説明

改良されたクロマトグラフィー媒体の製造方法および使用方法

【課題】改良されたタンパク質結合容量、反応速度、及び選択性を有する、クロマトグラフ精製に適する多孔質基材の製造方法並びに使用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のビニルモノマーを含むモノマー混合物を重合して得たポリマー担体に、ポリマー担体と共有結合する反応性基と、イオン交換基、アフィニティー基等クロマトグラフィーの性質を付与するための官能基を有するポリマーリガンドを共有結合させて、多孔質基剤を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共有結合したポリマー鎖を有する多孔質ポリマー媒体を製造する方法に関する。この媒体はクロマトグラフ精製に適用されることができ、改良されたタンパク質結合容量、反応速度、及び選択性を有する多孔質基材、並びにこれを製造する方法および使用する方法をもたらしうる。
【背景技術】
【0002】
生体から得られる治療用タンパク質は現在のヘルスケアにおいてますます重要な役割を果たしている。これらのタンパク質は従来の医薬品を超える多くの利点、例えば、疾病ターゲットに対して増大した特異性および有効性を提供する。哺乳類の免疫系は疾病の脅威を制御し除去するために広範囲のタンパク質を使用する。遺伝子及びタンパク質工学の出現は多くの「設計された」または組み替えタンパク質治療の開発を可能にしてきた。これら治療は単一のタンパク質、化学修飾タンパク質、タンパク質フラグメントまたはタンパク質複合体をベースにすることができる。クロマトグラフ分離はこれらバイオ医薬品の製造に広範囲に使用される。この産業界が成熟するにつれて、分離を向上させるための新たな/進歩した技術及び方法の実施は、これらの薬剤をより多くの患者により低コストで提供する能力を生物治療プロデューサーに提供するであろう。
【0003】
タンパク質を精製するのに使用される一般的なクロマトグラフ方法には、特に、アフィニティー、バイオアフィニティー、イオン交換、逆相、疎水性相互作用、親水性相互作用、サイズ排除および混合モード(上記カテゴリーの組み合わせを備える樹脂)が挙げられる。これらの種類のクロマトグラフィー手順のそれぞれの適用および効率はクロマトグラフィーシステムの固定相(クロマトグラフィー媒体)と溶質分子と(それぞれ移動液相と相互作用する)の間の表面−表面相互作用の選択性に頼っている。広範囲の固定相クロマトグラフィー担体材料が市販されている。
【0004】
不純物から生成物を成功裏に分離することの鍵は多くの場合、固定相、ベースマトリックス(化学組成および孔構造)、およびリガンド特性(リガンド種類、リガンド密度、リガンド分布、リガンド長さおよび材料組成)、並びに移動相もしくは溶液特性(緩衝剤種類、pHおよび導電率)の正しい組み合わせに頼っている。ベースマトリックスおよびリガンドの具体的な設計は、いくつかの鍵となる特性、例えば、タンパク質結合容量、選択性、床透過性、化学的安定性もしくはスループットによって特徴付けられうるクロマトグラフィー媒体を生じさせる。精製方法には、生成物を主に結合すること(結合および溶離)、不純物を主に結合すること(フロースルー)、および上記の組み合わせ(いわゆる、弱い分配など)が挙げられる。精製タンパク質製品をもたらす着実な分離を可能にし、かつ確実にするために、上記教示のクロマトグラフィー媒体特性を制御することがこれら技術の設計において重要である。
【0005】
タンパク質分離は様々な多孔質基材またはベースマトリックス上で達成されうる。樹脂もしくはビーズ構造のための一般的な材料には、ポリサッカライド(アガロース、セルロース)、合成ポリマー(ポリスチレン、ポリメタクリラートおよびポリアクリルアミド)、並びにセラミックス(シリカ、ジルコニアおよび制御された多孔質ガラス)が挙げられる。
【0006】
膜およびモノリス材料もクロマトグラフィーのために、特にフロースルー用途において一般的に使用される。典型的な膜組成には合成ポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ナイロンおよびポリサッカライド、例えば、セルロースが挙げられる。モノリスはポリスチレン、ポリサッカライド、ポリメタクリラート、並びに他の合成ポリマー、ポリサッカライドおよびセラミックスから開発されてきた。膜およびモノリスクロマトグラフィーは、これらの材料が同じ「コンベクティブ(convective)孔」内にタンパク質を吸着する点でビーズとは異なり、このコンベクティブ孔は膜およびモノリス材料の透過性を制御する。典型的な膜およびモノリスコンベクティブ孔サイズは、約0.6μm〜約10μmの範囲である。これらの基材へのリガンド付加は、この文献に概説された技術をはじめとする様々な充分に開発された技術を通じて達成されうる。
【0007】
