説明

改善されたヒト長ペントラキシン3発現系及びその使用

本発明は、有効なプロモーターの制御下でヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質をコード化するヌクレオチド配列及び選択可能なマーカーをコード化するヌクレオチド配列を含む真核生物発現ベクター、ベクターによってコード化されるタンパク質の発現を提供できる組換えヒト細胞及びヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高レベルのヒトペントラキシン3(hPTX3)タンパク質を発現できるヒト由来の細胞系、方法及び使用される材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト長ペントラキシン3、PTX3又はhPTX3(GeneBank受入番号BD131701)は、ジスルフィド架橋によって連結された8つのサブユニットから構成される多量体糖タンパク質である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、HEK293Fヒト細胞系におけるPTX3の産生のための発現系をすでに設計している。この系は、PTX3遺伝子がヒトユビキチンCプロモーター配列の制御下にある、ネオマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドに基づく。そのような系は、非ヒト起源の細胞系によるPTX3の内因性産生から誘導されるキメラPTX3の潜在的な形成を回避する。2F12という名称の最良のプロデューサー単離クローンを得られたものから選択した。約20mg/LのPTX3が産生されたが、これは商業生産ニーズに十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
PTX3発現レベルを増大させる目的で、本発明者らは、PTX3遺伝子がCMVプロモーター制御下にあるプラスミドを構築した。プラスミドを用いて、PTX3発現ローン2F12を再トランスフェクションした。新しい単離されたトランスフェクトーマにおいて検出される生産性レベルは、予想よりも高く、80mg/L付近であった。
【0005】
発明の説明
高レベルのヒトPTX3を発現するヒト起源のクローンを、以下のステップ:
a)CMVプロモーターの制御下でのヒトPTX3を有するプラスミド発現カセットの構築;
b)PTX3発現クローンG418耐性の再トランスフェクションから生じる安定なトランスフェクトーマを選択するための、前記プラスミド中へのハイグロマイシン耐性カセットの挿入;
c)発現された組換えタンパク質の同一性及びレベルの検証;
d)組換えhPTX3の生化学的特性化
を含む実験法を用いて得た。
【0006】
PCT/EP2009/050937の内容は、参照することによって本明細書中に組み込まれる。
【0007】
本発明の1つの目的は、有効なプロモーターの制御下でヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質をコード化するヌクレオチド配列及び選択可能なマーカーをコード化するヌクレオチド配列を含み、基本的に配列番号1の配列を有する真核生物発現ベクターである。
【0008】
このベクターは、宿主細胞を形質転換するために優先的に使用され、この場合、好ましくは、宿主細胞はすでにヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を発現できる組換えヒト細胞であり、更に好ましくは、組換えヒト細胞はECACCに第08011001号で寄託されている組換え293F/PTX3/2F12クローンである。特定の態様では、ベクターを直線化する。
【0009】
本発明の別の目的は、前記開示のベクターによりコード化されるヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を発現できる組換え細胞であり、好ましくは、組換えHEK293F細胞系であり、更に好ましくは、Health Protection Agency, Culture Collections Centre For Emergency Preparedness and Response Salisbury UKに第09072902号で寄託されている組換えMS24PTXクローンである。
【0010】
本発明の別の態様は、ヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するための前記開示の組換え細胞の使用である。
【0011】
本発明の別の目的は:
a)組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質をすでに発現している組換えヒト細胞を、ヒト長ペントラキシン遺伝子がCMVプロモーターの制御下にある選択可能なプラスミドでトランスフェクションし;
b)トランスフェクションされた組換えヒト細胞を選択し、そして増殖させ;
