ドレン30の上方および下方から取り除き、既設中継ドレン30および排水溝20の表面を加工した後、図3および図4(a)に示すように、改修用ドレン10の管状部11を既設中継ドレン30の管部32に挿入するとともに、改修用ドレン10の溝配置部12を排水溝20に配置する。この時、溝配置部12の右側部14が排水溝20の右側面部22に沿うように、溝配置部12の左側部15が排水溝20の左側面部23に沿うように、溝配置部12の後側部16が排水溝20の傾斜低位側面部24に沿うように、溝配置部12を排水溝20内に配置する。このように、管状部11を管部32に挿入し、溝配置部12を排水溝20に配置することで、改修用ドレン10が排水溝20および既設中継ドレン30に取り付けられる。
さらに、図4(b)に示すように、改修用ドレン10の溝配置部12を木槌で叩くことにより、溝配置部12を、排水溝20および既設中継ドレン30の形状に合わせて変形させる。これにより、溝配置部12の底部13および各側部(右側部14、左側部15、後側部16)が、排水溝20の底面部21および各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)と、既設中継ドレン30の鍔部31と、に沿うように排水溝20内に取り付けられる。
さらにまた、図6および図7に示すように、改修用ドレン10および排水溝20を防水層50(防水シート)によって被覆することにより、改修用ドレン10と、排水溝20との間を水密にする。
また、改修用ドレン10の上方に、雨樋40が配置されるとともに、改修用ドレン10の下方に、雨樋41が配置される。
図7に示すように、雨樋40は、雨樋40内を流れる排水が改修用ドレン10の管状部11へ流れ込むように配置される。雨樋40は、その下端が改修用ドレン10の溝配置部12の内部であって、改修用ドレン10の管状部11の上方(改修用ドレン10の溝配置部12における開口部17の上方)に配置される。
図7に示すように、雨樋41は、改修用ドレン10の管状部11の下端部が雨樋41内に挿入されるように、改修用ドレン10の管状部11の下端部に取り付けられる。
【0030】
以上のように改修用ドレン10を構成することで、溝配置部12の各側部(右側部14、左側部15、後側部16)が、排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)に沿うように排水溝20内に配置可能に構成されるため、溝配置部12を排水溝20の溝形状に合わせて容易に配置することができる。そのため、改修用ドレン10を既設中継ドレン30(排水溝20)へ容易に取り付けることができる。
【0031】
また、改修用ドレン10を既設中継ドレン30(排水溝20)へ取り付けた場合、溝配置部12の各側部(右側部14、左側部15、後側部16)が排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)に沿うため、排水溝20を流れる排水が、溝配置部12の各側部(右側部14、左側部15、後側部16)と、排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)との間隙から改修用ドレン10(溝配置部12)の下側へ流れ込み難くなる。そのため、排水溝20を流れる排水が、既設中継ドレン30へ流れ込むことを防止できる。また、防水層50が経年劣化した場合であっても、排水溝20を流れる排水が、既設中継ドレン30へ流れ込むことを防止できる。
【0032】
さらに、改修用ドレン10の溝配置部12が、排水溝20の形状および既設中継ドレン30の形状に合わせて変形可能な柔軟な材質で構成されることから、溝配置部12を排水溝20および既設中継ドレン30の形状に合わせながら変形させて排水溝20および既設中継ドレン30の形状に一致するように確実に溝配置部12を排水溝20および既設中継ドレン30に取り付けることができる。
同様に、改修用ドレン10の管状部11が、既設中継ドレン30の管部32の形状に合わせて変形可能な柔軟な材質で構成されることから、管状部11を既設中継ドレン30の管部32の形状に合わせながら変形させて管部32の形状に一致するように確実に管状部11を既設中継ドレン30に取り付けることができる。
【0033】
なお、改修用ドレン10の溝配置部12における各側部(右側部14、左側部15、後側部16)の上端は、図3に示すように、溝配置部12を排水溝20に固定した際には、床部1の床面に合わせて切断されるが、溝配置部12の外方向に折り曲げてもよい(図5参照)。
