説明

改善されたグリーンな航空機内部パネル

【課題】航空機内部部分として使用されるサンドイッチパネルを提供する。
【解決手段】仕上げ機能を提供することに加えて、サンドイッチパネルは、特定の機械的特性を有する必要があり、かつ車両内部で火が広がるのを抑制するのに十分な耐火性を有する必要がある。本開示は、無機質系の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂ベースの天然繊維で補強された複合材を含む外板24,26を有する航空機内部パネル20を提供する。そのようなパネルは、必要な難燃性および耐熱性を提供し、簡単なリサイクルおよび処分を可能にし、より安価であり、従来のサンドイッチパネルに比べて大きな軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サンドイッチパネル構造を構成する航空機内部パネルに関する。航空機内部パネルは、床、天井、側壁、および収納容器のような用途で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
サンドイッチパネルは、床、側壁、天井、および収納庫などの多くの航空機内部の用途で使用される。これらのタイプのサンドイッチパネルは、他のタイプの輸送車両内の類似の用途でも使用することができる。仕上げ機能を提供することに加えて、サンドイッチパネルは、特定の機械的特性を有する必要があり、また車両内部で火が広がるのを抑制するのに十分な耐火性を有する必要がある。
【0003】
出願人が特に関心を有しているのは、航空機内部でサンドイッチパネルを使用することである。したがって、以下の説明では、航空機内部における新規で「グリーンな」、すなわち環境に優しいサンドイッチパネルの用途に焦点を当てる。本開示が、特許請求の範囲による航空機内部パネルの組成を有する一般的なサンドイッチパネルにも及びうることは自明である。そのような一般的なサンドイッチパネルは、空機内部だけでなくはるかに大きい応用性を享受しており、いかなる修正も必要としないはずである。
【0004】
現在の航空機内部パネルは、外皮間に挟まれたコアを備えるサンドイッチ構造である。これらのパネルで使用される材料は、主に耐火特性のために選択される。民間の航空会社の場合、客室内で使用される材料の耐火特性を管理する厳密な規制とともに、そのような材料の燃焼中に放出される熱および煙に関する制限がある。これにより、従来の航空機内部部品では、フェノール樹脂ベースのガラス繊維で補強された複合材が広く使用されてきた。適当な耐火性に加えて、これらの複合材料ベースのパネルは、複雑な形状に成型することができ、高い強度対重量比を有し、低い保守コストを有し、通常容易に設置される。
【0005】
一般に、フェノール樹脂とガラス繊維のプレプレッグは、そのようなパネルの外皮を構成する。別法として、外板は、ガラス繊維とエポキシまたは炭素繊維とエポキシの複合材から作製することができる。これらの外板材料はすべて、周知の制限を有する。フェノール樹脂は、高い毒性を有すると見なされており、皮膚炎などの皮膚の問題を引き起こす可能性がある。ガラス繊維は、皮膚、目、および上気道系の炎症を引き起こし、ツタウルシに外観が類似している皮膚の発疹、塵肺症、および珪肺症を生じさせる。摂取された場合、ガラス繊維はまた、胃腸の疾患を引き起こす可能性もある。
【0006】
従来のパネルのコアは通常、アラミド繊維を含有するNomex(RTM)のハニカムから形成される。これらの繊維は、耐熱性の合成繊維であるが、破損時に肺に有害な小さい小繊維を生じさせ、皮膚の炎症を引き起こすという点で、周知の欠点を有する。
【0007】
そのような有毒な外板およびコア材料を使用することは、製造中、樹脂の加熱中、および硬化後に繊維が露出される可能性がある場合に難点となり、したがって注意深い取扱いが必要とされる。したがって、そのようなパネルの製造中には、個人保護機器が必要とされる。これは、その部品が作製され、航空機上に設置された後には該当しない。しかし、航空機の寿命が終わり、航空機が廃棄され、部品が処分される場合は、より重大な問題が生じる。これはもちろん、航空機の寿命のいかなる段階でも、たとえば改修または変換プロセス中でも、内部パネルを取り外して処分する際に当てはまる。さらに、材料の有毒性により、これらのパネルはリサイクルには向いておらず、したがって、結局ごみ埋立て地へ送られて埋設されることが多い。パネルは浸出することはないが、やはり有害な残留物を構成する。これは、より良好な環境性能を実現する製品を求める航空宇宙業界の現在の努力に反する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、理想的な状況とは、サンドイッチパネルが優れた技術性能を維持しながら、より環境に優しい状況であろう。たとえば、リサイクルするのがより容易なサンドイッチパネルは、極めて有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景を受けて、第1の態様から、本開示は、第1の外板と第2の外板の間に挟まれたコアを備える航空機内部パネルにあり、第1の外板と第2の外板はどちらも、天然繊維および樹脂を含む。天然繊維は、天然繊維布とすることができる。第1および第2の外板は、外皮を構成することができる。
【0010】
天然繊維の使用は、リサイクルおよび処分の容易さの点で著しく「グリーンな」利益を提供し、また以下により詳細に説明するように、低減された重量およびより低いコストなどの他の利点も与える。
【0011】
火災の場合のサンドイッチパネルの性能を改善するために、天然繊維を難燃剤で処理してから、外板に形成することができる。ホウ素誘導体、たとえば八ホウ酸二ナトリウム四水和物(Na13.4HO)など、ハロゲン化されていない防炎剤を使用することができる。リン酸塩ナノ粒子および/またはナノグラフェンを防炎剤として使用して、繊維を被覆することもできる。
【0012】
多くのタイプの天然繊維を使用できるが、亜麻は、現在好ましい選択肢の1つである。
【0013】
任意選択で、樹脂は、無機質系の熱硬化性樹脂、たとえば、ポリ(シアレート)構造内で異なるSi:Al原子比を有する−Si−O−Al−O−Si−O−型の(カリウム、カルシウム)−ポリ(シアレート−シロキソ)など、ケイ酸アルミニウム誘導体である。樹脂は、硬化剤および抗収縮性の添加剤のいずれかおよび任意の組合せなどの成分を含むことができる。硬化剤に適した選択肢には、アルミニウムとリン酸銅の混合物が含まれ、抗収縮性の添加剤に適した選択肢には、ケイ酸アルミニウムから導出された複合材および中空ガラス微小球が含まれる。
【0014】
