説明

改良された溶融流動性と化学物質耐性を有するポリカーボネート成形組成物

本発明は、ビニル樹脂、特にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)と、コポリマーC)に関して、22重量%未満の割合のα−メチルスチレンおよび/または0〜22重量%の割合のアクリレートを含み、1500〜5000g/molの重量平均分子量Mおよび>40℃のT(ガラス転移温度)を有する低分子量ビニル(コ)ポリマーとを含有するゴム変性ポリカーボネート組成物に関し、改良された溶融流動性と改良された化学物質耐性を併せ持つことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル樹脂、特にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)と、1500〜5000g/molの重量平均分子量Mおよび>40℃のT(ガラス転移温度)を有する低分子量ビニル(コ)ポリマーとを含有するゴム変性ポリカーボネート組成物に関し、改良された溶融流動性と改良された化学物質耐性を併せ持つことを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)とから形成されるポリマー混合物は古くから周知である。純粋なポリカーボネートに比べて、高い熱耐性、良好な(低温での)強度および改良された処理特性を含むその充分な特性範囲によって、PC+ABS混合物は特に、例えば、自動車の内装および外装用途に好適である。
【0003】
これらの混合物は、ハロゲン−ベースの難燃剤と特にハロゲンを含まない難燃剤を用いて耐火性にされうる。耐火性のPC+ABS混合物、特に難燃剤としてハロゲンを含まないリン酸エステルに基づくものが、ここ15年間で、電気および情報技術の用途で確立されてきた。
【0004】
上記用途の大部分では、成形組成物の処理、すなわち成型は、射出成形によって行われるので、成形組成物の処理にとって良好な溶融流動性は必須である。溶融流動性の改良によって、設計の自由度の拡大、少ししかゲートマークを有さない(すなわち、少ししか溶接線を有さない、溶接線は一般的に成形部品における機械的弱点を示す)より大きな成形部品の製造、または処理温度の低下が可能となり、その結果として、材料は成型時にあまりストレスを受けず、よって成形部品の機械特性は一般的により良好となる。
【0005】
一方、成形組成物から製造される消耗品は、機械的および熱的強さ、すなわち、良好な強度および熱耐性を示すことが求められるだけでなく、特に化学物質、油脂および油および家庭用洗剤に対する良好な耐性が求められる。
【0006】
熱耐性を維持しながら処理機能と化学物質耐性について同時に改良することは、一般的に達成不可能である。例えば、PC+ABS混合物の流動性は、使用されるポリカーボネートの平均分子量を低減することによって改良されうるが、材料の化学物質耐性はその結果著しく損なわれる。化学物質耐性は特定のABS成分を使用することによって増加されうるが、成形組成物の流動性はその結果一般的に損なわれる。リン酸エステルを用いて処理して難燃性としたPC+ABS混合物では、流動性は難燃剤の量を増加させることによって改良されうるが、その結果特に熱耐性が損なわれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、熱耐性を維持しながら、改良された溶融流動性と改良された化学物質耐性を併せ持つことを特徴とするPC+ABS組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、1500〜5000g/molの重量平均分子量Mおよび>40℃のTを有する低分子量ビニル(コ)ポリマーをPC+ABS組成物に添加することによって、溶融流動性と化学物質耐性を同時に改良することが可能であり、この組成物はリン酸エステルを用いて、処理中の熱耐性を著しく低下させることなく、難燃性とされうることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、
A)芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはその混合物と、
B)ゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、
C)1500〜5000g/molの重量平均分子量Mおよび>40℃のTを有するビニル(コ)ポリマーと、任意に、
D)リンベースの難燃剤と、
E)ドリッピング防止剤と、
F)ポリマー添加剤および/または他のポリマー成分
を含む組成物を提供するものである。
【0010】
特に本発明は、
A)20〜98重量部、好ましくは30〜95重量部、特に40〜90重量部の芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネートと、
B)1〜80重量部、好ましくは2〜70重量部、特に3〜50、最も特に好ましくは3〜40重量部のゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、
C)0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、特に0.5〜10重量部の、1500〜5000g/molの重量平均分子量Mおよび>40℃のTを有するビニル(コ)ポリマーと、
任意に、
D)1〜30重量部、好ましくは2〜25重量部、特に2〜20重量部の難燃剤としてのリン化合物と、
E)0〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部、特に0.2〜0.5重量部のドリッピング防止剤、好ましくはフッ素化ポリオレフィンと、
F)20重量部まで、好ましくは15重量部まで、特に10重量部までのポリマー添加剤または他のポリマー成分
を含む組成物に関し、
全ての成分の重量部は、全ての重量部の合計が100となるように標準化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(成分A)
