改良された検出装置
【課題】 本発明は、フロースルー診断装置を用いた免疫測定法において、試料・試薬の濃縮効果を維持したまま、試験の途中経過を観察することが可能である、免疫診断装置、及びこれを用いたキットを提供することを目的とする。
【解決手段】 検体試料中の被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体および被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬を含む多孔質材料を含み、試薬及び試料が固相支持体に移動する流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する免疫測定を行うためのフロースルー式検出装置であって、前記流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく試験領域の着色または非着色を確認することができるフロースルー式検出装置。
【解決手段】 検体試料中の被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体および被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬を含む多孔質材料を含み、試薬及び試料が固相支持体に移動する流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する免疫測定を行うためのフロースルー式検出装置であって、前記流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく試験領域の着色または非着色を確認することができるフロースルー式検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原または抗体を検出するための免疫測定法において固相支持体を含むフロースルー式検出装置であって、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を備え、且つその流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が捕捉試薬部位および対照部位である試験領域の着色・非着色を捕捉試薬部位および対照部位以外の非試験領域との対比により試験終了以前に確認可能となる機能を備えることを特徴とするフロースルー式検出装置、並びにそれを用いた免疫測定法及び免疫測定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫反応の特異性を利用して試料中の分析対象物を免疫学的手法により検出または定量する分析方法として免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等種々の方法論が実用化されている。フロースルー式検査法及びイムノクロマトグラフィー式検査法(ラテラルフロー式、タンジェンシャルフロー式)は、メンブランを使用した検査法であり、操作が簡便で一般的な検査の場に普及している。ラテラルフロー式検査法の原理については、種々報告されている(非特許文献1、特許文献1〜9を参照)。また、フロースルー式検査法の原理についても種々報告されている(非特許文献1、特許文献10〜15参照)。
【0003】
インフルエンザウイルス抗原の検出を例に、この分析法について簡単に説明する。インフルエンザウイルス抗原を捕捉するための捕捉試薬(例えば、抗インフルエンザウイルス抗体)を固定化したメンブラン上に、患者から採取した検体(咽頭・鼻腔拭い液、鼻腔吸引液等)を検体浮遊液に浮遊させた試料を所定量滴下すると、検体液がメンブランを通過する際、存在する分析対象物(インフルエンザウイルス抗原)がメンブランに固定化された捕捉試薬に捕捉される。次いで、例えば酵素、あるいは金コロイド粒子等の不溶性着色粒子で標識化した、分析対象物に結合する検出試薬(例えば、標識化抗体)を所定量滴下すると、捕捉試薬−分析対象物−検出試薬(標識化抗体)の免疫複合体を形成する。その後、前記酵素標識抗体の場合は基質を滴下することにより、不溶性着色粒子を用いた場合はそれ自身が固定化された捕捉試薬上で濃縮され、可視化されることにより免疫複合体が形成された領域を発色させて、着色した試験領域(捕捉試薬部位、対照部位)とそれ以外の着色されていない非試験領域の色を対比することにより、試料中のインフルエンザウイルス抗原の存在を目視により判定することができる。この分析方法は感度が高い上に、特殊な器具・機材を必要とせず、簡便・迅速に結果が得られることから広く用いられている。
【0004】
フロースルー式検出装置においては、検体を直接メンブラン上に添加せず、一旦検体を貯めることのできる容器に添加し、該容器内で被分析物質と標識試薬の複合体を濃縮し、なおかつ検体の該容器からメンブランへ移動して吸収される際の流速等を検体が移動する開口部の形状、大きさによりあるいは適当なフィルターにより制御し得る、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有しているものがあった。
【0005】
しかし、一般に市販されているフロースルー式検出装置による免疫測定法のうち、流量制御および/または濃縮手段を備えた製品(テストパックRSV、ディレクティジェン等)ではその流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を取り外すまでその判定を行うことが困難であったり、流量制御および/または濃縮手段を取り外した後にも多段の操作ステップを要したりするものが殆どであった。一方、流量制御および/または濃縮手段を具備しないフロースルー式検出装置も市販されてはいるが(森永の妊娠診断薬、海外のHCV診断薬)、これら製品では試料・試薬の効果的濃縮効果を期待できないばかりでなく、これら液体成分の吸収時間制御も固相支持体であるメンブレン及び吸収帯これに付随する多孔性部材にのみ依存しているため、測定対象によっては充分な性能(検出感度)を達成できない場合があった。
【0006】
また、流量制御および/または濃縮手段を備え、操作性を改善させた改良されたフロースルー式検出装置も入手可能となっているが(クイックS-インフルA・B「生研」)、流量制御および/または濃縮手段の存在により測定途中で試験領域を目視することができず、試料・試薬が全量吸収し終わるまで途中経過の確認や判定が困難であった。
【0007】
【特許文献1】特許第1774328号公報
【特許文献2】特許第1889525号公報
【特許文献3】特許第2590059号公報
【特許文献4】特許第2095891号公報
【特許文献5】特許第2131938号公報
【特許文献6】特許第3304350号公報
【特許文献7】特許第1963966号公報
【特許文献8】特許第2133513号公報
【特許文献9】特許第2135865号公報
【特許文献10】特許第3114531号公報
【特許文献11】特許第1879967号公報
【特許文献12】特許第2818191号公報
【特許文献13】特許第2035586号公報
【特許文献14】特開昭57-200862号公報
【特許文献15】特開昭59-170768号公報
【非特許文献1】Guide to Diagnostic Rapid Test Device Components",2 nd edition,published by Schleicher &Schuellcompany,January 2000,Edited by Lisa Vickers,p6- 8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置を用いた免疫測定法において、試料・試薬の濃縮効果を維持したまま、試験の途中経過を観察することが可能である、免疫診断装置、及びこれを用いたキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有したフロースルー式検出装置においてその流量制御および/または濃縮手段を捕捉試薬を含む試験領域とこれを含む固相支持体を透過して視認できる透明の樹脂、もしくは試験領域を含む固相支持体と同調の色の樹脂から成型することにより前記課題が達成されることを見いだし、本発明を完成した。すなわち本発明は、透明樹脂または固相支持体と同調の色の樹脂から成型される流量制御および/または濃縮手段を組み合わせたフロースルー式検出装置に関する。
【0010】
本発明は、上記樹脂が、ABS(アクリルブチルスチレン)、PE(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアロマー)からなる流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を組み合わせたフロースルー式検出装置に関する。
【0011】
本発明は更に、上記樹脂の色が試験領域を含む固相支持体であるフィルターメンブレンと同調の色(例えば白色ニトロセルロースメンブレンフィルター)である流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を組み合わせたフロースルー式検出装置に関する。
【0012】
詳細には、本発明は以下の通りである。
[1] 検体試料中の被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体および被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬を含み、試薬及び試料が固相支持体に移動する流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する免疫測定を行うためのフロースルー式検出装置であって、前記流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく試験領域の着色または非着色を確認することができるフロースルー式検出装置、
[2] 標識試薬が多孔質材料中に含まれ、該多孔質材料が流量制御および/または濃縮手段中に装備される[1]のフロースルー式検出装置、
[3] 標識試薬が多孔質材料中に含まれ、標識試薬を含む該多孔質材料を装備した検体添加用デバイスを含む[1]のフロースルー式検出装置、
[4] 流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく固相支持体上の試験領域および非試験領域の色を同時に目視することができ、試験領域の着色または非着色を非試験領域との対比により確認することができる[1]〜[3]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[5] 流量制御および/または濃縮手段が検出装置と一体となっている[1]〜[4]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[6] 流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される[1]〜[5]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[7] 流量制御および/または濃縮手段が固相支持体と同調の色の樹脂から成型される[1]〜[5]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[8] 流量制御および/または濃縮手段が、ポリスチレン樹脂から成型される[1]〜[7]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[9] フロースルー式検出装置が固相支持体を収納した樹脂製の本体と樹脂製の流量制御および/または濃縮手段から構成されており、本体および流量制御および/または濃縮手段がポリスチレン樹脂から成型される[1]〜[8]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[10] 流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の曲げ弾性率が、装置本体のポリスチレン樹脂の曲げ弾性率と200MPa以上異なることを特徴とする、[9]のフロースルー式検出装置、
[11] 流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の剛性が、装置本体のポリスチレン樹脂の剛性よりも低いことを特徴とする、[9]のフロースルー式検出装置、
[12] 流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部と、その外側構造体との距離が1mm以上である[1]〜[11]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[13] 流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体の色が、淡色である[1]〜[12]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[14] 試薬及び試料を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉によって特定の波長の光が強められる条件に無い、[1]〜[13]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[15] 試薬及び試料を添加後、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体がそれらの間に空気層を形成することなく密着する[1]〜[14]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[16] 流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の断面形状に放物線の一部を含まずまたは放物線の一部を含む場合はその焦点が試験領域に無い[1]〜[15]のいずれかのフロースルー式検出装置、ならびに
[17] 流量制御および/または濃縮手段に陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を比較判定するための着色を備えた[1]〜[16]のいずれかのフロースルー式検出装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、上記流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が捕捉試薬および対照領域を含む試験領域とこれを含む固相支持体を透過して視認できる透明の樹脂、もしくは試験領域を含む固相支持体と同調の色の樹脂から成型されている。透明の樹脂を用いることにより、流量制御および/または濃縮手段を通して捕捉試薬部位の着色を認識することができる。また、同調の色の樹脂を用いることにより、捕捉試薬部位および対照部位の着色部位の認識が、流量制御および/または濃縮手段の色により阻害されることはない。従って、本発明の装置においては、流量制御および/または濃縮手段を取り外すことなく捕捉試薬部位の着色判定を妨げられずに判定することができる。例えば、通常検出を行う場合、検出時間が指定されており、検出時間経過後に流量制御および/または濃縮手段を取り外して着色判定を行っていた。一方、本発明の装置を用いて検出する場合、例えば、検体が強い陽性検体の場合、指定の検出時間が経過する前に陽性であることがわかり、定性的に検出する場合、その時点で検出を完了することができ、検出にかかる時間を節約することができる。また、感染症の検出を行う場合、検体中に細菌やウイルスが存在する可能性がある。このような場合、感染のリスクを抑えるため、流量制御および/または濃縮手段には触れないことが望ましい。本発明の装置を用いた場合、検体を添加した流量制御および/または濃縮手段に触れる必要がないので、感染のリスクを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、検体中の被分析物質を検出する装置であって、フロースルー式検出装置および該装置を用いた被分析物質の検出方法に関する。フロースルー式検出装置は、少なくとも被分析物質を結合捕捉し得る捕捉物質を固定化した膜状の固相支持体を含む。フロースルー式検出法は、まず被分析物質(例:抗原)を捕捉するための捕捉試薬(例:抗体)を固定化したメンブレン(固相支持体)上に、被分析物質を含む検体を検体浮遊液に浮遊させた試料を所定量供すると、試料が固相支持体を通過する際に存在する被分析物質が固相支持体に固定化された捕捉試薬に捕捉され、被分析物質−捕捉試薬複合体を形成する。次に被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬(例:被分析物質に対する酵素標識、不溶性粒状物質)を所定量供すると、捕捉試薬−被分析物質−標識試薬の複合体が捕捉試薬固定化位置(試験領域)に形成される。そして、前記標識試薬を任意の方法(酵素標識の場合、基質を加えて発色反応を起こし、不溶性粒状物質標識の場合、捕捉試薬上に不溶性粒状物質が集積し、該粒状物質の色を認識できる)で検出することで、被分析物質の存在を判定することができる。捕捉試薬を固定化した部位を捕捉試薬部位という。フロースルー式検出方法においては、検体試料が前記固相支持体を横切るように通過する。フロースルー式検出装置は、対照試薬を固定化した対照試薬部位を含んでいてもよい。試験領域とは、固相支持体上の着色し得る領域をいい、捕捉試薬部位および対照試薬部位が含まれる。非試験領域とは着色しない領域をいい、捕捉試薬部位および対照試薬部位以外の部位が含まれる。試験領域と非試験領域における色を対比することにより、該領域が着色したかどうかを視覚により認識することができる。この場合試験領域と非試験領域等を同時に目視して、両者の色を比較することにより判定が容易になる。