樹脂はまた、ポリプロピレン樹脂またはポリ乳酸樹脂などの熱可塑性樹脂とすることができる。樹脂は、防炎剤をさらに含むマトリックス内で使用することができる。ポリプロピレン樹脂マトリックス内の防炎剤に適した選択肢には、任意選択でナノ粒子としてポリリン酸アンモニウム、およびナノグラフェンが含まれる。ポリ乳酸樹脂マトリックス内の防炎剤に適した選択肢には、任意選択でナノ粒子としてポリリン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、およびナノグラフェンが含まれる。
【0015】
航空機内部パネルは、第1および第2の外板の少なくとも1つの外側表面上に難燃性の保護被覆を含むことができる。任意選択で、ポリプロピレン樹脂から形成されたとき、第1の外板および/または第2の外板上に、アルミニウムナノ粒子内にカプセル化されたケイ酸ナトリウムナノ粒子を含む保護被覆が提供される。任意選択で、ポリ乳酸樹脂から形成されたとき、第1の外板および/または第2の外板上に、リン酸塩、アンモニウム塩、ナノグラフェン、炭酸塩、ケイ酸ナトリウム、およびアクリル樹脂のナノ粒子を含む保護被覆が提供される。
【0016】
任意選択で、コアは、耐火性の有無にかかわらず、バルサ材を含むことができる。バルサ材とは、処分およびリサイクルの点で取扱いが極めて容易な天然物である。コアは、ペーパーハニカムを含有することができる。コアは、熱可塑性の発泡剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、コアは、バルサ材、ペーパーハニカム、および熱可塑性の発泡剤の組合せを含む。熱可塑性の発泡剤が存在する場合、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)発泡剤、ポリエーテルイミドベースの(PEI)発泡剤などのように耐火性であることが好ましい。従来のハニカム構造に対して発泡剤を使用する利点は、防音性が高められることであろう。これは、航空機内部で使用されたとき、より静かで、より快適な環境を乗客に提供することができる。
【0017】
コアおよび/または外板は、粘着力、たとえばコアと外板の間または外板と保護被覆の間の粘着力を改善するために処理しておくことができる。たとえば、コアおよび/または外板を誘電体障壁放電処理にかけて、粘着力を改善するために1つまたは複数の表面を活性化させておくことができる。たとえば、この目的で、大気圧の空気誘電体障壁放電、または他の表面活性化機構を使用することができる。任意選択で、粘着力を高めるために、化学エッチングを使用してコアおよび/または外板を処理することができる。
【0018】
特定の用途では、航空機内部パネルは、4つ以上の層を備えることができる。たとえば、コア、第1の外板、および第2の外板に加えて、航空機内部パネルは、さらなる外板もしくはさらなるコア、またはさらなる外板とコアの両方、あるいは他の層を備えることができる。他の層は、装飾目的の従来の仕上げ材、または防炎性の被覆を含むことができる。コアは、すべての構成において、第1の外板と第2の外板の間に挟むことができ、第1および第2の外板は、航空機内部パネル内で最も外側に構成され、すなわち第1および第2の外板は、航空機内部パネルの外側表面を提供する。
【0019】
上述の航空機内部パネルでは、有毒な材料の使用を回避する。言い換えれば、航空機内部パネルは天然材料だけを含むことができ、または航空機内部パネルは有毒な材料を含まない。その結果、航空機内部パネルの製造、リサイクル、または処分中の取扱いがはるかに容易かつ安価になる。たとえば、寿命の終わりに到達した航空機内に存在するとき、グリーンな航空機内部パネルは、特別な取扱いを必要とするはずの有毒な材料がないため、航空機上で働く人を保護するための厳しい要件なしに、取り外してリサイクルまたは処分することができる。
【0020】
上記で構築した航空機内部パネルは、いかなる重量上の不利益も招くことなく、従来の航空機内部パネルの機械および耐火特性を実現でき、またはさらに超過できることが重要である。たとえば、上述のように構築された航空機内部パネルは、FAAおよびEASA要件によるOhio State University(OSU)の試験に通り、発熱率値は、従来のサンドイッチパネルより低く、またはそれに類似している。さらに、これらの航空機内部パネルは、燃焼時、必要な熱および煙の産生レベルを低くする。航空機内部パネルの性能は、民間の航空機に課される認証要件に準拠しており、さらに超過することもある。
【0021】
本開示による航空機内部パネルのさらなる利点は、構築の際に従来の製造プロセスを使用でき、したがって変換コストを回避できることである。
【0022】
また、天然繊維は通常、ガラス繊維より45%〜80%安価である。
【0023】
上記に加えて、本開示による航空機内部パネルからは、さらなる著しい利益が得られる。これは、グリーンな航空機内部パネルが通常、従来のパネルよりはるかに軽いためである。たとえば、従来のパネルと同じ寸法および構成の本開示による航空機内部パネルは、はるかに軽い。この軽量化の大部分は、ガラス繊維の代わりに天然繊維を使用することから得られる。ガラス繊維の典型的な密度は約2.6g/cmであり、亜麻繊維の典型的な密度は約1.5g/cmである。この利点は、熱可塑性物質および無機質系樹脂ベースのパネルを使用したとき、それぞれ全体的な内部の重量を15%〜30%低減できる民間の航空機では特に重要である。特に航空会社にとって、航空機における重量の低減は、常に高い優先事項である。これは、重量の低減が燃料消費の低減につながるためである。これにより、燃料コストが低減された際、航空会社に重要なコストの節約を提供し、またCO排出量の低減によって著しい環境上の利点をもたらす。
【0024】
典型的な民間の航空機で重量を1kg低減させるごとに、燃料の燃焼を1時間当たり0.02kg〜0.04kg低減させることが推定されてきた。航空機の典型的な寿命を100,000時間とすると、1キログラム軽量化されるごとに、航空機の動作寿命全体にわたって4トンの燃料燃焼の低減および12.5トンのCO排出量の低減が実現される。客室内の天井、床、側壁、隔壁、収納庫、および他の部品からなる典型的な構成に対して本開示による航空機内部パネルを使用する典型的な航空機では、無機質系樹脂から作製されたパネルの場合、200〜500kgの重量が低減され、熱可塑性樹脂から作製されたパネルの場合、100kg〜250kgの重量が低減されることがわかる。重量の低減はまた、無機質系樹脂から作製されたパネルの場合、航空機の寿命中にCO排出量が2,500〜6,500トン低減されることに等しく、熱可塑性樹脂から作製されたパネルの場合、航空機の寿命中にCO排出量が1,300〜3,250トン低減されることに等しい。さらに、サンドイッチパネルのリサイクルおよび処分はより容易であるため、寿命の終わりにはさらなるCOの節減を実現することができる。