本発明に従って好適な成分A)による芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献から周知であり、または文献から周知の方法によって調製されうる(芳香族ポリカーボネートの調製については、例えば、シュネル(Schnell)、「ポリカーボネートの化学と物理」、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)、1964年およびDE−AS1495626号公報、DE−A2232877号公報、DE−A2703376号公報、DE−A2714544号公報、DE−A3000610号公報、DE−A3832396号公報参照;芳香族ポリエステルカーボネートの調製については、例えば、DE−A3077934号公報参照)。
【0012】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、溶融処理によって、またはジフェノールと炭酸ハライド(好ましくはホスゲン)とを、および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド(好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライド)とを、任意に鎖重合停止剤(例えばモノフェノー)を用いて、任意に3官能性またはより高次の官能性の分岐剤(例えばトリフェノールまたはテトラフェノール)を用いて、界面重縮合法により反応させることによって、調製される。
【0013】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの調製用のジフェノールは好ましくは、式(I)を有するものである。
【化3】


ここで、Aは、単結合、C〜Cアルキレン、C〜Cアルキリデン、C〜Cシクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C〜C12アリーレン(これには任意に複素原子を含む別の芳香族環を縮合させることができる)、
または式(II)または(III)を有する基
【化4】


であり、
Bは、C〜C12アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、互いに独立して0、1または2であり、
pは、1または0であり、
およびRは独立して各Xについて選択されうり、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを示し、
は炭素を示し、かつ
mは4〜7の全数、好ましくは4または5を示し、ただし、少なくとも1つのX原子ではRおよびRは共にアルキルである。
【0014】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)〜C〜C−アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよびその環−臭素化および/または環−塩素化誘導体である。
【0015】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、ビスフェノールA、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3.3.5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびその2臭素化および4臭素化または塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス−(3−クロロー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたは2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0016】
ジフェノールは、単独で使用されても何かと組み合わせて使用されてもよい。ジフェノールは文献から周知であり、または文献から周知の方法によって得られうる。
【0017】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの調製に好適な鎖重合停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert.−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、さらには長鎖アルキルフェノール、例えば、DE−A2842005号公報による4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノールまたはアルキル置換基中に全部で8〜20個のC原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert.−ブチルフェノール、p−イソ−オクチルフェノール、p−tert.−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールである。使用される鎖重合停止剤の量は、一般的に各場合に使用されるジフェノールのモル合計に関して、0.5mol%〜10mol%である。
【0018】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、周知の方法によって、好ましくは使用されるジフェノールの合計に関して、0.05〜2.0mol%の3官能性またはより高次の官能性の化合物(例えば、3以上のフェノール性基を有するもの)を導入することによって、分岐されうる。
【0019】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートは共に好適である。(使用されるジフェノールの全量に関して)1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを、本発明に従って、成分A)によるコポリカーボネートの製造に使用することもできる。これらは周知であり(例えばUS−A3419634号公報)、または文献から周知の方法によって製造されうる。ポリジオルガノシロキサン−含有コポリカーボネートの製造は例えば、DE−A3334782号公報に記載されている。
【0020】
ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、好ましいポリカーボネートは、好ましいまたは特に好ましいとして挙げた他のジフェノールを、ジフェノールのモル合計に関して15mol%まで有するビスフェノールAのコポリカーボネートである。
【0021】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造用の芳香族ジカルボン酸ジハライドは、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0022】
