説明

改良された水分管理特性を有するポリエステルおよびポリアミド糸の製造用組成物

【課題】織物および敷物の製造に使用される。
【解決手段】この繊維が、ポリエステル類又はポリアミド類およびポリオキシアルキレンアミン類を含む水分管理組成物から成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、水分管理特性の改良された製品を作成するための組成物およびプロセスに関するものである。より詳細には、本発明は、その他の望ましい物理的特性の有害な損失なしに、改良された水分管理特性又は毛細管(wicking)特性を示すポリエステル系繊維およびポリアミド系繊維を作成するための組成物およびプロセスに関するものである。本発明の繊維は、織物および床の敷物(floor coverings)の両方の用途に使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、合成繊維は水分を効率的に吸い上げることが不可能であるという問題があった。繊維の毛細管特性の改良は、多くの用途において非常に望ましい。例えば、衣料製品等の織物に使用する場合、効率的な毛細管繊維を含有させれば、着用者により良い着用感を提供することができる。敷物に使用する場合、毛細管特性が改良されれば、敷物の洗浄およびクリーニング後の乾燥に役立つことができる。さらに、毛細管現象が改良されれば、床織物に水系の見苦しい染みが付いた場合に表面から裏地に移動させる手助けをするため、染みを見えなくする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
我々は、織物および敷物を製造する際に使用される水分吸い上げポリエステル繊維およびポリアミド繊維を提供するにあたって、非常に有効かつ経済的である新たな組成物を発明した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、水分管理特性の改良されたポリエステル系糸又はポリアミド系糸の製造用組成物は、ポリエステル又はポリアミド、および1以上のポリオキシアルキレンアミン類を含む。好ましくは、該組成物は、約97〜約99.75重量%のポリエステル又はポリアミドおよび約0.25〜約3重量%のポリオキシアルキレンアミンを含有する。最も好ましくは、該組成物は、約98〜約99.5重量%のポリエステル又はポリアミドおよび約0.5〜約2重量%のポリオキシアルキレンアミンを含有する。
【0005】
ポリオキシアルキレンアミンは、直接ポリエステル又はポリアミドに添加してもよく、又は適切な熱可塑性キャリヤー中に混合することにより、熱可塑性濃縮物又はマスターバッチの形態で添加してもよい。適切な熱可塑性キャリヤーは、ポリエステル又はポリアミド、又はこれらの混合である。ポリアミドには、ラクタム類、アルファ−オメガアミノ酸類、および二酸類とジアミン類の対から合成されるものが含まれる。このようなポリアミドには、ポリカプロラクタム[ポリアミド6]、ポリウンデカノラクタム[ポリアミド11]、ポリヘキサメチレンアジパミド[ポリアミド66]、ポリラウリルラクタム[ポリアミド12]、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド[ポリアミド6,12]、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)[ポリアミド6,10]、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)が含まれるが、これらに限定されない。ポリオキシアルキレンジアミンをこのようなマスターバッチの形態で使用する場合には、ポリオキシアルキレンジアミンのマスターバッチ中の熱可塑性キャリヤー量を考慮するように、前記配合中のポリエステル又はポリアミドの量を調整する。
【0006】
好ましいポリオキシアルキレンアミンは、分子量約2000のポリ(オキシエチレン)ジアミン(POED)である。本発明に使用可能な他の好ましいポリオキシアルキレンアミンは、同様に分子量2000のポリ(オキシプロピレン)ジアミンである。これらの化合物は、登録商標JeffamineOとして、ハンツマン・コーポレイション(Huntsman Corporation)から入手可能である。適切なポリオキシアルキレンジアミンについては、米国特許第3,654,370号に更に詳細に記載されている。
【0007】
ポリエステル類には、1以上の二酸類および1以上のグリコール類から合成されたもの等の熱可塑性ポリエステルが含まれる。このようなポリエステル類には、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(プロピレンナフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)およびポリ(乳酸)、又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
ポリアミド類には、ラクタム類、アルファ−オメガアミノ酸類、および二酸類とジアミン類の対から合成されるもの等の熱可塑性ポリアミドが含まれる。このようなポリアミド類には、ポリカプロラクタム[ポリアミド6]、ポリウンデカノラクタム[ポリアミド11]、ポリヘキサメチレンアジパミド[ポリアミド66]、ポリラウリルラクタム[ポリアミド12]、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド[ポリアミド6,12]およびポリ(ヘキサメチレンセバカミド)[ポリアミド6,10]が含まれるが、これらに限定されない。
【0009】
上述のポリエステル又はポリアミド、およびポリオキシアルキレンアミン類の他に、本発明の実施に使用される組成物はその他の成分を含有してもよい。これらの成分としては、着色剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、オゾン劣化防止剤、防汚剤、染み防止剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、潤滑剤、溶融粘度および溶融強度改良剤、鎖伸長剤、結合剤、固相重合加速剤および処理補助剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
上記組成物から製造される繊維を種々の方法を用いて溶融紡糸し、数多くの最終使用用途向けの異なる製品を作成することができる。該繊維は、低速および高速紡績プロセスの両方を含む、当業者に既知である通常の紡績機を用いて紡糸することができる。このような繊維の最終用途に依存して様々な1フィラメント当たりのデニール(dpf)を製造すればよく、例えば、織物に使用する場合には低いdpf、絨毯に使用する場合にはより高いdpfとすればよい。また、繊維の断面形状は、円形、デルタ、三裂、四裂、溝付き又は不規則型を含む、広範囲の可能な形状のうちの何れかであればよい。
【0011】
これらの生成繊維を、捲縮、バルキー出し、加撚等を含む、溶融紡糸繊維に対して通常行われる既知の下流プロセスの何れかに供して、衣料、糸、織物、室内装飾品用生地、絨毯およびその他の敷物等の様々な製造品に取り入れるために適切な糸を製造すればよい。該繊維は混合したり、絡ませたり、捩ったり、又は、ポリエステル類、ポリオレフィン類又はアクリル類等の合成繊維、又は羊毛又は綿等の天然繊維、およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されないその他の繊維種と混合してもよい。
[実施例]
【0012】
これらの実施例は本発明を説明するために記載されるが、本発明の範囲を限定するためのものでは全くない。
【実施例1】
【0013】
POED15重量%をベント型二軸押出機でPET、IV=0.67と混合し、撚りをかけて、ペレット化し、乾燥した。このPOEDマスターバッチをさらに、ベント型二軸押出機でレベル10%にて、PET、IV=0.67および黒色濃縮物と混合した。得られたコンパウンドを乾燥し、3100m/分で溶融押出紡糸ラインで紡糸し、仮撚加工して、円形断面を有する34本のフィラメントからなる150デニール糸(150/34R)を得た。
【実施例2】
【0014】
POEDマスターバッチを省略した以外は、実施例1と同様の方法で、比較(非本発明)の150/34R糸を紡糸して仮撚加工した。
【実施例3】
【0015】
POED15重量%をベント型二軸押出機でナイロン6、RV=3.3と混合し、撚りをかけて、ペレット化し、乾燥した。POEDマスターバッチをさらに、ベント型二軸押出機で濃度10%にて、PET、IV=0.67dlg−1、および黒色濃縮物と混合した。
得られたコンパウンドを乾燥し、3100m/分で溶融押出紡糸ラインで紡糸し、仮撚加工して、円形断面を有する34本のフィラメントからなる150デニール糸(150/34R)を得た。
【0016】
実施例1〜3で製造した糸を丸編みして約3〜4oz/ydの靴下とした。水移動速度を下記の通りに求めた。水移動速度をいわゆる垂直試験片吸い上げ試験(vertical strip wicking test)に従って測定した。片方の靴下(およそ幅4インチ×長さ12インチ)の一端を、吊り下げた端が21℃の蒸留水に約1/4インチまで浸かった状態で、垂直に留めた。水が試験片に沿って移動するのに要した時間を1インチ毎(移動距離)に測定した。移動距離当たりの時間がより短ければ、より大きな液状水移動能力を示す。
【0017】
表1に実施例1〜3の垂直試験片吸い上げ試験の試験結果を示す。これらの結果を図1にグラフで示す。本発明の実施例1および3の両方の結果は、非本発明の実施例2と比べて、水移動速度について劇的な改善を示している。
【0018】
【表1】

【実施例4】
【0019】
POED15重量%をベント型二軸押出機でPET、IV=0.67dlg−1と混合し、撚りをかけて、ペレット化し、乾燥した。POEDマスターバッチをさらにベント型二軸押出機で、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ・コーポレイション(Ciba Specialty Chemicals, Inc.)から入手可能な鎖伸長剤、Irgamod RA20と、POEDマスターバッチ10部に対してIrgamod RA202部の割合で混合した。次に、得られた材料をナイロン6.6樹脂、RV=3.1と溶融混合した。このコンパウンドを乾燥して溶融押出紡糸ラインで紡糸し、1850/30Yの未延伸糸を得た。未延伸糸2束を延伸加工して共に絡ませ、1200/60YのBCF糸を得た。
【実施例5】
【0020】
POEDマスターバッチ又はIrgamod RA20を添加せずに、比較(非本発明)のナイロン6,6,1200/60YのBCF糸を製造した。
【実施例6】
【0021】
POED15重量%をベント型二軸押出機で、ナイロン6、RV=3.3と混合した。
製造したPOEDマスターバッチを繊維紡績押出機上で直接ナイロン6,6、RV=3.1に投入し、次に糸の2つの端を延伸加工して絡ませ、1200/60YのBCF糸を得た。
【0022】
実施例4〜6で製造した糸を丸編み機で編んで同様の構造の靴下とした。上述した方法と同様に、各靴下について水移動速度を求めた。結果を表2に示し、図2にグラフで示す。本発明の実施例4および6は、非本発明の実施例5と比べて顕著に高い水吸い上げ速度を示した。
【0023】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1〜3の垂直試験片吸い上げ試験の試験結果を示すグラフである。
【図2】実施例4〜6で製造した糸を丸編み機で編んで上述の構造の靴下を製造し、各靴下について水移動速度を求めた結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性ポリエステル又は熱可塑性ポリアミド、および
(b)ポリオキシアルキレンアミン
からなることを特徴とする水分管理組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステルが繊維形成熱可塑性ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリアミドが繊維形成熱可塑性ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(プロピレンナフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)およびポリ(乳酸)、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれるポリエステルからなることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリアミドが、ポリカプロラクタム[ポリアミド6]、ポリウンデカノラクタム[ポリアミド11]、ポリヘキサメチレンアジパミド[ポリアミド66]、ポリラウリルラクタム[ポリアミド12]、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド[ポリアミド6,12]、およびポリ(ヘキサメチレンセバカミド)[ポリアミド6,10]からなる群から選ばれるポリアミドからなることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオキシアルキレンアミンが、ポリ(オキシエチレン)ジアミンおよびポリ(オキシプロピレン)ジアミン、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ポリエステル又はポリアミド約97〜99.75重量%およびポリオキシアルキレンアミン約0.25〜3重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ポリエステル又はポリアミド約98〜99.5重量%およびポリオキシアルキレンアミン約0.5〜2重量%を含有することを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1の水分管理組成物から作られたことを特徴とする繊維。
【請求項10】
(a)熱可塑性ポリエステル又は熱可塑性ポリアミド、および
(b)ポリオキシアルキレンジアミンおよび熱可塑性ポリアミド又は熱可塑性ポリエステルキャリヤー樹脂の両方を含む濃縮物
からなることを特徴とする水分管理組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(プロピレンナフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)およびポリ(乳酸)、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれるポリエステルからなることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリアミドが、ポリカプロラクタム[ポリアミド6]、ポリウンデカノラクタム[ポリアミド11]、ポリヘキサメチレンアジパミド[ポリアミド66]、ポリラウリルラクタム[ポリアミド12]、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド[ポリアミド6,12]、およびポリ(ヘキサメチレンセバカミド)[ポリアミド6,10]からなる群から選ばれるポリアミドからなることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリオキシアルキレンアミンが、ポリ(オキシエチレン)ジアミンおよびポリ(オキシプロピレン)ジアミン、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物からなることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリアミド又は熱可塑性ポリエステルキャリヤー樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド66、ポリアミド12、ポリアミド6,12、ポリアミド6,10、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、およびこれらの混合物からなる群から選ばれるポリアミドからなることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
請求項10の水分管理組成物から作られたことを特徴とする繊維。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−507109(P2009−507109A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529376(P2008−529376)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/034650
【国際公開番号】WO2007/030494
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(503080589)ユニバーサル.ファイバーズ.インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】