【0025】
さらに、熱可塑性樹脂の特定の場合、1kgのポリ乳酸を生じさせるためのエネルギーは40MJであり、ポリプロピレンの場合77MJである。これを、フェノール樹脂の139MJ/kgまたはエポキシ樹脂の140MJ/kgと比較されたい。これは、すべてのエポキシベースのパネルを熱可塑性物質ベースのパネルに交換した場合、毎年5,000〜20,000GJのエネルギーが節約されることを意味する。一方、寿命期間の影響の研究によれば、複合材パネル内の天然繊維は、ガラス繊維と比較すると環境的な影響を66%低減させる(天然繊維を製造するためのエネルギーは、ガラス繊維の場合の3分の1以下にすぎない)。パネルがガラス繊維の代わりに40%の天然繊維を含有する場合、毎年900〜2,000GJのエネルギーの節約を実現することができる。ガラス繊維で補強された熱硬化性の複合材と比較すると、天然繊維と熱可塑性物質のマトリックスの製作中は環境上の影響がより小さくなるため、粒子およびガス排出量の低減などの追加の環境上の利益を実現することもできる。したがって、エポキシベースの複合材を熱可塑性の複合材で交換することで、現在は焼却によって処分してCOを排出するか、埋立てによって処分するしかできない航空機内部から大量の危険な廃棄物が生成されるのを回避する。最新のパネルは、これらの材料の分解性のレーキのため、廃棄物をあまり解消しないが、環境に放出される有毒な物質の量を増大させる。しかし、熱可塑性物質のパネルは、パレット、木材プラスチック用途、絶縁要素などのいくつかのさらなる用途のためにリサイクルおよび使用することができる。
【0026】
本開示はまた、上述の航空機内部パネルのいずれかを含む航空機にも及ぶ。
【0027】
本開示はまた、上述の航空機内部パネルのいずれかを製造する方法にも及び、この方法は、天然繊維布、樹脂、およびコアの積層体を硬化させて航空機内部パネルを形成することを含む。
【0028】
航空機内部パネルは、単一の工程、2つの工程、または3つ以上の工程で形成することができる。たとえば、第1および第2の外板を第1に形成し、次いで第2の工程でコアにつなぎ合わせることができる。したがって、この方法は、天然繊維布を重ね合わせることと、布を樹脂に含浸させることと、外板の硬化を行うことと、外板間にコアを重ね合わせて積層体を形成することと、積層体を硬化させて航空機内部パネルを形成することとを含むことができる。別法として、単一工程のプロセスでは、方法は、1つの工程でコア上に天然繊維布を重ね合わせ、樹脂を添加して積層体を形成し、積層体を硬化させて航空機内部パネルを形成することを含むことができる。上記の硬化工程はいずれも、真空バッグプロセスを使用して実行することができる。たとえば、真空バッグプロセスは、無機質系の熱硬化性樹脂の重合中に水がなくなるのを防止するために、真空ポンプで汲み上げることなく30分〜24時間にわたって硬化を行うことを含むことができる。これは、摂氏25〜80度の温度範囲で実行することができる。アセンブリを小型化するために、圧力を印加することができる(大気圧の使用、機械プレス、またはオートクレーブによる)。これらの工程に続いて、一定の重量が実現されるまで、真空ポンプで汲み上げながら、無機質系の熱硬化性物質を室温で硬化させることができる。この最終の工程は、無機質系の熱硬化性樹脂が重合した後、水を取り除くことが分かった。これらの工程は、無機質系の熱硬化性樹脂を使用して製造するのに好ましいが、熱可塑性樹脂を用いるときに使用することもできる。保護被覆を添加する追加の工程を含むこともできる。
【0029】
樹脂の前駆体は、硬化剤および抗収縮性の添加剤のいずれかおよび任意の組合せを含むことができる。樹脂は、ケイ酸アルミニウム誘導体を含むことができ、任意選択で異なるAl:Si比とすることができる。抗収縮性の添加剤は、アルミノケイ酸塩から導出された複合材または中空ガラス微小球などを含むことができる。樹脂はまた、ポリプロピレン樹脂またはポリ乳酸樹脂などの熱可塑性樹脂とすることができる。熱可塑性物質ベースのパネルに対する製造プロセスについては、後に詳述する。
【0030】
この方法は、天然繊維布を難燃剤溶液に浸漬させることをさらに含むことができる。この工程は、天然繊維布で樹脂を補強する前に実行することができる。難燃剤は、ホウ素誘導体とすることができる。天然繊維は、20〜80分間にわたって摂氏25〜80度の難燃剤の溶液中に浸漬させ、次いで室温で乾燥させることができる。この樹脂には、防炎剤を添加することができる。
【0031】
任意選択で、この方法は、外板とコアの間に接着剤を添加すること、またはコアを処理してコアの表面を活性化させ、外板に対するコアの粘着力を改善することをさらに含むことができる。たとえば、以下の方法を使用して、または任意の他の表面活性化処理を使用して、コアの1つまたは複数の表面を活性化させることができる。方法は、誘電体障壁放電を使用してコアを処理することを含むことができる。これは、電極間のプラテン上にコアを配置し、高圧の交流電流を印加することによって行うことができる。外板は、たとえば化学エッチングを使用して、防炎性の保護被覆の粘着力を改善するように処理することができる。
【0032】
熱可塑性樹脂を使用してパネルを構築するとき、機器およびプロセスはまた、従来の内部部品を製造するために使用されるものに適合している。パネルの外皮は、熱可塑性シートの製作のための標準的な複合設備を使用して、事前に製作することができる(たとえば、ポリプロピレンシートの場合は200℃/分、ポリ乳酸ベースのパネルの場合は140℃/分)。次いで、内部部品の製作に現在使用される粉砕コア製造方法に類似しているプロセスに続いて、熱板プレス(たとえば、100℃/分、どちらのタイプのパネルに対しても87KNの力を印加できる)を使用して、熱可塑性シート、天然繊維、接着剤、およびコアを挟むことができる。最も外側の外板は、従来の塗装機器を使用して塗布できる難燃性の被覆を含むことができる。従来のパネルの製作に現在用いられるのと同じプロセスに続いて、追加の仕上げ層を塗布することもできる。新規でグリーンなパネルを製作するために、従来のパネルを製造する既存の設備の代わりに追加の投資が必要とされないことが有利である。
【0033】
熱可塑性物質ベースのパネルアセンブリの場合、耐火性のポリウレタンベースの接着剤を使用して、外板をサンドイッチのコアに付着させることができる。ポリウレタンベースの接着剤は、試験される構成にとって最も好都合な解決策であることが分かったが、外板とコアを付着させるための唯一の選択肢ではない。用途に必要な最終の特性に応じて、エポキシベースの接着剤など、代替の調合物および接着剤のタイプを使用することができる。
【0034】