1:20〜20:1の割合でのイソフタル酸とテレフタル酸の二酸二塩化物の混合物が特に好ましい。
【0023】
ポリエステルカーボネートの製造では、炭酸ハライド、好ましくはホスゲンも2官能性の酸誘導体として導入される。
【0024】
また、芳香族ポリエステルカーボネートの製造用の鎖重合停止剤の例には、すでに挙げたモノフェノールに加えて、そのクロロ蟻酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物(これは任意にC〜C22アルキル基で、またはハロゲン原子で置換されうる)さらには、脂肪族C〜C22モノカルボン酸塩化物がある。
【0025】
各場合において鎖重合停止剤の量は、フェノール性鎖重合停止剤の場合にはジフェノールのモルに関して、モノカルボン酸塩化物鎖重合停止剤の場合にはジカルボン酸ジクロライドのモルに関して、0.1〜10mol%である。
【0026】
芳香族ポリエステルカーボネートも、導入された芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有することができる。
【0027】
芳香族ポリエステルカーボネートは線形でも周知の方法によって分岐されてもよい(この関連でDE−A2940024号公報およびDE−A3007934号公報参照)。
【0028】
使用することができる分岐剤の例には、(使用されるジカルボン酸ジクロライドに関して)0.01〜1.0mol%の量での3官能性または多官能性カルボン酸クロライド、例えば、トリメシン酸トリクロライド、シアヌル酸トリクロライド、3,3’−,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロライド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロライドまたはピロメリト酸テトラクロライドがあり、または使用されるジフェノールに関して0.01〜1.0mol%の量での3官能性または多官能性フェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2,4,4−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4−ビス−[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル]メチル]ベンゼンがある。フェノール性分岐剤はジフェノールと共に導入されうり、酸塩化物分岐剤は酸ジクロライドと共に導入されうる。
【0029】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造ユニットの割合は幅広く変化することができる。カーボネート基の割合は、エステル基およびカーボネート基の合計に関して、好ましくは100mol%まで、特に80mol%まで、特に好ましくは50mol%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステルおよびカーボネート成分は共に、重縮合体内でブロックの形態でもよく、ランダムに分布していても良い。
【0030】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32の範囲である(これは100mlの塩化メチレン液における0.5gのポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートの溶液について、25℃で測定されたものである)。
【0031】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独で使用されても、組み合わせて使用されてもよい。
【0032】
(成分B)
成分Bは、グラフトベースとして<10℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのゴムにおける少なくとも1つのビニルモノマーのグラフトポリマーB1を含む。
【0033】
好ましいグラフトポリマーB1は、
1)50〜99重量%、特に50〜90、より好ましくは55〜85、最も特に好ましくは60〜80重量%の、ビニル芳香族および/または環−置換ビニル芳香族(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/またはメタクリル酸(C〜C)アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)と、
2)1〜50重量%、特に10〜50、より好ましくは15〜45、最も特に好ましくは20〜40重量%の、ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)(例えば、マレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド)と
を含む混合物の、5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%のモノマーの、
グラフトベースとして、<10℃、好ましくは<0℃、特に好ましくは<−20℃のガラス転移温度を有する95〜5、好ましくは80〜10重量%の1以上のゴムにおける、
1以上のグラフトポリマーである。
【0034】
グラフトベース(ゴムベース)は一般的に、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜2μmの平均粒子サイズ(d50値)を有する。
【0035】
平均粒子サイズd50は、50重量%の粒子が存在する上下の直径である。これは超遠心分離測定によって決定されうる(W.ショルタン(Scholtan)、H.ラング(Lange)、コロイド(Kolloid)、Z.ウント(und)Z.ポリマー(Polymere)250(1972),782〜1796)。
【0036】
好ましい群1のモノマーは、モノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択され、好ましい群2のモノマーは、モノマーアクリロニトリル、マレイン酸無水物およびメチルメタクリレートの少なくとも1つから選択される。
【0037】
特に好ましいモノマーは、群1からはスチレン、群2からはアクリロニトリルである。