【0015】
本発明のフロースルー式検出装置は、検体試料および試薬の流量制御および/または濃縮手段を有する装置である。図1に流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の構成および、該装置による本発明の方法の概要を示す。本発明のフロースルー式検出装置は、本体と流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段からなり、本体と流量制御および/または濃縮手段を嵌合させること等により、結合一体化して用いられる。本体の材質、形状等に制限はないが、樹脂製の容器(ハウジング)中に、少なくとも被分析物質を結合捕捉し得る捕捉物質を固定化した膜状の固相支持体が収納されている。該樹脂製ハウジングと樹脂製の流量制御および/または濃縮手段とを嵌合等させて用いる。例えば、図1に示すように、ハウジング中に固相支持体を収納する。ハウジングの上部分には、開口部があり、該開口部部分に、固相支持体の試験領域が露出される。流量制御および/または濃縮手段の一部が該開口部に近接または接触するように結合する。
【0016】
また、本発明のフロースルー式検出装置の検体試料および試薬の流量制御および/または濃縮手段は、フロースルー式検出装置にあらかじめ装着されて検出装置本体と一体となっていても良い。ここで、「検出装置本体と一体となっている」とは、流量制御および/または濃縮手段が取り外し不可能にまたは取り外し困難に装置本体と結合していることをいう。本発明の装置においては、流量制御および/または濃縮手段を取り外すことなく結果を判定することができるので、従来の装置のように、結果を判定する際に流量制御および/または濃縮手段を取り外す必要がない。例えば、流量制御および/または濃縮手段を装置本体と一体成型してもよいし、別々に成型した後に、接着剤等の結合手段を用いて取り外し不可能にまたは困難に結合させてもよいし、流量制御および/または濃縮手段の嵌合部分の構造を、例えば嵌合したときの嵌合の強さが大きくなるように、流量制御および/または濃縮手段の嵌合部分と装置本体の取り外しが困難なようにしてもよい。ここで、取り外し困難とは、通常の使用状態では取り外すことを想定しておらず、自然に外れることがなく、取り外すのに大きな力を必要とすることをいう。
【0017】
ここで、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段とは、固相支持体に供給する検体試料および試薬が固相支持体に流れるときの流量を制御し、および/または固相支持体に流れる検体試料と試薬を濃縮して、固相支持体上の捕捉試薬上での、捕捉試薬-被分析物質-標識試薬の複合体の形成効率を高めるための手段をいう。該流量制御および/または濃縮手段は、検体試料の流量制御機能および/または試薬及び試料の濃縮機能を有する部材からなる。このような機能を有する部材としては、検体試料を添加して、一旦検体試料を貯めておくことができる容器状のアダプターが挙げられる。該アダプターはフロースルー式検出装置において、捕捉試薬等を固定化した固相支持体の上方に位置するように設けられており、容器下部に容器中の液体が通過して、固相支持体に移動する開口部が存在する。開口部はその形状および大きさを変更することにより、容器内の検体試料および試薬が固相支持体に移動する際の流量や速度を調節制御することができる。開口部の形状および大きさには限定はないが、被分析物質や所望の感度、所望の検出時間等に応じて、適宜設計することができる。また、前記容器と固相支持体の間には、フィルターが配置されていてもよい。該フィルターは、検体中に含まれる凝集物や固形物等の不純物を除去できるものならば限定されず、紙製のろ紙、ガラスフィルター、孔径2μm以下(例えば、0.22μm、0.45μm)のメンブランフィルター等を用いることができる。フィルターによっても、容器内の検体試料および試薬がメンブランに移動する速度を制御することができる。この際も、フィルターの厚さやフィルターの孔の大きさ等を変更することにより、容器内の検体試料および試薬が固相支持体に移動する速度を制御することができる。この場合、容器状のアダプターおよびフィルターが一体となって流量制御および/または濃縮手段を構成する。容器内の検体試料および試薬が固相支持体に移動する速度を制御することにより、検体試料が固相支持体に吸収される時間を制御し、単位時間当りに固相支持体上の捕捉試薬に接触する検体試料中の被分析物質の量を制御することができ、結局試薬を濃縮したのと同等の効果が得られる。また、濃縮手段内で、検体と標識試薬を混合してもよく、あらかじめ容器内に標識試薬を含ませておけばよい。例えば、検体試料を添加して、一旦検体試料を貯めておくことができる容器アダプター中に、標識試薬を含ませ装備すればよい。この際、装置にあらかじめ標識試薬を装備しておいてもよいし、使用時に標識試薬を装備してもよい。標識試薬は、液体でも凍結乾燥させたものでもよく、またガラス繊維不織布等の適当な多孔質材料に吸収させ、乾燥させ、該多孔質材料を裁断した切片(標識試薬パッド)を入れておいてもよい。この場合、検体試料と標識試薬は、容器内で混合され反応するので、容器から固相支持体に検体試料が移動するときに、検体試料中の被分析物質と標識試薬の複合体が濃縮される。また、標識試薬と検体との混合は、例えば、検体添加用デバイス中で行ってもよい。検体添加用デバイスは、検出装置外の付属部品であり、採取した検体を入れ特定の処理を行うための容器である。該デバイスには、バイアル、シリンジ、チューブ等が含まれる。また、該デバイスは容器だけでなく、検体を検出装置に添加供給する際に検体を濾過するための濾過手段を含んでいてもよい。検体添加用デバイスは、検体を収容する容器部分と容器内の検体を検出装置に添加供給する部分を含む。後者の検体を添加供給する部分は、検体を容器内から排出するためのノズル(開口部)を有する部分を有し、該部分は容器部分の蓋を兼ねることもできる。後者の検体を検出装置に添加供給する部分は、ノズル部分あるいは蓋部分ともいう。また、検体添加用デバイスが濾過手段を含む場合、検体添加用デバイスは濾過フィルターを含むフィルターハウジングからなるノズル部分と容器部分の2つの部品から構成されていてもよい。この場合のフィルターハウジングは、検体をフィルターに通す開口部とフィルターを通過した検体を排出する開口部を有し、両開口部の間にフィルターが存在する。容器は、例えば、検体をフィルターに圧力をかけて通すことができるシリンジ等を用いればよい。検体添加用デバイスが用いられるとき、本発明のフロースルー式検出装置は、該検体添加用デバイスも含む。すなわち、本発明のフロースルー式検出装置は、標識試薬を含むが、標識試薬は装置に含まれていてもよいし、検体添加用デバイスに含まれていてもよい。
【0018】
このように本願発明の装置における流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段は、検体試料中の被分析物質と標識試薬の複合体を濃縮し、固相支持体上の捕捉試薬に到達する検体試料中の被分析物質と標識試薬の複合体の速度を制御し得る。
【0019】
流量制御とは、試薬と試料の混合物を一定時間留めておくことをいう。一般に試薬と試料はその反応に一定の時間を要すが、反応が十分に進む前に固相支持体に流れてしまうと、固体支持体にて期待した反応が起こらずに正しい試験結果が得られない。そこで、流量制御することにより試薬と試料の反応に必要な時間だけ試薬と試料の混合物を留めておき、十分反応を進めることによって正しい試験結果を得ることができる。
【0020】
濃縮とは、固相支持体の所定の範囲のみへ試薬と試料の混合物を通過させることをいう。フロースルー式検出装置は試薬と試料の混合物を固相支持体に通過させてその反応を持って試験結果を判定するものである。一般に、試薬と試料の混合物の量に比して固相支持体の面積が広い場合、固相支持体上の捕捉試薬へ十分な量の被分析物質又は被分析物質−捕捉試薬複合体が供給されないため、試験結果の検出感度が低くなる。そこで、試薬および試料を濃縮することにより固相支持体の所定の範囲のみへ試薬と試料の混合物を通過させることができ、固相支持体上の捕捉試薬へ十分な量の被分析物質又は被分析物質−捕捉試薬複合体が供給されるため、検出感度を高めることができる。
【0021】
なお、本発明において流量は単位時間当りの流量なので、流速という語に置き換え、流速制御手段とよんでもよい。さらに、本発明の流量制御および/または濃縮手段は、流路を制御する機能をも備えている。
【0022】
被分析物質、あるいは試薬の固相支持体への吸収時間調整、及び固相支持体への濃縮効果を向上させるため、結果として被分析物質の検出感度を向上させるために、上記のような流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置としてベクトン・ディキンソン社ディレクティジェンシリーズ、デンカ生研インフルA・B―クイック「生研」、デンカ生研クイックS-インフルA・B「生研」、アボット社テストパックRSV等がある。これら従来の、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する装置において、流量制御および/または濃縮手段を構成する部品は通常非透明な着色樹脂から成型される。流量制御および/または濃縮手段は捕捉試薬が固定化された固相支持体を覆う形で、固相支持体上に設けられるため、従来の装置において、検出の結果を判定するためには、流量制御および/または濃縮手段を取り外す必要があった。流量制御手段下部の開口部に適合させる形状で捕捉試薬部位が存在する装置もあり、この場合、捕捉試薬部位に表れる色の変化等を開口部を通して目視することも可能であるが、実際には流量制御および/または濃縮手段の色と捕捉試薬部位の色とのコントラストが不鮮明で正確な判定は困難であった。
【0023】
本発明においては、上記流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂で成形されており、あるいは、試験領域を含む固相支持体と同調の色の樹脂から成型されている。透明の樹脂を用いることにより、流量制御および/または濃縮手段を通して捕捉試薬部位の着色を認識することができる。また、同調の色の樹脂を用いることにより、捕捉試薬部位の着色部位の視覚による認識が、流量制御および/または濃縮手段の色により阻害されることはない。従って、本発明の装置においては、流量制御および/または濃縮手段を取り外すことなく捕捉試薬部位の着色判定を妨げられずに検出結果を得ることができる。例えば、通常検出を行う場合、検出時間が指定されており、検出時間経過後に流量制御および/または濃縮手段を取り外して着色判定を行っていた。一方、本発明の装置を用いて検出する場合、例えば、検体が強い陽性検体の場合、指定の検出時間が経過する前に陽性であることがわかり、定性的に検出する場合、その時点で検出を完了することができ、検出にかかる時間を節約することができる。また、感染症の検出を行う場合、検体中に細菌やウイルスが存在する可能性がある。このような場合、感染のリスクを抑えるため、検体を添加した流量制御および/または濃縮手段には触れないことが望ましい。本発明の装置を用いた場合、検体を添加した流量制御および/または濃縮手段に触れる必要がないので、感染のリスクを減少させることができる。
【0024】
「透明」とは、物体の属性の一つであり、物体が光等の輻射線を通すことをいい、有色透明と無色透明がある。本発明においては、無色透明が望ましい。透明な樹脂としては、ABS(アクリルブチルスチレン)、PE(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアロマー)等が挙げられ、本発明の装置の流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段は、これらの樹脂を適宜組合せて構成することができる。
【0025】
流量制御および/または濃縮手段の透明の程度としては全光線透過率(2mmt)で80%以上が望ましいが、これに限定されるものではない。全光線透過率は、例えば、ASTM-D1003(American Society of Testing Material アメリカ材料試験協会の規格)またはJIS7105-1981にて測定することができる。
【0026】
従来は樹脂として、フロースルー式検出装置本体、及びその流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段ともに高衝撃性一般汎用グレードを使用していた。この組合せで組み立てる場合、本体と流量制御および/または濃縮手段の嵌合部分の構造(本体側の爪構造)が破損し、機能を果たさなくなる(嵌合が損なわれる)場合があった。これを解決するためにアダプター側の樹脂を本体側の樹脂よりも弾性率の低い(例えば本体樹脂の曲げ弾性率;2350MPa、電化ABSGR-2000等に対し、濃縮機構樹脂の曲げ弾性率;1950MPa、電化透明ABS;TE-30など)ものを使用することで、嵌合部分の構造の破損を回避可能となった。また、従来の状況では機械による自動組立が困難であったが(機械的な力で部品をはめ込むと爪が破損しやすい)、本方法を採ることにより、自動化も可能となった。このように、流量制御および/または濃縮手段側に使用する樹脂は本体樹脂よりも剛性が低いことが望ましい。例えば、流量制御および/または濃縮手段の曲げ弾性率が低ければ良いが、低すぎても成型時の樹脂の収縮等により嵌合が損なわれるため1500MPa以上は必要である。流量制御および/または濃縮手段の樹脂と本体の樹脂の曲げ弾性率の差は、200MPa以上であることが好ましい。
【0027】
流量制御および/または濃縮手段の樹脂の色は、上述のように、試験領域となる固相支持体である白色ニトロセルロースメンブレンフィルター等のフィルターメンブレンと同調であってもよい。ここで、同調とは色調が類似していることをいう。物を見る際に知覚される色で最も一般的であるのは、物体の表面からの反射光による表面色(surface color)である。この表面色は赤、黄、緑といった有彩色と、白、黒といった無彩色がある。有彩色は赤系統、黄系統、青系統など、いくつかの色あいごとに区別することができる。網膜に達する光の波長に従って決定されるこの色あいの基本的な相違を色相(hue)という。有彩色、無彩色ともに、光の輝度が変化すると色の明るさの度合いも変化するが、それを明度(lightness)という。また、有彩色においてはその色相の色味の含み方によって、鮮やかで冴えた色もあれば、渋く濁った色もある。この色つきの純粋さの度合いを彩度(chromatic value、あるいは飽和度:saturation)という。これらは色の三つの基本的な性質であり、色の3属性と呼ばれる。しかしながら厳密に3属性の分類に従って色を心理的に知覚するのではない。色の印象は明度と彩度の両感覚を含んだ色の性質に基づいており、それが色調(color tone)である。ここで、実質的に同調の色とは、ヒトの視覚で差違を認識できない程度の差違しかない色調を有する色をいい、数人のパネリストに異なる色と認識し得るか否かの官能試験を行った場合に、多くのパネリストが異なる色と認識できない色をいう。例えば、メンブランとして白色のニトロセルロースメンブラン、流量制御手段としてABS樹脂を用いる場合、流量制御手段の色は、例えばクリーム(例えば、UMG ABS カラーコードB)、ベージュ(同E)、ホワイト(同W)またはこれらと実質的に同調の色を採用すればよい。本発明においては、メンブラン上に捕捉試薬が固定化され、該試薬上で、捕捉試薬-被分析物質-標識試薬の複合体が形成されることにより、標識試薬が集積し標識試薬の色を視覚により認識することができる。メンブランとして、例えば白色のニトロセルロースメンブランが用いられ、標識試薬の標識物質として例えば、赤色の金コロイド等が用いられる。この場合、白色のメンブラン上に赤色の金コロイドが集積するため、赤色を視覚により明りょうに認識することができる。流量制御および/または濃縮手段は、図1に示すように開口部を有し、該開口部分と捕捉試薬部分が重なるように、装置本体に配置される。流量制御および/または濃縮手段が濃い色に着色されている場合、開口部を通して捕捉試薬部位の色を認識しようとしても、流量制御および/または濃縮手段の色と捕捉試薬の色のコントラストが明りょうでないので、色の濃さを正確に認識することができない。流量制御および/または濃縮手段を取り外せば、メンブランの色と標識物質の色のコントラストにより標識物質の色を認識し得る。流量制御および/または濃縮手段の色がメンブランの色と同調である場合、流量制御および/または濃縮手段の開口部を通して視覚で認識できる標識試薬の色と流量制御および/または濃縮手段の色のコントラストが大きく、流量制御および/または濃縮手段を装置本体に設置したままでも、標識試薬の色を認識することができる。メンブランに白色のニトロセルロースメンブランを用いた場合、同調の色とは白または白に近い色であり、薄いグレー、クリーム色等が挙げられる。この場合、透明、不透明は問わない。
【0028】
本発明の流量制御および/または濃縮手段は、流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部と外側構造体との距離を0.5mm以上、好ましくは1mm以上備えることで、流量制御および/または濃縮手段とその外側構造体の間隙から光が装置内部に進入することができ、試験領域および/または非試験領域に十分な光を供給でき、着色判定を正確に行うことができる。ここで、流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部とは、流量制御および/または濃縮手段の容器状の試薬及び試料を添加する部分の外側をいい、外側構造体とは、流量制御および/または濃縮手段が装着される装置本体部分であって、流量制御および/または濃縮手段を囲む構造体部分をいう。外側構造体と流量制御および/または濃縮手段の位置関係は、図2に示すような関係にある。図2中、流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部とその外側構造体との距離とは、流量制御および/または濃縮手段の上部端と外側構造体の間の距離をいう。図2においては、矢印で示される光が、流量制御および/または濃縮手段の上部端と外側構造体の間の間隙を通って進入する様子が示されている。
【0029】
図2は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図である。流量制御および/または濃縮手段7が外側構造体10との距離を0.5mm以上好ましくは1mm以上備えることで光11を固相支持体2に十分に供給することが可能となり、着色判定を正確に行うことができる。
【0030】
また、本発明の流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体の色が、淡色であることが望ましい。ここで言う淡色とは、白色、クリーム色および黄色等の淡い、薄い色のことを言う。図3は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図である。流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体10の色を淡色とすることで、上部からの光11は外側構造体に反射して固相支持体2に十分供給可能となり、着色判定を正確に行うことができる。
【0031】
また、本発明の流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される場合、試薬と試料の混合物を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御手段上面の反射光による光の干渉によって特定の波長の光が強められる条件に無いことが望ましい。流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉が起こると、特定の色が発色して非試験領域の色調を正確に確認できなくなるからである。
【0032】
図4は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図(図2)のa部を拡大した説明図である。流量制御および/または濃縮手段7の厚さをdとする。
【0033】
空気中の光の波長をλ1、屈折率をn1=1とし、流量制御および/または濃縮手段の材料樹脂中の光の波長をλ2、屈折率をn2とすると、λ1=n2λ2・・・Iと表せる。n1<n2であるため、流量制御および/または濃縮手段上面では光は固定端反射するため反射波の位相は逆転する。また、試薬と試料の混合物を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体の間は試薬と試料の混合物で満たされ、この部分での光の屈折率は流量制御手段の材料樹脂の屈折率より小さいため、流量制御および/または濃縮手段下面では光は自由端反射し、反射波の位相は変わらない。従って、光が強めあう条件は流量制御および/または濃縮手段の厚さをdとすると、2d=(m+1/2)λ2、(m=0,1,2,3・・・)である。λ1=n2λ2(式I)より、2n2d=(m+1/2)λ1、(m=0,1,2,3・・・)が求まる。これが光の強めあう条件である。可視光線の波長領域約400nm〜800nmにおいて、この条件に合致しないように樹脂の屈折率n2および厚さdを選択することで、流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉せずに特定の色の発色を避けることが可能となり非試験領域の色調を正確に確認できる。
【0034】
さらに、本発明の流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される場合、試薬及び試料を添加後、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体の間に空気層を形成することなく密着することが望ましい。図5は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図(図2)のa部を拡大した説明図である。試薬及び試料を添加後、流量制御手段下面と固相支持体の間に空気層12が形成されると、非試験領域の色調を正確に確認できなくなる。これは空気層によって空気層の存在する位置に相当する固相支持体、非試験領域からの光が正確に届かなくなるからで、その原因として空気層が流量制御および/または濃縮手段下面に存在することによる鏡面反射や空気層を原因とする光の干渉、また、それらの現象の複合的な組合せによるものと考えられる。空気層を形成しないようにするためには、流量制御および/または濃縮手段の底面が装置本体に含まれる固相支持体に密着するようにする。このためには、流量制御および/または濃縮手段を装置本体に装着したときに、流量制御および/または濃縮手段の底面が固相支持体の流量制御および/または濃縮手段の底面と完全に接触することが望ましい。例えば、流量制御および/または濃縮手段を装置本体に装着したときに流量制御および/または濃縮手段の底面が、上から圧力をかけない場合の固相支持体が位置する平面よりも0から0.5mm程度装置の下方向に位置していることが望ましい。この場合、流量制御および/または濃縮手段の底面が固相支持体を下方向に抑えつけることになるが、固相支持体の下部には、比較的柔軟な材料でできている吸収部位またはスペーサーが存在するので、固相支持体が破壊されるようなことはない。また、流量制御および/または濃縮手段の底面が装置本体に含まれる固相支持体に密着するようにするためには、流量制御および/または濃縮手段が装置本体と確実に係合あるいは嵌合している必要がある。例えば、嵌合の場合、限定はされないが、嵌合方式として3点爪嵌合や面嵌合等を採用すればよい。
【0035】
また、本発明の流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部は、その断面形状に放物線の一部を含まず、または放物線の一部を含む場合はその焦点が試験領域に無いことが望ましい。図6は流量制御および/または濃縮手段に放物線の一部を含み、その焦点が試験領域にある場合を上部から見た説明図である。光11が試験領域に集中するとその周辺と明暗に差ができてしまうため、正確な判定ができない。
【0036】
加えて、本発明の流量制御および/または濃縮手段は陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を判定するための着色を備えていてもよい。図7は流量制御および/または濃縮手段に陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を判定するための着色を備える装置を上部から見た説明図である。着色は、例えば流量制御および/または濃縮手段の開口部を有する部分であって、該手段を装置本体に装着したときに上部から見える面に備わっていればよく、例えば、開口部と隣り合って備わっていればよい。着色13は、陽性の判定の閾値となる色(判定色)を予め備えておくことで試験結果を的確に行うためのものである。判定色との比較を行い、判定色との色の彩度の高低および/または明度の明暗によって陽性/陰性を判定する。判定色は複数備えても良く、例えば、陽性の程度を判定するために用いてもよい。
【0037】
本発明の装置を用いる検出方法においてはまず、被分析物質の定性及び定量分析を行う目的の検体をその被分析物質と被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬が特異的結合反応を起こしやすい状態に処理をすることが望ましい。処理方法は酸・塩基等各種化学薬品等を用いた化学的処理方法でも良いし、加熱・撹拌・超音波等を用いた物理的処理方法のどちらでも構わず、またその両方法を用いても良い。具体的には被分析物質は検体中において、微生物や細胞などの生体由来マトリックスに存在する場合が多いので、検体を酸溶液、塩基溶液、界面活性剤溶液、変性剤溶液または緩衝液に浮遊し、撹拌または加熱によって微生物及び細胞マトリックスを破壊して、被分析物質を抽出する。次に浮遊液を被分析物質と被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬が特異的結合反応を生じやすいようpHを調節したり、あるいは無機塩類の添加濃度を調整したり、特異反応を増強する界面活性剤や高分子ポリマー、塩基性化合物等の添加剤や非特異反応を軽減する界面活性剤や高分子ポリマー、塩基性化合物等の添加剤を加える。本発明の検出装置において、検体を処理する処理液として、例えば特開2003-279577号公報に記載の検体浮遊液組成物が挙げられる。もし被分析物質が検体中において、被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬と特異的結合反応を起こしやすい状態であれば、検体を特異的結合反応を生じやすい浮遊液に浮遊するのみでも構わないし、検体をそのまま使用しても差し支えはない。この一連の検体処理は検体添加デバイス(検体滴下用容器)で行うと、操作がより簡便となる。
【0038】
本発明の方法において分析しようとする被分析物質は、限定されないが通常は抗原または抗体である。検体も限定されず、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、汗、粘膜擦過物等の生体試料の他、肉、植物等の食物の抽出物等が含まれる。被分析物質に結合するリガンドは、典型的には被分析物質が抗原の場合は、該抗原に特異的に結合する抗体、被分析物質が抗体の場合は該抗体が特異的に結合する抗原であり、その他、被分析物質-リガンドの組合わせとして、受容体-リガンド、リガンド-受容体等の組合わせが挙げられる。標識試薬とは、前記リガンドと適当な標識物質を結合させたコンジュゲートであり、標識物質として、金コロイド等の金属コロイド、セレニウムコロイド等の非金属コロイド、着色樹脂粒子、染料コロイド及び着色リポソーム等の不溶性粒状物質やアルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等の発色反応を触媒する酵素、蛍光色素、放射性同位体等が挙げられる。
【0039】
次に上述の方法で処理された検体試料を捕捉試薬を固定化した固相支持体上に供する前に前記標識試薬と接触させ混合することにより、前記標識試薬−前記被分析物質の複合体を形成させる。本発明の装置においては、例えば流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段は検体試料を一旦貯めておく容器状のアダプターであり、この場合該アダプター中で複合体を形成させてもよい。アダプターの下部には、開口部があり、該開口部を通して、検体試料および標識試薬は複合体を形成しながら、固相支持体に供給される。標識試薬と検体試料との接触は、アダプターに添加する前に行わせてもよい。
【0040】
検体中に被分析物質が含まれる場合、検体と標識試薬を接触させることにより、検体と標識試薬が混合し混合物ができる。検体と標識試薬の混合物は、被分析物質と標識試薬の混合物を含み、さらに被分析物質と標識試薬の複合体を含む。試料は被分析物質と被分析物質に特異的に結合するリガンドが特異的結合反応を起こしやすいよう上述の方法で処理してあり、また前記標識試薬は前記被分析物質に対して過剰量を接触させるので、前記被分析物質の多くは前記標識試薬のみと効率的に前記複合体を形成する。ここで、捕捉試薬とは被分析物質と特異的に結合する物質であり、捕捉試薬-被分析物質の関係は、前述の被分析物質-標識試薬との関係と同様に、抗原-抗体、抗体-抗原、受容体-リガンド、リガンド-受容体等であり得る。捕捉試薬と標識試薬は同じ物質でもよいが、被分析物質中に該物質と結合する部位が一つしか存在しない場合は、標識試薬−被分析物質−捕捉試薬複合体が形成されない。従って、この場合捕捉試薬と標識試薬はそれぞれ被分析物質の異なる部位に結合する必要がある。固相支持体は毛管現象により試料検体が吸収され流動し得るものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、支持体はニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。固相支持体は、任意の大きさの膜状の支持体であり、膜に捕捉試薬が固定化され、膜上に捕捉試薬領域が設定される。前記捕捉試薬の固相支持体への固定化は、吸着による方法、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基等の官能基を利用して化学的に結合させる方法等、公知の方法で行えばよい。
【0041】
