説明

改良されたアルファウイルスレプリコンおよびヘルパー構築物

【課題】組み換えアルファウイルス粒子の改良された構築物およびその作製方法の提供。
【解決手段】5’アルファウイルス複製認識配列をコードする第1核酸配列と、アルファウイルス非構造タンパク質をコードする少なくとも1つの第2核酸配列と、少なくとも1つのアルファウイルスサブゲノムプロモーターと、少なくとも1つのIRESエレメントと;少なくとも1つの異種核酸と、3’アルファウイルス複製認識配列をコードする第3核酸と、を含む組み換え核酸、組み換え核酸を含むアルファウイルス粒子の作製方法、および、使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条e項の下で、2003年3月20日に出願された米国
仮特許出願第60/456,196号の利益を主張するものであり、その内容は全体とし
て参照して本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、組み換えアルファウイルス粒子の改良された構築物およびその作製方法に関
する。
【背景技術】
【0003】
真核生物では、2つの別個のメカニズムが細胞内で展開して翻訳を開始する。それらの
1つでは、mRNAの5’末端(「キャップ」)に存在するメチル−7−グアノシン(5
’)pppN構造が、eIF4E、eIF4GおよびeIF4Aから構成される翻訳開始
因子eIF4Fによって認識される。この「開始前複合体」の形成には、多数の因子の中
でも特に、イニシエータtRNA−Metiへ結合することに関与する開始因子eIF2
と、40Sリボソームサブユニットと相互作用するeIF3との協調作用を必要とする(
Hershey & Merrick,Translational Control
of Gene Expression,pp.33−88,Cold Spring
Harbor Laboratory Press,NY 2000)。
【0004】
もう1つのメカニズムでは、翻訳の開始は転写産物上で内部的に発生し、トランス作用
因子を用いてmRNA内の内部開始コドンへ翻訳機構を補充する内部リボソームエントリ
ー配列(IRES)エレメントによって媒介される(Jackson,Translat
ional Control of Gene Expression,pp.127−
184,Cold Spring Harbor Laboratory Press,
NY 2000)。IRESエレメントは、脊椎動物、無脊椎動物、または植物細胞に感
染するウイルス由来の極めて多数の転写産物内、ならびに脊椎動物および無脊椎動物遺伝
子由来の転写産物内で見いだされている。
【0005】
多数のウイルス感染症中、ならびに他の細胞ストレス条件下では、eIF2のリン酸化
状態における変化は三重複合体eIF2−GTP−tRNA−Metiのレベルを低下さ
せ、結果としてタンパク質合成の総合的阻害を生じさせる。これとは逆に、キャップ構造
依存性(cap−dependent)開始の特異的遮断はeIF4F機能性の修飾に依
存する(Thompson & Sarnow,Current Opinion in
Microbiology 3:366−370(2000))。
【0006】
IRESエレメントはキャップ構造依存性翻訳阻害を迂回する;そこでIRESエレメ
ントによって指令される翻訳は「キャップ構造非依存性(cap−independen
t)」と呼ばれている。IRES駆動翻訳開始は、例えばピコルナウイルス感染症などの
多数のウイルス感染症中に優勢である(Macejak & Sarnow,Natur
e 353:90−94(1991))。これらの状況下では、キャップ構造依存性開始
は少量の機能性eIF4Fの存在に起因して阻害される、あるいは重度に損なわれる。こ
れは、eIF4Gの開裂もしくは溶解性の消失(Gradi et al.,Proce
edings of the National Academy of Scienc
es,USA 95:11089−11094(1998));4E−BP脱リン酸化(
Gingras et al.,Proceedings of the Nation
al Academy of Sciences,USA 93:5578−5583(
1996))またはポリ(A)−結合タンパク質(PABP)の開裂(Joachims
et al.,Journal of Virology 73:718−727(1
999))によって引き起こされる。
【0007】
目的の核酸(NOI)を様々なレベルで発現するアルファウイルスについて報告されて
いる。これらの例は全てが、サブゲノムプロモーターからのベクター複製または転写を調
節するためのアルファウイルス非構造タンパク質遺伝子または26S(サブゲノム)プロ
モーターの修飾について記載している。それらの例には、サブゲノムRNA転写を増加も
しくは減少させる、またはゲノムRNA複製を変化させて修飾されたNOI発現を生じさ
せる非構造タンパク質遺伝子における突然変異が含まれる。だがこれまで、サブゲノムm
RNAの翻訳レベルでのアルファウイルスベクターからのタンパク質発現の制御は記載さ
れていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、IRESエレメントの指令下でキャップ構造非依存性メカニズムを介してタ
ンパク質翻訳レベルでの1つ以上の異種核酸配列の発現を制御するために組み換えられた
アルファウイルスレプリコンおよびヘルパーベクターを提供する。
【0009】
1つの実施形態では、本発明は、5’アルファウイルス複製認識配列をコードする第1
核酸配列と、アルファウイルス非構造タンパク質をコードする少なくとも1つの第2核酸
配列と、少なくとも1つのアルファウイルスサブゲノムプロモーターと、少なくとも1つ
のIRESエレメントと、少なくとも1つの異種核酸と、3’アルファウイルス複製認識
配列をコードする第3核酸と、および該レプリコンが粒子内にパッケージングされるのを
許容するアルファウイルスパッケージングシグナルと、を含む組み換えレプリコン核酸を
提供する。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、5’アルファウイルス複製認識配列をコードする第1核
酸配列と、アルファウイルスサブゲノムプロモーターと、IRESエレメントと、1つも
しくは2つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸と、および3’アル
ファウイルス複製認識配列をコードする第3核酸と、を含む組み換えヘルパー核酸を提供
する。
【0011】
本明細書では、さらにまた本発明の組み換えレプリコン核酸を含むアルファウイルスレ
プリコンRNAを含むアルファウイルス粒子が提供される。また別の実施形態において、
本明細書では感染性の複製欠損アルファウイルス粒子の集団が提供されるが、各粒子は本
発明の組み換えレプリコン核酸を含むアルファウイルスレプリコンRNAを含有する。一
部の実施形態では、本発明は感染性の複製欠損アルファウイルス粒子の集団を提供するが
、各粒子は本発明の組み換えレプリコン核酸を含むアルファウイルスレプリコンRNAを
含有し、そして該集団は細胞培養上の継代によって測定されるように、検出可能な複製コ
ンピテントウイルス(replication−competent virus)を有
していない。特定の実施形態では、本発明の粒子は1つ以上の弱毒化突然変異を含有して
いてよい。
【0012】
さらに、医薬上許容される担体中に本発明の粒子および集団を含む医薬組成物が含まれ
る。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、感染性の複製欠損アルファウイルス粒子を作製する方法
であって、(a)細胞集団内に(i)本発明の組み換えレプリコン核酸と、(ii)アル
ファウイルス構造タンパク質をコードする1つ以上のヘルパー核酸であって、該アルファ
ウイルス構造タンパク質の全部が細胞内で提供されるヘルパー核酸とを導入するステップ
と、および(b)該細胞集団内で前記アルファウイルス粒子を生成するステップと、を含
む方法を提供する。本発明の方法は、該細胞から前記アルファウイルス粒子を収集するス
テップをさらに含むことができる。
【0014】
一部の実施形態では、本発明のヘルパー核酸はさらにまた本発明の組み換えレプリコン
核酸であってよい。例えば、本発明の組み換え核酸は、異種核酸として、および/または
異種核酸に加えて、1つのアルファウイルス構造タンパク質または1つ以上のアルファウ
イルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。そのような実施形態で
は、該組み換えレプリコン核酸は、他のヘルパー核酸および/または本発明の他の組み換
え核酸と一緒に該細胞内に存在しうる組み換えレプリコンヘルパー核酸であると考えられ
る。
【0015】
そこで、特定の実施形態では、本発明の組み換えレプリコン核酸はさらに1つのアルフ
ァウイルス構造タンパク質または2つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をさらにコ
ードする。この組み換えレプリコン核酸は、該組み換えレプリコン核酸および1つ以上の
該ヘルパー核酸がアルファウイルス構造タンパク質の全部を生成し、そして該組み換えレ
プリコン核酸が前記細胞内の粒子内にパッケージングされるように、1つ以上のヘルパー
核酸と一緒に細胞集団内に導入できる。
【0016】
さらに、被験者において免疫反応を誘導する方法であって、本発明の免疫原性量の核酸
、ベクター、粒子集団および/または組成物を該被験者に投与するステップを含む方法が
提供される。
【0017】
また別の実施形態では、本発明は、核酸の転写を指令するプロモーターと;IRESエ
レメントと;およびコード配列を含む核酸と、を含む組み換え核酸であって、IRESエ
レメントが、コード配列の翻訳がIRESエレメントによって指令されるキャップ構造非
依存性メカニズムを介して発生するが、キャップ構造依存性メカニズムを介して発生しな
いように機能的に位置している組み換え核酸を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】スペーサー−IRESレプリコンサブゲノムRNAのノーザンブロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用する「1つの」および「その」は、それが使用される状況に応じて、1
つまたは2つ以上を意味することがある。例として、「1つの細胞」は、1つの細胞また
は複数の細胞を意味することができる。そして「1つの異種核酸」は1つの異種核酸また
は複数の異種核酸を意味することがある。
【0020】
本発明は、核酸の転写および核酸の翻訳を分離することができるという驚くべき予想外
の発見に基づいている。そこで、1つの実施形態では、本発明は、転写を指令するプロモ
ーターと、IRESエレメントと、およびコード配列と、を含み、このとき該IRESエ
レメントが、コード配列の翻訳がIRESエレメントによって指令されるキャップ構造非
依存性メカニズムを介して発生するが、キャップ構造依存性メカニズムを介して発生しな
いように機能的に位置している組み換え核酸を提供する。本発明のためには、用語「転写
」は、それ自体がRNA分子であってよい組み換えレプリコン核酸のアルファウイルスサ
ブゲノムプロモーターからのRNAの生成を含む。すなわち、本発明の組み換えレプリコ
ンRNA分子上のサブゲノムプロモーターは、異種NOIをコードするメッセンジャーR
NAの転写を指令できる。これとは別に、組み換えレプリコン核酸は「複製」することが
できる、すなわち5’複製認識配列から3’複製認識配列までをコピーすることができる