【0038】
グラフトポリマーB1用の好適なグラフトベースは例えば、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわち、エチレン/プロピレンおよび任意にジエンに基づくもの、アクリレート、ポリウレタン、シリコン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴム、さらには前述の系の2以上からなるコンポジットゴム、例えば、シリコン−アクリレートゴムである。
【0039】
本発明の意味でのジエンゴムは、例えば、ブタジエン、イソプレン等に基づくもの、またはジエンゴムの混合物またはジエンゴムのコポリマーまたはこれらと他の共重合可能なモノマー(例えば、上記群1および2による)との混合物、例えば、ブタジエン−スチレンコポリマーであり、ただしグラフトベースのガラス転移温度は<10℃、好ましくは<0℃、特に好ましくは<−10℃である。
【0040】
純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0041】
特に好ましいグラフトポリマーB1は、例えば、DE−A2035390号公報(=US−PS3644574号公報)またはDE−A2248242号公報(=GB−PS1409275号公報)またはウルマンズ・エンツィクロペディエ・デア・テクニッシェン・ヘミー(Ullmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie)、Vol.19(1980)、p.280ff.に記載されているような、例えば、ABSポリマー(エマルジョン、バルクおよび懸濁物ABS)である。グラフトベースのゲル含有量は少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%である。
【0042】
グラフトベースのゲル含有量は、25℃でトルエン中で決定される(M.ホフマン(Hoffmann)、H.クロマー(Kroemer)、R.クーン(Kuhn)、ポリメラナリチック(Polymeranalytik)IおよびII、ゲオルグ・タイム−ベラグ(Georg Thieme−Verlag)、シュツットガルト1977)。
【0043】
グラフトコポリマーB1はラジカル重合によって、例えば、エマルジョン、懸濁液、溶液またはバルク重合によって、好ましくはエマルジョンまたはバルク重合によって製造される。
【0044】
また、特に好適なグラフトゴムは、US−P4937285号公報に従って、有機ヒドロ過酸化物とアスコルビン酸を含有する開始剤系を用いて、酸化還元開始によって製造されるABSポリマーである。
【0045】
グラフトモノマーはグラフト反応時にグラフトベースに必ずしも完全にグラフトする必要はないことは周知であるので、発明によれば、グラフトポリマーという用語も、グラフトベースの存在中でのグラフトモノマーの(共)重合によって得られ、調製時に堆積するような生成物を示すものとする。
【0046】
グラフトベースとして好適なアクリレートゴムは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルのポリマーであり、また、任意にグラフトベースに関して40重量%までの他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーを有するコポリマーである。好ましい重合可能なアクリル酸エステルには、C〜Cアルキルエステル、例えば、メチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロゲンC〜Cアルキルエステル、例えば、クロロエチルアクリレートおよびこれらのモノマーの混合物がある。
【0047】
1以上の重合可能な二重結合を有するモノマーは、架橋によって共重合することができる。好ましい架橋モノマーの例は、3〜8個のC原子を有する不飽和モノカルボン酸と3〜12個のC原子を有する不飽和一価アルコール、または2〜4個のOH基と2〜20個のC原子を有する飽和ポリオールとのエステル、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;多価不飽和複素環化合物、例えば、トリビニルおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えば、ジビニルおよびトリビニルベンゼン;さらにはトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。
【0048】
好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3つのエチレン性不飽和基を示す複素環化合物である。
【0049】
特に好ましい架橋モノマーは環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、グラフトベースに関して、好ましくは0.02〜5、特に0.05〜2重量%である。
【0050】
少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合には、グラフトベースの1重量%以下の量に抑えることが有効である。
【0051】
アクリル酸エステルに加えて、任意にグラフトベースの製造に寄与しうる好ましい「他の」重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜Cアルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベースとして好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含有量を示すエマルジョンポリマーである。
【0052】
他の好適なグラフトベースは、DE−A3704657号公報、DE−A3704655号公報、DE−A3631540号公報およびDE−A3631539号公報に記載されているような、グラフト活性部位を有するシリコンゴムである。
【0053】
成分Bは1以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーB2を含有することもでき、ここで、好ましくは前述のグラフトポリマーB1は発明による組成物中に分散される。
【0054】
好適なビニル(コ)ポリマーB2は、ビニル芳香族、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)を含む群からの少なくとも1つのモノマーのポリマーである。