次に前記被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体上に前記標識試薬−前記被分析物質の複合体を含む検体と標識試薬の混合試料を供して、標識試薬−被分析物質−捕捉試薬複合体を形成させる。本発明の装置においては、検体および標識試薬は混合物として流量制御および/または濃縮手段であるアダプターに添加され、あるいはアダプター内で混合され複合体を形成する。複合体を含む混合物はアダプター下部の開口部を通して、固相支持体上に供給される。このとき、開口部の形状や大きさにより、あるいはアダプター下部の開口部と固相支持体の間にフィルターを設けることにより、供給される速度が制御される。この際、フロースルー式検出法においては、標識試薬−前記被分析物質の複合体は、捕捉試薬が固定化された固相支持体を通過する際に捕捉試薬に捕捉され、標識試薬−被分析物質−捕捉試薬複合体が形成される。固相支持体に捕捉された標識試薬の存否を検出することで被分析物質の存在を判定することができる。被分析物質と標識試薬が固相支持体と分離した部位で予め接触するよう構成してあるので、被分析物質と標識試薬が十分接触し複合体を形成している。
【0042】
そのため、試料を、捕捉試薬を固定化した固相支持体に添加する動作を行うだけで標識試薬−被分析物質−捕捉試薬の複合体の形成を簡便且つ迅速に行うことができ、被分析物質の検出(アッセイ)を実施できる。
【0043】
本発明の方法に用いる検出装置は、さらに、対照用試薬を含んでいてもよく、さらに検体添加部や吸収部を含んでいてもよい。対照用試薬を含んだ部位を対照部位といい、試験領域に含まれる。対照用試薬は限定されないが、例えば標識試薬中のリガンドが結合する物質を用いることができる。対照用試薬は、フロースルー式検出法においては、膜上の捕捉試薬とは異なる部位に固定化すればよい。検体添加部は、一旦検体と標識試薬の混合物を吸収し、次いで吸収した混合物を捕捉試薬が固定化された固相支持体に供給するための部分である。該検体添加部は、一定量の液体を吸収できるような多孔質材料でできていることが望ましく、例えば、ガラス繊維やポリスチレンでできた不織布を用いればよい。吸収部位は、捕捉部を通過した検体を吸収することにより、検体の流れを制御する液体吸収性を有する部位である。フロースルー式検出法においては、例えば捕捉試薬を固定化した膜の下部に設ければよい。吸収部位は例えば紙製のものをアブソーベントパッドとして用いればよい。さらに、固相支持体と吸収部位の間にスペーサーを備えていてもよい。ここで、スペーサーは検体試料が吸収部位に到達するように、液体透過性または液体吸収性である必要があるが、材質に関するその他の限定はなく、また機能も限定されない。例えば、ろ紙を用いることができ、液体透過性や液体吸収性を調節することにより検体試料が吸収部位に吸収される速度を制御することができ、流量制御および/または濃縮手段とともに流量を制御する機能をもたせることができる。また、スペーサーに厚みのある材質を用いれば、固相支持体を流量制御および/または濃縮手段の底面に押し付けることができ、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体の間に空気層を形成することを防止できる。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例中、比較のために、市販のクイックS-インフルA・B「生研」を用い、アダプター部分を新たに成型したものを本発明の装置として用いた。
【0045】
実施例1 フロースルー式検出装置を用いたA型インフルエンザウイルスの検出
(1)金コロイド抗体の調製
10mLの金コロイドを取り、100mM炭酸カリウムでpHを7.0に調製する。2mMホウ酸溶液で透析、遠心分離し精製した抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を2mMホウ酸溶液で100μg/mLの濃度になるように調製する。調製した抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の最終濃度が10μg/mLとなる量を十分撹拌させながら金コロイドに加える。5分後10%BSAを1mL加え、穏やかに10分間ローテーターで撹拌する。全量を遠心管に移し、14000rpm、30分、4℃で遠心する。遠心後上清を吸引廃棄し、沈殿している金コロイドと抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の感作されたものに、最終濃度が10mMトリス塩酸緩衝液、1%BSA、150mM塩化ナトリウムを含む溶液1mLで浮遊する。
【0046】
(2)金コロイド抗体の乾燥化
前項で作製した金コロイド抗体を陽圧噴霧装置(BioDot社製、BioJet)を用いて8.0OD520、10μL/cmの速度、及び量で10mmx300mmのポリスチレン不織布に噴霧する。次いで減圧装置内で1時間減圧乾燥し、乾燥金コロイド抗体パッドとした。使用時には7mm間隔で裁断し、用いた。
【0047】
(3)診断用メンブレンフィルターへの抗体の固定化、検出装置の作製
ニトロセルロースフィルターへの抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(マウス)の固定化を例に説明する。
【0048】
プロテインAカラムでアフィニティー精製した抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(マウス)を用意する。抗体が浮遊されている緩衝液をSephadexG-25ゲル濾過カラムを用いて0.1%トレハロース加10mMクエン酸緩衝液(pH4.0)に置き換える。
【0049】
280nmでの吸光度が1.0となるように0.1%トレハロース加10mMクエン酸緩衝液(pH4.0)で希釈し、適量を(例えばフロースルー検出(診断)装置の場合10μL/装置(デバイス)となるように)検出装置に装着したニトロセルロース上に滴下、次いで45℃、40分間静置、乾燥する。
【0050】
(4)検出方法(デバイス側に検出試薬を組み込む形式)
(2)で作製したパッドを予め検出装置(デバイス)の流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段(アダプター)上に、試験領域及びサンプルの吸収領域を遮らないよう、且つ外れないように組み込んでおき(図1B)、ここにA型インフルエンザウイルスを含むと思われるサンプル500μLを試料濾過フィルターで濾過して全量滴下する。液が膜部材に全て吸収された後、抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を吸着させた部分の膜部材が金コロイドの色(例えば、赤色〜赤褐色)に着色していれば、サンプル中にA型インフルエンザウイルスが存在していると確認される。色調の変化がなく膜部材の色のままであれば、サンプル中にA型インフルエンザウイルスが存在していないことになる。
【0051】
流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が非透明の着色樹脂で成形された従来装置と、流量制御および/または濃縮手段が無色透明樹脂または固相支持体と同調の色である白色もしくはクリーム色の樹脂で成形された本発明装置で検出を行った結果を表1および2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
上記データはN=2回の測定の平均値を示した。
強陽性検体では従来法と本発明による方法とで時間的な有意差は見られなかった。
【0055】
中陽性検体を試験した場合、従来の方法では、アダプター装着状態で陽性と判定できるまでの所要時間が8分以上要したが、改良のアダプターでは6から7分台、透明のアダプターでは5分で陽性と判定することが可能となり、最大で3分以上、4分程度の時間短縮が可能となった。
【0056】
上記以外でアダプターを透明化することにより、より広角に外部の光を取り入れることができるようになり、試験領域の視認性が向上するというメリットも確認された。
【0057】
迅速、簡便を必要とするPOCT(ポイント・オブ・ケア)では総反応(操作)時間が10分から15分程度というものが多いが、その中において本発明では性能(感度・特異性)を損なうことなく3分以上の時間短縮を達成(結果的に判定までの時間を従来の70%にまで短縮)できた。
【0058】
図8に流量制御および/または濃縮手段が青色非透明の樹脂で成形された従来の装置(右側の装置)と流量制御および/または濃縮手段が無色透明の樹脂で成形された本発明の装置を用いて検出を行った場合の、初速試薬部位の経時的な色の変化を示す。流量制御および/または濃縮手段である容器状のアダプター下部にニトロセルロースメンブラン上の捕捉試薬部分と同一になるように開口部がある。図中、1つのアダプター下部に菱形の開口部と丸型の開口部が存在するが、この開口部は、ニトロセルロースメンブラン上の捕捉試薬部位と形状、大きさ、位置が適合している。菱形の部位が試験用の捕捉試薬部位であり、丸型の部位が対照用の捕捉試薬部位である。図8A〜図8Cは、検体試料添加後、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分経過後の結果、および、8分経過後にアダプターを取り外した状態を示す。図に示したように、従来の装置では、6〜8分経過後には、捕捉試薬部位が強く着色しているにもかかわらず、アダプターの色により捕捉試薬部位の着色の認識が阻害される。一方、本発明の装置を用いた場合、対照部位は1分経過後には着色を認識できる。すなわち、測定開始後すぐに、検出が首尾よく進行していることを確認することができる。また、2〜5分経過後には試験領域において、着色を認識できる。すなわち、検出が定性的である場合、この時点で陽性であると判定することができる。
【0059】
図9から図11に本実施例で用いたフロースルー式検出装置の図を、図12に、本体と流量制御および/または濃縮手段が一体となったフロースルー式検出装置の図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー装置を示す図である。図1Aは、フロースルー式検出装置の本体装置を示し、図1Bは、標識試薬を含む流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を示し、図1Cは、標識試薬を検体添加用デバイスに組み込んだ検出装置を示す。さらに、図4Dおよび図4Eは、標識試薬を含む流量制御および/または濃縮手段の俯瞰図を示す。
【図2】流量制御および/または濃縮手段の断面を示す図であり、外部構造体と流量制御および/または濃縮手段の間を通り流入する光の経路を示す図である。
【図3】流量制御および/または濃縮手段の断面を示す図であり、外部構造体に反射して流入する光の経路を示す図である。
【図4】流量制御および/または濃縮手段の断面の底部分を示す図である。
【図5】流量制御および/または濃縮手段の断面の底部分を示す図であり、空気層の存在を示す図である。
【図6】流量制御および/または濃縮手段に放物線の一部を含み、その焦点が試験領域にある場合の光の経路を上部から見た図である。
【図7】陽性、陰性または陽性の程度を判定するための着色を備える流量制御および/または濃縮手段を示す図である。
【図8A】従来装置と本発明の装置を用いた検出の結果を示す図である。
【図8B】従来装置と本発明の装置を用いた検出の結果を示す図である。
【図8C】従来装置と本発明の装置を用いた検出の結果を示す図である。
【図9】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の装置本体を示す図である。
【図10】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を示す図である。
【図11】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の装置本体に流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を組み込んだ検出装置を示す図である。
【図12】流量制御および/または濃縮手段があらかじめ装着されて一体となっているフロースルー式検出装置を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 検出装置
2 固相支持体
3 スペーサー
4 吸収部位
5 検体試料
6 標識試薬
7 流量制御および/または濃縮手段
8 開口部(試料通過部)
9 捕捉試薬部位
10 外側構造体
11 光
12 空気層
13 着色
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原または抗体を検出するための免疫測定法において固相支持体を含むフロースルー式検出装置であって、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を備え、且つその流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が捕捉試薬部位および対照部位である試験領域の着色・非着色を捕捉試薬部位および対照部位以外の非試験領域との対比により試験終了以前に確認可能となる機能を備えることを特徴とするフロースルー式検出装置、並びにそれを用いた免疫測定法及び免疫測定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫反応の特異性を利用して試料中の分析対象物を免疫学的手法により検出または定量する分析方法として免疫拡散法、酵素免疫測定法、凝集法等種々の方法論が実用化されている。フロースルー式検査法及びイムノクロマトグラフィー式検査法(ラテラルフロー式、タンジェンシャルフロー式)は、メンブランを使用した検査法であり、操作が簡便で一般的な検査の場に普及している。ラテラルフロー式検査法の原理については、種々報告されている(非特許文献1、特許文献1〜9を参照)。また、フロースルー式検査法の原理についても種々報告されている(非特許文献1、特許文献10〜15参照)。
【0003】
インフルエンザウイルス抗原の検出を例に、この分析法について簡単に説明する。インフルエンザウイルス抗原を捕捉するための捕捉試薬(例えば、抗インフルエンザウイルス抗体)を固定化したメンブラン上に、患者から採取した検体(咽頭・鼻腔拭い液、鼻腔吸引液等)を検体浮遊液に浮遊させた試料を所定量滴下すると、検体液がメンブランを通過する際、存在する分析対象物(インフルエンザウイルス抗原)がメンブランに固定化された捕捉試薬に捕捉される。次いで、例えば酵素、あるいは金コロイド粒子等の不溶性着色粒子で標識化した、分析対象物に結合する検出試薬(例えば、標識化抗体)を所定量滴下すると、捕捉試薬−分析対象物−検出試薬(標識化抗体)の免疫複合体を形成する。その後、前記酵素標識抗体の場合は基質を滴下することにより、不溶性着色粒子を用いた場合はそれ自身が固定化された捕捉試薬上で濃縮され、可視化されることにより免疫複合体が形成された領域を発色させて、着色した試験領域(捕捉試薬部位、対照部位)とそれ以外の着色されていない非試験領域の色を対比することにより、試料中のインフルエンザウイルス抗原の存在を目視により判定することができる。この分析方法は感度が高い上に、特殊な器具・機材を必要とせず、簡便・迅速に結果が得られることから広く用いられている。
【0004】
フロースルー式検出装置においては、検体を直接メンブラン上に添加せず、一旦検体を貯めることのできる容器に添加し、該容器内で被分析物質と標識試薬の複合体を濃縮し、なおかつ検体の該容器からメンブランへ移動して吸収される際の流速等を検体が移動する開口部の形状、大きさによりあるいは適当なフィルターにより制御し得る、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有しているものがあった。
【0005】
しかし、一般に市販されているフロースルー式検出装置による免疫測定法のうち、流量制御および/または濃縮手段を備えた製品(テストパックRSV、ディレクティジェン等)ではその流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を取り外すまでその判定を行うことが困難であったり、流量制御および/または濃縮手段を取り外した後にも多段の操作ステップを要したりするものが殆どであった。一方、流量制御および/または濃縮手段を具備しないフロースルー式検出装置も市販されてはいるが(森永の妊娠診断薬、海外のHCV診断薬)、これら製品では試料・試薬の効果的濃縮効果を期待できないばかりでなく、これら液体成分の吸収時間制御も固相支持体であるメンブレン及び吸収帯これに付随する多孔性部材にのみ依存しているため、測定対象によっては充分な性能(検出感度)を達成できない場合があった。
【0006】
また、流量制御および/または濃縮手段を備え、操作性を改善させた改良されたフロースルー式検出装置も入手可能となっているが(クイックS-インフルA・B「生研」)、流量制御および/または濃縮手段の存在により測定途中で試験領域を目視することができず、試料・試薬が全量吸収し終わるまで途中経過の確認や判定が困難であった。
【0007】
【特許文献1】特許第1774328号公報
【特許文献2】特許第1889525号公報
【特許文献3】特許第2590059号公報
【特許文献4】特許第2095891号公報
【特許文献5】特許第2131938号公報
【特許文献6】特許第3304350号公報
【特許文献7】特許第1963966号公報
【特許文献8】特許第2133513号公報
【特許文献9】特許第2135865号公報
【特許文献10】特許第3114531号公報
【特許文献11】特許第1879967号公報
【特許文献12】特許第2818191号公報
【特許文献13】特許第2035586号公報
【特許文献14】特開昭57-200862号公報
【特許文献15】特開昭59-170768号公報
【非特許文献1】Guide to Diagnostic Rapid Test Device Components",2 nd edition,published by Schleicher &Schuellcompany,January 2000,Edited by Lisa Vickers,p6- 8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置を用いた免疫測定法において、試料・試薬の濃縮効果を維持したまま、試験の途中経過を観察することが可能である、免疫診断装置、及びこれを用いたキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有したフロースルー式検出装置においてその流量制御および/または濃縮手段を捕捉試薬を含む試験領域とこれを含む固相支持体を透過して視認できる透明の樹脂、もしくは試験領域を含む固相支持体と同調の色の樹脂から成型することにより前記課題が達成されることを見いだし、本発明を完成した。すなわち本発明は、透明樹脂または固相支持体と同調の色の樹脂から成型される流量制御および/または濃縮手段を組み合わせたフロースルー式検出装置に関する。
【0010】
本発明は、上記樹脂が、ABS(アクリルブチルスチレン)、PE(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアロマー)からなる流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を組み合わせたフロースルー式検出装置に関する。
【0011】
本発明は更に、上記樹脂の色が試験領域を含む固相支持体であるフィルターメンブレンと同調の色(例えば白色ニトロセルロースメンブレンフィルター)である流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を組み合わせたフロースルー式検出装置に関する。
【0012】
詳細には、本発明は以下の通りである。
[1] 検体試料中の被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体および被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬を含み、試薬及び試料が固相支持体に移動する流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する免疫測定を行うためのフロースルー式検出装置であって、前記流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく試験領域の着色または非着色を確認することができるフロースルー式検出装置、
[2] 標識試薬が多孔質材料中に含まれ、該多孔質材料が流量制御および/または濃縮手段中に装備される[1]のフロースルー式検出装置、
[3] 標識試薬が多孔質材料中に含まれ、標識試薬を含む該多孔質材料を装備した検体添加用デバイスを含む[1]のフロースルー式検出装置、
[4] 流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく固相支持体上の試験領域および非試験領域の色を同時に目視することができ、試験領域の着色または非着色を非試験領域との対比により確認することができる[1]〜[3]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[5] 流量制御および/または濃縮手段が検出装置と一体となっている[1]〜[4]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[6] 流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される[1]〜[5]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[7] 流量制御および/または濃縮手段が固相支持体と同調の色の樹脂から成型される[1]〜[5]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[8] 流量制御および/または濃縮手段が、ポリスチレン樹脂から成型される[1]〜[7]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[9] フロースルー式検出装置が固相支持体を収納した樹脂製の本体と樹脂製の流量制御および/または濃縮手段から構成されており、本体および流量制御および/または濃縮手段がポリスチレン樹脂から成型される[1]〜[8]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[10] 流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の曲げ弾性率が、装置本体のポリスチレン樹脂の曲げ弾性率と200MPa以上異なることを特徴とする、[9]のフロースルー式検出装置、
[11] 流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の剛性が、装置本体のポリスチレン樹脂の剛性よりも低いことを特徴とする、[9]のフロースルー式検出装置、
[12] 流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部と、その外側構造体との距離が1mm以上である[1]〜[11]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[13] 流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体の色が、淡色である[1]〜[12]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[14] 試薬及び試料を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉によって特定の波長の光が強められる条件に無い、[1]〜[13]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[15] 試薬及び試料を添加後、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体がそれらの間に空気層を形成することなく密着する[1]〜[14]のいずれかのフロースルー式検出装置、
[16] 流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の断面形状に放物線の一部を含まずまたは放物線の一部を含む場合はその焦点が試験領域に無い[1]〜[15]のいずれかのフロースルー式検出装置、ならびに
[17] 流量制御および/または濃縮手段に陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を比較判定するための着色を備えた[1]〜[16]のいずれかのフロースルー式検出装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、上記流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が捕捉試薬および対照領域を含む試験領域とこれを含む固相支持体を透過して視認できる透明の樹脂、もしくは試験領域を含む固相支持体と同調の色の樹脂から成型されている。透明の樹脂を用いることにより、流量制御および/または濃縮手段を通して捕捉試薬部位の着色を認識することができる。また、同調の色の樹脂を用いることにより、捕捉試薬部位および対照部位の着色部位の認識が、流量制御および/または濃縮手段の色により阻害されることはない。従って、本発明の装置においては、流量制御および/または濃縮手段を取り外すことなく捕捉試薬部位の着色判定を妨げられずに判定することができる。例えば、通常検出を行う場合、検出時間が指定されており、検出時間経過後に流量制御および/または濃縮手段を取り外して着色判定を行っていた。一方、本発明の装置を用いて検出する場合、例えば、検体が強い陽性検体の場合、指定の検出時間が経過する前に陽性であることがわかり、定性的に検出する場合、その時点で検出を完了することができ、検出にかかる時間を節約することができる。また、感染症の検出を行う場合、検体中に細菌やウイルスが存在する可能性がある。このような場合、感染のリスクを抑えるため、流量制御および/または濃縮手段には触れないことが望ましい。本発明の装置を用いた場合、検体を添加した流量制御および/または濃縮手段に触れる必要がないので、感染のリスクを減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、検体中の被分析物質を検出する装置であって、フロースルー式検出装置および該装置を用いた被分析物質の検出方法に関する。フロースルー式検出装置は、少なくとも被分析物質を結合捕捉し得る捕捉物質を固定化した膜状の固相支持体を含む。フロースルー式検出法は、まず被分析物質(例:抗原)を捕捉するための捕捉試薬(例:抗体)を固定化したメンブレン(固相支持体)上に、被分析物質を含む検体を検体浮遊液に浮遊させた試料を所定量供すると、試料が固相支持体を通過する際に存在する被分析物質が固相支持体に固定化された捕捉試薬に捕捉され、被分析物質−捕捉試薬複合体を形成する。次に被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬(例:被分析物質に対する酵素標識、不溶性粒状物質)を所定量供すると、捕捉試薬−被分析物質−標識試薬の複合体が捕捉試薬固定化位置(試験領域)に形成される。そして、前記標識試薬を任意の方法(酵素標識の場合、基質を加えて発色反応を起こし、不溶性粒状物質標識の場合、捕捉試薬上に不溶性粒状物質が集積し、該粒状物質の色を認識できる)で検出することで、被分析物質の存在を判定することができる。捕捉試薬を固定化した部位を捕捉試薬部位という。フロースルー式検出方法においては、検体試料が前記固相支持体を横切るように通過する。フロースルー式検出装置は、対照試薬を固定化した対照試薬部位を含んでいてもよい。試験領域とは、固相支持体上の着色し得る領域をいい、捕捉試薬部位および対照試薬部位が含まれる。非試験領域とは着色しない領域をいい、捕捉試薬部位および対照試薬部位以外の部位が含まれる。試験領域と非試験領域における色を対比することにより、該領域が着色したかどうかを視覚により認識することができる。この場合試験領域と非試験領域等を同時に目視して、両者の色を比較することにより判定が容易になる。
【0015】
本発明のフロースルー式検出装置は、検体試料および試薬の流量制御および/または濃縮手段を有する装置である。図1に流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の構成および、該装置による本発明の方法の概要を示す。本発明のフロースルー式検出装置は、本体と流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段からなり、本体と流量制御および/または濃縮手段を嵌合させること等により、結合一体化して用いられる。本体の材質、形状等に制限はないが、樹脂製の容器(ハウジング)中に、少なくとも被分析物質を結合捕捉し得る捕捉物質を固定化した膜状の固相支持体が収納されている。該樹脂製ハウジングと樹脂製の流量制御および/または濃縮手段とを嵌合等させて用いる。例えば、図1に示すように、ハウジング中に固相支持体を収納する。ハウジングの上部分には、開口部があり、該開口部部分に、固相支持体の試験領域が露出される。流量制御および/または濃縮手段の一部が該開口部に近接または接触するように結合する。
【0016】
また、本発明のフロースルー式検出装置の検体試料および試薬の流量制御および/または濃縮手段は、フロースルー式検出装置にあらかじめ装着されて検出装置本体と一体となっていても良い。ここで、「検出装置本体と一体となっている」とは、流量制御および/または濃縮手段が取り外し不可能にまたは取り外し困難に装置本体と結合していることをいう。本発明の装置においては、流量制御および/または濃縮手段を取り外すことなく結果を判定することができるので、従来の装置のように、結果を判定する際に流量制御および/または濃縮手段を取り外す必要がない。例えば、流量制御および/または濃縮手段を装置本体と一体成型してもよいし、別々に成型した後に、接着剤等の結合手段を用いて取り外し不可能にまたは困難に結合させてもよいし、流量制御および/または濃縮手段の嵌合部分の構造を、例えば嵌合したときの嵌合の強さが大きくなるように、流量制御および/または濃縮手段の嵌合部分と装置本体の取り外しが困難なようにしてもよい。ここで、取り外し困難とは、通常の使用状態では取り外すことを想定しておらず、自然に外れることがなく、取り外すのに大きな力を必要とすることをいう。
【0017】
ここで、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段とは、固相支持体に供給する検体試料および試薬が固相支持体に流れるときの流量を制御し、および/または固相支持体に流れる検体試料と試薬を濃縮して、固相支持体上の捕捉試薬上での、捕捉試薬-被分析物質-標識試薬の複合体の形成効率を高めるための手段をいう。該流量制御および/または濃縮手段は、検体試料の流量制御機能および/または試薬及び試料の濃縮機能を有する部材からなる。このような機能を有する部材としては、検体試料を添加して、一旦検体試料を貯めておくことができる容器状のアダプターが挙げられる。該アダプターはフロースルー式検出装置において、捕捉試薬等を固定化した固相支持体の上方に位置するように設けられており、容器下部に容器中の液体が通過して、固相支持体に移動する開口部が存在する。開口部はその形状および大きさを変更することにより、容器内の検体試料および試薬が固相支持体に移動する際の流量や速度を調節制御することができる。開口部の形状および大きさには限定はないが、被分析物質や所望の感度、所望の検出時間等に応じて、適宜設計することができる。また、前記容器と固相支持体の間には、フィルターが配置されていてもよい。該フィルターは、検体中に含まれる凝集物や固形物等の不純物を除去できるものならば限定されず、紙製のろ紙、ガラスフィルター、孔径2μm以下(例えば、0.22μm、0.45μm)のメンブランフィルター等を用いることができる。フィルターによっても、容器内の検体試料および試薬がメンブランに移動する速度を制御することができる。この際も、フィルターの厚さやフィルターの孔の大きさ等を変更することにより、容器内の検体試料および試薬が固相支持体に移動する速度を制御することができる。この場合、容器状のアダプターおよびフィルターが一体となって流量制御および/または濃縮手段を構成する。容器内の検体試料および試薬が固相支持体に移動する速度を制御することにより、検体試料が固相支持体に吸収される時間を制御し、単位時間当りに固相支持体上の捕捉試薬に接触する検体試料中の被分析物質の量を制御することができ、結局試薬を濃縮したのと同等の効果が得られる。また、濃縮手段内で、検体と標識試薬を混合してもよく、あらかじめ容器内に標識試薬を含ませておけばよい。例えば、検体試料を添加して、一旦検体試料を貯めておくことができる容器アダプター中に、標識試薬を含ませ装備すればよい。この際、装置にあらかじめ標識試薬を装備しておいてもよいし、使用時に標識試薬を装備してもよい。標識試薬は、液体でも凍結乾燥させたものでもよく、またガラス繊維不織布等の適当な多孔質材料に吸収させ、乾燥させ、該多孔質材料を裁断した切片(標識試薬パッド)を入れておいてもよい。この場合、検体試料と標識試薬は、容器内で混合され反応するので、容器から固相支持体に検体試料が移動するときに、検体試料中の被分析物質と標識試薬の複合体が濃縮される。また、標識試薬と検体との混合は、例えば、検体添加用デバイス中で行ってもよい。検体添加用デバイスは、検出装置外の付属部品であり、採取した検体を入れ特定の処理を行うための容器である。該デバイスには、バイアル、シリンジ、チューブ等が含まれる。また、該デバイスは容器だけでなく、検体を検出装置に添加供給する際に検体を濾過するための濾過手段を含んでいてもよい。検体添加用デバイスは、検体を収容する容器部分と容器内の検体を検出装置に添加供給する部分を含む。後者の検体を添加供給する部分は、検体を容器内から排出するためのノズル(開口部)を有する部分を有し、該部分は容器部分の蓋を兼ねることもできる。後者の検体を検出装置に添加供給する部分は、ノズル部分あるいは蓋部分ともいう。また、検体添加用デバイスが濾過手段を含む場合、検体添加用デバイスは濾過フィルターを含むフィルターハウジングからなるノズル部分と容器部分の2つの部品から構成されていてもよい。この場合のフィルターハウジングは、検体をフィルターに通す開口部とフィルターを通過した検体を排出する開口部を有し、両開口部の間にフィルターが存在する。容器は、例えば、検体をフィルターに圧力をかけて通すことができるシリンジ等を用いればよい。検体添加用デバイスが用いられるとき、本発明のフロースルー式検出装置は、該検体添加用デバイスも含む。すなわち、本発明のフロースルー式検出装置は、標識試薬を含むが、標識試薬は装置に含まれていてもよいし、検体添加用デバイスに含まれていてもよい。
【0018】
このように本願発明の装置における流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段は、検体試料中の被分析物質と標識試薬の複合体を濃縮し、固相支持体上の捕捉試薬に到達する検体試料中の被分析物質と標識試薬の複合体の速度を制御し得る。
【0019】
流量制御とは、試薬と試料の混合物を一定時間留めておくことをいう。一般に試薬と試料はその反応に一定の時間を要すが、反応が十分に進む前に固相支持体に流れてしまうと、固体支持体にて期待した反応が起こらずに正しい試験結果が得られない。そこで、流量制御することにより試薬と試料の反応に必要な時間だけ試薬と試料の混合物を留めておき、十分反応を進めることによって正しい試験結果を得ることができる。
【0020】
濃縮とは、固相支持体の所定の範囲のみへ試薬と試料の混合物を通過させることをいう。フロースルー式検出装置は試薬と試料の混合物を固相支持体に通過させてその反応を持って試験結果を判定するものである。一般に、試薬と試料の混合物の量に比して固相支持体の面積が広い場合、固相支持体上の捕捉試薬へ十分な量の被分析物質又は被分析物質−捕捉試薬複合体が供給されないため、試験結果の検出感度が低くなる。そこで、試薬および試料を濃縮することにより固相支持体の所定の範囲のみへ試薬と試料の混合物を通過させることができ、固相支持体上の捕捉試薬へ十分な量の被分析物質又は被分析物質−捕捉試薬複合体が供給されるため、検出感度を高めることができる。
【0021】
なお、本発明において流量は単位時間当りの流量なので、流速という語に置き換え、流速制御手段とよんでもよい。さらに、本発明の流量制御および/または濃縮手段は、流路を制御する機能をも備えている。
【0022】
被分析物質、あるいは試薬の固相支持体への吸収時間調整、及び固相支持体への濃縮効果を向上させるため、結果として被分析物質の検出感度を向上させるために、上記のような流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置としてベクトン・ディキンソン社ディレクティジェンシリーズ、デンカ生研インフルA・B―クイック「生研」、デンカ生研クイックS-インフルA・B「生研」、アボット社テストパックRSV等がある。これら従来の、流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する装置において、流量制御および/または濃縮手段を構成する部品は通常非透明な着色樹脂から成型される。流量制御および/または濃縮手段は捕捉試薬が固定化された固相支持体を覆う形で、固相支持体上に設けられるため、従来の装置において、検出の結果を判定するためには、流量制御および/または濃縮手段を取り外す必要があった。流量制御手段下部の開口部に適合させる形状で捕捉試薬部位が存在する装置もあり、この場合、捕捉試薬部位に表れる色の変化等を開口部を通して目視することも可能であるが、実際には流量制御および/または濃縮手段の色と捕捉試薬部位の色とのコントラストが不鮮明で正確な判定は困難であった。
【0023】
本発明においては、上記流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂で成形されており、あるいは、試験領域を含む固相支持体と同調の色の樹脂から成型されている。透明の樹脂を用いることにより、流量制御および/または濃縮手段を通して捕捉試薬部位の着色を認識することができる。また、同調の色の樹脂を用いることにより、捕捉試薬部位の着色部位の視覚による認識が、流量制御および/または濃縮手段の色により阻害されることはない。従って、本発明の装置においては、流量制御および/または濃縮手段を取り外すことなく捕捉試薬部位の着色判定を妨げられずに検出結果を得ることができる。例えば、通常検出を行う場合、検出時間が指定されており、検出時間経過後に流量制御および/または濃縮手段を取り外して着色判定を行っていた。一方、本発明の装置を用いて検出する場合、例えば、検体が強い陽性検体の場合、指定の検出時間が経過する前に陽性であることがわかり、定性的に検出する場合、その時点で検出を完了することができ、検出にかかる時間を節約することができる。また、感染症の検出を行う場合、検体中に細菌やウイルスが存在する可能性がある。このような場合、感染のリスクを抑えるため、検体を添加した流量制御および/または濃縮手段には触れないことが望ましい。本発明の装置を用いた場合、検体を添加した流量制御および/または濃縮手段に触れる必要がないので、感染のリスクを減少させることができる。
【0024】
「透明」とは、物体の属性の一つであり、物体が光等の輻射線を通すことをいい、有色透明と無色透明がある。本発明においては、無色透明が望ましい。透明な樹脂としては、ABS(アクリルブチルスチレン)、PE(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PA(ポリアロマー)等が挙げられ、本発明の装置の流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段は、これらの樹脂を適宜組合せて構成することができる。
【0025】
流量制御および/または濃縮手段の透明の程度としては全光線透過率(2mmt)で80%以上が望ましいが、これに限定されるものではない。全光線透過率は、例えば、ASTM-D1003(American Society of Testing Material アメリカ材料試験協会の規格)またはJIS7105-1981にて測定することができる。
【0026】
従来は樹脂として、フロースルー式検出装置本体、及びその流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段ともに高衝撃性一般汎用グレードを使用していた。この組合せで組み立てる場合、本体と流量制御および/または濃縮手段の嵌合部分の構造(本体側の爪構造)が破損し、機能を果たさなくなる(嵌合が損なわれる)場合があった。これを解決するためにアダプター側の樹脂を本体側の樹脂よりも弾性率の低い(例えば本体樹脂の曲げ弾性率;2350MPa、電化ABSGR-2000等に対し、濃縮機構樹脂の曲げ弾性率;1950MPa、電化透明ABS;TE-30など)ものを使用することで、嵌合部分の構造の破損を回避可能となった。また、従来の状況では機械による自動組立が困難であったが(機械的な力で部品をはめ込むと爪が破損しやすい)、本方法を採ることにより、自動化も可能となった。このように、流量制御および/または濃縮手段側に使用する樹脂は本体樹脂よりも剛性が低いことが望ましい。例えば、流量制御および/または濃縮手段の曲げ弾性率が低ければ良いが、低すぎても成型時の樹脂の収縮等により嵌合が損なわれるため1500MPa以上は必要である。流量制御および/または濃縮手段の樹脂と本体の樹脂の曲げ弾性率の差は、200MPa以上であることが好ましい。
【0027】
流量制御および/または濃縮手段の樹脂の色は、上述のように、試験領域となる固相支持体である白色ニトロセルロースメンブレンフィルター等のフィルターメンブレンと同調であってもよい。ここで、同調とは色調が類似していることをいう。物を見る際に知覚される色で最も一般的であるのは、物体の表面からの反射光による表面色(surface color)である。この表面色は赤、黄、緑といった有彩色と、白、黒といった無彩色がある。有彩色は赤系統、黄系統、青系統など、いくつかの色あいごとに区別することができる。網膜に達する光の波長に従って決定されるこの色あいの基本的な相違を色相(hue)という。有彩色、無彩色ともに、光の輝度が変化すると色の明るさの度合いも変化するが、それを明度(lightness)という。また、有彩色においてはその色相の色味の含み方によって、鮮やかで冴えた色もあれば、渋く濁った色もある。この色つきの純粋さの度合いを彩度(chromatic value、あるいは飽和度:saturation)という。これらは色の三つの基本的な性質であり、色の3属性と呼ばれる。しかしながら厳密に3属性の分類に従って色を心理的に知覚するのではない。色の印象は明度と彩度の両感覚を含んだ色の性質に基づいており、それが色調(color tone)である。ここで、実質的に同調の色とは、ヒトの視覚で差違を認識できない程度の差違しかない色調を有する色をいい、数人のパネリストに異なる色と認識し得るか否かの官能試験を行った場合に、多くのパネリストが異なる色と認識できない色をいう。例えば、メンブランとして白色のニトロセルロースメンブラン、流量制御手段としてABS樹脂を用いる場合、流量制御手段の色は、例えばクリーム(例えば、UMG ABS カラーコードB)、ベージュ(同E)、ホワイト(同W)またはこれらと実質的に同調の色を採用すればよい。本発明においては、メンブラン上に捕捉試薬が固定化され、該試薬上で、捕捉試薬-被分析物質-標識試薬の複合体が形成されることにより、標識試薬が集積し標識試薬の色を視覚により認識することができる。メンブランとして、例えば白色のニトロセルロースメンブランが用いられ、標識試薬の標識物質として例えば、赤色の金コロイド等が用いられる。この場合、白色のメンブラン上に赤色の金コロイドが集積するため、赤色を視覚により明りょうに認識することができる。流量制御および/または濃縮手段は、図1に示すように開口部を有し、該開口部分と捕捉試薬部分が重なるように、装置本体に配置される。流量制御および/または濃縮手段が濃い色に着色されている場合、開口部を通して捕捉試薬部位の色を認識しようとしても、流量制御および/または濃縮手段の色と捕捉試薬の色のコントラストが明りょうでないので、色の濃さを正確に認識することができない。流量制御および/または濃縮手段を取り外せば、メンブランの色と標識物質の色のコントラストにより標識物質の色を認識し得る。流量制御および/または濃縮手段の色がメンブランの色と同調である場合、流量制御および/または濃縮手段の開口部を通して視覚で認識できる標識試薬の色と流量制御および/または濃縮手段の色のコントラストが大きく、流量制御および/または濃縮手段を装置本体に設置したままでも、標識試薬の色を認識することができる。メンブランに白色のニトロセルロースメンブランを用いた場合、同調の色とは白または白に近い色であり、薄いグレー、クリーム色等が挙げられる。この場合、透明、不透明は問わない。
【0028】
本発明の流量制御および/または濃縮手段は、流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部と外側構造体との距離を0.5mm以上、好ましくは1mm以上備えることで、流量制御および/または濃縮手段とその外側構造体の間隙から光が装置内部に進入することができ、試験領域および/または非試験領域に十分な光を供給でき、着色判定を正確に行うことができる。ここで、流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部とは、流量制御および/または濃縮手段の容器状の試薬及び試料を添加する部分の外側をいい、外側構造体とは、流量制御および/または濃縮手段が装着される装置本体部分であって、流量制御および/または濃縮手段を囲む構造体部分をいう。外側構造体と流量制御および/または濃縮手段の位置関係は、図2に示すような関係にある。図2中、流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部とその外側構造体との距離とは、流量制御および/または濃縮手段の上部端と外側構造体の間の距離をいう。図2においては、矢印で示される光が、流量制御および/または濃縮手段の上部端と外側構造体の間の間隙を通って進入する様子が示されている。
【0029】
図2は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図である。流量制御および/または濃縮手段7が外側構造体10との距離を0.5mm以上好ましくは1mm以上備えることで光11を固相支持体2に十分に供給することが可能となり、着色判定を正確に行うことができる。
【0030】
また、本発明の流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体の色が、淡色であることが望ましい。ここで言う淡色とは、白色、クリーム色および黄色等の淡い、薄い色のことを言う。図3は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図である。流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体10の色を淡色とすることで、上部からの光11は外側構造体に反射して固相支持体2に十分供給可能となり、着色判定を正確に行うことができる。
【0031】
また、本発明の流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される場合、試薬と試料の混合物を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御手段上面の反射光による光の干渉によって特定の波長の光が強められる条件に無いことが望ましい。流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉が起こると、特定の色が発色して非試験領域の色調を正確に確認できなくなるからである。
【0032】
図4は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図(図2)のa部を拡大した説明図である。流量制御および/または濃縮手段7の厚さをdとする。
【0033】
空気中の光の波長をλ1、屈折率をn1=1とし、流量制御および/または濃縮手段の材料樹脂中の光の波長をλ2、屈折率をn2とすると、λ1=n2λ2・・・Iと表せる。n1<n2であるため、流量制御および/または濃縮手段上面では光は固定端反射するため反射波の位相は逆転する。また、試薬と試料の混合物を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体の間は試薬と試料の混合物で満たされ、この部分での光の屈折率は流量制御手段の材料樹脂の屈折率より小さいため、流量制御および/または濃縮手段下面では光は自由端反射し、反射波の位相は変わらない。従って、光が強めあう条件は流量制御および/または濃縮手段の厚さをdとすると、2d=(m+1/2)λ2、(m=0,1,2,3・・・)である。λ1=n2λ2(式I)より、2n2d=(m+1/2)λ1、(m=0,1,2,3・・・)が求まる。これが光の強めあう条件である。可視光線の波長領域約400nm〜800nmにおいて、この条件に合致しないように樹脂の屈折率n2および厚さdを選択することで、流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉せずに特定の色の発色を避けることが可能となり非試験領域の色調を正確に確認できる。
【0034】
さらに、本発明の流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される場合、試薬及び試料を添加後、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体の間に空気層を形成することなく密着することが望ましい。図5は流量制御および/または濃縮手段の断面による説明図(図2)のa部を拡大した説明図である。試薬及び試料を添加後、流量制御手段下面と固相支持体の間に空気層12が形成されると、非試験領域の色調を正確に確認できなくなる。これは空気層によって空気層の存在する位置に相当する固相支持体、非試験領域からの光が正確に届かなくなるからで、その原因として空気層が流量制御および/または濃縮手段下面に存在することによる鏡面反射や空気層を原因とする光の干渉、また、それらの現象の複合的な組合せによるものと考えられる。空気層を形成しないようにするためには、流量制御および/または濃縮手段の底面が装置本体に含まれる固相支持体に密着するようにする。このためには、流量制御および/または濃縮手段を装置本体に装着したときに、流量制御および/または濃縮手段の底面が固相支持体の流量制御および/または濃縮手段の底面と完全に接触することが望ましい。例えば、流量制御および/または濃縮手段を装置本体に装着したときに流量制御および/または濃縮手段の底面が、上から圧力をかけない場合の固相支持体が位置する平面よりも0から0.5mm程度装置の下方向に位置していることが望ましい。この場合、流量制御および/または濃縮手段の底面が固相支持体を下方向に抑えつけることになるが、固相支持体の下部には、比較的柔軟な材料でできている吸収部位またはスペーサーが存在するので、固相支持体が破壊されるようなことはない。また、流量制御および/または濃縮手段の底面が装置本体に含まれる固相支持体に密着するようにするためには、流量制御および/または濃縮手段が装置本体と確実に係合あるいは嵌合している必要がある。例えば、嵌合の場合、限定はされないが、嵌合方式として3点爪嵌合や面嵌合等を採用すればよい。
【0035】
また、本発明の流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部は、その断面形状に放物線の一部を含まず、または放物線の一部を含む場合はその焦点が試験領域に無いことが望ましい。図6は流量制御および/または濃縮手段に放物線の一部を含み、その焦点が試験領域にある場合を上部から見た説明図である。光11が試験領域に集中するとその周辺と明暗に差ができてしまうため、正確な判定ができない。
【0036】
加えて、本発明の流量制御および/または濃縮手段は陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を判定するための着色を備えていてもよい。図7は流量制御および/または濃縮手段に陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を判定するための着色を備える装置を上部から見た説明図である。着色は、例えば流量制御および/または濃縮手段の開口部を有する部分であって、該手段を装置本体に装着したときに上部から見える面に備わっていればよく、例えば、開口部と隣り合って備わっていればよい。着色13は、陽性の判定の閾値となる色(判定色)を予め備えておくことで試験結果を的確に行うためのものである。判定色との比較を行い、判定色との色の彩度の高低および/または明度の明暗によって陽性/陰性を判定する。判定色は複数備えても良く、例えば、陽性の程度を判定するために用いてもよい。
【0037】
本発明の装置を用いる検出方法においてはまず、被分析物質の定性及び定量分析を行う目的の検体をその被分析物質と被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬が特異的結合反応を起こしやすい状態に処理をすることが望ましい。処理方法は酸・塩基等各種化学薬品等を用いた化学的処理方法でも良いし、加熱・撹拌・超音波等を用いた物理的処理方法のどちらでも構わず、またその両方法を用いても良い。具体的には被分析物質は検体中において、微生物や細胞などの生体由来マトリックスに存在する場合が多いので、検体を酸溶液、塩基溶液、界面活性剤溶液、変性剤溶液または緩衝液に浮遊し、撹拌または加熱によって微生物及び細胞マトリックスを破壊して、被分析物質を抽出する。次に浮遊液を被分析物質と被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬が特異的結合反応を生じやすいようpHを調節したり、あるいは無機塩類の添加濃度を調整したり、特異反応を増強する界面活性剤や高分子ポリマー、塩基性化合物等の添加剤や非特異反応を軽減する界面活性剤や高分子ポリマー、塩基性化合物等の添加剤を加える。本発明の検出装置において、検体を処理する処理液として、例えば特開2003-279577号公報に記載の検体浮遊液組成物が挙げられる。もし被分析物質が検体中において、被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬と特異的結合反応を起こしやすい状態であれば、検体を特異的結合反応を生じやすい浮遊液に浮遊するのみでも構わないし、検体をそのまま使用しても差し支えはない。この一連の検体処理は検体添加デバイス(検体滴下用容器)で行うと、操作がより簡便となる。
【0038】
本発明の方法において分析しようとする被分析物質は、限定されないが通常は抗原または抗体である。検体も限定されず、全血、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、汗、粘膜擦過物等の生体試料の他、肉、植物等の食物の抽出物等が含まれる。被分析物質に結合するリガンドは、典型的には被分析物質が抗原の場合は、該抗原に特異的に結合する抗体、被分析物質が抗体の場合は該抗体が特異的に結合する抗原であり、その他、被分析物質-リガンドの組合わせとして、受容体-リガンド、リガンド-受容体等の組合わせが挙げられる。標識試薬とは、前記リガンドと適当な標識物質を結合させたコンジュゲートであり、標識物質として、金コロイド等の金属コロイド、セレニウムコロイド等の非金属コロイド、着色樹脂粒子、染料コロイド及び着色リポソーム等の不溶性粒状物質やアルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等の発色反応を触媒する酵素、蛍光色素、放射性同位体等が挙げられる。
【0039】
次に上述の方法で処理された検体試料を捕捉試薬を固定化した固相支持体上に供する前に前記標識試薬と接触させ混合することにより、前記標識試薬−前記被分析物質の複合体を形成させる。本発明の装置においては、例えば流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段は検体試料を一旦貯めておく容器状のアダプターであり、この場合該アダプター中で複合体を形成させてもよい。アダプターの下部には、開口部があり、該開口部を通して、検体試料および標識試薬は複合体を形成しながら、固相支持体に供給される。標識試薬と検体試料との接触は、アダプターに添加する前に行わせてもよい。
【0040】
検体中に被分析物質が含まれる場合、検体と標識試薬を接触させることにより、検体と標識試薬が混合し混合物ができる。検体と標識試薬の混合物は、被分析物質と標識試薬の混合物を含み、さらに被分析物質と標識試薬の複合体を含む。試料は被分析物質と被分析物質に特異的に結合するリガンドが特異的結合反応を起こしやすいよう上述の方法で処理してあり、また前記標識試薬は前記被分析物質に対して過剰量を接触させるので、前記被分析物質の多くは前記標識試薬のみと効率的に前記複合体を形成する。ここで、捕捉試薬とは被分析物質と特異的に結合する物質であり、捕捉試薬-被分析物質の関係は、前述の被分析物質-標識試薬との関係と同様に、抗原-抗体、抗体-抗原、受容体-リガンド、リガンド-受容体等であり得る。捕捉試薬と標識試薬は同じ物質でもよいが、被分析物質中に該物質と結合する部位が一つしか存在しない場合は、標識試薬−被分析物質−捕捉試薬複合体が形成されない。従って、この場合捕捉試薬と標識試薬はそれぞれ被分析物質の異なる部位に結合する必要がある。固相支持体は毛管現象により試料検体が吸収され流動し得るものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、支持体はニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。固相支持体は、任意の大きさの膜状の支持体であり、膜に捕捉試薬が固定化され、膜上に捕捉試薬領域が設定される。前記捕捉試薬の固相支持体への固定化は、吸着による方法、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基等の官能基を利用して化学的に結合させる方法等、公知の方法で行えばよい。
【0041】
次に前記被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体上に前記標識試薬−前記被分析物質の複合体を含む検体と標識試薬の混合試料を供して、標識試薬−被分析物質−捕捉試薬複合体を形成させる。本発明の装置においては、検体および標識試薬は混合物として流量制御および/または濃縮手段であるアダプターに添加され、あるいはアダプター内で混合され複合体を形成する。複合体を含む混合物はアダプター下部の開口部を通して、固相支持体上に供給される。このとき、開口部の形状や大きさにより、あるいはアダプター下部の開口部と固相支持体の間にフィルターを設けることにより、供給される速度が制御される。この際、フロースルー式検出法においては、標識試薬−前記被分析物質の複合体は、捕捉試薬が固定化された固相支持体を通過する際に捕捉試薬に捕捉され、標識試薬−被分析物質−捕捉試薬複合体が形成される。固相支持体に捕捉された標識試薬の存否を検出することで被分析物質の存在を判定することができる。被分析物質と標識試薬が固相支持体と分離した部位で予め接触するよう構成してあるので、被分析物質と標識試薬が十分接触し複合体を形成している。
【0042】
そのため、試料を、捕捉試薬を固定化した固相支持体に添加する動作を行うだけで標識試薬−被分析物質−捕捉試薬の複合体の形成を簡便且つ迅速に行うことができ、被分析物質の検出(アッセイ)を実施できる。
【0043】
本発明の方法に用いる検出装置は、さらに、対照用試薬を含んでいてもよく、さらに検体添加部や吸収部を含んでいてもよい。対照用試薬を含んだ部位を対照部位といい、試験領域に含まれる。対照用試薬は限定されないが、例えば標識試薬中のリガンドが結合する物質を用いることができる。対照用試薬は、フロースルー式検出法においては、膜上の捕捉試薬とは異なる部位に固定化すればよい。検体添加部は、一旦検体と標識試薬の混合物を吸収し、次いで吸収した混合物を捕捉試薬が固定化された固相支持体に供給するための部分である。該検体添加部は、一定量の液体を吸収できるような多孔質材料でできていることが望ましく、例えば、ガラス繊維やポリスチレンでできた不織布を用いればよい。吸収部位は、捕捉部を通過した検体を吸収することにより、検体の流れを制御する液体吸収性を有する部位である。フロースルー式検出法においては、例えば捕捉試薬を固定化した膜の下部に設ければよい。吸収部位は例えば紙製のものをアブソーベントパッドとして用いればよい。さらに、固相支持体と吸収部位の間にスペーサーを備えていてもよい。ここで、スペーサーは検体試料が吸収部位に到達するように、液体透過性または液体吸収性である必要があるが、材質に関するその他の限定はなく、また機能も限定されない。例えば、ろ紙を用いることができ、液体透過性や液体吸収性を調節することにより検体試料が吸収部位に吸収される速度を制御することができ、流量制御および/または濃縮手段とともに流量を制御する機能をもたせることができる。また、スペーサーに厚みのある材質を用いれば、固相支持体を流量制御および/または濃縮手段の底面に押し付けることができ、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体の間に空気層を形成することを防止できる。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例中、比較のために、市販のクイックS-インフルA・B「生研」を用い、アダプター部分を新たに成型したものを本発明の装置として用いた。
【0045】
実施例1 フロースルー式検出装置を用いたA型インフルエンザウイルスの検出
(1)金コロイド抗体の調製
10mLの金コロイドを取り、100mM炭酸カリウムでpHを7.0に調製する。2mMホウ酸溶液で透析、遠心分離し精製した抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を2mMホウ酸溶液で100μg/mLの濃度になるように調製する。調製した抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の最終濃度が10μg/mLとなる量を十分撹拌させながら金コロイドに加える。5分後10%BSAを1mL加え、穏やかに10分間ローテーターで撹拌する。全量を遠心管に移し、14000rpm、30分、4℃で遠心する。遠心後上清を吸引廃棄し、沈殿している金コロイドと抗A型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の感作されたものに、最終濃度が10mMトリス塩酸緩衝液、1%BSA、150mM塩化ナトリウムを含む溶液1mLで浮遊する。
【0046】
(2)金コロイド抗体の乾燥化
前項で作製した金コロイド抗体を陽圧噴霧装置(BioDot社製、BioJet)を用いて8.0OD520、10μL/cmの速度、及び量で10mmx300mmのポリスチレン不織布に噴霧する。次いで減圧装置内で1時間減圧乾燥し、乾燥金コロイド抗体パッドとした。使用時には7mm間隔で裁断し、用いた。
【0047】
(3)診断用メンブレンフィルターへの抗体の固定化、検出装置の作製
ニトロセルロースフィルターへの抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(マウス)の固定化を例に説明する。
【0048】
プロテインAカラムでアフィニティー精製した抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体(マウス)を用意する。抗体が浮遊されている緩衝液をSephadexG-25ゲル濾過カラムを用いて0.1%トレハロース加10mMクエン酸緩衝液(pH4.0)に置き換える。
【0049】
280nmでの吸光度が1.0となるように0.1%トレハロース加10mMクエン酸緩衝液(pH4.0)で希釈し、適量を(例えばフロースルー検出(診断)装置の場合10μL/装置(デバイス)となるように)検出装置に装着したニトロセルロース上に滴下、次いで45℃、40分間静置、乾燥する。
【0050】
(4)検出方法(デバイス側に検出試薬を組み込む形式)
(2)で作製したパッドを予め検出装置(デバイス)の流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段(アダプター)上に、試験領域及びサンプルの吸収領域を遮らないよう、且つ外れないように組み込んでおき(図1B)、ここにA型インフルエンザウイルスを含むと思われるサンプル500μLを試料濾過フィルターで濾過して全量滴下する。液が膜部材に全て吸収された後、抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体を吸着させた部分の膜部材が金コロイドの色(例えば、赤色〜赤褐色)に着色していれば、サンプル中にA型インフルエンザウイルスが存在していると確認される。色調の変化がなく膜部材の色のままであれば、サンプル中にA型インフルエンザウイルスが存在していないことになる。
【0051】
流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段が非透明の着色樹脂で成形された従来装置と、流量制御および/または濃縮手段が無色透明樹脂または固相支持体と同調の色である白色もしくはクリーム色の樹脂で成形された本発明装置で検出を行った結果を表1および2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
上記データはN=2回の測定の平均値を示した。
強陽性検体では従来法と本発明による方法とで時間的な有意差は見られなかった。
【0055】
中陽性検体を試験した場合、従来の方法では、アダプター装着状態で陽性と判定できるまでの所要時間が8分以上要したが、改良のアダプターでは6から7分台、透明のアダプターでは5分で陽性と判定することが可能となり、最大で3分以上、4分程度の時間短縮が可能となった。
【0056】
上記以外でアダプターを透明化することにより、より広角に外部の光を取り入れることができるようになり、試験領域の視認性が向上するというメリットも確認された。
【0057】
迅速、簡便を必要とするPOCT(ポイント・オブ・ケア)では総反応(操作)時間が10分から15分程度というものが多いが、その中において本発明では性能(感度・特異性)を損なうことなく3分以上の時間短縮を達成(結果的に判定までの時間を従来の70%にまで短縮)できた。
【0058】
図8に流量制御および/または濃縮手段が青色非透明の樹脂で成形された従来の装置(右側の装置)と流量制御および/または濃縮手段が無色透明の樹脂で成形された本発明の装置を用いて検出を行った場合の、初速試薬部位の経時的な色の変化を示す。流量制御および/または濃縮手段である容器状のアダプター下部にニトロセルロースメンブラン上の捕捉試薬部分と同一になるように開口部がある。図中、1つのアダプター下部に菱形の開口部と丸型の開口部が存在するが、この開口部は、ニトロセルロースメンブラン上の捕捉試薬部位と形状、大きさ、位置が適合している。菱形の部位が試験用の捕捉試薬部位であり、丸型の部位が対照用の捕捉試薬部位である。図8A〜図8Cは、検体試料添加後、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分経過後の結果、および、8分経過後にアダプターを取り外した状態を示す。図に示したように、従来の装置では、6〜8分経過後には、捕捉試薬部位が強く着色しているにもかかわらず、アダプターの色により捕捉試薬部位の着色の認識が阻害される。一方、本発明の装置を用いた場合、対照部位は1分経過後には着色を認識できる。すなわち、測定開始後すぐに、検出が首尾よく進行していることを確認することができる。また、2〜5分経過後には試験領域において、着色を認識できる。すなわち、検出が定性的である場合、この時点で陽性であると判定することができる。
【0059】
図9から図11に本実施例で用いたフロースルー式検出装置の図を、図12に、本体と流量制御および/または濃縮手段が一体となったフロースルー式検出装置の図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー装置を示す図である。図1Aは、フロースルー式検出装置の本体装置を示し、図1Bは、標識試薬を含む流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を示し、図1Cは、標識試薬を検体添加用デバイスに組み込んだ検出装置を示す。さらに、図4Dおよび図4Eは、標識試薬を含む流量制御および/または濃縮手段の俯瞰図を示す。
【図2】流量制御および/または濃縮手段の断面を示す図であり、外部構造体と流量制御および/または濃縮手段の間を通り流入する光の経路を示す図である。
【図3】流量制御および/または濃縮手段の断面を示す図であり、外部構造体に反射して流入する光の経路を示す図である。
【図4】流量制御および/または濃縮手段の断面の底部分を示す図である。
【図5】流量制御および/または濃縮手段の断面の底部分を示す図であり、空気層の存在を示す図である。
【図6】流量制御および/または濃縮手段に放物線の一部を含み、その焦点が試験領域にある場合の光の経路を上部から見た図である。
【図7】陽性、陰性または陽性の程度を判定するための着色を備える流量制御および/または濃縮手段を示す図である。
【図8A】従来装置と本発明の装置を用いた検出の結果を示す図である。
【図8B】従来装置と本発明の装置を用いた検出の結果を示す図である。
【図8C】従来装置と本発明の装置を用いた検出の結果を示す図である。
【図9】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の装置本体を示す図である。
【図10】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を示す図である。
【図11】流量制御および/または濃縮手段を有するフロースルー式検出装置の装置本体に流量制御および/または濃縮手段(アダプター)を組み込んだ検出装置を示す図である。
【図12】流量制御および/または濃縮手段があらかじめ装着されて一体となっているフロースルー式検出装置を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 検出装置
2 固相支持体
3 スペーサー
4 吸収部位
5 検体試料
6 標識試薬
7 流量制御および/または濃縮手段
8 開口部(試料通過部)
9 捕捉試薬部位
10 外側構造体
11 光
12 空気層
13 着色
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体試料中の被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体および被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬を含み、試薬及び試料が固相支持体に移動する流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する免疫測定を行うためのフロースルー式検出装置であって、前記流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく試験領域の着色または非着色を確認することができるフロースルー式検出装置。
【請求項2】
標識試薬が多孔質材料中に含まれ、該多孔質材料が流量制御および/または濃縮手段中に装備される請求項1記載のフロースルー式検出装置。
【請求項3】
標識試薬が多孔質材料中に含まれ、標識試薬を含む該多孔質材料を装備した検体添加用デバイスを含む請求項1記載のフロースルー式検出装置。
【請求項4】
流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく固相支持体上の試験領域および非試験領域の色を同時に目視することができ、試験領域の着色または非着色を非試験領域との対比により確認することができる請求項1〜3のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項5】
流量制御および/または濃縮手段が検出装置と一体となっている請求項1〜4のいずれか1項のフロースルー式検出装置。
【請求項6】
流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される請求項1〜5のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項7】
流量制御および/または濃縮手段が固相支持体と同調の色の樹脂から成型される請求項1〜5のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項8】
流量制御および/または濃縮手段が、ポリスチレン樹脂から成型される請求項1〜7のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項9】
フロースルー式検出装置が固相支持体を収納した樹脂製の本体と樹脂製の流量制御および/または濃縮手段から構成されており、本体および流量制御および/または濃縮手段がポリスチレン樹脂から成型される請求項1〜8のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項10】
流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の曲げ弾性率が、装置本体のポリスチレン樹脂の曲げ弾性率と200MPa以上異なることを特徴とする、請求項9記載のフロースルー式検出装置。
【請求項11】
流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の剛性が、装置本体のポリスチレン樹脂の剛性よりも低いことを特徴とする、請求項9記載のフロースルー式検出装置。
【請求項12】
流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部と、その外側構造体との距離が0.5mm以上である請求項1〜11のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項13】
流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体の色が、淡色である請求項1〜12のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項14】
試薬及び試料を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉によって特定の波長の光が強められる条件に無い、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項15】
試薬及び試料を添加後、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体がそれらの間に空気層を形成することなく密着する請求項1〜14のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項16】
流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の断面形状に放物線の一部を含まずまたは放物線の一部を含む場合はその焦点が試験領域に無い請求項1〜15のいずれか1項記載のフロースルー式検出装置。
【請求項17】
流量制御および/または濃縮手段に陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を比較判定するための着色を備えた請求項1〜16のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項1】
検体試料中の被分析物質に特異的に結合する捕捉試薬を固定化した固相支持体および被分析物質に特異的に結合するリガンドを含む標識試薬を含み、試薬及び試料が固相支持体に移動する流量を制御し試薬及び試料を濃縮し得る流量制御および/または濃縮手段を有する免疫測定を行うためのフロースルー式検出装置であって、前記流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく試験領域の着色または非着色を確認することができるフロースルー式検出装置。
【請求項2】
標識試薬が多孔質材料中に含まれ、該多孔質材料が流量制御および/または濃縮手段中に装備される請求項1記載のフロースルー式検出装置。
【請求項3】
標識試薬が多孔質材料中に含まれ、標識試薬を含む該多孔質材料を装備した検体添加用デバイスを含む請求項1記載のフロースルー式検出装置。
【請求項4】
流量制御および/または濃縮手段を検出装置から取り外すことなく固相支持体上の試験領域および非試験領域の色を同時に目視することができ、試験領域の着色または非着色を非試験領域との対比により確認することができる請求項1〜3のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項5】
流量制御および/または濃縮手段が検出装置と一体となっている請求項1〜4のいずれか1項のフロースルー式検出装置。
【請求項6】
流量制御および/または濃縮手段が透明の樹脂から成型される請求項1〜5のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項7】
流量制御および/または濃縮手段が固相支持体と同調の色の樹脂から成型される請求項1〜5のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項8】
流量制御および/または濃縮手段が、ポリスチレン樹脂から成型される請求項1〜7のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項9】
フロースルー式検出装置が固相支持体を収納した樹脂製の本体と樹脂製の流量制御および/または濃縮手段から構成されており、本体および流量制御および/または濃縮手段がポリスチレン樹脂から成型される請求項1〜8のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項10】
流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の曲げ弾性率が、装置本体のポリスチレン樹脂の曲げ弾性率と200MPa以上異なることを特徴とする、請求項9記載のフロースルー式検出装置。
【請求項11】
流量制御および/または濃縮手段を成型するポリスチレン樹脂の剛性が、装置本体のポリスチレン樹脂の剛性よりも低いことを特徴とする、請求項9記載のフロースルー式検出装置。
【請求項12】
流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部と、その外側構造体との距離が0.5mm以上である請求項1〜11のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項13】
流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の外側構造体の色が、淡色である請求項1〜12のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項14】
試薬及び試料を添加後の流量制御および/または濃縮手段下面の反射光と流量制御および/または濃縮手段上面の反射光による光の干渉によって特定の波長の光が強められる条件に無い、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項15】
試薬及び試料を添加後、流量制御および/または濃縮手段下面と固相支持体がそれらの間に空気層を形成することなく密着する請求項1〜14のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【請求項16】
流量制御および/または濃縮手段の試薬及び試料添加部側部の断面形状に放物線の一部を含まずまたは放物線の一部を含む場合はその焦点が試験領域に無い請求項1〜15のいずれか1項記載のフロースルー式検出装置。
【請求項17】
流量制御および/または濃縮手段に陽性もしくは陰性の判別または陽性の程度を比較判定するための着色を備えた請求項1〜16のいずれか1項に記載のフロースルー式検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−23258(P2006−23258A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203825(P2004−203825)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]