説明

改修用二重ドレン及びそれを用いたルーフドレンの改修方法

【課題】鉛を使用しなくても、耐久性・耐候性に優れ、補修すべきルーフドレン及びルーフドレン周辺の既存の種々の形状に密着して、施工性、防水性等が良好で信頼性がある改修用二重ドレン、及びルーフドレンの改修方法を提供すること。
【解決手段】板状構造体の略中央部に開けられた穴の片面側に、改修すべきルーフドレンの内部に差し込める中空管が周接された改修用二重ドレンであって、該板状構造体が、金属メッシュを該金属メッシュが露出しないように樹脂で被覆してなるものであり、かつ、該中空管をルーフドレンに差し込んだ後、外力を加えることによってルーフドレン周辺の形状に沿って塑性変形する性質を有するものであることを特徴とする改修用二重ドレン、及び該改修用二重ドレンを用いるルーフドレンの改修方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフドレンの改修用に用いる改修用二重ドレンに関し、更に詳しくは、改修用二重ドレンの一部に特定の形態と物性を有する板状構造体を用いる改修用二重ドレン及びそれを用いたルーフドレンの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上、陸屋根(ろくやね)、廊下、踊り場、バルコニー等(以下、「屋上等」と略記する)の建物平坦部に降った雨水を集めて竪樋(たてとい)等に流すために、屋上等には、通常、ルーフドレンが設けられている。
【0003】
ルーフドレンには、屋上等の下に垂直に設けられた竪樋等に垂直に雨水を流す縦引き排水用のルーフドレンと(特許文献1〜4)、屋上等の横に垂直に設けられた竪樋等に雨水を引き込む横引き排水用のルーフドレンとがある(特許文献5)。
また、屋上、陸屋根(ろくやね)等の上面に設け、直接雨水を集める型式のものと、廊下、踊り場、バルコニー等の上面に設け、垂直に落下してきた雨水を集めて中継して竪樋に合流させる型式のものとがある。
【0004】
ルーフドレン周辺は、通常、鋳鉄、ステンレス、アルミニウム等でできており、焼き付け塗装等の塗装が施されているものもあり、屋上等に種々の方法によって固定されている(特許文献1、2)。
【0005】
しかしながら、時間の経過とともに、ルーフドレン自体が劣化したり、ルーフドレンを屋上等に固定してある接触場所等が浸食を受けたりして、雨水が正常に竪樋等に流れなくなったり、ルーフドレンの周辺が汚くなったりすることがある。
【0006】
それを補修するために、改修用二重ドレン(「二重ドレン」又は「改修用ドレン」と言われることもある)が用いられている。改修用二重ドレンは、板状構造体の略中央部に穴が開けられており、その穴から板状構造体の片面側に中空管が伸びており、該中空管を補修しようとするルーフドレンに差し込んで、ルーフドレンを補修できるようになっている。
【0007】
かかる改修用二重ドレンの材質には、ルーフドレンの周辺の形状に密接するように、通常は鉛が用いられている。縦引き排水用のルーフドレンを改修するための改修用二重ドレンの場合は、板状構造体と中空管が共に鉛でできていて、中空管が溶接等で板状構造体に開けられた穴に周接されているものが多く、横引き排水用のルーフドレンを改修するための改修用二重ドレンの場合は、板状構造体が鉛でできていて、中空管がポリ塩化ビニル等のフレキシブルな樹脂でできているものが多く、何れにしても、少なくとも板状構造体の材質には、通常は鉛が使用されている。
【0008】
鉛は経時と共に表面に酸化膜ができ耐久性・耐候性が上昇する、種々の形状にフィットする程度に柔軟性がある、ルーフドレンの周辺の形状に密着するために施工性が良い、中空管と板状構造体が鉛溶接できるため防水に関して信頼性がある等の理由で、改修用二重ドレンの板状構造体の材質は鉛が常用されている。
【0009】
しかしながら、鉛イオンには毒性があり、鉛に接触した雨水には微量とはいえども鉛イオンが溶け込むこととなり、また、人が屋上等で、直接鉛に接触することもあり、生体に対する直接危害、環境汚染等の点で問題があった。
【0010】
また、改修前の既存ドレンの内壁等に異物等が固着して、本来差し込めるはずの設計上の外径を有する中空管が、改修前の既存ドレンに差し込めないという場合があり、作業を中断して(場合によっては、新たに入手して)、外径の小さな中空管を使用した二重ドレンに差し代える必要がある等の問題があった。
【0011】
また、補修用二重ドレンで補修した後、鉛にプライマーを塗布してその上に周辺に塗布する塗膜防水材と同一の塗膜防水材を塗布し、周囲の塗膜防水層と一体化させるに際し、鉛と塗膜防水層との間の接着力に問題があった。
【0012】
老朽化した建物の場合、ルーフドレンやルーフドレン周辺の防水加工を含めた改修は必須のものであるが、従来の改修用二重ドレンでは、上記した問題があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−320089号公報
【特許文献2】特開2003−227209号公報
【特許文献3】特開2006−225911号公報
【特許文献4】特開2006−037391号公報
【特許文献5】特開2010−209611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐久性・耐候性に優れ、補修すべきルーフドレン及びルーフドレン周辺の既存の種々の形状にフィットして、その形状に密着し、施工性、防水性、塗膜防水層との接着性等が良好で信頼性がある改修用二重ドレンを提供することにある。
【0015】
また、鉛と同等又は鉛以上の、耐久性、耐候性、柔軟性、施工性、防水性、塗膜防水層との接着性を有し、生体に対する危険性や環境負荷の少ない改修用二重ドレンを提供することにある。
また、補修・改修時に、最終的に屋上等の全面を塗膜防水加工等する場合には、ウレタン塗料等の塗膜防水材の塗布性や密着性等が良く、ルーフドレン周辺や更にその周囲からの漏水を防げる改修用二重ドレンを提供することにある。
【0016】
また、設計に従って現場に持ち込まれた中空管が既存ドレンに差し込めない場合には、容易に中空管の外径を調整できる改修用二重ドレンを提供することにある。
【0017】
また、かかる改修用二重ドレンを用い、上記性能に優れたルーフドレンの改修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、改修用二重ドレンが有する板状構造体を、特定の材質と形態を有するものにし、かつ、特定の物性を有するものにすることによって、上記問題点を解決し、課題が解決されることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、板状構造体の略中央部に開けられた穴の片面側に、改修すべきルーフドレンの内部に差し込める中空管が周接された改修用二重ドレンであって、該板状構造体が、金属メッシュを該金属メッシュが露出しないように樹脂で被覆してなるものであり、かつ、該中空管をルーフドレンに差し込んだ後、外力を加えることによってルーフドレン周辺の形状に沿って塑性変形する性質を有するものであることを特徴とする改修用二重ドレンを提供するものである。
【0020】
また、本発明は、上記の改修用二重ドレンの中空管を改修すべきルーフドレンの内部に差し込んだ後、上記板状構造体に外力を加えることによって、該板状構造体をルーフドレン周辺の形状に沿って塑性変形させることを特徴とするルーフドレンの改修方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記問題点を解消し、上記課題を解決し、耐久性・耐候性に優れ、改修用二重ドレンを構成する板状構造体の上面から外力を加えることによって、補修すべきルーフドレンやルーフドレン周辺の既存の種々の形状に容易にフィットして、その形状に良好に密着する改修用二重ドレンを提供することができる。
【0022】
また、板状構造体がルーフドレン周辺の種々の形状に容易にフィットするので、施工性、既存の改修すべきルーフドレンの下地への密着追従性が良く、また、塗膜防水材との接着性に優れているので、ルーフドレン周辺の周囲の塗膜防水層と一体化することにより、隙間等から水が漏れるのを防ぐことができる。
【0023】
また、従来、改修用二重ドレンの材質であった鉛が有する前記したような優れた物性をそのまま有するため、鉛と同等又は鉛以上の耐久性、耐候性、柔軟性、施工性、防水性等を達成することができる。しかも、鉛の有する欠点を克服し、生体に対する危険性や環境負荷の少ない改修用二重ドレンを提供することができる。
【0024】
また、更に、補修・改修時に合わせて、屋上等の建物平坦部の全面又はルーフドレン周辺の周囲に対して防水加工等をする場合には、該防水加工等に用いられるウレタン塗料等の塗膜防水材の「改修用二重ドレンを構成する板状構造体」の上面への塗布性が良いため、板状構造体の上面と、屋上等の全体表面(板状構造体の外側で板状構造体のない部分の上面)に塗布されたウレタン防水層等の塗膜防水層とが一体となり、優れた防水性を発揮することができる。
【0025】
すなわち、改修用二重ドレンを構成する板状構造体の、ウレタン防水層等の塗膜防水層への密着性が優れ、特に、板状構造体の上部の塗膜防水層と板状構造体のない部分(板状構造体の外側)の塗膜防水層とが一体となり易いので、板状構造体の外縁部分の防水性にも優れ、ルーフドレン周辺や更にその周囲からの漏水を良好に防げる改修用二重ドレンを提供することができる。
【0026】
また、かかる改修用二重ドレンを用いることによって、上記性能、特に施工性、防水性等の性能に優れたルーフドレンの改修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の改修用二重ドレンを用いて改修した後の縦断面図である。
【図2】本発明の改修用二重ドレンの一例の斜視図である。(a)縦引き排水用のルーフドレンの補修に用いられる改修用二重ドレン (b)横引き排水用のルーフドレンの補修に用いられる改修用二重ドレン
【図3】本発明の改修用二重ドレンの板状構造体の内部構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の改修用二重ドレンにおいて、T型カップリングを用いて中空管が板状構造体に固定されている態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0029】
<ルーフドレン(改修の対象)と改修用二重ドレンを用いて改修されたルーフドレン>
本発明の改修用二重ドレンは、ルーフドレンの改修用に用いられるものである。「ルーフドレン」とは、屋上、陸屋根(ろくやね)、廊下、踊り場、バルコニー等(以下、「屋上等」と略記する)の建物平坦部に降った雨水等を集めて竪樋(たてとい)等に流すために、屋上等の建物平坦部に設けられているものである。
【0030】
本発明における「建物平坦部」とは、建物の外空間にその面を上にして露出している略平坦な面部分であって、雨水等で直接又は間接的に濡れる可能性のある面部分を言う。
【0031】
本発明の改修用二重ドレンを用いて改修するルーフドレンの種類は、特に限定はなく、屋上等の下に垂直に設けられた竪樋等に雨水を流し込む縦引き排水用のルーフドレンであっても、屋上等の横に垂直に設けられた竪樋等に雨水を引き込む横引き排水用のルーフドレンであってもよい。
【0032】
また、改修の対象となるルーフドレンの種類としては、屋上、陸屋根(ろくやね)等の建物最上部の平坦面に設け、そこに降った雨水を直接集める型式のルーフドレンであっても、廊下、踊り場、バルコニー等の上面に設け、竪樋等を垂直に落下してきた雨水を竪樋等に中継する型式のルーフドレンであってもよい。
【0033】
図1に、縦引き排水用のルーフドレン41の断面図を示す。ルーフドレン41の周辺には、雨水が流れ込み易いようにルーフドレン周辺42がある。ルーフドレン周辺42は、ストレーナ等の置き場としての役目も有している。通常、図1におけるルーフドレン41とルーフドレン周辺42とを合わせて、ルーフドレンと呼ぶ場合もあるが、本発明においては、竪樋等の縦に設けてある雨水を流し込む穴部分を「ルーフドレン41」と言い、その周辺の種々の形状を持った凹部を「ルーフドレン周辺42」と言う。
【0034】
本発明の改修用二重ドレン10を用いて、縦引き排水用のルーフドレン41を改修した後の断面図を図1に示す。改修用二重ドレン10の板状構造体20の略中央部に設けられた中空管30を、改修すべきルーフドレン41の内部に差し込み、板状構造体20をルーフドレン周辺42にフィットするように板状構造体20の上面から外力を加えて、板状構造体20とルーフドレン周辺42とを密着させてある。本発明の改修用二重ドレンの板状構造体20は、板状構造体20の上から外力を加えることによって、ルーフドレン周辺42の形状に沿って塑性変形させられる程度の塑性及び/又は柔軟性を有している。
【0035】
本発明の改修用二重ドレン10の板状構造体20の大きさは特に限定はないが、ルーフドレン周辺42を覆うだけではなく、図1に示すように、ルーフドレン周辺の周囲52まで広がる大きさであることが好ましい。「ルーフドレン周辺の周囲52」とは、図1に示した通り、屋上等50の建物平坦部51であって、ルーフドレン周辺42の周囲に存在する平面部分を言う。縦引き排水用のルーフドレンの場合には、該平面部分は略水平面であるが、横引き排水用のルーフドレンの場合には、該平面部分の約半分は略水平面であるが、約半分は略垂直平面である(図2(b))。
【0036】
ルーフドレン41の改修時に、屋上等50の建物平坦部51の全体を防水加工する場合があるが、その際、板状構造体20がルーフドレン周辺の周囲52まで広がっていることにより、屋上等50の建物平坦部51に張り出た板状構造体20の上面に、屋上等50の建物平坦部51の全体に形成された塗膜防水層と一体となった塗膜防水層を形成することができ、防水性を更に上げることができる。
【0037】
本発明の改修用二重ドレンの板状構造体20は、表面が樹脂23でできているため、塗膜防水層の樹脂(例えば、ウレタン樹脂)との密着性や接着性が、有機の樹脂同士であるために、従来の鉛でできたものより優れている。また、表面が樹脂23でできているため、塗膜防水層形成用の塗膜防水材の塗布性が、従来の鉛の表面に比べて優れている。従来の鉛でできたものの上にウレタン塗料等の塗膜防水材を塗布すると、塗布性が悪かったり、塗膜防水層の鉛表面への接着性が劣ったりする場合がある。
【0038】
本発明の改修用二重ドレン10を用いれば、特に、ルーフドレン41の補修・改修時に合わせて、屋上等50の建物平坦部51の全体に対して塗膜防水加工等をする場合には、建物平坦部51全体上の防水層と、ルーフドレン周辺の周囲52の上に設けられた防水層とが一体となった、シームレスの塗膜防水層を形成することができ、防水性を更に上げることができる。
【0039】
すなわち、板状構造体20そのものが防水層としての性能を有していることに加え、ルーフドレン周辺の周囲52の上に設けられた防水層と屋上全体に設けられた防水層とが一体面を構成してシームレス施工がなされ、周囲の塗膜防水の延長として、ルーフドレン周辺の周囲52の上の板状構造体20の表面もウレタン塗膜等の防水塗膜で被覆されるため、防水効果が更に向上する。
更に、耐候性トップコート又はモルタル・シンダーコンクリート保護層で、一体面を構成するように被覆することも好ましい。
【0040】
<改修用二重ドレン>
図2は、本発明の改修用二重ドレン10の一例を示す斜視図である。図2(a)は、縦引き排水用のルーフドレンの補修に用いられる本発明の改修用二重ドレン10の一例であり、図2(b)は、横引き排水用のルーフドレンの補修に用いられる本発明の改修用二重ドレン10の一例である。
【0041】
板状構造体20の略中央部に開けられた穴21の片面側に、改修すべきルーフドレン41の内部に差し込める中空管30が周接されており、該中空管30を、改修すべきルーフドレン41に差し込んだ後、板状構造体20の上から外力を加えることによってルーフドレン周辺の形状に沿って、板状構造体20を変形させるようになっている。
【0042】
<<改修用二重ドレンの中空管>>
該中空管30の外径は、ルーフドレン41に差し込めるよう、基本的にはルーフドレン41の内径より小さければ特に限定はない。
【0043】
該中空管30の材質は特に限定はないが、防食性、柔軟性等の点から樹脂であることが好ましい。柔軟性があると、ルーフドレン41に、容易に中空管30を差し込める。特に、ルーフドレン41の内壁に異物等の固着があっても、容易に中空管30を差し込めるので、中空管30の外径が小さい改修用二重ドレンに、わざわざ取り換える必要がない。
該樹脂としては特に限定はないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられる。
【0044】
該中空管30は、螺旋状に巻かれた金属等を樹脂で被覆したフレキシブルチューブ、後述する板状構造体20のように、金属メッシュ22を樹脂23で被覆してなるもの等が、防食性、柔軟性等の点から好ましい。後述する板状構造体20と同一の材質・形態のものでもよい。
【0045】
中空管30が柔軟性のあるフレキシブルチューブ等であると、改修前の既存ドレンの内壁等に異物等が固着して、本来差し込めるはずの設計上の外径を有する中空管が、改修前の既存ドレンに差し込めず、作業を中断し、場合によっては、新たに入手して、外径の小さな中空管を使用した二重ドレンに差し代える必要性がなくなるので特に好ましい。
【0046】
<<改修用二重ドレンの板状構造体>>
図3は、本発明の改修用二重ドレンの板状構造体20の内部構造を示すものである。図3は、板状構造体20の一部分を示したものであり、板状構造体20の樹脂23を一部不記載にし、板状構造体20の内部の金属メッシュ22が見えるようにした模式的な斜視図である。該板状構造体20は、金属メッシュ22を該金属メッシュ22が露出しないように樹脂23で被覆してなるものである。
【0047】
樹脂23が金属メッシュ22の空隙部分に入り込んで、空隙がないようになっていてもよく、樹脂23が金属メッシュ22を挟み込んでいてもよいが、樹脂23が金属メッシュ22の空隙部分にも入り込んで、該空隙がないように一体となっているものが好ましい。
【0048】
該金属メッシュ22としては、ラス(lath)、金属線を編んだもの、金属線を織ったもの、金属板に切れ目又は穴を開けたもの、金属板に切れ目又は穴を開けたものを拡張したもの等が挙げられるが、本発明の改修用二重ドレンの板状構造体20としての十分な強度、適度な柔軟性、加工性、低価格等を容易に確保できる点から、ラス(lath)が好ましい。
【0049】
ラス(lath)としては、JISA5505メタルラス、A5504ワイヤラス、G3351エクスパンドメタル、G3551溶接金網、G3552ひし形金網、G3553クリンプ金網、G3554きっ甲金網等が挙げられる。また、平ラス、こぶラス、波形ラス、リブをもったリブラス、エクスパンドメタル等が挙げられる。
【0050】
中でも、エクスパンドメタルは、素材に切れ目をつけて引っ張って延ばすことにより網目のような形状にした金属メッシュであり、十分な強度、適度な柔軟性、加工性、低価格等の点から、板状構造体に埋め込む金属メッシュとして特に好ましい。
【0051】
本発明の改修用二重ドレンの板状構造体20の厚さは、外力を加えることによってルーフドレン周辺42の形状に沿って変形する程度の柔軟性、加工性、塑性等を有するようになっていれば特に限定はないが、防水性、機械的強度等を確保するために、1mm以上が好ましく、1.2mm以上がより好ましく、1.5mm以上が特に好ましい。一方、上限は、柔軟性、加工性、塑性等を確保するため、また、板状構造体20の上面と屋上等50の表面に形成された(屋上等の全面に形成された)防水層を一体にシームレスに形成するため(板状構造体20の縁に段差を大きく作らないため)等から、3mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2mm以下が特に好ましい。
【0052】
ここで、「外力」とは、作業者が手で板状構造体20の上から板状構造体20を押したり叩いたりする力、作業者が木槌、ルーフドレン改修専門具等の工具で板状構造体20を押したり叩いたりする力を言う。
【0053】
本発明の改修用二重ドレンの板状構造体20の内部に埋め込まれている金属メッシュ22の厚さは特に限定はなく、またそれらは金属の性質によっても変わるが、柔軟性、加工性、塑性、防水性、機械的強度等を確保しながら、周辺部とシームレスの塗膜防水層を形成する為の段差を考慮すると、0.2mm〜2mmが好ましく、0.3mm〜1.5mmが特に好ましい。
なお、金属メッシュ22が、ラス(lath)、中でもエクスパンドメタルの場合には、上記厚さは、ラス(lath)やエクスパンドメタルに、加工又は引き延ばす前の金属板の厚さではなく、加工又は引き延ばした後のラス(lath)やエクスパンドメタル自体の厚さである。
【0054】
該金属メッシュ22を構成する金属は特に限定はなく、樹脂23で覆われていることによって、金属イオンの流出が防止されているので、鉛であってもよいが、該樹脂23の破損等によって金属が露出する可能性まで考えると、本発明の効果である、生体に対する危険性や環境負荷を小さくするために、鉛等の有害金属以外の金属が好ましい。具体的には、価格、加工性等の点から、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄又はステンレスが好ましい。
【0055】
上記樹脂23は特に限定はないが、外力を加えることによってルーフドレン周辺42の形状に沿って変形する柔軟性、加工性、塑性等を確保するため、ゴムが好ましい。該ゴムの種類は特に限定はなく、具体的には、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、シランモディファイドポリマーゴム等が挙げられる。耐久性、耐候性、耐紫外線性、防水塗料の塗布性等の点から、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム又はシランモディファイドポリマーゴムが好ましい。
【0056】
板状構造体20の形状は特に限定はないが、作業性の点から、正方形を含む長方形又は円形が好ましい。また、板状構造体20の面積は、改修するドレン41、ルーフドレン周辺42、その周囲52(d)の大きさによって決定すればよく特に限定はない。
【0057】
ルーフドレン周辺42の周囲の張り出し長さ(図1におけるd)は、屋上等50の建物平坦部51全体の上に形成された防水層と、ルーフドレン周辺の周囲52の上に設けられた防水層とが一体となった、シームレスのウレタン防水層を良好に形成するために、1cm以上が好ましく、2cm以上がより好ましく、3cm以上が特に好ましい。また、dの上限は特に限定はないが、作業性、価格等のために、15cm以下が好ましく、10cm以下がより好ましく、5cm以下が特に好ましい。
【0058】
金属メッシュ22が露出しないように樹脂23で被覆する方法、すなわち、板状構造体20の製造方法は特に限定はなく常法が用いられるが、例えば、金属メッシュ22を樹脂23で(要すれば、樹脂を加熱しつつ)ラミネートする方法、金属メッシュ22を樹脂前駆体等の低粘度液体に浸漬塗布させた後にスキージして板状にし、次いで硬化(加硫も含む)させて樹脂23とする方法、金属メッシュ22に樹脂前駆体等の低粘度液体を塗布し、次いで硬化(加硫も含む)させて樹脂23とする方法、モールド内部に低粘土樹脂を入れて金属メッシュ22を浸漬し硬化(加硫を含む)させる方法等が挙げられる。
【0059】
<<中空管の固定>>
改修用二重ドレン10において、中空管30を板状構造体20に固定する方法は特に限定はなく、板状構造体20の略中央に穴21を開け、該穴21の周囲に中空管30を直接接着剤、ビス、ステンレスフープ等で固定してもよく、また該穴を開けた際に発生する板状構造体20の一部を穴21の下方に凸上に残し、それを中空間の内部に差し込んで固定してもよく、後述するT型カップリング31を用いて固定されていてもよく、中空管30と板状構造体20とが一体に形成されていてよい。
【0060】
図4に、T型カップリング31を用いて固定されている態様を示す。T型カップリング31の中空管接合部33は、板状構造体20に開けられた穴21に差し込まれ、T型カップリング31の外周糊しろ32が、板状構造体20に、機械的に固定及び/又は接着剤を用いて固定されている。更に、図4には示されていないが、T型カップリング31の中空管接合部33の外側又は内壁と、中空管30の内壁又は外側とが、機械的に固定及び/又は接着剤を用いて固定され、改修用二重ドレン10が形成される。
【0061】
<<板状構造体の接着>>
本発明の改修用二重ドレン10の接着については、改修現場で接着剤を塗布してもよいし、作業性向上の点から、上記板状構造体20の下面に、該板状構造体20をルーフドレン周辺42に接着させるための接着剤が塗布され、更にその表面が離型紙で保護されているものを使用してもよい。
【0062】
<ルーフドレンの改修方法>
本発明のルーフドレンの改修方法は、上記した本発明の改修用二重ドレン10の中空管30を改修すべきルーフドレンの内部に差し込んだ後、上記板状構造体20に外力を加えることによって、該板状構造体20をルーフドレン周辺42の形状に沿って塑性変形させることを特徴とする。
ルーフドレン周辺の上に、ストレーナ、融雪ドーム、飾り桝等がある場合は、それを一旦取り除いてから、本発明の改修用二重ドレン10の中空管30を改修すべきルーフドレンの内部に差し込むことは言うまでもない。
【0063】
本発明の改修用二重ドレン10は、縦引き排水用のルーフドレンであっても(図2(a))、横引き排水用のルーフドレン(図2(b))であってもよい。
また、屋上、陸屋根(ろくやね)等の建物最上部に設けられた、そこに降った雨水等を直接集める型式のルーフドレンであっても、廊下、踊り場、バルコニー等の上面に設けられ、落下してきた雨水を竪樋等に中継して集める型式のルーフドレンであってもよい。
【0064】
板状構造体20に加える外力は、該板状構造体20をルーフドレン周辺42の形状に沿って塑性変形させられれば特に限定はないが、密着させて防水性を上げるために、手で該板状構造体20の上から押し付けたり叩いたりする、木槌等の工具で該板状構造体20を上から叩く、ペンチ他の工具で折り曲げたり、穴21の下部に凸形状のスリーブをつけるために、ペンチ他の工具でスリットを入れたりする等が挙げられる。また、ルーフドレン改修専門具を用いて、該板状構造体20の上から押し付けたり叩いたりしてもよい。
なお、横引き排水用のルーフドレン41を改修するための改修用二重ドレン10の場合は、該板状構造体20の上から、すなわち、屋上等50に対して横からも押し付けたり、叩いたりすることになる。
【0065】
中空管30のみをルーフドレン41に差し込んだ後、前記したT型カップリング31の下部外径を中空管30の内径に接着固定し、T型カップリング31の上部平坦面の下面を接着剤等によって板状構造体20の穴21の周辺上部に固定し、その後に、板状構造体20の上から外力を加えることによって、板状構造体20を塑性変形させ、ルーフドレン周辺及びその周囲の表面に板状構造体をフィットさせてもよい。すなわち、板状構造体20と中空管30との固定を現場で行ってもよい。
【0066】
本発明の改修用二重ドレンの中空管30を改修すべきルーフドレンの内部に差し込んだ後であって、上記板状構造体20に外力を加えて、該板状構造体20をルーフドレン周辺42及び下地の形状に沿って塑性変形させる前に、改修用二重ドレンの板状構造体20の下面と、ルーフドレン周辺42とを接着剤で接着することが、板状構造体20がルーフドレン周辺42から剥がれないようにするために好ましい。板状構造体20の下面は、更に、ルーフドレン周辺の周囲52とも接着することが、板状構造体20が周縁部から剥がれないようにするために特に好ましい。
【0067】
ルーフドレン周辺42は、鋳鉄、ステンレス、アルミニウム等の材質でできており、焼き付け塗装等の塗装が施されているものもある。また、ルーフドレン周辺の周囲は、防水用保護モルタル、シンダーコンクリート、構造用コンクリート等でできている。ルーフドレン41の改修方法においては、板状構造体20の下面と、上記したようなルーフドレン周辺とを接着剤で接着することが好ましい。
【0068】
接着剤は、改修現場で塗布してもよいが、接着剤が板状構造体20の下面に事前に塗布してある改修用二重ドレン10を用いてもよい。
板状構造体20の下面に接着剤が事前に塗布され、更にその表面が離型紙で保護されている改修用二重ドレン10の場合は、改修現場において、該離型紙を剥離して、板状構造体20をルーフドレン周辺42やルーフドレン周辺の周囲52に貼り付ける。
【0069】
ルーフドレン41を改修する際には、同時に、屋上等50の建物平坦部51の略全体の防水加工をし直すことがある。その場合、本発明のルーフドレンの改修方法においては、板状構造体20をルーフドレンの周辺の形状に沿って塑性変形させた後に、ルーフドレン周辺の周囲52の上に設けられた該板状構造体20の上面に、更にその外側の建物平坦部51の表面の上に形成する塗膜防水層と一体に塗膜防水層を形成することが、防水性を更に向上させるために好ましい。
すなわち、ルーフドレン周辺の周囲の上に、屋上等50の建物平坦部51の上に設けられる防水層と一体になった防水層を設けることが好ましい。
【0070】
本発明においては、板状構造体20の表面が樹脂でできているため、防水層に用いられている樹脂(特にウレタン樹脂)の接着性が、従来の鉛の表面に比べて優れている。従って、屋上等全体に塗膜防水層を形成する際に、ルーフドレン周辺の周囲52の上面に設けられた板状構造体20の表面にも、一体となるように塗膜防水層を形成することにより、本発明の前記効果が助長される。
【0071】
最後に、補修・改修のために一旦取り除かれていた、ストレーナ、融雪ドーム、飾り桝等がある場合は、それらを元に戻す。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
実施例1
以下の改修用二重ドレンを用いて、屋上の隅に設けられたルーフドレン周辺の直径(図1におけるルーフドレン周辺の差渡し長さ(A))が約20cmのルーフドレン及びその周辺を改修した。改修したルーフドレンは、縦引き排水用のルーフドレンであった。
【0074】
[使用した改修用二重ドレン]
板状構造体の形状:厚さ2.1mm、一辺30cmの正方形
板状構造体内の金属メッシュ:アルミニウムのラス(lath)(エクスパンドメタル)
金属メッシュの厚さ:1.2mm
板状構造体の樹脂:シランモディファイドポリマーゴム
中空管:直径(外径)8.5cmのポリ塩化ビニル製伸縮フレキシブルホース
中空管の位置:板状構造体の中央
中空管の固定:T型カップリング使用
【0075】
図2(a)に示したような改修用二重ドレンの板状構造体の下面に、市販のプライマー及び接着剤(1液変性シリコーン)を塗った。
ルーフドレン周辺に設置されていたストレーナを取り外し、次いで、改修用二重ドレンの中空管をルーフドレンに差し込んだ後、板状構造体の上から外力を加えることによって、ルーフドレン周辺の下地の形状に沿って、板状構造体を塑性変形させ、ルーフドレン周辺及びその周囲の表面に板状構造体をフィットさせると共に接着剤で接着させた。
【0076】
ルーフドレン周辺の周囲の張り出し長さ(図1におけるd)は、円形のルーフドレン周辺に対して、正方形の板状構造体を有する改修用二重ドレンを用いたので、幅があるが、約3cm〜約10cmの範囲であった。
【0077】
その後、市販のプライマーと補強布を用い、市販のウレタン塗料(2液手塗りタイプ)を、屋上全面に2回に亘って塗布し、ウレタン塗膜防水加工を行なった。ウレタン防水層の合計厚さは、約3mmであった。更に、市販のトップコート(耐候性トップコート)を塗布し仕上げた。
張り出し長さ(d)を有する「ルーフドレン周辺の周囲」の板状構造体の上には、プライマーを塗布し、ウレタン塗料を塗布して、ルーフドレン周辺の塗膜防水と一体化させ、更にトップコートで仕上げた。
【0078】
板状構造体に鉛を用いていないので、安全性が高いことに加えて、接着剤による板状構造体のルーフドレン周辺への接着性が良好で、更に、板状構造体の上に有機溶媒を含有するウレタン塗料が、塗布性良く塗布できた。また、ウレタン防水層の板状構造体表面に対する密着性・接着性も鉛に比べて良好であった。
【0079】
屋上の建物平坦部全体上の防水層と、ルーフドレン周辺の周囲の上に設けられた防水層とが一体となった、シームレスのウレタン防水層を形成することができ、防水性を更に上げることができた。板状構造体の縁の段差部分にも、シームレスのウレタン防水層を形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
金属メッシュを樹脂で被覆してなる板状構造体を有する本発明の改修用二重ドレンは、鉛公害がなく、耐久性・耐候性に優れ、補修すべきルーフドレン周辺の種々の形状にフィットするので施工性がよく、また密着性にも優れているため、築年数が経過した建物の屋上等の補修・改修に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0081】
10 改修用二重ドレン
20 板状構造体
21 穴
22 金属メッシュ
23 樹脂
30 中空管
31 T型カップリング
32 外周糊しろ
33 中空管接合部
41 ルーフドレン
42 ルーフドレン周辺
50 屋上等
51 建物平坦部
52 ルーフドレン周辺の周囲
A ルーフドレン周辺の差渡し長さ
d ルーフドレン周辺の周囲の張り出し長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状構造体の略中央部に開けられた穴の片面側に、改修すべきルーフドレンの内部に差し込める中空管が周接された改修用二重ドレンであって、該板状構造体が、金属メッシュを該金属メッシュが露出しないように樹脂で被覆してなるものであり、かつ、該中空管をルーフドレンに差し込んだ後、外力を加えることによってルーフドレン周辺の形状に沿って塑性変形する性質を有するものであることを特徴とする改修用二重ドレン。
【請求項2】
上記金属メッシュがラス(lath)である請求項1に記載の改修用二重ドレン。
【請求項3】
上記金属メッシュがエクスパンドメタルである請求項1又は請求項2に記載の改修用二重ドレン。
【請求項4】
上記金属メッシュを構成する金属が、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄又はステンレスである請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の改修用二重ドレン。
【請求項5】
上記樹脂がゴムである請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の改修用二重ドレン。
【請求項6】
上記板状構造体の下面に、該板状構造体をルーフドレン周辺に接着させるための接着剤が塗布され、更にその表面が離型紙で保護されている請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の改修用二重ドレン。
【請求項7】
上記中空管が伸縮性のあるフレキシブルホースである請求項1ないし請求項6のいずれかの請求項に記載の改修用二重ドレン。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の改修用二重ドレンの中空管を改修すべきルーフドレンの内部に差し込んだ後、上記板状構造体に外力を加えることによって、該板状構造体をルーフドレン周辺の形状に沿って塑性変形させることを特徴とするルーフドレンの改修方法。
【請求項9】
上記改修用二重ドレンの板状構造体の下面とルーフドレン周辺とを接着剤で接着する請求項8に記載のルーフドレンの改修方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のルーフドレンの改修方法において、該板状構造体をルーフドレンの周辺の形状に沿って塑性変形させた後に、ルーフドレン周辺の周囲の上に設けられた該板状構造体の上面に、更にその外側の建物平坦部の表面の上に形成する塗膜防水層と一体に塗膜防水層を形成することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のルーフドレンの改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202048(P2012−202048A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65612(P2011−65612)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(598171508)株式会社秀カンパニー (15)