説明

改良された接着力をもたらす金属塩コーティングを有するポリイミドフィルム

【構成】 部分的に硬化されたまたは部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムの表面を金属塩の有機溶媒溶液によってコートしそしてこのコートされたフィルムを加熱してポリアミド酸をポリイミドに転化しかつこのフィルムを乾燥することによって製造される、改良された接着力を有するポリイミドフィルムが記載されている。
【効果】 この金属塩の適切な選択によって、片面接着可能なまたは両面接着可能などちらかのポリイミドフィルムを得ることができる。このポリイミドフィルムは、優れた接着力が重要な要件である、電気絶縁性で柔軟な印刷回路の応用において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の背景】本発明は、部分的に硬化されたまたは部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムの表面を特定された金属塩の溶液によってコートしそして次にこのコートされたフィルムを加熱してポリアミド酸をポリイミドにイミド化し並びにこのフィルムを乾燥することによって製造される、改良された接着力(adhesion)を有するポリイミドフィルムに関する。
【0002】ポリイミドフィルムは、その優れた性質例えば耐熱性、耐低温性、耐化学薬品性、電気絶縁性及び機械的強度のためによく知られている。このようなポリイミドフィルムは、電気絶縁フィルムとしてそして柔軟な印刷回路のためのベースとして広く使用されている。このような応用においては、ポリイミドフィルムは、通常は、アクリルまたはエポキシ接着剤によって銅ホイルに接合され、そしてそれ故良好な接着力が重要な性質要件である。
【0003】1988年5月3日にNaganoらに発行されたU.S.4,742,099は、接着力を改良するための30〜800ppmのチタンベースの有機金属化合物を含むポリイミドフィルムを開示している。本発明のポリイミドフィルムは、有機金属チタン化合物を含まない。
【0004】1968年6月18日にMcKeownらに発行されたU.S.3,389,111は、周期表のIVb及びVb族の有機金属化合物を含む改良された耐コロナ性を有するポリイミドフィルムを開示している。本発明のポリイミドフィルムは、IVbまたはVb族の有機金属化合物を含まない。
【0005】1989年1月10日にKunimotoらに発行されたU.S.4,797,307は、耐熱性アミノシラン、エポキシシランまたはチタン酸塩処理剤を有するフィルムの表面をコートすることによって製造される改良された接着性を有するポリイミドフィルムを開示している。本発明のポリイミドフィルムは、アミノシラン、エポキシシランまたはチタン酸塩処理剤によってコートされない。
【0006】本発明の一つの目的は、改良された表面接着性を有するポリイミドフィルムを提供することである。
【0007】さらに詳細には、本発明は、エポキシ、アクリルまたはその他の耐熱性樹脂接着剤によって金属ホイル、例えば銅ホイルに接合される時に改良された表面接着力を有するポリイミドフィルムを提供する。
【0008】
【発明の要約】本発明によれば、金属がSn、Cu、Zn、Fe、Co、Mn及びPdから成る群から選ばれる0.1〜10重量%の金属塩を含む有機溶媒溶液によってコートされたポリイミドベースフィルムから成る、片面または両面に少なくとも8pli の表面接着力(IPC方法2.4.9改訂Cによる)を有するポリイミドフィルムが提供される。
【0009】この金属塩は、有機溶媒例えばジメチルアセトアミド中の溶液として部分的に硬化されたまたは部分的に乾燥されたどちらかの固体のポリアミド酸に付与することができる。次に、このコートされたベースフィルムを加熱してこのフィルムを乾燥しかつこのポリアミド酸を完全にポリイミドに転化する。
【0010】金属塩の適切な選択によって、片面接着可能なまたは両面接着可能などちらかのポリイミドフィルムを得ることができる。5.8より大きいpkaを有する強い塩基性の対イオンを有する金属塩は一般的に片面接着可能なフィルムを与え、一方5.8未満のpkaを有する弱い塩基性の対イオンを有する金属塩は一般的両面接着可能なフィルムを与える。
【0011】〔発明の詳細な説明〕本発明において使用されるポリイミドベースフィルムは、一般的に、それらの開示が引用によって本明細書中に組み込まれる米国特許3,179,630及び3,179,634中に開示されたようにして製造することができる。ポリアミド酸は、実質的に等モル量の少なくとも一つの芳香族酸二無水物及び少なくとも一つのジアミンを溶媒中に溶解すること、並びにこの酸二無水物及びこのジアミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で生成した溶液を撹拌することによって製造することができる。