50〜99、好ましくは60〜80重量%の、ビニル芳香族および/または環−置換ビニル芳香族(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/またはメタクリル酸(C〜C)アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)と、
1〜50、好ましくは20〜40重量%の、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)(例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)および/または不飽和カルボン酸(例えばマレイン酸)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)(例えば、マレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド)と
を含む(コ)ポリマーが特に好適である。
【0055】
(コ)ポリマーB2は樹脂性かつ熱可塑性である。
【0056】
スチレンおよびアクリロニトリルを含むコポリマーが特に好ましい。
【0057】
B2による(コ)ポリマーは周知であり、ラジカル重合によって、特にエマルジョン、懸濁液、溶液またはバルク重合によって製造されうる。好ましくは(コ)ポリマーは15,000〜200,000、特に50,000〜180,000の平均分子量M(重量平均、光散乱または沈殿法によって決定される)を有する。
【0058】
(成分C)
ビニル(コ)ポリマー、すなわちビニル芳香族、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)が、成分Cとしての使用に好適である。スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸(C〜C)アルキルエステル、アクリロニトリルおよびマレイン酸無水物を含む群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む(コ)ポリマーが特に好適である。
【0059】
成分B2に対して、成分Cは実質的に低平均分子量を特徴とする。成分Cの重量平均分子量は、1500〜5000g/mol、好ましくは2000〜4500g/molである。成分Cの化学組成は、成分Cのガラス転移温度(T)が>40℃、好ましくは>50℃であり、かつ成分CがPC+ABS組成物の常套の処理温度(260〜280℃)で顕著な変質の兆候を示さないように、選択されるべきである。ガラス転移温度は一般的に、70℃を越えてはならない。窒素流中で、10K/分の加熱速度で、280℃で動的熱重量分析(TGA)について測定された質量損失は、成分Cに関して、最大10重量%、好ましくは最大5重量%であるべきである。
【0060】
コポリマー中のα−メチルスチレンの割合が22重量%未満、好ましくは18重量%未満、特に1.5〜17重量%であり、および/またはコポリマーC)中のアクリレートの割合が0〜22重量%、好ましくは0〜20重量%、特に0〜17重量%であれば、これらの低質量損失は達成される。コポリマー中のアクリレートの割合について特に好ましい下限は3重量%、特に5重量%であり、量は成分C)に関して表したものである。
【0061】
好ましいアクリレートは、ブチルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートである。
【0062】
成分Cによるビニル(コ)ポリマーは周知であり、また入手可能であり、特にフロー添加剤として、例えば、商品名ジョンクリル(Joncryl)でジョンソン・ポリマーズ(Johnson Polymers)社(スタートバント、WI、USA)によって市販されている。
【0063】
成分Cによるビニル(コ)ポリマーは、文献から周知の方法によって、例えば米国特許第4,414,370号公報、米国特許第4,529,787号公報、米国特許第4,546,160号公報および米国特許第5,508,366号公報に記載されている方法によって、製造されうる。
【0064】
(成分D)
本発明の意味でのリン−含有難燃剤は、好ましくはモノマー状およびオリゴマー状のリン酸およびホスホン酸エステル、ホスホネートアミンおよびホスファゼンを含む群から選択され、これによって、これらの群の1以上から選択されるいくつかの成分の混合物を難燃剤として使用することもできる。ここでは特に記載しない他のハロゲンを含まないリン化合物も単独で使用されてもよく、または他のハロゲンを含まないリン化合物と組み合わせて使用されてもよい。
【0065】
好ましいモノマー状およびオリゴマー状リン酸およびホスホン酸エステルは一般式(IV)を有するリン化合物である。
【化5】


ここで、R、R、RおよびRは互いに独立して、任意にハロゲン化されたC〜Cアルキル、任意にアルキル、好ましくはC〜Cアルキル、および/またはハロゲン、好ましくは塩素、臭素で置換されたC〜Cシクロアルキル、C〜C20アリールまたはC〜C12アラルキルを示し、
nは、互いに独立して、0または1を示し、
qは0〜30を示し、かつ
Xは6〜30個のC原子を有する単核または多核芳香族基、または2〜30個のC原子を有する線形または分岐脂肪族基を示し、これらの基はOH置換されてもよく、8個までのエーテル結合を含有してもよい。
【0066】
好ましくは、R、R、RおよびRは互いに独立して、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニルC〜Cアルキルを表す。芳香族基のR、R、RおよびRは、その部分に対して、ハロゲンおよび/またはアルキル基、好ましくは塩素、臭素および/またはC〜Cアルキルで置換されうる。特に好ましいアリール基は、クレジル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニル、およびその対応する臭素化および塩素化誘導体である。
式(IV)におけるXは、好ましくは6〜30個のC原子を有する単核または多核芳香族基を示す。これは好ましくは式(I)を有するジフェノールから誘導される。
式(IV)におけるnは、互いに独立して、0または1でありうり、好ましくはnは1である。
