説明

改善されたイムノアッセイ法

本発明は、哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出することを含む、哺乳動物の被検体における病状または罹病性を検出する方法に関し、ここで、抗体は、病状または罹病性の生物学的マーカーであり、前記方法は、(a)抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、試験試料を接触させる工程と、(b)抗体と抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、特異的結合の量対抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程と、(d)用いられたそれぞれ異なる抗原濃度における抗体と抗原の間の特異的結合の量に基づいて、病状または罹病性の存在または不在を決定する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般的に、診断アッセイまたは予後アッセイの分野に関し、特に、患者の体液を含む試料における抗体を検出するためのアッセイの最適化に関し、このような抗体は、病状または罹病性の生物学的マーカーとして使用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
多くの診断、予後および/またはモニタリングのアッセイが、特定の病状または罹病性の生物学的マーカーの検出に頼っている。このような生物学的マーカーは、一般に、特定の疾患の特徴を示す、または罹病性に関連するタンパク質またはポリペプチドである。
【0003】
最近、抗体、特に自己抗体が、病気または罹病性の生物学的マーカーの役割をも果たし得ることが明らかになっている。自己抗体は、実際には個体由来である抗原であってもその個体の免疫系が異物として認識する抗原に対する、天然の抗体である。それらは、遊離した循環自己抗体として循環血液の中に存在するか、または、標的マーカータンパク質に結合した自己抗体から成る循環免疫複合体の形態で存在することができる。「正常な」細胞によって発現される野生型のタンパク質と、異常細胞によって、または疾病過程中に生成される変性された形態のタンパク質との相違によって、例えば、変性タンパク質が、個体の免疫系によって「非自己」と認識され、それ故にその個体における免疫反応が引き起こされることになるかも知れない。これは、変性タンパク質に免疫学的に特異的な自己抗体の生成に至る液性(すなわちB細胞媒介性)免疫反応であり得る。
【0004】
国際公開第WO99/58978号には、2つ以上の異なる腫瘍マーカーに対する個体の免疫反応の評価に基づく癌の検出/診断における使用方法が記載されている。これらの方法は、一般的に、それぞれが別個の腫瘍マーカータンパク質由来の、2つ以上の異なる腫瘍マーカー抗原のパネルに、個体から採取した体液の試料を接触させることと、そして、腫瘍マーカータンパク質に免疫学的に特異的な循環自己抗体に結合する腫瘍マーカー抗原の複合体の形成を検出することを伴う。このような循環自己抗体の存在は、癌の存在を示すものとして考えられる。
【0005】
自己抗体の生成に関し、腫瘍マーカータンパク質の存在に対する個体の免疫反応を測定するアッセイは、体液における腫瘍マーカータンパク質を直接測定または検出する方法の代替を提供する。このようなアッセイは、本質的に、腫瘍マーカータンパク質の存在の間接的な検出を構成する。免疫反応の性質上、自己抗体は、非常に少量の循環腫瘍マーカータンパク質によって引き起こすことができると思われるので、腫瘍マーカーに対する免疫反応の検出による間接的な方法は、体液における腫瘍マーカーを直接測定する方法に比べてより感度が高いであろう。従って、自己抗体の検出に基づくアッセイ方法は、疾病過程の初期段階において、そして恐らく、無症状の患者のスクリーニングに関しても、例えば、無症状の個体の集団において病気を発症する「リスクのある」個体を識別するため、また、無症状の個体の集団において病気を発症している個体を識別するためのスクリーニングにおいて、特に高い価値があり得る。加えて、自己抗体の検出に基づく方法は、疾病過程の初期段階において特に価値が高くあり得、そして恐らく、症状のある個体の集団において病気を発症している個体を識別するためにも使用することができる。更に、再発病の早い段階での検出に有用であり得る。こうしたアッセイ方法はまた、病気の療法を選択またはモニタリングする際にも価値があり得る。
【0006】
抗体および自己抗体は、その他の病状または罹病性の生物学的マーカーの役割も果たすことができ、それらの例としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性甲状腺炎(例えば橋本甲状腺炎)、自己免疫性胃炎(例えば悪性貧血)、自己免疫性副腎炎(例えばアジソン病)、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)、重症筋無力症が挙げられる。
【0007】
本発明者らは、集団内の個体の病状、病気の進行または罹病性を評価するために、抗体の検出に基づくアッセイを診断的、または予後的に使用する場合、存在する抗体の絶対量が個体によって大きく異なっているので、スクリーニングを行うべき被検体の集団全体にとって適切な標準化されたアッセイ方法論を考案する際に困難が生じる場合があるということを認識した。この場合、例えば抗体が少量である個体について、偽陰性の結果が多発する恐れがある。同様に、抗体の絶対量が個体によって異なるということは、スクリーニングされる集団内の個体全てに対して適切なアッセイの陽性結果の閾値の設定が困難であることを意味するので、正確な陽性結果のスコアリングも困難である。
【0008】
そこで、本発明者らは、病気の生物学的マーカーとしての抗体、特に自己抗体の検出に基づくアッセイのパフォーマンス、より具体的には、臨床的有用性および信頼性を、抗原を滴定する工程を含めることにより大きく改善できると結論づけた。一連の異なる量の抗原に対する抗体を含有すると疑われる試料を試験し、滴定曲線を作成することにより、試料内に存在する抗体の絶対量に関係なく、正確なスクリーニングの陽性結果を確実に識別することが可能である。このようなアプローチは、実際の患者の試料における抗体を検出するために使用されるべき最適な抗原濃度の決定を可能にするように較正曲線を作成するためだけに抗原を滴定する、先行技術の方法に反するものである。これらの方法においては、実際の診断について単一の測定のみが提案される。このように、これらの方法では、検出されるべき抗体の量が個体によって異なることが考慮されない結果、既に述べたように、偽陽性および偽陰性の結果が発生することになる。本発明者らは、単一の抗原濃度で自己抗体の反応性を測定する方法、または、抗原ではなく血清試料を滴定する方法よりも、本明細書に述べる本発明の抗原滴定方法の方がより特異性および感度が高いことを発見した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明の第一の局面によれば、哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出することを含む、哺乳動物の被検体における病状または罹病性を検出する方法であって、ここで、抗体は、病状または罹病性の生物学的マーカーであり、前記方法は、
(a)抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、試験試料を接触させる工程と、
(b)抗体と抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、特異的結合の量対抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程と、
(d)用いられたそれぞれ異なる抗原濃度における抗体と抗原の間の特異的結合の量に基づいて、該病状または罹病性の存在または不在を決定する工程
を含む方法が提供される。
【0010】
本発明の第二の局面によれば、哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出する方法であって、ここで、抗体は、哺乳動物の被検体に導入された外来物質に対するものであり、前記方法は、
(a)抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、試験試料を接触させる工程と、
(b)抗体と抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、特異的結合の量対抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明の第三の局面によれば、哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出する方法であって、ここで、抗体は、病状または罹病性の生物学的マーカーであり、前記方法は、
(a)抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、試験試料を接触させる工程と、
(b)抗体と抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、特異的結合の量対抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程
を含む方法が提供される。
【0012】
本発明の全ての局面において、哺乳動物の被検体は、好ましくはヒトである。
【0013】
本発明の全ての局面において、前記方法は、好ましくは哺乳動物の被検体から得られた、または調製された体液を含む試験試料についてインビトロで実施される。
【0014】
全ての局面における本発明の特徴は、関連する抗体が試験試料内に存在するか否かの判断が、試験されるそれぞれ異なる抗原濃度において観察される特異的結合の量、言い換えれば、単なる単一の濃度における読み取りよりも、集合的評価に基づくことである。このように、患者の試料における病状または罹病性、あるいは外来物質に対する抗体の存在または不在の決定は、こうした集合的評価に直接に基づいて行える。好ましくは、抗原の量に対する特異的結合の量をプロットした場合の、一般的にS字状またはシグモイド型である曲線の表示に基づいて判断を行う。本明細書の実施例から明らかになるであろうが、本発明者らは、本発明の抗原滴定方法が、単一の読み取りに基づいて診断または検出する方法に比べて特異性および感度が高く、偽陽性および偽陰性の決定の発生を減らすことを観察した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般的に、病状または罹病性の生物学的マーカーの役割を果たす抗体を検出するためのイムノアッセイ法を提供し、抗体の存在を試験するための試料が、該抗体に特異的な異なる量の抗原に対する特異的結合について試験されること、および、抗体/抗原の結合対試験される抗原の量に関して滴定曲線が作成されることによって特徴づけられる。
【0016】
例えばELISAやラジオイムノアッセイ等のイムノアッセイの一般的特徴は、当業者に周知である(Immunoassay、E. DiamandisおよびT. Christopoulus、Academic Press, Inc.、San Diego、CA、1996参照)。特定の免疫学的特異性を有する抗体の検出のためのイムノアッセイは、一般的に、試験用の抗体との特異的免疫学的反応性を示す試薬(抗原)の使用を必要とする。アッセイの形式によっては、この抗原を固体支持体に固定することができる。抗体の存在について試験するための試料を抗原と接触させ、もし必要な免疫学的特異性を有する抗体が試料内に存在する場合は、それらが抗原と免疫学的に反応して抗体−抗原の複合体を形成し、そしてこれを検出、または定量的に測定することができる。
【0017】
本発明の方法は、抗体の存在について試験するべき標準化された試料について、複数の異なる量の抗原(本明細書では濃度系列(titration series)とも言う)に対して試験を行うことによって特徴づけられる。試料は、少なくとも2種類、好ましくは少なくとも3、4、5、6または7種類の量の抗原に対して試験される。典型的なアッセイは、いかなる抗原も含有しないネガティブコントロールを含んでいてもよい。
【0018】
これに関連して、用語「抗原」は、検出することが所望される標的抗体と特異的に相互作用することができる少なくとも1つの抗原決定基またはエピトープ、あるいは、該抗体の可変領域または相補性決定領域と特異的に相互作用する任意の捕捉剤を含む物質のことを言う。抗原は、典型的には例えばタンパク質またはペプチド、多糖、あるいは核酸等の天然または合成の生体高分子であり、抗イディオタイプ抗体等の抗体またはそのフラグメントを含み得る。