【0012】本ポリイミドにおける使用のための適当な酸二無水物は、ピロメリト酸二無水物;2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,2,′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;オキシジフタル酸二無水物;ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;及び類似物を含む。
【0013】本ポリイミドにおける使用のための適当なジアミンは、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン;4,4′−ジアミノジフェニルメタン;ベンジジン;3,3′−ジクロロベンジジン;4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド;3,3′−ジアミノジフェニルスルホン;4,4′−ジアミノジフェニルスルホン;4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;1,5−ジアミノナフタレン;4,4′−ジアミノジフェニルジエチルシラン;4,4′−ジアミノジフェニルシラン;4,4′−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド;4,4′−ジアミノジフェニルN−メチルアミン;4,4′−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン;1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン);1,3−ジアミノベンゼン;1,2−ジアミノベンゼン;及び類似物を含む。
【0014】本発明において使用される好ましいポリイミドベースフィルムは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びピロメリト酸二無水物から誘導される。
【0015】上記ジアミン及び酸二無水物のいずれから誘導されるコポリイミドもまた使用できる。特に好ましいコポリイミドは、15〜85モル%のビフェニルテトラカルボン酸二無水物、15〜85モル%のピロメリト酸二無水物、30〜100モル%のp−フェニレンジアミン及び0〜70モル%の4,4′−ジアミノジフェニルエーテルから誘導されるものである。このようなコポリイミドは、その開示もまた引用によって本明細書中に組み込まれるU.S.4,778,872中に述べられている。
【0016】本溶媒は、重合する反応物の一つまたは両方を溶解しなければならずそして、ポリアミド酸重合生成物を溶解することが好ましい。本溶媒は、重合する反応物のすべてとそしてポリアミド酸重合生成物と実質的に非反応性でなければならない。
【0017】好ましい溶媒は、一般的には、液体N,N−ジアルキルカルボキシルアミドを通常は含む。それらの溶媒の好ましいものは、このようなカルボキシルアミドの比較的小さい分子量のメンバー、特にN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジエチルアセトアミドを含む。使用してよいその他の溶媒は、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン及び類似物である。これらの溶媒は、単独で、お互いとの組み合わせでまたは貧溶媒例えばベンゼン、ベンゾニトリル、ジオキサン等との組み合わせで使用することができる。使用される溶媒の量は好ましくはポリアミド酸の75〜90重量%の範囲である。何故ならば、この濃度は最適の分子量を与えることが見い出されたからである。
【0018】これらのポリアミド酸溶液は、一般に、ジアミンを乾いた溶媒中に溶解しそして、不活性雰囲気中で撹拌及び制御された温度の条件下で酸二無水物をゆっくりと添加することによって製造される。ジアミンは好都合には溶媒中の5〜15重量%溶液として存在しそして、ジアミン及び酸二無水物は通常は約等モル量で使用される。
【0019】本金属塩は、有機溶媒中の溶液として、ポリアミド酸の部分的に硬化された“ゲルフィルム”または溶媒和されたフィルムのどちらかに付与することができる。“ゲルフィルム”という術語は、ポリマー物質がゲル膨潤して可塑化されたゴム状状態にある程度まで、揮発物、主に溶媒を課せられているポリアミド酸物質のシートを意味する。このベースゲルフィルムの厚さは、一般に、2〜25ミルの範囲に入る。揮発物含量は、通常は、ゲルフィルムの80〜90重量%の範囲である。このゲルフィルムは、自己支持性でかつ部分的に及び不完全に硬化している、即ち、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にある。
【0020】このゲルフィルム構造体は、U.S.3,410,826中に述べられた方法によって化学転化剤及び触媒、例えばそれぞれ低級脂肪酸無水物及び第三アミンを低温でポリアミド酸溶液中に混合し、引き続いてこのポリアミド酸溶液をキャスティング表面上でフィルムの形にキャストしそして次に例えば100℃で温和に加熱してキャストフィルムをポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムに変換するための転化剤及び触媒を活性化することによって製造することができる。
【0021】このゲルフィルムを引き続いて乾燥して水、残留溶媒、及び残存転化化学品を除去し、そしてポリアミド酸を完全にポリイミドに転化する。この乾燥は、その時点でのポリアミド酸のポリイミドへの完全な転化無しに比較的温和な条件で実施することができ、またはこの乾燥及び転化は、より高い温度を使用して同時に実施することもできる。このゲルは非常にたくさんの転化ステップを有するので、乾燥の間、ゲルを束縛して望ましくない収縮を回避しなければならない。連続的な製造においては、このフィルムを束縛のためにテンターのクリップまたはピンを使用してテンターのフレームにおけるように、その端で保持することができる。乾燥及び転化の間に過剰に収縮し得るようにされるポリイミドフィルムは、脆くそしてポリイミドフィルム物質から予期される優れた性能特性に欠ける。
【0022】好ましくは、フィルムを乾燥しそしてそれを同じステップでポリイミドに転化するために、短時間の間、高温が使用される。フィルムを200〜550℃の温度に15〜400秒間加熱することが好ましいが、300℃での30〜60分もまた使用することができる。勿論、より厚いフィルムのためよりも薄いフィルムのためには、少ない熱及び時間しか必要とされない。この乾燥及び転化の間に、フィルムは不当な収縮を束縛されそして、事実、乾燥及び転化の完了に先立ってその最初の寸法の200%ほど多く延伸することができる。延伸は任意の次元においてでよい。フィルム製造においては、延伸は、縦方向または横方向のどちらかでよい。もし所望ならば、束縛はまた、ある限定された程度の収縮を可能にするように与えることもできる。15%ほど多くの収縮が適切な生成物を与えることが見い出された。
【0023】本金属塩溶液はまた、ポリアミド酸の溶媒和されたフィルム、即ち、すべてポリアミド酸であるかまたはほんの低いポリイミド含量、例えば0〜25%を有するフィルムで、そして約50〜75重量%のポリマー及び25〜50重量%の溶媒であるフィルムに付与することもできる。このようなフィルムは、自己支持性であるほど十分に強い。
【0024】この溶媒和されたポリアミド酸は、ポリアミド酸溶液をキャスティング表面の上にキャストしそして50℃より高い温度で加熱してポリアミド酸を部分的にポリイミドに転化することによって製造することができる。ポリアミド酸転化の程度は、用いられる温度及び暴露の時間に依存するが、一般的にはアミド酸基の約25〜95%がイミド基に転化される。次に、この部分的に転化されたポリアミド酸を220℃またはそれ以上で加熱してポリイミドへの完全な転化を得る。
【0025】本発明によれば、この金属塩溶液を、部分的に硬化されたポリアミド酸ゲルフィルムまたはポリアミド酸の溶媒和されたフィルムのどちらかの上にコートする。このコーティングの付与は、多数の方法で、例えば浸漬、吸上コーティングまたはキスロールコーティング、及びそれに続くドクターナイフ、ドクターロール、絞りロールまたはエアナイフによる平滑化(metering)によって達成することができる。それはまた、はけ塗りまたはスプレーによって付与することもできる。
【0026】このような技術を使用して、片面及び両面コートされた両方の構造体を製造することが可能である。両面コートされた構造体の製造においては、これらのコーティングは、最後の硬化及び乾燥段階に行く前に同時にまたは引き続いてのどちらかで両面に付与することができる。
【0027】本発明において利用性を有する金属塩は、Sn、Zn、Cu、Fe、Co、Mn及びPdを含む金属塩を包含する。接着力の改良は、金属カチオンの酸化状態に依存しない。使用できる対イオンは、その他のものの中でも、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、アセチルアセトネート及び蟻酸塩を包含する。これらの塩は、無水でもまたは水和されていてもよくそして中性の配位結合配位子例えばホスフィン、ホスファイト、ホスフィンオキシド、アミン、アミンオキシド及びその他のものを含んでもよい。
【0028】両面接着可能なフィルムは、弱い塩基性の対イオン、例えばハロゲン化物を含む金属塩の溶液を、部分的に硬化されたポリアミド酸ゲルフィルムまたは部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムの表面上にコートすることによって製造することができる。片面接着可能なフィルムは、非常に塩基性の対イオン、例えば酢酸塩または蟻酸塩を含む金属塩の溶液を、部分的に硬化されたまたは部分的に乾燥されたフィルムの表面上にコートすることによって製造することができる。
【0029】強い塩基性の対イオンは、部分的に硬化されたまたは部分的に乾燥されたフィルムのポリアミド酸区分(segments)の上の酸性のプロトンと反応することによって片面接着可能なフィルムを生成させる。ポリアミド酸区分のカルボキシレートアニオン及び対イオンの酸形が生成される。次にこの金属イオンはこのカルボキシレートアニオンに結合しそしてゲルフィルム溶媒媒体中ではもはや移動性ではない。それ故、それは、コートされた側にまたはその近くに止まりそしてその表面上だけの接着力を改良する。ポリアミド酸のpkaは約5.8である。ポリアミド酸の酸基より弱い酸から生成される対イオンは、片面接着可能な特性を示すであろうと信じられる。ハロゲン化物は、対応する酸がポリマー連鎖上のカルボン酸よりも強いので、両面接着可能なフィルムを与える。
【0030】時折、金属が、対イオンが酸性のプロトンと反応しないほどしっかりと対イオンを結合するであろう。このような金属化合物を部分的に硬化されたまたは部分的に乾燥されたフィルムの上にコートすると、両面接着可能なフィルムが得られる。酢酸銅(II)は、酢酸塩対イオンを有するにも拘わらず両面接着可能なフィルムを与える金属化合物の例である。
【0031】これらの金属塩は、有機溶媒の0.1〜10重量%の範囲の金属塩の濃度を有する溶液からコートされる。0.5mg金属/ft2未満の表面積を基にした金属塩の量は、より低い接着力レベルを与える。20mg/ftの上限までの金属の量は、他のフィルムの性質が受け入れられるのに留まる限り使用してよい。
【0032】従って、表面での金属を基にした濃度は、フィルムの平方フィートあたり0.5mgの金属ないしフィートの平方フィートあたり20mgの金属、好ましくは1mg金属/ft2〜10mg金属/ft2、そしてもっとも好ましくは2mg金属/ft2〜5mg金属/ft2の範囲でよい。
【0033】好ましい金属はスズでありそして好ましい金属塩は塩化第一スズまたは、さらに好ましくは、酢酸第一スズであり、これは、2〜10mgスズ/ft2の濃度で使用される時には、接着剤で接合されたポリイミド銅積層品において使用される時に少なくとも10pliの剥離強さを与える。
【0034】積層品においてはポリイミドベースフィルムの銅ホイルへの良好な接着力を有することが極めて重要である。貧弱な接着力は、結果として回路製造の間の貧弱な作業性をもたらす可能性がある。貧弱な接着力はまた、最後の回路における操作条件下では結果として銅線の脱離をもたらしこの回路を役に立たなくする可能性がある。良好な接着力の利点は、柔軟な印刷回路の改良された製造収率及びより良い機能性である。
【0035】
【実施例】本発明の有利な性質は、本発明を例示するが限定はしない以下の実施例を参照することによって観察することができる。特記しない限り、すべての部及び%は重量による。
【0036】〔実施例1(比較例1C及び2C)〕
対照フィルムPMDA/ODAポリアミド酸(30.0g)の20.3%固体溶液をDMAc(12.7ml)と完全に混合しそして氷/水浴中で約0℃に冷却した。無水酢酸(3.6ml)をこの溶液中に完全に混合し、続いてβ−ピコリン(3.7ml)もまたこの溶液中に完全に混合した。この溶液を遠心分離して空気の泡を除去しそして次に、接着テープによってガラス板表面の上に固定された高さで支持されたステンレススチールの棒を使用してこのガラス板の上にキャストした。このガラス板及びフィルムを、熱から取り除く前に5分間約90℃で熱い板の上で加熱し、そして冷却した。この部分的にイミド化されたフィルムをガラス板から剥がしそしてフレームの上で束縛した。このフィルムを、フレーム及びフィルムを250℃で20分間強制空気オーブン中に入れることによって硬化させた。フィルム及びフレームを熱から取り除きそして冷却した。このフィルムはフレームから取り除く前に5分間400℃でフレーム中で更に硬化させた。