qは0〜30の値を表す。式(IV)を有する、異なる成分の混合物を使用する場合には、好ましくは、0.3〜20、特に好ましくは0.5〜10、特に0.5〜6の数平均q値を有する混合物を使用することができる。
Xは特に好ましくは
【化6】


またはその塩素化または臭素化誘導体を表し、特にXはレゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導される。Xは特に好ましくはビスフェノールAから誘導される。
【0067】
ビスフェノールAから誘導される式(IV)を有するオリゴマー状リン酸エステルの使用が特に有効である。なぜなら、このリン化合物を含有する組成物は、特に高い応力割れ抵抗性および加水分解耐性と、射出成形によって処理される場合に特に低いプレートアウト傾向を示すからである。さらに、特に高い熱耐性が、これらの難燃剤を用いて達成されうる。
【0068】
モノホスフェート(q=0)、オリゴホスフェート(q=1〜30)またはモノ−およびオリゴホスフェートの混合物が発明による成分Cとして使用されうる。
【0069】
式(IV)を有するモノリン化合物は特に、トリブチルホスフェート、トリス−(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレジルホスフェート、トリ−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、ハロゲン−置換アリールホスフェート、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、トリフェニルホスフィンオキサイドまたはトリクレジルホスフィンオキサイドである。
【0070】
成分Cによる式(IV)のリン化合物は周知であり(例えば、EP−A363608号公報、EP−A640655号公報参照)、周知の方法と類似の方法(例えば、ウルマンズ・エンツィクロペディエ・デア・テクニッシェン・ヘミー、Vol.18、p.301ff.1979;ホーベン−ベイル(Houben−Weyl)、メソーデン・デア・オリガニッシェン・ヘミー(Methoden der organischen Chemie)、Vol.12/1、p.43;バイルスタイン(Beilstein)、Vol.6、p.177)によって製造されうる。
【0071】
平均q値は、好適な方法(ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))によってホスフェート混合物の組成(分子量分布)を同定し、qについて平均値を計算することによって決定される。
【0072】
ホスホネートアミンは好ましくは、式(V)を有する化合物である。
【化7】

ここで、Aは式(Va)
【化8】


または(Vb)
【化9】


を有する基を表し、
11およびR12は互いに独立して、非置換または置換C〜C10アルキルまたは非置換または置換C〜C10アリールを表し、
13およびR14は互いに独立して、非置換または置換C〜C10アルキルまたは非置換または置換C〜C10アリールを表し、または
13およびR14は共同で非置換または置換C〜C10アルキレンを表し、
yは数値0、1または2を示し、
は独立して、水素、任意にハロゲン化C〜Cアルキル、非置換または置換C〜C10アリールを表す。
は、好ましくは独立して、水素を表し、ハロゲンで置換されうるエチル−、n−またはイソ−プロピルを表し、非置換またはC〜Cアルキル−置換および/またはハロゲン−置換C〜C10アリール、特にフェニルまたはナフチルを表す。
【0073】
11、R12、R13およびR14におけるアルキルは、好ましくは独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−、イソ−、sec.−またはtert.−ブチル、ペンチルまたはヘキシルを表す。
【0074】
11、R12、R13およびR14における置換アルキルは、好ましくは独立して、ハロゲン−置換C〜C10アルキル、特に1置換または2置換メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−、イソ−、sec.−またはtert.−ブチル、ペンチルまたはヘキシルを表す。
【0075】
11、R12、R13およびR14におけるC〜C10アリールは、好ましくは独立して、フェニル、ナフチルまたはビナフチル、特にo−フェニル、o−ナフチル、o−ビナフチルを表し、これらはハロゲンで置換(一般的に1、2または3置換)されうる。
【0076】
13およびR14は、これらが直接結合している酸素原子およびリン原子と共同で環構造を形成することができる。
【0077】
以下のものを例のために実用の見地から挙げることができる:式(Va−I)
【化10】


を有する5,5,5’,5’,5”,5”−ヘキサメチルトリス−(1,3,2−ジオキサホスホリナンメタン)アミノ−2,2’,2”−トリオキサイド(ソリューティア(Solutia)社、セントルイス、USAからの実験的生成物XPM1000);
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−ブチル−N[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−5,5−ジメチル−,P,2−ジオキサイド;
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−5,5−ジメチル−N−フェニル−,P,2−ジオキサイド;
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N,N−ジブチル−5,5−ジメチル−,2−オキサイド;
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−N−エチル−5,5−ジメチル−,P,2−ジオキサイド;
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−ブチル−N−[(5,5−ジクロロメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−5,5−ジクロロメチル−,P,2−ジオキサイド;
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−[(5,5−ジクロロメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−5,5−ジクロロメチル−N−フェニル−,P,2−ジオキサイド;