サンドイッチパネルのコアは、耐火ペーパーハニカム、バルサ材、または耐火性で熱可塑性の発泡剤のいずれかとすることができる。使用されるコアのタイプは、航空機内部パネルに必要な特性によって選択することができる。これらのコアとともに試験されるパネルは、耐火性の点で良好な結果を示した。
【0035】
保護被覆に関しては、パネルが組み立てられた後、外板、好ましくは最も外側の外板上に、最終の保護被覆を塗布することができる。この保護被覆は、火に対する障壁として働き、航空機内部パネルの耐火性を増大させる。この被覆の組成は、使用されている外板のタイプによって選択することができ、ポリプロピレンベースのパネルとポリ乳酸ベースのパネルの間で変動させることができる。
【0036】
保護被覆を塗布する前の第1の工程として、外板の表面を化学エッチングによって活性化させることができる。このプロセスにより、表面に対する保護被覆の粘着性を最適化することができる。
【0037】
ポリプロピレンベースのパネル向けに開発された保護被覆は、アルミナナノ粒子でカプセル化されたケイ酸ナトリウムナノ粒子を含むことができる(10%)。保護被覆は、外板の表面をナノ粒子の溶液に手動で含浸させることによって塗布することができる。表面上に第1の層を塗布し、40℃で10分間にわたって炉内で乾燥させることができる。次いで、第2の層(同じ側など、同じ外皮)を塗布し、40℃で30分間にわたって炉内で再び乾燥させることができる。
【0038】
ポリ乳酸ベースのパネル向けに開発された保護被覆は、リン酸塩、アンモニウム塩、ナノグラフェン、炭酸塩、およびケイ酸ナトリウムのナノ粒子から作製することができる。追加として、被覆の可撓性、粘着性、および熱安定性を改善するために、ナノ粒子の混合物に少量のアクリル樹脂を添加することができる。被覆は、ポリプロピレンベースのパネルに使用される方法に類似の方法で、航空機内部パネルの外板に手動で塗布することができる。
【0039】
本開示をより容易に理解できるように、好ましい実施形態について、以下の図面を参照しながら、例示のみを目的として、次に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】従来技術による航空機内部パネルの斜視図である。
【図2】本開示の第1の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルの斜視図である。
【図3】本開示の第2の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルの斜視図である。
【図4】本開示の方法の第1の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルを組み立てる方法の概略図である。
【図5】本開示の方法の第2の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルを組み立てる方法の概略図である。
【図6】本開示の方法の第3の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルを組み立てる方法の概略図である。
【図7】本開示の方法の第4の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルを組み立てる方法の概略図である。
【図8】本開示の第3の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルの斜視図である。
【図9】本開示の第4の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルの斜視図である。
【図10】本開示の方法の第5の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルを組み立てる方法の概略図である。
【図11】本開示の方法の第6の実施形態によるグリーンな航空機内部パネルを組み立てる方法の概略図である。
【図12】無機質系の熱硬化性樹脂ベースの外板上で実行した試験について示す表である。
【図13】図12の無機質系の熱硬化性樹脂ベースの外板上で実行した試験について示すグラフである。
【図14】無機質系の熱硬化性樹脂ベースの航空機内部パネル上で実行した試験について示す表である。
【図15】図14の無機質系の熱硬化性樹脂ベースの航空機内部パネル上で実行した試験について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
従来技術によれば、航空機内部パネル10は、図1に示すように3つの層を備える。中間の層は、Nomex(RTM)のハニカム構造から作製されたコア12である。コア12は、上部外板14と下部外板16の間に挟まれる。上部外板14と下部外板16はどちらも、フェノール樹脂とガラス繊維のプレプレッグを含む。外板層14、16は、プレプレッグ内に存在する接着剤として働くフェノール樹脂を使用して、コア12に付着される。
【0042】
図2は、本開示の第1の実施形態によるグリーンな航空機内部パネル20を示す。グリーンな航空機内部パネル20は、上部外板24と下部外板26の間に挟まれたコア22を備える。図1の航空機内部パネル10とは対照的に、図2のパネル20内で使用される材料は環境に優しい。
【0043】
コア22は、PVDF発泡剤であり、通常数mmの厚さである。代替実施形態では、コア22は、バルサ材またはペーパーハニカムを含むことができる。コア22には、対応する上部外皮24および下部外皮26がつなぎ合わされる。外板24、26はそれぞれ、樹脂、この実施形態では無機質系の熱硬化性樹脂内に固定された天然繊維から作製された天然の複合材料を含む。熱可塑性樹脂を使用する実施形態については、後に説明する。この実施形態では、ケイ酸アルミニウム誘導体樹脂に含浸された1つの亜麻繊維層しかない。無機質系の熱硬化性樹脂は、優れた耐熱特性を有し、最高摂氏1000度の温度に耐えることができる。天然繊維の耐熱性は、それほど良好ではない傾向があり、したがって天然繊維は、本開示による製造方法のいくつかに関連してより詳細に説明するように、難燃剤で処理することができる(たとえば、図5および対応する説明参照)。
【0044】
本開示は、3つの層だけを備える航空機内部パネル構造に限定されるものではない。2つ以上のコア層を含むことができ、またコアのいずれか片側に、2つ以上の外板層を含むことができる。
【0045】