【0037】実施例1化学的に転化されたフィルムを上で述べたようにして製造した。しかしながら、ガラス板及びフィルムを2.5分間熱い板の上で加熱した後で、ペイントブラッシュを使用してDMAc中の酢酸第一スズの1%溶液によってこのフィルムをコートした。全部で5分間このフィルムが熱い板の上にあった後で、それを熱から取り除き、冷却し、ガラス板から剥がし、フレームの上で束縛し、そして対照フィルムに関して述べたようにして硬化させた。生成したフィルムは、コートされた(空気の)側の上でだけ改良された接着力を持ち、コートされてない(キャスティングの)側の上では持っていなかった。
【0038】両面の銅積層品を、対照ポリイミドフィルムのサンプル及び酢酸第一スズコートされたポリイミドフィルムを熱及び圧力を使用してアクリルのシート接着剤及び銅ホイルによって積層することによって製造した。積層品は、177℃及び約100psiで40分間プレスし、続いて加熱無しで約100psiでプレス中で20分間冷却することによって製造した。
【0039】Thwing-Albert精密カッターを使用して積層品をストリップ(0.5インチ幅)に切断し、そしてPyroluxR W.A.接着剤を用いる、積層品接着力測定のためのIPC方法2.4.9.改訂Cに従ってGerman Wheelを備えたInstron試験機で90°剥離強さを測定した。
【0040】接着力の結果を表1中に与える。
【0041】比較例1C部分的にイミド化されたフィルムを酢酸第一スズの代わりにTYZORR DC チタン酸塩の1%溶液によってコートした以外は、実施例1におけるのと同じ基礎的手順に従った。生成したフィルムは、対照フィルムと比較してコートされた(空気の)またはコートされていない(キャスティングの)側のどちらも接着力の改良を示さなかった。接着力の結果は表1中に示されている。
【0042】比較例2C部分的にイミド化されたフィルムを酢酸第一スズの代わりにDMAc中のPROSILR 9214シラン接着促進剤の1%溶液によってコートした以外は、実施例1におけるのと同じ基礎的手順に従った。生成したフィルムは、対照フィルムと比較してコートされた(空気の)またはコートされていない(キャスティングの)側のどちらも接着力の改良を示さなかった。接着力の結果は表1中に示されている。
【0043】〔実施例2〕部分的にイミド化されたフィルムを酢酸第一スズの代わりにDMAc中のSnCl2TPPO(TPPO=トリフェニルホスフィンオキシド)の1%溶液によってコートした以外は、実施例1におけるのと同じ基礎的手順に従った。生成したフィルムは、コートされた(空気の)側とコートされていない(キャスティングの)側の両方の上で改良された接着力を有していた。接着力の結果は表1中に示されている。
【0044】〔実施例3〕部分的にイミド化されたフィルムを酢酸第一スズの代わりにDMAc中の酢酸第二銅の1%溶液によってコートした以外は、実施例1におけるのと同じ基礎的手順に従った。生成したフィルムは、多分スズよりもっとしっかりと酢酸塩対イオンを結合する銅のために、コートされた(空気の)側とコートされていない(キャスティングの)側の両方の上で改良された接着力を有していた。接着力の結果は表1中に示されている。
【0045】〔実施例4〕
対照フィルムPMDA/ODAポリアミド酸(30.0g)の20.3%固体溶液をDMAc(20ml)と完全に混合しそして遠心分離して空気の泡を除去した。この溶液を、接着テープによってガラス板表面の上に固定された高さで支持されたステンレススチールの棒を使用してこのガラス板の上でフィルムにキャストした。このガラス板及びフィルムを、約90℃の温度で20分間熱い板の上で加熱した。この20分の終わりに、ガラス板及びフィルムを熱から取り除きそして冷却した。次に、この部分的に乾燥されたフィルムをガラス板から剥がしそしてフレームの上で束縛した。このフィルムを、温度を160℃から250℃に上げながらフレーム及びフィルムを30分間強制空気オーブン中に入れることによって硬化させた。フィルム及びフレームを熱から取り除きそして冷却した。このフィルムはフレームから取り除く前に5分間400℃でフレーム中で更に硬化させた。
【0046】実施例4熱的に転化されたフィルムを前に上で述べたようにして製造した。しかしながら、熱い板の上の20分の後で、ガラス板及びフィルムを熱から取り除きそして冷却した。この部分的に乾燥されたフィルムを、ペイントブラッシュを使用してDMAc中のFeCl3・6H2Oの1%溶液によってコートした。ガラス板及びフィルムを、さらに5分間の加熱のために熱い板に返した。次に、フィルムを熱から取り除き、冷却し、ガラス板から剥がし、フレームの上で束縛し、そして上で述べたようにして硬化させた。
【0047】両面の銅積層品を、実施例1において述べたようにして製造した。コートされたポリイミドフィルムは、対照フィルムと比較した時に、コートされた(空気の)側とコートされていない(キャスティングの)側の両面の上で改良された接着力を有していた。接着力の結果を表1中に与える。
【0048】〔実施例5〕部分的に乾燥されたフィルムを塩化第二鉄六水和物の代わりにDMAc中の塩化パラジウム(II)の1%溶液によってコートした以外は、実施例4におけるのと同じ基礎的手順に従った。このフィルムは、400℃で5分の代わりに300℃で30分加熱して硬化を完了させた。このコートされたポリイミドフィルムは、コートされた(空気の)側とコートされていない(キャスティングの)側の両方の上で改良された接着力を有していた。接着力の結果は表1中に示されている。
【0049】
【表1】


【0050】
【表2】


a=化学的に転化されたポリイミドフィルムb=熱的に転化されたポリイミドフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属がSn、Cu、Zn、Fe、Co、Mn及びPdから成る群から選ばれる0.1〜10重量%の金属塩を含む有機溶媒溶液によってコートされたポリイミドベースフィルムから成る、片面または両面にIPC方法2.4.9改訂Cによる少なくとも8pliの表面接着力を有するポリイミドフィルム。
【請求項2】 該ベースフィルムが両面に接着力を有しそして約5.8未満のpka値を有する弱い塩基性の対イオンを含む金属塩の溶液によってコートされる、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】 該対イオンが塩化物イオンである、請求項2記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】 該金属塩が塩化第二鉄である、請求項3記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】 該金属塩が塩化第二スズである、請求項3記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】 該金属塩が塩化第一スズである、請求項3記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】 該ベースフィルムが片面に接着力を有しそして約5.8より大きいpka値を有する非常に塩基性の対イオンを含む金属塩の溶液によってコートされる、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】 該金属塩が酢酸第一スズである、請求項7記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】 該ベースフィルムがピロメリト酸二無水物及び4,4′−ジアミノジフェニルエーテルから誘導される、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項10】 該有機溶媒がジメチルアセトアミドである、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項11】 金属塩の有機溶媒溶液を部分的に硬化されたまたは部分的に乾燥されたポリアミド酸ベースフィルム上にコートしそして次にコートされたベースフィルムを加熱して該フィルムを乾燥しかつ該ポリアミド酸を完全にポリイミドに転化することによって製造される、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項12】 該フィルムの表面での該金属の濃度がフィルムの平方フィートあたり0.5mgの金属〜20mgの金属の範囲にある、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項13】 該金属がスズでありそして該フィルムの表面でのスズの濃度が平方フィートあたり2〜10mgのスズの範囲にある、請求項1記載のポリイミドフィルム。

【公開番号】特開平6−73209
【公開日】平成6年(1994)3月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−268691
【出願日】平成3年(1991)9月20日
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY