説明

改善された面ファスナー付き繊維製品

【課題】 面ファスナー付きの繊維製品を洗濯、乾燥する時に、付設されたフック面ファスナーが他の繊維と係合して、他の繊維を損傷するとともに、フック面ファスナー自体が糸屑を取り込んだり、フック状係合素子自体が損傷して係合力が低下する問題を解決すること。
【解決手段】 係合すべき繊維製品の所定部位にループ面ファスナーを設け、該係合すべき部位の2枚のループ面ファスナーの間に、フック状係合素子を両面に有するフック面ファスナーを装着して、繊維製品の係合部位を係止してなる面ファスナー付き繊維製品であって、必要に応じて該フック面ファスナーが該繊維製品から除去可能であることを特徴とする面ファスナー付き繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナーを係合部材として備えた繊維製品に関し、さらに詳しくは繊維製品本体にはループ面ファスナーが付設されており、該ループ面ファスナーを、別途用意した両面フック面ファスナーを介して係止した面ファスナー付き繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
小児用や大人用のおむつカバーに使用される係止部材として、マジックテープ(商品名)やベルクロ(商品名)として知られる面ファスナーが用いられており、フック状係合素子を有するフック面ファスナーと、ループ状係合素子を有するループ面ファスナーとを係合して使用されている。面ファスナーは柔軟でおむつカバー等への付設が容易なこと、および係合・剥離が容易なことが利点として認められている。
しかし、おむつカバーを洗濯するときにおむつカバーに付設されたフック面ファスナーは、他の繊維と係合し、他の繊維を損傷するとともに、フック面ファスナー自体が糸くずを取りこんだり、フック状係合素子自体が損傷して、係合力が低下する問題がある。
この問題の解決するために、面ファスナー部材をループ面ファスナー部分とフック面ファスナー部分で構成し、フック面ファスナーを使用しないときは、フック面ファスナー部分をループ面ファスナー部分と係合して、フック面ファスナーを露出させない構造体が提案されている。(特許文献1参照)
【0003】
特許文献1に記載されたおむつカバーのフック面ファスナーは、二つ折りしてフック面ファスナーとループ面ファスナーを係合してフック面ファスナーの露出を防ぐものであるが、係合しておくのを忘れたり、その係合が不十分であると係合が外れて、フック面ファスナーが露出することになる。特に洗濯時には、水流や他の洗濯物により係合部に力がかかるので、上記係合が外れる可能性が高い。
【0004】
【特許文献1】特開平8−215229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、洗濯時に他の繊維製品を損傷する問題を完全に解決する面ファスナー付繊維製品を提供することを目的とする。また本発明は、特におむつカバーに付設される面ファスナーのフック面ファスナーにおける問題を完全に解決するものであり、おむつカバーの耐久性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、係合すべき繊維製品の所定部位にループ面ファスナーを設け、該係合すべき部位の2枚のループ面ファスナーの間に、フック状係合素子を両面に有するフック面ファスナーを装着して、繊維製品の係合部位を係止してなる面ファスナー付き繊維製品であって、必要に応じて該フック面ファスナーが該繊維製品から除去可能であることを特徴とする面ファスナー付き繊維製品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、おむつカバー、リネン製品、衣料等で問題となっている、一連の洗濯加工による製品の破損、面ファスナーの破損による係合力の低下、フックに絡む繊維屑等を抑え、製品の耐久性向上、利便性および衛生面の向上、糸屑除去作業の低減を実現でき、一般衣料から特殊衣料、その他繊維製品全般に応用可能な面ファスナー付き繊維製品が得られる。
また、本発明の面ファスナー付き繊維製品は、特におむつカバーに好適に用いられる。おむつカバーには柔軟なループ面ファスナーだけが付設されるため、人体に被着するときに、他の繊維製品にフック面ファスナーが係合するトラブルがなく被着作業が容易であり、両面フック面ファスナーを挟んでの係合は容易で確実である。さらに、おむつカバーを洗濯するときには、係合面を剥離し、両面フック面ファスナーを除去するだけで、おむつカバーに付設されるフック面ファスナーの問題が完全に解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用するループ面ファスナーと両面フック面ファスナーは、互いに係合する素子を有する面ファスナーであれば特に制限なく使用できる。
ループ面ファスナーとしては、編織製により基布にループ状係合素子を立設したパイル仕様のもの、不織布、起毛処理織布、編み状布帛などで、上記フック面ファスナーと係合するものであれば、特に制限はない。特におむつカバーに付設するループ面ファスナーとしては、ナップ仕様、すなわち起毛編み地からなるものが係合性、柔軟性、コストの点から好ましい。
【0009】
一方、両面フック面ファスナーとしては、製編織された基布の両面にかぎ状、キノコ型などのフック状係合素子を立設したものや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成樹脂から成形された基板の両面にかぎ状、キノコ型、矢じり型、テーブル型などのフック状係合素子を立設したものを用いることができる。
オムツカバーに使用される両面フック面ファスナーは、通常多数回の使用を期待しないので、薄くかつ低コストのものが好ましく、この点から樹脂成形フック面ファスナーが好ましく用いられる。その具体例としては、多数の微孔をもつローラー上に溶融樹脂を圧入し、基板にフック状係合素子を一体成形する技術を利用して、基板の両面にフック状係合素子を立設せしめた面ファスナーが挙げられる。
また基板とその表面に複数の列条の隆起を成形するように付形されたダイを通して溶融樹脂を押し出し、該隆起に小間隔で横に切れ目を入れ、次いで基板を延伸して、連続した列条の隆起から多数のフック状係合素子を形成する技術を利用して、基板の両面にフック状係合素子を立設せしめた面ファスナーが挙げられる。
上記の技術を応用し、基板の厚さおよびフック状係合素子のサイズを適宜設定することにより、本発明の目的に適した両面フック面ファスナーを容易に製造することができる。
【0010】
両面フック面ファスナーを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば特に制限なく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルなどが含まれる。また、該フック面ファスナーが廃棄される点を考えると、水溶性樹脂を用いた場合、該フック面ファスナーを洗濯前に除去せずに洗濯機に入れることができ、該フック面ファスナーが洗濯中に溶解されるので好ましい。また、易分解性樹脂であれば、廃棄処理の負担を軽減することができる。
水溶性樹脂の具体例としては、水溶性ポリビニルアルコール系ポリマー、水溶性ポリアクリル酸系ポリマーが挙げられる。また、易分解性ポリマーとしては、微生物分解性ポリマーのほか、燃焼の際に熱量が少なく有害ガス発生のない素材が挙げられ、ポリ乳酸系ポリマー、変性でんぷん系ポリマーなどが好ましく用いられる。
【0011】
以下、図面を用い、本発明の面ファスナー付き繊維製品をおむつカバーに応用した例について具体的に説明する。
図1は、本発明の面ファスナー付き繊維製品を応用したおむつカバーの一例を示す平面展開図である。
おむつカバーは、胴部1と股部2が連結した略T字形をしており、プラスチックシート等を含む防水性の布帛から構成される。なお、図1はおむつカバーの内側(人体接触側)を示している。
胴部1の表面側(外側)における両端部にそれぞれループ面ファスナー3,3’が、股部2の下部の内側にループ面ファスナー4が付設される。
【0012】
図2は、図1に示したおむつカバーを使用する時の形状を示す平面模式図である。
図2に示すように、胴部1の両端部を内側に折り曲げ、胴部表面のループ面ファスナー3、3’と連結するように、別途準備した両面フック面ファスナー5と係合する。次いで、股部2を該胴部折り曲げ部に重積し、両面フック面ファスナー5と股部内側のループ面ファスナー4を係合して、胴部1と股部2の形状を固定する。すなわち、図1に示したおむつカバーは、ループ面ファスナーのみを有しており、別途準備した両面フック面ファスナーを介して係合される。
【0013】
図3は、本発明に用いる両面フック面ファスナーの構造の一例を示す断面模式図である。
本発明に用いる両面フック面ファスナーは、全表面に係合素子を有する必要はなく、テープ状としたものでは、その中央部に係合素子を有しないものが好ましい場合がある。さらに両端部の両面フック面ファスナーを伸縮性のある布帛類またはシートと連結した複合構造とすると、人体の運動に応じて胴部両端部の間隔が拡大、縮小した際に追随し易くなり、さらに改善された着用感が得られるので好ましい。
【0014】
図4は、本発明によるおむつカバーの他の一例を示す展開平面図である。また、図5は図4に示したおむつカバーを使用する時の形状を示す平面模式図である。
図4のおむつカバーの全体的構造は、図1のおむつカバーとほぼ同一であり、面ファスナーの配置箇所が異なるものである。胴部1の表面側における両端部にそれぞれループ面ファスナー6、6’が、また胴部1の端部内側にもループ面ファスナー7が付設される。さらに胴部2の内側の両側にループ面ファスナー8、8’が付設される。
【0015】
図5に示すように、胴部1の両端部を内側に折り曲げ、端部の面ファスナー6と7が重積されるようにする。重積されるループ面ファスナー6と7の間に両面フック面ファスナー(図示せず)を介して両端部を係止する。次いで、股部2を該胴部折り曲げ部上に重積し、胴部両端部表面のループ面ファスナー6と股部両端部のループ面ファスナー8が重積するように配置し、それらを両面フック面ファスナー(図示せず)を介して係合し、胴部1と股部2の形状を固定する。
図5に示すおむつカバーは、面ファスナーの敷設が多く、使用時の手数が増えるが、胴部の固定をより強固にできる利点がある。
【0016】
上記したおむつカバーを使用後、洗濯するときは、上記と逆の手順で股部2と胴部1の面ファスナー係合を剥離した後、両面フック面ファスナー5を取り除き、保管するか廃棄する。その結果、おむつカバーにはループ面ファスナーだけが付設されているため、洗濯時に他の繊維製品と係合して損傷を与えることなく、また多数のおむつカバーを同時に洗濯したり、他の繊維製品と一緒に洗濯しても問題がない。
洗濯、乾燥が終わったおむつカバーには、従来品のように繊維屑が絡むこともないため、それらを除去する手間もいらず、さらに新品の両面フック面ファスナーを使えばより衛生的である。
【0017】
本発明の面ファスナー付き繊維製品は、上記したおむつカバーに限らず、リネン製品、下着、一般衣料、スポーツ衣料、ユニフォーム、作業着等にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の面ファスナー付き繊維製品を応用したおむつカバーの一例を示す平面展開図。
【図2】図1に示したおむつカバーを使用する時の形状を示す平面模式図。
【図3】本発明に用いる両面フック面ファスナーの構造の一例を示す断面模式図。
【図4】本発明の面ファスナー付き繊維製品を応用したおむつカバーの他の一例を示す平面展開図。
【図5】図4に示したおむつカバーを使用する時の形状を示す平面模式図。
【符号の説明】
【0019】
1:おむつカバーの胴部
2:おむつカバーの股部
3,3’,4:ループ面ファスナー
5:両面フック面ファスナー
6,6’,7,8,8’:ループ面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合すべき繊維製品の所定部位にループ面ファスナーを設け、該係合すべき部位の2枚のループ面ファスナーの間に、フック状係合素子を両面に有するフック面ファスナーを装着して、繊維製品の係合部位を係止してなる面ファスナー付き繊維製品であって、必要に応じて該フック面ファスナーが該繊維製品から除去可能であることを特徴とする面ファスナー付き繊維製品。
【請求項2】
該ループ面ファスナーがナップ仕様またはパイル仕様であり、該フック面ファスナーが基板の両表面にフック状係合素子を一体成形してなる樹脂成形フック面ファスナー、または織編製の基布の両表面にフック状係合素子を備えた面ファスナーである請求項1記載の面ファスナー付き繊維製品。
【請求項3】
該成形フック面ファスナーが水溶性樹脂または易分解性樹脂からなる請求項1または2記載の面ファスナー付き繊維製品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の面ファスナー付き繊維製品を用いてなるおむつカバー。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の面ファスナー付き繊維製品を用いてなる衣料。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の面ファスナー付き繊維製品を用いてなるリネン製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−325939(P2006−325939A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153854(P2005−153854)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(591017939)クラレファスニング株式会社 (43)
【Fターム(参考)】