さらなるグリーンな航空機内部パネル30の一例を図3に示す。航空機内部パネル30は、上から下に、外側の上部外板34、内側の上部外板38、コア32、内側の下部外板40、および外側の下部外板36の順で積層された5つの層を備える。コア32は、図2に関連して説明したコア22に対応する。また、外板34、36、38、40は、図2に関連して説明した外板24、26に対応する。上部外板34、38と下部外板36、40の対は、強度を増大させるために提供することができる。これらの外板は、位置合わせされた形で重ね合わせることができ、または層を回転させた状態で重ね合わせることができる(たとえば、外側の上部外板34の縦糸および横糸を、内側の上部外板38の縦糸および横糸に対して90度回転させることができる)。
【0046】
本開示による航空機内部パネルの製造方法について、次に説明する。話を簡単にするために、3層のグリーンな航空機内部パネルについて説明するが、この方法は4つ以上の層を有するパネルにも簡単に及びうることが容易に理解されよう。
【0047】
簡単な製造方法を、図4に示す。100で、外板24、26が形成される。この工程100は、102で示すように、天然繊維布を重ね合わせることを含む。たとえば、外板24、26それぞれに対して、1つの亜麻布層が重ね合わされる。104で、熱硬化性の無機質系樹脂に天然繊維を含浸させ、この混合物を硬化させることによって、外板24、26が形成される。たとえば、無機質系の熱硬化性樹脂としてケイ酸アルミニウム誘導体が使用され、硬化剤と混合することもできる。さらに、抗収縮性の添加剤を使用することができる。1〜15重量%添加される充填剤として使用されるケイ酸アルミニウムから導出された複合材は、うまく作用することが分かった。熱硬化性樹脂に含浸された天然繊維布を真空バッグ内へ導入し、真空ポンプで汲み上げて空気を抽出することができる。外板は、大気圧下で摂氏25〜80度の範囲内の温度で、真空ポンプで汲み上げることなく30分〜24時間の期間にわたって硬化され、または複合材を小型化するために、機械プレスもしくはオートクレーブ内で加圧される。これに続いて、一定の重量が実現されるまで、室温で硬化させながら、真空ポンプで汲み上げることによって複合材から水を取り除くことができる。
【0048】
このようにして外板24、26が形成されると、外板24、26は、工程106で示すように、コア22の両側に重ね合わされる。コア22の両側に外板24、26を配置して、外板とコア表面の間に接着剤を塗布する。環境に優しい接着剤(揮発性の低い有機化合物)は、うまく作用することが分かった。この実施形態では、コア22は、PVDF発泡剤を含む。108で、大気圧下で低温の真空バッグプロセスで接着剤を硬化させることによって、完全なサンドイッチパネル20を形成することができ、またはパネル20を小型化するために、機械プレスもしくはオートクレーブ内で加圧することができる。
【0049】
図5は、本開示による製造方法のさらなる実施形態を示す。200で、外板24、26が形成される。第1の工程201は、天然繊維を防炎剤で処理することを含む。たとえば、天然繊維を布に形成し、摂氏25〜80度の濃縮された防炎剤溶液に20〜80分間にわたって浸漬させることができる。次いで、浸された天然繊維布は、一定の重量を実現するまで、布を垂直につるすことによって、室温で乾燥させることができる。このように作製された天然繊維は、10重量%〜30重量%の難燃剤を保持することが分かった。
【0050】
次いで方法は、図4に関連して前述したのとほぼ同じ方法で継続される。202で、処理された天然繊維が重ね合わされ、204で、熱硬化性の無機質系樹脂に含浸される。こうして形成された外板24、26は、206で、コア22と付着され、208で、仕上がった航空機内部パネル20に形成される。
【0051】
図4および5に関連して説明した製造方法は、2段階のパネル組立てプロセスを含み、外板24、26が第1に形成され、次いで完全な航空機内部パネル20が組み立てられる。しかし、これらの方法はいずれも、単一のプロセスのみで外板24、26および完全なパネル20を硬化させる1工程の形成プロセスを使用するように修正することができる。
【0052】
たとえば、図6は、単一の硬化工程を使用するように適合された図4の方法を示す。工程305で、コア22の表面は、コア22と外板24、26の間の粘着力を改善するように活性化される。この処理は、PVDFコア22を大気圧の空気誘電体障壁放電(DBD)に露出させることを含むことができる。DBD反応器は、40〜80Hzで動作する正弦波波形で高圧の交流電源を装備することができる。作用している動作負荷の出力電力およびインピーダンスは、可変かつ制御可能である。放電は、固定の電極と、発泡剤コア22が取り付けられた摺動プラテンとの間で、生成することができる。これらの電極は、鋼棒から形成することができ、鋼棒の周りには、直径1.5mmの裸のステンレス鋼ワイアが巻き付けられる。プラテンは、厚さ10mmとすることができ、シリコンゴムの被覆を有することができる。電力0.87kWおよび速度毎分40mの4つのサイクルを使用することができ、これは、4.9W/cmの電力密度と同等である。この処理は、コア22の表面を活性化させて化学反応性をより高くすることが分かっており、したがってコア22と外板24、26の間の粘着力が著しく改善される。
【0053】
302で、上述のような天然繊維布が重ね合わされる。工程304に示すように、上述のような熱硬化性樹脂に、2つの天然繊維布が含浸される。306で、コア22の片側に一方の繊維布が重ね合わされ、コア22の反対側に他方の繊維布が重ね合わされる。次いで、308で、真空バッグプロセスを使用する単一の工程で、航空機内部パネル20が組み立てられる。そのようにして、単一の工程だけで、複合外板24、26が形成され、コアに付着される。パネル20を真空バッグ内へ導入し、真空ポンプで汲み上げて空気を抽出することができる。次いでパネル20は、大気圧下で摂氏25〜80度で、真空ポンプで汲み上げることなく30分〜24時間にわたって硬化させることができ、または複合材の圧密を改善するために、機械プレスもしくはオートクレーブ内で加圧することができる。これに続いて、一定の重量が実現されるまで、室温で硬化させながら、真空ポンプで汲み上げることによって複合材から水を取り除くことができる。
【0054】
図7は、単一の硬化プロセスとしての図5の適合を示す。401で、前述のように、天然繊維布は難燃剤で処理される。405で、前述のように、コアはDBDで処理される。次いで、処理された繊維布は、工程402に示すように重ね合わされ、工程404で、上述のような熱硬化性の無機質系樹脂に繊維布が含浸される。406で、コア22の片側に一方の繊維布が重ね合わされ、コア22の反対側に他方の繊維布が重ね合わされる。次いで、408に示すように、真空バッグプロセスを使用する単一の工程で、完全な航空機内部パネル20が形成される。
【0055】
図6および7に加えて、前述の図の方法は、一般的な方法の他の変形形態の場合と同様に単一の硬化工程を使用するように適合できることが、ここで容易に理解されるであろう。
【0056】
図2は、無機質系の熱硬化性樹脂から形成された上部外板24および下部外板26を有する航空機内部パネル20を示す。熱可塑性樹脂を使用する実施形態について、例示的な製造方法とともに、次に説明する。
【0057】
図8は、サンドイッチ構造を構成する航空機内部パネル80を示す。上部外板84と下部外板86の間に、コア82が挟まれる。上部外板は、保護被覆88を備える。
【0058】
コア82は、耐火性で熱可塑性の発泡剤を含む。コア82は、4〜5mmの厚さを有することができる。代替実施形態では、コア82はペーパーハニカムを含む。ペーパーハニカムのコアは、10mm以上の厚さを有することができる。
【0059】
上部外板84と下部外板86は、対応する構造のものである。上部外板84と下部外板86はどちらも、熱可塑性樹脂内に固定された亜麻などの天然繊維を含む。天然繊維は、図2および3に関連して前述したものとすることができる。図8の実施形態で使用される熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンである。
【0060】
複合マトリックスは、ハロゲン化されていない難燃剤で修正することができる。たとえば、ポリプロピレンのマトリックスに、ポリリン酸アンモニウム(濃度50%)およびナノグラフェン(濃度5%)を添加することができる。マトリックス内に難燃剤を組み込むのを改善するために、相溶化剤を添加することができる。さらに、天然繊維は、難燃剤、すなわちナノリン酸塩などのハロゲン化されていないナノ粒子の難燃剤で処理し、それによって天然繊維を覆って保護被覆を形成することができる。
【0061】
図8の実施形態では、上部外板84は保護被覆88を備える。代替実施形態では、下部外板86も保護被覆88を備える。保護被覆88は、耐火ナノ被覆とすることができる。1つの外板84または86だけに塗布される場合、航空機内部パネル80が航空機内に設置されたとき、この外板84または86は客室側の外板になる。
【0062】
保護被覆88は、ポリプロピレン樹脂から形成された上部外板84に塗布される。保護被覆88は2つの保護層を含むが、見やすいように、図8には単一の層だけを示す。各層は、アルミニウムナノ粒子内にカプセル化されたナノケイ酸ナトリウムのナノ粒子を含み、2つの層が順に塗布される。
【0063】
いくつかの実施形態では、航空機内部パネル80は、保護被覆88を備えない。
【0064】
図9は、熱可塑性樹脂を含む航空機内部パネル90の別の実施形態を示す。航空機内部パネル90は、上部外板94と下部外板96の間に挟まれたコア92を備える。上部外板94と下部外板96のどちらの外側表面も保護被覆98を備えるが、場合によっては、外板94または96の1つだけが、保護被覆98を備える必要があることがある。実際には、いくつかの実施形態では、上部外板94と下部外板96はどちらも、保護被覆98を備える必要がない。
【0065】
コア92は、耐火性で熱可塑性の発泡剤を含む。コア92は、4〜5mmの厚さを有することができる。代替実施形態では、コア92はペーパーハニカムを含む。ペーパーハニカムのコアは、10mm以上の厚さを有することができる。代替実施形態では、コア92はバルサ材を含む。
【0066】
上部外板94と下部外板96は、対応する構造のものである。上部外板94と下部外板96はどちらも、熱可塑性樹脂内に固定された亜麻などの天然繊維を含む。天然繊維は、図2および3に関連して前述したものとすることができる。図9の実施形態で使用される熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸である。
【0067】
複合マトリックスは、ハロゲン化されていない難燃剤で修正することができる。たとえば、ポリ乳酸のマトリックスに、ポリリン酸アンモニウム(濃度25%)、ホウ酸亜鉛(濃度5%)、およびナノグラフェン(濃度1%)を添加することができる。任意選択で、マトリックス内に難燃剤を組み込むのを改善するために、相溶化剤を添加することができる。さらに、天然繊維は、難燃剤、すなわちナノリン酸塩などのハロゲン化されていないナノ粒子の難燃剤で処理し、それによって天然繊維を覆って保護被覆を形成することができる。
【0068】
図9の実施形態では、上部外板94と下部外板96はどちらも、対応する保護被覆98を備える。保護被覆98は、耐火ナノ被覆とすることができる。保護被覆98は、アルミニウムナノ粒子内にカプセル化されたナノケイ酸ナトリウム、アンモニウム塩、ナノグラフェン、炭酸ナトリウム、またはケイ酸ナトリウムのナノ粒子を含むことができる。
【0069】
製造方法のさらなる実施形態について、図10および11を参照して次に説明する。これらの製造方法を使用して、本開示による航空機内部パネルおよび上述の航空機内部パネル20、30、80、90の実施形態のいずれかを製造することができる。しかし、以下の方法は、図8および9の実施形態による航空機内部パネルの製造に特に好ましい。
【0070】
航空機内部パネルの製造方法の第5の実施形態を図10に示す。一例として、この方法について、図8の航空機内部パネル80に関連して説明するが、この方法は、本開示によって構築されたいずれの航空機内部パネルにも適用することができる。図10の製造方法は、前述した図5の方法に類似している。この方法は、2段階のパネル組立てプロセスであり、外板84、86が第1に形成され、次いで完全な航空機内部パネル80が組み立てられる。
【0071】
500で、外板84、86が形成される。第1の工程501は、天然繊維、この実施形態では亜麻を防炎剤で処理することを含む。たとえば、天然繊維を布に形成することができる。天然繊維は、防炎剤ナノ粒子(たとえば、ナノリン酸塩)の濃縮された溶液に浸漬させることができる。この抑制剤は、本明細書に記載するすべての実施形態を含めて、本開示による任意の航空機内部パネルとともに使用することができる。天然繊維は、30秒間にわたって浸漬させ、次いで30分間にわたって摂氏60度の炉内で乾燥させることができる。この処理は、難燃剤の濃度を増大させるために、数回繰り返すことができる。
【0072】
次いでこの方法は、難燃性の被覆された天然繊維布を重ね合わせることを含む工程502で継続される。たとえば、外板84、86それぞれに対して、1つの布層が重ね合わされる。504で、熱可塑性の無機質系樹脂混合物を使用して、天然繊維を含浸させる。この樹脂混合物はポリプロピレン樹脂(濃度41%)を含み、耐火性を増大させるために、ポリプロピレンのマトリックスには、ポリリン酸アンモニウム(濃度50%)およびナノグラフェン(濃度5%)が添加される。マトリックス、防炎性添加剤、および天然繊維布の間の相溶性を改善するために、低濃度のIntegrate NP507−030という結合剤などの相溶化剤(濃度4%)を添加することができる。この樹脂混合物を押出成形して、天然繊維布と組み合わせた厚さ200μm以下のポリマーシートを得ることができる。
【0073】
外板84、86を形成するために、1対の押出成形された樹脂混合物シート間に亜麻繊維布を挟むことができる。次いでこの積層物を、摂氏200度の温度および87kNの圧力で1分間にわたって保持することができ、次いで、その結果得られる外板84、86を、室温まで冷却することができる。
【0074】
このようにして外板84、86が形成されると、外板84、86は、工程506で示すように、コア82の両側に重ね合わされる。熱可塑性の発泡剤コア82の両側に外板84、86が配置され、外板とコア表面の間に耐火接着剤が塗布される。ポリウレタンベースの接着剤およびエポキシベースの接着剤は、この接着剤として良好な選択肢である。508で、この接着剤を硬化させることによって、完全な航空機内部パネル80が形成される。
【0075】
工程510で、上部外板84に保護被覆を添加することができる。第1に、上部外板84の外側表面を化学エッチングによって活性化させ、外側表面に対するナノ被覆の粘着性を改善することができる。この実施形態で使用されるナノ被覆は、アルミニウムナノ粒子内にカプセル化されたケイ酸ナトリウムナノ粒子を含む。この被覆は、本明細書に記載するすべての実施形態を含めて、本開示による任意の航空機内部パネルとともに使用することができる。この被覆は、表面をナノ粒子溶解液に手動で含浸させることによって、上部外板84の活性化させた外側表面に塗布することができる。第1の層を塗布し、次いで10分間にわたって摂氏40度の炉内で乾燥させることができる。次いで、第2の層を同じ方法で塗布し、30分間にわたって摂氏40度の炉内で乾燥させることができる。このように、航空機内部パネル80が完成する。
【0076】
図10の方法は、図9の航空機内部パネル90を形成するように、次のように適合することができる。
【0077】
600で、外板94、96が形成される。工程601で、天然繊維、この実施形態では亜麻を防炎剤で処理することができる。たとえば、天然繊維を布に形成することができる。天然繊維は、防炎剤ナノ粒子(たとえば、ナノリン酸塩)の濃縮された溶液に浸漬させることができる。この抑制剤は、本明細書に記載するすべての実施形態を含めて、本開示による任意の航空機内部パネルとともに使用することができる。天然繊維は、図10に関連してすでに説明したように、30秒間にわたって浸漬させ、次いで30分間にわたって摂氏60度の炉内で乾燥させることができる。この処理は、難燃剤の濃度を増大させるために、数回繰り返すことができる。
【0078】
次いでこの方法は、外板94、96それぞれに対して1つの布層を重ね合わせることなどによって、難燃性の被覆された天然繊維布を重ね合わせる工程602で継続される。604で、熱可塑性の無機質系樹脂混合物を使用して、天然繊維を含浸させる。この実施形態では、この樹脂混合物はポリ乳酸樹脂(濃度69%)を含み、耐火性を促進するために、このマトリックスには、ポリリン酸アルミニウム(濃度25%)、ホウ酸亜鉛(濃度5%)、およびナノグラフェン(濃度1%)が添加される。この樹脂混合物を押出成形して、天然繊維布と組み合わせた厚さ200μm以下のポリマーシートを得ることができる。
【0079】
外板94、96を形成するために、1対の押出成形された樹脂混合物シート間に亜麻繊維布を挟むことができる。次いでこの積層物を、摂氏140度の温度および87kNの圧力で1分間にわたって保持することができ、次いで、その結果得られる外板94、96を、室温まで冷却することができる。
【0080】
このようにして外板94、96が形成されると、外板94、96は、工程606で示すように、コア92の両側に重ね合わされる。熱可塑性の発泡剤コア92の両側に外板94、96が配置され、外板とコア表面の間に、ポリウレタンベースまたはエポキシベースの接着剤などの耐火接着剤が塗布される。608で、この接着剤を硬化させることによって、完全な航空機内部パネル90が形成される。
【0081】
工程610で、上部外板94および下部外板96に保護被覆を添加することができる。この方法は、図5の工程510で説明したものである。要約すると、外板94、96それぞれの外側表面は、化学エッチングによって活性化させることができ、ナノ被覆を塗布することができる。この実施形態のナノ被覆は、リン酸塩、アンモニウム塩、ナノグラフェン、炭酸塩、およびケイ酸ナトリウムのナノ粒子を含む。保護被覆の可撓性、粘着性、および熱安定性を改善するために、少量のアクリル樹脂を添加することができる。この被覆は、本明細書に記載するすべての実施形態を含めて、本開示による任意の航空機内部パネルとともに使用することができる。この被覆は、手動で含浸させることによって2つの層で塗布することができる。第1の層を塗布し、次いで10分間にわたって摂氏40度で乾燥させることができ、第2の層を塗布し、同じ温度で30分間にわたって乾燥させることができる。このように、航空機内部パネル90が完成する。
【0082】
図10および11に関連して説明した製造方法は、2段階のパネル組立てプロセスを含み、外板84、86、94、96が第1に形成され、次いで完全な航空機内部パネル80、90が組み立てられる。しかし、これらの方法は、図6および7に関連してすでに説明したプロセスに類似している単一のプロセスのみで外板84、86、94、96および完全なパネル80、90を硬化させる1工程の形成プロセスに修正することができる。
【0083】
添付の特許請求の範囲に規定される本開示の範囲から必ずしも逸脱することなく、上記の実施形態に変更を加えることができることが、当業者には明らかであろう。
【0084】
たとえば、3層の航空機内部パネル20に関連して上述した方法は、4層以上の航空機内部パネルに容易に適合することができる。たとえば、コア上に重ね合わされる外板層の数は、どちら側でも1から増大させることができる。2つ以上のコア層を含むこともできる。
【0085】
様々な航空機内部パネルおよび様々な製造方法について説明した。記載した異なるパネルを作製するために、異なる方法を適用できることが理解されよう。
【実施例1】
【0086】
例示的な構造について次に説明し、その耐熱性の挙動を提示する。
【0087】
航空機内部に対するFAAおよびEASA要件に関して、外板の耐火性を試験した。ケイ酸アルミニウムから誘導される無機質系の熱硬化性マトリックスと、10〜30重量%のホウ素から誘導される難燃剤を含有する天然繊維との複合材を含む外板を、放射熱に露出させた。環境チャンバ内で、3つのサンプルを垂直につるした。チャンバ内には、一定の空気の流れを通過させた。サンプルの露出は、試験片上で1cm当たり3.5Wの所望の総熱流束を生じさせるように調整された放射熱源によって決定した。パイロット着火を使用して、燃焼を開始させた。環境チャンバから出た燃焼生成物を監視および使用して、発熱率を計算した。
【0088】
図12は、無機質系の熱硬化性樹脂から作製された3つのサンプル外板に対する結果を提示する表である。発熱ピークおよび2分後の総発熱量は十分に、連邦航空局(FAA)によって設定された限界の範囲内である。図13は、これらのサンプルに対する発熱量を時間とともに示すグラフである。
【0089】
無機質系の熱硬化性樹脂から作製された4つのサンドイッチパネルを、同じく構築して試験した。図14は、発熱試験の結果とともに、各サンドイッチパネルの組成を示す表である。これらの試験は、上述した外板サンプルの場合と同じ方法で実行した。この場合も、ピークおよび総発熱量は、十分にFAA要件の範囲内であることが分かった。図15は、時間ごとの発熱量のグラフである。
【符号の説明】
【0090】
20 グリーンな航空機内部パネル
22 コア
24 上部外板
26 下部外板
30 グリーンな航空機内部パネル
32 コア
34 外側の上部外板
36 外側の下部外板
38 内側の上部外板
40 内側の下部外板
80 航空機内部パネル
82 コア
84 上部外板
86 下部外板
88 保護被覆
90 航空機内部パネル
92 コア
94 上部外板
96 下部外板
98 保護被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外板と第2の外板の間に挟まれたコアを備える航空機内部パネルであって、前記第1の外板と前記第2の外板がどちらも、天然繊維が樹脂内に固定された複合マトリックスを含む複合材を含む、航空機内部パネル。
【請求項2】
前記天然繊維が、難燃剤、任意選択でハロゲン化されていない難燃剤で処理されている、請求項1に記載の航空機内部パネル。
【請求項3】
前記難燃剤が、ホウ素誘導体、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、およびリン酸塩ナノ粒子の1つである、請求項2に記載の航空機内部パネル。
【請求項4】
前記天然繊維が亜麻である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の航空機内部パネル。
【請求項5】
前記樹脂が無機質系の熱硬化性樹脂であり、任意選択でケイ酸アルミニウム誘導体を含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の航空機内部パネル。
【請求項6】
前記樹脂が熱可塑性樹脂であり、任意選択でポリプロピレンまたはポリ乳酸を含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の航空機内部パネル。
【請求項7】
前記第1および第2の外板の少なくとも1つの外側表面上に難燃性の保護被覆を含む、請求項6に記載の航空機内部パネル。
【請求項8】
前記樹脂がポリプロピレンを含み、前記保護被覆が、アルミニウムナノ粒子内にカプセル化されたケイ酸ナトリウムナノ粒子を含む、請求項7に記載の航空機内部パネル。
【請求項9】
前記樹脂がポリ乳酸を含み、前記保護被覆が、リン酸塩、アンモニウム塩、ナノグラフェン、炭酸塩、およびケイ酸ナトリウムの少なくとも1つのナノ粒子を含む、請求項7に記載の航空機内部パネル。
【請求項10】
前記コアが、ペーパーハニカムを含むか、またはポリフッ化ビニリデン発泡剤のような耐火性で熱可塑性の発泡剤などの熱可塑性の発泡剤を含む、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の航空機内部パネル。
【請求項11】
前記コアが、たとえば誘電体障壁放電プロセスもしくは化学エッチングによって、または接着剤を使用することによって、前記第1および第2の外板への粘着力を高めるために活性化されている、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の航空機内部パネル。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の1つまたは複数の航空機内部パネルを備える航空機。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の航空機内部パネルを製造する方法であって、前記天然繊維の布、前記樹脂、および前記コアからなる積層体を硬化させて前記航空機内部パネルを形成することを含む方法。
【請求項14】
前記天然繊維を重ね合わせることと、前記天然繊維を前記樹脂に含浸させることと、前記天然繊維および樹脂を硬化させて前記第1および第2の外板を形成することと、前記コアの各側に前記第1および第2の外板を重ね合わせて積層体を形成することと、前記積層体を硬化させて前記航空機内部パネルを形成することとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂に含浸された前記天然繊維布を前記コアの両側に重ね合わせて前記積層体を形成することと、単一の工程で前記積層体を硬化させて前記航空機内部パネルを形成することとを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
真空バッグプロセス、機械プレス、またはオートクレーブを使用することによって硬化を行うことを含む、請求項13ないし15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
難燃剤内に前記天然繊維を浸漬させることをさらに含む、請求項13ないし16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1および第2の外板の少なくとも1つの外側表面上に難燃性の保護被覆を提供することをさらに含む、請求項13ないし17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記コアの前記表面を活性化させて前記第1および第2の外板に対する前記コアの粘着力を改善すること、または同じ目的で接着剤を使用することをさらに含む、請求項13ないし18のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−126387(P2012−126387A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−265430(P2011−265430)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company