タンパク質結合容量を向上させ、樹脂選択性を改変するためのリガンド「エキステンダー(extenders)」の使用は、機能性ポリマー鎖をベースマトリックスに、例えば、ベースマトリックス表面から離れるように伸ばすグラフト化によるなどして結合させることを伴う。リガンドエキステンダーは典型的にはより大きな結合容量作り出す、というのは、このリガンドエキステンダーは官能基利用性を増大させ、そこでは標的分子結合が表面上での単層吸着のものを上回るからである。このリガンド技術のこのような使用の一つは米国特許出願公開第2004/0059040号に開示されている。米国特許出願公開第2004/0059040号は担体上にコーティングされたポリマーを含むクロマトグラフィーのための吸着材料を開示し、ここでポリマー骨格は1以上のアミド基を含む1以上の結合によって担体に結合されている。米国特許出願公開第2004/0059040号はポリマーが担体と反応させられて共有結合を形成することをさらに開示する。この方法は粒子表面上に表面コーティングを提供するのに有用であり、それによりその粒子表面は移動相との相互作用から保護される(例えば、シリカ粒子が高pHの移動相に溶かされるのを防ぐために)。この方法はリガンドが粒子、例えば、ビーズの表面をコーティングするのを可能にするが、穴の中まで広がるリガンドを提供せず、生体分子のための高い容量を提供しない。
【0008】
多孔質材料表面へのポリマーエキステンダーの付加は向上したタンパク質結合容量、結合反応速度およびタンパク質選択性の潜在的変化を提供する。しかし、タンパク質分離がより求められることになるにつれて、新規のポリマー構造を作り出すために新規かつより効果的な技術および方法を開発することがより重要となってきている。よって、タンパク質分離に使用される多孔質ポリマー基材の向上したもしくは改変されたタンパク質選択性および向上したタンパク質結合容量を有する多孔質ポリマー基材を開発することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0059040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
向上したタンパク質結合容量および樹脂選択性を有し、タンパク質分離に有用な、新規な多孔質ポリマー基材についての上記必要性に応じて、ポリマー担体と後での反応が可能な官能性末端基を用いてポリマーエキステンダーリガンドが形成される、多孔質ポリマー基材上にポリマーエキステンダーをグラフト化する新規な方法が開発された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、共有結合によってポリマー担体にポリマーリガンドを固定化する方法に関する。本発明の方法が行われると、より一般的なラジカルグラフト化技術中に起こる副反応を低減もしくは最小限にし、それにより、得られる官能化ポリマー媒体の安定性を向上させる。
本発明は、共有結合したポリマーリガンド鎖を有するマクロポーラスポリマー媒体を製造する方法にさらに関する。この媒体はクロマトグラフ精製に適用されうる。
一形態においては、本発明は、1以上の官能基を含む1以上の結合によってポリマーリガンドがポリマー担体に結合されている、ポリマー担体上に固定化されたポリマーリガンドを含むクロマトグラフィーのための吸着剤材料を提供する。
第2の形態においては、本発明は、ポリマー骨格を含むポリマーリガンドとポリマー担体とが反応させられ、それにより、ポリマー骨格とポリマー担体との間に1以上の結合を形成しており、各結合が1以上の官能基を含む、ポリマー担体上にポリマーリガンドを固定化することを含む、クロマトグラフィーのための吸着剤材料を製造する方法を提供する。
第3の形態においては、本発明は、1以上の官能基を含む1以上の結合によってポリマー骨格が担体上に結合されている、ポリマー担体に固定化されたポリマーリガンドを含むクロマトグラフィーのための吸着剤材料と混合物とを接触させることを含む、混合物から化合物を分離する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」および「最も好ましくは」は、優れているとみなされるモードを示唆することを意図するものではなく、より広い範囲またはグループの好適なより狭い範囲を具体化することを意味する。
本明細書に含まれる全ての範囲は包括的で、かつ組み合わせ可能である。
【0013】
本明細書において使用される場合、多孔質とは、典型的には約200Å〜3,000Åである「拡散孔」を介してタンパク質を吸着する材料を意味する。ポリマー樹脂粒子を製造するための本発明の方法のある実施形態においては、全ての後続モノマーの全重量に対するポロゲンの重量の比率は0.1以上;0.25以上;または0.5以上である。ポリマー樹脂粒子を製造する本発明の方法のある実施形態においては、全ての後続モノマーの全重量に対するポロゲンの重量の比率は10以下;5以下;または、2.5以下である。
【0014】
本発明のポリマー担体には、少なくとも1つの反応性基を有する少なくとも1種のビニルモノマーを含むモノマー混合物を重合することにより好適に製造されるあらゆるポリマービーズが挙げられる。反応性基の好適な例としては、求電子性基、もしくは求電子性基に変換可能な基、もしくは求核基、もしくは求核基に変換可能な基が挙げられる。
【0015】