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N,N−ジ−(4−クロロブチル)−5,5−ジメチル−2−ジオキサイド;
1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メタン]−N−(2−クロロエチル)−5,5−ジ(クロロメチル)−,P2−ジオキサイド。
【0078】
式(Va−2)または(Va−3)を有する化合物も好ましい。
【化11】


ここで、R11、R12、R13およびR14は上で挙げた意味を有する。
【0079】
式(Va−2)および(Va−1)を有する化合物が特に好ましい。
【0080】
ホスホネートアミンの製造は例えば、米国特許第5,844,028号明細書に記載されている。
【0081】
ホスファゼンは、式(VIa)および(VIb)を有する化合物である。
【化12】


ここで、Rは同じまたは異なっており、アミノを表し、任意にハロゲン化、好ましくはフッ素でハロゲン化されたC〜Cアルキルを表し、または任意にアルキル、好ましくはC〜Cアルキルおよび/またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素で置換されたC〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキルを表し、C〜C20アリール、好ましくはフェニルまたはナフチル、C〜C20アリールオキシ、好ましくはフェノキシ、ナフトキシ、またはC〜C20アラルキル、好ましくはフェニルC〜Cアルキルを表し、
kは0または1〜15の数、好ましくは1〜10の数を表す。
【0082】
以下のものを例のために挙げることができる:
プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼンおよびフルオロアルキルホスファゼン。
【0083】
フェノキシホスファゼンが好ましい。
【0084】
ホスファゼンは単独で使用されても混合物として使用されてもよい。R基はすべて同じであっても良く、または式(VIa)および(VIb)において2以上の基が異なっていても良い。
【0085】
ホスファゼンおよびその製造は例えば、EP−A728811号公報、DE−A1961668号公報およびWO97/40092号公報に記載されている。
【0086】
難燃剤は、単独でも使用されても、または互いを組み合わせて、または別の難燃剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0087】
(成分E)
成分Dに対応する難燃剤は、しばしば、いわゆるドリッピング防止剤と組み合わせて使用される。ドリップは火災時に燃焼するので、ドリッピング防止剤はこのような材料のドリップ傾向を低減するものである。ここではフッ素化ポリオレフィン、シリコンおよびアラミドファイバを含む類の物質からの化合物を、例のために挙げることができる。これらも本発明による組成物中で使用することができる。好ましくは、フッ素化ポリオレフィンがドリッピング防止剤として使用される。
【0088】
フッ素化ポリオレフィンは周知であり、例えば、EP−A0640655号公報に記載されている。これらは例えば、デュポン(DuPont)によって商品名テフロン(Teflon)30Nで販売されている。
【0089】
フッ素化ポリオレフィンは、純粋な形態で使用されても、好ましくはスチレン/アクリロニトリルまたはPMMAベースにおけるフッ素化ポリオレフィンのエマルジョンとグラフトポリマー(B1)のエマルジョンとの、またはコポリマーのエマルジョンとの凝結混合物の形態で使用されてもよく、フッ素化ポリオレフィンをエマルジョンとしてグラフトポリマーまたはコポリマーのエマルジョンと混合し、次いで凝結させる。
【0090】
さらに、フッ素化ポリオレフィンを、グラフトポリマー(成分B1)またはコポリマーと共に、好ましくはスチレン/アクリロニトリルまたはPMMAベースにおけるプレ−化合物として使用することができる。フッ素化ポリオレフィンを、パウダーとして、グラフトポリマーまたはコポリマーのパウダーまたはペレットと共に混合し、一般的に200〜330℃の温度で常套の装置(例えば、密閉混合機、押出し成形機または二軸性押出し成形機)中で溶融混合する。
【0091】
また、フッ素化ポリオレフィンは、フッ素化ポリオレフィンの水分散体の存在中で、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和モノマーのエマルジョン重合によって製造されるマスターバッチの形態で使用されうる。好ましいモノマー成分は、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートおよびその混合物である。ポリマーは酸沈殿とその後の乾燥の後に、自由に流動するパウダーとして使用される。
【0092】
凝結物、プレ−化合物またはマスターバッチは、通常5〜95重量%、好ましくは7〜80重量%のフッ素化ポリオレフィンの固形分含有量を有する。
【0093】
フッ素化ポリオレフィンは0〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部、特に0.2〜0.5重量部の濃度で使用され、これらの量は、凝結物、プレ−化合物またはマスターバッチを用いる場合には、純粋なフッ素化ポリオレフィンに関する。
【0094】
(成分F(その他の添加剤))
また、本発明による組成物は、少なくとも1つの常套のポリマー添加剤、例えば、潤滑剤または剥離剤、例えばペンタエリスリトールテトラステアレート、核化剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤または補強剤、例えばタルクまたは珪灰石のようなシリケート、別の難燃剤または難燃協力剤、例えばナノスケールの無機材料、および染料または顔料を含むことができる。
【0095】
本発明による組成物は、別のポリマー成分、例えばポリフェニレンオキサイド、ポリエステル、エポキシ樹脂またはノボラックを含むこともできる。
【0096】
本明細書において規定されるすべて重量部は、組成物中の全ての成分の重量部の合計が100となるように標準化される。
【0097】
本発明による組成物は周知の方法によって200℃〜300℃の温度で各種成分を混合し、常套の装置(例えば、密閉混合機、押出し成形機または二軸性押出し成形機)中でこれらを溶融混合し、溶融押出しすることによって製造される。
