説明

改善された超撥水性を有するアルキルアルコキシシロキサンベースの建築物保護の適用のための組成物

本発明は、多孔質の鉱物質支持体を疎水化するため、および支持体の表面上に超撥水効果を生じるための組成物、ならびに該組成物の製造方法に関するものであり、該組成物は、少なくとも1のシランオリゴマー、少なくとも1の加水分解触媒もしくは縮合触媒、少なくとも1のフッ素含有ポリマー、場合により水および/または少なくとも1の有機溶剤、場合により少なくとも1の乳化剤および場合により別の助剤をベースとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された超撥水性を有するアルキルアルコキシシロキサンをベースとする、多孔質の無機質支持体を疎水化するための組成物、その製造および建築物を保護するためのその使用に関する。アルキルアルコキシシロキサンは以下では略して(疎水化)作用物質またはオリゴマーのシラン系もしくはシランオリゴマーとも呼ぶ。
【0002】
アルキル鎖を有するシラン化合物が、多孔質の鉱物質支持体上に疎水性の特性を生じうることは以前から公知である。たとえば特にモノマーの短鎖アルキルアルコキシシランは、深部への良好な含浸性により優れている(EP0101816)。
【0003】
オリゴマーのシラン系、たとえばアルキルアルコキシシロキサンは、疎水化剤としてのその使用に関して利点を有している。というのも、適用の際にモノマーのシラン系よりも、揮発性有機化合物(VOC)の放出が少ないからである。
【0004】
このようなオリゴマーのシラン系の加水分解速度および硬化速度は、比較可能なモノマー系よりも遅い(E.P.Plueddemann、Silane Coupling Agents、Plenum Press、New York、1991年)。しかし、適切な加水分解触媒および縮合触媒を添加することによって、このような建築物保護剤の硬化反応の速度を改善することができる。
【0005】
さらに、建築物保護剤を、溶液または液状もしくはペースト状もしくはクリーム状の、つまり粘度の高いエマルションの形で適用することが公知である(特にEP0814110、EP1205481、EP1205505、WO06/081892)。
【0006】
疎水化の適用からしばしば所望される品質の特徴の1つは、疎水化された支持体の表面上で丸い水滴を形成する効果(略して超撥水効果と呼ぶ)である。
【0007】
残念ながら、前記の建築物保護剤は、多孔質の無機質支持体上に適用した後に、確かに水の進入を妨げる(疎水化する)ものの、その際に、超撥水性は達成されないか、またはごくわずかに達成されるにすぎない。
【0008】
US4,846,886は、多孔質支持体を処理するための撥水性組成物に関するものであり、この場合、組成物は特にアルキルアルコキシシラン、アルコール、ベンジン炭化水素およびキャリアとしてのグリコールエーテルからなる混合物、触媒としての金属塩、ならびに薬剤の適用の際に超撥水効果を生じる物質を含有しており、この物質は、アミノ塩官能化シロキサンコポリマー、シリコーンゴム、メチルシリコーンまたはトリフルオロプロピル官能化メチルシリコーンの群から選択されている。この方法によっても達成可能な超撥水性は、多くの適用者にとって十分ではない。
【0009】
WO06/081891は、建築物保護エマルションが、超撥水助剤として、フルオロポリマーを含有していてもよいことを教示している。このエマルションは、その効果がアルカリ度の低い下地の上ではそれほど良好ではないという欠点を有している。
【0010】
EP0826650から、フッ素含有ポリマーを含有している水性エマルションが公知である。記載の調製物の欠点は、加水分解反応および硬化反応が遅すぎることと、超撥水効果が完全に形成されるまでに数日間を必要とすることである。
【0011】
さらに、添加剤を水性系または有機系に混合する際に、泡が形成されうることが公知であり、これは業務上の運用においてしばしば妨げとなる。フッ素含有ポリマーは泡を安定化するものであり、従ってたとえば消火用の泡を安定化するために使用される(WO2008/027604)。この泡の形成はたとえば適切な消泡剤の添加によって防止することができる。しかし、別の成分の添加は、付加的なコストの要因である。
【0012】
本発明の根底には、建築物保護の適用のためのアルキルシロキサンベースの組成物の超撥水性を改善するという課題が存在していた。同時に、できる限り作用物質が深くまで含浸する特性が得られることが望まれていた。さらに、本発明の関心は、できる限りそのような組成物を製造する際の起泡を低減することであった。
【0013】
前記の課題は本発明により、特許請求の範囲に記載されている発明によって解決された。従って、ここに提出されている請求項は同時に、詳細な説明の記載を構成しているものとみなすべきである。
【0014】
意外にも、フッ素含有ポリマーの群からの少なくとも1の超撥水剤を適切に多孔質の鉱物質支持体を疎水化するためのアルキルアルコキシシランベースの薬剤に添加混合することにより、有利な方法で、明らかに改善された超撥水効果を達成することができることが判明した。
【0015】
本発明では、起泡を容易かつ経済的な方法で有利にほぼ回避することができる。
【0016】
さらに、本発明による組成物は、当該組成物で処理した支持体の極めて良好な水の吸収の低減、および水に対する優れた超撥水性と同時に高い浸透性を有しており、ならびに硬化反応の速度が十分であることにより優れている。
【0017】
この意味で、本発明による組成物は、特に有利に多孔質の鉱物質支持体、有利にはケイ酸塩材料、特にいくつかの例を挙げるとしたら、コンクリート、繊維強化セメント、粘土、レンガ、大理石、花崗岩、砂岩または石灰石のような建築材料を疎水化するために使用することができる。
【0018】
従って本発明による組成物は、塊状で、有機溶剤中に溶解して、ならびに水性のエマルションとして存在し、かつ適用することができる。
【0019】
さらに、本発明による組成物は、適切な溶剤もしくは希釈剤により有利に所望の作用物質濃度に調整することができる。
【0020】
有利に使用される溶剤もしくは希釈剤は、このために適切な有機溶剤、たとえば、室温よりも高い沸点を有する脂肪族ならびに芳香族の炭化水素の群からの少なくとも1の有機溶剤または希釈剤、たとえばC6〜C12−アルカン、ベンジン、石油エーテル、ディーゼル、ケロシン、トルエン、キシレン、アルコールもしくはポリオール、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、イソノナノール、グリセリン、ケトン、たとえばアセトン、または前記の有機溶剤の少なくとも2種類からなる混合物であるが、これらに限定されるものではない。しかしまた、溶剤は水であってもよい。
【0021】
本発明の対象は、多孔質の鉱物質支持体を疎水化するため、および支持体の表面に超撥水効果を生じるための組成物であり、この組成物は、
少なくとも1のシランオリゴマー、
少なくとも1の加水分解触媒もしくは縮合触媒、
少なくとも1のフッ素含有ポリマー、
場合により水および/または少なくとも1の有機溶剤、
場合により少なくとも1の乳化剤、および
場合により別の助剤
をベースとする。
【0022】
本発明による組成物は、有利にはエマルションである。
【0023】
前記のアルキルアルコキシシラン(作用物質とも呼ばれ、水性エマルション中の油相の成分である)は、有利には、理想式I
【化1】

[式中、Rは、相互に無関係に、C1〜C18−アルキルであり、基R1は、同じであるか、または異なっており、かつR1は、水素原子であるか、または1〜6個の炭素原子、有利には1個または2個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは、2〜40、有利には2〜20のオリゴマー度である]のシランオリゴマーまたは相応するオリゴマー混合物である。これは有利には平均オリゴマー度3〜20、有利には4〜6を有するオリゴマー混合物であり、その際、平均分子量は、有利には1200g/モル以下、特に400〜1200g/モルである。この場合、シランオリゴマーは、線状、環式および/または分枝鎖状の単位として存在していてよい。
【0024】
シランオリゴマーの有利な例は、基:
R=CH3−、C25−、C37−、C49−、i−C49−、C613−、i−C613−、C816−、i−C816−および
1=H、メチルまたはエチル
を有するものである。
【0025】
さらに、本発明による組成物は有利には、組成物に対して、作用物質を1〜98質量%、有利には2〜85質量%、特に有利には3〜80質量%、とりわけ有利には5〜75質量%、ことに8〜50質量%含有していることを特徴とする。
【0026】
さらに、本発明による組成物は、有利には元素の周期律表(PSE)の第3および第4主族ならびにPSEの副族II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIa、VIIIbおよびVIIIcの元素の錯化合物、たとえばハロゲン化物、酸化物、水酸化物、イミド、アルコラート、アミド、チオレート、カルボキシレートおよび/またはこれらの置換基の組み合わせ、特にチタネートまたはジルコネート、たとえばテトラ−n−ブチルオルトチタネートまたはテトラ−n−プロピルオルトジルコネートの群からの少なくとも1の加水分解触媒もしくは縮合触媒を含有している。さらに、PSEの第1および第2主族の酸化物、水酸化物、リン酸水素塩、硫酸水素塩、硫化物、硫化水素、炭酸塩または炭酸水素塩、および/またはアルコラート、有利にはナトリウムメタノラートまたはナトリウムエタノラート、および/またはアミノアルコール、有利には2−アミノエタノールまたは2−(N,N−ジメチル)アミノエタノールを使用することができる。最後に、カルボン酸、たとえばギ酸、酢酸またはプロピオン酸、ならびに鉱酸、たとえば塩酸または燐酸を使用することができる。
【0027】
本発明による組成物中での触媒の含有率は、作用物質に対して、好適には0.1〜3質量%、有利には0.1〜2質量%、特に有利には0.5〜1.5質量%である。
【0028】
特に本発明による組成物は、少なくとも1のフッ素不含のポリマーまたはフッ素含有ポリマーの含有率による明らかに改善された超撥水性により優れている。
【0029】
有利なフッ素含有ポリマーは、有機的に結合した形でのフッ素、特に二価のCF2基ならびに一価のCF3基の形でのフッ素を含有している。使用されるフッ素含有ポリマーは、CおよびF以外に、別の元素、たとえば水素、窒素、燐、酸素、硫黄、塩素、臭素および/またはヨウ素を結合された形で含有している。本発明により使用されるフッ素含有ポリマーは、ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーであってよく、その際、コポリマーおよびターポリマーの場合には、ベースとなっているモノマーの少なくとも1つは、CF2基を有していなくてはならない。CF2基を含有しているモノマーは、たとえばテトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、弗化ビニリデン、1,1−ジヒドロペルフルオロブチルアクリレートであってよい。
【0030】
一般式II
【化2】

[式中、相互に無関係に、
X=C、PまたはSであり、
2=−H、−OH、−CH3、−C24、−CH=CH2、−C(−CH3)=CH2、>(CH−CH2qまたは>(C(−CH3)CH2q−(q=2〜200)であり、
m=1、2または3であり、
n=1〜100であり、かつ
p=0、1または2であり、ただしその際、X=Cである場合にはm+p=2であり、X=Pである場合にはm+p=3であり、かつX=Sである場合にはm+p=2である]の本発明によるフッ素含有ポリマーは特に有利である。
【0031】
さらに、本発明によれば、フッ素含有ポリマーとして、前記の式により記載される化合物と、たとえばエチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニルまたはメタクリル酸エステル、たとえばメタクリル酸メチルエステルとからなるコポリマーおよびターポリマーが有利である。従ってたとえば一般式III
【化3】

[式中、相互に無関係に、
3=−H、−CH3であり、
m=1〜200であり、
n=0〜200であり、
o=1〜100であり、
p=1〜100であり、かつ
q=0〜100である]のフッ素含有コポリマーが有利である。
【0032】
その際、有利には本発明による組成物中で、フッ素含有ポリマーが、組成物に対して、0.5〜6質量%、特に有利には1〜5質量%、とりわけ2〜4質量%含有されていることが有利であり、ポリマーという用語は、本発明では、コポリマーおよびターポリマーを含むものとする。
【0033】
本発明による組成物が、水性エマルションの形で存在しているかぎり、これらは有利にC8〜C18−アルキルを有するアルキルスルフェート、疎水基中にC8〜C18−アルキルを有し、かつ1〜40個のエチレンオキシド(EO)単位もしくはプロピレンオキシド(PO)単位を有するアルキルエーテルスルフェートおよびアルカリールエーテルスルフェート、C8〜C18−アルキルを有するアルキルスルホネート、C8〜C18−アルキルを有するアルカリールスルホネート、および5〜15個の炭素原子を有する一価のアルコールもしくはアルキルフェノールとスルホコハク酸との半エステル、アルキル基、アリール基、アルカリール基もしくはアラルキル基中に8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ塩およびアンモニウム塩、有機基中に8〜20個の炭素原子を有するアルキルホスフェートおよびアルカリールホスフェート、アルキル基もしくはアルカリール基中に8〜20個の炭素原子を有し、かつ1〜40個のEO単位を有するアルキルエーテルホスフェートもしくはアルカリールエーテルホスフェート、8〜40個のEO単位を有し、かつアルキル基もしくはアリール基中にC8〜C20−炭素原子を有するアルキルポリグリコールエーテルおよびアルカリールポリグリコールエーテル、8〜40個のEO単位もしくはPO単位を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、C8〜C22−アルキル基を有するアルキルアミンとエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドとの付加生成物、線状もしくは分枝鎖状の飽和もしくは不飽和C8〜C24−アルキル基を有し、かつ1〜10個のヘキソース単位もしくはペントース単位を有するアルキルポリグリコシド、ケイ素官能性界面活性剤、またはこれらの乳化剤の混合物の群から選択される少なくとも1の乳化剤を含有していてよい。
【0034】
このような本発明による組成物中での乳化剤の含有率は、エマルションの全質量に対して、有利には0.01〜5質量%である。
【0035】
さらに、本発明による組成物は、有利にはさらに無機酸もしくは有機酸、緩衝物質、殺真菌剤、殺菌剤、殺藻剤、殺微生物剤、香料、腐蝕防止剤、保存剤、レオロジー調節剤から選択される慣用の助剤を含有していてよい。
【0036】
一般に本発明による組成物は、以下のとおりに製造することができる:
シランオリゴマーの製造は、有利にはEP0814110、EP1205481、EP1205505に従って行うことができる。従って前記の刊行物は、全ての範囲で、本願の記載内容の一部である。
【0037】
本発明による溶剤含有組成物は、個々の成分を1の容器中で適切な混合装置により単に混合することによって製造することができる。この混合は、連続的に、たとえば混合管を使用して行うこともでき、また不連続的に行うこともできる。
【0038】
添加の順序は有利には、まず攪拌装置が運転できる量で使用すべき溶剤を装入し、この量に本発明によるフッ素含有ポリマー、触媒、添加剤および最後に本発明によるシランオリゴマーの順で溶解する。溶剤の残量をフッ素含有ポリマーの添加後に、または混合の最後の成分として添加することができる。
【0039】
さらに有利には、本発明により使用される触媒を、本発明により使用されるシランオリゴマー中に溶解し、かつこの溶液を上記のとおり、別の添加剤と一緒に溶剤に導入することも可能である。
【0040】
成分の特定の供給順序を維持することにより、本発明による組成物は起泡が著しく低減されながら有利に、かつ消泡剤を添加することなく得られる。
【0041】
このために本発明によれば、使用すべき溶剤もしくは溶剤混合物の5〜70質量%、有利には10質量%を、有利には攪拌ユニットを有する容器中に、特にガラスまたは特殊鋼からなる容器中に装入し、かつフッ素含有ポリマーを有利には攪拌モーターの低い回転数で添加し、特に有利には毎分10〜10回転で添加する。引き続き溶剤の残量を、有利には回転数を変えて攪拌しながら供給する。これは少量ずつ、または連続的に、場合により一気に行うことができる。次いでシランオリゴマーに、場合により水性エマルションとして触媒を添加し、かつこうして得られた混合物を、比較的低い回転数で、有利にはすでに予め製造した溶剤およびフッ素含有ポリマーからなる混合物の攪拌モーターと同じ回転数で計量供給する。引き続き、他の助剤ならびに必要に応じて追加の乳化剤を計量供給することができる。最後に攪拌機の回転数を、有利には1.1〜1000倍に、特に10倍に高めて(後攪拌し)、均質な混合を保障する。その際、有利には1〜30分にわたって後混合する。
【0042】
有利には、空気の導入ひいては起泡の増大を回避することに注意する。
【0043】
水性エマルションの製造は、技術的な観点からたとえばWO06/081892ならびにWO06/081891に詳細に記載されている。従って前記の刊行物は、全ての範囲において本願の記載内容の一部である。
【0044】
この場合、本発明による組成のエマルションを製造するために、本発明により使用されるフッ素含有ポリマーおよび/または触媒を、その他の成分、たとえば本発明により使用される乳化剤と一緒に水相中で溶解するか、または前分散させ、かつ引き続きシランオリゴマーと乳化することができる。あるいは、本発明により使用されるフッ素含有ポリマーおよび/または触媒を、シランオリゴマーと一緒に水性のベース混合物に計量供給し、かつ引き続き乳化することができる。最後に本発明による水性エマルションは、フッ素含有ポリマーおよび/または触媒と予め製造された水性エマルションとを単に適切な混合装置により1の容器中で混合することにより得られる。この混合は、連続的に、たとえば混合管を使用することによって、または不連続的に行うことができる。
【0045】
有利には油相中のシランオリゴマーの含有率を適切な有機溶剤、たとえば室温よりも高い沸点を有する脂肪族ならびに芳香族の炭化水素、たとえばC6〜C12−アルカン、ベンジン、石油エーテル、ディーゼル、ケロシン、トルエン、キシレン、アルコールもしくはポリオール、たとえばペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、イソノナノール、グリセリン、ケトン、または前記の有機溶剤の少なくとも2種類からなる混合物の添加によって調整することもできるが、溶剤はこれらに限定されるものではない。
【0046】
従って本発明の対象は、
使用すべき溶剤の5〜70質量%を装入し、
フッ素含有ポリマーを攪拌導入し、
引き続き溶剤の残量を添加し、
次いで撹拌下に少なくとも1のシランオリゴマーと触媒とからなる混合物を供給し、
場合により乳化剤および/または助剤を添加し、かつ
後攪拌および/または乳化する
ことにより、顕著な起泡を回避しながら本発明による組成物を製造する方法である。
【0047】
従って同様に本発明の対象は、本発明による方法によって得られる組成物、特にエマルションである。
【0048】
さらに本発明の対象は、多孔質の鉱物質支持体、特にコンクリート、繊維強化セメント、粘土、レンガ、大理石、花崗岩、砂岩または石灰石のような建築材料を疎水化するため、および処理した支持体表面上に超撥水効果を生じるための本発明による組成物の使用であって、その際、水滴は、処理した支持体表面上に1分間の時間に渡って残留し、その表面は、実質的に濡れないか、または有利には裸眼で認識可能な濡れによるシミを残さないものである。
【0049】
本発明を以下の実施例に基づいて詳細に説明するが、これは本発明の対象を限定するものではない。
【0050】
実施例
以下の記載は全て、最終調製物の全質量に対する質量%である。
【0051】
成分1:
1a:オリゴマー化アルキルトリアルコキシシラン49%の水性エマルション(Evonik Degussa GmbH社のProtectosil(登録商標)WS600)
1b:オリゴマー化アルキルトリアルコキシシラン(Evonik Degussa GmbH社のProtectosil(登録商標)266)
1c:オリゴマー化n−プロピルトリエトキシシランおよび触媒:
化合物1b200gに強力な撹拌下でテトラ−(n−プロポキシ)−ジルコネート(DuPont社のTyzor NPZ)1.8gを添加する。
【0052】
成分2:
2a:水(35〜45%)およびイソプロパノール(20〜30%)からなる混合物中のジフルオロメチレン基を有するテロマーBホスフェートジエタノールアミン塩の20〜40%分散液(DuPont社のZonyl(登録商標)9027)
2b:炭化水素混合物中のフッ素化側鎖を有するポリアクリレートを含有する樹脂の10〜20%溶液(Daykin Industries社のUnidyne TG656)
2c:オリゴマー化3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン。このオリゴマーは、EP0814110により入手可能である
2d:炭化水素混合物中に溶解した乾燥物質25%を有するフッ素化コポリマー(DuPont社のZonyl(登録商標)210)。
【0053】
例1−比較例
室温で1bを清浄な乾燥したガラス容器中に装入し、かつ1:4の質量比で炭化水素混合物Shellsol D60(Shell Chemicalsから入手可能)により希釈した。生じた混合物をさらに10分間攪拌し、引き続きこれを直接使用することができた。
【0054】
例2−比較例
室温で1bを清浄な乾燥したガラス容器中に装入し、かつ1:9の質量比で炭化水素混合物Shellsol D60(Shell Chemicalsから入手可能)により希釈した。電磁攪拌機でゆっくり攪拌しながら、2aを3質量%添加した。生じた混合物をさらに10分間攪拌し、引き続きこれを直接使用することができた。
【0055】
例3−比較例
室温でプロピルトリエトキシシランを、1:4の質量比で炭化水素混合物Shellsol D60(Shell Chemicalsから入手可能)により希釈した。この溶液に、2cを5質量%およびテトライソプロピルチタネートを1質量%添加した。混合物を電磁攪拌機でさらに10分間攪拌し、引き続きこれを直接使用する。
【0056】
例4−比較例
室温で1aを清浄な乾燥したガラス容器中に装入した。生じた混合物を、1:4の質量比で完全脱塩水により希釈し、さらに10分間攪拌し、引き続き直接使用することができた。
【0057】
例5
室温で完全脱塩水8質量%を清浄な乾燥したガラス容器中に装入した。電磁攪拌機でゆっくり攪拌しながら、2aを2質量%添加し、かつ引き続き、完全脱塩水70.4質量%を添加した。生じた混合物に最後に1aを19.6質量%添加し、さらに10分間攪拌し、引き続きこれを直接使用することができた。
【0058】
例6
室温でShellsol D60(Shell Chemiclasから入手可能)を9質量%、清浄な乾燥したガラス容器中に装入し、2bを3質量%、電磁攪拌機でゆっくり攪拌しながら添加した。引き続きさらにゆっくり攪拌しながら、Shellsol D60を78質量%、次いで1cを10質量%添加した。生じた混合物を、さらに10分間攪拌し、引き続きこれを直接使用することができた。
【0059】
例7
室温でn−ヘプタンを9質量%、清浄な乾燥したガラス容器中に装入し、2dを3質量%、電磁攪拌機でゆっくり攪拌しながら添加した。引き続きさらにゆっくり攪拌しながら、n−ヘプタン78質量%、次いで1cを10質量%添加した。生じた混合物を、さらに10分間攪拌し、引き続きこれを直接使用することができた。
【0060】
例の評価
以下の第1表は、上記の例の結果を記載している。
【0061】
即時使用可能な溶液を使用して、15×7.5×1cmの寸法を有するコンクリート板ならびに石灰岩板を、それぞれ記載の塗布量で、これらの板を浸漬することによって処理した。超撥水性の程度を測定するために、水滴を上に載せ、吸収されない限りにおいて1分間の接触時間後の接触角を測定した。さらに、液滴を10分間の接触時間の後に流して、残った表面を評価した(シミの形成:0=液滴は丸くなる、1=濡れない、2=接触面が半分濡れる、3=接触面が完全に濡れる、4=接触面が黒っぽく着色し、液滴は若干吸収される、5=接触面が黒っぽく着色し、液滴は最大50%が吸収される、6=接触面が黒っぽく着色し、液滴は完全に吸収される)。
【0062】
疎水化特性は、それぞれの混合物の吸水量の低減によって表されている。このために、1辺の長さが5cmのコンクリートおよび石灰岩の立方体を、記載の量で浸漬することによって処理する。2週間の硬化時間の後で、処理後の立方体を24時間、完全に水中に沈めて貯蔵した。引き続き質量の増加を測定した。吸水率の低減は、未処理の立方体との比較で記載されている。
【0063】
【表1】

【0064】
結論:
本発明による組成物は、コンクリート上でも、石灰岩上でも、著しく改善された超撥水性を示す。所望の疎水化特性はその際、完全に維持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の鉱物質支持体を疎水化するため、および支持体の表面上に超撥水効果を生じるための組成物であって、
少なくとも1のシランオリゴマー、
少なくとも1の加水分解触媒もしくは縮合触媒、
少なくとも1のフッ素含有ポリマー、
場合により水および/または少なくとも1の有機溶剤、
場合により少なくとも1の乳化剤、および
場合により別の助剤
をベースとする組成物。
【請求項2】
シランオリゴマーが、理想式I
【化1】

[式中、nは、同じであるか、または異なっており、かつnは、0〜40の数、有利には2〜20の数であり、Rは、C1〜C18−アルキルを表し、基R1は、同じであるか、または異なっており、かつR1は、水素原子であるか、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、その際、平均分子量は、1200g/モル以下である]のアルキルアルコキシシロキサンまたは相応する混合物から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
作用物質の含有率が、組成物に対して1〜98質量%であることを特徴とする、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
室温よりも高い沸点を有する脂肪族ならびに芳香族の炭化水素の群からの少なくとも1の有機溶剤または希釈剤、有利にはC6〜C12−アルカン、ベンジン、石油エーテル、ディーゼル、ケロシン、トルエン、キシレン、アルコールもしくはポリオール、有利にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、イソノナノール、グリセリン、ケトン、有利にはアセトン、または前記の有機溶剤もしくは希釈剤の少なくとも2種類からなる混合物を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
元素の周期律表(PSE)の第3および第4主族ならびにPSEの副族II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIa、VIIIbおよびVIIIcの元素の錯化合物、特にチタネートまたはジルコネートの群から、PSEの第1および第2主族の元素の塩の群から、アルコラート、有利にはナトリウムメタノラートまたはナトリウムエタノラートの群から、アミノアルコール、有利には2−アミノエタノールまたは2−(N,N−ジメチル)アミノエタノールの群から、および/またはカルボン酸または鉱酸の群からの少なくとも1の加水分解触媒もしくは縮合触媒を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
触媒を、使用されるシランオリゴマーの量に対して、0.1〜3質量%含有することを特徴とする、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1のフッ素含有ポリマー、コポリマー、またはターポリマーを含有し、その際、前記のフッ素含有化合物は、少なくとも1のCF2基またはCF3基を有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1の一般式II
【化2】

[式中、相互に無関係に、
X=C、PまたはSであり、
2=−H、−OH、−CH3、−C24、−CH=CH2、−C(−CH3)=CH2、>(CH−CH2qまたは>(C(−CH3)CH2q−(q=2〜200)であり、
m=1、2または3であり、
n=1〜100であり、かつ
p=0、1または2であり、ただしその際、X=Cである場合にはm+p=2であり、X=Pである場合にはm+p=3であり、かつX=Sである場合にはm+p=2である]のフッ素含有ポリマーを含有しているか、または少なくとも1の一般式III
【化3】

[式中、相互に無関係に、
3=−H、−CH3であり、
m=1〜200であり、
n=0〜200であり、
o=1〜100であり、
p=1〜100であり、かつ
q=0〜100である]のフッ素含有ポリマーを含有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
フッ素含有ポリマーの含有率が、組成物に対して、0.5〜6質量%であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
8〜C18−アルキルを有するアルキルスルフェート、疎水基中にC8〜C18−アルキルを有し、かつ1〜40個のエチレンオキシド(EO)単位もしくはプロピレンオキシド(PO)単位を有するアルキルエーテルスルフェートおよびアルカリールエーテルスルフェート、C8〜C18−アルキルを有するアルキルスルホネート、C8〜C18−アルキルを有するアルカリールスルホネート、および5〜15個の炭素原子を有する一価のアルコールもしくはアルキルフェノールとスルホコハク酸との半エステル、アルキル基、アリール基、アルカリール基もしくはアラルキル基中に8〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のアルカリ塩およびアンモニウム塩、有機基中に8〜20個の炭素原子を有するアルキルホスフェートおよびアルカリールホスフェート、アルキル基もしくはアルカリール基中に8〜20個の炭素原子を有し、かつ1〜40個のEO単位を有するアルキルエーテルホスフェートもしくはアルカリールエーテルホスフェート、8〜40個のEO単位を有し、かつアルキル基もしくはアリール基中にC8〜C20−炭素原子を有するアルキルポリグリコールエーテルおよびアルカリールポリグリコールエーテル、8〜40個のEO単位もしくはPO単位を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)ブロックコポリマー、C8〜C22−アルキル基を有するアルキルアミンとエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドとの付加生成物、線状もしくは分枝鎖状の飽和もしくは不飽和C8〜C24−アルキル基を有し、かつ1〜10個のヘキソース単位もしくはペントース単位を有するオリゴグリコシド基を有するアルキルポリグリコシド、ケイ素官能性界面活性剤、またはこれらの乳化剤の混合物から選択される少なくとも1の乳化剤を含有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
乳化剤の含有率が、組成物の全質量に対して、0.01〜5質量%であることを特徴とする、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
さらに、無機酸もしくは有機酸、緩衝物質、殺真菌剤、殺菌剤、殺藻剤、殺微生物剤、香料、腐蝕防止剤、保存剤、レオロジー調節剤から選択される慣用の助剤を含有していることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
使用すべき溶剤の5〜70質量%を装入し、
フッ素含有ポリマーを攪拌導入し、
引き続き溶剤の残量を添加し、
次いで撹拌下に少なくとも1のシランオリゴマーと触媒とからなる混合物を供給し、
場合により乳化剤および/または助剤を添加し、かつ
後攪拌および/または乳化する
ことにより、請求項1から12までのいずれか1項記載の組成物を製造する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得られる組成物。
【請求項15】
多孔質の鉱物質支持体を疎水化するため、および処理後の支持体表面上に超撥水効果を生じるための請求項1から12までのいずれか1項又は請求項14記載の組成物または請求項13記載の方法により製造された組成物の使用であって、水滴は処理後の支持体表面上に10分間にわたって残留し、濡れによるシミを残さない。

【公表番号】特表2011−529130(P2011−529130A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520402(P2011−520402)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056807
【国際公開番号】WO2010/012535
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】