本発明のポリマー担体は懸濁、乳化もしくは分散重合によって製造されうる。本発明のポリマー担体を製造するのに使用される好適なビニルモノマーには、これに限定されないが、単一のビニル基を有するもの、複数のビニル基を有するもの、およびこれらの混合物が挙げられる。好適なビニルモノマーには、例えば、カルボン酸ビニル、ビニルウレタンモノマー、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリラートエステル、置換(メタ)アクリラートエステル、(メタ)アクリルアミドおよびこれらの混合物が挙げられる。カルボン酸ビニルの好適な一例は酢酸ビニルである。ビニルウレタンモノマーの好適な一例はトリアリルイソシアヌラートである。好適なビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、ジビニルベンゼン、およびこれらの置換体(例えば、アルファ−メチルスチレンなど)が挙げられる。好適な置換(メタ)アクリラートエステルには、例えば、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル、例えば、グリシジルメタクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、グリセロールジメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラートおよびこれらの混合物などが挙げられる。いくつかの好適な置換(メタ)アクリルアミドには(3−アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、およびヒドロキシエチルメタクリルアミドがある。
【0016】
ポリマー担体材料は粒子状材料、またはかけら、シート、ロッド、チューブもしくはキャピラリーコーティングの形態であることができる。好ましくは、担体材料は粒子状材料であり、好適には、約0.5〜約500μm、好ましくは約0.7〜約200μm、最も好ましくは約10〜約120μmの体積平均粒子サイズを有する。この粒子は好ましくは実質的に球状である。粒子状材料は好適には孔を含む。粒子状担体材料の孔サイズ、孔体積、および比表面積は、使用される担体材料の種類、担体に結合されるポリマーの特性、および使用の際に望まれる分離特性に応じて変動しうる。孔サイズは好適には約20〜約4000Å、好ましくは約50〜約1500Åである。パーフュージョン(perfusion)孔については、孔サイズは好適には約2000〜約80000Å、好ましくは約5000〜約50000Åである。孔体積は好適には、約0.1〜約4ml/g、好ましくは約0.3〜約2ml/g、最も好ましくは約0.5〜約1.5ml/gである。比表面積は好適には約1〜約1000m/g、好ましくは約25〜約700m/g、最も好ましくは約50〜約300m/gである。
【0017】
ポリマーリガンドの少なくとも1つの反応性基は本発明のポリマー担体に共有結合される。本発明のポリマー担体との反応を受けうるポリマーリガンド上の好適な反応性基には、これに限定されないが、求電子性基、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アルデヒド、活性エステル、活性化アルコール、エポキシド、カルボナート、カルボカチオン、および合成同等物、ならびにこれらの組み合わせ、または求核性基、例えば、アルコール、アミン、カルボアニオンおよび合成同等物、チオール、およびカルボキシラート、並びにこれらの組み合わせ、または不飽和二重結合のようなフリーラジカル受容体が挙げられる。
【0018】
本発明のポリマーリガンドとの反応を受けるポリマー担体上に存在する好適な反応性基には、これに限定されないが、求電子性基、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アルデヒド、活性エステル、活性化アルコール、エポキシド、カルボナート、カルボカチオン、および合成同等物、ならびにこれらの組み合わせ、または求核性基、例えば、アルコール、アミン、カルボアニオンおよび合成同等物、チオール、およびカルボキシラート、並びにこれらの組み合わせ、または不飽和二重結合のようなフリーラジカル受容体が挙げられる。
【0019】
本明細書において使用されうるポリマーリガンドを含むポリマーの例には、これに限定されないが、アクリル、メタクリル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリサッカライドおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本明細書において使用されうるポリマーリガンド上の官能基には、これに限定されないが、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオフィリック相互作用基、金属アフィニティー基、アフィニティー基、バイオアフィニティー基、混合モード基(上述のものの組み合わせ)が挙げられる。本明細書において使用されうる好適な官能性ポリマーリガンドの例には、これに限定されないが、強カチオン交換基、例えば、スルホプロピル、スルホン酸;強アニオン交換基、例えば、トリメチルアンモニウムクロリド;弱カチオン交換基、例えば、カルボン酸;弱アニオン交換基、例えば、N,NジエチルアミノもしくはDEAE;疎水性相互作用基、例えば、フェニル、ブチル、プロピル、ヘキシル;並びにアフィニティー基、例えば、タンパク質A、タンパク質G、およびタンパク質L、並びに別の官能基にさらに変換可能な非官能性モノマーもしくは中間モノマー(例えば、イオン交換もしくはアフィニティーリガンドに変換されるグリシジルメタクリラート)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
ある実施形態においては、官能性ポリマーリガンドは二官能性(dual−functional)連鎖移動剤の存在下での官能性モノマーフリーラジカル重合を介して生じさせられる。連鎖移動剤はポリマーリガンドの分子量に影響し、ポリマー担体との反応を可能にする用に添加される。重合中の二官能性連鎖移動剤とモノマーとの反応は官能性末端基で末端形成されたポリマーリガンドを生じさせる。好適な二官能性連鎖移動剤はフリーラジカル鎖が移されるのを可能にする基と、ポリマー担体とポリマーリガンドとの反応に好適な官能基の双方を含む。好適な連鎖移動剤には、例えば、ハロメタン、ジスルフィド、チオール(メルカプタンとも称される)、および金属錯体が挙げられる。さらなる好適な連鎖移動剤には、少なくとも1つの容易に引き抜き可能な水素原子を有する様々な他の化合物、及びその混合物が挙げられる。好適な反応性基には、これに限定されないが、求電子性基、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アルデヒド、活性エステル、活性化アルコール、エポキシド、カルボナート、カルボカチオン、および合成同等物、ならびにこれらの組み合わせ、または求核性基、例えば、アルコール、アミン、カルボアニオンおよび合成同等物、チオール、およびカルボキシラート、並びにこれらの組み合わせ、または不飽和二重結合のようなフリーラジカル受容体が挙げられる。連鎖移動剤は1回以上の添加でまたは連続的に、線形的にまたはそうではなく、全反応期間のほとんどもしくは全てにわたって、または反応期間の限定された部分で添加されうる。連鎖移動剤は反応に0.01%〜5%、より好ましくは0.1%〜1%の濃度で添加されうる。
【0022】
架橋剤、分岐剤および非官能性モノマーはポリマーリガンドの形態もしくは相互作用を制御する目的のために、ポリマーリガンド上に結合されうる。しかし、ポリマーリガンド上のこれら架橋剤もしくは分岐剤は好適には5%未満、より好ましくは1%未満の低い水準で存在する。好適な架橋剤もしくは分岐剤には、これに限定されないが、モノマー、例えば、エチレングリコールジメタクリラート、ジビニルベンゼン、トリメチルプロピルトリメタクリラート、およびメチレンビスアクリルアミド、または多官能性連鎖移動剤が挙げられる。
【0023】
本明細書において使用されうる「フリーラジカル開始剤」の例には、これに限定されないが、ビニルモノマーと反応することができポリマーリガンドを形成することができるあらゆるフリーラジカル開始剤、例えば、ペルオキシド、例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド;ペルオキシアセタート、例えば、過酢酸、クロロ過安息香酸;過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、カリウムペルオキソジスルファート、アゾ開始剤、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、イルガキュア(Irgacure登録商標)2959(ニューヨーク州ホースロンのチバガイギー)、2,2’−アゾビス(2−アミジノ−プロパン)ヒドロクロリドなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。グラフト化反応は当該技術分野において知られている方法、好ましくは熱開始(加熱)、もしくはUV照射で開始されうる。フリーラジカル開始剤は水溶性もしくは油溶性でありうる。フリーラジカル開始剤は反応に0.01%〜15%、より好ましくは0.1%〜2%の濃度で添加される。
【0024】
ポリマーリガンドはポリマー担体に好適に共有結合される。ポリマーリガンドはポリマー担体の懸濁物に溶液として好適に添加される。次いで、ポリマーリガンドは当業者に知られた方法によって、好適にろ別され、洗浄され、および交互に乾燥させられる。反応中の温度は好適には約25℃〜約90℃、好ましくは約50℃〜約80℃である。ある実施形態においては、混合物は不活性雰囲気下に維持される。
【0025】
本発明はクロマトグラフ分離方法におけるクロマトグラフィーのために吸着剤材料の使用をさらに含む。このようなクロマトグラフ分離方法は、例えば、イオン交換、疎水性相互作用、親水性相互作用、チオフィリック相互作用、金属アフィニティー、アフィニティー、バイオアフィニティー、および混合モード(上述のものの組み合わせ)、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、および擬似移動床(SMB)でありうる。