また、改修用ドレン10の管状部11は、既設中継ドレン30の管部32に容易に挿入できるように、管状部11の下端の外径が、管状部11の上端の外径より小さく構成されている。
【0034】
さらに、図4に示すように、改修用ドレン10の管状部11は、既設中継ドレン30の管部32に挿入されると、その先端部が床部1の上面から下面に貫通する。すなわち、管状部11は、その先端部分が床部1の下面から突出可能な程度の長さに構成される。このように管状部11が構成されることにより、床部1の下面から突出する部分に改修用ドレン10(既設中継ドレン30)の下方に設けられる雨樋41を、改修用ドレン10の下方から改修用ドレン10に容易に取り付けることができる。
【0035】
さらにまた、改修用ドレン10においては、開口部17と管状部11の一端(上端)との接続部19を溝配置部12の底部13から離れた位置に設けてもかまわない。
図8および図9に示すように、改修用ドレン10の開口部17は、底部13から下方に突出する突出部18の先端に設けられる。溝配置部12は、突出部18の先端に設けられる開口部17に管状部11の一端(上端)を突き合わせることで管状部11に接続される。
突出部18は、筒状の部分であり、溝配置部12の底部13から下方に向けて湾曲状に突出する。突出部18は、溝配置部12の底部13を基端とし、当該基端から底部13の下方へ向けて滑らかな円弧形状に曲げられる。
突出部18の先端に設けられる開口部17と、管状部11の一端(上端)とは、溝配置部12の底部13から離れた位置で接続される。開口部17に管状部11の一端(上端)が接続されることにより、管状部11内と溝配置部12内とが連通する。
【0036】
以上のように、改修用ドレン10の開口部17が改修用ドレン10の溝配置部12の底部13から下方に向けて湾曲状に突出する突出部18の先端に設けられることから、排水溝20を流れる排水が、開口部17から管状部11へ流れ易くなる。
また、開口部17と、管状部11の一端(上端)との接続部19は溶接により処理がなされているため、接続部19はその周辺部と比べて硬くなるが、突出部18の先端に開口部17が設けられることで、接続部19が溝配置部12の底部13から離れた位置となるため、改修用ドレン10の溝配置部12における底部13を排水溝20の底面部21に沿わせる際に、改修用ドレン10の溝配置部12における底部13を排水溝20の底面部21に沿わせ易くなる。図9に示すように、接続部19が溝配置部12の底部13から離れた位置となるため、底部13と、接続部19との間に設けられる突出部18の形状を既設中継ドレン30の形状に合わせて容易に変形することができる。
【0037】
次に、改修用ドレン10による既設中継ドレン30の改修方法について説明する。
【0038】
図10に示すように、まず、改修用ドレン10を排水溝20および既設中継ドレン30に配置し易くするために、排水溝20および既設中継ドレン30を加工する工程(第1工程)を行う。
第1工程では、既設中継ドレン30の上方および下方に設けられる既設の雨樋を既設中継ドレン30の上方および下方から取り除く。そして、適宜の工具(例えば、サンダー)を用いて、既設中継ドレン30および排水溝20の表面を平らにし、または既設中継ドレン30および排水溝20に付着した付着物(例えば、錆)を除去する。
【0039】
上記第1工程が完了すると、次の工程として、第1工程において加工した排水溝20および既設中継ドレン30に、改修用ドレン10を配置する工程(第2工程)を行う。
第2工程では、改修用ドレン10の管状部11を加工した既設中継ドレン30に挿入するとともに、改修用ドレン10の溝配置部12を、既設中継ドレン30を覆うように、かつ加工した排水溝20の底面部21および各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)に沿うように排水溝20内に配置する。
この際、既設中継ドレン30の管部32に、改修用ドレン10の管状部11を挿入する。この時、溝配置部12の右側部14を排水溝20の右側面部22側へ、溝配置部12の左側部15を排水溝20の左側面部23側へ、溝配置部12の後側部16を排水溝20の傾斜低位側面部24側へ、それぞれ向けながら管状部11を管部32に挿入する。
また、溝配置部12の底部13が既設中継ドレン30を覆うように、かつ溝配置部12の底部13および各側部(右側部14、左側部15、後側部16)が排水溝20の底面部21および各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)に沿うように溝配置部12を排水溝20内に配置する。そして、変形可能な柔軟な材質で構成される溝配置部12を、例えば木槌で叩いて、排水溝20および既設中継ドレン30の形状に合わせて、溝配置部12の形状を変形させながら、管状部11および溝配置部12を排水溝20および既設中継ドレン30に取り付ける。この際、溝配置部12の各側部(右側部14、左側部15、後側部16)と、排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)との間隙が閉じるように溝配置部12を排水溝20に取り付ける
【0040】
上記第2工程が完了すると、次の工程として、第2工程において配置した改修用ドレン10と、第1工程において加工した排水溝20および既設中継ドレン30との間を水密にする工程(第3工程)を行う。
改修用ドレン10の溝配置部12における各側部(右側部14、左側部15、後側部16)と、排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)との間隙が閉じるように、改修用ドレン10および排水溝20を防水層50(防水シート)によって被覆する。
【0041】
上記第3工程が完了すると、次の工程として、改修用ドレン10の上方および下方に雨樋40および雨樋41を配置する工程(第4工程)を行う。
まず、雨樋40の下端が改修用ドレン10の溝配置部12の内部であって、管状部11の上方(開口部17の上方)となるように、雨樋40を配置する。次に、管状部11の下端部が雨樋41内に挿入されるように、雨樋41の上端部を管状部11の下端部に取り付ける。
【0042】
なお、上記第4工程においては、改修用ドレン10の下方に雨樋41を配置した後に、改修用ドレン10の上方に雨樋40を配置しても構わない。
また、上記第2工程が完了した後に上記第4工程を先に行い、その後に上記第3工程を行っても構わない。
【0043】
以上のように、第1工程から第3工程を行うことで、溝配置部12の各側部(右側部14、左側部15、後側部16)が、排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)に沿うように排水溝20内に配置されるため、溝配置部12を排水溝20の溝形状に合わせて容易に配置することができる。そのため、改修用ドレン10を既設中継ドレン30(排水溝20)へ容易に取り付けることができる。
【0044】
また、排水溝20を流れる排水が、溝配置部12の各側部(右側部14、左側部15、後側部16)と、排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23、傾斜低位側面部24)との間隙から改修用ドレン10(溝配置部12)の下側へ流れ込み難くなるように、改修用ドレン10を既設中継ドレン30(排水溝20)に取り付けることができる。そのため、排水溝20を流れる排水が、既設中継ドレン30へ流れ込むことを防止できる。
【0045】
溝配置部12が、排水溝20の形状および既設中継ドレン30の形状に合わせて変形可能な柔軟な材質で構成されることから、溝配置部12を排水溝20および既設中継ドレン30の形状に合わせながら確実に溝配置部12を排水溝20および既設中継ドレン30に取り付けることができる。
【0046】
次に、本発明に係る改修用ドレンの第2実施形態である改修用ドレン70について説明する。以下では、改修用ドレン70を排水溝20に配置した際に排水が流れ込む側を前側として前後左右方向を規定する。また、改修用ドレン70以外の構成については、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0047】
改修用ドレン70による既設中継ドレン30の改修は、第1実施形態である改修用ドレン10の場合と同様に、排水溝20の底面部21に既設された既設中継ドレン30の上に改修用ドレン70を取り付けることにより行う。
改修用ドレン70は、排水溝20の中途部であって、排水溝20の底面部21に設けられる既設中継ドレン30に取り付けられる。
【0048】
図11に示すように、改修用ドレン70は、管状部71と、溝配置部72とから構成される。
【0049】
改修用ドレン70の管状部71は、既設中継ドレン30の管部32に挿入される管状の部分である。管状部71は、溝配置部72の下面中央部に設けられる。管状部71の構成は、第1実施形態である改修用ドレン10の管状部11の構成と同様のため説明を省略する。
【0050】
改修用ドレン70の溝配置部72は、排水溝20および既設中継ドレン30を覆うように配置され、かつ排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23)を沿うように排水溝20内に配置可能に構成される部分である。溝配置部72は、直方体の上面、正面、および背面が取り除かれた形状であり、その前後方向から、排水溝20内を流れる排水が流れ込むように構成される。溝配置部72は、管状部71の上端に接続され、管状部71を中心として左右方向に延設される。溝配置部72は、排水溝20および既設中継ドレン30の形状に合わせて変形可能で、かつ切断工具により容易に切断可能な柔軟な材質(例えば、薄い鉛素材や半田素材)で構成される。
【0051】
図11に示すように、溝配置部72は、底部73と、右側部74と、左側部75と、開口部77と、から構成される。
【0052】
改修用ドレン70の溝配置部72における底部73は、排水溝20および既設中継ドレン30の上部に配置される部分である。底部73は、溝配置部12の前側および後側から中央部に向けて、すなわち、溝配置部12の前後両端部から開口部77へ向けて(排水溝20を流れる排水の流れ方向へ向けて)傾斜している。
【0053】
改修用ドレン70の溝配置部72における右側部74は、溝配置部72の第1側部であり、底部73の右側端部から上方向に延設される。
改修用ドレン70の溝配置部72における左側部75は、溝配置部72の第2側部であり、底部73の左側端部から上方向に延設される。
【0054】
改修用ドレン70の溝配置部72における開口部77は、底部73の中央部に設けられる。すなわち、開口部77は、底部73の傾斜低位部に設けられる。
【0055】
以上のように、改修用ドレン70を構成することにより、排水溝20の中途部に設けられる既設中継ドレン30に対して、容易に改修用ドレン70を取り付けることができるとともに、排水溝20を流れる排水が、改修用ドレン70の溝配置部72における各側部(右側部74、左側部75)と、排水溝20の各側面部(右側面部22、左側面部23)との間隙から改修用ドレン70(溝配置部12)の下側へ流れ込み難くなり、排水溝20を流れる排水が、既設中継ドレン30へ流れ込むことを防止できる。
【符号の説明】
【0056】
10 改修用ドレン
11 管状部
12 溝配置部
17 開口部
18 突出部
20 排水溝
21 底面部
22 右側面部(側面部)
23 左側面部(側面部)
24 傾斜低位側面部(側面部)
30 既設中継ドレン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水溝の底面部に設けられる既設中継ドレンの改修に用いられる改修用ドレンであって、
前記既設中継ドレンに挿入される管状部と、
前記管状部の一端が接続される開口部を有し、前記既設中継ドレンを覆い、かつ前記排水溝の底面部および側面部に沿うように前記排水溝内に配置可能に構成される溝配置部と、
を具備する、
ことを特徴とする改修用ドレン。
【請求項2】
前記溝配置部は、前記排水溝の形状および前記既設中継ドレンの形状に合わせて変形可能な柔軟な材質で構成されることを特徴とする請求項1に記載の改修用ドレン。
【請求項3】
前記開口部は、
前記溝配置部の底部から下方に向けて湾曲状に突出する突出部の先端に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の改修用ドレン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の改修ドレンによる既設中継ドレンの改修方法であって、
前記改修用ドレンを前記排水溝および前記既設中継ドレンに配置し易くするために、前記排水溝および前記既設中継ドレンを加工する工程と、
前記改修用ドレンの管状部を前記加工した既設中継ドレンに挿入するとともに、前記改修用ドレンの溝配置部を、前記既設中継ドレンを覆うように、かつ前記加工した排水溝の底面部および側面部に沿うように前記加工した排水溝内に配置する工程と、
前記配置した改修用ドレンと、前記加工した排水溝および既設中継ドレンとの間を水密にする工程と、
を具備する、
ことを特徴とする改修ドレンによる既設中継ドレンの改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−72616(P2012−72616A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219283(P2010−219283)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(506026737)