c)トランスフェクションされた組換えヒト細胞の培地からヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を精製することを含む、組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するためのプロセスである。
【0012】
好ましくは、組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を発現する組換えヒト細胞は、組換えHEK293F細胞系であり、更に好ましくは、第08011001号でECACCに寄託されている組換え293F/PTX3/2F12クローンである。
【0013】
好ましい実施形態において、精製ステップは少なくとも1つの以下のステップを含む:アニオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィー。
【0014】
本発明の別の目的は:
a)本質的に配列番号1の配列を有する第1のベクター及び本質的に配列番号2の配列を有する第2のベクターでヒト細胞を一時的にまたは連続して同時トランスフェクションし;
b)二重トランスフェクションされた細胞を選択し、増殖させ;
b)二重トランスフェクションされた細胞の培地からヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を精製することを含む、組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するためのプロセスである。
【0015】
本発明の別の目的は、組換えMS24PTXクローンを増殖させ、ヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を培地から精製するステップを含む、組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するプロセスである。
【0016】
本発明を非限定的例により、特に以下の図面を参照して説明する:
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】pSASSI−hPTX3マップ及び主要特性の図。
【図2】(A)MS24PTXクローン及び(B)293F/PTX3/2F12クローンのスピナーフラスコ中での増殖、生存率及び生産性。
【図3】MS24PTXクローンから精製された組換えヒトPTX3のSDS−PAGE勾配4〜15%(A)及びサイズ排除クロマトグラフィー(B)による特性化。
【図4】hPTX3クローン293F/PTX3/2F12及びhPTX3クローンMS24PTXのFGF2結合能。
【図5】pSC1−hPTX3マップ及び主要特性。
【実施例】
【0018】
実施例1:クローン293F/PTX3/2F12
プラスミドpSC1−PTX3の構築
【0019】
1.pSG/Ubの構築
【0020】
1.1ヒトユビキチンCプロモーター配列の調製
ヒトユビキチンCプロモーターを、pUB/Bsdプラスミド(Invtrogen、カタログ番号V512−20)から、PCRでの増殖により得る。クローニング法の一部として、制限エンドヌクレアーゼの認識配列を両端で導入する。BsaAI部位を上流増幅プライマーにおいて構築し、EcoRI部位を下流プライマーにおいて構築する。増幅された領域は、pUB/Bsdの配列においてヌクレオチド1941〜3161に対応する。
オリゴヌクレオチドは次のように設計される:
5’pUbC:長さ:26mer(配列番号3)AT ATCACGTG ATC TGG CCT CCG CGC C
3’pUbC:長さ:23mer(配列番号4)GGAATTC GGT CCG GTC TAA CAA A
増幅のプロトコルは次のとおりである:1ng/μlのプラスミドDNA、2mMのMgCl2、0.2mMのdNTP、400nMの各プライマー、1×で供給された緩衝液及び0.04u/mlのTaq DNAポリメラーゼ(Sigma Genosys);温度プロフィール:3分94℃、30回(30秒 94℃、30秒 46℃、2分 72℃)、5分 72℃、将来使用するまで4℃で冷却。
増幅産物(1238bp)をシリカ膜スピンカラム(NucleoSpin, Machery−Nagel GmbH & Co.)により精製し、pGEM−T−Easy ベクター(Promega Cat. n. A1360)中でライゲートし、そして大腸菌(E.coli)宿主株HB2151(Pharmacia Biotech)中に形質転換する。形質転換体を、50mg/lのアンピシリンを追加したLB培地上で増殖させることにより選択する。
アンピシリン耐性コロニーから単離されたプラスミドDNAを、Stul及びSad酵素での制限分析によりチェックする(予想:〜3650及び600bpフラグメント)。
正しい制限パターンを示すプラスミドを全挿入物の配列分析によりさらにチェックし、続いてEcoRI(Sigma−Genosys)及びBsaAI(New England Biolabs)制限酵素で消化する。
ヒトユビキチンCプロモーターを、アガロースゲル分離及びシリカ膜スピンカラム上での溶出により精製する。
【0021】
1.2 ベクターフラグメントpSG5の精製
プラスミドpSG5(4076bp、Stratagene)を制限酵素EcoRI(Sigma−Genosys)及びBsaAI(New England Biolabs)で切断した;結果として得られたフラグメントは1432及び2644bpの長さである。pSG5の骨格を含む2644bpフラグメントを調製し、アガロースゲル電気泳動及びシリカ膜スピンカラムにより精製した。
【0022】
1.3 pSG/Ubの調製
ステップ1.1及び1.2で調製されたDNAフラグメントを、T4DNAリガーゼ(Promega)を用いてライゲートし、HB2151大腸菌細胞で形質変換させた。形質転換体を、50mg/lのアンピシリンを追加したLB培地上で増殖させることによって選択した。
アンピシリン耐性コロニーから単離されたプラスミドDNAを、EcoRI及びSacII酵素での制限分析によりチェックした(予想:2670及び1192bpフラグメント)。予想される制限パターンを有するプラスミドDNAを、pSG/Ubとして設計した。
【0023】
2.pSC1の構築
【0024】
2.1 ネオマイシン耐性カセット(NeoR)の調製
ネオマイシン耐性カセット(NeoR)をpcDNA3プラスミド(5446bp、Invitrogen)から得、これをPCRにより増幅した。クローニング法の一部として、制限エンドヌクレアーゼAflIIIの認識配列を両端で導入した。増幅された領域は、pcDNA3の配列におけるヌクレオチド1788〜3252に相当し、SV40プロモーター及び複製起源、ネオマイシン耐性ORF、及びSV40poliAシグナルを含む。
オリゴヌクレオチドを次のように設計する:
5’NeoR(配列番号5)ATATACATG TCC CCA GGC AGG CAG AA
3’NeoR(配列番号6)ATATACAT GTAT ACA GAC ATG ATA AG
増幅のためのプロトコルは以下のとおりであった:1ng/μlのプラスミドDNA、2mMのMgCl2、0.2mMのdNTP、400nMの各プライマー、1×で供給された緩衝液及び0.04u/μlのTaq DNAポリメラーゼ(Sigma Genosys);温度プロフィール:3分 94℃、30回(30秒 94℃、30秒 46℃、2分 72℃)、5分 72℃、将来使用するまで4℃で冷却。
増幅産物(1484bp)をシリカ膜スピンカラムにより精製し、pGEM−T−Easyベクター(Promega Cat. n. A1360)中にライゲートし、大腸菌宿主株HB2151で形質転換した。
形質転換体を、50mg/lのアンピシリンを追加したLB培地上で増殖させることによって選択する。
アンピシリン耐性コロニーから単離したプラスミドDNAを、SmaI及びSad酵素での制限分析によってチェックする(予想:〜1200及び3300bpフラグメント)。
正しい制限パターンを示すプラスミドを全挿入物の配列分析によりさらにチェックし、続いてAflIII(New England Biolabs)制限酵素で消化した。NeoRカセット(1471bp)をアガロースゲル分離及びシリカ膜スピンカラム上での溶出により精製した。
【0025】
2.2 ベクターフラグメントpSG/Ubの調製
ステップ1.3で調製されたプラスミドpSG/UbをAflIII消化により直線化し、シリカ膜スピンカラム上で精製した。
【0026】
2.3 pSC1の調製
ステップ2.1及び2.2で調製されたDNAフラグメントを、T4DNAリガーゼ(Promega)を用いてライゲートし、JM109大腸菌株(New England Biolabs)で形質転換した。形質転換体を、50mg/lのアンピシリンを追加したLB培地上で増殖させることによって選択した。
抗生物質耐性コロニーを、前述のように、5’NeoR及び3’NeoRオリゴヌクレオチドでのPCR増幅により前もって分析し、続いて精製されたプラスミドを制限分析によってチェックした。この目的のために、SmaI(位置602、NeoR配列の内側)及びSacII(位置4142、UbC配列の内側)酵素を使用した。予想される制限パターン(3540及び1793bpフラグメント)を有するプラスミドDNAをpSC1として設計した。
【0027】
3.pSC1−PTX3の構築
【0028】
3.1 hPTX3コーディング配列の調製
hPTX3(GeneBank受入番号BD131701)配列を、pSG5−PTX3(WO99/32516「長ペントラキシンPTX3を含む医薬組成物」)からBamHI(Roche Applied Science)消化により得た。ヒトPTX3フラグメント(1463bp)をアガロースゲル電気泳動及びシリカ膜スピンカラムにより精製した。
【0029】
3.2 ベクターフラグメントpSC1の精製
pSC1ベクターをBamHI消化により直線化し、シリカ膜スピンカラム上で精製した。
【0030】
3.3 pSC1−PTX3に関する構築及び検証
ステップ3.2及び3.3で調製されたDNAフラグメントを、T4DNAリガーゼ(Roche Applied Science)を用いてライゲートし、JM109大腸菌株で形質転換した。50mg/lのアンピシリンを追加し、PTX3配列に対して相補性の2つのオリゴヌクレオチドでのPCRによりあらかじめスクリーニングしたLB培地上で増殖させることによって、形質転換体を選択した。
オリゴヌクレオチド配列は次のとおりである:
5’PTX(配列番号7)GTGAGAACTCGGATGATT ATGAT
3’PTX(配列番号8)TGAAAC ATACTGAGCTCCTCCAT
10μlの最終体積で、増幅用試薬は次のとおりであった:1μlの沸騰コロニー(50mlの水中1コロニー)、2mMのMgCl2、0.2mMのdNTP、320nMの各プライマー、0.06%のホルムアミド、1×で供給された緩衝液及び0.08u/μlのTaq DNAポリメラーゼ(Sigma Genosys);温度プロフィール:3分 96℃、30回(30秒 94℃、30秒 58℃、2分 72℃)、5分 72℃、将来使用するまで4℃で冷却。
PCRスクリーニングに対して陽性であるコロニーから精製されたプラスミドを、SalI制限酵素(Roche Applied Science)で消化して、hPTX3挿入物の配向をチェックした。予想される制限パターン(6619及び177bp)を有するプラスミドを、UbCプロモーター、NeoRカセット及びhPTX3をコードする領域で配列決定し、pSC1−PTX3と同定した。
新規プラスミド(pSC1−PTX3)を次いで、ユビキチンプロモーター制御下に置かれたPTX3 cDNA配列及びSV40プロモーター制御下のネオマイシン耐性遺伝子を有するように構築し;すべての他の特性及びプラスミドマップを図1に示す。
pSC1−PTX3の完全配列は以下のとおりである(配列番号2)。pSC1−hPTX3配列は、第1のEcoRI部位から始まって表示される(図5)。pSG5含有PTX3 cDNA由来の配列に下線を引いている。開始コドン(ATG)及び終止コドンは太字で示す。
pSC1−PTX3(配列番号2)
【化1−1】

【化1−2】

【化1−3】

【0031】
ヒト細胞株(HEK293F)を、懸濁液中並びに血清及びタンパク質を含まない培地中で増殖するその能力について選択した(Florian M Wurm “Production of recombinant protein therapeutics in cultivated mammalian cells” Nature Biotechnology 22(11):1393−1398, 2004, Yan SC et al. “Characterization and novel purification of recombinant human protein C from three mammalian cell lines” Biotechnology(N.Y.)1990 Jul 8(7):655−61.“Use ofcell lines for the production of influenza virus vaccines:an appraisal of technical, manufacturing, and regulatory considerations” Initiative for Vaccine Research, World Health Organization, Geneva, Switzerland(10 Aprile 2007)。HEK293Fをトランスフェクションするために、pSC1−PTX3プラスミドを直線状(Pvul消化)又は環状形態のいずれかで使用した。最良のトランスフェクション収率は、直線化プラスミドで得られ;クローン選択を生産性ベース及び増殖能力に関して実施した。数ラウンドサブクローニングした後、2F12クローンを選択した。
hPTX3を発現するヒトクローン2F12を、ECACC(European Collection of Cell Cultures, Health Protection Agency, Porton Down, Wiltshire SP4 OJG, UK)に寄託番号08011001でブダペスト条約の規定に従って2008年1月10日に寄託した。実験の詳細を以下に記載する。
【0032】
3.4 pSC1−PTX3から生成された組換え293F細胞
トランスフェクション及びサブクローニング
10細胞/mlの293F(Invitrogenカタログ番号R790−07)をトランスフェクション当日に125mlのスピナーフラスコ中、28mlの最終Freestyle培地体積中に播種した。pSC1/PTX3プラスミドを次いで製造業者のプロトコルにしたがって293フェクチン試薬(GIBCO/Invitrogen)に吸着させた。
手短に説明すると、2つの別個の試験管中で、30μgのpSC1−PTX3(環状)又はPvul(直線化)を1mlのOptimem(GIBCO/Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)中で希釈し、40μlの293フェクチン(Invitrogen)をOptimemで1mlに希釈した。両溶液を5分間室温でインキュベートし、次いで混合し(最終体積2ml)、そして同じ条件で30分間インキュベートした。DNA/脂質カクテルを細胞に添加し、37℃、5%CO2で撹拌しながら(120rpm)インキュベートした。36時間培養した後、培地を選択培地(200mlのFreestyle培地+500μg/mlのG418)に変え、トランスフェクションされた細胞を10個の96ウェルプレート中に200μl/ウェルで蒔いた。15日後、最高のプロデューサー細胞プールをELISAにより決定し、24セル、6ウェル及びT25フラスコ中で増殖させた。
得られた組換え細胞プールを、50%の新しい培地及び50%馴化培地中、96ウェルプレート中1細胞/ウェルでサブクローニングした。
【0033】
実施例2:クローンMS24PTX
プラスミドpSASSI−hPTX3の構築
【0034】
1.pCEPlightΔの構築
多重クローニング部位及びBamHI制限部位の一部が遊離している(loosing)、抗体軽鎖をあらかじめクローニングしたpCEP4プラスミド(Invitrogen cat. n. V044−50)を、制限酵素EcoRV及びClaI(Roche Applied Science)で切断し;消化によって、染色体外複製を可能にするエプスタイン・バーウイルス複製起源(oriP)及び核抗原(EBNA−1遺伝子によりコード化される)を含まないプラスミドを得ることができた。結果として得られたフラグメントは、6910及び4281bpの長さであった。pCEPの骨格を含む6910bpフラグメントをアガロースゲル電気泳動及びシリカ膜スピンカラムにより精製した。ClaIは付着末端を生成するので、T4DNAポリメラーゼ(Roche Applied Science)を用い、以下のプロトコルでフラグメントを埋めた:150ngのClaI/EcoRV精製フラグメント(38μl)、5μlの10×T4DNAポリメラーゼ緩衝液、4μlのdNTPミックス2.5mM、3μlのT4DNAポリメラーゼ(lU/μl)。37℃で15分後、70℃で5分間、次いで氷上で、反応を停止させた。フラグメントをシリカ膜スピンカラム上で精製し、T4DNAリガーゼ(Promega)を用いて、一晩室温でそれ自身にライゲートした。TOP10コンピテント細胞(Invitrogen)をライゲーション混合物で形質転換し、100mg/Lのアンピシリンを追加したLBプレート上で増殖させることによって形質転換体を選択した。
アンピシリン耐性コロニーから単離されたプラスミドDNAを、pCEPlightΔとして設計した。
【0035】
2.ハイグロマイシン耐性及びCMVプロモーターを含むベクターフラグメントの調製
ハイグロマイシン耐性カセットをサイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー/プロモーターとともにpCEPlightΔから得、これをPCRにより増幅した。クローニング法の一部として、制限エンドヌクレアーゼBamHIの認識部位を、CMVプロモーターの3’末端にアニールするオリゴヌクレオチド中に導入した。
約5500bpの増幅された領域は、CMVプロモーター、TKプロモーターの制御下のハイグロマイシン遺伝子をTK polyAシグナルとともに含んでいた。
オリゴヌクレオチドを次のとおり設計する:
オリゴCMV(配列番号9)5’GAGAACTGTAACGTTGGATCCAGCTGG 3’
オリゴH(配列番号10)5’GTGTACAAAGGATCCAGACATGATAAG 3’
増幅のプロトコルは次のとおりであった:2ngのpCEPlightΔ、200nMの各プライマー、0.2mMのdNTP、1×で供給された緩衝液、1.5μlのDMSO、0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Phusion)、最終体積50μl;温度プロフィール:1分 98℃、35回(10秒 98℃、30秒 55℃、3分 72℃)、10分 72℃、将来使用するまで4℃で冷却。
増幅産物(〜5500bp)をアガロースゲル電気泳動及びシリカ膜スピンカラムにより精製した。精製されたフラグメントをそれ自体にライゲートし、TOP10コンピテント細胞(Invitrogen)を形質転換するために使用した。アンピシリン耐性コロニーから単離されたプラスミドDNAを制限及び配列分析によりチェックし、pCEPΔBamとして設計した。
【0036】
3.hPTX3遺伝子の調製
hPTX3(GeneBank受入番号BD131701)配列を前記のようにpSC1−PTX3からBamHI(Roche Applied Science)消化によって得た。ヒトPTX3フラグメント(1463bp)をアガロースゲル電気泳動及びシリカ膜スピンカラムにより精製した。
【0037】
4.pCEPΔBam−hPTX3の調製
pCEPΔBamベクターをBamHI消化により直線化し、シリカ膜スピンカラム上で精製した。直線化されたpCEPΔBam及びステップ3で調製されたhPTX3遺伝子に対応するDNAフラグメントを、T4DNAリガーゼ(Roche Applied Science)を用いてライゲートし、TOP10大腸菌株を形質転換するために用いた。100mg/Lのアンピシリンを追加し、制限分析によってあらかじめスクリーニングしたLB培地上で増殖させることによって形質転換体を選択し、PTX3フラグメント配向を評価した。
【0038】
5.SV40ポリアデニル化シグナルの調製
SV40 polyAシグナルをpCEPΔlightプラスミドから得、PCRによってこれを増幅した。クローニング法の一部として、制限エンドヌクレアーゼHindIII及びXholの認識配列をそれぞれフラグメント両端で導入した。
オリゴヌクレオチドを以下のように設計した:
PCEPSVH(配列番号11)5’AAGCTT AGAC ATGAT AAGAT AC ATTG 3’
PCEPSVX(配列番号12)5’CTCGAGAGTCGACCGGTCATGGCTGC 3’
増幅のプロトコルは以下のとおりであった:1ngのpCEPlightΔ、200nMの各プライマー、0.2mMのdNTP、1×で供給された緩衝液、2μlのMgCl2 50mM、0.5μlのTaq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)、最終体積50μl;温度プロフィール:1分 94℃、30回(30秒 94℃、1分 55℃、1分 72℃)、15分 72℃、将来使用するまで4℃で冷却。
増幅産物(〜420bp)をアガロースゲル電気泳動及びシリカ膜スピンカラムにより精製した。
【0039】
6.pSASSI−hPTX3の調製
SV40 polyAシグナルに対応する精製されたフラグメント及びpCEPΔBam−hPTX3をHindIII/Xhol制限酵素で消化し、T4DNAリガーゼ(Promega)を用いてライゲートした。ライゲーション混合物を使用して、TOP10コンピテント細胞(Invitrogen)を形質転換し、100mg/Lのアンピシリンを含むLBプレート上で増殖させることによって形質転換体を選択した。
アンピシリン耐性コロニーから単離されたプラスミドDNAを制限及び配列分析によりチェックし、プラスミドをpSASSI−hPTX3と命名した。
pSASSI−HPTX3の完全配列は以下のとおりである(配列番号1)。pSASSI−hPTX3配列をBamHI部位から始めて表示する(図1)。hPTX3の配列を小文字で示す。開始コドン(atg)及び終止コドン(taa)を太字で示す。
pSASSI−HPTX3(配列番号1)。
【化2−1】

【化2−2】

【化2−3】

【化2−4】

【0040】
実施例3
pSASSI−hPTX3トランスフェクションによって生成した組換えMS24PTXクローン
【0041】
1.トランスフェクション及びサブクローニング
10細胞/mlの293F/PTX3/2F12を、トランスフェクション当日に、125mlのスピナーフラスコ中、28mlの最終Freestyle培地体積中に播種した。pSASSI−hPTX3プラスミドを次いで、製造業者のプロトコルにしたがって、293フェクチン試薬(GIBCO/Invitrogen)に吸着させた。
手短に説明すると、30μgのpSASSI−hPTX3 Nrul(直線化)を1mlのOptimem(GIBCO/Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)中で希釈し、40μlの293フェクチン(Invitrogen)をOptimemで1mlに希釈した。両溶液を5分間室温でインキュベートし、次いで混合し(最終体積2ml)、そして同じ条件で30分間インキュベートした。DNA/脂質カクテルを細胞に添加し、37℃、5%COで撹拌しながら(120rpm)インキュベートした。36時間培養した後、培地を選択培地(200mlのFreestyle培地+200μg/mlのハイグロマイシン)に変え、トランスフェクションされた細胞を10個の96ウェルプレート中に200μl/ウェルで蒔いた。15日後、最高のプロデューサー細胞プールをELISAにより決定し、24ウェル、6ウェル及びT25フラスコ中で増幅させた。
得られた組換え細胞プールを、96ウェルプレート中、50%の新しい培地及び50%の馴化培地中、1細胞/ウェルでサブクローニングした。
【0042】
2.組換えhPTX3のELISA検出
精製されたPTX3又は培地上清中に分泌されたPTX3を、サンドイッチELISAを用いて滴定した。PTX3を検出するために、96ウェルNunc Maxisorbマイクロタイタープレート(Nunc, Roskilde, Denmark)を一晩4℃にて、15mMの炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中、700ng/mlのラットモノクローナル抗体MNB4抗ヒトPTX3(Alexis(商標)Biochemicals, Lausen, Switzerland)でコーティングした。ウェルをPBS及び0.05%のTween−20(PBS−Tw、洗浄液)で洗浄し、5%粉乳を含む300μlのPBS−Twで、2時間、室温にてブロックした。
細胞上清又は精製された組換えヒトPTX3をウェルに添加し、洗浄液及び1%のBSAで希釈した。0〜100ng/mlの範囲のCHO細胞由来の精製された組換えヒトPTX3で作製された標準曲線を定量化に利用した。37℃で1時間インキュベーションした後、結合したPTX3を、ビオチン複合ポリクローナルウサギ抗PTX3抗体を用いて検出し、続いてホースラディッシュペルオキシダーゼ(Sigma−Aldrich, USA)に共役させたストレプトアビジンとともにインキュベートした。最終的に、発色させるために、2,2’−アジノ−ビス3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸(Sigma Chemical Co. USA)を添加し、Microplate Reader Model 3550 EIA(Bio−Rad, Hercules, CA, USA)を用いて405nmでの光学密度を評価した。
【0043】
実施例4
クローン293F/PTX3/2F12及びMS24PTXの増殖、生存率及び生産性の比較
1リットルのスピナーフラスコ中で、500mlのFreeStyle293培地中1,000,000細胞/ml(生存率≧90%)の密度で2つのクローン由来の細胞を播種した。細胞が死に始めるまで約1週間、増殖、生存率及び生産性をモニタリングした。
図2は、同じ播種及び増殖条件での、MS24PTX(パネルA)及び293F/PTX3/2F12(パネルB)クローンの増殖、生存率及び生産性を示す。図に示されるように、PTX3発現クローン293F/PTX3/2F12を、PTX3がCMVプロモーターの制御下にある新規プラスミド(MS24PTXクローン)で再トランスフェクションして、本発明者等はPTX3生産性において約4倍の増加を得ることができた。
【0044】
実施例5
MS24PTXクローンからの組換えヒトPTX3の精製
スピナーフラスコ中で増殖させた、MS24PTXクローンからの培養上清を、Q−SepharoseTM Fast Flow(GE Healthcare, UK)充填カラム上にロードした。非線形勾配を用いて残留物質を溶出させた。PTX3含有フラクションをセラミックハイドロキシアパタイト(BioRad, Hercules, CA, USA)充填カラムに直接かけた。リン酸塩濃度を非線形的に増大させることによって、残留物質を溶出させた。PTX3含有フラクションを濃縮し、緩衝液を限外ろ過膜(Pellicon−Biomax 100, Millipore)上で変更し、次いでBiosep SEC S4000(Phenomenex)上サイズ排除クロマトグラフィー及びSDS−PAGEにより特性化した(図3)。
【0045】
実施例6
h−PTX3のFGF2に対する結合
精製された組換えhPTX3のFGF2に対する結合を、ELISAシステムで評価した。96−ウェルプレート(Falcon 3912)をPBS中2μg/mlのFGF2(Calbiochem)でコーティングし、一晩4℃でインキュベートした。ウェルをPBS及び0.1%のTriton X−100(PBS−Tr、洗浄液)で洗浄し、3%BSAを含む200μlのPBS−Tr(PBS−Bブロッキング及び希釈液)で2時間室温にてブロックした。洗浄後、0〜120ng/mlの範囲のPTX3濃度でPBS−B中で希釈した100μlの試料を添加して結合を実施し、プレートを37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートを100μl/ウェルの100ng/mlのウサギ抗PTX3ポリクローナル抗体(37℃で1時間)とともにインキュベートし、再度洗浄し、そして100μlのホースラディッシュペルオキシダーゼで標識されたヤギ抗ウサギIgG(PBS−B中1:1000;37℃で1時間)とともにインキュベートした。洗浄後、100μlの発色性基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)(sigma−Aldrich)を添加し、10〜15分後、100μlのHCl(1M)を添加して反応を停止させ、Microplate Reader Model 3550 EIA(Bio−Rad, Hercules, CA, USA)を用いて吸収を測定した(図4)。
【表1−1】

【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効なプロモーターの制御下でヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質をコードするヌクレオチド配列及び選択可能なマーカーをコードするヌクレオチド配列を含み、本質的に配列番号1の配列を有する真核生物発現ベクター。
【請求項2】
宿主細胞を形質転換するための請求項1記載のベクターの使用。
【請求項3】
宿主細胞が、ヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質をすでに発現できる組換えヒト細胞である、請求項2記載のベクターの使用。
【請求項4】
組換えヒト細胞が、ECACCに第08011001号で寄託されている組換え293F/PTX3/2F12クローンである、請求項3記載のベクターの使用。
【請求項5】
ベクターが直線化されている、前記請求項のいずれかに記載のベクターの使用。
【請求項6】
請求項1に記載のベクターによりコードされるヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を発現できる組換え細胞。
【請求項7】
組換えHEK293F細胞株である、請求項6記載の組換え細胞。
【請求項8】
組換えMS24PTXクローンである、請求項7記載の組換え細胞。
【請求項9】
ヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質の産生のための、請求項6〜8のいずれか1項に記載の組換え細胞の使用。
【請求項10】
ヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するための方法であって:
d)組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質をすでに発現している組換えヒト細胞を、ヒト長ペントラキシン遺伝子がCMVプロモーターの制御下にあるプラスミドでトランスフェクションし;
e)トランスフェクションされた組換えヒト細胞を選択し、そして増殖させ;
f)ヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質をトランスフェクションされた組換えヒト細胞の培地から精製することを含む、方法。
【請求項11】
組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を発現する組換えヒト細胞が組換えHEK293F細胞株である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
組換えヒト長ペントラキシンPTX3を発現する組換えHEK293F細胞株が、ECACCに第08011001号で寄託されている組換え293F/PTX3/2F12クローンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
トランスフェクションされた組換えヒト細胞がMS24PTXクローンである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
精製ステップが少なくとも1つの以下のステップ:アニオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーを含む、請求項10〜13いずれかに記載の方法。
【請求項15】
a)本質的に配列番号1の配列を有する第1のベクター及び本質的に配列番号2の配列を有する第2のベクターでヒト細胞を一時的又は連続して共トランスフェクションし;
b)二重トランスフェクションされた細胞を選択し、増殖させ;
b)二重トランスフェクションされた細胞の培地からヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を精製することを含む、組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するための方法。
【請求項16】
組換えMS24PTXクローンを増殖させ、そしてヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を培地から精製するステップを含む、組換えヒト長ペントラキシンPTX3タンパク質を産生するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504304(P2013−504304A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522103(P2012−522103)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060469
【国際公開番号】WO2011/012496
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(306032202)テクノジェン・ソシエタ・ペル・アチオニ (5)
【氏名又は名称原語表記】TECNOGEN S.p.A.
【Fターム(参考)】