【0021】
他の実施形態では、本発明は、5’アルファウイルス複製認識配列をコードする第1核
酸配列と、アルファウイルス非構造タンパク質をコードする少なくとも1つの第2核酸配
列と、少なくとも1つのアルファウイルスサブゲノムプロモーターと、少なくとも1つの
IRESエレメントと、少なくとも1つの異種核酸と、および3’アルファウイルス複製
認識配列をコードする第3核酸と、を含む組み換えレプリコン核酸を提供する。特定の実
施形態では、該組み換えレプリコン核酸は、該レプリコンが粒子内にパッケージングされ
るようにアルファウイルスパッケージングシグナルをさらに含む。さらにまた別の実施形
態では、該組み換えレプリコン核酸は、IRESエレメントの上流に位置していてよいス
ペーサー核酸配列を含むことができる。
【0022】
様々な実施形態では、本発明の組み換えレプリコン核酸のエレメントは本明細書に記載
した順番で存在してよい、および/またはあらゆる順番で存在してよいと理解されている
。そこで例えば、1つの実施形態では、本発明は以下の順序で、5’アルファウイルス複
製認識配列をコードする第1核酸配列と、アルファウイルス非構造タンパク質をコードす
る少なくとも1つの第2核酸配列と、少なくとも1つのアルファウイルスサブゲノムプロ
モーターと、少なくとも1つのIRESエレメントと、少なくとも1つの異種核酸と、お
よび3’アルファウイルス複製認識配列をコードする第3核酸と、を含む組み換えレプリ
コン核酸を提供する。
【0023】
本明細書で使用するように、「5’アルファウイルス複製認識配列」および「3’アル
ファウイルス複製認識配列」は、アルファウイルスゲノムの複製を制御する5’および3
’配列(5’および3’の記号表示はアルファウイルス核酸におけるそれらの位置を表し
ている)である。特定の実施形態では、5’および3’アルファウイルス複製認識配列の
片方または両方は、アルファウイルスゲノムの複製におけるそれらの機能が無傷で残って
いることを前提に、いずれの末端でも切断することができる。
【0024】
同様に本明細書に記載するように、「アルファウイルス非構造タンパク質をコードする
少なくとも1つの第2核酸配列」には、少なくとも1つ、およびもしかすると2つ以上の
アルファウイルス非構造タンパク質をコードする核酸配列が含まれる。例えば、本発明の
第2核酸配列は、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およ
びnsp4をコードする連続ヌクレオチド配列、アルファウイルス非構造タンパク質ns
p1、nsp2およびnsp3をコードする連続ヌクレオチド配列、アルファウイルス非
構造タンパク質nsp2、nsp3およびnsp4をコードする連続核酸、アルファウイ
ルス非構造タンパク質nsp1およびnsp2をコードする連続核酸、アルファウイルス
非構造タンパク質nsp3およびnsp4をコードする連続核酸、アルファウイルス非構
造タンパク質nsp2およびnsp3をコードする連続核酸、アルファウイルス非構造タ
ンパク質nsp1をコードする核酸、アルファウイルス非構造タンパク質nsp2をコー
ドする核酸、アルファウイルス非構造タンパク質nsp3をコードする核酸、アルファウ
イルス非構造タンパク質nsp4をコードする核酸、および/または組み換えレプリコン
核酸がnsp1、nsp2、nsp3およびnsp4の全部をコードするヌクレオチド配
列を含むようなあらゆる組み合わせおよび/またはその順序であってよい。
【0025】
特定の実施形態では、本発明の組み換えレプリコン核酸は、該組み換えレプリコン核酸
がnsp1、nsp2、nsp3およびnsp4の全部をコードするヌクレオチド配列を
含むように、1つ以上のアルファウイルス非構造タンパク質をコードする核酸をあらゆる
組み合わせおよび相互に対してあらゆる場所で含んでいてよい。例えば、本発明の組み換
えレプリコン核酸は、以下の順序で、5’アルファウイルス複製認識配列をコードする第
1核酸配列と、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2およびnsp3を
コードする第2核酸配列と、少なくとも1つのアルファウイルスサブゲノムプロモーター
と、少なくとも1つのIRESエレメントと、少なくとも1つの異種核酸と、アルファウ
イルス非構造タンパク質nsp4をコードするまた別の第2核酸配列と、および3’アル
ファウイルス複製認識配列をコードする第3核酸と、を含んでいてよい。
【0026】
同様に本明細書で使用するように、「アルファウイルスサブゲノムプロモーター」、「
サブゲノムプロモーター」、または「26Sプロモーター」は、正常なアルファウイルス
複製プロセスにおいてサブゲノムメッセージの転写を指令する、アルファウイルスゲノム
内に存在するプロモーターである。アルファウイルスサブゲノムプロモーターは、当分野
において知られている方法によって、(例えば、最小のアルファウイルスサブゲノムプロ
モーターを生成するために)切断できる、および/またはその活性が低下する、維持され
る、または増加するように修飾することができる。
【0027】
本発明の組み換え核酸は、本明細書に記載したように、そして当分野において周知のよ
うに、キャップ構造非依存性メカニズムを介してタンパク質内への核酸の翻訳を指令する
、内部リボソームエントリー配列(IRES)エレメントを含むことができる。特に本発
明の組み換えレプリコン核酸では、翻訳レベルでの核酸発現の制御は、内部リボソームエ
ントリー部位(IRES)をアルファウイルス26Sサブゲノムプロモーターの下流およ
び翻訳されるコード配列の上流へ導入するステップによって遂行される。IRESエレメ
ントは、それがmRNAの翻訳を指令し、それによってサブゲノムmRNAの5’末端(
「キャップ」)に存在するメチル−7−グアノシン(5’)pppN構造からのmRNA
の翻訳の開始を最小限に抑える、制限するまたは防止するように配置される。この「IR
ES指令」キャップ構造非依存性翻訳は、複製および転写を変化させるであろうアルファ
ウイルス非構造タンパク質遺伝子の重大な修飾を必要としない、または生じさせない。
【0028】
ゲノム複製またはサブゲノム転写を変調させる(例、阻害する、覆す、混乱させる、中
断させる、増加させる、増強する、減少させる、最小限に抑える)ことなく異種核酸の発
現レベルを制御するために設計されたアルファウイルスベクターは、以前のベクターデザ
インより優れたいくつかの長所を有している。第一に、ゲノム複製を変調させると、粒子
内にパッケージングするために利用できるゲノムRNAの数を制限することによってVR
P生成にマイナスの影響を及ぼすことができる。第二に、26Sプロモーターを変化させ
ること(例えば、切断、欠失、付加および/または置換)によってサブゲノム転写を変調
させると、ゲノムRNA複製を変化させることができ、同様に粒子内へパッケージングす
るために利用できるゲノムRNAの数の制限を生じさせる。第三に、アルファウイルス複
製は、mRNAのキャップ構造依存性翻訳の減少を生じさせることのできる細胞内のスト
レス反応を誘導する。アルファウイルスサブゲノムmRNAのキャップ構造依存性翻訳か
らIRESエレメントによって提供されるキャップ構造非依存性メカニズムへの切り替え
は、このNOI発現へのマイナスの影響を最小限に抑える。
【0029】
本発明のIRESエレメントには、ピコルナウイルス、例えばポリオウイルス(PV)
もしくはヒトエンテロウイルス71、例えばその7423/MS/87株およびBrCr
株由来;脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来;口蹄疫ウイルス(FMDV)由来;フラビ
ウイルス、例えばC型肝炎ウイルス(HCV)由来;ペスチウイルス、例えば古典的ブタ
コレラウイルス(CSFV)由来;レトロウイルス、例えばマウス白血病ウイルス(ML
V)由来;レンチウイルス、例えばサル免疫不全ウイルス(SIV)由来のウイルスIR
ESエレメント;翻訳開始因子、例えばeIF4GもしくはDAP5;転写因子、例えば
c−Myc(Yang and Sarnow,Nucleic Acids Rese
arch 25:2800−2807(1997))もしくはNF−κB抑制因子(NR
F)由来;成長因子、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FG
F−2)および血小板由来成長因子B(PDGF B)由来;ホメオティック遺伝子、例
えばアンテナペディア(Antennapedia)由来;生存タンパク質、例えばアポ
トーシスのX連鎖阻害剤(XIAP)もしくはApaf−1由来;シャペロン、例えば免
疫グロブリン重鎖結合タンパク質BiP(Martinez−Salas et al.
,Journal of General Virology 82:973−984,
(2001))由来などの細胞mRNA IRESエレメント、植物ウイルス由来、なら
びに現在知られている、もしくは後になって同定されるいずれか他のIRESエレメント
を含むことができるが、それらに限定されない。
【0030】
特定の実施形態では、本発明のIRESエレメントは、例えば、脳心筋炎ウイルス(E
MCV、GenBankアクセッション番号NC001479)、コオロギ麻痺病ウイル
ス(GenBankアクセッション番号AF218039)、ショウジョウバエ(Dro
sophila C)ウイルス(GenBankアクセッション番号AF014388)
、チャバネアオカメムシ(Plautia stali)腸管ウイルス(GenBank
アクセッション番号AB006531)、ムギクビレアブラムシ(Rhopalosip
hum padi)ウイルス(GenBankアクセッション番号AF022937)、
ヒメトビ(Himetobi)Pウイルス(GenBankアクセッション番号AB01
7037)、急性ハチ麻痺病ウイルス(GenBankアクセッション番号AF1506
29)、Black queen細胞ウイルス(GenBankアクセッション番号AF
183905)、サシガメ(Triatoma)ウイルス(GenBankアクセッショ
ン番号AF178440)、エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon
pisum)ウイルス(GenBankアクセッション番号AF024514)、感染
性軟化病ウイルス(GenBankアクセッション番号AB000906)、および/ま
たはサックブルード(Sacbrood)ウイルス(GenBankアクセッション番号
AF092924)から誘導することができる。さらに、本発明は、天然型IRESエレ
メントの機能を模倣するために当分野において知られている方法(Chappell e
t al.,Proc Natl Acad Sci USA.(2000)97(4)
:1536−41を参照)によって設計できる合成IRESエレメントを提供する。
【0031】
特定の実施形態では、IRESエレメントは、本発明の組み換えアルファウイルス粒子
をパッケージングするために選択された特定ヘルパー細胞系において機能的である昆虫I
RESエレメントまたは他の非哺乳動物IRESエレメントであってよいが、標的宿主細
胞内では機能的ではない、または最小限に機能的であろう。昆虫ウイルスIRESエレメ
ントは昆虫細胞内で最適に機能するように進化してきており、同様に哺乳動物ウイルスI
RES配列は哺乳動物細胞内で最適に機能する。そこで、翻訳の制御は、昆虫ウイルス特
異的IRESエレメントをレプリコンRNA内に挿入することによってレプリコンベクタ
ーシステムに導入できる。この方法で、レプリコンベクターからの異種NOIの翻訳は、
哺乳動物細胞内では調節する(弱毒化する)ことができ、昆虫細胞内では増強することが
できる。これは、パッケージング細胞にとって毒性、またはアルファウイルスパッケージ
ングプロセスにとって有害のどちらかであるそれらのNOIのために有用である。この作
用を達成するためのまた別の方法は、昆虫細胞培養系内にパッケージングされるレプリコ
ンベクター内の哺乳動物IRESエレメントを使用し、それによってさらにパッケージン
グ中に発生する可能性のある異種NOIの重大な翻訳を回避する方法である。特定の仮説
または理論に固執せずとも、細胞因子および培養環境は、IRESの活性および機能にお
いて何らかの役割を果たす可能性がある。このため、同一細胞内の相違するIRES種の
追加のレベルの制御/調節は所定の細胞因子の供給/除去を通して、または第2のIRE
Sに比較して1つのIRESへの翻訳を優先的に指令する培養環境(例、温度)における
変化によって達成され得ると予想される。
【0032】
一部の実施形態では、ヘルパーもしくはパッケージング細胞系の細胞環境は、IRES
の特異的活性が増強する、または低下するように変化させることができる。典型的には、
IRESエレメントは、eIF−2αキナーゼのレベル上昇がキャップ構造依存性翻訳の
減少およびIRES構造依存性翻訳/活性における逆増加を生じさせる細胞ストレス条件
下で機能するように進化してきた。そのような条件は、選択されたIRESエレメントか
らの発現を増加させることができるように、低酸素、低体温、栄養/アミノ酸飢餓、ER
ストレス誘導(例えば、タプシガルギン(Thapsigargin)を用いる)、イン
ターフェロンもしくはPKRエレメントの誘導(例えば、ポリICを用いる)、tRNA
依存型合成の遮断(例えばエデイン(Edeine)を用いる)、または過酸化水素およ
びソルビトールを含むがそれらに限定されない当分野において知られている他の一般的細
胞ストレッサーを含むがそれらに限定されない方法を含む様々な方法によって細胞パッケ
ージングシステム内で人工的に誘導できる。
【0033】
他の実施形態では、NOIのIRESエレメント指令翻訳は、例えば当分野において知
られていて本明細書に記載された多数の標準方法によってパッケージング細胞内にトラン
スフェクトできる、または形質導入する/一過性に発現させることができるIRESエレ
メント/スペーサもしくはNOIに対して特異的なアンチセンスsiRNAを使用するこ
とで変調させることができる。
【0034】
また別の実施形態として、NOIの発現はさらにまたリガンド結合対、例えば核酸エレ
メントと分子(すなわちリガンド)を使用することによっても変調させることができる(
例えば、米国特許第6,242,259号を参照されたい)。このため、本発明は、5’
アルファウイルス複製認識配列をコードする核酸配列と、アルファウイルス非構造タンパ
ク質をコードする1つ以上の第2核酸配列と、少なくとも1つのアルファウイルスサブゲ
ノムプロモーターと、少なくとも1つのIRESエレメントと、リガンドによって結合さ
れるとサブゲノムRNAの転写および/またはIRESからの翻訳を変化させる非アルフ
ァウイルスヌクレオチド配列と、少なくとも1つの異種核酸と、および3’アルファウイ
ルス複製認識配列をコードする核酸と、を含む組み換えレプリコン核酸を提供する。
【0035】
特定の実施形態として、該リガンドはRNA結合タンパク質(例、R17コートタンパ
ク質)、アンチセンス配列、色素(例、ヘキスト色素H33258もしくはH3342)
、および/または抗生物質(例、トブラマイシンもしくはカナマイシン)であってよい。
これらは当業者に知られている方法によってパッケージング細胞内に導入できる、または
パッケージング細胞内で生成できる(米国特許第6,242,259号を参照)。
【0036】
本発明の状況の中で利用されるように、アルファウイルスサブゲノムプロモーターもし
くはIRESの近位に位置する非アルファウイルスヌクレオチド配列へのリガンド結合の
作用に起因するサブゲノムRNAの転写の減少、またはIRESによって指令されたNO
Iの翻訳の減少は、選択されたリガンドの存在下では転写または翻訳各々のいずれかの統
計的に有意な減少を意味すると理解すべきである。一部の実施形態では、細胞内でのサブ
ゲノムRNAの転写もしくはIRES指令NOI翻訳のいずれかのレベルは、結合リガン
ドの存在を伴わない場合のレベルに比較して少なくとも25%、50%、75%、もしく
は90%、または3倍、5倍、もしくは10倍減少させられる。例えばレポーター遺伝子
の酵素アッセイ、ノーザンブロット、代謝性RNA標識化などを含む当分野において知ら
れている極めて様々なアッセイを利用すると、転写または翻訳のレベル減少を評価するこ
とができる。
【0037】
本発明の組み換えレプリコン核酸は1つ以上のIRESエレメントを含むことができ、
そして2つ以上のIRESエレメントを含む実施形態では、IRESエレメントは同一で
あってよい、またはいずれかの順序および/または組み合わせで相違していてもよい。特
定の実施形態では、組み換えレプリコン核酸は、各カセット内のプロモーター、IRES
および異種NOIが相違していても同一であってもよい2つ以上の「プロモーター−IR
ES−異種NOIカセット」を含むことができる。あるいはまた、組み換えレプリコン核
酸は2つ以上のNOIをコードしていてもよいが、それらの一方は「プロモーター−IR
ESカセット」によって制御されるが、他方の1つ以上のNOIはサブゲノムプロモータ
ー単独またはIRES単独によって制御することができる。
【0038】
本発明の異種核酸は、野生型アルファウイルスのゲノム内には存在しない、および/ま
たは野生型アルファウイルスのゲノム内で本発明の組み換えレプリコン核酸内に存在する
順序と同一順序では存在しない核酸である。例えば、特定の実施形態では、本発明の異種
核酸は1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質(例、C、PE2/E2、E1、E3
、6K)および/または異種核酸に加えて1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質を
コードすることができる。本発明の組み換えレプリコン核酸が1つ以上のアルファウイル
ス構造タンパク質をコードする核酸を含む場合は、組み換えレプリコン核酸は本明細書に
記載するように感染性の複製欠損アルファウイルス粒子のアッセンブリー内の組み換えレ
プリコンヘルパー核酸として機能することができる。
【0039】
本発明の異種核酸は、抗原、免疫原、もしくは免疫原性ポリペプチドもしくはペプチド
、融合タンパク質、融合ペプチド、癌抗原などであってよいがそれらに限定されないタン
パク質またはペプチドをコードすることができる。本発明の異種核酸によってコードされ
るタンパク質および/またはペプチドの例には、被験者を微生物症、細菌症、原虫症、寄
生虫症、およびウイルス疾患を含むがそれらに限定されない疾患から保護するために適合
する免疫原性ポリペプチドおよびペプチドが含まれるが、それらに限定されない。
【0040】
一部の実施形態では、例えば、異種核酸によってコードされるタンパク質もしくはペプ
チドはオルトミクソウイルス免疫原(例、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA
)表面タンパク質もしくはインフルエンザウイルス核タンパク質、またはウマインフルエ
ンザウイルスタンパク質もしくはペプチドなどのインフルエンザウイルスタンパク質)、
またはパラインフルエンザウイルス免疫原、またはメタ肺炎ウイルス免疫原、またはRS
(respiratory syncytial)ウイルス免疫原、またはライノウイル
ス免疫原、レンチウイルス免疫原(例えば、ウマ感染性貧血ウイルスタンパク質もしくは
ペプチド、サル免疫不全ウイルス(SIV)タンパク質もしくはペプチド、またはHIV
もしくはSIVエンベロープGP160タンパク質、HIVもしくはSIVマトリックス
/キャプシドタンパク質、およびHIVもしくはSIV gag、polおよびenv遺
伝子産物などのヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質もしくはペプチド)であって
よい。タンパク質もしくはペプチドは、さらにまたアレナウイルス免疫原(例えば、ラッ
サ(Lassa)熱ウイルスヌクレオキャプシドタンパク質およびラッサ熱エンベロープ
糖タンパク質などのラッサ熱ウイルスタンパク質もしくはペプチド)、ピコルナウイルス
免疫原(例えば、口蹄疫ウイルスタンパク質もしくはペプチド)、ポックスウイルス免疫
原(例えば、ワクシニアL1もしくはL8タンパク質などのワクシニアタンパク質もしく
はペプチド)、オルビウイルス免疫原(例えばアフリカウマ病ウイルスタンパク質もしく
はペプチド)、フラビウイルス免疫原(例えば、黄熱ウイルスタンパク質もしくはペプチ
ド、西ナイルウイルスタンパク質もしくはペプチド、または日本脳炎ウイルスタンパク質
もしくはペプチド)、フィロウイルス免疫原(例えば、エボラウイルスタンパク質もしく
はペプチド、またはNPおよびGPタンパク質などのマールブルク(Marburg)ウ
イルスタンパク質もしくはペプチド)、ブンヤウイルス免疫原(例えば、RVFV、CC
HF、およびSFSタンパク質もしくはペプチド)、またはコロナウイルス免疫原(例え
ば、ヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質などの感染性ヒトコロナウイルスタン
パク質もしくはペプチド、またはブタ伝染性胃腸炎ウイルスタンパク質もしくはペプチド
、またはニワトリ伝染性気管支炎ウイルスタンパク質もしくはペプチド)であってよい。
本発明の異種核酸によってコードされるタンパク質もしくはポリペプチドは、さらにまた
ポリオ抗原、ヘルペス抗原(例、CMV、EBV、HSV抗原)、流行性耳下腺炎抗原、
麻疹抗原、風疹抗原、水痘抗原、ボツリヌス毒素、ジフテリア毒素もしくは他のジフテリ
ア抗原、百日咳抗原、肝炎(例、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、もしくはE
型肝炎)抗原、または当分野において知られている他のワクチン抗原であってよい。
【0041】
本明細書で使用する「免疫反応を誘導する」および「被験者を免役化する」には、被験
者における本発明のタンパク質および/またはポリペプチド(例えば、免疫原、抗原、免
疫原性ペプチド、および/または1つ以上のエピトープ)に対する体液性および/または
細胞性免疫反応の発生が含まれる。「体液性」免疫反応という用語は、当分野において周
知のように、抗体を含む免疫反応を意味するが、他方「細胞性」免疫反応という用語は、
当分野において周知のように、T−リンパ球および他の白血球を含む免疫反応、特にHL
A拘束細胞溶解性T細胞、すなわち「CTL」による免疫原特異的反応を意味する。細胞
性免疫反応は、処理された免疫原、すなわちペプチド断片が、2つの一般的タイプである
クラスIおよびクラスIIの主要組織適合性複合体(MHC)HLAタンパク質と一緒に
提示されたときに発生する。クラスI HLA拘束CTLは、一般的に9merのペプチ
ドに結合し、細胞表面上でそれらのペプチドを提示する。HLAクラスI分子の状況にお
けるこれらのペプチド断片は、Tリンパ球上の特異的T細胞受容体(TCR)タンパク質
によって認識され、T細胞の活性化を生じさせる。この活性化は、細胞毒性もしくはアポ
トーシス事象、または非破壊的メカニズムの活性化、例えばインターフェロン/サイトカ
インの生成を直接的に通してHLA−ペプチド複合体を有する細胞の破壊を結果として生
じさせる特異的T細胞サブセットへの拡大を含むがそれに限定されない多数の機能的転帰
を生じさせる可能性がある。クラスI MHCタンパク質を介する免疫原の提示は、典型
的にはCD8+CTL反応を刺激する。
【0042】
細胞性免疫反応のまた別の態様は、それらの表面上のMHC分子との関連においてペプ
チド断片を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の活性を刺激して集中させる
ヘルパーT細胞の活性化を含むHLAクラスII拘束T細胞反応を含む。少なくとも2つ
のタイプのヘルパー細胞:サイトカインであるインターロイキン2(IL−2)およびイ
ンターフェロン−γを分泌するTヘルパー1細胞(Th1)ならびにサイトカインである
インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン5(IL−5)、インターロイキン
6(IL−6)およびインターフェロン10(IL−10)を分泌するTヘルパー2細胞
(Th2)が認識される。クラスII MHCタンパク質を介しての免疫原の提示は、典
型的にCD4+CTL反応、ならびに抗体反応をもたらすBリンパ球の刺激を誘導する。
【0043】
本明細書で使用する「免疫原性ポリペプチド」、「免疫原性ペプチド」、または「免疫
原」には、被験者において免疫反応を誘導するあらゆるペプチド、タンパク質またはポリ
ペプチドが含まれ、特定の実施形態では、免疫原性ポリペプチドは被験者に疾患に対する
ある程度の保護を提供するために適切である。これらの用語は、用語「抗原」と互換的に
使用できる。
【0044】
特定の実施形態では、本発明の免疫原は1つ以上の「エピトープ」を含んでいてよい、
本質的に1つ以上のエピトープから構成されてよい、または1つ以上のエピトープから構
成される。「エピトープ」は、特定の免疫グロブリンによる認識に含まれる1セットのア
ミノ酸残基である。T細胞の状況において、エピトープはT細胞受容体タンパク質および
/またはMHC受容体による認識のために必要なアミノ酸残基セットであると定義されて
いる。免疫系のインビボまたはインビトロ状況においては、エピトープは、免疫グロブリ
ン、T細胞受容体および/または受容体および/またはHLA分子によって認識される部
位を一緒に形成する一次、二次および/または三次ペプチド構造、および/または電荷な
どの分子の集合的機能を意味する。B細胞(抗体)エピトープの場合は、典型的には最小
3〜4個のアミノ酸、好ましくは少なくとも5個の、およそ50個までのアミノ酸である
。好ましくは、体液性反応誘導性エピトープは5から30個のアミノ酸、通常は12から
25個のアミノ酸、および最も一般的には15から20個のアミノ酸である。T細胞エピ
トープの場合は、1つのエピトープは少なくとも約7〜9個のアミノ酸、およびヘルパー
T細胞エピトープの場合は少なくとも約12〜20個のアミノ酸を含む。典型的には、そ
のようなT細胞エピトープは約7から15個のアミノ酸、例えば7、8、9、10、11
、12、13、14もしくは15個のアミノ酸を含むであろう。
【0045】
本発明は、被験者において免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を発現させるため(
例、ワクチン接種のため)、または免疫療法のため(例、癌もしくは腫瘍を有する被験者
を治療するため)に使用できる。そこで、ワクチンの場合は、本発明はそれによって、本
発明の免疫原性量の核酸、粒子、集団および/または組成物を被験者に投与するステップ
を含む、被験者において免疫反応を誘導する方法を提供する。
【0046】
さらにまた、本発明の核酸、粒子、集団および医薬組成物は被験者内の細胞であってよ
い細胞へ目的のNOIを送達する方法において使用できると考えられている。そこで、本
発明は有効量の本発明の核酸、粒子、集団および/または組成物を細胞内へ導入するステ
ップを含む異種核酸を送達する方法を提供する。さらにまた、有効量の本発明の核酸、粒
子、集団および/または組成物を被験者へ送達するステップを含む、被験者内の細胞へ異
種核酸を送達する方法が提供される。そのような方法は、周知の遺伝子療法のプロトコー
ルによって、本発明の細胞および/または被験者に治療作用を与えるために使用できる。
【0047】
本発明の「被験者」には、温血動物、例えばヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ネコ、
イヌ、ブタ、ラット、およびマウスが含まれるが、それらに限定されない。本発明の様々
な組成物(例、核酸、粒子、集団、医薬組成物)の投与は、数種の相違する経路のいずれ
かによって遂行できる。特定の実施形態では、組成物は、筋肉内、皮下、腹腔内、皮内、
鼻腔内、頭蓋内、舌下、膣内、直腸内、経口、または局所的に投与することができる。本
明細書の組成物は、皮膚擦過法、またはパッチもしくは液体により経皮的に投与されてよ
い。該組成物は、経時的に組成物を遊離する生体分解性物質の形状で皮下送達することが
できる。
【0048】
本発明の組成物は、疾患を予防するために予防的に、または疾患を治療するために治療
的に使用できる。治療できる疾患には、ウイルス、細菌、真菌または寄生虫によって惹起
される感染性疾患、および癌が含まれる。例えばアルツハイマー病、多発性硬化症、脳卒
中などの異所性もしくは異常なタンパク質の発現または正常タンパク質の過剰発現に関係
する慢性疾患もまた治療できる。
【0049】
本発明の組成物は最適化して他のワクチン接種レジメンと組み合わせると極めて広範囲
(すなわち、上記に記載した機能を含む、免疫反応の全ての態様)の細胞性および体液性
反応を提供することができる。特定の実施形態では、これは本発明の組成物を以下の、病
原体もしくは腫瘍由来の免疫原、組み換え免疫原、裸の核酸、脂質含有成分を用いて調製
された核酸、非アルファウイルスベクター(ポックスベクター、アデノウイルスベクター
、ヘルペスベクター、水疱性口内炎ウイルスベクター、パラミクソウイルスベクター、パ
ルボウイルスベクター、パポーバウイルスベクター、レトロウイルスベクターを含むがそ
れらに限定されない)、およびその他のアルファウイルスベクターの1つ以上を含む組成
物と組み合わせて使用される異種プライムブースト法の使用を含むことができる。これら
のウイルスベクターは、ウイルス様粒子または核酸であってよい。これらのアルファウイ
ルスベクターは、レプリコン含有粒子、DNA型レプリコン含有ベクター(ときには「E
LVIS」系と呼ばれる、例えば米国特許第5,814,482号を参照)または裸のR
NAベクターであってよい。
【0050】
本発明の組成物は、それらが被験者において強力な免疫反応を誘導することができない
ために典型的には生残する、慢性もしくは潜在性感染性物質に対する免疫反応を生成する
ためにも使用できる。代表的な潜在的もしくは慢性的感染性因子には、B型肝炎、C型肝
炎、エプスタインバー(Epstein−Barr)ウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト
免疫不全ウイルス、およびヒト乳頭腫ウイルスが含まれるが、それらに限定されない。こ
れらの感染性因子由来のペプチドおよび/またはタンパク質をコードするアルファウイル
スベクターは、本明細書に記載した方法によって細胞または被験者に投与できる。
【0051】
あるいは、免疫原性タンパク質もしくはペプチドはいずれかの腫瘍もしくは癌細胞抗原
であってよい。好ましくは、腫瘍もしくは癌細胞抗原は癌細胞の表面上で発現する。特異
的乳癌に対する代表的な癌抗原はHER2およびBRCA1抗原である。その他の代表的
な癌および腫瘍細胞抗原はS.A.Rosenberg,(1999),Immunit
y 10:281に記載されており、MART−1/MelanA、gp100、チロシ
ナーゼ、TRP−1、TRP−2、MAGE−1、MAGE−3、GAGE−1/2、B
AGE、RAGE、NY−ESO−1、CDK−4、β−カテニン、MUM−1、カスパ
ーゼ−8、KIAA0205、HPVE&、SART−1、PRAME、p15およびp
53抗原、ウィルムス(Wilms)腫瘍抗原、チロシナーゼ、胎児性癌抗原(CEA)
、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PS
CA)、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)β−ヒドロキシラーゼ(HAAH)、およ
びEphA2(上皮細胞チロシンキナーゼ、国際特許公開第WO01/12172号を参
照)が含まれるが、それらに限定されない。
【0052】
本発明の免疫原性ポリペプチドもしくはペプチドは、さらにまた、このような抗原につ
いて教示するために全体として参照して組み込まれる国際特許公開第WO99/5126
3号に記載されたように「汎発性」もしくは「人工」癌抗原もしくは腫瘍細胞抗原であっ
てよい。
【0053】
様々な実施形態では、本発明の異種核酸はアンチセンス核酸配列をコードすることがで
きる。「アンチセンス」核酸は、アンチセンス核酸の作用による生成の阻害もしくは減少
を目的とするポリペプチドをコードする核酸をコードする、もしくは核酸の発現に関係す
る核酸(例、遺伝子、cDNAおよび/またはmRNA)の全部もしくは一部に相補的(
すなわち、インビボまたはストリンジェントなインビトロ条件下でハイブリダイズするこ
とができる)核酸分子(すなわち、DNAもしくはRNA)である。所望であれば、従来
法を使用すると望ましい修飾を含有するアンチセンス核酸を生成することができる。例え
ば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、インビボでヌクレアーゼによるアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドの変性を阻害するためのアンチセンス核酸として使用できる。ア
ンチセンス核酸が標的とされるポリペプチドをコードする核酸の一部に相補的である場合
は、アンチセンス核酸は、機能的ポリペプチドの翻訳を阻害するようにポリペプチドをコ
ードする核酸の5’末端の十分近くへハイブリダイズするはずである。典型的には、これ
はそれにハイブリダイズする核酸の5’の半分もしくは3分の1以内である配列にアンチ
センス核酸が相補的なはずであることを意味する。
【0054】
本発明のアンチセンス核酸はさらにまた、標的遺伝子産物をコードするmRNAを加水
分解することによって細胞内の標的核酸の発現を阻害する触媒性RNA(すなわち、リボ
ザイム)をコードすることができる。さらに、ハンマーヘッドRNAは、イントロンスプ
ライシングを防止するためのアンチセンス核酸として使用できる。本発明のアンチセンス
核酸は、アンチセンステクノロジーのための当分野において慣例的であるプロトコールに
よって生成および試験することができる。
【0055】
本明細書に記載する用語「アルファウイルス」は当分野における通常の意味を有し、東
部ウマ脳炎(Eastern Equine Encephalitis)(EEE)ウ
イルス、ベネズエラウマ脳炎(Venezuelan Equine Encephal
itis)(VEE)ウイルス、エバグレーズ(Everglades)ウイルス、ムカ
ンボ(Mucambo)ウイルス、ピクスナ(Pixuna)ウイルス、西部脳炎(We
stern Encephalitis)ウイルス(WEE)、シンドビス(Sindb
is)ウイルス、南アフリカアルボウイルス(South African Arbov
irus)第86号(S.A.AR86)、ガードウッド(Girdwood)S.A.
ウイルス、Ockelboウイルス、セムリキ森林(Semliki Forest)ウ
イルス、ミドルバーグ(Middleburg)ウイルス、チクングンヤ(Chikun
gunya)ウイルス、オニョンニョン(O’Nyong−Nyong)ウイルス、ロス
リバー(Ross River)ウイルス、バーマ森林(Barmah Forest)
ウイルス、ゲタ(Getah)ウイルス、サギヤマ(Sagiyama)ウイルス、ベバ
ル(Bebaru)ウイルス、マヤロ(Mayaro)ウイルス、ウナ(Una)ウイル
ス、アウラ(Aura)ウイルス、ワタロア(Whataroa)ウイルス、Baban
kiウイルス、Kyzlagachウイルス、Highlands Jウイルス、For
t Morganウイルス、ヌドゥム(Ndumu)ウイルス、Buggy Creek
ウイルス、およびその他の国際ウイルス分類委員会(ICTV)によってアルファウイル
スであると分類された任意の他のウイルスを含む。
【0056】
本発明の特定実施形態では、本発明の核酸によってコードされる核酸および/またはタ
ンパク質は弱毒化突然変異を含むことができる。本明細書で使用する熟語「弱毒化突然変
異」および「弱毒化アミノ酸」は、当分野における専門用語によって、その宿主内で疾患
を引き起こす確率の減少を生じさせる突然変異を含有するヌクレオチド配列、または突然
変異を含有するヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸を含む。例えば、Dav
is et al.,MICROBIOLOGY 132(3d ed.1980)を参
照されたい。熟語「弱毒化突然変異」からは、ウイルスにとって致死的であろう突然変異
または突然変異の組み合わせが除外される。しかし、さもなければ致死性であるが弱毒化
表現型をもたらす突然変異を蘇生させる、もしくは救済する突然変異と組み合わせて組み
込むことのできる突然変異を含む。
【0057】
適切な弱毒化突然変異は使用されるアルファウイルスに依存するが、当業者には知られ
ているであろう。代表的な弱毒化突然変異には、それらの各々の開示が本明細書に全体と
して参照して組み込まれるJohnston et al.への米国特許第5,505,
947号、Johnston et al.への米国特許第5,185,440号、Da
vis et al.への米国特許第5,643,576号、Johnston et
al.への米国特許第5,792,462号、およびJohnston et al.へ
の米国特許第5,639,650号に記載された弱毒化突然変異が含まれるが、それらに
限定されない。
【0058】
本発明の様々な実施形態では、本発明のアルファウイルス粒子の1つ以上のアルファウ
イルス構造タンパク質は、例えば米国特許第5,792,462号および第6,156,
558号に規定されたように1つ以上の弱毒化突然変異を含むことができる。VEE E
1糖タンパク質に対する特異的弱毒化突然変異は、E1アミノ酸の位置81、272およ
び/または253のいずれか1つに弱毒化突然変異を含むことができる。VEE−304
2変異体から作製されたアルファウイルス粒子はE1−81でイソロイシン置換を含んで
おり、そしてVEE−3040変異体から作製されたウイルス粒子はE1−253で弱毒
化突然変異を含む。VEE E2糖タンパク質に対する特異的弱毒化突然変異は、E2ア
ミノ酸の位置76、120または209のいずれか1つに弱毒化突然変異を含むことがで
きる。VEE−3014変異体から作製されたアルファウイルス粒子はE1−272およ
びE2−209の両方で弱毒化突然変異を含有している(米国特許第5,792,492
号を参照)。VEE E3糖タンパク質に対する特異的弱毒化突然変異は、E3アミノ酸
56−59の欠失からなる弱毒化突然変異を含む。VEE−3526変異体から作製され
たウイルス粒子は、E3(aa56−59)におけるこの欠失ならびにE1−253での
第2弱毒化突然変異を含有している。S.A.AR86 E2糖タンパク質に対する特異
的弱毒化突然変異は、E2アミノ酸の位置304、314、372、または376のいず
れか1つに弱毒化突然変異を含む。あるいは、弱毒化突然変異は、例えばいずれかの組み
合わせでの以下の、158、159、160、161および162アミノ酸位置のいずれ
か1つ以上で、E2糖タンパク質におけるアミノ酸の置換、欠失および/または挿入であ
ってよい(その全内容が参照して本明細書に組み込まれるPolo et al.への国
際特許公開第WO00/61772号を参照されたい)。
【0059】
本発明のまた別の弱毒化突然変異はVEEゲノムRNAのヌクレオチド3、すなわち5
’メチル化キャップに続く第3ヌクレオチドでの弱毒化突然変異であってよい(例えば、
nt3でのG→C突然変異について記載している米国特許第5,643,576号を参照
されたい。)。この突然変異は、G→A、UまたはCであってよいが、一部の実施形態で
はG→A突然変異であってもよい。
【0060】
アルファウイルス構造タンパク質および/または非構造タンパク質がS.A.AR86
由来である場合は、構造タンパク質および/または非構造タンパク質における代表的な弱
毒化突然変異には弱毒化アミノ酸、好ましくはnsp1アミノ酸538としてのイソロイ
シンを特定するnsp1アミノ酸位置538でのコドン;弱毒化アミノ酸、好ましくはE
2アミノ酸304としてのトレオニンを特定するE2アミノ酸位置304でのコドン;弱
毒化アミノ酸、好ましくはE2アミノ酸314としてのリシンを特定するE2アミノ酸位
置314でのコドン;弱毒化アミノ酸、好ましくはE2アミノ酸残基372でのロイシン
を特定するE2アミノ酸372でのコドン;弱毒化アミノ酸、好ましくはE2アミノ酸3
76としてのアラニンを特定するE2アミノ酸位置376でのコドン;組み合わせて、上
記に記載した弱毒化アミノ酸を特定するE2アミノ酸残基304、314、372および
376でのコドン;弱毒化アミノ酸、好ましくはnsp2アミノ酸96としてのグリシン
を特定するnsp2アミノ酸位置96でのコドン;および弱毒化アミノ酸、好ましくはn
sp2アミノ酸372としてのバリンを特定するnsp2アミノ酸位置372でのコドン
;組み合わせて、上記に記載したnsp2アミノ酸残基96および372で弱毒化アミノ
酸をコードするnsp2アミノ酸残基96および372でのコドン;弱毒化アミノ酸、好
ましくはnsp2アミノ酸残基529でのロイシンを特定するnsp2アミノ酸残基52
9でのコドン;弱毒化アミノ酸、好ましくはnsp2アミノ酸残基571でのアスパラギ
ンを特定するnsp2アミノ酸残基571でのコドン;弱毒化アミノ酸、好ましくはns
p2アミノ酸残基682でのアルギニンを特定するnsp2アミノ酸残基682でのコド
ン;弱毒化アミノ酸、好ましくはnsp2アミノ酸残基804でのアルギニンを特定する
nsp2アミノ酸残基804でのコドン;弱毒化アミノ酸、好ましくはnsp3アミノ酸
残基22でのアルギニンを特定するnsp3アミノ酸残基22でのコドン;および組み合
わせて、上記に記載したような弱毒化アミノ酸を特定するnsp2アミノ酸残基529、
571、682および804ならびにnsp3アミノ酸残基22でのコドンが含まれるが
、それらに限定されない。
【0061】
他の例示的弱毒化突然変異には国際特許公開第PCT/US01/27644号(その
開示は参照して全体として本明細書に組み込まれる)に記載された弱毒化突然変異が含ま
れる。例えば、弱毒化突然変異はS.A.AR86 nsp3タンパク質のアミノ酸位置
537での弱毒化突然変異であってよいが、より好ましくはこの位置での置換突然変異、
さらにいっそうより好ましくは停止コドンの置換を生じさせるナンセンス突然変異であっ
てよい。翻訳停止(すなわち、終止)コドンは当分野において知られており、「オパール
」(UGA)、「アンバー」(UAG)および「オーカー」(UAA)終止コドンが含ま
れる。本発明の実施形態では、弱毒化突然変異はS.A.AR86 nsp3アミノ酸位
置537でCys→オパール置換を生じさせることができる。
【0062】
また別の代表的な弱毒化突然変異は、S.A.AR86 nsp3タンパク質のアミノ
酸385に続く弱毒化挿入突然変異を含むことができる。挿入は、少なくとも2、4、6
、8、10、12、14、16もしくは20個のアミノ酸の挿入を含むことができる。本
発明の一部の実施形態では、挿入されたアミノ酸配列は、セリン/トレオニンキナーゼに
よるリン酸化のための基質として機能するセリンおよびトレオニン残基に富む(例えば、
少なくとも2、4、6、もしくは8個のそのような部位を含む)。
【0063】
特定の実施形態では、弱毒化突然変異はnsp3のアミノ酸385に続くアミノ酸配列
Ile−Thr−Ser−Met−Asp−Ser−Trp−Ser−Ser−Gly−
Pro−Ser−Ser−Leu−Glu−Ile−Val−Asp(配列番号1)の挿
入を含むことができる(すなわち、第1アミノ酸はnsp3におけるアミノ酸386と指
定される)。本発明の他の実施形態では、挿入突然変異は弱毒化表現型を生じさせる配列
番号1の断片の挿入を含むことができる。この断片は、配列番号1からの少なくとも4、
6、8、10、12、14、15、16もしくは17個の連続アミノ酸を含むことができ
る。
【0064】
当業者であれば、上述した配列の断片を含む、または上述した配列内へ保存的アミノ酸
置換を組み込んでいる他の弱毒化挿入配列は慣例的方法によって慣例的に同定できること
を理解するであろう(上記のように)。本発明のいずれかの理論によって結び付けること
を望まなくても、配列番号1の挿入配列は、弱毒化表現型を与えるセリン残基で高度にリ
ン酸化されると思われる。そこで、セリン(もしくはトレオニン)リン酸化のための基質
として機能する他の弱毒化挿入配列は当分野において知られている従来技術によって同定
できる。あるいは、または追加して、S.A.AR86 nsp3タンパク質のアミノ酸
385(すなわち、上述した挿入配列の直前)でのTyr→Ser置換がある。この配列
は、非毒性シンドビス群ウイルス内では保存されているが、S.A.AR86からは欠失
している。
【0065】
他の実施形態では、本発明のアルファウイルスは、いずれかのシンドビスウイルス株(
例、TR339)、VEE(メチル化キャップに続くゲノムRNAのヌクレオチド3で突
然変異を有する)、S.A.AR86ウイルス、ガードウッドS.A.ウイルス、Ock
elboウイルス、および/またはそのキメラウイルスであってよい。多数のアルファウ
イルスについて、完全ゲノム配列、ならびに様々な構造タンパク質および非構造タンパク
質の配列は当分野において知られており、シンドビスウイルスゲノム配列(GenBan
kアクセッション番号J02363、NCBIアクセッション番号NC_001547)
、S.A.AR86ゲノム配列(GenBankアクセッション番号U38305)、V
EEゲノム配列(GenBankアクセッション番号L04653、NCBIアクセッシ
ョン番号NC_001449)、ガードウッドS.Aゲノム配列(GenBankアクセ
ッション番号U38304)、セムリキ森林ウイルスゲノム配列(GenBankアクセ
ッション番号X04129、NCBIアクセッション番号NC_003215)、および
TR339ゲノム配列(Klimstra et al.(1988),J.Virol
.72:7357;McKnight et al.(1996),J.Virol.7
0:1981)が含まれる。
【0066】
本発明の特定実施形態では、本発明のアルファウイルス構造タンパク質は、シンドビス
ウイルス構造タンパク質、SFV構造タンパク質、VEE構造タンパク質、ロスリバーウ
イルス構造タンパク質、S.A.AR86構造タンパク質、EEE構造タンパク質および
/またはWEE構造タンパク質であってよい。これらは、相互とのいずれかの組み合わせ
で存在していてよく、そして本発明のキメラ組み換えアルファウイルス粒子およびまたは
キメラ組み換え核酸を生成するためのこれらおよび/または他のアルファウイルスのいず
れかからの5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルスサブゲノムプロモータ
ーおよび3’アルファウイルス複製認識配列などのいずれかのアルファウイルス非構造タ
ンパク質および/または他のアルファウイルス配列との組み合わせで存在していてよい。
【0067】
また別の実施形態では、本発明のIRESエレメントは、異種核酸によってコードされ
る遺伝子産物の翻訳の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、4
0%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、9
0%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%が該
IRESエレメントの活性によって制御されるように、本発明の組み換え核酸の異種核酸
によってコードされる遺伝子産物の翻訳を指令する。該IRESによって制御されるよう
な本発明の組み換えレプリコン核酸中の異種核酸によってコードされる遺伝子産物の翻訳
のパーセンテージは、当分野において周知であり、本明細書に提供した実施例のセクショ
ンに記載したアッセイによって決定できる。
【0068】
その上、本発明のIRESエレメントが本発明のヘルパー構築物内に存在するアルファ
ウイルス構造タンパク質の翻訳を指令する本発明の実施形態では、本発明のIRESエレ
メントは、構造タンパク質の翻訳の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%
、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%
、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または1
00%が該IRESエレメントの活性によって制御されるように、1つ以上の構造タンパ
ク質の翻訳を指令できる。本発明のIRESエレメントによって制御される1つ以上の構
造タンパク質の翻訳のパーセンテージは、当分野において周知であり、本明細書に提供し
た実施例のセクションに記載したアッセイによって決定できる。
【0069】
本発明の核酸はRNAまたはDNAであってよい。
【0070】
本発明のまた別の実施形態では、一連のヘルパー核酸(「ヘルパー構築物」または「ヘ
ルパー分子」)、すなわち1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質を発現する組み換
えDNAまたはRNA分子が提供される。1セットのRNA実施形態では、該ヘルパー構
築物は(i)5’アルファウイルス複製認識配列と、(ii)転写プロモーターと、(i
ii)少なくとも1つの、しかし全部ではないアルファウイルス構造タンパク質をコード
する核酸配列と、および(iv)アルファウイルス3’複製認識配列と、をコードする第
1核酸配列を含む。特定の実施形態では、E1およびE2糖タンパク質は1つのヘルパー
構築物によってコードされ、そしてキャプシドタンパク質は他の別個のヘルパー構築物に
よってコードされる。また別の実施形態では、E1糖タンパク質、E2糖タンパク質、お
よびキャプシドタンパク質は各々別個のヘルパー構築物によってコードされる。他の実施
形態では、キャプシドタンパク質および糖タンパク質の1つは1つのヘルパー構築物によ
ってコードされ、そして他の糖タンパク質は別個の第2ヘルパー構築物によってコードさ
れる。さらにまた別の実施形態では、キャプシドタンパク質および糖タンパク質E1は1
つのヘルパー構築物によってコードされ、そしてキャプシドタンパク質および糖タンパク
質E2は別個のヘルパー構築物によってコードされる。特定の実施形態では、本発明のヘ
ルパー構築物はアルファウイルスパッケージングシグナルを含んでいない。
【0071】
あるいは、上述したヘルパー核酸は、ヘルパー細胞のゲノム内に安定性で統合できる、
またはエピソーム(例、EBV由来エピソーム)から発現させることのできるDNA分子
として構築される。DNA分子はさらにまた細胞内で一過性に発現させることができる。
DNA分子は、プラスミドなどの非組み込み型DNAベクター、またはウイルスベクター
を含むがそれらに限定されない当分野において知られているいずれかのベクターであって
よい。DNA分子は、本明細書で記載するように、アルファウイルス構造タンパク質の1
つまたは全部をあらゆる組み合わせでコードすることができる。
【0072】
本発明のヘルパー構築物は、本発明のアルファウイルス粒子を生成するために使用され
る「ヘルパー細胞」内に導入される。上述したように、アルファウイルス構造タンパク質
をコードする核酸はヘルパー細胞内に一過性で、またはヘルパー細胞のゲノム内への安定
性組込みによって存在してよい。本発明のアルファウイルス粒子を生成するために使用さ
れるアルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸は、構成性および/または誘導性
プロモーターの制御下にあってよい。同様に上述したように、アルファウイルス構造タン
パク質コード配列は組み換えレプリコン核酸上および/またはIRESエレメントを含む
ヘルパー構築物上で提供することができ、そしてこれらのコード配列の翻訳はIRESエ
レメントの活性によって制御することができる。そのような実施形態では、IRESエレ
メントは特異的ヘルパー細胞タイプ内で活性であっても、活性でなくても、または他の細
胞タイプでは活性が極めて小さくてもよい。特定の実施形態では、本発明のヘルパー細胞
は、組み換えレプリコン核酸がそれによってアルファウイルス構造タンパク質が生成され
て組み換えレプリコン核酸が本発明のアルファウイルス粒子内にパッケージングされる条
件下で細胞内に導入されるときに、本発明のアルファウイルス粒子を生成するためにある
組み合わせおよび/または十分な量でアルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸
配列を含む。
【0073】
本発明の実施形態の全部において、組み換えレプリコン核酸および/またはヘルパー分
子によってコードされる少なくとも1つのアルファウイルス構造タンパク質および/また
は非構造タンパク質、および/または組み換えレプリコンおよび/またはヘルパー核酸の
非翻訳領域は、本明細書に記載されており、そして文献において周知のように、あらゆる
組み合わせで1つ以上の弱毒化突然変異を含有することができると意図される。
【0074】
本発明の特定構築物では、DNAからのRNAの転写を指令するためのプロモーター、
すなわちDNA依存性RNAポリメラーゼが使用される。本発明のRNAヘルパーおよび
レプリコン実施形態ではプロモーターを利用してインビトロ転写反応においてRNAが合
成され、この使用のために適切な特異的プロモーターにはSP6、T7、およびT3 R
NAポリメラーゼプロモーターが含まれるが、それらに限定されない。DNAヘルパー実
施形態では、このプロモーターは細胞内で機能してRNAの転写を指令する。該構築物の
インビボ転写のための潜在的プロモーターには、RNAポリメラーゼIIプロモーター、
RNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの真核生物プロモーター、またはMMTVお
よびMoSV LTR、SV40早期領域、RSVもしくはCMVなどのウイルスプロモ
ーターが含まれるが、それらに限定されない。本発明のために多数の他の適切な哺乳動物
およびウイルスプロモーターが利用可能であり、当分野において知られている。あるいは
、細菌もしくはバクテリオファージ(例えばSP6、T7、およびT3)由来のDNA依
存性RNAポリメラーゼプロモーターは、別個のプラスミド、RNAベクター、またはウ
イルスベクターのいずれかを介して、細胞へ提供される適合するRNAポリメラーゼと一
緒にインビボで使用するために利用できる。特定の実施形態では、適合するRNAポリメ
ラーゼは誘導性プロモーターの制御下でヘルパー細胞系に安定性で形質転換させることが
できる。細胞内で機能する構築物は細胞内に形質転換させた自律プラスミドとして機能す
ることができる、および/またはそれらはゲノム内に安定性で形質転換させることができ
る。安定性で形質転換された細胞系では、プロモーターは誘導性プロモーターであってよ
いので、その結果として細胞は、細胞が適切な刺激(誘導因子)へ曝露させられると安定
性で形質転換させられた構築物によってコードされるRNAポリメラーゼだけを生成する
であろう。ヘルパー構築物は、該誘導因子と同時に、前に、および/または後に安定性で
形質転換された細胞内へ導入され、それによってアルファウイルス構造タンパク質の発現
に影響を及ぼす。あるいは、細胞内で機能するように設計された構築物を、哺乳動物po
l IIプロモーターとともに例えばアデノウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウ
イルス、SV40、レトロウイルス、ノダウイルス(nodavirus)、ピコルナウ
イルス、水疱性口内炎(vesicular stomatitis)ウイルス、および
バキュロウイルスなどのウイルスベクターを介して細胞内に導入することができる。
【0075】
本明細書に提供した本発明の特定の実施形態では、本発明の組み換えレプリコン核酸お
よび/またはヘルパー核酸は、本発明の組み換えレプリコン核酸および/またはヘルパー
核酸内のIRESエレメントの上流に位置していてよいスペーサー核酸を含むことができ
る。スペーサー核酸は、翻訳が次にIRESによって一部または全部が指令されるように
、メッセンジャーRNAの5’キャップからの少なくとも一部、および一部の実施形態で
は全部の翻訳を防止するために十分な長さであるいずれかのランダムもしくは特異的非コ
ーディング核酸配列を含んでいてよい、本質的にそれらから構成されてよい、または構成
される。あるいは、スペーサー核酸は、メッセンジャーRNAの5’キャップからの少な
くとも一部およびもしかすると全部の翻訳活性を防止するために核酸へ十分な二次構造を
付与する長さおよび配列構造であってよい。
【0076】
1つの例として、市販で入手できるプラスミドpCDNA3.1(−)は、このプラス
ミド内で頻回に切断する制限酵素AluIを用いて消化されたので、したがって多数のラ
ンダムおよび様々なサイズの断片を生成する(詳細については、実施例3を参照されたい
)。pCDNAプラスミドは長さが5427ヌクレオチドであり、挿入された核酸の発現
のための様々なプロモーター(CMV、T7、SV40)ならびにポリアデニル化シグナ
ルおよび抗生物質耐性遺伝子を含む真核生物発現ベクターである。AluI酵素はこれら
のエレメント全体で切断し、ある範囲のランダム断片を提供する。以下では、この実施例
から生成された、そしてこのプラスミドからのいずれかの機能的エレメントをコードしな
い数種のスペーサーの実施例およびそれらの配列を提供する。
357ヌクレオチドスペーサー:
CTGAATGAAGCCATACCAAACGACGAGCGTGACACCACGA
TGCCTGTAGCAATGGCAACAACGTTGCGCAAACTATTAAC
TGGCGAACTACTTACTCTAGCTACCAACTCTTTTTCCGAA
GGTAACTGGCTTCAGCAGAGCGCAGATACCAAATACTGTT
CTTCTAGTGTAGCCGTAGTTAGGCCACCACTTCAAGAACT
CTGTAGCACCGCCTACATACCTCGCTCTGCTAATCCTGTT
ACCAGTGGCTGCTGCCAGTGGCGATAAGTCGTGTCTTACC
GGGTTGGACTCAAGACGATAGTTACCGGATAAGGCGCAGC
GGTCGGGCTGAACGGGGGGTTCGTGCACACAGCCCAG
342ヌクレオチドスペーサー:
CTATTCCAGAAGTAGTGAGGAGGCTTTTTTGGAGGCCTAG
GCTTTTGCAAAAAGCTTGTATATCCATTTTCGGATCTGAT
CAAGAGACAGGATGAGGATCGTTTCGCATGATTGAACAAG
ATGGATTGCACGCAGGTTCTCCGGCCGCTTGGGTGGAGAG
GCTATTCGGCTATGACTGGGCACAACAGACAATCGGCTGC
TCTGATGCCGCCGTGTTCCGGCTGTCAGCGCAGGGGCGCC
CGGTTCTTTTTGTCAAGACCGACCTGTCCGGTGCCCTGAA
TGAACTGCAGGACGAGGCAGCGCGGCTATCGTGGCTGGCC
ACGACGGGCGTTCCTTGCGCAG
257ヌクレオチドスペーサー:
CTCATTTTTTAACCAATAGGCCGAAATCGGCAAAATCCCT
TATAAATCAAAAGAATAGACCGAGATAGGGTTGAGTGTTG
TTCCAGTTTGGAACAAGAGTCCACTATTAAAGAACGTGGA
CTCCAACGTCAAAGGGCGAAAAACCGTCTATCAGGGCGAT
GGCCCACTACGTGAACCATCACCCTAATCAAGTTTTTTGG
GGTCGAGGTGCCGTAAAGCACTAAATCGGAACCCTAAAGG
GAGCCCCCGATTTAGAG
383ヌクレオチドスペーサー:
CTGCGCAAGGAACGCCCGTCGTGGCCAGCCACGATAGCCG
CGCTGCCTCGTCCTGCAGTTCATTCAGGGCACCGGACAGG
TCGGTCTTGACAAAAAGAACCGGGCGCCCCTGCGCTGACA
GCCGGAACACGGCGGCATCAGAGCAGCCGATTGTCTGTTG
TGCCCAGTCATAGCCGAATAGCCTCTCCACCCAAGCGGCC
GGAGAACCTGCGTGCAATCCATCTTGTTCAATCATGCGAA
ACGATCCTCATCCTGTCTCTTGATCAGATCCGAAAATGGA
TATACAAGCTCACTCATTAGGCACCCCAGGCTTTACACTT
TATGCTTCCGGCTCGTATGTTGTGTGGAATTGTGAGCGGA
TAACAATTTCACACAGGAAACAG
579ヌクレオチドスペーサー:
CTGCAATAAACAAGTTGGGGTGGGCGAAGAACTCCAGCAT
GAGATCCCCGCGCTGGAGGATCATCCAGCCGGCGTCCCGG
AAAACGATTCCGAAGCCCAACCTTTCATAGAAGGCGGCGG
TGGAATCGAAATCTCGTGATGGCAGGTTGGGCGTCGCTTG
GTCGGTCATTTCGAACCCCAGAGTCCCGCTCAGAAGAACT
CGTCAAGAAGGCGATAGAAGGCGATGCGCTGCGAATCGGG
AGCGGCGATACCGTAAAGCACGAGGAAGCGGTCAGCCCAT
TCGCCGCCAAGCTTGTATATCCATTTTCGGATCTGATCAA
GAGACAGGATGAGGATCGTTTCGCATGATTGAACAAGATG
GATTGCACGCAGGTTCTCCGGCCGCTTGGGTGGAGAGGCT
ATTCGGCTATGACTGGGCACAACAGACAATCGGCTGCTCT
GATGCCGCCGTGTTCCGGCTGTCAGCGCAGGGGCGCCCGG
TTCTTTTTGTCAAGACCGACCTGTCCGGTGCCCTGAATGA
ACTGCAGGACGAGGCAGCGCGGCTATCGTGGCTGGCCACG
ACGGGCGTTCCTTGCGCAG
749ヌクレオチドスペーサー:
CTGCAATAAACAAGTTGGGGTGGGCGAAGAACTCCAGCAT
GAGATCCCCGCGCTGGAGGATCATCCAGCCGGCGTCCCGG
AAAACGATTCCGAAGCCCAACCTTTCATAGAAGGCGGCGG
TGGAATCGAAATCTCGTGATGGCAGGTTGGGCGTCGCTTG
GTCGGTCATTTCGAACCCCAGAGTCCCGCTCAGAAGAACT
CGTCAAGAAGGCGATAGAAGGCGATGCGCTGCGAATCGGG
AGCGGCGATACCGTAAAGCACGAGGAAGCGGTCAGCCCAT
TCGCCGCCAAGCTCTTCAGCAATATCACGGGTAGCCAACG
CTATGTCCTGATAGCGGTCCGCCACACCCAGCCGGCCACA
GTCGATGAATCCAGAAAAGCGGCCATTTTCCACCATGATA
TTCGGCAAGCAGGCATCGCCATGGGTCACGACGAGATCCT
CGCCGTCGGGCATGCGCGCCTTGAGCCTGGCGAACAGTTC
GGCTGGCGCGAGCCCCTGATGCTCTTCGTCCAGATCATCC
TGATCGACAAGACCGGCTTCCATCCGAGTACGTGCTCGCT
CGATGCGATGTTTCGCTTGGTGGTCGAATGGGCAGGTAGC
CGGATCAAGCGTATGCAGCCGCCGCATTGCATCAGCCATG
ATGGATACTTTCTCGGCAGGAGCAAGGTGAGATGACAGGA
GATCCTGCCCCGGCACTTCGCCCAATAGCAGCCAGTCCCT
TCCCGCTTCAGTGACAACGTCGAGCACAG
【0077】
関連しないプラスミドから生成されたランダム核酸断片(上述したAluI断片におけ
るように)の使用に加えて、スペーサーとして、細胞もしくはウイルス遺伝子から、例え
ば遺伝子の5’非コーディング領域からの断片を使用することも可能である。1つのアプ
ローチは、現在あるIRESを取り囲んでいる非コード配列を使用する方法である(実施
例4B.4を参照)。もう1つのアプローチは、アルファウイルス遺伝子、例えばキャプ
シド遺伝子の5’非コーディング領域を使用する方法である(実施例4A.2を参照)。
【0078】
そこで、本発明のスペーサー核酸は最小であってよい、長さが少なくとも25核酸であ
ってよい、および所与の組み換えレプリコン核酸内で許容される限りの長さでよいことが
企図されている。例えば、本発明のスペーサー核酸は、特定の実施形態では、長さがおよ
そ25、30、35、40、45、50、55、60、65、75、80、85、90、
95、100、110、115、120、125、130、135、140、145、1
50、160、170、175、180、190、200、210、220、225、2
30、235、240、245、250、275、300、325、350、375、4
00、425、450、475、50、600、700、800、900、1000、1
500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5
500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9
500、または10,000ヌクレオチドであってよい。「およそ」は、スペーサー核酸
は長さが10%、15%、20%および/または25%まで変動する可能性があることを
意味する。
【0079】
本発明のスペーサー核酸はメッセンジャーRNAの転写を開始するために3’から5’
へ配置された、および5’から機能的IRESエレメントへ置かれたヌクレオチド配列で
あってもよいが、前記IRESエレメントから指令された翻訳のレベルは非機能的IRE
Sエレメントから入手されたレベルより少なくとも約5倍高い。好ましい実施形態では、
翻訳のレベルは少なくともおよそ10倍、20倍、50倍、100倍、150倍、180
倍、200倍、300倍、400倍もしくは500倍以上である。他の実施形態では、異
種核酸によってコードされる遺伝子産物および/またはIRES含有ヘルパー構築物によ
ってコードされる1つ以上の構造タンパク質の翻訳の少なくとも10%、20%、30%
、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%もしくは100%は、該IRESエレメントの活性に
よって制御される。
【0080】
本発明は、さらにまた本発明の組み換えレプリコン核酸を含むアルファウイルス粒子を
提供する。さらにまた、感染性の複製欠損アルファウイルス粒子の集団が提供されるが、
このとき各粒子は本発明の組み換えレプリコン核酸を含むアルファウイルスレプリコンR
NAを含有する。一部の実施形態では、本発明の集団は、細胞培養上の継代および/また
は複製コンピテントウイルスを検出するために周知の他のアッセイによって測定されるよ
うに、検出可能な複製コンピテントウイルスを有していない。
【0081】
本発明はさらに、医薬上許容される担体中に本発明の核酸、ベクター、粒子および/ま
たは集団を含む医薬組成物を提供する。「医薬上許容される」は生物学的または他の点で
有害ではない物質を意味する。すなわちこの物質は、実質的に有害な生物学的作用を引き
起こさずに、またはその中に含まれる組成物の他の成分のいずれかと有害な方法で相互作
用せずに選択されたペプチド、ポリペプチド、核酸、ベクターもしくは細胞と一緒に個々
に投与することができる。
【0082】
その上に、本発明のいずれかの組成物は医薬上許容される担体および適切なアジュバン
トを含むことができる。本明細書で使用する「適切なアジュバント」は被験者または被験
者の細胞に有害な作用をもたらすことなく免疫反応をいっそう増強するために本発明のペ
プチドまたはポリペプチドと組み合わせることのできるアジュバントを意味する。適切な
アジュバントは、リン酸緩衝食塩水中の5%(wt/vol)スクアレン(DASF社、
ニュージャージー州パーシッパニー)、2.5% Pluronic、L121ポリマー
(Aldrich Chemical社、ミルウォーキー)、および0.2%のポリソル
ベート(Tween 80、Sigma社)から構成されるSYNTEXアジュバント調
製物1(SAF−1)であるMONTANIDE ISA51(Seppic,Inc.
社、ニュージャージー州フェアフィールド)であってよいが、それに限定されない。その
他の適切なアジュバントは当分野において周知であり、QS−21、(完全および不完全
)フロイントのアジュバント(Freund’s adjuvant)、アルミニウム塩
(ミョウバン)、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミール
−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−nor−ム
ラミール−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11637、nor−MDPと
呼ばれる)、N−アセチル−ムラミール−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−ア
ラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリ
ルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEと呼ばれる)、および
2%スクアレン/Tween 80エマルジョン中に細菌から抽出された3種の成分、モ
ノホスホリル脂質A、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+C
WS)を含有するRIBIが含まれる。アジュバントは、本発明の組成物と、または本発
明の組成物と組み合わせて使用できる他のワクチン組成物のいずれかと組み合わせること
ができる。アジュバントの例には、水中油エマルジョン調製物、細菌細胞壁成分もしくは
合成分子などの免疫刺激剤、またはまた別の骨格成分、オリゴヌクレオチド(例、CpG
s)および例えばポリビニルポリマーを組み込むことのできる核酸ポリマー(二本鎖およ
び一本鎖RNAおよびDNAの両方)が含まれるが、それらに限定されない。
【0083】
本発明の組成物は、さらにまた他の医薬品、医薬物質、担体、希釈剤、免疫刺激性サイ
トカインなどを含むことができる。そのような剤形を調製する実際的方法は、当業者には
知られている、または明白であろう。本発明によって企図されるアルファウイルスレプリ
コン粒子のために好ましい用量範囲は、投与1回当たり103から1010個の粒子であっ
てよい。ヒトのためには、106、107または108が好ましい用量である。用法は、被
験者への本発明の組成物の投与によって達成される所望の予防作用および/または治療作
用を達成するために必要と見なされる1時間毎、1日毎、1週間毎、1カ月毎、1年毎な
どの1回以上の投与であってよい。特定投与の有効性は、当分野において周知の方法によ
って決定できる。
【0084】
本発明は、感染性の複製欠損アルファウイルス粒子を作製する方法であって、a)細胞
内に以下の、(i)本発明の組み換えレプリコン核酸と、(ii)アルファウイルス構造
タンパク質をコードする1つ以上のヘルパー核酸であって、該1つ以上のヘルパー核酸が
該アルファウイルス構造タンパク質の全部を生成するヘルパー核酸と、を導入するステッ
プと、および(b)該細胞内で前記アルファウイルス粒子を生成するステップと、を含む
方法をさらに提供する。一部の実施形態では、該組み換えレプリコン核酸はアルファウイ
ルス構造タンパク質をコードする少なくとも1つの異種核酸を含むことができる。
【0085】
本発明の方法の他の実施形態では、該ヘルパー核酸は5’アルファウイルス複製認識配
列と、アルファウイルスサブゲノムプロモーターと、アルファウイルス構造タンパク質を
コードする核酸と、および3’アルファウイルス複製認識配列と、を含む組み換え核酸で
あってよい。
【0086】
さらにまた別の実施形態では、該ヘルパー核酸は、プロモーター(例、CMVプロモー
ター)および全部を含む1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードするヌクレ
オチド配列を含む組み換え核酸(DNAであってよい)であってよい。
【0087】
本発明のヘルパー核酸は、いずれかの順序および/またはいずれかの組み合わせでアル
ファウイルス構造タンパク質(C、E1、E2)のいずれか1つ以上をコードする核酸配
列を含むことができる。そこで、ヘルパー細胞はアルファウイルス粒子を生成するために
必要なアルファウイルス構造タンパク質の全部を提供するために必要とされるできる限り
多数のヘルパー核酸を含むことができる。ヘルパー細胞は、ヘルパー(例、パッケージン
グ)細胞のゲノム内に安定性に組み込まれた1つ以上のヘルパー核酸を含むことができる
。そのようなヘルパー細胞では、アルファウイルス構造タンパク質は誘導性プロモーター
であってよいプロモーターの制御下で生成できる。
【0088】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用されるヘルパー核酸は、5’アルファ
ウイルス複製認識配列と、IRESエレメントと、アルファウイルス構造タンパク質をコ
ードする核酸と、および3’アルファウイルス複製認識配列と、を含む組み換え核酸であ
ってよい。
【0089】
さらにまた別の実施形態では、該ヘルパー核酸は5’アルファウイルス複製認識配列と
、アルファウイルスサブゲノムプロモーターと、IRESエレメントと、1つ以上のアル
ファウイルス構造タンパク質をコードする核酸と、および3’アルファウイルス複製認識
配列と、を含む組み換え核酸であってよい。
【0090】
さらに、本明細書では、感染性の複製欠損アルファウイルス粒子を作製する方法であっ
て、a)細胞内に以下の、i)5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルス非
構造タンパク質をコードする1つ以上の核酸配列、アルファウイルスサブゲノムプロモー
ター、異種核酸配列および3’アルファウイルス複製認識配列を含むアルファウイルスレ
プリコンRNAと;およびii)5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルス
サブゲノムプロモーター、IRESエレメント、1つ以上のアルファウイルス構造タンパ
ク質をコードする核酸および3’アルファウイルス複製認識配列を含むアルファウイルス
構造タンパク質をコードする1つ以上のヘルパー核酸と、を導入するステップであって、
それによってアルファウイルス構造タンパク質の全部が該細胞内で生成されるステップと
、および(b)該細胞内で前記アルファウイルス粒子を生成するステップと、を含む方法
が提供される。
【0091】
さらに本明細書では、感染性の複製欠損アルファウイルス粒子を作製する方法であって
、a)細胞内に以下の、i)5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルス非構
造タンパク質をコードする1つ以上の核酸配列、少なくとも1つのアルファウイルスサブ
ゲノムプロモーター、少なくとも1つのIRESエレメント、少なくとも1つの異種核酸
配列および3’アルファウイルス複製認識配列を含むアルファウイルスレプリコンRNA
と;およびii)5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルスサブゲノムプロ
モーター、IRESエレメント、1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードす
る核酸および3’アルファウイルス複製認識配列を含むアルファウイルス構造タンパク質
をコードする1つ以上のヘルパー核酸と、を導入するステップであって、それによってア
ルファウイルス構造タンパク質の全部が該細胞内で生成されるステップと、および(b)
該細胞内で前記アルファウイルス粒子を生成するステップと、を含む方法が提供される。
【0092】
本発明のアルファウイルス粒子を作製する方法は、さらに該細胞から前記アルファウイ
ルス粒子を収集するステップをさらに含むことができる。
【0093】
本発明は、5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルスサブゲノムプロモー
ター、IRESエレメント、いずれかの組み合わせおよび/または順序で1つ以上のアル
ファウイルス構造タンパク質をコードする核酸および3’アルファウイルス複製認識配列
を含む組み換え核酸をさらに提供する。一部の実施形態では、この組み換えヘルパー核酸
は、IRESエレメントの上流に位置していてよいスペーサーヌクレオチド配列を含むこ
とができる。さらにまた、この組み換え核酸を含むベクターおよび/または細胞が提供さ
れる。
【0094】
追加して本明細書では、5’アルファウイルス複製認識配列をコードする第1核酸配列
と;アルファウイルス非構造タンパク質をコードする少なくとも1つの第2核酸配列と、
第1アルファウイルスサブゲノムプロモーターと;第1IRESエレメントと、第1異種
核酸と;第2アルファウイルスサブゲノムプロモーターと;第2IRESエレメントと、
3’アルファウイルス複製認識配列をコードする第3核酸と、を含む組み換え核酸が提供
される。一部の実施形態では、第1および第2アルファウイルスサブゲノムプロモーター
は同一であっても相違していてもよく、該第1および第2IRESエレメントは同一であ
っても相違していてもよく、および/または該第1および第2異種核酸は同一であっても
相違していてもよい。この組み換え核酸はアルファウイルスパッケージングシグナルおよ
び/またはIRESエレメントの上流であってよいスペーサーヌクレオチド配列を含むこ
とができる。この組み換え核酸は、アルファウイルス非構造タンパク質コード配列の4つ
全部が組み換え核酸上に存在するように、いずれかの順序および/または組み合わせでア
ルファウイルス非構造タンパク質をコードする1つ以上の第2核酸配列をさらに含むこと
ができる。この組み換え核酸は本発明のアルファウイルス粒子内に存在していてよく、そ
してそのような粒子は本発明の集団として、および/または本発明の医薬組成物内に存在
していてよい。
【0095】
さらにまた、第3以降の追加のアルファウイルスサブゲノムプロモーターと、第3以降
の追加のIRESエレメントと、および/または第3以降の追加の異種核酸と、をさらに
含む上述したような組み換えレプリコン核酸が提供される。この組み換え核酸は本発明の
アルファウイルス粒子内に存在していてよく、そしてそのような粒子は本発明の集団とし
て、および/または本発明の医薬組成物内に存在していてよい。この実施形態の組み換え
核酸を含むアルファウイルス粒子は、本発明のいずれかの方法によって生成することがで
き、免疫反応を誘導するおよび/またはNOIを細胞へ送達する方法のいずれかにおいて
使用できる。
【0096】
また別の実施形態として、本発明は、核酸の転写を指令するプロモーターと;IRES
エレメントと;およびコード配列を含む核酸とを含み、IRESエレメントは、コード配
列の翻訳がIRESエレメントによって指令されるキャップ構造非依存性メカニズムを介
するように機能的に位置している組み換え核酸を提供する。この実施形態では、該核酸の
転写は該核酸の翻訳から解除される。
【0097】
上述した詳細な説明は単に例示するために提供されており、そして本発明の精神および
範囲から逸脱せずにその中で修飾および変更を加えることができることを理解されたい。
【実施例1】
【0098】
トランスファー・クローニングベクターの構築
A.EMCV IRES含有ベクター
脳心筋炎(EMCV)IRES配列およびいずれかのNOIを導入できるトランスファ
ーベクター(pCDNA3.3)を調製した。制限酵素Batheを用いてプラスミドp
CDNA3.1(+)(Nitrogen社)を消化し、T4 DNAポリメラーゼを用
いて処理して固有のBathe制限部位を除去すると、pCDNA3.2が生成した。さ
らに制限酵素Bayを用いてpCDNA3.2 DNAを消化し、同様にT4 DNAポ
リメラーゼを用いて処理して固有のBay制限部位を除去すると、pCDNA3.3が得
られた。
【0099】
〜250bpのApaI/NotI MCS断片をApaI/NotI直線化pBlu
escript KS+(Stratagene社)DNA内へライゲートしてpKS−
rep2を生成することによって、VEEレプリコンベクター由来の多重クローニング部
位(MCS)を含有する中間クローニングベクターを調製した。制限酵素EcoRIおよ
びBamHIを用いてEMCV IRESをpD1+2+3から消化し(Kaminsk
i et al.,1995)、EcoRIおよびBamHI直線化pKS−rep2
DNA内にライゲートして、pKS−rep2/EMCVを生成した。プライマーEMC
VF(AscI).2およびEMCVR(AscI).1を使用してpKS−rep2/
EMCVベクター由来のEMCV IRESおよびMCS配列をPCR増幅させた(表1
)。AscI制限酵素を用いてEMCV PCR産物を消化し、AscI直線化VEEレ
プリコン(pERK)ベクターDNA内にライゲートし、pERK/EMCVを生成した
。トランスファークローニングベクターを完成するために、EcoRVおよびNotI制
限酵素を用いてpERK/EMCV DNAを消化し、862bp EcoRV/Not
I断片をEcoRVおよびNotI直線化pCDNA3.3 DNA内にライゲートし、
pCDNA3.3/EMCVを生成した。EMCV IRESおよび関連する多重クロー
ニング部位の配列は、それを用いてまた別の構築物を調製する前にpCDNA3.3/E
MCVベクター内で確認した。
【0100】
【表1】

【0101】
B.XIAP IRES含有ベクター
推定IRESエレメントを含有するアポトーシス(XIAP)遺伝子5’非コーディン
グ領域(NCR)のX連鎖阻害剤(エレメントの配列およびサイズについてはHolci
k et al.(1999)Nature Cell Biol 1:190−192
;Holcik and Korneluk(2000)Mol Cell Biol
20:4648−57およびHolcik et al.(2003)Mol Cell
Biol 23:280−288を参照)は、cDNAを補給したアダプタープライマ
ーおよびXIAPリバースプライマー(XIAP−R)を用いてヒト胎児肝marath
on ready cDNA(Clontech社、カリフォルニア州パロアルト)から
PCR増幅させ、次にXIAP IRES特異的プライマーを用いるネストPCRを実施
した。プライマーは表2に列挙した。結果として生じたおよそ1007および241bp
のPCR産物は市販で入手できるキット(Invitrogen Corporatio
n社;カリフォルニア州カールズバッド)を用いてTAクローニングした。これらの構築
物は、163ヌクレオチド推定XIAP IRESに加えて、XIAP遺伝子非コーディ
ング領域の各々844ヌクレオチドまたは78ヌクレオチドのどちらかを有する。各構築
物についての配列は、全自動DNAシーケンシングによって確認した。VEEレプリコン
内へクローニングするためのシャトルベクターを生成するために、XIAP配列をpKS
−rep2の等価部位内へEcoRI断片として移し、pKS−rep2/XIAP10
07およびpKS−rep2/XIAP241 DNAを生成した。
【0102】
【表2】

【0103】
1007bp XIAP 5’NCR
ACACGTGGGGCAACCCTGATTTATGCCTGTTGTCCCAGTG
TGATTATTACTAGTGTAATTTTTCACTTTGAGAAGTGTCC
AGGTTTGGAGGATAAATTATCTTTCTAATAATTGATACCC
TTCTCATAACCTAACGGGTTCCTTTTAGTATTTTATCTGG
GTTAAAATTACCAGCTGTAATTTGGCAGCTCTAATAAGAC
TGCAGCAATACTTATCTTCCATTTGAACAGATTGTTACTT
GACCAAGGGAAGTTAATAGCAAAAGTAACTGCAGGGCACA
TGTATGTCATGGGCAAAAAAAAAAAAGTAACAGCAATTAA
GGTTTGCAGGTACTTAGAATTTTTCCTGAGCCACCCTCTA
GAGGGCAGTGTTACATATATATCTGTAATTATCCAGTTAC
AACAAAAAAAGGGCTCTCATTCATGCATGAAAATCAGAAA
TATTTCATACTCTTAAAGAACACATTGGAACCAATATTAT
GATTAAAACATATTTTGCTAAGCAAAGAGATATTAAAAAT
TAATTCATTAACATTCTGAACATTTTTTAACTTGTAAAAA
CAACTTTGATGCCTTGAATATATAATGATTCATTATAACA
ATTATGCATAGATTTTAATAATCTGCATATTTTATGCTTT
CATGTTTTTCCTAATTAATGATTTGACATGGTTAATAATT
ATAATATATTCTGCATCACAGTTTACATATTTATGTAAAA
TAAGCATTTAAAAATTATTAGTTTTATTCTGCCTGCTTAA
ATATTACTTTCCTCAAAAAGAGAAAACAAAAATGCTAGAT
TTTACTTTATGACTTGAATGATGTGGTAATGTCGAACTCT
AGTATTTAGAATTAGAATGTTTCTTAGCGGTCGTGTAGTT
ATTTTTATGTCATAAGTGGATAATTTGTTAGCTCCTATAA
CAAAAGTCTGTTGCTTGTGTTTCACATTTTGGATTTCCTA
ATATAATGTTCTCTTTTTAGAAAAGGTGGACAAGTCCTAT
TTTCAAGAGAAGAT
【実施例2】
【0104】
改良されたレプリコンベクターの構築
A.EMCV IRESを含有する構築物
機能的アルファウイルス26Sプロモーターの下流に配置されたIRES配列の機能性
を証明するために、レポーター遺伝子をpCDNA3.3/EMCVトランスファーベク
ター内にサブクローニングし、次にEMCV/レポーター遺伝子カセットをpERKレプ
リコンベクター内へ移動させた。最初の実験は、クロラムフェニコール−アセチル−トラ
ンスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子を発現するレプリコンベクターを用いて実施
した。プライマーのF’−CAT(BamHI)およびR’−CAT(XbaI)を用い
てCAT遺伝子を増幅させた(表1)。BamHIおよびXbaI制限酵素を用いてPC
R産物を消化し、BamHI/XbaI直線化pCDNA3.3/EMCV DNA内に
ライゲートし、pCDNA3.3/EMCV/CATを生成した。CAT遺伝子の配列を
確認した後、AscI制限酵素を用いてpCDNA3.3/EMCV/CAT DNAを
消化して1303bpのEMCV/CAT断片を遊離させた。次にAscI消化EMCV
/CAT断片をAscI直線化pERKベクターDNA内にライゲートし、pERK/E
MCV/CATを生成した。
【0105】
EMCV IRESは指向性活性を有し、それがNOIに関して間違った方向にある場
合は、キャップ構造非依存性翻訳は認められないことが証明されている(Roberts
and Belsham(1997)Virology 227:53−62)。さら
に、EMCV IRESの5’末端配列の欠失はジシストロニック発現ベクターとの関連
でのキャップ構造非依存性翻訳を無効にする(Van der Velden et a
l.(1995)Virology 214:82−90;Jang & Wimmer
(1990)Genes & Development 4:1560−72)。CAT
遺伝子のキャップ構造非依存性翻訳が発生していることを証明するために、アンチセンス
方向にEMCV IRESだけを伴う(pERK/anti−EMCV/CAT)、また
はEMCV IRESの末端配列5’欠失を伴う(pERK/ΔAvr/CAT)、pE
RK/EMCV/CATと同一である2つのpERKベクターを調製した。
【0106】
EMCV IRESのアンチセンスバージョンは、プライマーのanti−En(Ec
oRI)およびanti−En(BamHI)(表1)を用いてpKS rep2/EM
CV DNAからPCR増幅させた。EcoRIおよびBamHI制限酵素を用いて増幅
させたEMCV IRES断片を消化し、EcoRI/BamHI直線化pKS−rep
2 DNA内にライゲートし、pKS−rep2/anti−EMCVを生成した。上述
したとおりのBamHI/XbaI消化CAT遺伝子をBamHI/XbaI直線化pK
S−rep2/anti−EMCV DNA内にライゲートし、pKS−rep2/an
ti−EMCV/CATを生成した。プライマーEMCVR(AscI).1およびan
ti−En(AscI)(表1)を用いて1295bpのanti−EMCV/CAT遺
伝子カセットをpKS−rep2/anti−EMCV/CAT DNAからPCR増幅
させた。最後に、AscI制限酵素を用いてanti−EMCV/CAT断片を消化して
AscI直線化pERKベクターDNA内にライゲートし、pERK/anti−EMC
V/CATを生成した。その後の実験を実施する前に、anti−EMCV/CAT遺伝
子領域の配列を確認した。
【0107】
ΔAvr/CAT pERKベクターを生成するために、最初にpKS−rep2/E
MCV中間ベクター内に見いだされるEMCV IRES内でΔAvr欠失を作製した。
この欠失は、EMCV IRESの5’領域からの145bpを欠失しているEcoRI
およびAvrII両方の制限酵素を用いてpKS−rep2/EMCV DNAを消化す
ることによって実施した。平滑末端を作り出すためにT4 DNAポリメラーゼを用いて
直線化DNAを処理し、再ライゲートしてpKS−rep2/ΔAvr DNAを生成し
た。CAT遺伝子は、上述したBamHI/XbaI CAT遺伝子をBamHIおよび
XbaI制限酵素直線化pKS−rep2/ΔAvr内へライゲートすることによって中
間ベクター内にクローニングし、pKS−rep2/ΔAvr/CAT DNAを生成し
た。プライマーEMCVR(AscI).1およびdAvr En(AscI)R(表1
)を用いて、1177bpのΔAvr/CAT遺伝子カセットをpKS−rep2/ΔA
vr/CAT DNAからPCR増幅させた。最後に、AscI制限酵素を用いてΔAv
r/CAT断片を消化し、AscI直線化pERKベクターDNA内にライゲートし、p
ERK/ΔAvr/CATを生成した。その後の実験を実施する前に、ΔAvr/CAT
遺伝子領域の配列を確認した。
【0108】
B.EV71 IRESを含有する構築物
ヒトエンテロウイルス71(EV71)IRESエレメント(Thompson an
d Sarnow(2003)Virology 315:259−266)をセンスお
よびアンチセンス両方向にスペーサーレプリコンベクター内へクローニングし、CATレ
ポーター遺伝子の発現について解析した。プライマーを用いてEV71 IRESエレメ
ント(7423/MS/87株)をpdc/MS DNA(Thompson and
Sarnow,2003)からPCR増幅させて、センス断片(dc/MS(EcoRI
)Fおよびdc/MS(BamHI)R)ならびにアンチセンス断片(dc/anti−
MS(EcoRI)Rおよびdc/anti−MS(BamHI)F)(表3)を生成し
た。EcoRIおよびBamHI制限酵素を用いてセンスおよびアンチセンスEV71−
MS IRES PCR産物を消化し、EcoRIおよびBamHIを用いて直線化した
pCDNA3.3(実施例1を参照)内にライゲートし、pCDNA3.3/MSおよび
pCDNA3.3/anti−MSを生成した。各pCDNA3.3ベクター内のEV7
1−MS IRES領域をシーケンシングして、その後の実験を開始する前にPCR増幅
中にヌクレオチド変化が導入されなかったことを立証した。
【0109】
上記のA.に記載したCATレポーター遺伝子をBamHIおよびXbaI直線化pC
DNA3.3/MSおよびpCDNA3.3/anti−MSベクター内にクローニング
し、各々pCDNA3.3/MS/CATおよびpCDNA3.3/anti−MS/C
ATを生成した。AscI制限酵素を用いてpCDNA3.3/MS/CATおよびpC
DNA3.3/anti−MS/CAT DNAを消化し、MS−CATまたはanti
−MS−CAT AscI断片をスペーサーレプリコンベクター内にライゲートすること
によって、スペーサーレプリコン構築物を生成した。各ベクター内のスペーサー−IRE
S−CAT領域をシーケンシングして、その後の実験を開始する前にクローニング中にヌ
クレオチド変化が導入されなかったことを立証した。
【0110】
【表3】

【0111】
C.XIAP IRESを含有する構築物
CATF(5’−GGAGAAAAAAATCACTGGATATAC−3’)および
CATR(Bam)(5’−GGGGATCCTTACGCCCCGCCCTGCCAC
−3’)プライマーを用いてCAT遺伝子をPCR増幅させた後に、CAT遺伝子をpK
S−rep2/XIAP1007のEcoRVおよびBamHI部位内にクローニングし
(下記の実施例4を参照)、pKS−rep2/XIAP/CAT 1007を生成した
。この方法は野生型XIAP遺伝子開始部位を再構成する。次に中間物をApaI/Sp
hI断片としてpERK内にクローニングしてpERK/XIAP/CAT 1007を
生成した。インビトロ転写およびVero細胞内へのエレクトロポレーション後に、感染
細胞内でのVRP収率およびCATタンパク質発現を測定し、pERK/EMCV/CA
T 342と比較した。VRP収率はどちらの構築物についても同等であった。この特定
構築物では、EMCV IRES(1.08 e6 ng/μg)を用いた場合と比較し
てXIAP IRES(3.97 e5 ng/μg)を用いてCATタンパク質発現の
レベルを修飾することが可能であったので、このため本明細書で要求した発明における様
々なIRESの有用性を証明している。
【0112】
D.HIVgp160を発現する構築物
HIVgp160の翻訳がEMCV IRESから指令されるHIVgp160 cl
ade C遺伝子を発現するレプリコンを構築した。この構築物では、pH1500A/
EMCV/Vcapヘルパー構築物(実施例4.B.1.を参照)からの167bpスペ
ーサーを下記のとおりにEMCV IRESレプリコン構築物内にクローニングした。A
paI制限酵素を用いてpH1500A/EMCV/Vcap DNAを消化して167
bpスペーサーおよびEMCV IRESの一部分を含有する194bp断片を遊離させ
た。同様にApaI制限酵素を用いてpERK/EMCV 749ベクターを消化し、遊
離させた749bpのスペーサーApaI断片を167bpのスペーサーApaI断片で
置換し、pERK/EMCV 167ベクターを生成した。異種遺伝子もまた効率的に発
現させることができ、pERK/EMCV 167レプリコンベクターからパッケージン
グできることを証明するために、HIV clade C gp160遺伝子(Will
iamson C et al.(2003)AIDS Res Hum Retrov
iruses 19:133−44)を下記のとおりにこのベクター内にクローニングし
た。HIV gp160遺伝子を増幅させ(プライマーenv−5’−XbaIおよびD
U151gp160 3’−XbaIを用いて)(表4)、そしてpCR−XL−TOP
O(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)内にクローニングし、
pCR−XL−TOPO/gp160を生成した。gp160遺伝子をシーケンシングし
て、その後の実験を開始する前にPCR増幅中にエラーが導入されなかったことを確認し
た。XbaI制限酵素を用いてpCR−XL−TOPO/gp160 DNAを消化し、
次にgp160断片をXbaI直線化pCDNA3.3/EMCV内にライゲートし、p
CDNA3.3/EMCV/gp160を生成した。AscI制限酵素を用いてpCDN
A3.3/EMCV/gp160 DNAを消化してEMCV/gp160断片を遊離さ
せた。次にEMCV/gp160断片をAscI直線化pERK/EMCV 167ベク
ターDNA内にライゲートし、pERK/EMCV/gp160 167ベクターを生成
した。
【0113】
【表4】

【0114】
E.複数のNOIを発現する二重サブゲノムIRESレプリコンの構築
連続する2つの26S−スペーサー−IRES−NOIカセットをコードするIRES
レプリコンベクターを構築した。二重サブゲノムIRESレプリコン(pERK MCS
2)を生成するために使用した塩基pERKベクターは26Sプロモーターの下流の34
2bpスペーサー領域を含有し、そのMCS内の下記の制限部位(5’AscI、Sna
BI、SphI 3’)をコードした。
【0115】
ボツリヌス神経毒AおよびB(botulinum neurotoxins Aおよ
びB)(BoNT AおよびBoNT B)の重鎖(Hc)のC末端部分をBamHI/
XbaI断片としてのpCDNA3.3/EMCV内にクローニングし、pCDNA3.
3/EMCV/BoNT AおよびpCDNA3.3/EMCV/BoNT Bを各々生
成した。AscI制限酵素を用いてBoNT遺伝子をpCDNA3.3/EMCVベクタ
ーから消化し、AscI EMCV/BoNTカセットをAscI直線化pERK MC
S2 DNA内にライゲートし、pERK/BoNT A MCS2およびpERK/B
oNT B MCS2一価ベクターを生成した。挿入の方向は制限分析によって測定し、
センス方向における挿入を備えるクローンを単離した。EMCV IRESおよびBoN
T遺伝子をシーケンシングしてその後の実験を開始する前のクローニング中にエラーが導
入されなかったことを検証した。
【0116】
二重サブゲノムBoNT A/B IRESレプリコン構築物(pERK−BoNT
A/B MCS2)を生成するために、一価pERK BoNT MCS 2ベクターを
利用した。PspOM I制限酵素を用いてpERK/BoNT B MCS2ベクター
を部分的に消化し、両端はT4 DNAポリメラーゼを用いて平滑末端にした。さらにS
phI制限酵素を用いてpERK/BoNT B MCS2 DNAを消化して26S−
342bpスペーサー−EMCV−BoNT B断片を遊離させた。26S−342bp
のスペーサー−EMCV−BoNT B断片を次にSnaBI/SphI消化pERK/
BoNT A MCS2 DNA内へライゲートし、pERK−BoNT A/B MC
S2ベクターを生成した。この構築物の最終構造は、5’NCR−nsP1,2,3,4
−26S−342bpスペーサー−EMCV−BoNT A−26S−342bpスペー
サー−EMCV−BoNT B−NCR 3’である。二重サブゲノムIRESレプリコ
ンの配列は、発現およびVRPパッケージング試験を実施する前に検証した。
【0117】
F.IRES含有S.A.AR86レプリコンの構築
S.A.AR86(pRep89;Heise et al.,J Virol.20
03 77(2):1149−56に記載された)由来のレプリコンベクターを、26S
プロモーターの下流でスペーサ−EMCV−HIV gagカセットを含有するように修
飾した。プライマーのスタッファー342(ClaI)および3−42.pr4(表5)
を用いて342bpのスペーサー−EMCV−HIV gag断片をpERK/EMCV
/gag342 DNAからPCR増幅させた。3−42.pr4プライマーを用いての
増幅は、pERK/EMCV/gag 342 DNA内のHIV gag遺伝子からの
すぐ下流に存在する3’ClaI部位の組込みを可能にする。次にClaI制限酵素を用
いてPCR産物を消化し、ClaI直線化pRep89内にライゲートし、pRep89
/EMCV/gag 342ベクターを生成した。全挿入領域をシーケンシングして、P
CR増幅中にエラーが導入されなかったことを確認した。
【0118】
【表5】

【実施例3】
【0119】
IRES指令レプリコンからのNOI発現分析
A.EMCV IRESレプリコンの発現
1: CATの発現
pERK/EMCV/CAT、pERK/anti−EMCV/CAT、およびpER
K/ΔAvr/CATレプリコン構築物を用いて、CATタンパク質発現について試験し
た。T7 RiboMaxキット(Promega Corporation社;ウィス
コンシン州マディソン;製品番号P1300)を用いてキャップドレプリコンRNAをイ
ンビトロ転写した。RNeasy精製カラム(Qiagen Corporation社
、メリーランド州ジャーマンタウン)を製造業者の取扱説明書にしたがって用いてRNA
を精製した。Vero細胞(6×106細胞)を0.4mLのInVitrus(商標)
化学規定細胞培養培地(Cell Culture Technologies社、スイ
ス国チューリッヒ;製品番号IVT)中に懸濁させ、15μgのpERK/EMCV/C
ATまたはpERK/anti−EMCV/CAT RNAのどちらかを用いてBio
Rad Gene Pulser(BioRad Laboratories社、カリフ
ォルニア州ハーキュリーズ)を使用してエレクトロポレーションした。290ボルトおよ
び25マイクロファラッドに設定したエレクトロポレーターを用いて細胞を4回パルシン
グした。CAT発現は、メタノール固定細胞上のウサギanti−CAT抗体を使用する
IFAならびにエレクトロポレーションした細胞溶解液および市販で入手できるCAT
ELISAキット(Boehringer Mannheim社、インディアナ州インデ
ィアナポリス)を使用するELISAによって検出した。
【0120】
ランダムDNA断片は、pERKベクター内に位置する固有のEcoRV部位でEMC
V IRES配列とVEEサブゲノムプロモーターとの間にクローニングした。26Sプ
ロモーターとEMCV IRESとの間にクローニングした短鎖DNA断片はAluI制
限酵素消化pCDNA3.1(−)DNAから生じた。AluI制限酵素は、pCDNA
3.1(−)DNA内で頻回に切断し、706bpから6bpのサイズ範囲内にある平滑
末端断片を生じさせた。AluI消化pCDNA3.1(−)断片をEcoRV直線化p
ERK/EMCV/CAT、pERK/anti−EMCV/CAT、およびpERK/
ΔAvr/CAT DNA内にライゲートした。個々のクローンをシーケンシングして、
どのスペーサー断片が各新規ベクター内へクローニングされていたのかを決定した。ベク
ター内で見いだされる一部のスペーサー断片のサイズは、これらのレプリコンのスペーサ
ー領域内への複数の断片をライゲーションしたために、予想された最大のpCDNA3.
1(−)AluI断片より大きかった。上述したように各スペーサー−IRESレプリコ
ンを転写し、そしてVero細胞内にRNAエレクトロポレーションにした。CATタン
パク質発現をCAT ELISAによって監視し、その結果を表6にまとめた。
【0121】
【表6】

【0122】
これらの結果は、スペーサー断片を含有するpERK/IRES/CATレプリコン構
築物からのCAT発現は、スペーサー断片(CAT/全タンパク質 およそ4〜7ng/
μg)を含有していない類似のベクターと比較して強固で、IRESによって指令される
ことを示している。異種遺伝子の最高レベルの発現は、およそ200ヌクレオチドより大
きなスペーサー断片を26SプロモーターとEMCV IRES配列との間に導入したと
きに発生した。
【0123】
2.単一レプリコンからの多重NOI発現
pERK−BoNT A/B MCS2レプリコンの発現およびパッケージングをVe
ro細胞内で実施した。キャップドpERK−BoNT A/BレプリコンRNAを上述
したとおり転写し、精製した。30μgのレプリコンRNA、30μgのキャプシドヘル
パーRNAおよび30μgの糖タンパク質ヘルパーRNAをVero細胞(1×108
胞)にエレクトロポレーションにより導入した。エレクトロポレーションした細胞は、V
RPを採取する前にウマanti−BoNT AおよびBoNT B抗体(Perimm
une社、メリーランド州ロックビル)を用いてIFAによって分析した。IFAの結果
および生成したVRPの滴定は表7に示した。
【0124】
【表7】

【0125】
3.HIV gp160の発現
pERK/EMCV/gp160 167レプリコン(実施例2D)をgp160遺伝
子の発現およびVRP生成について分析した。上記に記載したとおり、レプリコン、GP
ヘルパーおよびキャプシドヘルパーのために精製RNAを調製した。RNAをVero細
胞にエレクトロポレーションにより導入し、エレクトロポレーションの20〜24時間後
にVRPを収集した。IFAの結果およびVRPの滴定は表8にまとめた。比較のために
、26Sプロモーターから直接的にgp160を発現するpERKレプリコンについても
評価した。
【0126】
【表8】

【0127】
4.S.A.AR86レプリコンからのHIV GAGの発現
キャップドレプリコンRNAを生成するために、SP6 RiboMaxキット(Pr
omega Corporation社;ウィスコンシン州マディソン;製品番号P12
80)を用いてpRep89/EMCV/gag342 DNAをインビトロ転写した。
RNeasy精製カラム(Qiagen Corporation社、メリーランド州ジ
ャーマンタウン)を製造業者の取扱説明書にしたがって用いてRNAを精製した。30μ
gのRep89/EMCV/gag342RNAを用いてVero細胞(1×108細胞
)をエレクトロポレーションし、次にエレクトロポレーションの〜18時間後にGagタ
ンパク質発現について分析した。Rep89/EMCV/gag342エレクトロポレー
ションした細胞のanti−Gag IFA分析はGagタンパク質発現について陽性で
あった。
【0128】
B.EV71−MS IRESレプリコンの発現
各EV71−MS含有レプリコンからのCATタンパク質の発現をVero細胞内で実
施した。キャップドレプリコンRNAを上述したとおり転写し、精製した。30μgのレ
プリコンRNAを用いてVero細胞(2〜3×107細胞)をエレクトロポレーション
した。エレクトロポレーションした細胞は、エレクトロポレーションのおよそ18時間後
にanti−CAT(Cortex Biochem社、カリフォルニア州サンリアンド
ロ)およびanti−VEE nsp2抗体(AlphaVax社)を用いるIFAによ
って分析した。さらに、CAT発現を上述したとおりELISAによって監視した。pE
RK/EMCV/CAT 342およびpERK/MS/CAT 342レプリコンから
検出された活性を比較したIFAならびにCAT ELISAの結果は表9に示した。
【0129】
【表9】

【実施例4】
【0130】
様々なスペーサーを用いたIRES指令翻訳
A.レプリコン構築物
1.EMCV IRES含有構築物
正確に同一のスペーサー領域を含有する、EMCVまたはアンチセンス−EMCV I
RES配列のどちらかをコードする対のレプリコン構築物を調製した。これらの比較は、
センス方向における(すなわち、配列がウイルス内で見いだされる5’−3’方向におけ
る)EMCV IRES配列だけがキャップ構造非依存性翻訳を指令することを証明して
いる;すなわち、IRESがアンチセンス方向にある場合は極めてわずかな翻訳しか発生
せず、これはこれらの構築物内で有意なCAT発現を入手するには正しく方向付けられた
IRESエレメントが必要とされることを示している。これらのレプリコン構築物は上述
したとおりに調製した。各スペーサー−IRESレプリコンをインビトロ転写し、上述し
たとおりに30μgの各精製RNAを〜1×107細胞のVero細胞内にエレクトロポ
レーションした。CATタンパク質発現はCAT ELISAによって監視し、その結果
は表10にまとめた。
【0131】
【表10】

【0132】
これらのデータは、レプリコンがCAT遺伝子の上流でスペーサーおよびアンチセンス
EMCV IRESを含有する場合はCATタンパク質発現が大きく(ほとんどの場合に
>95%)減少したことを示している。その上、これらのデータは、IRES指令タンパ
ク質発現系がNOIの発現レベルを最適化する能力を証明している。この最適化はNOI
特異的であるが、本明細書に記載の教示を利用すれば、当業者にはいずれか所与のNOI
のための所望の発現レベルを提供するスペーサー−IRESの組み合わせの同定は慣例的
であろう。
【0133】
2.5’非コーディング領域由来のスペーサーの使用
Cap 5’Fおよび3−1.1pr1プライマー(表11)を用いてpH500A/
Vcap由来のキャプシド配列をPCR増幅させることによって、全長VEEキャプシド
タンパク質遺伝子を含有するようにpERKレプリコンを組み換えた。結果として生じた
PCR産物をpERKのEcoRVおよびSphI制限酵素部位内に挿入した。市販で入
手できるキット(Stratagene社)を用いて部位指向性突然変異のために、さら
にAscIFおよびAscIRプライマー(表11)を用いてキャプシド遺伝子の3’末
端で固有のAscI制限酵素を含有するように「pERK/Capsid」を修飾した。
次にnsP4遺伝子内にアニーリングするフォーワードプライマー(13−82.2.1
6)およびAscI制限酵素部位を含有するように組み換えられているリバースプライマ
ー(表11)を用いてpERK/Capsidからの配列のPCR増幅によってVEEキ
ャプシド配列の連続切断を生成させた。ApaIおよびAscIまたはSwaIおよびA
scIを用いてPCR産物を消化し、pERK/Capsid内へクローニングし戻して
pERK/Cap200、pERK/Cap400およびpERK/Cap600を生成
した。これらのレプリコンは、26Sプロモーターと挿入される下流構築物との間で「ス
ペーサー」として機能するためにキャプシド遺伝子の5’末端からの増加した量の配列を
維持している。上述したpERK/Capベクター各々の中にEMCV/CATカセット
を導入するために、AscI制限酵素を用いてpCDNA3.3/EMCV/CAT D
NAを消化して1303bpのEMCV/CAT断片を遊離させた。AscI消化EMC
V/CAT断片を次にAscI直線化pERK/CapベクターDNA内にライゲートし
、pERK/EMCV/CAT Cap200、pERK/EMCV/CAT Cap4
00およびpERK/EMCV/CAT Cap600を生成した。
【0134】
【表11】

【0135】
VEEキャプシド遺伝子の5’領域の部分を含有するこれらのレプリコンを直線化し、
インビトロ転写し、Vero細胞内にエレクトロポレーションし、そしてIFAおよびE
LISAによってCATタンパク質発現について分析した。CATタンパク質発現はCA
T特異的抗体を用いてIFAによって検証した;しかし免疫蛍光の強度は使用したキャプ
シド遺伝子スペーサーの長さに依存して変動した。これらの結果はCAT ELISAに
反映された(表12)。
【0136】
【表12】

【0137】
B.ヘルパー構築物
1.EMCV IRESを含む構築物
VEE糖タンパク質遺伝子(「GP」)またはVEEキャプシド遺伝子のどちらかを個
別に発現するヘルパーを構築した。最初に、キャプシドおよびGPヘルパーを含有するス
ペーサー−IRESの構築を促進するために2つの空ヘルパー骨格ベクターを生成した。
ApaIおよびRsrII制限酵素を用いてpERKベクターを消化することによって1
つの空ヘルパーを生成して6989bpの非構造的タンパク質コーディング領域を除去し
た。T4 DNAポリメラーゼを用いてこのDNAを処理して平滑末端を生成し、その後
に非構造的遺伝子欠失pERKベクターをライゲートしてpH500Gを生成した。pH
500G空ヘルパーはおよそ500ヌクレオチドの5’非コーディング領域(NCR)を
含有していた。pERKベクターをSwaIおよびRsrII制限酵素を用いて消化する
ことによって第2の空ヘルパーを生成して6449bpの非構造的タンパク質コーディン
グ領域を除去した。T4 DNAポリメラーゼを用いてこのDNAを処理して平滑末端を
生成し、その後にそのDNAをライゲートしてpH1500Gを生成した。pH1500
G空ヘルパーは、pH500Gヘルパー内には存在しない26Sプロモーターのすぐ上流
に追加の540bpのnsp4遺伝子を含むおよそ1500ヌクレオチドの5’NCRを
含有していた。さらにヌクレオチド3でGではなくむしろAをコードする空ヘルパー構築
物を調製した(pH500AおよびpH1500A)。これらの構築物は、pH500G
およびpH1500Gにおける同一領域の代わりにヌクレオチド3でAを含有する、キャ
プシドヘルパー(pH500A/Vcap)からの5’NCR領域をサブクローニングす
ることによって調製した。これは、XbaIおよびSacI制限酵素を用いてpH500
A/Vcapを消化し、430bp断片を収集し、それをXbaIおよびSacI消化p
H500GおよびpH1500G DNA内にライゲートし、各々pH500Aおよびp
H1500Aを生成することによって遂行した。
【0138】
キャプシドおよびGP遺伝子を上述したとおりにBamHIおよびXbaI断片として
pCDNA3.3/EMCVおよびpKS−rep2/anti−EMCV内にクローニ
ングした。EMCV/キャプシド、anti−EMCV/キャプシド、EMCV/GPお
よびanti−EMCV/GPカセットは、上述したとおりにAscI断片としてのpH
500G、pH500A、pH1500GおよびpH1500A空ヘルパー構築物内にク
ローニングした。各ヘルパーの配列は、その後の実験を開始する前に確認した。
【0139】
ランダムスペーサー断片は、前述したとおりに固有のEcoRV部位で各ヘルパー内の
26SプロモーターとEMCVまたはanti−EMCV IRESとの間にクローニン
グした。挿入されたスペーサー断片の配列および長さを各新規ヘルパーについて決定し、
スペーサーインサートの長さを構築物の名称の最後に含めた。スペーサー#15、16、
および22についてはそれ以上特性解析しなかった。構築物pH500A/EMCV/G
PおよびpH500A/anti−EMCV/GPはスペーサーを含有していない。
【0140】
2.EMCV IRES含有GPおよび/またはキャプシドヘルパーの組み合わせを用い
たパッケージングおよび力価
様々な組み合わせのGPおよびキャプシドヘルパーを使用してHIV−GAGタンパク
質、pERK−342/EMCV/gagを発現するVEEレプリコンをパッケージング
した(このレプリコンの構築の説明については実施例7を参照)。表13に示した結果に
ついては、580 Vおよび25μFで4パルスを用いて、0.8mLのエレクトロポレ
ーションキュベット内のVero細胞内へ30μgの各RNAヘルパーおよび30μgの
レプリコンRNAを共エレクトロポレーションし、そして細胞を室温で10分間にわたり
回復させた。エレクトロポレーションした細胞は、抗生物質とともに50mLのEMEM
(10% FBS)を含有するT−175フラスコ内に播種し、37℃でインキュベート
した。20〜24時間後、VEEレプリコン粒子(「VRP」)を収集し、免疫蛍光アッ
セイ(IFA)を用いてGAGタンパク質発現を測定することによって96ウエルプレー
ト内のVero細胞上で滴定した。各エレクトロポレーションからのVRP収率(表13
)は、比較のために「IU/mL」ベースで表示した。
【0141】
【表13】

【0142】
他の実験では、GPヘルパーRNAの量はエレクトロポレーション環境において変動し
た;VRP生成についての他の全部の条件は上述したとおりであった。結果は表14に示
した。
【0143】
【表14】

【0144】
3.スペーサーを含まない26S−IRES GPヘルパー
この実験は、翻訳からの転写を解除するためにGPヘルパーにおいてスペーサーが必要
かどうかを判定するために実施した。Vero細胞は、下記の混合物各々を用いて個別に
エレクトロポレーションした。
【0145】
a.Gagレプリコンベクター(実施例6を参照)+pH500A/anti−EMC
V/GP+pH500A/anti−EMCV/Vcap291
b.Gagレプリコンベクター+pH500A/EMCV/GP+pH500A/EM
CV/Vcap291
【0146】
前述のとおりにVRP生成を可能にするために細胞をインキュベートし、VRPを採取
し、IFAによってVero細胞上で滴定した。センス方向にIRESを含むヘルパーの
場合は(「b.」混合物)、VRP収率は3.3 e6であった;IRESがアンチセン
ス方向に置かれているヘルパーの場合は、VRP収率は5.3 e2であった。
【0147】
4.XIAP IRESを含有するVEEヘルパー構築物の生成および使用
PFU pol(Stratagene社;カリフォルニア州ラ・ホーヤ)およびCa
p5’Fまたは13−87pr1フォーワードプライマーおよび3−1.1pr1リバー
スプライマー(表2、実施例1Bを参照)を用いてVEEキャプシド(「Vcap」)お
よび糖タンパク質(「VGP」)遺伝子をpH500A/VcapおよびpH500A/
GP各々からPCR増幅させた。結果として生じたPCR産物をpKS−rep2のEc
oRVおよびSphI部位内にクローニングした。この戦略は、XIAP遺伝子の野生型
開始部位でVEE構造タンパク質開始コドンを再構成する。各プラスミド内のVEE構造
タンパク質配列を全自動DNAシーケンシングによって検証し、結果として生じたプラス
ミドをインビトロ転写のために使用した。Qiagen RNeasyカラムを用いてR
NAを精製し、タンパク質の発現の分析およびパッケージングのためにVero細胞内に
エレクトロポレーションした。全ヘルパーはIFAによって測定されたようにVEEキャ
プシドまたは糖タンパク質のどちらかを発現し、HIV GAGタンパク質を発現するV
EEレプリコンについて回収された力価の範囲は1×105から総計1×107に及んだ。
【0148】
上述したXIAP1007−VEE構造タンパク質構築物をさらにまたApaI/Sp
hI DNA断片としての第2ヘルパープラスミド、pH1500A内へクローニングす
ると、pH1500A/XIAP/Vcap1007およびpH1500A/XIAP/
GP1007が生成した。これらのプラスミドを使用してRNAを作製し、上述したとお
りにVero細胞内へエレクトロポレーションし、タンパク質発現およびVRPパッケー
ジングを分析した。同様に、結果として生じたヘルパーはIFAによって測定したように
VEEキャプシドまたは糖タンパク質のいずれかを発現し、そして力価は総計1×108
から1×109 VRP超に及び、これは26SプロモーターからのサブゲノムmRNA
の転写からの利得を証明していた。
【実施例5】
【0149】
その中にレプリコンRNAをエレクトロポレーションにより導入したVero細胞から
収集した全細胞RNAについてノーザン分析を実施した。スペーサー−IRESレプリコ
ン構築物をインビトロ転写し、上述したとおりに、30μgのRNAeasyカラム精製
RNAをおよそ1×107のVero細胞内にエレクトロポレーションにより導入した。
エレクトロポレーションした細胞を10mLのDMEM培地中に再懸濁させ、次に7mL
(およそ7×106細胞)を1つの25cm2フラスコ内に播種した。エレクトロポレーシ
ョンの16時間後にRNAwiz抽出キット(Ambion社)を製造業者の取扱説明書
にしたがって用いて細胞から全細胞RNAを収集した。RNAを定量し、各々の10μg
を1%グリオキサールアガロースゲル上でランし、その後で受動転移によってBrigh
tstar−Plus膜(Ambion社)へ移した。RNAをその膜へUV架橋結合さ
せ、45℃で1時間かけてUltraHyb(Ambion社)溶液を用いてブロッキン
グし、45℃で3’UTRのVEEサブゲノムRNA(Integrated DNA
Technologies社、アイオワ州コラルビル)に対して特異的なビオニチル化ア
ンチセンスプライマー(3’UTR4Xビオチン、表1)を含有するUltraHyb溶
液を用いて一晩かけて調査した。一晩にわたるハイブリダイゼーション後にBright
star Biodetectキット(Ambion社)を製造業者の取扱説明書にした
がって用いて化学蛍光RNA検出そしてEpi Chemi II Darkroom(
UVP Inc.社、カリフォルニア州アップランド)を用いて視認した。pERK/E
MCV/CAT 257、pERK/anti−EMCV/CAT 257、pERK/
EMCV/CAT 579、またはpERK/anti−EMCV/CAT 579を用
いてエレクトロポレーションしたVero細胞からのRNAのノーザン分析の結果は図1
に示した。EMCVおよびanti−EMCVレプリコン構築物はどちらもほぼ同等の強
度のサブゲノム転写産物を生成したが、これはスペーサー−anti−EMCV/CAT
レプリコン構築物からのCATタンパク質発現の欠如がサブゲノムRNAにおける実質
的減少に起因していないことを示していた。
【実施例6】
【0150】
HIVgag遺伝子IRES指令レプリコンベクターの構築
HIVサブタイプC gag遺伝子を、上述したとおりに342bpのスペーサー(p
ERK−342)を含有するpERK/EMCVベクター内にクローニングした。プライ
マーGAG−FおよびGAG−R(表1)を用いてGag遺伝子をpERK/HIVgag
DNAからPCR増幅させた。これらのプライマーは、PCR産物が5’および3’末
端でこの部位をコードするようにBamHI制限部位を含有するように組み換えた。Ba
mHI制限酵素を用いてPCR産物を消化し、BamHI直線化pCDNA3.3/EM
CV DNA内へライゲートした。gag遺伝子の方向付けを制限分析によって決定し、
正しい方向付けにある遺伝子を備える構築物を選択してpCDNA3.3/EMCV/g
agを生成した。AscI制限酵素を用いてEMCV/gag遺伝子カセットをpCDN
A3.3/EMCV/gag DNAから消化し、AscI直線化pERK−342 D
NA内にライゲートした。EMCV/gag遺伝子カセットの方向付けを制限分析によっ
て決定し、正しい方向付けにある遺伝子を備える構築物を選択してpERK−342/E
MCV/gagを生成した。その後の実験を開始する前にEMCV/gag領域の配列を
検証した。
【0151】
IFAおよびウェスタンブロットによるgagタンパク質発現の分析は、pERK−3
42/EMCV/gagレプリコンにおけるIRESの指令下で発現したタンパク質は、
翻訳および転写の両方が26S VEEサブゲノムプロモーターによって指令されるpE
RK/HIVgagレプリコンから発現したタンパク質から識別不能であることを示した。
さらに、VRPを滴定することによって測定された発現レベルは、26Sプロモーター指
令系に比較してIRES指令系を用いると増加した(表15)。
【0152】
【表15】

【実施例7】
【0153】
IRES指令HIVgagレプリコン粒子が接種されたマウスにおける体液性および細胞
性免疫反応
pERK/EMCV/gag 342レプリコンは、動物にワクチン接種されると強固
な体液性および細胞性反応を惹起する。4〜5週齢の雌性BALB/cマウスをChar
les River社から入手し、あらゆる手順の前に1週間にわたり馴化させた。プラ
イムおよびブーストのために、複数のマウス群の左右両方の足蹠にイソフルオレン麻酔下
で1% v/vヒト血清アルブミンおよび5% w/vスクロースを含むPBSを含有す
る希釈液中のVRPを5×105IFUの目標用量で接種した。足蹠注射は、30.5G
注射針および0.100mLのHamiltonシリンジを用いて各後足蹠に20μLを
注射することによって実施した。血清サンプルは、第1回接種前(出血前)の第0日、第
21日(第1回接種20日後)および第29日(ブーストの7日後)にイソフルオレン麻
酔下で眼窩後出血により入手した。ワクチン接種スケジュールは表16にまとめられてい
る。IFN−γELISPOTアッセイのために、ブーストの14日後に脾臓を採取した

【0154】
【表16】

【0155】
A.ワクチン接種後に実施された免疫学的アッセイ
Gag ELISA:抗原コートとしてHIV−1サブタイプC単離物DU−422由
来の精製組み換えヒスチジン標識(his)−p55を使用した。血清を標準間接的EL
ISAによってGag特異的抗体の存在について評価した。
【0156】
Gag ELISPOTアッセイ:anti−IFN−γモノクローナル抗体AN18
(ラットIgG1、MabTech社、オハイオ州マリーモント)をプレコートしたMu
ltiscreen Immobilon−P ELISPOTプレート(ELISPO
T認定96−ウエル濾過プレート、Millipore社、マサチューセッツ州ベッドフ
ォード)内の個別ELISPOTアッセイウエル内へ脾臓から採取した生育可能なリンパ
球を播種し、そして16〜20時間にわたりインキュベートした。バッファーを用いた複
数回の洗浄によって細胞を取り出し、ウエルをビオチニル化anti−IFN−γモノク
ローナル抗体R4−6A2(ラットIgG1、MabTech社)と一緒にインキュベー
トし、その後に洗浄し、アビジン−ペルオキシダーゼ複合体(Vectastain A
BC Peroxidaseキット、Vector Laboratories社、カリ
フォルニア州バーリンゲーム)と一緒のインキュベーションを実施した。複合体が形成さ
れるのを許容するために、二次抗体とのインキュベーション期間の完了する少なくとも3
0分前にアビジン−ペルオキシダーゼ複合体を調製し、室温で保存した。インキュベーシ
ョン後、培養中に個々のIFN−γ分泌細胞の位置を表すスポットの形成を促進するため
にウエルを洗浄して室温で4分間にわたり基質(AEC錠剤、Sigma社)と一緒にイ
ンキュベートした。蒸留水によるリンスによってスポット発生を停止させた。
【0157】
HIVgag VRPを用いて免役化させたマウス由来のリンパ球中のGag特異的IF
N−γ分泌細胞を計数するために、免疫優性CD8+CTL H−2Kd−制限HIV−
GagペプチドAMQMLKETIまたはMHCクラスIに結合する非関連性HA(イン
フルエンザ血球凝集素)CD8+CTL H−2Kd−制限ペプチドIYSTVASSL
を用いて16〜20時間にわたりリンパ球を刺激した(37℃で5%CO2濃度。細胞か
らペプチドを抜いたものがバックグラウンドコントロールとして機能する。陽性コントロ
ールとして、細胞を類似期間にわたり4μg/mLのコンカナバリンAを用いて刺激した
。遊離末端を含むようにペプチドを合成し、New England Peptideに
よって>90%へ精製した。
【0158】
HIVgag VRPの力価滴定:Vero細胞に感染させたHIVgagVRPのGag特
異的IFAを使用してワクチンの力価または感染力価を測定した。力価は1mL当たりの
感染単位IFU/mLとして測定した。各注射日に、残留接種材料を逆滴定して各動物が
受容した実際の用量を測定した(表17)。
【0159】
【表17】

【0160】
ワクチン接種試験の結果は、anti−Gag抗体ELISAおよびGag特異的EL
ISPOTアッセイによって測定されたように、342/EMCV/gag VRPをワ
クチン接種した動物がHIV−Gagへの強い体液性および細胞性免疫反応を展開するこ
とを示している。
【実施例8】
【0161】
数種の昆虫ウイルスIRES配列の活性を多数の昆虫細胞系内での哺乳動物ウイルスI
RES(EMCV)の活性と比較した。26Sサブゲノム転写産物がバイシストロニック
であるようにレプリコンベクターを設計した。26SサブゲノムRNAがキャッピングさ
れているが、これはバイシストロニックRNA上の第1遺伝子(クロラムフェニコール−
アセチル−トランスフェラーゼ(CAT))の翻訳はキャップ構造依存性であり、第2遺
伝子(ルシフェラーゼ(LUC))の翻訳がIRES配列依存性(キャップ構造非依存性
)であることを意味している。シンドビスウイルスに基づくレプリコンベクターは、以下
のエレメント:5’NCR、nsp1、2、3、4、26Sプロモーター、CAT遺伝子
、IRES、LUC遺伝子、NCR 3’を含有するように組み換えた。1つはエンドウ
ヒゲナガアブラムシウイルス(Acyrthosiphon pisum virus)
(APV)由来およびもう1つはムギクビレアブラムシウイルス(Rhopalosip
hum padi virus)(RhPV)由来の2つの昆虫ウイルスIRES配列を
CATおよびLUC遺伝子の間に組み換えた。比較するために、哺乳動物ウイルスIRE
S(EMCV)を同一シンドビスレプリコンベクター内のCATおよびLUC遺伝子間に
組み換えた。SP6 RNAポリメラーゼを用いて各レプリコン構築物のためのRNAお
よびシンドビス構造タンパク質遺伝子(キャプシド−E3−E2−6K−E1)の全部を
コードするRNAヘルパーをインビトロ転写した。ヘルパーRNAおよびバイシストロニ
ックRNAの各々を8×106BHK−21細胞内へエレクトロポレーションにより導入
することによって、シンドビスレプリコン粒子を調製した。溶媒を収集し、清浄化し、そ
して20%蔗糖クッションを通して遠心分離することによってレプリコン粒子を精製した
(4℃で3時間にわたり24,000RPM)。ウサギanti−CAT抗体(Cort
ex Biochem社、カリフォルニア州サンリアンドロ)を用いてレプリコン粒子を
滴定した。
【0162】
EMCV IRESに比較して昆虫ウイルスIRES配列の活性を測定するために、精
製シンドビスレプリコンのバイシストロニック粒子を使用して培養中で増殖している様々
な昆虫細胞を感染させた。これらの実験で使用した昆虫細胞は、Toxorhynchi
tes amboinensis、Anopheles albimanus(マラリア
媒介蚊の一種)、Anopheles gambiae(マラリア媒介蚊の一種)、およ
びAedes albopictus(ヒトスジシマカ)であった。昆虫細胞はレプリコ
ンのバイシストロニック粒子を用いて0.1のMOIで感染させた。感染からおよそ16
時間後に細胞溶解液を調製し、CAT ELISAキット(Roche社、インディアナ
州インディアナポリス)を製造業者の取扱説明書にしたがって用いて溶解液中に存在する
CATタンパク質の量を測定した。並行して、ルシフェラーゼアッセイキット(Roch
e社)を用いて溶解液中に存在するLUCタンパク質の量を測定した。2つの数値の比較
を可能にするために各アッセイにおいて使用したタンパク質の量について各溶解液中で検
出されたCATおよびLUCの量を正規化した(表17)。各細胞タイプにおいて検出さ
れたCatタンパク質は、使用したレプリコンとは無関係に類似であった。これらのデー
タは、レプリコン粒子を含有する3種のIRES各々について細胞タイプ内で類似の感染
効率が達成されること、したがって各細胞タイプ内で検出されたLUC活性がその細胞タ
イプ内のIRES配列の活性を直接的に反映することを示している。分析した昆虫細胞タ
イプの各々において、昆虫ウイルスIRESはEMCV IRESより高度の活性(85
〜95%以上)を有していた(表17)。
【0163】
【表18】

【実施例9】
【0164】
霊長類におけるIRESレプリコンに対する体液性および細胞性免疫反応
メリーランド州フレデリックに所在するSouthern Research Ins
tituteでカニクイザル(cynomolgus macaque)においてVRP
を含有するpERK/EMCV/gag342(実施例6)の免疫原性に関する試験も実
施した。各ワクチンは皮下注射および筋肉内注射によって6匹の動物に投与した(動物3
匹/経路)。動物は第0月および1カ月後に1×108個のワクチン粒子の接種を2回受
けた。第2回接種の4週間後に体液性免疫反応を分析し(実施例7Aに記載したとおり)
、表18に示した。比較のために、26Sプロモーター(pERK/gag)から直接的
にgagタンパク質を発現するVEEレプリコンについても評価した。
【0165】
【表19】

【0166】
本発明を特定の実施形態の特定の詳細を参照しながら記載してきたが、そのような詳細
は添付の特許請求の範囲に含まれる範囲および程度を除いて本発明の範囲に関して制限さ
れると見なされることは企図していない。
本特許出願を通して、様々な特許、特許公報、雑誌出版物およびその他の出版物が参照
されている。これらの出版物の開示は、本発明が関与する当分野の最新状態をより完全に
記載するため、そしてこれらの参考文献がこの特許出願に現れる文章の主題についての文
書による説明を提供するために、本特許出願に全体として参照して組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)5’アルファウイルス複製認識配列をコードする核酸配列と、
(b)アルファウイルス非構造タンパク質をコードする核酸配列と、
(c)5’から3’の方向に、アルファウイルスサブゲノムプロモーター−IRES−目的の異種核酸(NOI)であるカセットと、
(d)3’アルファウイルス複製認識配列をコードする核酸と
を含む組換えレプリコン核酸。
【請求項2】
前記(b)の核酸は、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2、nsp3およびnsp4をコードする連続ヌクレオチド配列である、請求項1に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項3】
前記(b)の核酸は、アルファウイルス非構造タンパク質nsp1、nsp2およびnsp3をコードする連続ヌクレオチド配列であり、前記組換えレプリコン核酸は、前記(b)の核酸と連続していないアルファウイルス非構造タンパク質nsp4をコードする核酸配列をさらに含む、請求項1に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項4】
前記IRESエレメントは、細胞IRES、植物IRES、哺乳動物ウイルスIRES、合成IRESおよび昆虫ウイルスIRESからなる群より選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項5】
前記(c)のアルファウイルスサブゲノムプロモーターは、最小または修飾アルファウイルスサブゲノムプロモーターである請求項請求項1〜のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項6】
前記(c)の異種NOIは、タンパク質ペプチド、免疫原、アンチセンス配列、またはリボザイムをコードする請求項1〜のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項7】
アルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項8】
前記アルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列、前記(a)の核酸配列、前記(b)の核酸配列、前記(c)の核酸配列、および前記(d)の核酸配列の1つ以上が、シンドビス(Sindbis)ウイルス、SFV、VEE、S.A.AR86ウイルス、ロスリバー(Ross River)ウイルス、EEEおよびWEEからなる群より選択されるアルファウイルス由来である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項9】
前記核酸がRNAである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項10】
前記核酸がDNAである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項11】
弱毒化突然変異を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項12】
(a)5’アルファウイルス複製認識配列をコードする核酸配列と、
(b)アルファウイルス非構造タンパク質をコードする核酸配列と、
(c)5’から3’の方向に、アルファウイルスサブゲノムプロモーター−IRES−NOIである第1のカセットと、
(d)5’から3’の方向に、アルファウイルスサブゲノムプロモーター−IRES−NOIである第2のカセットと、
(e)3’アルファウイルス複製認識配列をコードする核酸と
を含む組換えレプリコン核酸。
【請求項13】
アルファウイルスパッケージングシグナルをさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸。
【請求項14】
感染性の複製欠損アルファウイルス粒子の集団であって、各粒子が請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸を含む集団。
【請求項15】
前記集団が、細胞培養上での継代によって測定されるような、検出可能な複製コンピテントウイルスを有していない、請求項14に記載の感染性の複製欠損アルファウイルス粒子の集団。
【請求項16】
医薬上許容される担体中に請求項14または15に記載の前記集団を含む医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸を含むアルファウイルス粒子。
【請求項18】
弱毒化突然変異を含む、請求項17に記載のアルファウイルス粒子。
【請求項19】
(a)5’アルファウイルス複製認識配列と、
(b)5’から3’の方向に、アルファウイルスサブゲノムプロモーター−IRES−NOIであるカセットと、ここで、前記NOIは1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードし、
(c)3’アルファウイルス複製認識配列と
を含む組換え核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸を含む細胞。
【請求項21】
感染性の複製欠損アルファウイルス粒子を作製する方法であって、
(a)細胞内に以下の、
(i)請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸と、
(ii)アルファウイルス構造タンパク質をコードする1つ以上のヘルパー核酸と、ここで、前記1つ以上のヘルパー核酸は、前記アルファウイルス構造タンパク質の全部を生成し、
を導入するステップと、
(b)前記細胞内で前記アルファウイルス粒子を生成するステップと
を含む方法。
【請求項22】
前記組換えレプリコン核酸は、アルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列をさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ヘルパー核酸は、5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルスサブゲノムプロモーター、アルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸および3’アルファウイルス複製認識配列を含む組換え核酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ヘルパー核酸は、プロモーターと1つ以上のアルファウイルス構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列とを含む組換え核酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ヘルパー核酸はDNAである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記プロモーターはCMVプロモーターである請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヘルパー核酸は、前記アルファウイルス構造タンパク質の全部をコードするヌクレオチド配列を含む請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ヘルパー核酸は、5’アルファウイルス複製認識配列、IRESエレメント、アルファウイルス構造タンパク質をコードする核酸および3’アルファウイルス複製認識配列を含む組換え核酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
感染性の複製欠損アルファウイルス粒子を作製する方法であって、
(a)細胞内に、
i)5’アルファウイルス複製認識配列、アルファウイルス非構造タンパク質をコードする1つ以上の核酸配列、アルファウイルスサブゲノムプロモーター、異種核酸配列および3’アルファウイルス複製認識配列を含むアルファウイルスレプリコンRNAと、
ii)請求項19に記載の組換え核酸を含むアルファウイルス構造タンパク質をコードする1つ以上のヘルパー核酸と
を導入するステップであって、それによってアルファウイルス構造タンパク質の全部が前記細胞内で生成されるステップと、
(b)前記細胞内で前記アルファウイルス粒子を生成するステップと
を含む方法。
【請求項30】
感染性の複製欠損アルファウイルス粒子を作製する方法であって、
(a)細胞内に、
i)請求項1〜13のいずれか1項に記載の組換えレプリコン核酸と、
ii)請求項19に記載の組換え核酸を含むアルファウイルス構造タンパク質をコードする1つ以上のヘルパー核酸と
を導入するステップであって、それによってアルファウイルス構造タンパク質の全部が前記細胞内で生成されるステップと、
(b)前記細胞内で前記アルファウイルス粒子を生成するステップと
を含む方法。
【請求項31】
請求項21〜28または30のいずれか1項に記載された方法により産生された、感染性の複製欠損アルファウイルス粒子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−50450(P2012−50450A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219409(P2011−219409)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2006−507372(P2006−507372)の分割
【原出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(504089666)アルファヴァックス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】