【0019】
当業者の読者であれば、本発明の方法において、標的抗体への結合に利用できる抗原決定基またはエピトープの量が、濃度系列の確立にとって重要であることを理解するであろう。多くのアッセイ形式において、結合に利用できる抗原決定基またはエピトープの量は、存在する抗原分子の量と直接関連し合っている。しかし、例えばある種の固相アッセイ系等の他の実施形態においては、暴露された抗原決定基またはエピトープの量は、抗原の量と直接に関連し合うことは無いかも知れないが、例えば固体表面への付着等、その他の要因に依存するかも知れない。これらの実施形態において、濃度系列における「異なる量の抗原」と本明細書で言う場合、異なる量の抗原決定基またはエピトープのことを言うものと捉えることができる。
【0020】
抗体と抗原の間の特異的結合の相対量または絶対量は、使用される抗原(抗原決定基またはエピトープ)のそれぞれの異なる量について測定され、試験されたそれぞれの量の抗原について、抗原の量に対する特異的結合の量(相対量または絶対量)の曲線をプロットまたは計算するために使用される。多数の異なる抗体の検出に関する図面を添付し、典型的な結果をあくまで例として示す。アッセイに使用される抗原と反応する抗体の試験試料における存在は、それぞれの抗原量で観察された特異的結合の量に基づいて決定し、一般的にS字状またはシグモイド型である曲線によって示す。抗体と抗原の間の特異的結合の絶対量は、定量的測定が所望されるのでなければ、一般的に実体的なものではない。抗体の存在または不在について単純に肯定/否定を決定するためには、正しい形状の曲線が作成されれば十分である。もし試験された異なる量の抗原に対して検出可能な結合における変化がない場合は、検出可能な量の抗体の不在としてスコアをつけることができる。本発明の好ましい実施形態において、該方法は非定量的である。このように、シグナル強度に無関係の無次元の比例関係を使用して、抗体の存在または不在につての肯定/否定を決定することができる。
【0021】
特定の試料に存在する抗体の量の測定は、所望であれば、抗原滴定アッセイの結果から導くことができる。
【0022】
本発明の方法は、存在する標的抗体の絶対量が患者によって大きく異なり得る臨床上の診断的、予後的、予測的、および/またはモニタリングのアッセイにおいて使用する際に有利である。本発明者らは、以下の内容を観察した:このようなアッセイが単一の量/濃度の試験抗原を使用した抗体結合の検出に基づく場合、アッセイ方法論に限界があるために、集団全体を通じた抗体量の正常な生理学的範囲のうちの非常に低レベル、または高レベルにある抗体量を含有する患者の試料について見逃す可能性がある;少量の抗体を有する試料は、偽陰性の結果としてスコアされる場合がある一方で、非常に高レベルの抗体を有する試料は、選択されたアッセイ方法論の範囲内の正確な検出用の測定値の上限を超える場合がある。
【0023】
本発明の滴定アッセイ方法はまた、標的抗原に対する抗体/自己抗体の特異性および親和性について患者間で有意な差がある場合の、病状または罹病性の生物学的マーカーとしての抗体/自己抗体の検出にも特に適している。自己抗体の、それ自体の性質による反応は、患者間で有意に異なる場合があり、そうした差は、存在する自己抗体の絶対量においても、自己抗体の特異性/親和性においても起こる。本発明の方法では、この患者間の差を考慮に入れることができるので、任意の所定の抗体/自己抗体用に標準アッセイフォーマットを開発することが可能である。
【0024】
自己抗体とその標的抗原の間の相互作用は、一般的に親和性が低いが、既に概要を述べた通り、結合の強さは患者間で異なる場合がある。本発明の方法は、低親和性結合の検出に特に適合する。なぜならば、陽性の結果が、滴定曲線の形状から推測できるからである。
【0025】
本発明の方法はまた、診断、予後、および/またはモニタリング(病状または療法を)を目的とする自己抗体/抗体の検出に使用されるイムノアッセイのパフォーマンスにおける日々の差に対する保護手段を提供する。しばしば観察されることであるが、患者の体液を含む試料中の抗体の検出のためにイムノアッセイを実施する場合に、シグナル強度において日によって有意差がある場合がある。このような差は、例えば、試験前に試料が得られ、保存された方法の違いにより生じる場合がある。このような要因により、例えば、抗体/抗原の結合の単純な閾値に基づいて臨床アッセイの結果を確実にスコアすることが困難になる。本発明では、抗体の存在についての陽性の結果が、シグナル強度に関係なく滴定曲線の形状から明らかであるので、このように日によって差が出る影響を最小限にとどめる。
【0026】
本発明の方法の更なる利点は、患者の試料の希釈を可能にし、それでいてなお一貫した結果が出ること、また、一個体における異なるソース由来の体液(例えば血液または血清に対し腹水または胸水等)を使用しても、たとえ異なる体液において抗体の絶対濃度が異なる場合があっても、一般的に同じ定性的なスクリーニングの結果が出ること(陽性/陰性)である。
【0027】
本発明の方法は、抗体を含有すると疑われる試料と、複数の異なる量の抗原との接触を可能とする、任意の適切なフォーマットにおいて実施してよい。便利なことに、試料と異なる量の抗原との接触は、例えばマイクロタイタープレートのウェル等の、分離しているが平行な反応チャンバ内で行ってよい。種々の量の抗原は、マイクロタイタープレートの複数のウェルに対して、連続希釈法で抗原のストックから希釈物を調製することによって、マイクロタイタープレートの複数のウェルを被覆することができる。抗原のストックは、知られている、または知られていない濃度であってよい。次に、試験試料のアリコートをプレートのウェルに加えることができ、各ウェルにおける試験試料の量および希釈度は一定に保たれる。マイクロタイタープレートのウェルに加えられた抗原の絶対量は、標的抗体の性質、試験する試料の性質、試験試料の希釈度等の要因によって異なる場合があるが、このことは当業者によって理解されるであろう。一般的に、抗原の量および試験試料の希釈度は、この方法における抗体/抗原結合を検出するために選択された読み出し装置の許容できる検出範囲内にある様々な範囲のシグナル強度を作り出せるように選択することになる。抗腫瘍マーカー自己抗体を含有すると疑われるヒト血清試料を試験するための典型的な量および希釈度は、付随する実施例において挙げられる。試験する抗原の量は、都合よくO.Olμg/ml〜lOμg/mlの範囲内で異なっていて良い。
【0028】
前述の通り、抗原のストックにおける抗原の絶対濃度が不明の場合であっても、その単一のストックから始めて、滴定曲線を作成することも可能である。同じ単一のストックの溶液が使用され、同じ方法で連続して希釈されるのであれば、異なる出発試験試料において行われるこの抗原についての別個の滴定アッセイの結果を比較することが可能である。
【0029】
更なる実施形態において、異なる量の抗原(抗原決定基またはエピトープ)は、固体支持体上の不連続の位置または反応部位に固定できる。次に、支持体全体を試験試料と接触させ、不連続の位置または反応部位のそれぞれにおいて、抗原に対する抗体の結合を別個に検出または測定することができる。適切な固体支持体は、例えば、アレイ上の不連続の部位またはスポットが異なる量の抗原を含むアレイ等のマイクロアレイも含む。マイクロアレイは、アレイ上の不連続で溶解可能な反応部位に異なる量の特定の抗原を固定することによって調製できる。その他の実施形態において、固定された抗原分子の実際の量は実質的に一定に保つことができるが、利用できる結合エピトープの量を変えるために、アレイ上の部位またはスポットの大きさを変化させて、異なる量の利用可能な結合エピトープを有する部位またはスポットの濃度系列を提供する。このような実施形態においては、濃度系列を調製する際に、抗原の絶対量よりもむしろ、抗原上の結合エピトープの二次元表面濃度の方が重要である。タンパク質/ペプチドのマイクロアレイを調製および調査する技術は、当技術分野において一般的に知られている。
【0030】
上述の考察から理解されるであろうが、本発明の全ての実施形態において、抗原の量における変化は、試験する試料に対して用いられる抗原またはエピトープの密度を変えることによって、または、抗原またはエピトープの密度は維持するが抗原を固定する表面の面積を増やすことによって、またはその両方によって達成できる。
【0031】
単一の試料上で、異なる特異性を有する複数の抗体についての複数のアッセイを平行して実施するために、マイクロアレイを使用することができる。これは、異なる抗原の複数のセットを含むアレイを使用して行うことができ、各セットは、複数の異なる量または濃度での特定の抗原を含む。用語「異なる抗原」には、異なるタンパク質またはポリペプチド由来の抗原(異なる遺伝子にコードされる無関係のタンパク質由来の抗原等)、そして、単一のタンパク質またはポリペプチドの異なるペプチドエピトープ由来の抗原も包含される。所定のマイクロアレイは、異なるタンパク質またはポリペプチド由来の異なる抗原のセットのみ、または、単一のタンパク質またはポリペプチドの異なるペプチドエピトープ由来の異なる抗原のセットのみ、または、任意の比率での2つの混合を含み得る。留意すべきことは、本発明の任意の実施形態において、異なる量または濃度の抗原のそれぞれ独立したセットは、一般的に1種類の抗原のみを含み、抗原の混合は含まないということである。
【0032】
本明細書において使用される用語「体液」は、本発明の方法を使用して抗体の存在について試験される材料のことを言う場合、とりわけ、血漿、血清、全血、尿、汗、リンパ液、糞便、脳脊髄液、腹水、胸水、精液、痰、乳頭吸引液、手術後の漿液腫または傷口からの排液を含む。前述の通り、本発明の方法は、好ましくは、試験される被検体から採取された体液を含む試験試料上においてインビトロで行われる。使用される体液のタイプは、試験されるべき抗体の識別性およびアッセイが使用される臨床的症状によって異なり得る。一般的に、血清または血漿の試料においてアッセイを行うのが好ましい。試験試料は、体液に加えて、例えば希釈剤、防腐剤、安定剤、緩衝液等の更なる成分を含み得る。
【0033】
用語「抗原」は、本明細書においては広い意味で使用され、検出されるべき標的抗体との特異的な免疫学的反応を示す任意の物質のことを言う。適切な抗原は、天然のタンパク質、組み換えまたは合成のタンパク質またはポリペプチド、合成ペプチド、ペプチド模倣薬等、あるいは、多糖および核酸を含み得るが、これらに限定されない。具体的には、本明細書において用語「抗原」が使用される場合、ヒト由来、哺乳動物由来、またはその他の由来いずれであっても、検出されるべき抗体の可変領域または相補性決定領域との特異的な免疫学的相互作用が可能な任意の捕捉剤を含有することを意図する。例えば、抗イディオタイプ抗体は、ファージディスプレイ法によって産生される抗原同様、この目的のための抗原とみなしても良い。
【0034】
ある種の抗原は、天然源から単離されたタンパク質またはポリペプチドを含む、またはそれに由来して良く、患者の組織または体液から単離されたタンパク質またはポリペプチドを含むが、これらに限定されない。このような実施形態において、抗原は、天然のタンパク質の実質的に全て、すなわち、実質的に天然源から単離された際の形態であるタンパク質を含み得るか、または、天然のタンパク質のフラグメントを含み得る。本発明の方法において抗原として効果的であるために、任意のこのような「フラグメント」は、それを試験に使用する目的である抗体との免疫学的反応性を保持していなければならない。適切なフラグメントは、例えば、単離されたタンパク質の化学的または酵素的切断によって調製しても良い。
【0035】
抗原を使用することになるアッセイの特性(precise nature)によっては、抗原は、自然にはタンパク質中に存在しない望ましい性質を与える1つ以上の更なる分子を結合した天然のタンパク質、またはそのフラグメントを含み得る。例えば、タンパク質またはフラグメントは、蛍光標識、着色標識、光る(luminescent)標識、放射性標識、またはコロイド金等の重金属などのはっきりと見える標識に結合させることができる。その他の実施形態において、タンパク質またはフラグメントは、融合タンパク質として発現させることができる。一例として、融合タンパク質は、組み換えによって発現された抗原の精製において助けとなるように、N末端またはC末端にタグペプチドを含み得る。
【0036】
抗原を使用するべきアッセイのフォーマットによっては、抗原は、例えばマイクロタイタープレートのウェル、マイクロアレイのビーズまたはチップ、あるいは電磁ビーズ等の固体の支持体上に固定することができる。固定化は、非共有結合性の吸着または共有結合による連結によって達成できる。
【0037】
かなりの程度まで標的抗体と免疫学的に反応する抗原の能力に悪影響を与えるのでなければ、任意の適切な連結手段が使用できる。
【0038】
本発明は固相アッセイに限定されることはなく、例えば溶液相ビーズアッセイ等、全部または一部が液相において実施されるアッセイをも包含する。
【0039】
1つの実施形態において、抗原は、ビオチン等の固定化を促進するリガンドで標識することができる。次に抗原は、適切な滴定範囲まで希釈することができ、そして溶液内の患者の試料における自己抗体と反応させることができる。そして、その結果得られた免疫複合体は、リガンド−レセプターの相互作用(例えばビオチン−ストレプトアビジン)によって固体の支持体に固定することができる。アッセイの残りの部分は、以下に述べる通りに実施される。
【0040】
本発明のアッセイ方法において使用するためのビオチン化抗原の生成を促進するために、全長の抗原をコードするcDNA、その切断型、またはその抗原フラグメントが、ビオチン共同因子が酵素反応によって連結され得るタンパク質またはポリペプチドのタグで標識された融合タンパク質として発現させることができる。組み換えビオチン化抗原を生成するためのベクターは、多数の製造元から市販されている。
【0041】
付随する実施例において例示されるように、ビオチン化抗原と共に滴定曲線によるアプローチを使用することの更なる利点は、アッセイにおいて、ビオチン成分の抗ビオチン抗体に対する結合と、抗原のその同種抗体に対する真の結合との区別ができることである。相当数のヒトの集団が、ビオチン化抗原の使用に基づくアッセイにおいて偽陽性の結果を生み出すことになり得る抗ビオチン抗体を自然に生成することを、発明者らは観察した。
【0042】
前述の通り、本発明に従って抗体を検出するのに使用される「イムノアッセイ」は、滴定曲線を作成するために複数の量の抗原を使用することを除いては、当技術分野において知られている標準技術に基づいていて良い。最も好ましい実施形態において、イムノアッセイはELISAであって良い。ELISAは一般的に当技術分野において周知のものである。典型的な「間接的」ELISAにおいて、試験する抗体に対する特異性を有する抗原は、固体表面(例えば標準的なマイクロタイターアッセイプレートのウェル、あるいはマイクロビーズまたはマイクロアレイの表面等)の上に固定され、抗体の存在について試験するべき体液を含む試料を、固定された抗原に接触させる。試料内に存在する所望の特異性を有する任意の抗体が、固定された抗原に結合する。そして、結合した抗体/抗原の複合体は、任意の適切な方法を使用して検出することができる。1つの好ましい実施形態においては、抗体/抗原の複合体を検出するために、1つ以上のクラスのヒト免疫グロブリンに共通のエピトープを特異的に認識する標識された二次抗ヒト免疫グロブリン抗体を使用する。典型的には、二次抗体は、抗IgGまたは抗IgMである。二次抗体は通常、検出可能なマーカー、典型的には、例えばペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ等の酵素マーカーで標識され、例えば着色、化学発光法、または蛍光による生成物等の検出可能な生成物を産生する酵素用の基質を加えることにより、定量的検出を可能にする。当技術分野において知られているその他のタイプの検出可能なラベルも、同等の効果をもって使用できる。
【0043】
本発明は、病状または罹病性の生物学的マーカーである抗体を検出する方法に関する。本発明のこの特定の局面は、好ましくは、癌マーカーのワクチン接種以外のワクチンによるチャレンジまたは免疫付与のプロトコルの結果として生成される抗体について試験するために設計されたアッセイを除外する。従って、本発明のこの局面に従ったアッセイは、好ましくは、ワクチン接種/免疫付与後の抗ウイルス抗体または抗細菌抗体の存在について試験するために設計されたアッセイを含まない。
【0044】
本発明のある実施形態において、抗体は自己抗体であって良い。先に示したように、用語「自己抗体」は、実際はある個体由来であってもその個体の免疫系が異物と認識する抗原に対する天然の抗体のことを言う。自己抗体は、異常細胞によって、または疾病過程中に生成される変性された形態の天然のタンパク質に対する抗体を含む。変性された形態のタンパク質は、個体由来ではあるが、その個体の免疫系によって「非自己」とみなされる場合があり、それ故に、その変性されたタンパク質に免疫学的に特異的な自己抗体の形態において、その個体中で免疫反応を引き起こす。このような変性された形態のタンパク質は、例えば、二次構造、三次構造または四次構造における変化を任意に伴う変性されたアミノ酸配列を有する変異体、切断形態、スプライス改変体、変性された糖型等を含み得る。その他の実施形態において、自己抗体は、遺伝子増幅または異常な転写調節結果として、ある病状において過剰発現するタンパク質に対するものであって良い。通常は相当量の免疫系の細胞が直面することのないタンパク質の過剰発現は、自己抗体の生成に至る免疫反応の引き金となり得る。更に別の実施形態において、自己抗体は、病状において発現されるようになる胎児型のタンパク質に対するものであって良い。通常は免疫系が機能する前に発達の初期段階においてのみ発現する胎児性タンパク質が、病状において発現するようになると、その胎児型は免疫系によって「異物」と認識される場合があり、自己抗体の生成に至る免疫反応の引き金となる。
【0045】
1つの実施形態において、抗体は、腫瘍マーカータンパク質に特異的な自己抗体、特に、「癌に関連した」抗腫瘍自己抗体であって良い。
【0046】
「癌に関連した」抗腫瘍自己抗体という用語は、癌の病状において選択的に発現する腫瘍マーカータンパク質の形態で存在するエピトープに対する自己抗体を指す。このような自己抗体の存在は、癌の病状、または無症状の患者における癌に対する素因に特徴的なものである。
【0047】
好ましい用途において、本発明の方法は、ヒトの被検体または患者における癌に関連した抗腫瘍自己抗体の存在を検出するために使用され、最も好ましくは、被検体/患者から採取された体液の試料を含む試験試料において実施されるインビトロでのイムノアッセイの形態をとる。体液の試料は、試験の前に適切な緩衝液で希釈するか、長期貯蔵のために処理するか、または別の方法をとることができる。
【0048】
インビトロでのイムノアッセイは非侵襲的であり、「リスクのある」個体のスクリーニングにおいて等病気の発症する前でも、病気の過程全てにおいても、患者における自己抗体生成のプロフィールを確立するために必要と考えるだけ繰り返すことができる(本方法の好ましい用途に関連して、以下で更に述べる)。
【0049】
特に、限定はされないが、本発明の方法の実施形態は、それぞれが同一または関連した腫瘍マーカータンパク質上の異なるエピトープ(例えば単一の遺伝子にコードされる異なるイソ型または改変体等)、または異なる腫瘍マーカータンパク質上のエピトープ(異なる遺伝子にコードされるタンパク質を意味する)に対する特異性を有する、2つ以上のタイプの自己抗体を(同時に)検出するためのイムノアッセイを含み得る。これらの方法は、典型的には、抗原の2つ以上のセットのパネルの使用を伴い、抗原のセットは同じ腫瘍マーカータンパク質上の異なるエピトープも含み得ると先に述べてはいるが、抗原の各セットは通常、異なる腫瘍マーカータンパク質に由来する(この場合の「異なる」とは、異なる遺伝子の生成物であるタンパク質を意味する)。抗原のセットとは、本発明の方法において試験されるべき単一の抗原が異なる量/濃度にあることを言う。これらの方法(以下「パネルアッセイ」と称する場合がある)は、腫瘍またはその他の発癌性/腫瘍性の変化に対する個体の免疫反応全体をモニターするために、抗原の2つ以上のセットのパネルを利用する。よって、これらの方法は、所定の個体における免疫反応の「プロフィール」を検出し、どの腫瘍マーカーが免疫反応を引き起こして自己抗体が生成される結果となったかを示す。2つ以上の異なる腫瘍マーカーに対する自己抗体の生成をモニターするために2つ以上の抗原のパネルを使用した場合、一般的に、単一のマーカーに対する自己抗体を検出する場合よりもより感度が高く、偽陰性の結果になる頻度もずっと低い(国際公開第WO99/58978号および第WO2004/044590号参照。これらの内容は、その全体を引用することによって、本明細書の一部となす)。
【0050】
従って、限定されない実施形態において、本発明は、哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において2つ以上の抗体を検出する方法であって、ここで、抗体のうち少なくとも1つは、病状または罹病性の生物学的マーカーであり、前記方法は、
(a)抗原の2つ以上のセットに、試験試料を接触させる工程であって、ここで、抗原のセットのそれぞれが、試験試料において検出されるべき抗体のうちの1つに対して特異的であり、そしてここで、抗原のそれぞれのセットは、複数の異なる量の抗原を含む工程と、
(b)抗体と抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された抗原の各セットについて、特異的結合の量対抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程
を含む方法を提供する。
【0051】
1つの実施形態においては、2つ以上の抗体のそれぞれが、病状または罹病性の生物学的マーカーであろう。しかし、同じ試験試料において、疾病マーカー抗原の滴定アッセイと、疾病マーカーであるかも知れないしないかも知れない任意のその他のタイプの抗体の滴定アッセイとを組み合わせることは、本発明の範囲内である。
【0052】
どちらにせよ、関連する抗体が試験試料内に存在するか否かの判断は、試験におけるそれぞれ異なる抗原に関し、それぞれ異なる抗原濃度で観察された特異的結合の量に基づく。言い換えれば、各抗原について単一の濃度で読み取ったものよりもむしろ、各抗原についての集合的評価に基づくものである。このように、2つ以上のタイプの抗体の存在に基づく患者の試料における病状または罹病性、あるいは外来物質に対する抗体の存在または不在の決定は、各抗原についてのこれらの集合的評価に基づいて行える。好ましくは、こうした判断は、試験中に存在する任意の、または全ての抗原に関する一般的にS字状またはシグモイド型である曲線の提示に基づいて行われる。
【0053】
誤解を避けるために、抗体を検出するための単一のタイプの抗原の使用に基づくアッセイを、本明細書において「単一マーカーアッセイ」と呼ぶ場合があり、一方で、2つ以上の抗原のパネルの使用に基づくアッセイを、「パネルアッセイ」と呼ぶ。
【0054】
本発明の方法は、単一マーカーアッセイとして、またはパネルアッセイの成分として適切な抗原を調製できる、基本的に任意の腫瘍マーカータンパク質に対する自己抗体の検出において使用するように適応させることができる。特に、本方法は、以下に対する自己抗体を検出/測定するように適応させることができる:上皮成長因子レセプタータンパク質EGFR(Downwardら、(1984)Nature. 307: 521-527;およびRobertsonら、(2001) Archives of Pathology and Laboratory Medicine 126, 177-81);糖タンパク質MUC1 (Batra, S. K.ら、(1992) Int. J. Pancreatology, 12: 271-283);およびシグナル伝達/細胞周期調節タンパク質Myc (Blackwood, E. M.ら、(1994) Molecular Biology of the Cell 5: 597-609);p53 (Matlashewski, G.ら、(1984) EMBO J. 3: 3257-3262;およびWolf, D.ら、(1985) Mol. Cell. Biol. 5: 1887-1893);およびras(またはRas) (Capella, G.ら、(1991) Environ Health Perspectives. 93: 125-131);また、BRCA1 (Scully, R.ら、(1997) PNAS 94: 5605-10);BRCA2 (Sharan, S. K.ら、(1997) Nature. 386: 804-810);APC (Su, L. K.ら、(1993) Cancer Res. 53: 2728-2731;Munemitsu, S.ら、(1995) PNAS 92: 3046-50);CA125 (Nouwen, E. J.ら、(1990) Differentiation. 45: 192-8);PSA (Rosenberg, R. S.ら、(1998) Biochem Biophys Res Commun. 