【0026】
本発明はクロマトグラフ分離方法におけるクロマトグラフィーのために吸着剤材料の使用をさらに含む。このようなクロマトグラフ分離方法は、例えば、低圧液体クロマトグラフィー、中圧液体クロマトグラフィー、HPLC、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、および擬似移動床(SMB)でありうる。
【0027】
本発明は、本発明に従うクロマトグラフィーのための吸着剤材料と混合物を接触させることを含む、混合物から化合物を分離する方法をさらに含む。
【0028】
本発明の主たる利点は、分子、より具体的には生体分子のクロマトグラフィー捕捉および/または精製のためのあらかじめ製造されたポリマーリガンドグラフト化を使用する高容量イオン交換樹脂の形成である。
【実施例】
【0029】
実施例において含まれる材料は以下のソースから得られた。
GEヘルスケア:Q−セファロース商標
フィッシャーサイエンティフィック:HCl、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
シグマ−アルドリッチ:BSA、シリンジフィルター、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム、2−アミノエタンチオールヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)
【0030】
実施例1
ポリマーリガンドの製造
0.111gの2−アミノエタンチオールヒドロクロリド(AET・HCl)および0.186gの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド(ABMPA・2HCl)が別々の秤量皿に秤量され、38gのすすぎ水と共に、250mLの丸底フラスコに入れられた。30gの(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(AAPTMAC)および32gの水がこのフラスコに直接秤量された。温度計およびNバブラーを伴う水で満たされた凝縮器がこのフラスコに取り付けられた。材料がフラスコに入れられた後で、反応混合物は78℃で5時間攪拌された。
【0031】
実施例2−吸収剤材料の生成(ポリマーリガンドとポリマー担体との反応)
実施例1において生じた冷却されたポリマーリガンド溶液90g、および10.6gのポリGMA−GlyDMA湿潤ケーキが丸底フラスコに入れられた。N雰囲気下で、スラリー溶液はオーバーヘッドスターラー(200rpm)を用いて65℃で16時間攪拌された。得られた冷却した懸濁物はろ過され、水で洗浄(4回×200mL)された。アニオン交換樹脂が水性スラリー溶液として貯蔵された。このアニオン交換樹脂についてのウシ血清からのアルブミン(BSA)容量は155mg/mLである。
【0032】
吸収剤材料についてのBSA容量試験
溶液1の調製(50mMトリス/HCl、pH8.61)
12.1gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを2Lの容量フラスコに入れた。次いで、N/100のHCl溶液を添加して、2リットルの印までフラスコを満たした。容量フラスコに蓋をした後でこの内容物を振とうした。この溶液を5分間静置し、溶液の体積を再度チェックした。2Lの印まで体積を調節するために追加のHClを入れた。pHをチェックすると8.61であった。この溶液を冷蔵し、ラベル(溶液1)した。
【0033】
溶液2の調製(2mg/mlのBSA溶液)
0.806gのBSAがガラスジャーに秤量され、403gの溶液1に添加された。この内容物は手作業で穏やかに混合されて溶解させられた。BSAの完全な溶解を確実にするためにこの溶液を0.5時間静置した。この溶液をラベルした(溶液2)。
【0034】
空気を捕捉するのを妨げるために、1mlのDI水が1本のBio−Rad Poly−Prepクロマトグラフィーカラムにゆっくりと添加された。油性インクペンで水の高さの印を付けた。カラムからエンドプラグ取り除いた。カラムは排気フード内のマニホルドに接続された。より多くのDI水がカラムに添加され、空気の捕捉を妨げるためにカラムの底に留まる水のレベルが1〜2cmになるまで穏やかな真空がカラムに適用された。
【0035】
スラリーアニオン交換樹脂溶液がカラムに添加された。樹脂上方の水のヘッドが常に維持された。充填された床が印を付けられた1mlの高さに到達するまで、移送ピペットで希釈された樹脂スラリーをゆっくりと添加することにより、カラム内に樹脂の1mlの樹脂が量り入れられた。樹脂上方の溶液1〜2cm以外の全てを除去するために穏やかな真空が適用された。樹脂のレベルが1mlの印より下になったら、追加の真空をかけながら、さらなる樹脂スラリーが添加された。樹脂床に空気が入らないように注意すべきである(床が空気にさらされる前に真空を停止する)。必要な場合には、樹脂床が空気にされされないように維持するために追加の量のDI水が使用された。充填された1mlの樹脂は約10mlのDI水ですすがれ、スラリー溶液を置き換え、水のレベルが充填床の1〜2cm上方になるまで液体が排出された。次いで、充填された1mlの樹脂は10mlの溶液1でフラッシュされた。真空が適用されて全ての溶液1はカラムから吸引され、空気は1分間にわたってカラムを通して吸引された。湿潤ケーキを収容するディスポーサブルカラムはマニホルドから取り外された。
【0036】
カラムからの湿潤ケーキは、スパチュラを用いて、200mLのBSA溶液2(次の工程から)の少量を含む8オンスのガラスジャーに移された。2mg/mlのBSA溶液2の200mlがガラスジャーに移された。ガラスジャーにキャップをした。ジャーをパラフィルムで密封した。ガラスジャーは振とう器上に水平に置かれ、サンプルは18時間穏やかに振とうされた。
【0037】
18時間後、サンプルは振とう器から取り外され、樹脂は15分間沈降させられた。15分後、8オンスのジャーを開けて、5mlシリンジを用いてジャーから3mLのサンプルを取り出した。シリンジに0.22μmのフィルターを取り付けて、次いでこのシリンジに圧力をかけて、BSA溶液をゆっくりとフィルターを通してディスポーサブルUVキュベットに押し出した。BSA結合容量は、18時間のインキュベーション後のろ過された上澄BSA溶液の278nmUV吸光度から決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の官能基を含む1つの結合によってポリマーリガンドがポリマー担体に結合されている、ポリマー担体上に固定化されたポリマーリガンドを含むクロマトグラフィーのための吸着剤材料。
【請求項2】
ポリマー担体との反応を受けうる基と、1以上の官能基とを有する少なくとも1種のビニルモノマーを含むモノマー混合物を重合することによりポリマー担体が製造される、請求項1に記載の吸着剤材料。
【請求項3】
ポリマー担体との反応を受けうる基が求電子性基、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アルデヒド、活性エステル、活性化アルコール、エポキシド、カルボナート、カルボカチオン、および合成同等物、ならびにこれらの組み合わせ、または求核性基、例えば、アルコール、アミン、カルボアニオンおよび合成同等物、チオール、およびカルボキシラート、並びにこれらの組み合わせ、または不飽和二重結合のようなフリーラジカル受容体を含む、請求項2に記載の吸着剤材料。
【請求項4】
ポリマー担体が約0.5〜約500μmの体積平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の吸着剤材料。
【請求項5】
ポリマー骨格を含むポリマーリガンドとポリマー担体とが反応させられ、それにより、ポリマー骨格とポリマー担体との間に1つの結合を形成しており、各結合が1以上の官能基を含む、ポリマー担体上にポリマーリガンドを固定化することを含む、クロマトグラフィーのための吸着剤材料を製造する方法。
【請求項6】
ポリマー担体との反応を受けうる基と、1以上の官能基とを有する少なくとも1種のビニルモノマーを含むモノマー混合物を、二官能性連鎖移動剤の存在下で重合することによりポリマーリガンドが製造される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー担体との反応を受けうる基が求電子性基、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アルデヒド、活性エステル、活性化アルコール、エポキシド、カルボナート、カルボカチオン、および合成同等物、ならびにこれらの組み合わせ、または求核性基、例えば、アルコール、アミン、カルボアニオンおよび合成同等物、チオール、およびカルボキシラート、並びにこれらの組み合わせ、または不飽和二重結合のようなフリーラジカル受容体を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー担体が約0.5〜約500μmの体積平均粒子サイズを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ポリマーリガンドが溶液として、ポリマー担体の懸濁物に添加される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
1以上の官能基を含む1つの結合によってポリマー骨格が担体に結合されている、ポリマー担体上に固定化されたポリマーリガンドを含むクロマトグラフィーのための吸着剤材料と、混合物とを接触させることを含む、混合物から化合物を分離する方法。

【公開番号】特開2012−32391(P2012−32391A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−149777(P2011−149777)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY