説明

改善された薬物動態特性を有する改変キメラポリペプチド

【課題】改善された薬物動態を有する改変キメラポリペプチドが開示される。
【解決手段】詳細には、その薬物動態プロフィールが改善されるように改変された、改変Flt1レセプターポリペプチドが開示される。この改変ポリペプチドを作製および使用する方法がまた開示され、この改変ポリペプチドには、哺乳動物において血漿の漏出および/または透過性を減少または阻害する改変ポリペプチドが挙げられるが、これに限定されない。また、VEGFポリペプチドに結合し得る融合ポリペプチドをコードする単離された核酸分子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/138,133号(1999年、6月8日出願)の優先権を主張する。本出願の全体に渡って、種々の出版物が参照される。これらの出版物の開示はその全体において、本出願の中に参考として本出願によって援用される。
【0002】
(序文)
本発明の分野は、改善された薬物動態を有する改変されたポリペプチドである。特に、本発明の分野は、薬物動態のプロフィールを改善するような方法で改変されたFlt1レセプターポリペプチドに関する。本発明の分野はまた、その改変されたポリペプチドを作製および使用する方法に関し、その方法は、哺乳動物における血漿漏出および/または血管透過性を減少もしくは阻害するためにその改変されたポリペプチドを使用することを含むが、これに限定されない。
【背景技術】
【0003】
(背景)
細胞に結合し、それにより表現型応答(例えば、細胞増殖、生存、細胞産物の分泌または分化)を誘発するポリペプチドリガンドの能力は、細胞上の膜貫通レセプターによってしばしば媒介される。そのようなレセプターの細胞外ドメイン(すなわち、細胞表面上に提示されるレセプターの部分)は、タンパク質にそのリガンド結合特徴を提供するので、一般的に、その分子の最も特徴的な部分である。リガンドの細胞外ドメインへの結合は、一般的に、細胞内標的へ生物学的シグナルを伝達するシグナル伝達を生じる。しばしば、このシグナル伝達は、触媒的細胞内ドメインを介して作用する。この触媒的細胞内ドメインの配列モチーフの特定のアレイ(array)は、潜在的キナーゼ基質へのその接近を決定する(Mohammadiら、1990、Mol.Cell.Biol.11:5068−5078;Fantlら、1992、Cell 69:413−413)。触媒的細胞内ドメインを介してシグナルを伝達するレセプターの例としては、レセプターチロシンキナーゼ(RTK)(例えば、神経系の細胞に一般的に限定されるTrkファミリーのレセプター)、これもまた神経系の細胞に一般的に限定される3部(tripartate)から成るCNTFレセプター複合体(StahlおよびYancopoulos、1994、J.Neurobio.25:1454−1466)を含むサイトカインファミリーのレセプター、Gタンパク質結合レセプター(例えば、心筋細胞上に見出されるβ2−アドレナリン作用性レセプター)ならびに大部分が肥満細胞および好塩基性細胞上に局在する多量体IgE高親和性レセプターFcεRI(SuttonおよびGould、1993、Nature 366:421−428)が挙げられる。
【0004】
これまで同定された全てのレセプターは、二量体化、多量体化、またはリガンド結合後のいくつかの関連したコンホメーション変化を経験するようであり(Schlessinger,J.,1988、Trend Biochem.Sci.13:443−447;UllrichおよびSchlessinger、1990、Cell 61:203−212;SchlessingerおよびUllrich、1992、Neuron 9:383−391)、そして二量体化した細胞内ドメイン間の分子相互作用は、触媒機能の活性化をもたらす。いくつかの場合において、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)のようなリガンドは、2つのレセプター分子と結合する二量体であるが(Hartら、1988、Science、240:1529−1531;Heldin、1989、J.Biol.Chem.264:8905−8912)、上皮増殖因子(EGF)の場合において、このリガンドは、単量体である(Weberら、1984、J.Biol.Chem.259:14631−14636)。FcεRIレセプターの場合において、リガンド(IgE)は、単量体の様式においてFcεRIと結合して存在し、そして抗原がIgE/FcεRI複合体と結合し、そして隣接するIgE分子と架橋する場合においてのみ、活性化する(SuttonおよびGould、1993、Nature 366:421−428)。
【0005】
しばしば、高等生物内の特定のレセプターの組織分布は、そのレセプターの生物学的機能に関する洞察を提供する。いくつかの増殖因子および分化因子(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF))に対するRTKは、広範に発現され、そのため、組織増殖および組織維持においていくつかの一般的な役割を果たすようである。Trk RTKファミリーのメンバー(GlassおよびYancopoulos、1993、Trends in Cell Biol.3:262−268)のレセプターは、より一般的に、神経系の細胞に限定され、そして神経成長因子ファミリーは、神経成長因子(NGF)、脳誘導神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3(NT−3)およびニューロトロフィン−4/5(NT−4/5)から構成され、これらはTrk RTKファミリーレセプターと結合し、脳および末梢におけるニューロンの多様な群の分化を促進する(Lindsay,R.M、1993、Neurotrophic Factors,S.E.LoughlinおよびJ.H.Fallon、編、257−284頁、San Diego,CA,Academic Press)。FcεRIは、非常に限られた数の型の細胞(例えば、肥満細胞および好塩基性細胞)に局在する。肥満細胞は、骨髄多能性造血幹細胞系統に由来するが、血流から移動した後に組織においてそれらの成熟を完了させ(JanewayおよびTravers、1996、Immunobiology、第2版、M.RobertsonおよびE.Lawrence、編、1:3−1:4頁、(発行元)Current Biology Ltd.,London,UK,を参照のこと)、そしてアレルギー性応答に関与する。
【0006】
多くの研究は、レセプターの細胞外ドメインは、特定のリガンド結合特徴を提供するということを実証してきた。さらに、レセプターが発現される細胞環境は、リガンドがレセプターに結合する際に示される生物学的応答に影響を及ぼし得る。例えば、Trkレセプターを発現するニューロン細胞が、そのレセプターに結合するニューロトロフィンに曝露される場合、ニューロンの生存および分化が生じる。同じレセプターが線維芽細胞により発現される場合、ニューロトロフィンへの曝露は、線維芽細胞の増殖を生じる(Glassら、1991、Cell 66:405−413)。
【0007】
血管内皮細胞に対する選択性を有する細胞誘導二量体マイトジェンのクラスが同定され、そして血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と命名されている。VEGFは、ラット神経膠腫細胞の馴化増殖培地[Connら、(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,87.2628−2632頁];およびウシ下垂体小胞星細胞の馴化増殖培地[FerraraおよびHenzel、(1989)、Biochem.Biophys.Res.Comm.,161、851−858頁;Gozpadorowiczら、(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86、7311−7315頁]およびヒトU937細胞に由来する馴化増殖培地[Connolly,D.T.ら、(1989)、Science、246、1309−1312頁]から精製された。VEGFは、約46kDaの見掛けの分子量を有する二量体(各サブユニットは、約23kDaの見掛けの分子量を有する)である。VEGFは、血小板由来増殖因子(PDGF)(これは、結合組織の細胞に対するマイトジェンであるが、大血管に由来する血管内皮細胞に対してはマイトジェンではない)に対していくつかの構造的な類似性を有する。
【0008】
膜結合チロシンキナーゼレセプター(Fltとして公知)は、VEGFレセプターであることが示された[DeVries,C.ら、(1992)、Science、255、989−991頁]。Fltレセプターは、有糸分裂誘発を誘導するVEGFと特異的に結合する。VEGFレセプターの別の形態(KDRと命名される)もまた、VEGFに結合し、そして有糸分裂誘発を誘導することが公知である。KDRの部分的なcDNA配列およびほぼ全長のタンパク質配列もまた同様に公知である[Terman,B.Iら、(1991)Oncogene 6、1677−1683頁;Terman,B.I.ら、(1992)Biochem.Biophys.Res.Comm.187、1579−1586頁]。
【0009】
持続性新脈管形成は、特定の疾患(例えば、乾癬、慢性関節リウマチ、血管腫、血管線維腫、糖尿病性網膜症および血管新生緑内障)を引き起こし得るか、または悪化させ得る。VEGF活性のインヒビターは、そのような疾患および他のVEGF誘導の病的新脈管形成ならびに血管透過性状態(例えば、腫瘍血管新生)に対する処置として有用である。本発明は、VEGFレセプターFlt1に基づくVEGFインヒビターに関する。
【0010】
血漿漏出(炎症の重要な構成要素)は、微小血管の異なるサブセットにおいて生じる。具体的には、ほとんどの器官において、血漿漏出は特に小静脈において生じる。小動脈および毛細管とは異なり、小静脈は、多数の炎症性メディエーター(ヒスタミン、ブラジキニン、およびセロトニンを含む)に応じて漏出性になる。炎症の1つの特徴は、小静脈の内皮において形成する細胞間間隙から生じる血漿漏出である。炎症の最も実験的なモデルは、これらの細胞間間隙は、後毛細管小静脈の内皮細胞と集合小静脈の内皮細胞との間に生じるということを示す(Baluk,P.ら、Am.J.Pathol.1998 152:1463−76)。特定のレクチンを使用して、炎症性小静脈内の内皮細胞境界における血漿漏出、内皮の間隙、および指様突起の限局的部位の特徴を明らかにし得るということが示されてきた(Thurston,G.ら、Am.J.Physiol、1996、271:H2547−62)。特に、植物レクチンは、例えば、ラット気管の炎症性小静脈内の内皮細胞境界における形態学的変化を可視化するために使用されてきた。炎症性小静脈に限局的に結合するレクチン(例えば、コンカナバリンAおよびリシン)は、血漿漏出部位に対応する間隙により露出された内皮下血管壁の領域を明らかにする(Thurston,G.ら、Am J Physiol、1996、271:H2547−62)。
【0011】
微小血管の特性は、動的である。例えば、慢性炎症疾患は、微小血管リモデリング(新脈管形成および微小血管拡大を含む)に関連する。微小血管はまた、異常表現型の特性を獲得することによってリモデリングされ得る。慢性気道炎症のマウスモデルにおいて、気道毛細管は、小静脈の特性(広げられた血管直径、フォン・ビルブラント因子に対する増加した免疫反応性、およびP−セレクチンに対する増加した免疫反応性を含む)を獲得する。さらに、これらのリモデリングされた血管は、炎症性メディエーターに応じて漏出するが、正常マウスの気道の同じ位置における血管は、漏出しない。
【0012】
特定の物質は、血管透過性および/または血漿漏出を減少させるか、または阻害することを示してきた。例えば、ミスチキン(mystixin)は、内皮間隙形成をブロックすることを伴わずに血漿漏出を阻害することが報告されている合成ポリペプチドである(Baluk,P.ら、J.Pharmacol.Exp.Ther.,1998、284:693−9)。また、β2−アドレナリン作用性レセプターアゴニスト(フォルモテロール)は、内皮間隙形成を阻害することによって微小血管漏出を減少させる(Baluk,P.およびMcDonald,D.M.,Am.J.Physiol.,1994、266:L461−8)。
【0013】
アンジオポイエチン(angiopoietin)および血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーのメンバーは、主に血管内皮細胞に対して特異的であると考えられる唯一の増殖因子である。マウスにおける標的遺伝子不活性化研究は、VEGFは血管発生の初期段階に不可欠であり、そしてAng−1は血管リモデリングの後期段階に必要とされるということを示している。
【0014】
米国特許第6,011,003号(2000年、1月4日発行)は、Metris Therapeutics Limitedの名において、FLTポリペプチドの改変された可溶性形態は、VEGFを結合し得、それによりVEGFに対して阻害効果を及ぼし、そのポリペプチドは、5つ以下の完全免疫グロブリンドメインを含むということを開示している。
【0015】
米国特許第5,712,380号(1998年、1月27日発行され、そしてMerck&Co.に譲渡されている)は、天然に存在しているか、またはVEGFに対するレセプターのC末端膜貫通領域を伴うかもしくは伴わない組換え操作された可溶性形態である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)インヒビターを開示している。
【0016】
また、PCT公開番号WO98/13071(1998年、4月2日公開)は、MerckおよびCo.に譲渡されており、これは、VEGFと結合する可溶性レセプタータンパク質をコードするヌクレオチド配列の遺伝子転移によって、原発性腫瘍増殖および転移を阻害するための遺伝子治療方法論を開示している。
【0017】
PCT公開番号WO97/44453(1997年、11月27日公開)は、Genentech,Inc.の名において、血管内皮増殖因子(VEGF)レセプターFlt1およびKDR(ヒトKDRレセプターFLK1に対するマウスホモログを含む)に由来するアミノ酸配列を含む新規なキメラVEGFレセプタータンパク質を開示しており、ここでそのキメラVEGFレセプタータンパク質は、VEGFに結合し、そしてその内皮細胞増殖および脈管形成活性をアンタゴナイズする。
【0018】
PCT公開番号WO97/13787(1997年、4月17日公開)は、Toa Gosei Co.,LTDの名において、新生血管形成(例えば、固体腫瘍)が付随する疾患の処置において有効な低分子量VEGFインヒビターを開示している。VEGFレセプターFLTの細胞外領域において、第1の免疫グロブリン様ドメインおよび第2の免疫グロブリン様ドメインを含むが、その第6の免疫グロブリン様ドメインおよび第7の免疫グロブリン様ドメインを含まないポリペプチドは、VEGF阻害活性を示す。
【0019】
Sharifi,J.ら、1998、The Quarterly Jour.of Nucl.Med.42:242−249は、モノクローナル抗体(MAb)は塩基性で正に荷電したタンパク質あり、そして哺乳動物細胞は負に荷電しているという理由により、その2者の間の静電気的相互作用は、より高いレベルのバックグランド結合を生成し得、腫瘍対正常器官の比率が低くなるということを開示している。この影響を克服するために、研究者らは、種々の方法(例えば、第2の薬剤ならびにMAbそれ自体の化学改変および荷電改変)を使用することによってMAbクリアランスを改善することを試みた。
【0020】
Jensen−Pippoら、1996、Pharmaceutical Research 13:102−107は、治療タンパク質のペグ化(pegylation)(組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(PEG−G−CSF))は、十二指腸内の経路により投与される場合、インビボ生物活性の安定性および維持の増加を生じるということを開示している。
【0021】
Tsutsumiら、1997、Thromb Haemost.77:168−73は、ポリエチレングリコール改変化インターロイキン−6(MPEG−IL−6)(IL−6の54%の14リジンアミノ基をPEGと結合させた)のインビボ血小板新生活性を、ネイティブIL−6のインビボ血小板新生活性と比較した実験を開示している。
【0022】
Yangら、1995、Cancer 76:687−94、は、ポリエチレングリコールの組換えヒトインターロイキン−2(IL−2)への結合は、化合物のポリエチレングリコール改変化IL−2(PEG−IL−2)を生じ、この化合物は、IL−2のインビトロ活性およびインビボ活性を維持するが、著しく延長された循環半減期を示す、ということを開示している。
【0023】
R.DuncanおよびF.Spreafico、Clin.Pharmacokinet.27:290−306、296(1994)は、ポリエチレングリコールを結合させることによってアスパラギナーゼの血漿半減期を改善する試みを再検討している。
【0024】
PCT国際公開番号WO99/03996(1999年1月28日公開)は、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.およびThe Regents of The University of Californiaの名において、塩基性アミノ酸の領域が欠失されている改変されたヒトノジン(noggin)ポリペプチドを記載している。この改変されたヒトノジンポリペプチドは、改変されていないヒトノジンと比べてヘパリンに対する減少した親和性および動物血清においてより優れた薬物動態を有しながら、生物学的活性を維持するものとして記載される。
【発明の概要】
【0025】
(発明の要旨)
本発明は、改善された薬物動態の特性を有するVEGFアンタゴニストに関する。好ましい実施形態は、VEGFポリペプチドと結合し得る融合ポリペプチドをコードする単離された核酸分子であり、その核酸分子は、(b)多量体化(multimerizing)成分をコードするヌクレオチド配列に(a)作動可能に連結されたVEGFレセプター成分をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、VEGFレセプター成分は、融合ポリペプチドの唯一のVEGFレセプター成分であり、そしてここで、(a)のヌクレオチド配列は、第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列および第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列から本質的に構成される。
【0026】
さらなる実施形態において、第1のVEGFレセプターの単離された核酸は、Flt1である。
【0027】
さらなる実施形態において、第2のVEGFレセプターの単離された核酸は、Flk1である。
【0028】
また別の実施形態において、第2のVEGFレセプターの単離された核酸は、Flt4である。
【0029】
別の好ましい実施形態において、第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2をコードするヌクレオチド配列は、第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3をコードするヌクレオチド配列の上流にある。
【0030】
さらなる別の好ましい実施形態において、第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2をコードするヌクレオチド配列は、第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3をコードするヌクレオチド配列の下流である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、多量体化成分は、免疫グロブリンドメインを含む。
【0032】
別の実施形態において、免疫グロブリンドメインは、IgGのFcドメイン、IgGの重鎖、およびIgGの軽鎖からなる群から選択される。
【0033】
好ましい実施形態は、改変されたFlt1レセプター融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含み、ここで核酸分子のコード領域は、以下:
(a)図13A−13Dに示されるヌクレオチド配列;
(b)図14A−14Cに示されるヌクレオチド配列;
(c)図15A−15Cに示されるヌクレオチド配列;
(d)図16A−16Dに示されるヌクレオチド配列;
(e)図21A−21Cに示されるヌクレオチド配列;
(f)図22A−22Cに示されるヌクレオチド配列;
(g)図24A−24Cに示されるヌクレオチド配列;および
(h)遺伝暗号の縮重の結果として、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、または(g)のヌクレオチド配列とは異なり、そして改変されたFlt1レセプター融合ポリペプチドの生物学的活性を有する融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
からなる群から選択されるヌクレオチド配列から構成される。
【0034】
本発明のさらなる実施形態において融合ポリペプチドは、上記の単離された核酸分子によりコードされる。
【0035】
好ましい実施形態は、融合ポリペプチドの多量体を含む非機能性複合体を形成するようにVEGF分子と結合し得る組成物である。
【0036】
多量体が二量体である、組成物もまた好ましい。
【0037】
さらに別の実施形態において、その組成物はキャリア内に存在する。
【0038】
別の実施形態は、上記の核酸分子を含むベクターであり、このベクターとしては、記載される核酸分子を含む発現ベクターが挙げられ、ここでその核酸分子は、発現制御配列に作動可能に連結される。
【0039】
他に含まれる実施形態は、適切な宿主細胞において、発現ベクターを含む融合ポリペプチドを産生するための宿主−ベクター系であり;適切な宿主細胞が細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である宿主−ベクター系であり;適切な宿主細胞がE.Coliである宿主−ベクター系であり;適切な宿主細胞がCOS細胞である宿主−ベクター系であり;適切な宿主細胞がCHO細胞である宿主−ベクター系である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、融合ポリペプチドの産生およびこのように産生された融合ポリペプチドの回収を可能にする条件下で宿主−ベクター系の増殖細胞を含む、融合ポリペプチドを産生する方法である。
【0041】
さらなる実施形態は、図10A〜10Dまたは図24A〜24Cに記載される核酸配列によってコードされる融合ポリペプチドを含み、これは、アセチル化またはペグ化によって改変され、ここでこのアセチル化は、少なくとも約100倍モル過剰(molar excess)のアセチル化剤を用いて達成されるか、またはアセチル化は、少なくとも約10倍のモル過剰〜約100倍のモル過剰の範囲のモル過剰アセチル化剤を用いて達成され得るか、あるいは、ペグ化は10Kまたは20KのPEGである。
【0042】
好ましい実施形態は、哺乳動物における血漿の漏出(leakage)を減少または阻害する方法を含み、この方法は、哺乳動物に上記の融合ポリペプチドを投与する工程を包含し、ここで哺乳動物がヒトであり、融合ポリペプチドがアセチル化されているかまたはこの融合ポリペプチドがペグ化されている実施形態を含む。
【0043】
さらなる実施形態は、VEGFレセプターリガンドVEGFに特異的に結合する融合ポリペプチドである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態は、ヒトにおける血管増殖をブロックする方法であり、この方法は、上記の融合ポリペプチド有効量を投与する工程を包含する。
【0045】
哺乳動物におけるVEGFレセプターリガンド活性を阻害する方法もまた好ましく、この方法は、上記の融合ポリペプチドの有効量を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0046】
これらの方法の好ましい実施形態は、哺乳動物がヒトである場合である。
【0047】
本発明の方法のさらなる実施形態は、ヒトにおける腫瘍増殖の減弱または予防;ヒトにおける水種の減弱または予防(特に、この水種は脳水種である);ヒトにおける腹水形成の減弱または予防(特に、この腹水は卵巣癌に関連する腹水である)を含む。
【0048】
本発明の好ましい実施形態は、(b)多量体化成分に作動可能に連結した(a)VEGFレセプター成分を含むVEGFポリペプチドに結合し得る融合ポリペプチドを含み、ここでこのVEGFレセプター成分は、融合ポリペプチドにおける単なるVEGFレセプター成分であり、そして本質的に、第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列、および第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列からなる。
【0049】
融合ポリペプチドのさらなる実施形態において、第1のVEGFレセプターはFlt1である。
【0050】
融合ポリペプチドのなおさらなる実施形態において、第2のVEGFレセプターはFlk1である。
【0051】
融合ポリペプチドのさらなる別の実施形態は、第2のVEGFレセプターがFlt4である融合ポリペプチドである。
【0052】
好ましい実施形態は、第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列が、第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列の上流である融合ポリペプチド、および第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列が、第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列の下流である融合ポリペプチドを含む。
【0053】
なお別の実施形態において、融合ポリペプチド多量体化成分は、免疫グロブリンドメインが、IgGのFcドメイン、IgGの重鎖、およびIgGの軽鎖からなる群から選択される実施形態を含む免疫グロブリンドメインを含む。
【0054】
好ましい実施形態は、改変されたFlt1レセプターのアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドを含み、ここでこのアミノ酸配列は、以下からなる群から選択される:(a)図13A〜13Dに記載のアミノ酸配列;(b)図14A〜14Cに記載のアミノ酸配列;(c)図15A〜15Cに記載のアミノ酸配列;(d)図16A〜16Dに記載のアミノ酸配列;(e)図21A〜21Cに記載のアミノ酸配列;(f)図22A〜22Cに記載のアミノ酸配列;および(g)図24A〜24Cに記載のアミノ酸配列。
【0055】
別の好ましい実施形態は、哺乳動物における血漿の漏出を減少または阻害する方法であり、この方法は、上記の融合ポリペプチドを哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0056】
代替の好ましい実施形態は、哺乳動物におけるVEGFレセプターリガンド活性を阻害する方法であり、この方法は、上記の融合ポリペプチドの有効量を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、未改変およびアセチル化されたFlt1(1−3)−Fcタンパク質のIEFゲル分析である。未改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、そのpIが9.3より大きいため、ゲルに侵入できない。一方、アセチル化Flt1(1−3)−Fcは、ゲルに侵入し得、そしてpI5.2で平衡化する。
【図2】図2は、Matrigel(登録商標)コーティングしたプレートへの、未改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質およびアセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質の結合である。未改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、Matrigel(登録商標)における細胞外マトリックス成分に広範に結合し、一方、アセチル化Flt1(1−3)−Fcは、結合しない。
【図3】図3は、未改変Flt1(1−3)−Fc、アセチル化Flt1(1−3)−Fc、およびペグ化Flt1(1−3)−Fcの、Biacoreベースのアッセイにおける結合である。アセチル化(カラム13〜16)、ペグ化(カラム17〜20)、およびヘパリン処理したFlt1(1−3)−Fc(カラム21〜24)の各々は、コントロール(カラム1〜4)および無関係のタンパク質(カラム5〜8)と比較して、VEGF結合について、Biacoreチップに結合したFlt1(1−3)−Fcと完全に競合し得る。未改変Flt1(1−3)−Fc(カラム5〜6)は、VEGF結合について、Biacoreチップに結合したFlt1(1−3)−Fcと部分的にのみ競合するようである。しかし、この結合サンプルの0.5M NaClでの洗浄(カラム7〜8)は、Flt1(1−3)−Fcの改変形態と類似の結合プロフィールを生じ、これは未改変タンパク質が、塩洗浄によって除去され得るチップに対する非特異的結合を示すことを示す。
【図4】図4は、未改変Flt1(1−3)−Fc、アセチル化Flt1(1−3)−Fc、およびペグ化Flt1(1−3)−Fcの、ELISAベースのアッセイにおけるVEGFへの結合である。ペグ化およびアセチル化されたFlt1(1−3)−Fcタンパク質の両方は、未改変Flt1(1−3)−Fcの親和性に匹敵する親和性を伴ってVEGFに結合する。
【図5】図5は、未改変Flt1(1−3)−Fc、アセチル化Flt1(1−3)−Fc、およびペグ化Flt1(1−3)−Fcの薬物動態学的なプロフィールである。Balb/cマウス(23〜28g)に、4mg/kgの未改変、アセチル化、またはペグ化したFlt1(1−3)−Fcを皮下注射した。タンパク質注射の1、2、4、6、24時間、2日、および3日後に、このマウスの尾を出血させ、そして血清を、Flt1(1−3)−Fcタンパク質を検出するよう設計された標準的なELISAベースのアッセイでアッセイした。全てのFlt1(1−3)−Fcタンパク質 のTmaxは、6時間と24時間との間の時点であった。異なるタンパク質のCmaxは以下のようであった:未改変:0.06μg/ml〜0.15μg/ml;アセチル化:1.5μg/ml〜4.0μg/ml;およびペグ化:約5μg/ml。
【図6A】図6A〜6Bは、未改変および段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質のIEFゲル分析である。未改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、そのpIが9.3より大きいために、ゲルに侵入できない。一方、大部分の段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcサンプル(30〜100倍過剰のサンプル)は、ゲル中に移動し得、そしてアセチル化の程度に依存して、4.55と8.43とのの範囲のpIで平衡化する。
【図6B】図6A〜6Bは、未改変および段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質のIEFゲル分析である。未改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、そのpIが9.3より大きいために、ゲルに侵入できない。一方、大部分の段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcサンプル(30〜100倍過剰のサンプル)は、ゲル中に移動し得、そしてアセチル化の程度に依存して、4.55と8.43とのの範囲のpIで平衡化する。
【図7】図7は、未改変Flt1(1−3)−Fcおよび段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質の、Matrigel(登録商標)コーティングしたプレートへの結合である。無関係のコントロールタンパク質(rTie2−Fc)を用いる場合、段階アセチル化Flt1(1−3)−Fc(20および30倍過剰のサンプル)は、Matrigelコーティングしたプレートへのいずれの結合も示さないが、一方、非アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、有意な結合を示す。10倍過剰のサンプルは、減少した結合を示すが、アセチル化の程度は、細胞外マトリックス成分への結合を完全にブロックするために十分ではない。
【図8】図8は、未改変Flt1(1−3)−Fcおよび段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcの、Biacoreベースのアッセイにおける結合である。準化学量論的な比で(0.5μg/mlの未改変Flt1(1−3)または段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcのいずれか対0.2μg/mlのVEGF)、VEGFに完全に結合するためのに十分なFlt1(1−3)−Fc(未改変または段階アセチル化のいずれか)は、溶液中には存在しない。1.0μg/ml(これは、約1:1の化学量論比である)において、未改変および段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcの両方は、VEGF結合についてより良く競合し得るが、依然として利用可能なVEGFを完全に飽和するために充分なFlt1(1−3)−Fcタンパク質(未改変または段階アセチル化のいずれか)が存在しない。しかし、5.0μg/ml(これは、1:1の化学量論比よりも数倍高い)において、Flt1(1−3)−Fcおよび段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質の両方は、アセチル化の程度にかかわらず、VEGFを飽和し得る。
【図9】図9は、未改変Flt1(1−3)−Fcおよび段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcの薬物動態学的なプロフィールである。Balb/cマウス(23〜28g)に、4mg/kgの未改変または段階アセチル化Flt1(1−3)−Fcの10、20、40、60および100倍過剰なサンプルを皮下注射した(未改変、10、20および40倍過剰のサンプルについて3匹のマウス、ならびに60および100倍過剰のサンプルについて2匹のマウス)。注射の1、2、4、6、24時間、2日および3日後に、このマウスの尾を出血させた。この血清を、Flt1(1−3)−Fcを検出するために設計されたELISAベースのアッセイでアッセイした。試験したFlt1(1−3)−Fcタンパク質についての全てのTmaxは、6時間の時点であったが、Cmaxは以下のようであった:未改変Flt1(1−3)−Fc:0.06μg/ml;10倍過剰サンプル:−0.7μg/ml、20倍過剰サンプル−2μg/ml、40倍過剰サンプル−4μg/ml、60倍過剰サンプル−2μg/ml、100倍過剰サンプル−1μg/ml。
【図10A】図10A〜10Dは、Flt1(1−3)−Fcの核酸および推定されたアミノ酸配列である。
【図10B】図10Aの続きを示す図である。
【図10C】図10Bの続きを示す図である。
【図10D】図10Cの続きを示す図である。
【図11】図11は、Flt1の構造の概略図である。
【図12】図12Aおよび12Bは、Flt1のIgドメイン2およびIgドメイン3のアミノ酸配列の親水性分析である。
【図13A】図13A〜13Dは、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcの核酸および推定されたアミノ酸配列である。
【図13B】図13Aの続きを示す図である。
【図13C】図13Bの続きを示す図である。
【図13D】図13Cの続きを示す図である。
【図14A】図14A〜14Cは、Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fcの核酸および推定されたアミノ酸配列である。
【図14B】図14Aの続きを示す図である。
【図14C】図14Bの続きを示す図である。
【図15A】図15A〜15Cは、Mut3:Flt1(2−3)−Fcの核酸および推定されたアミノ酸配列である。
【図15B】図15Aの続きを示す図である。
【図15C】図15Bの続きを示す図である。
【図16A】図16A〜16Dは、Mut4:Flt1(1−3R->N)−Fcの核酸および推定されたアミノ酸配列である。
【図16B】図16Aの続きを示す図である。
【図16C】図16Bの続きを示す図である。
【図16D】図16Cの続きを示す図である。
【図17】図17は、Biacoreベースのアッセイにおける、未改変Flt1(1−3)−Fc、塩基性領域欠失変異体Flt1(1−3)−Fc、およびFlt1(1−3)R->N変異体タンパク質の結合である。準化学量論的な比で(0.25μg/mlの未改変、アセチル化または遺伝的に改変されたサンプルのFlt(1−3)−Fc対01.μg/mlのVEGF)、Biacoreチップに固定化されたFlt1(1−3)−FcへのVEGFの結合をブロックするための充分なFlt1(1−3)−Fcタンパク質が存在しない。0.5μg/mlの未改変、アセチル化または遺伝的に改変されたFlt1(1−3)−Fcタンパク質において、化学量論比は約1:1であり、そしてBiacoreチップへのVEGF結合をブロックする増大した能力が存在する。1.0μg/mlの未改変、アセチル化または遺伝的に改変されたFlt1(1−3)−Fcタンパク質(これは、約10:1の化学量論比である)において、Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、BiacoreチップへのVEGFの結合をブロックし得るが、これらは等価ではない。未改変、アセチル化、およびMut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcは、VEGF結合をブロックする能力において本質的に等しいが、一方で、Mut4:Flt1(1−3R->N)−Fcは、結合のブロックにおいて幾分効率が低い。
【図18】図18は、未改変Flt1(1−3)−Fc、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc、Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fc、およびFlt1(2−3)変異体タンパク質のMatrigel(登録商標)コーティングしたプレートへの結合である。未改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、これらのウェルに強く結合し、Mut3:Flt1(2−3)−Fcタンパク質は幾分弱く結合し、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcタンパク質はさらにより弱く結合し、そしてMut2:Flt1(2−3ΔB)−Fcタンパク質は、最良のプロフィールを示し、他の任意の変異体タンパク質よりもより弱く結合する。Mut4:Flt1(1−3R->N)−Fcグリコシル化変異体タンパク質は、Matrigelアッセイ上で最低限の利点のみを示す。
【図19】図19は、未改変Flt1(1−3)−Fc、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc、Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fc、およびFlt1(2−3)変異体タンパク質の、ELISAベースのアッセイにおける結合である。試験した濃度において、未改変Flt1(1−3)−Fc、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc、Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fc、およびFlt1(2−3)変異体タンパク質は、同様にVEGFに結合する。
【図20】図20は、未改変Flt1(1−3)−Fc、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc、Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fc、およびFlt1(2−3)変異体タンパク質の薬物動態学的なプロフィールである。これらの試薬についてのCmaxは以下のようであった:未改変Flt1(1−3)−Fc −0.15μg/ml;40倍モル過剰のアセチル化Flt1(1−3)Fc -1.5μg/ml;およびMut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc −0.7μg/ml。
【図21A】図21A〜21Cは、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)といわれる改変されたFlt1レセプターのヌクレオチドおよび推定されたアミノ酸配列である。
【図21B】図21Aの続きを示す図である。
【図21C】図21Bの続きを示す図である。
【図22A】図22A〜22Cは、Flt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)といわれる改変されたFlt1レセプターのヌクレオチドおよび推論されたアミノ酸配列である。
【図22B】図22Aの続きを示す図である。
【図22C】図22Bの続きを示す図である。
【図23】図23は、細胞外マトリックス(ECM)アッセイである。このアッセイの結果は、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)タンパク質が、Flt1(1−3)−Fcタンパク質と比較して、ECMに対してかなり粘着性が低いことを実証する。
【図24A】図24A〜24Cは、VEGFR1R2−FcΔC1(a)といわれる改変されたFlt1レセプターのヌクレオチドおよび推定されたアミノ酸配列である。
【図24B】図24Aの続きを示す図である。
【図24C】図24Bの続きを示す図である。
【図25A−B】図25A〜25Cは、リン酸化アッセイである。Flt1(1−3)−Fc、Flt1(1−3)−Fc(A40)または一過性のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)のいずれかの1.5モル過剰において、コントロール培地のチャレンジと比較して、これらの3つの改変されたFlt1レセプターによるレセプター刺激の完全なブロックが存在する。対照的に、一過性のFlt1D2VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、VEGF陽性コントロールのチャレンジと比較して、このモル過剰では有意なブロックを示さなかった。同様の結果が図25Bにおいて見られ、改変されたFltレセプターはVEGF165リガンドの3倍モル過剰である。図25Cにおいて、改変されたFlt1レセプターは、VEGF165リガンドの6倍モル過剰であり、一過性のFlt1D2VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、ここで、細胞表面レセプターのVEGF165誘導刺激を部分的にブロックすることを示し得る。
【図25C】図25A〜25Cは、リン酸化アッセイである。Flt1(1−3)−Fc、Flt1(1−3)−Fc(A40)または一過性のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)のいずれかの1.5モル過剰において、コントロール培地のチャレンジと比較して、これらの3つの改変されたFlt1レセプターによるレセプター刺激の完全なブロックが存在する。対照的に、一過性のFlt1D2VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、VEGF陽性コントロールのチャレンジと比較して、このモル過剰では有意なブロックを示さなかった。同様の結果が図25Bにおいて見られ、改変されたFltレセプターはVEGF165リガンドの3倍モル過剰である。図25Cにおいて、改変されたFlt1レセプターは、VEGF165リガンドの6倍モル過剰であり、一過性のFlt1D2VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、ここで、細胞表面レセプターのVEGF165誘導刺激を部分的にブロックすることを示し得る。
【図26】図26A〜26Bは、リン酸化アッセイである。VEGF165リガンド刺激によるチロシンリン酸化VEGFR2(Flk1)のウエスタンブロットによる検出は、細胞表面レセプターが、1および2倍モル過剰(図26A)または3および4倍モル過剰(図26B)の、一過性のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)、安定なFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)、または一過性のVEGFR1R2−FcΔC1(a)のいずれかでプレインキュベートしたVEGF165を有するチャレンジサンプルによってリン酸化されないことを示す。試験された全ての改変Flt1レセプター濃度において、プレインキュベーションの間にVEGF165リガンドの完全な結合があり、これは、コントロール培地チャレンジと比較して、未結合VEGF165による細胞表面レセプターの検出可能な刺激を生じない。
【図27】図27は、MG/R2細胞増殖アッセイである。以下の改変FltレセプターFlt1(1−3)−Fc、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)、ならびに陰性コントロールとしてTie2−Fcといわれる無関係のレセプターを、40nM〜20pMから滴定し、そしてこの細胞上で1時間、37℃でインキュベートした。次いで、規定培地中のヒト組換えVEGF165を、1.56nMの濃度で全てのウェルに添加した。陰性コントロールレセプターTie2−Fcは、いずれの濃度でもVEGF165誘導細胞増殖をブロックしなかったが、一方、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)は、0.8nMの最大値の半分の用量で1.56nM VEGF165をブロックする。Flt1(1−3)−FcおよびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、約2nMの最大の半分の用量を用いるこのアッセイにおけるVEGF165のブロックにおいて低効率である。VEGF165単独は、1.2の吸光度単位を読み取り、そしてバックグラウンドは0.38吸光度単位である。
【図28】図28は、結合化学量論のBiacore分析である。結合化学量論は、1ng/mlと等価の1000RUの転換因子を使用して、固定されたFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)に対する結合したVEGF165のモル比として計算された。この結果は、1つのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)分子当たりの1つのVEGF165ダイマー分子の結合化学量論を示した。
【図29】図29は、サイズ排除クロマトグラフィーの化学量論である。1nMの濃度のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)(Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)/VEGF165相互作用のKDよりも1000倍高いと推定した)を、変化する濃度のVEGF165と混合した。インキュベーションの後、溶液中の遊離Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の濃度を測定した。このデータは、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)溶液への1nMのVEGF165の添加が、VEGF165表面へのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の結合を完全にブロックすることを示す。この結果は、1つのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)分子当たりの1つのVEGF165分子の結合化学量論を示唆した。
【図30】図30は、サイズ排除クロマトグラフィーの化学量論である。1nMの濃度のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)(Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)/VEGF165相互作用のKDよりも1000倍高いと推定した)を、変化する濃度のVEGF165と混合した。インキュベーションの後、溶液中の遊離Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の濃度を測定した。このデータは、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)溶液への1nMのVEGF165の添加が、VEGF165表面へのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の結合を完全にブロックすることを示す。この結果は、1つのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)分子当たりの1つのVEGF165分子の結合化学量論を示唆した。
【図31】図31は、ネイティブ条件下でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。ピーク#1はFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体を表し、そしてピーク#2は未結合VEGF165を表す。1.1mlと1.2mlとの間の溶出した画分を合わせ、そしてこの複合体を解離させるためにグアニジウム塩酸塩(GuHCl)を添加して、4.5Mの最終濃度にした。
【図32】図32は、解離条件下でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。レセプター−リガンド複合体の成分を分離するため、およびそのモル比を決定するために、50μlの解離複合体を、6MのGuHCl中で平衡化したSuperose 12 PC 3.2/30にロードし、そして溶出した。ピーク#1はFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)を表し、そしてピーク#2はVEGF165を表す。
【図33】図33は、オンライン光散乱(On−Line Light Scattering)を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。MiniDawnオンライン光散乱検出器(Wyatt Technology,Santa Barbara,California)および屈折率(RI)検出器(Shimadzu,Kyoto,Japan)を備えるサイズ排除クロマトグラフィーカラムを使用して、レセプター−リガンド複合体の分子量(MW)を決定した。図33に示すように、溶出プロフィールは2つのピークを示す。ピーク番号1は、レセプター−リガンド複合体を表し、そしてピーク番号2は、未結合VEGF165を表す。MWを、LSおよびRIシグナルから算出した。同じ手順を使用して、レセプター−リガンド複合体の個々の成分のMWを決定した。これらの決定の結果は、以下の通りである:ピーク位置でのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体のMWは、157300(図33)であり、ピーク位置でのVEGF165のMWは、44390(図34)であり、そしてピーク位置でのR1R2のMWは、113300である(図35)。
【図34】図34は、オンライン光散乱(On−Line Light Scattering)を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。MiniDawnオンライン光散乱検出器(Wyatt Technology,Santa Barbara,California)および屈折率(RI)検出器(Shimadzu,Kyoto,Japan)を備えるサイズ排除クロマトグラフィーカラムを使用して、レセプター−リガンド複合体の分子量(MW)を決定した。図33に示すように、溶出プロフィールは2つのピークを示す。ピーク番号1は、レセプター−リガンド複合体を表し、そしてピーク番号2は、未結合VEGF165を表す。MWを、LSおよびRIシグナルから算出した。同じ手順を使用して、レセプター−リガンド複合体の個々の成分のMWを決定した。これらの決定の結果は、以下の通りである:ピーク位置でのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体のMWは、157300(図33)であり、ピーク位置でのVEGF165のMWは、44390(図34)であり、そしてピーク位置でのR1R2のMWは、113300である(図35)。
【図35】図35は、オンライン光散乱(On−Line Light Scattering)を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。MiniDawnオンライン光散乱検出器(Wyatt Technology,Santa Barbara,California)および屈折率(RI)検出器(Shimadzu,Kyoto,Japan)を備えるサイズ排除クロマトグラフィーカラムを使用して、レセプター−リガンド複合体の分子量(MW)を決定した。図33に示すように、溶出プロフィールは2つのピークを示す。ピーク番号1は、レセプター−リガンド複合体を表し、そしてピーク番号2は、未結合VEGF165を表す。MWを、LSおよびRIシグナルから算出した。同じ手順を使用して、レセプター−リガンド複合体の個々の成分のMWを決定した。これらの決定の結果は、以下の通りである:ピーク位置でのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体のMWは、157300(図33)であり、ピーク位置でのVEGF165のMWは、44390(図34)であり、そしてピーク位置でのR1R2のMWは、113300である(図35)。
【図36】図36は、ペプチドマッピングおよびグリコシル化分析である。Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)のジスルフィド構造およびグリコシル化部位を、ペプチドマッピング法により決定した。Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)中に合計10のシステインが存在する;それらのうちの6つは、Fc領域に属する。Cys27はCys76とジスルフィド結合する。Cys121は、Cys182とジスルフィド結合する。Fc領域中の始めの2つのシステイン(Cys211およびCys214)は、別のFc鎖中の同じ2つのシステインと分子間ジスルフィド結合を形成する。しかし、ジスルフィド結合が同じシステイン間(例えば、Cys211とCys211)で、またはCys211とCys214との間で生じるか否かは、決定され得ない。Cys216は、Cys306とジスルフィド結合する。Cys352は、Cys410とジスルフィド結合する。 Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)中に、5つの可能なN結合するグリコシル化部位が存在し、そしてそれらは種々の程度までグリコシル化されることが見出される。完全なグリコシル化は、Asn33、Asn193およびAsn282において観察される。部分的なグリコシル化は、Asn65およびAsn120上で観察される。グリコシル化の部位は、図において下線により強調される。
【図37】図37は、Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)の薬物動態である。Balb/cマウスを、4mg/kgのFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を一過性に発現したCHO、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を安定に発現したCHOおよびCHO一過性発現されるVEGFR1R2−FcΔC1(a)で皮下的に注射した。マウスを、注射の1、2、4、6、24時間、2日、3日、6日後に尾部出血した。Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)を検出するために設計されたELISAにおいて、血清をアッセイした。Flt1(1−3)−Fc(A40)のTmaxは6時間であり、一方、一過性および安定なFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)および一過性VEGFR1R2−FcΔC1(a)についてのTmaxは24時間であった。Flt1(1−3)−Fc(A40)についてのCmaxは8μg/mlであり、両方の一過性物(Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a))について、Cmaxは、18μg/mlであり、そして安定なVEGFR1R2−FcΔC1(a)についてのCmaxは、30μg/mlであった。
【図38】図38は、Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)の薬物動態である。Balb/cマウスを、4mg/kgのFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を一過性に発現したCHOおよびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を一過性に発現したCHOで皮下的に注射した。マウスを注射の1、2、5、6、7、8、12、15および20日後に尾部出血した。血清を、Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を検出するために設計されたELISAにおいてアッセイした。Flt1(1−3)−Fc(A40)は、5日後には、もはや血清中で検出され得ないが、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、15日間以上検出可能であった。
【図39】図39は、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)のインビボでHT−1080線維肉腫腫瘍増殖を阻害する能力である。隔日または1週間に2回のFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)でのSCIDマウスの処置(25mg/Kg)は、皮下HT−1080線維肉腫腫瘍の増殖を有意に減少した。
【図40】図40は、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)のインビボでC6神経膠腫腫瘍増殖を阻害する能力である。隔日または1週間に2回のFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)でのSCIDマウスの処置は、2.5mg/Kg程度に低い用量で、皮下C6神経膠腫腫瘍の増殖を有意に減少した。
【図41】図41は、EVGF誘導性の子宮の透過性亢進である。思春期前の雌ラットにおいて排卵を誘導するために皮下注射されたPMSG(5IU)は、2日後にエストラジオールのサージを生じ、これは、次に子宮においてVEGFの誘導を引き起こした。この誘導は、子宮の透過性亢進を生じ、そして子宮の濡れを増加した。PMSG注射の1時間後における25mg/kgでのFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)の皮下注射は、子宮の湿重量の増加の約50%の阻害を生じた。
【図42】図42A〜42Bは、読み出し情報としてプロゲステロンを使用する黄体新脈管形成の評価である。PMSGを皮下注射(5IU)して、思春期前の雌ラットにおいて排卵を誘導し、これは、移植のために子宮を調製するために血流中にプロゲステロンを分泌する血管の高密度なネットワークを含む、十分に機能する黄体を生じる。黄体中の新脈管形成の誘導は、VEGFを必要とする。得られたプロゲステロンのレベルは、約5ng/mlであり、そしてPMSG後には25〜40ng/mlまで誘導され得る。PMSG注射の1時間後における25mg/kgまたは5mg/kgでのFlt1(1−3)−Fc(A40)またはFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の皮下注射は、4日目におけるプロゲステロン誘導の完全な阻害を生じた。
【発明を実施するための形態】
【0058】
(発明の詳細な説明)
治療候補物としてアンタゴニストの考察に適切である薬物動態プロフィールを有する、レセプターに基づくVEGFアンタゴニストを生成することは、当該分野で長い間常に問題であった。初めに出願者は、他の公知のレセプターベースのVEGFアンタゴニストと比較して改良された薬物動態特性を示すVEGF活性をアンタゴナイズし得るキメラポリペプチド分子を本明細書中に記載する。従って、本明細書中に記載されるキメラポリペプチド分子は、最初に、治療における使用のための適切な分子を提供する。ここでは、VEGFのアンタゴニストは、所望の結果である。
【0059】
本発明は、Flt1レセプターの改変された細胞外リガンド結合ドメインをIgGのFc領域に融合することにより形成される新規なキメラポリペプチド分子を提供する。
【0060】
この細胞外リガンド結合ドメインは、細胞膜における本来のコンフォメーションにおいて、それがその同族リガンドと接触し得る場合、細胞外へ配向されるレセプターの一部として規定される。細胞外リガンド結合ドメインは、レセプターの膜貫通ドメインと関連する疎水性アミノ酸またはレセプターの細胞内ドメインと関連する任意のアミノ酸を含まない。一般に、レセプターの細胞内ドメインまたは細胞質ドメインは、通常、正に荷電したアミノ酸または極性アミノ酸(すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸)からなる。前述の15〜30(主に、疎水性または非極性アミノ酸(すなわち、ロイシン、バリン、イソロイシンおよびフェニルアラニン))は、膜貫通ドメインを含む。細胞外ドメインは、アミノ酸の疎水性膜貫通ストレッチの前方に位置するアミノ酸を含む。通常、膜貫通ドメインは、正に荷電したアミノ酸または極性アミノ酸(例えば、リジンまたはアルギニン)に隣接する。von Heijneは、詳細な法則を公開した(von Heijne,1995,BioEssays 17:25−30を参照のこと)。この結果は、所定のレセプターのどのアミノ酸が、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインに属するかを決定する場合に、当業者により通常参照される。あるいは、インターネット上のウェブサイト(例えば、http://ulrec3.unil.ch/software/TMPRED_form.html)は、利用可能となっており、タンパク質ドメインについて推定することについての情報をタンパク質化学者に提供する。
【0061】
本発明は、適切な宿主細胞へ導入される場合、キメラポリペプチド分子を発現し得るベクターへ挿入されるキメラポリペプチド分子をコードする核酸分子の構築物を提供する。適切な宿主細胞としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。ベクターへのDNAフラグメントの挿入について、当業者に公知である方法のいずれかを使用して、転写/翻訳の制御シグナルの制御下でキメラポリペプチド分子をコードする発現ベクターを構築し得る。これらの方法としては、インビトロでの組換えDNAおよび合成技術、ならびにインビボでの組換え(遺伝子組換え)(Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory;Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編,Greene Publ.Assoc.,Wiley−Interscience,NYを参照のこと)が挙げられ得る。
【0062】
キメラポリペプチド分子をコードする核酸分子の発現は、キメラポリペプチド分子が、組換えDNA分子で形質転換された宿主において発現されるように、第2の核酸配列により調節され得る。例えば、本明細書中に記載されるキメラポリペプチド分子の発現は、当該分野で公知の任意のプロモーター/エンハンサーエレメントにより制御され得る。キメラポリペプチド分子の発現を制御するために使用され得るプロモーターとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:Squintoら(1991,Cell 65:1−20)において記載されるような末端反復配列;SV40初期プロモーター領域(BernoistおよびChambon,1981,Nature 290:304−310)、CMVプロモーター、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列中に含まれる、M−MuLV 5’末端反復のプロモーター(Yamamotoら,1980,Cell 22:787−797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:144−1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら,1982,Nature 296:39−42);β−ラクタマーゼプロモーター(Villa−Kamaroffら,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727−3731)またはtacプロモーター(DeBoerら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21−25、Scientific American,1980,242:74−94の「Useful proteins from recombinant bacteria」をもまた参照のこと)などの原核生物発現ベクター、酵母または他の真菌由来のプロモーターエレメント(例えば、Gal4プロモーター)、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PKG(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターおよび以下の動物の転写制御領域(これは、組織特異性を示し、そしてトランスジェニック動物において利用されてきた):膵臓腺房細胞において活性であるエステラーゼI遺伝子制御領域(Swiftら,1984,Cell 38:639−646;Ornitzら,1986,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.50:399−409;MacDonald,1987,Hepatology 7:425−515);膵臓β細胞において活性であるインスリン遺伝子制御領域(Hanahan,1985,Narure 315:115−122)、リンパ球において活性である免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら,1984,Cell 38:647−658;Adamesら,1985,Nature 318:533−538;Alexanderら,1987,Mol.Cell.Biol.7:1436−1444),精巣、胸、リンパ球および肥満細胞において活性であるマウス乳腺癌ウイルス制御領域(Lederら,1986,Cell 45:485−495)、肝臓において活性であるアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertら,1987,Genes and Devel.1:268−276)、肝臓において活性であるα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら,1985,Mol.Cell.Biol.5:1639−1648;Hammarら,1987,Science 235:53−58);肝臓において活性であるα1−アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyら,1987,Gene and Devel.1:161−171)、骨髄性細胞において活性であるβ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramら,1985,Nature 315:338−340;Kolliasら,1986,Cell 46:89−94);脳内の稀突起神経膠細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら,1987,Cell 48:703−712);骨格筋において活性であるミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Shani,1985,Nature 314:283−286)および視床下部において活性である性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonら,1986,Science 234:1372−1378)。
【0063】
従って、本発明に従って、本明細書中に記載されるようなキメラポリペプチド分子をコードする核酸を含む細菌または真核生物の宿主において複製され得る発現ベクターは、宿主をトランスフェクトし、それにより、キメラポリペプチド分子を産生するためにそのような核酸を直接発現するために使用され、次いでこれは、生物学的に活性な形態で回収され得る。本明細書中で使用される場合、生物学的に活性な形態は、VEGFに結合し得る形態を含む。
【0064】
本明細書中に記載されるキメラ核酸分子を含む発現ベクターは、以下の3つの一般的アプローチにより同定され得る:(a)DNA−DNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在、および(c)挿入された配列の発現。第1のアプローチにおいて、発現ベクターに挿入された外来遺伝子の存在は、挿入されたキメラポリペプチド分子配列に対して相同である配列を含むプローブを使用するNDA−DNAハイブリダイゼーションにより検出され得る。第2のアプローチにおいて、組換えベクター/宿主系は、ベクター中の外来遺伝子の挿入により引き起こされる特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける閉塞体の形成など)の存在または非存在に基づいて同定されかつ選択され得る。例えば、キメラポリペプチド分子のDNA配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合、挿入物を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在により同定され得る。第3のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、組換え体により発現される外来遺伝子産物をアッセイすることにより同定され得る。このようなアッセイは、例えば、キメラポリペプチド分子の物理的特性または機能的特性に基づき得る。
【0065】
本発明の細胞は、キメラポリペプチド分子を、一過性、または好ましくは連続的かつ持続的に発現し得る。
【0066】
キメラポリペプチド分子は、任意の技術により精製され得、この技術は、引き続く安定で生物学的に活性なキメラポリペプチド分子の形成を可能にする。例えば、そして限定のためではなく、この因子は、これらが8Mグアニジウム塩酸塩および透析により定量的に抽出され得る、可溶性タンパク質としてかまたは封入体としてのいずれかで細胞から回収され得る(例えば、Builderら,米国特許第5,663,304号を参照のこと)。この因子をさらに精製するために、従来のイオン交換フロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーまたはゲル濾過が使用され得る。
【0067】
本発明の1つの実施形態では、第1の成分をコードするヌクレオチド配列は、第2の成分をコードするヌクレオチド配列の上流である。本発明の別の実施形態では、第1の成分をコードするヌクレオチド配列は、第2の成分をコードするヌクレオチド配列の下流である。本発明のさらなる実施形態は、調製され得、ここで第1、第2および第3の融合ポリペプチド成分の順序は、再配列される。例えば、第1の成分をコードするヌクレオチド配列は、1と指定される場合、第2の成分をコードするヌクレオチド配列は、2と指定され、そして第3の成分のヌクレオチド配列は、3と指定され、次いで5’から3’へ読み取る場合、本発明の単離された核酸におけるその成分の順序は、以下の6つの組み合わせのいずれかであり得る:1、2、3;1、3、2;2、1、3;2、3、1;3、1、2または3、2、1。
【0068】
本発明はまた、診断的および治療的用途を有する。本発明の特定の実施形態では、本明細書中に記載されるキメラポリペプチド分子の機能または発現における異常を検出する方法は、障害の診断において使用され得る。他の実施形態では、キメラポリペプチド分子またはキメラポリペプチド分子と結合するアゴニストもしくはアンタゴニストの操作は、疾患の処置において使用され得る。さらなる実施形態では、キメラポリペプチド分子は、その標的に対する結合因子の結合をブロックする因子として使用される。
【0069】
制限ではなく例えの目的で、本発明の方法は、血管透過性、水腫または感染(例えば、傷害に関連する脳水腫、発作または腫瘍);感染性疾患と関連する水腫(例えば、乾癬または関節炎(慢性関節リウマチが挙げられる));喘息;火傷に関連する全身性水腫;腫瘍、感染または外傷に関連する腹水および胸水;慢性気道感染;毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome);セプシス;タンパク質の増加した漏出と関連する腎臓疾患;および眼の疾患(例えば、年齢が関連する黄斑変性および糖尿病網膜症)により特徴付けられる臨床的状態を処置する際に有用であり得る。
【0070】
Flt1(1−3)−Fcのアミノ酸配列分析は、塩基性アミノ酸残基(リジン)の異常に高い数(46)の存在を明らかにした。Flt1(1−3)−FcのIEF分析は、このタンパク質が9.3を超えるpIを有することを示し、このことは、このタンパク質が、非常に塩基性であるという推測を確認する。Flt1(1−3)−Fcタンパク質の塩基性の性質が、そのタンパク質に細胞外マトリクス成分に結合させるということを生じ、およびマウスに注入される場合、その相互作用が、Flt1(1−3)−Fcにより示される極端に短い検出可能な循環血清の半減期の要因であるということを仮定する。この仮定を試験するために、Flt1(1−3)−Fcタンパク質を、塩基の荷電を減少するために、リジン残基でアセチル化した。次いで、アセチル化したFlt1(1−3)−Fcを、下記に記載されるアッセイにおてい試験した。
【0071】
以下の実施例は、限定の目的ではなく、例示の目的で提供される。
【実施例】
【0072】
(実施例)
(実施例1:CHO K1細胞におけるFlt1(1−3)−Fcタンパク質の発現)
標準的な分子生物学技術(例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory)、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら(編)Greene Publ.Assoc.,Wiley−Interscience,NY)を参照のこと)を使用して、Flt1(1−3)−Fcをコードする遺伝子を、CMVプロモーターの下流の多重クローニング部位で発現ベクターpEE14.1(Lonza Biologics,pIc)に挿入した。リポフェクタミン(Gaithersburg,MD)を用いて、CHO K1細胞をpEE14.1/Flt1(1−3)−Fc DNA構築物でトランスフェクトした。トランスフェクトしたCHO K1細胞を、グルタミンを含まないDMEM(JRH,Kansas City,MO)(Sigma Inc.,St.Louis,MO製の25μM メチオニンスルホキシイミン(MSX)を含有する)中で増殖させ、そして高組換えタンパク質発現因子を、標準的なイムノアッセイ(これはヒトFcを捕捉および検出する)を用いて精選した100を超えるコロニー単離物からCHO K1細胞上清をスクリーニングすることにより得た。選択した精選クローンを、100μM MSXの存在下で増幅し、次いで増幅したクローンを2回スクリーニングした。最も高い産生性のクローンは、55pg/細胞/日の組換えFlt(1−3)−Fcタンパク質の特異的生産性を有した。
【0073】
選択したクローンを、上記の細胞培養培地を用いて、225cm2 T−フラスコ(Corning,Acton,MA)中に展開し、次いで8.5Lローラーボトル(Corning,Acton,MA)中に展開した。標準的なトリプシン処理によって細胞をローラーボトルから取り出し、そして3.5Lの懸濁培地に入れた。この懸濁培地は、5%ウシ胎仔血清(Hyclone Labs,Logan,UT製のFBS)、100μM MSXおよび5L Celligenバイオリアクター(New Brunswick Scientific,New Brunswick,NJ)中、0.3×106細胞/mLの密度でのGS補充(JRH Scientific,Kansas City,MO)を含む、グルタミンを含まないISCHO培地(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)から構成される。細胞が3.6×106/mLの密度に達し、そして懸濁液に適応した後、60Lバイオリアクター(ABEC,Allentown,PA)に、5%ウシ胎仔血清を含む20LのISCHO培地中、0.5×106細胞/mLの密度で細胞を移した。2日後、さらに20LのISCHO+5%ウシ胎仔血清をこのバイオリアクターに加えた。細胞をさらに2日間増殖させると、3.1×106細胞/mLの最終濃度に達し、そして収集時の最終Flot1(1−3)−Fc濃度は95mg/Lであった。収集時に、0.45μm Prostak Filter(Millipore,Inc.,Bedford,MA)を用いるタンジェンシャルフローフィルトレーション(tangential flow filtration)によって細胞を取り出した。
【0074】
(実施例2:CHO K1から得たFltl(1−3)−Fcタンパク質の精製)
Flt1(1−3)−Fcタンパク質を、まずアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。プロテインAカラムを使用して、高い特異性でこの分子のFc部分を結合させた。次いで、このアフィニティー精製タンパク質を濃縮し、そしてSECカラムを通した。次いで、このタンパク質を処方緩衝液に溶出した。以下は、これらの手順を詳細に記載する。
【0075】
(材料および方法)
PBS(これは、Life Technologies,Gaithersburg,MDから10×濃度で入手した)を除くすべての化学薬品は、J.T.Baker,Phillipsburg,NJから入手した。Protein A Fast FlowおよびSuperdex200調製グレード樹脂は、Pharmacia,Piscataway,NJから入手した。タンパク質濃縮のための装置および膜は、Millipore,Bedford,MAから入手した。
【0076】
Flt1(1−3)−Fcタンパク質を含有する約40Lの0.45μm濾過したCHO馴化培地を、PBSで平衡化した290mL Protein A Fast Flowカラム(10cm直径)に適用した。このカラムを、350mM NaClおよび0.02% CHAPSを含むPBSで洗浄し、そして結合タンパク質を、10mM Na2HPO4を含む20mMクエン酸で溶出した。溶出物中の単一ピークを集め、そしてそのpHを、1M NaOHを用いて中性まで上昇させた。10K再生セルロース膜を用いて、タンジェンシャルフローフィルトレーションおよび攪拌細胞濃縮の両方によって、溶出画分を約9mg/mLまで濃縮した。凝集物および他の混入物を除去するために、濃縮したタンパク質を、Superdex 200調製グレード樹脂を充填したカラム(10cm×55cm)に適用し、そして5%グリセロール含有PBS中で行った。主要ピーク画分をプールし、滅菌濾過し、アリコートし、そして−80℃で保存した。
【0077】
(実施例3:Flt1(1−3)−Fcタンパク質のアセチル化)
2ミリグラムのFlt1(1−3)−Fcタンパク質を、スルホ−NHS−アセテート改変キット(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL,カタログ#26777)とともに提供される使用説明書に記載されるようにアセチル化した。
【0078】
(実施例4:アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質の特徴付け)
((a.)IEF分析):Flt1(1−3)−Fcおよびアセチル化Flt1 (1−3)−Fcを、標準的なIEF分析により分析した。図1に示されるように、Flt1(1−3)−Fcタンパク質はゲル中に移動し得ず、従って標準における最も高いpIである9.3よりも大きいpIを有するにちがいない。しかし、アセチル化Flt1(1−3)−Fcはゲル内に移動し得、そして約5.2のpIで平衡になる。この結果は、アセチル化がタンパク質の正味の正電荷を減少させ、従ってそのpIをかなり減少させることを示す。
【0079】
((b.)細胞外マトリックス成分への結合)
細胞外マトリックス成分への結合について試験するために、Flt1(1−3)−Fcおよびアセチル化Flt1(1−3)−Fcを、細胞外マトリックス成分との相互作用を模倣するように設計されたアッセイにおいて試験した。このアッセイにおいて、96−ウェル組織培養プレートをMatrigel(Biocoat MATRIGEL(登録商標)マトリックス薄層96ウェルプレート、カタログ#40607,Becton Dickinson Labware,Bedford,MA)でコートする。このプレートを種々の濃度のFlt1(1−3)−Fc、アセチル化Flt1(1−3)−Fcのいずれかとインキューベートするか、またはrTie2−Fc(無関係なコントロール)タンパク質をウェルに加える。このプレートを、室温または37℃のいずれかで1〜2時間インキュベートし、次いで結合タンパク質の検出を、二次的なアルカリホスファターゼ結合抗ヒトFc抗体をこのウェルに加えることによって達成する。最後に、アルカリホスファターゼ基質をこのウェルに加え、そして光学密度を測定する。図2は、このアッセイの結果を示す。無関係なコントロールタンパク質rTie2−Fcと同様に、アセチル化Flt1(1−3)−Fcは、Matrigelコートしたプレートへのいかなる結合も示さないが、非アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質は有意な結合を示す。この結果は、塩基性アミノ酸残基のアセチル化は、正に荷電したタンパク質とインビボにさらされた負に荷電した細胞外マトリックス成分との間に存在する電荷相互作用を妨げるための有効な方法であることを示す。
【0080】
(実施例5:Flt1(1−3)−Fcタンパク質のペグ化(pegylation))
タンパク質のペグ化(ポリエチレングリコール−PEG)は、安定性およびバイオアベイラビリティーを増強することによってそれらのインビボでの効力を増加させ、一方で免疫原性を最小化することが示されてきた(上記で引用された参考文献を参照のこと)が、大きすぎて腎糸球体により濾過できないペグ化分子が、それらの薬物動態学的特性を高めることは、反対の直観である。理論に拘束されることなく、本出願人は、Flt1(1−3)−Fc分子のペグ化が、多分、その正電荷を変化させたり、Flt1(1−3)−FcのpIを減少させることによるのではなく、むしろ正電荷が細胞外マトリックスと相互作用することを物理的に遮蔽することによって、薬物動態学的特性を高め得ることを想定した。本出願人は、上記のように20K PEGの鎖を結合することによって、Flt1(1−3)−Fc分子の薬物動態学的特性を向上させるように試みることを決定した。
【0081】
(材料および方法)
CHO細胞由来の精製Flt1(1−3)−Fc(上記を参照のこと)を以下のペグ化実験において使用した。官能化PEGは、Shearwater Polymers,Huntsville,ALから;ビシンは、Sigma,St Louis,MOから;Superose6カラムは、Pharmacia,Piscataway,NJから;PBSは、10×濃縮物としてLife Technologies,Gaithersburg,MDから;グリセロールはJ.T.Baker,Phillipsburg,NJから;およびビス−TrisプレキャストゲルはNovex,CAから入手した。
【0082】
アミン特異的末端部分で官能化した20K PEG鎖を、小スケール反応研究において使用した。この研究は、PEG:タンパク質化学量論を変化させる異なる反応条件を評価するために設定した。これらの反応および標準的なSDS−PAGE上でのサンプル分析に基づいて、1.5 mg/mLの濃度のFlt1(1−3)−Fcを、20K SPA−PEG(PEGスクシンイミジルプロピオネート)分子と、1:6のPEG対Flt1(1−3)−Fcモノマー比でpH8.1で反応させた。この反応を8℃、終夜で進行させた。最初の精製のために、反応生成物を、5%グリセロール含有PBSで平衡化した10mm×30cm Superose6カラムに適用した。このカラムは、ペグ化の程度に基づいてペグ化したFlt1(1−3)−Fc分子を分離するようであった。主にモノペグ化およびジペグ化した二量体Flt1(1−3)−Fcであると思われる画分(還元および非還元SDS−PAGEゲル上でのバンド形成パターンにより判断した場合)に対応する画分を、プールした。タンパク質濃度は、280nmでの吸収を測定することによって決定した。ペグ化したFlt1(1−3)−Fcタンパク質は、滅菌濾過し、アリコートし、そして−40℃で保存した。
【0083】
(実施例6:Biacoreに基づくアッセイにおける非改変、アセチル化、およびペグ化したFlt1(1−3)−Fcの結合)
非改変、アセチル化、およびペグ化したFlt1(1−3)−Fcタンパク質を、Biacoreに基づくアッセイにおいて試験して、Flt1リガンド(VEGF)に結合するそれらの能力を評価した。このアッセイにおいて、非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質をBiacoreチップ(標準的な手順のためのBiacore Instruction Manual,Pharmacia,Inc.,Piscataway,NJを参照のこと)の表面に固定し、そして0.2μg/ml VEGFを含むサンプルと、非改変Flt1(1−3)−Fc、アセチル化Flt1(1−3)−Fcまたはペグ化したFlt1(1−3)−Fc(各々25μg/ml)のいずれかとを含むサンプルに、Ft1(1−3)−Fcでコートしたチップ上を通過させた。非特異的結合の効果を最小化するために、結合サンプルを0.5M NaCl洗浄液で洗浄した。1つのサンプルにおいては、非改変Flt1(1−3)−Fcをヘパリンと混合した。ヘパリンは負に荷電した分子であり、そしてFlt1(1−3)−Fcタンパク質は正に荷電した分子であるので、2つの分子が一緒に混合される場合、これらはそれぞれの電荷を介して相互作用するべきである。このことは、その電荷および電荷相互作用を介して結合するその傾向を減少させるために化学的または遺伝的に改変されているかのように分子に振る舞わさせる、Flt1(1−3)−Fcの固有の正電荷を、基本的に中和する。図3に示されるように、アセチル化Flt1(1−3)−Fc(カラム13〜16)、ペグ化したFlt1(1−3)−Fc(カラム17〜20)、およびヘパリン処理Flt1(1−3)−Fc(カラム21〜24)は、コントロール(カラム1〜4)および無関係のタンパク質(カラム5〜8)と比較した場合、Biacoreチップ結合Flt1(1−3)−FcとVEGF結合について完全に競合する。非改変Flt1(1−3)−Fc(カラム5〜6)は、VEGF結合についてBiacoreチップ結合Flt1(1−3)−Fcと部分的にのみ競合するようであった。しかし、結合サンプルを0.5M NaClで洗浄する(カラム7〜8)ことによって、Flt1(1−3)−Fcの改変形態と類似の結合プロフィールを生じ、これは非改変タンパク質が、チップへの非特異的結合(これは塩洗浄によって排除され得る)を示していたことを示す。
【0084】
(実施例7:ELISAに基づくアッセイにおける非改変、アセチル化、およびペグ化したFlt1(1−3)−Fcの結合)
非改変、アセチル化、およびペグ化したFlt1(1−3)−Fcタンパク質を、標準的なELISAに基づくアッセイにおいて試験し、Flt1レセプターリガンドVEGFに結合するそれらの能力を評価した。図4に示されるように、ペグ化およびアセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質の両方は、VEGFに結合し得、これは、ペグ化またはアセチル化のいずれかによってタンパク質を改変することは、そのリガンドに結合するその能力を破壊しないことを示す。
【0085】
(実施例8:非改変Flt1(1−3)−Fc、アセチル化Flt1(1−3)−Fc、およびペグ化したFlt1(1−3)−Fcの薬物動態学的分析)
インビボ実験を、非改変Flt1(1−3)−Fc、アセチル化Flt1(1−3)−Fc、およびペグ化したFlt1(1−3)−Fcタンパク質の薬物動態プロフィールを評価するために設計した。Balb/cマウス(23〜28g;3マウス/グループ)に、4mg/kgの非改変、アセチル化、またはペグ化したFlt1(1−3)−Fcを皮下注射した。タンパク質の注射の1、2、4、6、24時間後、2日後、および3日後に、マウスの尾から採血した。Flt1(1−3)Fcタンパク質を検出するために設計された、標準的なELISAに基づくアッセイにおいて、血清をアッセイした。手短には、このアッセイは、ELISAプレートをVEGFでコートする工程、非改変、アセチル化、またはペグ化したFlt1(1−3)−Fc含有血清を結合させる工程、およびアルカリホスファターゼに結合した抗Fc抗体を用いて報告する工程を包含する。図5に示されるように、すべてのFlt1(1−3)−Fcタンパク質についてのTmaxは、6時間と24時間の間の時点であった。異なるタンパク質についてのCmaxは、以下の通りであった:非改変:0.06μ/ml〜0.15μ/ml;アセチル化:1.5μg/ml〜4.0μg/ml;およびペグ化:約5μg/ml。
【0086】
(実施例9:Fltl(1−3)−Fcの段階的アセチル化)
細胞外マトリックス成分への結合を排除するために必要なアセチル化の最小量を決定するために、アセチル化反応混合物中に漸増する量のモル過剰のアセチル化試薬を用いることによって、Flt1(1−3)−Fcタンパク質を段階的様式でアセチル化する実験を設計した。モル過剰の範囲は以下の通りであった:1モルのFlt1(1−3)−Fcモノマー当たり0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、および100モルのアセチル化試薬。反応は、スルホ−NHS−アセテート改変キット(Pierce Chemical Co.,Rockford,IL,カタログ#26777)とともに提供される使用説明書に詳細に記載されるように行った。
【0087】
(実施例10:段階的にアセチル化されたFlt1(1−3)−Fcの特徴付け)
((a.)IEF分析)非改変Flt1(1−3)−Fcおよび段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcタンパク質を、標準的なIEF分析によって分析した。図6A〜6Bに示されるように、非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、その非常に高いpI(9.3より大きい)のためにゲル内に移動し得なかった。しかし、段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcサンプル(30〜100倍モル過剰サンプル)のほとんどはゲル内に移動し得、そしてタンパク質のアセチル化の程度に依存して、4.55〜8.43の間にわたるpIで平衡になった。この結果は、アセチル化が、用量依存様式でタンパク質の正電荷を変化させ得ること、およびpIの減少が、アセチル化の程度を制御することによって制御され得ることを示す。
【0088】
((b.)段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcの細胞外マトリックス成分への結合)
細胞外マトリックス成分への結合について試験するために、Flt1(1−3)−Fcおよび段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcを、細胞外マトリックス成分との相互作用を模倣するように設計された上記のアッセイにおいて試験した。種々の濃度の、非改変Flt1(1−3)−Fc、段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fc(10、20、および30倍モル過剰サンプル)、またはrTie2−Fc(無関係なコントロール)タンパク質のいずれかをウェルに加えた。プレートを室温または37℃で1〜2時間インキュベートし、次いで結合タンパク質の検出を、ウェルに2次アルカリホスファターゼ結合抗ヒトFc抗体を加えることによって行った。アルカリホスファターゼ基質を引き続いてウェルに加え、そして光学密度を測定した。図7は、このアッセイの結果を示す。無関係なコントロールタンパク質rTie2−Fcと同様に、段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fc(20および30倍モル過剰サンプル)は、Matrigelコートしたプレートに対するいかなる有意な結合も示さなかったが、非アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質は有意な結合を示した。結合は飽和であり、これは、飽和にならかいかもしれないより一般的な電荷媒介相互作用ではなく、Flt1(1−3)−Fcタンパク質が、特定の部位に結合し得ることを示す。10倍モル過剰サンプルは減少した結合を示したが、アセチル化の程度は、細胞外マトリックス成分への結合を完全にブロックするためには十分ではなかった。IEF分析(図6Aおよび6B)による事実にも関わらず、20倍モル過剰以上のサンプルは、検出可能な結合を示さず、低いモル過剰のサンプルはなお大きい正味の正電荷を有した。この結果は、細胞外マトリックス成分への結合を排除するためにすべての入手可能な塩基性アミノ酸を完全にアセチル化することは、必要ではないということを示す。
【0089】
((c.)Biacoreに基づくアッセイにおける段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcの結合)
非改変および段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcタンパク質を、Biacoreに基づくアッセイにおいて試験し、Flt1リガンド(VEGF)に結合するそれらの能力を評価した。このアッセイにおいて、非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質(0.5、1.0または5.0μg/ml)を、Biacoreチップの表面に固定(標準的な手順のためのBiacore Instruction Manual,Pharmacia,Inc.,Piscataway,NJを参照のこと)し、そして0.2μg/ml VEGFと、非改変Flt1(1−3)−Fc(0.5、1.0、または5.0μg/mlのいずれかで)または段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcの10の異なるサンプル(各々0.5、1.0、または5.0μg/mlで)のいずれかとを含む溶液を、Flt1(1−3)−Fcコートしたチップの上を通過させた。図8に示されるように、準化学量論比(0.5μg/mlの非改変Flt1(1−3)または段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcのいずれか 対 0.2μg/ml VEGF)において、VEGFを完全に結合するために十分なFlt1(1−3)−Fc(非改変または段階的アセチル化のいずれか)は溶液中に存在しなかった。1.0μg/ml(これは、約1:1の化学量論比である)において、非改変および段階的にアセチル化したFlt1(1−3)−Fcの両方は、VEGF結合に対してよりよく競合し得るが、利用可能なVEGFを完全に結合するためにはなお不十分なFlt(1−3)−Fcタンパク質(非改変または段階的アセチル化のいずれか)が存在する。しかし、5.0μg/ml(これは、1:1の化学量論比よりも数倍大きい)においては、Flt(1−3)−Fcおよび段階的にアセチル化したFlt(1−3)−Fcタンパク質の両方が、アセチル化の程度に関わらずVEGFに結合し得る。このことは、アセチル化は、VEGFに結合するFlt(1−3)−Fcの能力を変更しないことを明らかに示す。
【0090】
((d)段階的アセチル化Flt1(1−3)−Fcの薬物動態学的分析)
インビボでの実験を、非改変Flt1(1−3)−Fcおよび段階的アセチル化(step−acetylated)Flt1(1−3)−Fcタンパク質の薬物動態プロフィールを評価するために設計した。Balb/cマウス(23〜28g)に、4mg/kgの非改変Flt1(1−3)−Fc、または段階的アセチル化Flt1(1−3)−Fcの10、20、40、60および100倍モル過剰のサンプルを皮下注射した(非改変、10、20および40倍モル過剰のサンプルについては3匹のマウス、そして60および100倍モル過剰のサンプルについては2匹のマウス)。注射後1、2、4、6、24時間、2日目および3日目に、これらのマウスの尾から採血した。血清を、Flt1(1−3)−Fcを検出するように設計されたELISAに基づくアッセイ(前出に記載される)においてアッセイした。図9は、本研究の結果を詳述する。試験した全てのFlt1(1−3)−Fcタンパク質についてのTmaxは6時間の時点であったが、Cmaxは以下の通りであった:非改変Flt1(1−3)−Fc:0.06μg/ml;10倍モル過剰のサンプル:−0.7μg/ml、20倍モル過剰のサンプル−2μg/ml、40倍モル過剰のサンプル−4μg/ml、60倍モル過剰のサンプル−2μg/ml、100倍モル過剰のサンプル−1μg/ml。この結果は、Flt1(1−3)−Fcのアセチル化またはペグ化(pegylation)が、その薬物動態プロフィールを有意に改善することを実証する。
【0091】
(実施例11:Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcと称されるFlt1(1−3)−Fcの基本領域欠失変異体の構築)
アセチル化Flt1(1−3)−Fc(これは、6未満のpIを有する)が、非常にポジティブな非改変Flt1(1−3)−Fc(pI>9.3)よりもずっと優れた薬物動態を有するという観察に基づいて、薬物動態における相違が、このタンパク質の正味の電荷に寄与し得るか否か、このことがこのタンパク質を負に荷電した細胞外マトリックス成分に固着させるか、または細胞外マトリックス成分についての特異的結合部位を構成するFlt1(1−3)−Fcタンパク質表面におそらく特異的な位置が存在するか否かが問われた。例えば、多くのタンパク質は、ヘパリン結合部位(しばしば、塩基性残基のクラスターからなる)を有することが公知である。時々、これらの残基は、タンパク質の一次配列においてクラスター中で見出される;いくつかの文献は、このようなヘパリン結合部位についての「コンセンサス配列」を同定した(例えば、Hilemanら,1998,Bioessays 20(2):156−67を参照のこと)。他の場合には、タンパク質の公知の結晶構造が、タンパク質表面上の正に荷電した残基のクラスターを示すが、この残基は、一次配列のうちの異なる領域に由来し、そしてタンパク質がその三次構造に折り畳まれたときにのみ一緒になる。従って、単離されたアミノ酸残基がタンパク質表面の塩基性残基のクラスターの一部を形成するか否かを予測することは困難である。しかし、正に荷電したアミノ酸残基のクラスターが一次配列中に存在する場合、これらの残基が互いに空間的に近く、それゆえ、細胞外マトリックス成分結合部位の一部であり得ると推測することは非現実的ではない。Flt1レセプターは、広範囲に研究されており、そして種々のドメインが記載されている(例えば、Tanakaら,1997,Jpn.J.Cancer Res 88:867−876を参照のこと)。本出願の図10A〜図10Dに示す核酸およびアミノ酸の配列を参照して、その配列の開始部に存在し、そしてヌクレオチド76〜78によってコードされるグリシンにまで伸びる分泌のためのシグナル配列を同定し得る。成熟タンパク質は、核酸配列のヌクレオチド79で始まり、Ser−Lys−Leu−Lysで始まる。Flt1 Igドメイン1は、ヌクレオチド79から393に及び、アミノ酸Ser−Asp−Thrで終わる。Flt1 Igドメイン2は、ヌクレオチド394〜687(Gly−Arg−ProからAsn−Thr−Ileをコードする)に及び、そしてFlt1 Igドメイン3は、ヌクレオチド688〜996(Ile−Asp−ValからAsp−Lys−Alaをコードする)に及ぶ。ヌクレオチド997〜1005によってコードされる架橋アミノ酸配列Gly−Pro−Glyが存在し、これには、ヒトFcをコードするヌクレオチド配列(ヌクレオチド1006〜1701、すなわちアミノ酸Glu−Pro−Lys〜Pro−Gly−Lys−停止)が続く。
【0092】
Flt1アミノ酸配列のより詳細な分析は、クラスター、すなわち、図10A〜10Dのアミノ酸残基272〜281(KNKRASVRR)(ここでは、10アミノ酸残基のうちの6個が塩基性である)が存在することを示す。この配列は、このレセプターのFlt1 Igドメイン3(図11を参照のこと)に存在し、これは、それ自体はVEGFリガンドの結合に必須ではないが、これは、リガンドに対するより高い親和性結合を付与する。Igドメイン3の配列の、Igドメイン2の配列との整列は、この領域において、この2つのIgドメインの間では整列が非常に乏しいこと、およびIgドメイン3中に約10個のさらなるアミノ酸が存在することを示す。これらの2つのドメインの親水性プロフィール(MacVectorコンピューターソフトウェア)の分析は、このタンパク質における親水性領域の存在を明らかに示す(図12A〜12B)。これらの観察は、Flt1 Igドメイン3の実際の三次元コンホメーションが、Flt1 Igドメイン2中に存在しないいくつかの型の突出を可能にする可能性を高めた。この仮定を試験するために、10個のさらなるアミノ酸を欠失し、そして得られたタンパク質を試験して、欠失が、レセプターのVEGF親和性を深刻に損なわずに薬物動態に好適に影響を与えたか否かをみた。このDNA構築物は、標準的な分子生物学技術(例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(Sambrookら,Cold Spring Harbor Laboratory)、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編,Greene Publ.Assoc.,Wiley−Interscience,NYを参照のこと)を用いて哺乳動物発現ベクターpMT21(Genetics Institute,Inc.,Cambridge,MA)中で構築された。このDNA構築物をMut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcという。Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc構築物を、ヌクレオチド814〜843(図10A〜10Dに示す)の欠失(これは、非常に塩基性の10アミノ酸残基配列Lys−Asn−Lys−Arg−Ala−Ser−Val−Arg−Arg−ArgをFlt1 Igドメイン3から欠失する)によってFlt1(1−3)−Fcから誘導した。
【0093】
最終的なDNA構築物を、ABI 373A DNAシークエンサーおよびTaq Dideoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)を用いて配列を確認した。Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcの配列を図13A〜13Dに示す。
【0094】
(実施例12:Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fcと称されるFlt1(1−3)−Fc塩基性領域欠失変異体の構築)
Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fcと称される第2の欠失変異体構築物を、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc構築物からヌクレオチド79〜393(図10A〜10Dを参照のこと)によってコードされるFlt1 Igドメイン1の欠失によって誘導した;便宜のために、ヌクレオチド73〜78(TCA GGT)を、TCC GGAに変更した。これによって、関連したアミノ酸配列Ser−Glyを変更することなく、制限部位(BspE1)が導入された。このDNA構築物は、標準的な分子生物学技術(例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(Sambrookら,Cold Spring Harbor Laboratory)、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編,Greene Publ.Assoc.,Wiley−Interscience,NYを参照のこと)を用いて哺乳動物発現ベクターpMT21(Genetics Institute,Inc.,Cambridge,MA)中で構築され、これはまた、ABI 373A DNAシークエンサーおよびTaq Dideoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)を用いて配列が確認された。Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fcの配列を、図14A〜14Cに示す。
【0095】
(実施例13:Mut3:Flt1(2−3)−Fcと称されるFlt1(1−3)−Fc欠失変異体の構築)
第3の欠失変異体構築物は、Mut3:Flt1(2−3)−Fcと称され、これを、Flt1 Igドメイン3がインタクトなままである(塩基性領域のアミノ酸を欠失しなかった)こと以外はMut2:Flt1(2−3ΔB)−Fc構築物と同様にして構築した。この構築物を、標準的な分子生物学技術を用いて構築し、そして最終的な構築物を、前出に記載されるとおりに配列を確認した。Mut3:Flt1(2−3)−Fcの配列を図15A〜15Cに示す。
【0096】
(実施例14:Mut4:Flt1(1−3R->N)−Fcと称されるFlt(1−3)−Fc塩基性領域Nグリコシル化変異体の構築)
N−グリコシル化部位がFlt1 Igドメイン3の塩基性領域の真ん中に導入されている最終的な構築物を作製した。この構築物はMut4:Flt1(1−3R->N)−Fcと称され、そしてこれを、ヌクレオチド824〜825をGAからACへと変更し、その結果、コードされるArg残基(AGA)をAsn残基(AAC)へと変更することによって作製した(図10A〜図10Dを参照のこと)。それゆえ、得られるアミノ酸配列は、Arg−Ala−SerからAsn−Ala−Serへと変更され、これは、Asn残基でのN−グリコシル化部位の付加のための規範シグナル(Asn−Xxx−Ser/Thr)と一致する。Mut4:Flt1(1−3R->N)−Fcの配列を図16A〜図16Dに示す。
【0097】
(実施例15:アセチル化Flt1(1−3)−Fc変異体、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc変異体およびMut4:Flt1(1−3R->N)−Fc変異体の特徴付け)
(a)細胞外マトリックス成分への結合
3つの改変されたタンパク質が改善された薬物動態学的特性を有する可能性が高いようであるかまたは低いようであるかを決定するために、Matrigelでコーティングした96ウェルディッシュ(前出に記載の通り)を、種々の濃度の変異タンパク質とともにインキュベートし、そして抗ヒトFc/アルカリホスファターゼ結合体化抗体を用いて検出した。図18に示すように、この実験は、非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質がこれらのウェルに対して強く結合し得るとはいえ、Mut3:Flt1(2−3)−Fcタンパク質はいくらかより弱く結合し、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcタンパク質はさらになお弱く結合し、そしてMut2:Flt1(2−3ΔB)−Fcタンパク質は最良のプロフィールを示し、その結合は、他の変異タンパク質のどれよりも弱いことを示した。Mut4:Flt1(1−3R->N)−Fcグリコシル化変異タンパク質は、Matrigelアッセイにおいて下限に近い利益しか示さなかった。これらの結果は、ポジティブアミノ酸の直鎖配列が一次配列から欠失されて、細胞外マトリックス成分との電荷相互作用における減少をもたらし得るという仮定を確認する。
【0098】
((b)Biacoreに基づくアッセイにおけるMut1:Flt1(1−3ΔB)−FcおよびMut4:Flt1(1−3R->N):Fcの結合)
非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質およびアセチル化Flot1(1−3)−Fcタンパク質、ならびに遺伝子改変されたMut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcタンパク質およびMut4:Flt1(1−3R->N)−Fcタンパク質を、Biacoreに基づくアッセイにおいて試験して、Flt1リガンドであるVEGFに対するそれらの結合能力を評価した。このアッセイでは、非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質(0.25μg/ml、0.5μg/mlまたは1.0μg/ml)を、Biacoreチップの表面に固定し(標準的な手順についてはBiacore Instruction Manual,Pharmacia,Inc.,Piscataway,NJを参照のこと)、そして0.1μg/m VEGFおよび精製した非改変Flt1(1−3)−Fcまたは非改変Flt1(1−3)−Fcを含有するCOS細胞上清(約0.25μg/ml、0.5μg/mlまたは1.0μg/mlで)、精製したアセチル化Flt1(1−3)−Fc(0.25μg/ml、0.5μg/mlまたは1.0μg/mlで)、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcを含むCOS細胞上清(約0.25μg/ml、0.5μg/mlまたは1.0μg/mlで)、あるいはMut4:Flt1(1−3R->N)−Fcを含むCOS細胞上清(約0.25μg/ml、0.5μg/mlまたは1.0μg/ml)のいずれかを含む溶液を、Flt1(1−3)−Fcでコーティングしたチップに通過させた。図17に示すように、化学量論未満の比で(未改変、アセチル化または遺伝子改変されたサンプルの0.25μg/ml Flt1(1−3)−Fc対01.μg/ml VEGF)、Biacoreチップ上に固定されたFlt1(1−3)−Fcに対するVEGFの結合をブロックするには不十分なFlt1(1−3)−Fcタンパク質が存在する。0.5μg/mlの未改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質、アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質または遺伝子改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質では、化学量論比は1:1に近づき、そしてBiacoreチップに対するVEGF結合をブロックする能力の増加が存在する。1.0μg/mlの非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質、アセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質または遺伝子改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質(これは、ほぼ10:1の化学量論比である)では、Flt1(1−3)−Fcタンパク質は、Biacoreチップに対するVEGFの結合をブロックし得るが、これらは等価ではない。非改変Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc、アセチル化Mut1:Flt1(1−3ΔB)−FcおよびMut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcは、VEGF結合をブロックするその能力が本質的に等しく、一方、Mut4:Flt1(1−3R->N)−Fcは結合をブロックする際にいくらか効率が低い。これらの結果は、主に負に荷電したアミノ酸の直鎖配列を遺伝的に除去することによって、正に荷電した分子の非特異的結合を低減することが可能であるという仮定を確認する。
【0099】
((c)Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc、Mut2:Flt1(2−3ΔB)−Fc、Mut3:Flt1(2−3)−Fcの結合およびELISAに基づくアッセイにおける結合)
3つの変異タンパク質がFlt1リガンドVEGFを結合し得るか否かを決定するために、VEGFでプレーティングした96ウェルプレートを種々の濃度のそれぞれの変異タンパク質と共にインキュベートし、そして洗浄後、アルカリホスファターゼ結合体化抗ヒトFc抗体と共にインキュベートし、そして適切なアルカリホスファターゼ基質の添加によって比色的に定量することによって結合量を検出した結合実験を行った。図19に示すように、この実験は、全ての変異タンパク質が、試験した濃度でVEGFを同様に結合し得ることを示した。
【0100】
(実施例16:アセチル化Flt1(1−3)−Fc、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcおよび非改変Flt1(1−3)−Fcの薬物動態学的分析)
インビボでの実験を、非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質、Mut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcタンパク質および40倍モル過剰のアセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質の薬物動態的プロフィールを評価するように設計した。Balb/cマウス(25〜30g)に、4mg/kgの非改変Flt1(1−3)−Fcタンパク質、40倍モル過剰のアセチル化Flt1(1−3)−Fcタンパク質およびMut1:Flt1(1−3ΔB)−Fcタンパク質(各々4匹のマウス)を皮下注射した。注射後1、2、4、6、24時間、2日目、3日目および5日目に、これらのマウスの尾から採血した。血清を、Flt1(1−3)−Fcタンパク質を検出するように設計したELISAにおいてアッセイした。このELISAは、ELISAプレートをVEGFでコーティングする工程、Flt1(1−3)−Fcを結合する工程およびアルカリホスファターゼに連結した抗Fc抗体を報告する工程を含む。図20に示すように、これらの試薬についてCmaxは、以下の通りであった:非改変Flt1(1−3)−Fc、0.15μg/ml;40倍モル過剰のアセチル化Flt1(1−3)−Fc、1.5μg/ml;およびMut1:Flt1(1−3ΔB)−Fc、0.7μg/ml。
【0101】
(実施例17:改変Flt1レセプターベクター構築)
改変版のFlt1レセプター(VEGFR1としても公知)を構築するための理論的根拠は、Flt1のタンパク質配列が非常に塩基性であり、それゆえ、細胞外マトリックス(ECM)に固着するようであるという観察に基づいていた。Flt1の非常に塩基性の性質は、なぜ非改変Flt1(1−3)−Fc(前出に記載される)が、これを治療的薬剤として使用することを困難にする乏しい薬物動態を有するかをおそらく説明する。前出に記載されるように、化学的に改変された形態の40倍モル過剰のアセチル化Flt1(1−3)−Fc(本明細書中以後、A40と名付ける)は、非アセチル化Flt1(1−3)−Fcに対して大いに改善された薬物動態(PK)プロフィールを示した。それゆえ、A40によって示される改善されたPKプロフィールを保有し、そしてVEGFに強固に結合する能力をなお保持する、改変された形態のFlt1レセプター分子を組換え発現するために用いられ得るDNA分子を操作する試みを行った。
【0102】
Flt1の第1のIgドメイン(これは、中性pHで+5という正味の電荷を有する)は、VEGFに対する強固な結合のために必須でないことが文献において公知であるので、このドメインを欠失させた。第3のIgドメイン(+11という正味の電荷を有する)は、結合に必須ではないが、第2のIgドメインよりも高いVEGF親和性を付与するので、その全体を欠失する代わりに、第3のIgドメインを、Flt1レセプターの同系物(relative)Flk1(VEGFR2としても公知)およびFlt4(VEGFR3としても公知)の等価なドメインで置換した。これらのキメラ分子(R1R2(Flt1.D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)およびR1R3(それぞれ、Flt1D2.VEGFR3D3−FcΔC1(a)およびVEGFR1R3−FcΔC1(a)、ここで、R1およびFlt1D2=Flt1(VEGFR1)のIgドメイン2;R2およびFlk1D3=Flk1(VEGFR2)のIgドメイン3;ならびにR3およびVEGFR3D3=Flt4(VEGFR3)のIgドメイン3と示される)は、以下に記載されるように、インビトロECM結合アッセイによって判断した場合、ECMに対してずっと粘性が低く、以下に記載されたように非常に改善されたPKを有した。さらに、これらの分子は、以下に記載されるようにVEGFに強固に結合し得、そして以下に記載されるように、内皮細胞において発現されたネイティブなFlk1レセプターのリン酸化をブロックし得た。
【0103】
((a)発現プラスミドpFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の構築)
発現プラスミドpMT21.Flt1(1−3).Fc(6519bp)およびpMT21.Flk−1(1−3).Fc(5230bp)は、アンピシリン耐性、ならびにそれぞれ、ヒトFlt1およびヒトFlk1のFcタグ化版のIgドメイン1〜3をコードするプラスミドである。これらのプラスミドを用いて、Flt1のIgドメイン2とFlk1のIgドメイン3との融合体からなるDNAフラグメントを、それぞれのIgドメインのPCR増幅、続いてさらなる回のPCRを用いて2つのドメインの単一のフラグメントへの融合を達成して構築した。Flt1のIgドメイン2については、5’増幅プライマーおよび3’増幅プライマーは以下の通りであった:
【0104】
【化1】

5’増幅プライマーは、アミノ酸配列GRPFVEM(図21A〜21Cのアミノ酸27〜33に対応する)によって規定される、Flt1のIgドメイン2の上流のBspE1制限酵素部位をコードする。3’プライマーは、Flk1 Igドメイン3の5’開始部に直接融合された、Flt1 Igドメイン2の3’末端の逆相補体をコードし、融合点は、Flt1のTIID(図21A〜21Cのアミノ酸123〜126に対応する)として規定され、そしてFlk1のVVLS(図21A〜21Cのアミノ酸127〜130に対応する)に続く。
【0105】
Flk1のIgドメイン3について、5’増幅プライマーおよび3’増幅プライマーは以下の通りであった:
【0106】
【化2】

5’増幅プライマーは、上記のようにFlk1 Igドメイン3の開始部に直接融合されたFlt1 Igドメイン2の末端をコードする。3’増幅プライマーは、アミノ酸VRVHEK(図21A〜21Cのアミノ酸223〜228に対応する)によって規定されるFlk1 Igドメイン3の末端をコードし、続いて、制限酵素Srf1に対する認識配列を含む架橋配列をコードし、そしてアミノ酸GPGをコードする。架橋配列は、図21A〜21Cのアミノ酸229〜231に対応する。
【0107】
個々のドメインを産生するための1回のPCR増幅の後に、産物をチューブ内で合わせ、そしてプライマーbsp/flt1D2およびFlk1D3/apa/srf.as(上記)を用いてさらなる回のPCRに供し、融合産物を産生した。このPCR産物を引き続いて制限酵素BspEIおよびSmaIで消化し、そして得られた614bpフラグメントを、ベクターpMT21/ΔB2.FcのBspEI〜SrfIの制限部位にサブクローン化し、プラスミドpMT21/Flt1D2.Flk1D3.Fcを作製した。Flt1D2−Flk1D3遺伝子融合挿入物のヌクレオチド配列を、標準的な配列分析によって確認した。次いで、このプラスミドを制限酵素EcoRIおよびSrfIで消化し、得られた702bpのフラグメントを、プラスミドpFlt1(1−3)B2−FcΔC1(a)のEcoRI〜SrfIの制限部位に移し、プラスミドpFlt1D2.FlkD3.FcΔC1(a)を産生した。Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)キメラ分子の完全DNAおよび推定アミノ酸配列を、図21A〜21Cに示す。
【0108】
((b)発現プラスミドpFlt1D2VEGFR3D3FcΔC1(a)の構築)
発現プラスミドpMT21.Flt1(1−3).Fc(6519bp)は、ヒトFlt1レセプターのIgドメイン1〜3のアンピシリン耐性およびFcタグ化型をコードする。このプラスミドを使用して、PCRによってFlt1のIgドメイン2を含むDNAフラグメントを産生した。細胞株HEL921.7由来のRNAを使用して、標準的なRT−PCR方法論を使用して、Flk1のIgドメイン3を産生した。さらなる回のPCR増幅を使用して、2つのIgドメインの単一の融合フラグメントへの融合を達成した。Flt1のIgドメイン2について、5’増幅プライマーおよび3’増幅プライマーは、以下の通りであった:
【0109】
【化3】

5’増幅プライマーは、アミノ酸配列GRPFVEM(図22A〜22Cのアミノ酸27〜33に対応する)によって規定される、Flt1のIgドメイン2の上流のBspE1制限部位をコードする。3’増幅プライマーは、Flt1のTIID(図22A〜22Cのアミノ酸123〜126に対応する)として規定される融合点を有し、そしてVEGFR3のIQLL(図22A〜22Cのアミノ酸127〜130に対応する)に続く、VEGFR3 Igドメイン3の開始部に直接融合されたFlt1 Igドメイン2の末端の逆相補体をコードする。
【0110】
VEGFR3のIgドメイン3について、RT−PCRに使用される5’プライマーおよび3’プライマーは、以下の通りであった:
【0111】
【化4】

5’増幅プライマーと3’増幅プライマーの両方がVEGFR3の配列に一致する。このRT−PCR反応の296bpの増幅産物を標準的な技術によって単離し、そして第2回のPCRに供して、Flk1D3ドメインとのFlt1D2の融合およびGPG架橋を介するFlk1D3とFcドメインとの融合を可能にするための適切な配列を加えた(以下を参照のこと)。増幅プライマーは、以下の通りであった:
【0112】
【化5】

5’増幅プライマーは、上記のように、VEGFR3 Igドメイン3の開始部(5’末端)に直接融合されたFlt1 Igドメイン2の3’末端をコードする。3’増幅プライマーは、アミノ酸VIVHEN(図22A〜22Cのアミノ酸221〜226に対応する)によって規定されるVEGFR3 Igドメイン3の3’末端をコードし、続いてSrf1に対する認識配列を含む架橋配列をコードし、そしてアミノ酸GPGをコードする。架橋配列は、図22A〜22Cのアミノ酸227〜229に対応する。
【0113】
個々のIgドメインを産生するための1回(Flt1 Igドメイン2について)または2回(Flt4 Igドメイン3について)のPCRの後に、PCR産物をチューブ内で合わせ、上記の増幅プライマーbsp/flt1D2およびVEGFR3D3/srf.asを用いたさらなる回のPCR増幅に供して、融合産物を産生した。このPCR産物を引き続いて制限酵素BspEIおよびSmaIで消化し、そして得られた625bpのフラグメントを、ベクターpMT21/Flt1ΔB2.Fc(上記)のBspEI〜SrfI制限部位にサブクローン化し、プラスミドpMT21/Flt1D2.VEGFR3D3.Fcを産生した。Flt1D2−VEGFR3D3遺伝子融合挿入物の配列を、標準的な配列分析によって確認した。次いで、このプラスミドを制限酵素EcoRIおよびSrfIで消化し、そして得られた693bpのフラグメントをプラスミドpFlt1(1−3)ΔB2−FcΔC1(a)のEcoRI〜SrfIの制限部位にサブクローン化してpFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)と称されるプラスミドを産生した。Flt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)キメラ分子の完全なDNA推定アミノ酸配列を図22A〜22Cに記載する。
【0114】
(実施例18:細胞外マトリクス結合(ECM)結合アッセイ)
ECMでコートされたプレート(Becton Dickinsonカタログ番号35−4607)を、サンプルを加える前に、グルタミン(2mM)、100Uペニシリン、100Uストレプトマイシン、および10%のBCSで補充された温かいDMEを用いて少なくとも1時間再水和した。次いで、プレートを、種々の濃度の10nMで始めて、続いてPBS+10%BCS中に2倍希釈したFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)とともに、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBS+0.1%Triton−Xを用いて3回洗浄し、アルカリホスファターゼ結合体化抗ヒトFc抗体(Promega、PBS+10%BCS中1:4000)を用いて室温で1時間インキュベートした。次いでプレートをPBS 0.1%Triton−Xを用いて4回洗浄し、そしてアルカリホスファターゼ緩衝液/pNPP溶液(Sigma)を発色のために加えた。プレートをI=405〜570nmで読んだ。この実験の結果を図23で示し、これは、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)のタンパク質は、ECMに対する粘着性が、Flt1(1−3)−Fcタンパク質と比較してかなり少ないことを示す。
【0115】
(実施例19:CHO−K1(E1A)細胞中のpFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の一過性発現)
実施例17(a)において上記されるpFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)プラスミドを保有するE.coli DH10B細胞の大規模(2L)培養物を、Terrific Broth(TB)+100μg/mlアンピシリン中で一晩増殖させた。次の日に、製造業者のプロトコルに従って、プラスミドDNAをQIAgen Endofree Megaprepキットを使用して抽出した。精製されたプラスミドDNAの濃度を、UV分光光度計および蛍光計を使用して標準的技術によって決定した。プラスミドDNAを、制限酵素EcoRI+NotIおよびAseIを使用して、アリコートの標準的な制限酵素消化によって確認した。全ての制限酵素消化フラグメントは、1%アガロースゲルで分析した場合に予期される大きさに対応した。
【0116】
40個の15cmペトリプレートに、4×106細胞/プレートの密度でCHO−K1/E1A細胞を播種した。プレーティング培地は、10% Hyclone Fetal Bovine Serum(FBS)、100U ペニシリン/100U ストレプトマイシンおよびグルタミン(2mM)を補充したGibco Ham’s F−12であった。翌日、それぞれのプレートの細胞を、製造業者のプロトコルに従って、12ml容積中のGibco OptimemおよびGibco Lipofectamineを使用して6μgのpFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)プラスミドDNAを用いてトランスフェクトした。トランスフェクション混合物を細胞に加えた4時間後に、10%FBSを補充したOptimemを12ml/プレートで加えた。プレートを5%CO2インキュベーター中で一晩37℃でインキュベートした。翌日、培地をそれぞれのプレートから除去し、25mlの発現培地(グルタミン(2mM)および1mM酪酸ナトリウムを補充したGibco CHO−S−SFM II)を加えた。プレートを37℃で3日間インキュベートした。3日間のインキュベーション後、培地をそれぞれのプレートから吸引し、そしてスインギングバケットローター(swinging bucket rotor)中、400rpmで遠心分離し、細胞をペレット化した。上清を滅菌1Lボトルにデカンテーションし、発現されたタンパク質の精製を以下に記載のように実施した。
【0117】
(実施例20:pVEGFR1R2−FcΔC1(a)発現ベクターの構築)
pVEGFR1R2.FcΔC1(a)発現プラスミドを、図21A〜21CのFlt1d2−Flk1d3−FcΔC1(a)アミノ酸26と27(GG)との間にアミノ酸SDT(図24A〜24Cのアミノ酸27〜29に対応する)をコードするDNAの挿入および図のアミノ酸229〜231に対応するアミノ酸GPGをコードするDNAの除去によって構築した。SDTアミノ酸配列は、Flt1レセプターに対してネイティブであり、異種N末端プロセシングの可能性を減少させるために後に加えられた。GPG(架橋配列)が除去され、その結果、Flt1およびFlk1 Igドメインが互いに直接融合される。pVEGFR1R2.FcΔC1(a)キメラ分子の完全なDNAおよび推定のアミノ酸の配列を、図24A〜24Cに記載する。
【0118】
(実施例21:改変Flt1レセプターを産生するために使用される細胞培養プロセス)
(a)Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を産生するために使用される細胞培養プロセス)
実施例1において上記される発現プラスミドpFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を使用するFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)タンパク質の産生のためのプロセスは、タンパク質産物を構成的に発現する組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO K1/E1A)細胞の懸濁培養を含む。この細胞をバイオリアクター中で増殖させ、そしてタンパク質産物を単離し、アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって精製する。このプロセスは、以下に、より詳細に提供される。
【0119】
(細胞増殖)
Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)発現細胞株を含む2つのコンフルエントなT−225cm2フラスコを、細胞を培地(GMEM+10%血清、GIBCO)中で8つのT−225cm2フラスコに継代させることによって増殖させ、37℃および5%CO2でインキュベートした。フラスコがコンフルエンスに近づいたとき(約3〜4日)、細胞をトリプシンを使用して剥離した。新鮮な培地を、トリプシンに対するさらなる曝露から細胞を保護するために加えた。細胞を遠心分離し、そして新鮮な培地に再懸濁し、次いで、8つの850cm2ローラーボトルに移し、37℃および5%CO2でコンフルエントになるまでインキュベートした。
【0120】
(バイオリアクターにおける懸濁培養)
ローラーボトルにおいて増殖させた細胞を、トリプシン処理し、それらを表面から剥離し、そして懸濁培養培地で洗浄した。細胞を、5Lのバイオリアクター(New Brunswick Celligen Plus)に無菌的に移し、ここで、細胞を3.5Lの懸濁培養物中で増殖させる。懸濁培養培地は、グルタミンを含まない低グルコース改変のIS−CHO(Irvine Scientific)であり、これに、5%ウシ胎仔血清(Hyclone)、GS補充物(Life Technologies)および25μMメチオニンスルホキシイミン(Sigma)を加えた。pHを、入口ガスへの二酸化炭素の添加によってか、またはバイオリアクターへの炭酸ナトリウムの液体溶液の添加によって、7.2に制御した。溶存酸素レベルを入口ガスへの酸素または窒素の添加によって30%飽和に維持し、そして温度を37℃に制御した。4×106細胞/mLの密度に達したとき、細胞を、40Lのバイオリアクター(同じ培地およびバイオリアクターを制御するための設定値を含む)に移した。温度の設定値を34℃に下げて、細胞増殖を遅くし、そしてタンパク質発現の相対的な速度を増加させる。
【0121】
((b)Flt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を産生するために使用される細胞培養プロセス)
Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)についての上記のと同じ方法論を使用してFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を産生した。
【0122】
(実施例22:改変Flt1レセプターの収集および精製)
((a)Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の収集および精製)
産物タンパク質を、Millipore Prostak接線方向流れ濾過モジュールおよび低せん断メカニカルポンプ(Fristam)を使用して、細胞を保持しながらバイオリアクターから無菌的に収集した。新鮮な培地を、収集濾過の間に除去される培地と置きかえるためにバイオリアクターに加えた。次いで、約40Lの収集濾液を、Protein A Sepharose樹脂を含有する400mLのカラム(Amersham Pharmacia)にローディングした。ローディングした後、樹脂を、10mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、pH7.2を含む緩衝液を用いて洗浄して、結合していない混入タンパク質を全て除去した。Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)タンパク質をpH3.0クエン酸緩衝液で溶出した。溶出したタンパク質をTris塩基の添加によって中和し、−20℃で凍結させた。
【0123】
上記Protein A工程からのいくつかの凍結したロットのFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)タンパク質を解凍し、プールし、そしてMillipore 30kD名目分子量カットオフ(NMWCO)接線方向流れ濾過膜を使用して濃縮した。このタンパク質を攪拌細胞濃縮器(Millipore)に移し、そしてさらに30kD NMWCO膜を使用して30mg/mLに濃縮した。濃縮タンパク質を、リン酸緩衝化生理食塩水+5%グリセロールで平衡化されたSuperdex 200樹脂(Amersham Pharmacia)を充填したサイズ排除カラムにローディングした。同じ緩衝液をカラムに流すために使用した。Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)ダイマーに対応する画分をプールし、0.22ミクロンフィルターを通して滅菌濾過し、アリコートし、凍結させた。
【0124】
(b)Flt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)の収集および精製)
Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)についての上記のpと同じ方法論を使用してFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を収集および精製した。
【0125】
(実施例23:一過性発現されたVEGFR2についてのリン酸化アッセイ)
4〜6回継代した初代ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、血清を含まないDME高グルコース培地中で2時間、飢餓させた。40ng/ml(1nM)ヒトVEGF165(これは、VEGFレセプターFlt1、Flk1およびFlt4(VEGFR3)に対するリガンドである)を含むサンプルを調製し、0.1%BSAを含み、血清を含まないDME高グルコース培地において、種々の量の改変Flt1レセプターFlt1(1−3)−Fc、Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2VEGFR3D3.FcΔC1(a)を用いて、室温で1時間プレインキュベートした。細胞を上記のように調製された試料+/−VEGF165を用いて5分間抗原投与し、続いて完全な溶解緩衝液を使用して細胞全体を溶解させた。細胞溶解物をVEGFR2レセプターのC末端に対して指向された抗体を用いて免疫沈降させた。免疫沈降された溶解産物を4〜12%SDS−PAGE Novexゲル上にローディングし、次いで、標準的な転写方法論を使用してPVDF膜に転写した。リン酸化したVEGFR2の検出を、4G10(UBI)と呼ばれる抗ホスホチロシンmAbを用いて免疫ブロットし、そしてECL試薬(Amersham)を使用して発色させることによって行った。
【0126】
図25A〜25Cおよび26A〜26Bは、この実験の結果を示す。図25A〜25Cは、VEGF165リガンド刺激によるチロシンリン酸化されたVEGFR2(Flk1)のウエスタンブロットによる検出が、改変Flt1レセプターがVEGFでのプレインキュベーションの間に使用されることに依存して、細胞表面レセプターが多様なレベルまでリン酸化されることを示すことを表す。図25Aに示されるように、1.5モル濃度過剰のFlt1(1−3)−Fc、Flt1(1−3)−Fc(A40)または一過性のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)のいずれかで、これらの3つの改変Flt1レセプターによるレセプター刺激を、コントロール培地のチャレンジと比較して、完全にブロックする。対照的に、一過性のFlt1D2VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、VEGF陽性コントロールチャレンジと比較して、このモル濃度過剰では顕著なブロックを示さない。類似の結果を図25Bに示す。ここで、改変Fltレセプターは、VEGF165リガンドに対して3倍のモル濃度過剰である。改変Flt1レセプターがVEGF165リガンドに対して6倍のモル濃度過剰である図25Cにおいて、一過性のFlt1D2VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、細胞表面レセプターのVEGF165誘導性刺激を部分的にブロックすることがここで示され得る。
【0127】
図26A〜26Bにおいて、VEGF165リガンド刺激によってチロシンリン酸化されたVEGFR2(Flk1)のウエスタンブロットによる検出は、1および2倍モル濃度過剰(図26A)または3および4倍モル濃度過剰(図26B)の一過性のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)、安定的なFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)、または一過性のVEGFR1R2−FcΔC1(a)のいずれかでプレインキュベートされたVEGF165を有するチャレンジサンプルによって、細胞表面レセプターがリン酸化されないことを示す。試験された改変Flt1レセプターの濃度の全てにおいて、プレインキュベーションの間にVEGF165リガンドは完全に結合し、コントロール培地のチャレンジと比較して、未結合VEGF165による細胞表面レセプターの検出可能な刺激を生じない。
【0128】
(実施例24:細胞増殖バイオアッセイ)
試験細胞集団はMG87細胞であり、この細胞は、TrkB細胞内キナーゼドメインに融合されたVEGFR2(Flk1)細胞外ドメインをコードするDNA挿入物を含む発現プラスミドで安定にトランスフェクトされ、従って、キメラ分子を産生する。ネイティブなVEGFR2(Flk1)細胞内キナーゼドメインよりもTrkB細胞内キナーゼドメインが使用された理由は、これらの細胞においてVEGF165によって刺激された場合に、VEGFR2(Flk1)の細胞内キナーゼドメインは強い増殖性応答を引き起こさないからである。全長TrkBレセプターを含むMG87細胞が、BDNFで刺激された場合に強い増殖性応答を提供することは公知である。従って、TrkB細胞内キナーゼドメインを操作して、この増殖性応答能を利用するようにVEGFR2(Flk1)の細胞内キナーゼドメインを置換する。
【0129】
96ウェルプレートにおいて、1ウェル当たり5×103細胞をプレートし、そして37℃で2時間静置した。以下の改変Fltレセプター(Flt1(1−3)−Fc、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a))、および陰性コントロールとしてのTie2−Fcと呼ばれる無関係なレセプターを、20pM〜40nMで滴定し、そして37℃で1時間細胞上でインキュベートした。次いで、規定された培地中のヒト組換えVEGF165を、1.56nMの濃度で全てのウェルに添加した。プレートを37℃で72時間インキュベートし、次いで、MTS(オーエン試薬、Promega)を添加し、そしてプレートをさらに4時間インキュベートした。最終的に、このプレートを450/570nmで分光光度計において読んだ。この実験の結果を図27に示す。コントロールレセプターTie2−Fcは、いずれの濃度でもVEGF165誘導性細胞増殖をブロックしないが、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)は、0.8nMの半分最大用量で1.56nMのVEGF165をブロックする。Flt1(1−3)−FcおよびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、このアッセイにおいて、約2nMの半分最大用量でVEGF165のブロックに効果的ではない。VEGF165単独では、1.2吸収単位の読み取りを提供し、そしてバックグラウンドは0.38吸収単位である。
【0130】
(実施例25:改変FltレセプターのVEGF165に対する結合化学量論)
(a)BIAcore分析
Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)のヒトVEGF165との相互作用の化学量論を、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)表面もしくはVEGFR1R2−FcΔC1(a)表面に対するVEGF飽和結合のレベルを測定するか、またはFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)もしくはVEGFR1R2−FcΔC1(a)のVEGF BIAcoreチップ表面に対する結合を完全に妨げるために必要なVEGF165の濃度を測定するかのいずれかで決定した。改変FltレセプターであるFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)を、Biacoreチップ(BIACORE)上にアミン結合化学を使用して第一に固定化した抗Fc特異的抗体で捕獲した。ブランクの抗体表面を、陰性コントロールとして使用した。VEGF165を、毎分10μlで1時間、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)表面およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)表面にわたって、1nM、10nMおよび50nMの濃度で注入した。リアルタイムの結合シグナルを記録し、そしてそれぞれの注入の最後に飽和結合に達成した。結合化学量論を、1ng/mlに等価な1000RUの転換因子を使用して、結合VEGF165と固定化Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)とのモル比として計算した。この結果は、1分子のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)、または1分子のVEGFR1R2−FcΔC1(a)当たりの,1分子のVEGF165二量体の結合化学量論を示した(図28)。
【0131】
溶液中で、1nMの濃度のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)(Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)/VEGF165相互作用のKDよりも1000倍高いと推定される)を、多様な濃度のVEGF165で混合した。1時間のインキュベーション後に、溶液中の遊離Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の濃度を、アミン結合VEGF165表面に対する結合シグナルとして測定した。較正曲線を使用して、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)BIAcore結合シグナルをそのモル濃度に変換した。データにより、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)溶液への1nMのVEGF165の添加がVEGF165表面へのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の結合を完全にブロックしたことが示された。この結果により、1分子のFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)当たり1分子のVEGF165の結合化学量論が示唆された(図29および図30)。Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の濃度を添加したVEGF165の濃度の画分としてプロットした場合、直線部分の傾きは、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)に対して−1.06であり、そしてVEGFR1R2−FcΔC1(a)に対して−1.07であった。傾きの大きさ(−1に非常に近い)によって、1分子のVEGF165がFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)のいずれか1分子に結合したことが示された。
【0132】
(b)サイズ排除クロマトグラフィー
Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)を、3倍過剰のVEGF165と混合し、そしてレセプター−リガンド複合体を、Pharmacia Superose 6 サイズ排除クロマトグラフィーカラムを使用して精製した。次いで、レセプター−リガンド複合体を、その成分タンパク質に分離するために6Mの塩酸グアニジンを含有する緩衝液中でインキュベートした。Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)を、6Mの塩酸グアニジンを通すSuperose 6 サイズ排除クロマトグラフィーカラムを使用してVEGF165から分離した。複合体の化学量論を決定するために、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGF165の数回の注入を行い、そしてピークの高さまたは積算したピークの強度を、注入したタンパク質の濃度の画分としてプロットした。Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF複合体の成分を分離した際に使用した条件と同一の条件下で、較正を行った。Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF複合体組成物の定量は、較正曲線に基いた。この実験の結果を図28に示す。これは、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)に対するVEGF165の比が、この複合体において1:1であることを示す。
【0133】
(実施例26:サイズ排除クロマトグラフィーによるFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体の結合化学量論の決定)
(Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体の調製)
VEGF165(濃度=3.61mg/ml)を、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)(濃度=0.9mg/ml)を一過性に発現するCHO細胞と3:1(VEGF165:Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a))のモル比で混合し、4℃で一晩インキュベートした。
【0134】
(a)ネイティブな条件下でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
過剰な未結合のVEGF165から複合体を分離するために、50μlの複合体を、PBS緩衝液で平衡化したPharmacia Superose 12 PC 3.2/30にロードした。室温で毎分40μlの流速にて、サンプルを、同一の緩衝液で溶出した。このSECの結果を図31に示す。ピーク#1は複合体を、そしてピーク#2は未結合のVEGF165を示す。1.1mlと1.2mlとの間で溶出された画分を合わせ、そして塩酸グアニジン(GuHCl)を最終濃度4.5Mで添加して、この複合体を分離した。
【0135】
(b)分離条件下でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
レセプター−リガンド複合体の成分を分離するため、そしてこれらのモル比を決定するために、上記のような50μlの分離した複合体を、6MのGuHClで平衡化したSuperose 12 PC 3.2/30にロードし、そして室温で毎分40μlの流速にて、同一の溶液で溶出した。このSECの結果を図32に示す。ピーク#1はFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)を、そしてピーク#2はVEGF165を示す。
【0136】
(c)Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a):VEGF165複合体の化学量論の算出
レセプター−リガンド複合体の化学量論を、これらの成分のピークの面積またはピークの高さから決定した。ピークの高さまたはピークの面積に対応するVEGF165およびFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の濃度をそれぞれ、VEGF165およびFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)に関する標準曲線より得た。標準曲線を得るために、4つの異なる濃度(0.04mg/ml〜0.3mg/ml)のいずれかの成分を、6M 塩酸グアニジンで平衡化したPharmacia Superose 12 PC 3.2/30カラムに注入し、そして室温で毎分40μlの流速にて、同一の溶液で溶出した。ピークの面積またはピークの高さ 対 タンパク質濃度のプロットによって、標準曲線を得た。成分のピークの面積から決定したVEGF165:Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)のモル濃度比は、1.16であった。成分のピークの高さから決定したVEGF165:Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)のモル比は、1.10であった。
【0137】
(実施例27:オンライン光散乱を用いるサイズ排除クロマトグラフィーによるFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体の化学量論の決定)
(複合体調製)
VEGF165を、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)タンパク質を一過性に発現するCHOと3:1(VEGF165:Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a))のモル比で混合し、そして4℃で一晩インキュベートした。
【0138】
(a)オンライン光散乱を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
MiniDawnオンライン光散乱検出器(Wyatt Technology、Santa Barbara、California)および屈折率(RI)検出器(Shimadzu、Kyoto、Japan)を用いるサイズ排除クロマトグラフィーカラムを使用して、レセプター−リガンド複合体の分子量(MW)を決定した。サンプルをPBS緩衝液で平衡化したSuperose 12 HR 10/30カラム(Pharmacia)に注入し、そして室温で毎分0.5mlの流速にて、同一の緩衝液で溶出した。図33に示されるように、溶出プロフィールは2つのピークを示す。ピーク#1はレセプター−リガンド複合体を、そしてピーク#2は未結合VEGF165を示す。MWをLSおよびRIのシグナルより計算した。同一の手順を使用して、レセプター−リガンド複合体の個々の成分のMWを決定した。これらの決定の結果は以下である:ピーク位置でのFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体のMWは、157 300(図33)であり、ピーク位置でのVEGF165のMWは44 390(図34)であり、そしてピークでのR1R2のMWは113 300(図35)である。
【0139】
これらのデータは、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体の化学量論がFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGF165の分子量の合計に対応して1:1であることを示した。重要なことに、この方法は、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)/VEGF165複合体が実はVEGF165リガンドの1分子のみとFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)の1分子のみから構成されたことを最終的に証明した。
【0140】
(実施例28:Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)のペプチドマッピング)
Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)のジスフィルド構造およびグルコシル化部位を、ペプチドマッピング法によって決定した。この方法においては、タンパク質をまずトリプシンで切断した。トリプシン処理のフラグメントを、N末端配列決定技術に加えて、質量分析法と連結したHPLCで分析および同定した。トリプシン消化の還元を、ジスフィルド結合含有フラグメントの同定を補助するために利用した。PNGase F(Glyko,Novato,CA)でのトリプシン消化の処理を、N連結グリコシル化部位を有するフラグメントの同定を補助するために利用した。これらの結果を添付する図36に要約する。
【0141】
Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)に合計10のシステインが存在し;これらの6つはFc領域に属する。Cys27は、Cys76にジスフィルド結合することが確認された。Cys121は、Cys182にジスフィルド結合することが確認された。Fc領域の最初の2つのシステイン(Cys211およびCys214)は、別のFc鎖における同一の2つのシステインと分子間ジスフィルド結合を形成する。しかし、これらの2つのシステインは酵素的に互いを分離し得ないので、ジスフィルド結合が同一のシステインの間(例えば、Cys211とCys211)またはCY211とCys214との間に生じるか否かは決定し得ない。Cys216は、Cys306にジスフィルド結合することが確認される。Cys352は、Cys410にジスフィルド結合することが確認される。
【0142】
Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)に5つの可能性のあるN連結グリコシル化部位が存在する。これら5つの全ては、多様な程度にグリコシル化されることが見出される。完全なグリコシル化が、Asn33(アミノ酸配列NIT)、Asn193(アミノ酸配列NST)およびAsn282(アミノ酸配列NST)で観察された。さらに、部分的グリコシル化がAsn65およびAsn120で観察される。グリコシル化の部位を、図36で下線によって強調する。
【0143】
(実施例29:改変Fltレセプターの薬物動態分析)
(a)Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)の薬物動態分析
Balb/cマウス(25〜30g)に、4mg/kgのFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を一過性に発現したCHO、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を安定的に発現したCHO、およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)を一過性に発現したCHOを用いて皮下注射した。注射後1、2、4、6、24時間、2日、3日および6日に、マウスを尾から採血した。血清を、Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)を検出するように設計したELISAでアッセイした。ELISAは、ELISAプレートをVEGF165でコーティングする工程、検出Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)またはVEGFR1R2−FcΔC1(a)を結合させる工程および西洋ワサビペルオキシダーゼに連結された抗Fc抗体でレポートする工程を包含する。この実験の結果を図37に示す。Flt1(1−3)−Fc(A40)についてのTmaxは、6時間であったが、一過性Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)および安定的なFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)ならびに一過性VEGFR1R2−FcΔC1(a)についてのTmaxは、24時間であった。Flt1(1−3)−Fc(A40)についてのCmaxは、8μg/mlであった。Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)の両方の一過性について、Cmaxは、18μg/mlであり、安定的なVEGFR1R2−FcΔC1(a)について、Cmaxは、30μg/mlであった。
【0144】
(b)Flt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)の薬物動態分析
Balb/cマウス(25〜30g)に、4mg/kgのFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)を一過性に発現したCHOおよびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を一過性に発現したCHOを用いて皮下注射した。注射後1、2、5、6、7、8、12、15および20日に、マウスを尾から採血した。血清を、Flt1(1−3)−Fc、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)またはFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を検出するように設計したELISAでアッセイした。ELISAは、ELISAプレートを165でコーティングする工程、Flt1(1−3)−Fc、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)またはFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)を結合させる工程および西洋ワサビペルオキシダーゼに連結された抗Fc抗体でレポートする工程を包含する。Flt1(1−3)−Fc(A40)は、もはや5日後に血清中で検出され得ないが、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)は、15日以上検出可能であった。この実験の結果を図38に示す。
【0145】
(実施例30:インビボで腫瘍増殖を阻害するFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の能力の評価)
インビボで腫瘍増殖を阻害するFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の能力の評価するために、雄の重篤複合免疫不全(SCID)マウスの右脇腹に腫瘍細胞懸濁液を皮下移植するモデルが利用した。2つの細胞株(それぞれが明確に異なる形態および増殖特性を示す、ヒトHT−1080線維肉腫細胞株(ATCC受託番号CCL−121)およびラットC6神経膠腫細胞株(ATCC受託番号CCL−107))を、アッセイに使用した。Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の第一の用量(25mg/Kgでかまたは図39および40に示されるように)を、腫瘍移植の日に提供した。動物に、続いてFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)またはビヒクルの皮下注射を、一日おき(EOD)か1週間に2回(2×/wk)のいずれかで2週間にわたって受けさせた。2週間後、動物を固定液で灌流し、腫瘍を取り外し、そしてサンプルを盲目検定した。可視の皮下腫瘍の長さおよび幅を測定することによって、腫瘍体積を決定した。Flt1(1−3)−Fc(A40)およびFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の両方は、HT−1080細胞およびC6細胞によって形成された腫瘍の増殖を顕著に減少した。これらの実験の結果を図39および図40に示す。
【0146】
(実施例31:雌性生殖系におけるVEGF165および改変Fltレセプターの効果)
生殖周期の経過にわたる子宮および卵巣で生じる血管リモデリングの通念的なパターンは、十分に特徴付けられており、これらの組織を、新脈管形成、血管リモデリングおよび血管退化を調節する機構の研究へ格別十分に最適にする。実際に、生殖組織のインサイチュハイブリダイゼーション研究によって、VEGFが、成熟したげっ歯類ならびにヒトおよび非ヒト霊長類において、生理的新脈管形成のメディエーターとして作用する最初の明確な証拠が提供された(Phillipsら、1990;Ravindranathら、1992;Shweikiら、1993;Kamatら、1995)。周期性の新脈管形成および血管リモデリングは、正常な卵巣および子宮の顕著な特徴であるので、異常な血管増殖および/または血管機能不全が、これらの器官に影響を与える多くの病理状態を特徴付けることが見出されたことは、驚くべきことではない。さらに、これらの病原性の血管異常性は、1つ以上の脈管形成因子または抗脈管形成因子、最も顕著にはVEGFの発現の調節不全な発現によって、引起されるかまたは不滅化されると考えられる。
【0147】
例えば、異常な新脈管形成は、多嚢胞性卵巣疾患、子宮内膜症および子宮内膜癌腫に特徴的であり、そして各場合において、VEGFは、発症組織において過剰発現している(Kamatら、1995;Shifrenら、1996;Guidiら、1996;Donnezら、1998)。VEGFの過剰発現はまた、卵巣過剰刺激症候群(McClureら、1994;Levinら、1998)および子癇前症(Bakerら、1995;Sharkeyら、1996)における全身性の血管の透過性亢進(hyperpermeability)の確立に病原性の役割を果たすと考えられている。さらに、VEGFは、卵巣癌および他の腫瘍と関連する腹水の生成の原因である透過性因子として関連している(Sengerら、1983;Boocockら、1995)。VEGFの生物学的活性を効果的に中和する薬剤は、上記の状態および関連する状態において治療的に有用であるものとして合理的に予測され得る。
【0148】
新脈管形成および血管リモデリングはまた、未分化胚芽細胞の着床および胎盤の発達の特徴である(Findlay、1986)。VEGFは、母体脱落膜中および胚のトロホブラスト中の両方において強く発現し、ここで、これはまず着床期辺りの間に、子宮脈環構造の発現および透過性亢進を刺激し、続いて、母性成分の胎盤血管構造と胚成分の胎盤血管構造との両方の形成を媒介すると考えられる(Shweikiら、1993;Cullinan−BoveおよびKoos、1993;Chakrabortyら、1995;Dasら、1997)。VEGFはまた、黄体の新脈管形成に必要であり、そして、着床のための子宮の準備に必要であるプロゲステロン分泌と関連する(Ferraraら、1998)。従って、VEGFの生物学的活性を阻害する薬剤は、(着床を妨げることによって)避妊剤として有用であるか、または妊娠の初期段階における流産を促す物質として有用であることが証明され得る。後者の適用は、異所性妊娠の終結のための非外科的介入としての特定の用途が見出され得る。
【0149】
VEGFレセプターの発現は、正常な生殖組織中の血管内皮に広く確認されたが、Flt1はまた、ヒトおよび動物の両方の胎盤中のトロホブラストに発現し(Clarkら、1996;Heら、1999)、これによって、トロホブラスト浸潤に役割を果たすことが提案される。興味深いことに、Flt1およびKDR(Flk1)の両方は、絨毛癌細胞株のBeWoに発現し(Charnock−Jonesら、1994)、そしてVEGFは、これらの細胞中のDNA合成およびMAPキナーゼのチロシンリン酸化を促進することが示された。さらに、原発性卵巣癌および転移性卵巣癌は、高レベルのVEGFを発現するだけでなく、血管内皮に加えて、さらにこの腫瘍細胞自身が、KDRおよび/またはFlt1を発現する(Boocockら、1995)。これらの知見によって、VEGFは腫瘍血管構造の生成および維持に決定的に関与し得るのみでなく、少なくともいくつかの生殖腫瘍起源のVEGFは、腫瘍細胞の生存および増殖を直接支持することによってオートクラインの役割を促進し得る。従って、VEGFの作用を阻害する薬剤は、生殖起源の腫瘍の処置に対する特に有益な適用を有し得る。
【0150】
(方法および結果)
((a)VEGF誘導の子宮透過性亢進の評価)
妊娠した雌馬の血清ゴナドトロピン(PMSG)を、皮下注射し(5IU)、思春期前の雌のラットに排卵を誘導した。これは、2日後にエストラジオールの急増を引き起こし、次に、子宮中のVEGFの誘導を引き起こした。この誘導が子宮の透過性亢進を引き起こし、ゆえに、6時間後に子宮の湿重量における増加を生じ、従ってこれは、改変FltレセプターのFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)によって強力に阻害され得たことが、報告された。このインビボモデルにおいて、ラットの子宮の通常の重量は、約50mgであり、そしてこれは、PMSGによって300〜350mgに誘導され得る。組織の乾燥によって、これが全て水の重量であることが明らかとなる。PMSG注射の1時間後のFlt1(1−3)−Fc(A40)、Flt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)およびFlt1D2.VEGFR3D3.FcΔC1(a)の25mg/kgでの皮下注射は、子宮湿重量における増加の約50%の阻害を引き起こした。改変Fltレセプターの用量における増加は、湿重量における増加をさらに減少せず、このモデルに対するVEGF独立の成分が存在することを示唆する。この実験の結果を、図41に示す。
【0151】
((a)プロゲステロンを読取った情報として用いる黄体新脈管形成の評価) 妊娠した雌馬の血清ゴナドトロピン(PMSG)を皮下注射(5IU)し、思春期前の雌のラットに排卵を誘導する。これは、4日後に密集した血管のネットワークを含む完全に機能する黄体を引き起こし、これは、着床のために子宮を準備するために、血流へのプロゲステロンの分泌を可能にする。黄体における新脈管形成の誘導は、VEGFを必要とする;従って、VEGFのブロックは、新規の血管の不足を引起こし、ゆえに血流へのプロゲステロンの分泌の不足を引起す。このインビボモデルにおいて、生じたプロゲステロンのレベルは、約5ng/mlであり、そして、これは、PMSG注射の1時間後に25〜40ng/mlのレベルまで誘導し得た。Flt1(1−3)−Fc(A40)またはFlt1D2.Flk1D3.FcΔC1(a)の、25mg/kgまたは5mg/kgでの皮下注射は、4日目にプロゲステロン誘導の完全な阻害を引起した。この実験の結果は、図42A〜42Bに示す。
【0152】
(実施例33:Fltl(1−3)−Fc(A40)およびペグ化(pegylate)されたFlt1(1−3)−Fcの薬物動態分析)
Flt1(1−3)−Fcを、10kDまたは20kDのいずれかのPEGを用いてペグ化し(PEGylate)、そして、balb/cマウス中でその薬物動態プロフィールに対して試験した。両方のペグ化形態のFlt1(1−3)−Fcが、Flt1(1−3)−Fc(A40)よりも、非常に良好なPKプロフィールを有し、これらのペグ化分子に対して、Flt1(1−3)−Fc(A40)の6時間と対照的に24時間でTmaxを伴った。
【0153】
(実施例34:改変Flt1レセプター改変体の親和性を試験するためのVEGF165 ELISA)
10pMのVEGF165を、一晩室温で、改変Flt1レセプター改変体を160pM〜0.1pMの範囲で用いてインキュベートした。この実験に使用された改変Flt1レセプター改変体は、Flt1(1−3)−Fc、Flt1(1−3)−Fc(A40)、一過性に発現されるFlt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)、一過性に発現されるFlt1D2VEFGFR3D3−FcΔC1(a)、Flt1−(1−3NAS)−Fc、Flt1(1−3R->C)−FcおよびTie2−Fcであった。Flt1(1−3NAS)−Fcは、高い塩基性アミノ酸配列KNKRASVRRRがNASVNGSRによって置換されるFlt(1−3)−Fcの改変バージョンであり、2つの新規なグリコシル化部位の組み込みおよび5つの正の電荷の正味の減少を引起す(この両方は、PKに対するこの配列の所望されない効果を減少する目的を伴う)。Flt1(1−3R->c)−Fcは、同じ塩基性アミノ酸配列中の単一のアルギニン(R)残基が、システイン(C)に変化する改変であり(KNKASVRRR−>KNKASVRRR)、その残基のペグ化を可能にし、次いでこれは、PKに対するその所望されない効果の発揮から塩基性領域を保護し得る。インキュベーションの後、この溶液を、VEGF165に対する捕獲抗体(R&D)を含むプレートに移した。次いで、遊離のVEGF165の量を、抗体を用いて測定し、遊離のVEGF165を報告した。これは、VEGF165に対して最も高い親和性を有する改変Flt1レセプター改変体(遊離のVEGF165の最も少ない量として測定される)が、Flt1D2Flk1D3.FcΔC1(a)であり、Flt1(1−3)−FcおよびFlt1(1−3)−Fc(A40)が続き、次いでFlt1(1−3R->C)−Fc、Flt1(1−3NAS)−FcおよびFlt1D2VEFGFR3D3−FcΔC1(a)が続くことを示した。Tie2Fcは、VEGF165に対する親和性を有さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGFポリペプチドに結合し得る融合ポリペプチドをコードする単離された核酸分子であって、以下:
(b)多量体化成分をコードするヌクレオチド配列に(a)作動可能に連結されたVEGFレセプター成分をコードするヌクレオチド配列、
を含み、ここで、該VEGFレセプター成分は該融合ポリペプチドの唯一のVEGFレセプター成分であり、そして、該(a)のヌクレオチド配列は、本質的に、第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列および第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列からなる、
単離された核酸分子。
【請求項2】
前記第1のVEGFレセプターがFlt1である、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
前記第2のVEGFレセプターがFlk1である、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項4】
前記第2のVEGFレセプターがFlt4である、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項5】
請求項1に記載の単離された核酸分子であって、ここで前記第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2をコードするヌクレオチド配列が、前記第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3をコードするヌクレオチド配列の上流にある、単離された核酸分子。
【請求項6】
請求項1に記載の単離された核酸分子であって、ここで前記第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2をコードするヌクレオチド配列が、前記第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3をコードするヌクレオチド配列の下流にある、単離された核酸分子。
【請求項7】
前記多量体化成分が、免疫グロブリンドメインを含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
前記免疫グロブリンドメインが、IgGのFcドメイン、IgGの重鎖、およびIgGの軽鎖からなる群より選択される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
改変Flt1レセプター融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子であって、ここで、該核酸分子のコード領域が、以下:
(a)図13A〜13Dに示されるヌクレオチド配列
(b)図14A〜14Cに示されるヌクレオチド配列;
(c)図15A〜15Cに示されるヌクレオチド配列;
(d)図16A〜16Dに示されるヌクレオチド配列;
(e)図21A〜21Cに示されるヌクレオチド配列
(f)図22A〜22Cに示されるヌクレオチド配列;
(g)図24A〜24Cに示されるヌクレオチド配列;および
(h)遺伝暗号の縮重の結果として、該(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)または(g)のヌクレオチド配列とは異なり、かつ該改変Flt1レセプター融合ポリペプチドの生物学的活性を有する融合ポリペプチド分子をコードする、ヌクレオチド配列、
からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなる、単離された核酸分子。
【請求項10】
請求項1、2、3、4または9に記載の単離された核酸分子によってコードされる、融合ポリペプチド。
【請求項11】
VEGF分子に結合して、請求項10に記載の融合ポリペプチドの多量体を含む非機能性複合体を形成し得る、組成物。
【請求項12】
前記多量体が二量体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物及びキャリア。
【請求項14】
請求項1、2、3、4または9に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項1、2、3、4または9に記載の核酸分子を含む発現ベクターであって、ここで、該核酸分子は、発現制御配列に作動可能に連結される、発現ベクター。
【請求項16】
適切な宿主細胞中で、請求項15に記載の発現ベクターを含む融合ポリペプチドを産生するための、宿主−ベクター系。
【請求項17】
前記適切な宿主細胞が、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞である、請求項16に記載の宿主−ベクター系。
【請求項18】
前記適切な宿主細胞が、E.coliである、請求項16に記載の宿主−ベクター系。
【請求項19】
前記適切な宿主細胞が、COS細胞である、請求項16に記載の宿主−ベクター系。
【請求項20】
前記適切な宿主細胞が、CHO細胞である、請求項14に記載の宿主−ベクター系。
【請求項21】
融合ポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、請求項16に記載の宿主−ベクター系の細胞を、該融合ポリペプチドの産生を可能にする条件下で増殖させる工程、およびそのようにして産生された該融合ポリペプチドを回収する工程、を包含する、方法。
【請求項22】
図10A〜10D、または図24A〜24Cに示された核酸配列によってコードされる、アセチル化またはペグ化によって改変された、融合ポリペプチド。
【請求項23】
前記改変がアセチル化である、請求項22に記載の融合ポリペプチド。
【請求項24】
前記改変がペグ化である、請求項22に記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
前記アセチル化が、少なくとも約100倍過剰のモル濃度のアセチル化試薬を用いて達成される、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
前記アセチル化が、少なくとも約10倍過剰のモル濃度〜約100倍過剰のモル濃度の範囲の、過剰なモル濃度のアセチル化試薬を用いて達成される、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項27】
前記ペグ化が、10K PEGまたは20K PEGである、請求項24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項28】
請求項10に記載の融合ポリペプチドを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における血漿漏出を減少または阻害する方法。
【請求項29】
前記哺乳動物がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記融合ポリペプチドがアセチル化されている、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記融合ポリペプチドがペグ化されている、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
VEGFレセプターリガンドVEGFに特異的に結合する、請求項10に記載の融合ポリペプチド。
【請求項33】
請求項10に記載の融合ポリペプチド有効量を投与することを含む、ヒトにおける血管増殖をブロックする方法。
【請求項34】
請求項10に記載の融合ポリペプチド有効量を投与することを含む、哺乳動物におけるVEGFレセプターリガンド活性を阻害する方法。
【請求項35】
前記哺乳動物がヒトである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ヒトにおいて、腫瘍増殖を減弱もしくは予防するための、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
ヒトにおいて、水腫を減弱もしくは予防するための、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
ヒトにおいて、腹水形成を減弱もしくは予防するための、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記水腫が、脳水腫である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記腹水が、卵巣癌関連腹水である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
VEGFポリペプチドに結合し得る融合ポリペプチドであって、該融合ポリペプチドは、以下:
(b)多量体化成分に(a)作動可能に連結されるVEGFレセプター成分、
を含み、ここで、該VEGFレセプター成分は、該融合ポリペプチドにおいて唯一のVEGFレセプター成分であり、そして、本質的に、第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列および第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列からなる、
融合ポリペプチド。
【請求項42】
前記第1のVEGFレセプターがFlt1である、請求項41に記載の融合ポリペプチド。
【請求項43】
前記第2のVEGFレセプターがFlk1である、請求項41に記載の融合ポリペプチド。
【請求項44】
前記第2のVEGFレセプターがFlt4である、請求項41に記載の融合ポリペプチド。
【請求項45】
請求項41に記載の融合ポリペプチドであって、ここで前記第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列が、前記第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列の上流にある、融合ポリペプチド。
【請求項46】
請求項41に記載の融合ポリペプチドであって、ここで前記第1のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン2のアミノ酸配列が、前記第2のVEGFレセプターの細胞外ドメインのIgドメイン3のアミノ酸配列の下流にある、融合ポリペプチド。
【請求項47】
前記多量体化成分が、免疫グロブリンドメインを含む、請求項41に記載の融合ポリペプチド。
【請求項48】
前記免疫グロブリンドメインが、IgGのFcドメイン、IgGの重鎖、およびIgGの軽鎖からなる群より選択される、請求項41に記載の融合ポリペプチド。
【請求項49】
改変Flt1レセプターのアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドであって、ここで、該アミノ酸配列が、以下:
(a)図13A〜13Dに示されるヌクレオチド配列
(b)図14A〜14Cに示されるヌクレオチド配列;
(c)図15A〜15Cに示されるヌクレオチド配列;
(d)図16A〜16Dに示されるヌクレオチド配列;
(e)図21A〜21Cに示されるヌクレオチド配列
(f)図22A〜22Cに示されるヌクレオチド配列;および
(g)図24A〜24Cに示されるヌクレオチド配列、
からなる群より選択される、融合ポリペプチド。
【請求項50】
請求項41、42、43、44または49に記載される融合ポリペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における血漿漏出を減少または阻害する方法。
【請求項51】
請求項41、42、43、44または49に記載される融合ポリペプチドの有効量を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるVEGFレセプターリガンド活性を阻害する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25A−B】
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【図25C】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2011−24595(P2011−24595A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−226970(P2010−226970)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2001−502582(P2001−502582)の分割
【原出願日】平成12年5月23日(2000.5.23)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】