248: 935-939);癌胎児性抗原CEA (Duffy, M. J. (2001) Clin Chem, Apr 47(4): 624-30);CA19.9 (Haga, Y.ら、(1989) Clin Biochem (1989) Oct 22(5): 363-8);NY-ESO-1 (癌/精巣抗原;Chen, Y. -T.ら、Proc. Nat. Acad. Sci. 94: 1914-1918, 1997);PSMA(前立腺特異的膜抗原;Israeli, R. S.ら、Cancer Res. 53: 227-230, 1993);PSCA(前立腺幹細胞抗原;Reiter, R. E.ら、Proc. Nat. Acad. Sci. 95: 1735-1740, 1998);およびEpCam(上皮細胞接着分子;Szala, S.ら、Proc. Nat. Acad. Sci. 87: 3542-3546, 1990);HER2(c-erbB2としても知られている;Coussens, L.ら、Science 230: 1132-1139, 1985);CAGE (Jager D.ら、Cancer Res. 1999 Dec 15; 59 (24): 6197-204;Mashino K.ら、Br J Cancer. 2001 Sep 1; 85(5): 713-20);サイトケラチン(Moll R.ら、Cell. 1982 Nov. 31 (1): 11-24;およびBraun Sら、N Engl J Med. 2000; 342: 525-533);リカバリン(Maeda Aら、Cancer Res. 2000 Apr 1;60(7): 1914-20);カリクレイン(Kim H.ら、Br J Cancer 2001;84:643-650; Yousef GM.ら、Tumor Biol 2002;23:185-192);アネキシン(Hudelist G.ら、Breast Cancer Res Treat. 2004 Aug;86(3): 281-91);α−フェトプロテイン(Stiller D.ら、Acta Histochem Suppl. 1986;33:225-31);GRP78 (Block TMら、Proc Natl Acad Sci USA. 2005 Jan 18;102(3): 779-84; Hsu WMら、Int J Cancer. 2005 Mar 1;113(6): 920-7);CA125 (Norum LFら、Tumour Biol. 2001 Jul-Aug;22(4):223-8; Perey Lら、Br J Cancer. 1990 Oct;62(4): 668-70; Devine PLら、Anticancer Res. 1992 May-Jun;12 (3): 709-17);マンモグロビン(mammoglobin)(Zehentner BKら、Clin Chem. 2004 Nov;50(11): 2069-76; Zehentner BK, Carter D. Clin Biochem. 2004 Apr; 37 (4): 249-57);raf (Callans LSら、Ann Surg Oncol. 1995 Jan;2 (1): 38-42; Pratt MAら、Mol Cell Biochem. 1998 Dec;189 (1-2): 119-25);β−ヒト絨毛性ゴナドトロピンb-HCG (Ayala ARら、Am J Reprod Immunol. 1983 Apr-May;3(3): 149-51; Gregory JJ Jrら、Drugs. 1999 Apr;57(4): 463-7);または4-5抗原(Krause Pら、J Immunol Methods. 2003 Dec; 283(1-2): 261-7)。しかし、これら特定の腫瘍マーカーに対する自己抗体の検出に本発明を限定することは意図されていない。
【0055】
抗腫瘍マーカー自己抗体の検出(単一マーカーまたはパネルアッセイの形態において)に基づく本発明によるアッセイ方法は、種々の異なる臨床的症状において採用できる。特に、本方法は、特定の患者のために以下において使用することができる:癌の検出または診断;癌と診断された患者の予後についての評価;療法への反応の予測;患者における癌またはその他の腫瘍性疾患の進行のモニタリング;無症状のヒトの被検体における初期の腫瘍性の変化または初期の発癌性の変化の検出;癌を発症するリスクの高まっている被検体を識別するため、または癌の存在を診断するための、無症状のヒトの被検体の集団のスクリーニング;抗癌治療に対する癌患者の反応の予測(例えばワクチン接種、抗成長因子またはシグナル伝達療法、放射線療法、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法等);抗癌治療に対する癌患者の反応のモニタリング(例えばワクチン接種、抗成長因子またはシグナル伝達療法、放射線療法、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法等);存在する癌の量を減らすための抗癌治療を受けた、癌を有すると以前に診断された患者における再発病の検出;あるいは抗癌療法の選択(例えばワクチン、抗成長因子またはシグナル伝達療法、放射線療法、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法等)。
【0056】
本発明者らは、癌に関連した自己抗体のレベルが、病状と正相関を示すということを広く観察した(国際公開第WO99/58979号も参照。この内容は、引用することにより明細書の一部となす)。従って、本発明の方法が臨床的な用途で使用される場合、適切なコントロールに比べて抗腫瘍マーカー自己抗体がより高いレベルにある場合は、一般的に癌の病状を示すものと考えられる。
【0057】
例えば、イムノアッセイが癌の診断において使用される場合、「正常な」コントロール個体に比べてより高いレベルの自己抗体の存在は、その個体が癌を有することを示していると考えられる。「正常な」コントロール個体は、好ましくは、臨床的、画像的および/または生化学的基準に基づいていかなる癌の診断もされていない、年齢がマッチしたコントロールである。
【0058】
イムノアッセイが、抗癌治療(例えばワクチン接種、抗成長因子またはシグナル伝達療法(signal transduction therapy)、放射線療法、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法等)に対する癌患者の反応を予測するのに使用される場合、「正常な」コントロール個体に比べてより高いレベルの自己抗体の存在は、その個体が抗癌治療に反応しそうかどうかについて示すものと考えて良い。「正常な」コントロール個体は、好ましくは、臨床的、画像的および/または生化学的基準に基づいていかなる癌の診断もされていない年齢がマッチしたコントロールである。挙げられた治療それぞれについて、コントロールと比べた自己抗体のレベルと治療の成功の見込みとの関係は、治療中ずっと自己抗体の状態がモニターされる患者について、そのような治療の結果を観察することによって確立できる。そして、自己抗体の状態の評価に基づいて所定の患者における各治療の成功の見込みを予測するために、先に確立した関係を使用することができる。
【0059】
イムノアッセイが、患者における癌またはその他の腫瘍性疾患の進行をモニタリングするのに使用される場合、「正常なコントロール」に比べてより高いレベルの自己抗体の存在は、患者における癌の存在を示すものと考えられる。「正常なコントロール」は、コントロール個体内に存在する自己抗体のレベルであってよく、好ましくは、臨床的、画像的および/または生化学的基準に基づいていかなる癌の診断もされておらず、年齢がマッチしている。あるいは、「正常なコントロール」は、試験される特定の患者向けに確立された「ベースライン」レベルであって良い。「ベースライン」レベルは、例えば、癌を初めて診断したとき、または再発した癌を診断したとき、いずれかにおいて存在する自己抗体のレベルであって良い。ベースラインレベルを超える任意の増加は、患者において存在する癌の量が増加したことを示すものと考えられる一方で、ベースラインレベルを下回る任意の減少は、患者において存在する癌の量が減少したことを示すものと考えられるであろう。「ベースライン」値は、例えば、新しい治療を開始する前のレベルであっても良い。自己抗体のレベルにおける変化は、療法の有効性を示すものと考えられるであろう。治療に対する肯定的反応を示す「変化」の方向性(すなわち増加か減少か)は、治療の特性に依存するであろう。任意の所定の治療について、肯定的結果を示す自己抗体のレベルにおける「変化」の方向は、例えば治療に対する反応についてのその他の臨床的または生化学的指標と比較した自己抗体のレベルをモニタリングすることによって容易に決定できる。
【0060】
イムノアッセイが、無症状のヒトの被検体の集団をスクリーニングするのに使用される場合、これは、癌を発症するリスクの増大している被検体を識別するためであって良く、「正常な」コントロール個体に比べてより高いレベルの自己抗体を有する個体は、癌を発症する「リスクがある」として識別される。「正常な」コントロール個体は、好ましくは、癌を発症するいかなる素因も有さない、または癌を発症するいかなる有意に高まるリスクも有さないものとして識別される、年齢がマッチしたコントロールであろう。年齢そのものが主要なリスク要因である場合は例外であり得る。
【0061】
イムノアッセイが、無症状のヒトの被検体の集団をスクリーニングするのに使用される場合、これは、癌を既に発症している被検体における癌を診断するためであって良く、「正常な」コントロール個体に比べてより高いレベルの自己抗体を有する個体は、癌またはある種の形態の腫瘍性の変化を有するとしてスコア化される。「正常な」コントロール個体は、好ましくは、癌を発症するいかなる素因も有さない、または癌を発症するいかなる有意に高まるリスクも有さないものとして識別される、年齢がマッチしたコントロールであろう。年齢そのものが主要なリスク要因である場合は例外であり得る。あるいは、「正常なコントロール」は、試験される特定の患者向けに確立された「ベースライン」レベルであって良い。「ベースライン」レベルは、例えば、患者を初めて試験し、「正常なコントロール」集団のレベルより高まっていないレベルを有していた場合に存在する自己抗体のレベルであって良い。このベースラインの測定後のこれに対する任意の増加は、その個体における癌の存在を示すものと考えられるであろう。従って、個体は、このようなベースラインの試験を通じて、将来の自己抗体測定のための自らのコントロールとなり得る。
【0062】
イムノアッセイが、抗癌治療(例えばワクチン接種、抗成長因子またはシグナル伝達療法、放射線療法、内分泌療法、ヒト抗体療法、化学療法等)に対する癌患者の反応をモニタリングするのに使用される場合、治療後にレベルが変化した自己抗体の存在は、患者がその治療に肯定的に反応したことを示すものとして考えられる。治療を開始する前に得られた自己抗体のベースラインレベルは、治療の結果自己抗体のレベルにおける「増加または減少」が起こったかどうかを測定するために、比較の目的で使用できる。自己抗体のレベルにおける変化は、療法の有効性を示すと考えられるであろう。治療に対する肯定的反応を示す「変化」の方向性(すなわち増加か減少か)は、治療の特性に依存するであろう。任意の所定の治療について、肯定的結果を示す自己抗体のレベルにおける「変化」の方向は、例えば治療に対する反応についてのその他の臨床的または生化学的指標と比較した自己抗体のレベルをモニタリングすることによって容易に決定できる。
【0063】
本発明の方法は、基本的に任意の知られた抗癌治療に対する個体の反応を予測および/またはモニタリングするのに使用できる。これには、例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を患者に注入するヒト抗体療法が含まれ、限定されない具体的な例としては、抗成長因子抗体ハーセプチン(商標)による治療がある(Baselga, J.、D. Tripathyら、J Clin Oncol., 14(3), 737-744, 1996)。天然の自己抗体の反応の存在は、人工的に注入した治療抗体による治療の有効性を高めるか、または阻害することができる。本発明の方法を使用すると、任意の患者または患者のグループにおける、抗体療法を含めた任意の抗癌治療に対する反応と、治療過程に入る前および過程中の自己抗体の天然のレベルとを関連付けることができる。この知見はまた、同じ治療に対して他の患者(または治療を繰り返した同じ患者)がどのように反応するかを予測するためにも使用できる。
【0064】
イムノアッセイが再発病の検出に使用される場合、「正常なコントロール」と比較してより高レベルの自己抗体が患者に存在することは、病気が再発したことを示すと考えられる。「正常なコントロール」は、コントロール個体に存在する自己抗体のレベルであり得、好ましくは、臨床的、画像的および/または生化学的基準に基づいていかなる癌の診断もされておらず、年齢がマッチしている。あるいは、「正常なコントロール」は、試験される特定の患者向けに確立された「ベースライン」レベルであって良い。「ベースライン」レベルは、例えば、臨床的、画像的および/または生化学的基準に基づく病気の寛解の期間中に存在する自己抗体のレベルであって良い。
【0065】
本発明のアッセイ方法は、多くの異なるタイプの癌の検出に適用することができ、癌の例として、乳癌、膀胱癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、および卵巣癌が挙げられる。アッセイは、スクリーニングおよび監視のための既存の方法を補完することができる。例えば、原発性乳癌の場合、X線写真では疑わしく見えないマンモグラム上の小さな病変を生検するよう、または、胸部の画像化を行う、または計画よりも早めに画像化を繰り返すように臨床医に注意を喚起するために、自己抗体のイムノアッセイを使用することができる。外来において、本発明のアッセイ方法は、その成功がオペレーター依存性であり得る現在の画像技術(すなわちマンモグラフィーおよび超音波検査)に比べてより客観的かつ再現可能であることが期待される。
【0066】
「パネルアッセイ」は、特定の臨床的用途を考慮して調整することができる。少なくともp53およびc-erbB2に対する自己抗体を検出するための抗原のパネルが、多くのタイプの癌に対して特に有用であり、検出すべき特定の癌または特定の癌のある段階と関連することが知られているその他のマーカーで任意に補完することができる。例えば、乳癌では、パネルはMUC1および/またはc-mycおよび/またはBRCA1および/またはBRCA2および/またはPSAを含み得、一方、膀胱癌では、パネルはMUC1および/またはc-mycを、結腸直腸癌ではrasおよび/またはAPCを、前立腺癌ではPSAおよび/またはBRCA1および/またはBRCA2を、卵巣癌ではBRCA1および/またはBRCA2および/またはCA125を、それぞれ任意に含み得る。p53またはc-erbB2が必ずしも必須ではないその他の好ましい形態もある。
【0067】
乳癌の場合、適切なパネルは以下から選択できる:
p53およびMUC1に加え、任意でc-erbB2および/またはc-mycおよび/またはBRCA1および/またはBRCA2および/またはPSAおよび/またはNY-ESO-1および/またはBRC1;
p53およびc-mycに加え、任意でc-erbB2および/またはMUC1および/またはBRCA1および/またはBRCA2および/またはPSAおよび/またはNY-ESO-1および/またはBRC1;
p53およびBRCA1に加え、任意でc-erB2および/またはMUC1および/またはc-mycおよび/またはBRCA2および/またはPSAおよび/またはNY-ESO-1および/またはBRC1;
p53およびBRCA2に加え、任意でc-erbB2および/またはMUC1および/またはc-mycおよび/またはBRCA1および/またはPSAおよび/またはNY-ESO-1および/またはBRC1;
c-erbB2およびMUC1に加え、任意でp53および/またはc-mycおよび/またはBRCA1および/またはBRCA2および/またはPSAおよび/またはNY-ESO-1および/またはBRC1;
c-erbB2およびc-mycに加え、任意でp53および/またはMUC1および/またはBRCA1および/またはBRCA2および/またはPSAおよび/またはNY-ESO-1および/またはBRC1;
c-erbB2およびBRCA1に加え、任意でp53および/またはMUC1および/またはc-mycおよび/またはBRCA2および/またはPSAおよび/またはNY-ESO-1および/またはBRC1;
c-erbB2およびBRCA2に加え、任意でp53および/またはMUC1および/またはc-mycおよび/またはBRCA1および/またはPSA;
p53、c-myc、NY-ESO-1およびBRCA2。
【0068】
結腸直腸癌の場合、適切なパネルは例えば以下から選択できる:
p53およびrasに加え、任意でc-erbB2および/またはAPC;
p53およびAPCに加え、任意でc-erbB2および/またはRas;
RasおよびAPCに加え、任意でp53および/またはc-erbB2。
このようなパネルは、CEAまたはCA19-9を含んでも良い。
【0069】
前立腺癌の場合、適切なパネルは例えば以下から選択できる:
p53およびPSAに加え、任意でBRCA1および/またはBRCA2および/またはc-erbB2;
c-erbB2およびPSAに加え、任意でp53および/またはBRCA1および/またはBRCA2;
PSMA、PSCAおよびカリクレイン。
【0070】
卵巣癌の場合、適切なパネルは例えば以下から選択できる:
p53およびCA125に加え、任意でc-erbB2および/またはBRCA1および/またはBRCA2;
c-erbB2およびCA125に加え、任意でp53および/またはBRCA1および/またはBRCA2;
HER2、アネキシン、CAGEおよび4-5。
【0071】
肺癌の場合、適切なパネルは以下から選択して良い:
p53およびNY-ESO-1に加え、任意で更なるマーカー;
HER2、アネキシン、CAGEおよび4-5。
【0072】
異なるタンパク質由来の2つ以上の腫瘍マーカー抗原に基づく「パネルアッセイ」を行うために本発明の方法を使用する場合、滴定曲線を形成するために、パネルにおける抗原のうちの少なくとも1つを、複数の異なる量の抗原の試験に基づく本発明に従ってアッセイにおいて試験する必要がある。好ましくは、パネルを形成する抗原それぞれについて本発明のアッセイに従って試験し、パネルにおける抗原それぞれについて滴定曲線をプロット/計算する。
【0073】
本発明はまた、少なくとも1つの抗腫瘍マーカー抗体を検出するための滴定アッセイを、少なくとも1つの腫瘍マーカータンパク質(滴定アッセイに使用される抗原に関連していてもしていなくとも良い)を検出するために設計されたアッセイと組み合わせて、同じ患者の試料において使用できることを意図している。従って、抗腫瘍マーカー自己抗体のアッセイと腫瘍マーカータンパク質のアッセイは、単一の患者の試料において平行して実施することができる。
【0074】
更なる実施形態において、本発明のイムノアッセイの方法は、特定の患者において使用するための抗癌ワクチンの選択において使用できる。この実施形態においては、異なる腫瘍マーカータンパク質それぞれに対する患者の免疫反応の相対的強度を測定するために、それぞれが異なる腫瘍マーカータンパク質に対応する2つ以上の抗原のパネルを使用して、患者から採取された体液の試料を試験する。所定の1つのまたは複数の腫瘍マーカータンパク質に対する「免疫反応の強度」は、自己抗体が定量化されるイムノアッセイを使用して検出された、腫瘍マーカータンパク質に特異的な、癌に関連した自己抗体の存在および/または量によって示され、癌に関連した自己抗体のレベルが高いほど、免疫反応が強い。そして、患者において最も強い免疫反応または強い複数の反応を引き起こすとして識別された1つのまたは複数の腫瘍マーカータンパク質(すなわち、最高レベルの自己抗体)を選択して、患者において使用するための抗癌ワクチンのベースを形成する。
【0075】
本発明の方法の有用性は、抗腫瘍自己抗体の検出に限定されるものではない(アッセイはこの目的に対して特に有用ではあるが)。癌は病気の単なる一例であり、自己抗体の検出は、病状/罹病性の生物学的マーカーとして使用することができる。本発明者らは、実質的な利点が、患者の試料における自己抗体を検出するために滴定によるアプローチを使用することによって得られることを示してきた。従って、癌以外の病気の生物学的マーカーである自己抗体を検出するために滴定によるアプローチを使用することによっても類似した利点が得られるであろうと結論づけるのは妥当なことである。従って本方法は、自己抗体の生成との関連を示している(または示し得る)任意の病気において、病状または罹病性の生物学的マーカーとしての役割を果たす任意の自己抗体を検出することに適用できる。
【0076】
本発明の方法のその他の用途は、例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性甲状腺炎(例えば橋本甲状腺炎)、自己免疫性胃炎(例えば悪性貧血)、自己免疫性副腎炎(例えばアジソン病)、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性糖尿病(例えば1型糖尿病)、または重症筋無力症等の自己免疫疾患の生物学的マーカーである自己抗体の検出;腎臓疾患または肝疾患であって、いずれかの器官の機能不全または不全に至るものについての患者の試料のスクリーニング;および、移植手術後に病変組織(移植手術後に元の位置に残っているもの)または移植された組織のいずれかに対する抗体が存在するかどうかを検出するための患者の試料のスクリーニングを含むが、これらに限定されない。
【0077】
更なる局面において、本発明は、哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出する方法であって、ここで、抗体は、哺乳動物の被検体に導入された外来物質に対するものであり、前記方法は、
(a)抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、試験試料を接触させる工程と、
(b)抗体と抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、特異的結合の量対抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程
を含む方法に関する。
【0078】
好ましくは、本発明のこの実施形態において、本方法は、(d)用いられたそれぞれ異なる抗原濃度における抗体と抗原の間の特異的結合の量、言い換えれば、特定の抗原について観察された集合的評価に基づいて、抗体の存在を検出する工程を含む。好ましくは、アッセイに使用された抗原と反応する抗体の試験試料中の存在は、一般的にS字状またはシグモイド型である曲線によって示される。
【0079】
本発明のこの局面において、滴定の方法論は、導入された任意の外来物質に対する哺乳動物の被検体、好ましくはヒトの被検体の免疫反応を評価するために使用できる。
【0080】
1つの実施形態において、外来物質は、例えば薬物またはプロドラッグ、ヒト抗体療法あるいはワクチン等の治療剤であって良い。本発明の方法は、患者に対する治療剤の投与が、治療剤上のエピトープ、または治療剤と共に投与される送達ビヒクル、賦形剤、キャリア等の成分に特異的な抗体の生成に至る免疫反応の引き金になるかどうかを評価するために使用できる。
【0081】
治療剤の特性は本発明を限定しない。限定されない実施形態において、本発明の方法は、任意で賦形剤、キャリアまたは送達ビヒクルと組み合わせた、合成小分子、天然の物質、天然または合成の生物学的因子、あるいは前述のもののうち2つ以上の任意の組合せに対する免疫反応を評価するために使用できる。
【0082】
1つの有用な実施形態において、本発明の方法は、治療剤またはワクチンにおける非標的部分に対する免疫反応を評価するために使用できる。「非標的」部分とは、投与された治療剤またはワクチンの構成部分であって、治療剤の場合は、治療活性に直接寄与することがなく、ワクチンの場合は、ホスト内の抗体の生成を引き起こすことを意図しないものを意味する。非標的部分は、例えば、治療剤またはワクチンの精製を促進するために存在して良く、あるいは、治療剤/ワクチンの送達、接種または標的を助けるように設計されて良い。このような「非標的」部分の例には、ビオチン標識、ヒスチジンタグ等、一般的に組み換え発現ポリペプチドに結合するリンカーまたはマーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明のこの局面の別の実施形態において、外来物質は、真菌、細菌、ウイルスまたは寄生虫等の感染性因子であって良い。
【0084】
本発明は、以下の限定されない実験の実施例を参照することによって更に理解されるであろう。
【実施例1】
【0085】
自己抗体アッセイにおける抗原の滴定のための一般的プロトコル
(ビオチン化された)腫瘍マーカー抗原の試料は、組み換え発現によって調製することができ、類似の方法が国際公開第WO99/58978号に記載されている。
【0086】
簡潔に言えば、発現したタンパク質の精製の助けとなるようビオチンタグおよび6×ヒスチジンタグをコードするように改変しているpET21ベクター(インビトロジェン社)内に、目的のマーカー抗原をコードするcDNAをクローニングした。得られたクローンは、適切な細菌宿主細胞内(封入体内)で増加させ、細菌を溶解して変性させ、ニッケルキレート親和性カラム(Hi-trap。Amersham社により市販されている。製造業者のプロトコルに従う)を使用して、発現した抗原を回収した。適切な緩衝液内で、発現された抗原を透析によって復元し、発現したタンパク質の収率をSDS-PAGE、ウエスタンブロット法およびELISAによって評価し、保存する前に量を計った。
【0087】
ネガティブコントロールVOLは、空のベクター(すなわちクローニングされたcDNAがない)であるが、Hisおよびビオチンタグの配列は含んでいる。
【0088】
複数のマーカーcDNAのGenBankの受託番号は、以下の通りである:
P53: B003596
c-myc: V00568
ECD6 (HER2) 細胞外ドメイン: M11730
NY-ESO: NM_001327
BRCA2: U43746
BRCA1 デルタ9-10: NM_007302
【0089】
1.0.1 M炭酸塩緩衝液において、抗原およびVOL(ネガティブコントロール)を適切な濃度まで希釈し、次に、連続希釈を行って半対数の滴定範囲を形成した(表1参照)。電子マルチチャネルピペットを使用するプレートレイアウトに従って、Falcon社製のマイクロタイタープレートの列に、50μl/ウェルで抗原の希釈物を分注した。プレートにカバーをし、4℃で48時間保存した。
【0090】
2.自動プレート洗浄器を使用して、PBS+0.1% Tween 20内でプレートを一度洗浄し、次に、ティッシュペーパー上で軽くたたいて乾燥させた。
【0091】
3.高塩濃度インキュベーション緩衝液(HSB、PBS+0.5M NaCl+0.1%カゼイン)を200μl/ウェルで用いて、1時間、または使用するのに必要な時間、プレートをブロックした(カバーをして4℃で保存)。
【0092】
4.血清試料を解凍し、ボルテックスし、室温でHSBにおいて1/100に希釈した。
【0093】
5.プレートを空にし、ティッシュペーパー上で軽くたたいて乾燥させた。電子マルチチャネルピペットを使用して、マイクロタイタープレートの全てのウェルに、希釈した血清試料それぞれを50μl/ウェルの分量で分注した。コントロール抗体をHSB内で1/1000に希釈し、最終プレートの適切なウェルに分注した。プレートにカバーをし、シェイクしながら室温で1.5時間インキュベートした。
【0094】
6.洗浄工程:自動プレート洗浄器を使用して、PBS+0.1% Tween 20内でプレートを三度洗浄し、次に、ティッシュペーパー上で軽くたたいて乾燥させた。
【0095】
7.西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させたウサギ抗ヒトIg(Jackson社製、HSBで1/10,000に希釈)をマイクロタイタープレートの全てのウェルに50μl/ウェルの分量で分注した。HRPを結合させたウサギ抗マウスIg(HSBで1/1000に希釈)を、抗抗原抗体を含有するコントロールウェルに分注した。次に、プレートをシェイクしながら室温で1時間インキュベートした。
【0096】
8.工程6と同様にしてプレートを洗浄した。
【0097】
9.予め調製したTMB基質を50μl/ウェルの分量で加え、プレートをベンチで10分間インキュベートした。プレートをそっとたたいて混合させた。
【0098】
10.標準的なプレートリーダープロトコルを使用して、ウェルの光学密度を650 nmで測定した。
【0099】
【表1】

【実施例2】
【0100】
原発性乳癌における自己抗体の検出
原発性乳癌(PBC)における滴定自己抗体アッセイのパネルの感度および再現性を評価するために、以下のデータをパイロット・スタディから得た。研究は、癌の症状のない17人の女性由来の血清および原発性乳癌を有する20人の女性由来の術前の血清試料を含んでいた。正常な試料と癌の試料は年齢をマッチさせた。正常な試料1つと癌の試料3つは、抗ビオチン抗体反応の証拠を示し、それ故にアッセイの現在のフォーマットを使用して評価することができなかったので、研究から除外しなければならなかった。集団のうちの約10%において、ビオチンに対する免疫反応が起こると考えられる。
【0101】
実施例1に示されたプロトコルに従い、抗原p53、c-myc、NY-ESO-1およびBRCA2を使用してアッセイを行った。
【0102】
図1は、血清中のp53自己抗体を測定するために抗原滴定アッセイを使用した場合に得られた曲線の例を示す。癌患者の血清17766(C)は、試験抗原(p53)に強く結合し、特徴的なシグモイド型の曲線を示すが、ネガティブコントロールVOLには結合しないことがわかる。それに比べ、正常な個体由来の血清18052 (N)は、試験抗原またはネガティブコントロールへの結合を示す滴定曲線にはならない。
【0103】
自己抗体のレベルは、試験抗原への結合による光学密度(650 nm)−ネガティブコントロール(VOL)への結合による光学密度(650 nm)として示した。正常なカットオフ値は、正常なグループの95パーセンタイル(平均値+2標準偏差)として計算した。これは図2において点線で示され、図2では、正常な個体における抗p53自己抗体のレベルを癌患者と比較している。癌のグループは一般的により高い自己抗体のレベルを示し、また、カットオフ値を超えるレベルを有する個体の割合がより高いことがわかる。
【0104】
パネルは、4つの抗原、p53、c-myc、NY-ESO-1およびBRCA2より成るものであった。個々のアッセイの感度を、原発性乳癌の検出における4つの抗原のパネルの複合された感度(63%)と共に、表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
4つの異なる抗原に対する自己抗体を測定し、パネルの複合された感度を計算した。カットオフ値は、正常な試料セットの平均値+2標準偏差として計算した。抗ビオチン抗体反応を有する個体は、評価不能として除外した。
【0107】
滴定自己抗体アッセイを使用して得られた測定が再現可能なものであるかどうかを評価するために、それぞれ別の日に3回アッセイを行った。結果を表3に示す。3つの結果が全て一致すれば、アッセイは再現可能であるとみなした。正常な血清について行った測定の再現性は94%(15/16)であり、乳癌の試料については88%(14/16)であった。
【0108】
【表3】

【0109】
原発性乳癌(PBC)を有する患者または正常なコントロール由来の血清試料について、それぞれ別の日に3回アッセイを行った(アッセイ(Run) A、BおよびC)。カットオフ値のレベルは、正常な試料セットの平均値+2標準偏差として1日毎に計算した。「AB」は、抗ビオチン抗体反応の証拠を示し、現在のアッセイフォーマットでは評価できない個体であることを示す。3つの結果が全て一致すれば、アッセイは再現可能であるとみなした。正常な個体の再現性は94%(15/16)で、PBCの患者の再現性は88%(14/16)であった。
【実施例3】
【0110】
肺癌における自己抗体の検出
肺癌についてのパイロット・スタディにおける2つの抗原(p53およびNY-ESO)に対する自己抗体の反応の分析(10個の正常な血漿および9個の肺癌の患者の血漿)によれば、検出率は78%であった(図3)。
【0111】
血清の代わりに血漿試料を使用した他は、実施例1の一般的なプロトコルに従ってアッセイを実施した。
【0112】
陽性の患者の試料は、図1に示されたものと類似のシグモイド型滴定曲線を示した。図3は、抗原滴定アッセイを使用して測定された正常な個体および肺癌を有する患者におけるp53およびNY-ESOの自己抗体のレベルの比較を示す。正常なカットオフ値は、正常な集団の平均値+2標準偏差として計算した。
【実施例4】
【0113】
更なる滴定曲線
以下の更なる滴定曲線は全て、実施例1に述べた一般的な方法論に基づくアッセイにおいて作成した。滴定曲線によるアプローチが、異なるタイプの体液における、そしてまた、異なる病気(例えば異なるタイプの癌)における、多様な異なる抗原の検出に適用できることをこれらの結果は示し、また、「正しい」陽性の結果と「偽」陽性の結果とを区別する際における本発明の方法の利点を示している。
【0114】
図4は、乳癌の患者から採取した腹水の試料におけるp53およびNY-ESOに対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。患者を試験したところ、c-mycに対する自己抗体を生成しないことがわかった。
【0115】
図5は、乳癌(非浸潤性乳管癌)の患者から採取した血清の試料におけるBRCA1、BRCA2およびHER2に対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。
【0116】
図6は、肺癌の患者から採取した血清の試料におけるNY-ESOに対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。患者を試験したところ、p53、c-mycいずれに対しても自己抗体を生成しないことがわかった。
【0117】
図7は、肺癌の患者から採取した血清の試料におけるNY-ESOおよびp53に対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。患者を試験したところ、c-mycに対する自己抗体を生成しないことがわかった。
【0118】
図8(a)および8(b)は、「正常な」被検体(すなわち癌の症状がない個体)から採取した血清の試料におけるp53、c-mycおよびNY-ESO-1に対する自己抗体のための2つの独立した滴定アッセイの結果を示す。図8(a)に示すアッセイにおいては、抗原の量が増えても平らな線が観察され、血清試料が、試験した抗原のいずれに対する自己抗体も含有しないことを示している。同じアッセイ方法論を使用して、同じ患者の血清試料の2番目のアリコートを再び試験したところ、アッセイは失敗し、図8(b)に示す変則的な結果となった。抗原の量が増加しても特徴的な滴定曲線が存在しないということは、本当に陽性であるというよりはむしろ、変則的な結果であるということを示している。もし、単一の固定量の抗原を使用する単一アッセイによってこの試料を試験した場合、「偽陽性」の結果のように見えたかも知れない。このように、これらの結果は、正しい陽性の結果と偽陽性の結果とを区別する際の滴定曲線によるアプローチの利点を示している。
【0119】
図9(a)および9(b)は、広範囲の異なる抗原を使用して、浸潤性乳癌の一人の患者から採取した血清の試料において実施した2つの独立した滴定アッセイの結果を示す。この特定の患者は、NY-ESO-1、HER2およびBRCA2に対する自己抗体を示す。陽性の抗原それぞれについて、抗原の濃度が増加するにつれてシグナル強度が増加することによって、すなわち滴定シグナルによって、アッセイにおける陽性の結果が示される。
【0120】
図10(a)および10(b)は、抗ビオチン反応と特定の抗原(すなわち腫瘍マーカー)に対する「真の」自己抗体とを区別する際における本発明の有用性を示す。これらのアッセイにおいては、ビオチン化した抗原BRCA2、HER2、c-mycおよびNY-ESO-1、ビオチン化していないBRCA1、ならびにビオチンタグはコードするが更なる抗原はコードしない「空」ベクターVOLの発現産物(コントロール)を使用して、自己抗体の存在について、臨床上正常なヒトの被検体から採取した血清の試料を試験した。試験した個体は、ビオチン化した抗原と、効果的にビオチン単独である空ベクターVOLとの両方に対して滴定反応を示したが、ビオチン化していない抗原BRCA1には反応せず、このことは、ビオチン化したマーカーについての「陽性」の結果が、実際は、この個体内に抗ビオチン抗体が存在することにより得られたことを示している。
【実施例5】
【0121】
一点測定と比較した抗原滴定アッセイの感度および特異性の分析
滴定による方法と、単一の抗原濃度(10μg/ml)での測定の両方を使用して、原発性乳癌(PBC)の女性100人と悪性疾患の症状のない女性80人について、自己抗体(AAb)の測定を行った。以下の表は、2つの方法を直接比較したものを示す。
【0122】
【表4】

【0123】
【表5】

【0124】
抗原滴定曲線における幾つかのポイントを使用することにより、一点測定に比べてより高い感度および特異性が得られたことがわかる。
【実施例6】
【0125】
抗原滴定アッセイにおけるより高い感度および特異性についての潜在的理由
出願人は、理論に縛られることなく、抗原が滴定されるアッセイにおいてより高い特異性および感度が観察された理由が多数あるものと考える。
【0126】
(i)図11は、様々な濃度の抗原p53、c-mycおよびNY-ESO-1を使用して、原発性乳癌(PBC)の患者から採取した血清のAAb分析を行った結果を示す。これらの結果は、いくつかの場合において、高い抗原レベルにおいて滴定曲線が少々低下することを示している(NY-ESO-1の曲線)。これは、免疫化学において一般に観察される現象である。もし10μg/mlでの一点測定をこの患者に使用していたら、実際は明らかに陽性反応があるのに、NY-ESO-1自己抗体に関して陰性と分類されていたであろう。
【0127】
(ii)図12は、同様に滴定抗原p53、c-mycおよびNY-ESO-1を使用して、正常な個体から採取した血清を分析した結果を示す。この図は、抗原測定(この場合はp53)のベースラインがネガティブコントロール(VOL)のベースラインを超えるレベルにシフトするという、出願人がアッセイの約10%において観察した影響を示している。これにより、読み取る値が誤って高くなる。このタイプの結果は、滴定アッセイでは容易に識別できるが、一点測定アッセイのセットでは見分けがつかないであろう。その結果、これらの偽陽性判定により、特異性が低下することになろう(表5参照)。
【0128】
(iii)実施例4で述べたように、滴定AAbアッセイにおいて使用する抗原は、タンパク質の精製に使用できるビオチンタグを有する。しかし、集団の約10%が、ビタミンであるビオチンに対して抗体反応を起こすことが知られている。図13は、PBCの患者における抗ビオチン反応を示している。この反応は、ネガティブコントロールVOL(これもビオチン化されている)に対する強い抗体反応として、滴定曲線を用いて明確に識別できる。これらの個体は、このフォーマットでのアッセイでは評価できないとみなされるはずである。しかし、もし一点測定アッセイを使用していれば、抗ビオチン反応と真の反応とを区別することはできなかったであろう。
【実施例7】
【0129】
血清の滴定と比較して抗原の滴定の感度の方が高い点についての実証
2つのまったく別個の実験において、2つの方法でAAb測定を実施した。1つめでは、10μg/ml〜0.01μg/mlの半対数滴定においてプレートを抗原でコートする標準フォーマットを使用した。ブロッキング後、1/100の希釈で血清を加えた。2つめでは、3μg/mlの濃度において、プレートを抗原でコートした。ブロッキング後、1/10〜1/10,000の希釈での半対数滴定において血清を加えた。残りのアッセイに使用した方法は同一であった。p53およびc-mycについて陽性であることがわかっている血清の2つのプールを、PBCの女性由来の血清8個および正常な個体由来の血清10個と共にアッセイした。結果を以下の表6に示す。
【0130】
【表6】

【0131】
抗原の滴定を伴うアッセイフォーマットが、血清の滴定を伴うフォーマットよりもより感度が高いことがわかる。強い陽性であった試料は、どちらのフォーマットでも検出されたが、抗原滴定アッセイにおいて弱い陽性であったものは、血清滴定アッセイにおいてはほとんど検出されなかった。
【0132】
血清滴定フォーマットがより低い感度を示したのは、高濃度での血清の固有の非特異的結合によるものである。これは、正常な試料であってもタンパク質に対するかなりの結合を引き起こし(図14参照)、それによって正常なカットオフ値が高まり、その結果感度が減少する。特異性についても、抗原滴定フォーマット(BRCA2=100%)に比べ、血清滴定フォーマットの特異性(BRCA2=90%)の方が減少した。
【0133】
図15は、図4に示す実験を反映したものであるが、原発性乳癌の患者から採取した血清を用いた。本発明の抗原滴定方法を使用した場合、患者が、p53およびc-mycに対する自己抗体について陽性であるが、BRCA2に対する自己抗体については陰性であることがわかった。しかし、血清滴定の範囲内で自己抗体を測定した場合、自己抗体は検出されなかった(表6参照)。これは、高濃度の血清が示す非特異的結合によるものであり(ネガティブコントロールのタンパク質(VOL)への高レベルの結合によって示される)、特異的な自己抗体結合によるシグナルが隠れてしまう。それ故、血清の希釈を使用した場合、原発性乳癌の患者がアッセイにおいて陰性と判断される場合もあるであろう。感度=正しい陽性/正しい陽性+偽陰性であるので、この影響により分母が増加し、従って感度が低くなる。
【0134】
要約すれば、出願人は、抗原滴定自己抗体アッセイの方が、単一の抗原濃度において自己抗体の反応性を測定する場合よりもより感度および特異性が高いことを示してきた。これは、高い抗原濃度における低い存在度および低親和性の抗体と、高い存在度でなければ、高い抗原濃度において引っかかったであろうが滴定曲線の極限まで下の方で結合したであろう高い存在度の抗体との両方を検出できる範囲を、抗原滴定が提供するからである。また、正しい結果と評価不能のアッセイとの区別が可能であるが、これは一点測定においては不可能である。抗原滴定AAbアッセイは、単なる血清の滴定よりも感度が高いと考えられる。なぜならば、高濃度血清において観察される高レベルな非特異的結合が、正常なカットオフ値を増加させ、その結果感度が減少するからである。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】抗原滴定曲線を使用した、血清中の自己抗体の測定。癌患者17766(C)の血清は、試験抗原に強く結合し、特徴的なシグモイド型の曲線(◆)を示すが、ネガティブコントロールVOL(■)には結合しない。それに比べ、正常な個体18052 (N)由来の血清は、試験抗原(△)にも、ネガティブコントロール(×)にも結合しない。
【図2】抗原滴定アッセイを使用して測定された正常な個体と原発性乳癌(PBC )の患者におけるp53の自己抗体のレベルの比較。自己抗体のレベルは、試験抗原(p53)への結合によるOD650−ネガティブコントロールへの結合によるOD650として示す。正常なカットオフ値(-----)は、正常な集団の平均値+2標準偏差として計算した。
【図3】図3は、抗原滴定アッセイを使用して測定された正常な個体および肺癌を有する患者におけるp53およびNY-ESOの自己抗体のレベルの比較を示す。自己抗体のレベルは、試験抗原(p53またはNY-ESO)への結合によるOD650−ネガティブコントロールへの結合によるOD650として示す。正常なカットオフ値(-----)は、正常な集団の平均値+2標準偏差として計算した。
【図4】図4は、乳癌の患者から採取した腹水の試料におけるp53およびNY-ESOに対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。この患者を試験したところ、c-mycに対する自己抗体を生成しないことがわかった。
【図5】図5は、乳癌(非浸潤性乳管癌)の患者から採取した血清の試料におけるBRCA1、BRCA2およびHER2に対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。
【図6】図6は、肺癌の患者から採取した血清の試料におけるNY-ESOに対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。この患者を試験したところ、p53、c-mycいずれに対しても自己抗体を生成しないことがわかった。
【図7】図7は、肺癌の患者から採取した血清の試料におけるNY-ESOおよびp53に対する自己抗体の検出のための滴定曲線を示す。この患者を試験したところ、c-mycに対する自己抗体を生成しないことがわかった。
【図8】図8(a)および8(b)は、「正常な」被検体(すなわち癌の症状がない個体)から採取した血清の試料におけるp53、c-mycおよびNY-ESO-1に対する自己抗体のための2つの独立した滴定アッセイの結果を示す。
【図9】図9(a)および9(b)は、広範囲の異なる抗原を使用して、浸潤性乳癌の一人の患者から採取した血清の試料において実施した2つの独立した滴定アッセイの結果を示す。
【図10】図10(a)および10(b)は、ビオチン化した抗原BRCA2、HER2、c-mycおよびNY-ESO-1、非ビオチン化BRCA1、並びにビオチンタグはコードするが更なる抗原はコードしない「空」ベクターVOLの発現産物(コントロール)を使用して、自己抗体の存在について、臨床上正常なヒトの被検体から採取した血清の試料を試験した、滴定アッセイの結果を示す。
【図11】図11は、本発明の抗原滴定アッセイを使用した、抗原p53、c-mycおよびNY-ESO-1並びに「空」ベクターVOLの発現産物(コントロール)についての原発性乳癌の患者由来の自己抗体の分析の結果を示す。
【図12】図12は、正常な個体由来の血清を使用した以外は図11に示したアッセイの繰り返しであるものの結果を示す。
【図13】図13は、原発性乳癌を有すると共にビオチンに対する抗体反応も示す患者について、本発明の抗原滴定アッセイを使用して得た更なる結果を示す。
【図14−1】図14は、正常な試料について、本発明に従って抗原を滴定した場合の自己抗体検出アッセイと、抗原量は一定にしつつ血清を滴定した場合の自己抗体検出アッセイとの比較の実験結果を示す。
【図14−2】図14は、正常な試料について、本発明に従って抗原を滴定した場合の自己抗体検出アッセイと、抗原量は一定にしつつ血清を滴定した場合の自己抗体検出アッセイとの比較の実験結果を示す。
【図15】図15は、原発性乳癌の患者由来の試料について、本発明に従って抗原を滴定した場合の自己抗体検出アッセイと、抗原量は一定にしつつ血清を滴定した場合の自己抗体検出アッセイとの比較の実験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出することを含む、前記哺乳動物の被検体における病状または罹病性を検出する方法であって、ここで、前記抗体は、病状または罹病性の生物学的マーカーであり、前記方法は、
(a)前記抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、前記試験試料を接触させる工程と、
(b)前記抗体と前記抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、前記特異的結合の量対前記抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程と、
(d)用いられたそれぞれ異なる抗原濃度における前記抗体と前記抗原の間の特異的結合の量に基づいて、前記病状または罹病性の存在または不在を決定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記病状または罹病性の存在または不在が、試験された前記抗原濃度全てについての特異的結合の量の集合的評価に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般的にS字状またはシグモイド型である曲線の存在について、工程(c)の前記プロットをスクリーニングすることによって、前記病状または罹病性の存在または不在を決定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、腫瘍マーカータンパク質に特異的な自己抗体である、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原が、腫瘍マーカータンパク質またはその抗原フラグメントまたはエピトープである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍マーカータンパク質が、MUC1、MUC16、c-myc、EGRF、p53、ras、BRCA1、BRCA2、APC、HER2、PSA、CEA、CA19.9、NY-ESO-1、4-5、CAGE、PSMA、PSCA、EpCam、サイトケラチン、リカバリン、カリクレイン、アネキシン、AFP、GRP78、CA125、マンモグロビン(mammoglobin)またはrafである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
癌の診断、予後またはモニタリングにおける、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項8】
癌が発症するリスクの増大している無症状のヒトの被検体を識別するために、前記無症状のヒトの被検体の集団をスクリーニングする際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、前記被検体から採取した体液の試料であり、そしてここで、正常なコントロール個体と比較してより高レベルの自己抗体を有する被検体は、癌が発症するリスクがあるとして識別される、前記使用。
【請求項9】
無症状のヒトの被検体における初期の腫瘍性の変化または初期の発癌性の変化を検出する際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、前記被検体から採取した体液の試料であり、そしてここで、正常なコントロール個体と比較してより高レベルの自己抗体の存在は、前記被検体における初期の腫瘍性の変化または初期の発癌性の変化を示すものとして考えられる、前記使用。
【請求項10】
癌を発症している無症状のヒトの被検体を識別するために、前記無症状のヒトの被検体の集団をスクリーニングする際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、前記被検体から採取した体液の試料であり、そしてここで、正常なコントロール個体と比較してより高レベルの自己抗体を有する被験者は、癌を有すると診断される、前記使用。
【請求項11】
癌を発症している、症状のあるヒトの被検体を識別するために、前記症状のあるヒトの被検体の集団を試験する際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、前記被検体から採取した体液の試料であり、そしてここで、正常なコントロール個体と比較してより高レベルの自己抗体を有する被験者は、癌を有すると診断される、前記使用。
【請求項12】
患者における癌またはその他の腫瘍性疾患の進行をモニタリングする際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、ヒトの患者から採取した体液の試料であり、そしてここで、正常なコントロールと比較してより高レベルの自己抗体の存在は、前記患者における癌の存在を示すものとして考えられる、前記使用。
【請求項13】
癌を有すると以前に診断されたヒトの患者における再発病を検出する際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、前記患者は、存在する癌の量を減らすために抗癌治療を受けており、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、前記患者から採取した体液の試料であり、そしてここで、正常なコントロールと比較してより増加したレベルの自己抗体が前記患者において存在することは、病気が再発していることを示すものとして考えられる、前記使用。
【請求項14】
癌の予後を評価する際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、ヒトの患者から採取した体液の試料であり、そしてここで、正常なコントロールと比較してより高レベルの自己抗体の存在は、前記患者の癌の予後を示すものとして考えられる、前記使用。
【請求項15】
抗癌治療への反応を予測する際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、ヒトの患者から採取した体液の試料であり、そしてここで、自己抗体のレベルと治療により起こりそうな結果との間の以前に確立された関係と、前記患者における自己抗体のレベルとの比較が、前記患者がそのような抗癌治療に反応するか否かを示すものを提供するために使用される、前記使用。
【請求項16】
前記抗癌治療が、ワクチン接種、抗成長因子またはシグナル伝達療法、放射線療法、内分泌療法、ヒト抗体療法あるいは化学療法である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
抗癌治療に対するヒトの癌患者の反応をモニタリングする際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の使用であって、ここで、前記方法を使用して試験される前記試料は、前記患者から採取した体液の試料であり、そしてここで、治療後の自己抗体のレベルにおける変化は、前記患者が前記治療に反応したかどうかを示すものとして考えられる、前記使用。
【請求項18】
前記治療が、ワクチン接種、抗成長因子またはシグナル伝達療法、放射線療法、内分泌療法、ヒト抗体療法あるいは化学療法であり、そして、治療後の自己抗体のレベルにおける変化が、前記患者が前記治療に肯定的に反応したことを示すものとして考えられる、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
特定のヒトの患者に使用するための抗癌治療を選択する際における、請求項4〜6のいずれかに記載の方法の工程(a)〜(c)の使用であって、ここで、異なる腫瘍マーカータンパク質それぞれに対する前記患者の免疫反応の相対的強度を測定するために、前記異なる腫瘍マーカータンパク質にそれぞれ対応する2つ以上の抗原のパネルを使用して前記方法が行われ、ここで、前記腫瘍マーカータンパク質、または、前記患者において最も強い免疫反応または強い反応を引き起こすと識別されるタンパク質が選択されて、前記患者に使用される抗癌治療の主成分を形成する、前記使用。
【請求項20】
前記抗癌治療がワクチン接種であり、そして、前記腫瘍マーカータンパク質、または、前記患者において最も強い免疫反応または強い反応を引き起こすと識別されるタンパク質が選択されて、前記患者に使用される抗癌ワクチンの主成分を形成する、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記抗体が、自己免疫疾患の特徴を示す、またはそれに関連する自己抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性胃炎、悪性貧血、自己免疫性副腎炎、アジソン病、自己免疫性副甲状腺機能低下症、自己免疫性糖尿病、または重症筋無力症である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、腎臓疾患または肝疾患であって、いずれかの器官の機能不全または不全に至るものの特徴を示す、またはそれに関連する自己抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、前記哺乳動物の被検体に移植された組織上に存在するエピトープに対するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出する方法であって、ここで、前記抗体は、前記哺乳動物の被検体に導入された外来物質に対するものであり、前記方法は、
(a)前記抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、前記試験試料を接触させる工程と、(b)前記抗体と前記抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、前記特異的結合の量対前記抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程
を含む、方法。
【請求項26】
(d)用いられたそれぞれ異なる抗原濃度における前記抗体と前記抗原の間の特異的結合の量に基づいて、前記抗体の存在を検出する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体の存在を検出する工程が、試験された前記抗原濃度全てについての特異的結合の量の集合的評価に基づくものである、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記試験試料における、アッセイに使用される前記抗原とよく反応する抗体の存在が、一般的にS字状またはシグモイド型である曲線によって示される、請求項25〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物の被検体がヒトである、請求項25〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記外来物質が治療剤である、請求項25〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記治療剤が、薬物、プロドラッグ、または抗体療法である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記外来物質がワクチンである、請求項25〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記外来物質が、治療剤またはワクチンの非標的部分である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記非標的部分がビオチンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記外来物質が、真菌、細菌、ウイルスまたは寄生虫等の感染性因子である、請求項25〜29に記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物の被検体の体液を含む試験試料内において抗体を検出する方法であって、ここで、前記抗体は、病状または罹病性の生物学的マーカーであり、前記方法は、
(a)前記抗体に特異的な複数の異なる量の抗原に、前記試験試料を接触させる工程と、
(b)前記抗体と前記抗原との間の特異的結合の量を検出する工程と、
(c)工程(a)で使用された各量の抗原について、前記特異的結合の量対前記抗原の量の曲線をプロットまたは計算する工程
を含む、方法。
【請求項37】
前記試験試料における、アッセイに使用される前記抗原と反応する抗体の存在が、一般的にS字状またはシグモイド型である曲線によって示される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体が、腫瘍マーカータンパク質に特異的な自己抗体である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗原が、腫瘍マーカータンパク質またはその抗原フラグメントまたはエピトープである、請求項36〜38に記載の方法。
【請求項40】
前記腫瘍マーカータンパク質が、MUC1、MUC16、c-myc、EGRF、p53、ras、BRCA1、BRCA2、APC、HER2、PSA、CEA、CA19.9、NY-ESO-1、4-5、CAGE、PSMA、PSCA、EpCam、サイトケラチン、リカバリン、カリクレイン、アネキシン、AFP、GRP78、CA125、マンモグロビン(mammoglobin)またはrafである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
癌の診断、予後またはモニタリングにおける、請求項36〜40のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項42】
請求項8〜20のいずれかにおいて特定される使用のいずれかのための、請求項36〜40のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項43】
前記抗体が、自己免疫疾患の特徴を示す、またはそれに関連する自己抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記自己抗体が、器官の機能不全または不全に至る疾患の特徴を示す、またはそれに関連する自己抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記疾患が腎臓疾患または肝疾患である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、哺乳動物の被検体に移植された組織上に存在するエピトープに対するものである、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記抗原が、天然のタンパク質またはポリペプチド;組み換えタンパク質またはポリペプチド;合成タンパク質またはポリペプチド;合成ペプチド;ペプチド模倣薬;多糖;あるいは核酸である、請求項36〜46のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−542703(P2008−542703A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512924(P2008−512924)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001944
【国際公開番号】WO2006/126008
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507390893)オーエヌシーイミューン リミテッド (1)
【Fターム(参考)】