【0098】
個々の構成要素は、周知の方法によって、連続的にでも同時にでも、20℃付近(室温)ででも高温ででも混合されうる。
【0099】
本発明による組成物は、あらゆるタイプの成形部品の製造に使用されうる。これらは例えば、射出成形、押出しおよびブロー成形処理によって製造されうる。さらなる処理形態は、予め製造されたシートまたはフィルムから熱形成によって成形体を製造するものである。
【0100】
さらに、本発明は、組成物の製造方法、成形部品の製造のためのその使用、および成形部品それ自身をも提供する。
【0101】
このような成形部品の例は、フィルム、異形材、家庭部門のあらゆるタイプ、例えばジュース抽出器、コーヒーメーカー、ミキサーのような家庭用品;モニター、プリンタ、複写機のような事務機器;さらにはプレート、パイプ、電気配線ダクト、建築分野、内装調度品および外装用途用の異形材;電気技術部門用の部品、例えばスイッチおよびプラグおよび自動車の内装および外装部品である。
【0102】
本発明による組成物は特に、例えば、次のような成形部品を製造するために使用されうる:
列車、船、飛行機、バスおよび自動車用の内装調度品、ハブキャップ、小型変圧器を含む電気機器用の収納材、情報配布および転送用装置用の収納材、医療目的の収納材および外装材、マッサージ装置および収納材、子供用のおもちゃの自動車、2次元のウォールパネル、安全装置用の収納材、リアスポイラー、自動車本体部品、断熱輸送コンテナ、小動物をつなぎとめ世話するための器具、測定用成形部品および風呂用品、ファンの開口用カバー枠、庭用倉庫および道具格納庫用の成形部品、ガーデニング器具用収納材、自動車内装用の安全部材。
【0103】
本発明をより詳細に例示するために、以下に実施例を示す。
【実施例】
【0104】
表1に示し、以下に簡単に記載した成分を、ZSK−25において260℃で溶融混合した。試験片をアルバーグ(Arburg)270E射出成形装置において260℃で製造した。
【0105】
(成分A)
ビスフェノールAに基づく線形ポリカーボネート。溶媒としてのCHCl中で、25℃で、0.5g/100mlの濃度で測定して、1.28の相対溶液粘度を有する。
【0106】
(成分B)
B1:60重量部の粒子の架橋ポリブタジエンゴム(平均粒子直径d50=0.3μm)における、40重量部の73:27の重量比のスチレンおよびアクリロニトリルのグラフトポリマー。エマルジョン重合によって製造される。
B2:72:28のスチレンのアクリロニトリルに対する重量比と0.55dl/gの固有粘度を有するスチレン/アクリロニトリルコポリマー。(ジメチルホルムアミド中で20℃で測定される。)
【0107】
(成分C)
ジョンクリル(Joncryl)ADF−1350:4000g/molの重量平均分子量Mと54℃のガラス転移温度Tを有するジョンソン・ポリマーズ社(スタートバント、WI、USA)からのスチレン−アクリロニトリルコポリマー。動的熱重量分析(TGA)において、窒素流中で、10K/分の加熱速度で、280℃で測定された質量損失は3重量%である。
【0108】
(成分D)
ビスフェノールA−ベースのオリゴホスフェート
【化13】

【0109】
(成分E)
水における前述の成分B1によるグラフトポリマーのエマルジョンと、水におけるテトラフルオロエチレンポリマーのエマルジョンとの凝結混合物としてのテトラフルオロエチレンポリマー。混合物中でのグラフトポリマーB1のテトラフルオロエチレンポリマーに対する重量比は90重量%〜10重量%である。テトラフルオロエチレンポリマーエマルジョンは60重量%の固形分含有量を有し;平均粒子直径は0.05〜0.5μmである。グラフトポリマーエマルジョンは34重量%の固形分含有量を有する。
【0110】
テトラフルオロエチレンポリマー(デュポンからのテフロン30N)のエマルジョンを、グラフトポリマーB1のエマルジョンと混合し、ポリマー固形分に関して1.8重量%のフェノール性酸化防止剤を用いて安定化させる。混合を85〜95℃の温度で、MgSO(エプソム塩)と酢酸のpH4〜5の水溶液を用いて凝結させ、実質的に電解質でなくなるまで、濾過および洗浄し、遠心分離し次いで100℃でパウダーになるまで乾燥させることによって水のバルクをなくす。
【0111】
(成分F1)
剥離剤としてペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)。
【0112】
(成分F2)
ホスフィト安定剤。
【0113】
(本発明による成形組成物の特性試験)
切欠き衝撃強さを、80mm×10mm×4mmの大きさの試験片について、ISO 180/1Aに従って、室温で決定する。
【0114】
VicatB120による熱耐性を、80mm×10mm×4mmの大きさの試験片について、ISO 306に従って、決定する。
【0115】
化学物質の影響下での応力割れ作用(ESC作用)を、80mm×10mm×4mmの大きさの試験片について、DIN53 449に従ってテストする。60体積%のトルエンと40体積%のイソプロパノールの混合物を試験媒体として使用する。試料をアーチ型のジグを用いて予め引き伸ばし、この媒体中での割れ破損までの時間を、事前伸長の関数として決定する。難燃性組成物では、5分以内に割れ破損が生じる最小の事前伸長を評価する。難燃剤を有さない組成物では、0.8%の一定の外側繊維歪みでの割れ破損までの時間を、評価基準として使用した。
【0116】
溶融粘度を、DIN54 811に従って、260℃で、1000s−1のせん断速度で決定する。
【0117】
難燃性試料の燃焼作用を、127m×12.7mm×1.5mmの大きさの試験片について、UL Subj.94Vに従って測定した。
【0118】
本発明による組成物の特性の概要およびこの組成物から得られた試験片の特性の概要を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1から、低分子量ビニルコポリマーの添加が溶融流動性および化学物質耐性(ESC作用)の両方を改良していることが解る。難燃性、切欠き衝撃強さおよび熱耐性は、測定精度の制限範囲内で影響を受けていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはその混合物と、
B)ゴム変性ビニル(コ)ポリマーと、
C)ビニル(コ)ポリマーであって、該コポリマーC)に関して、22重量%未満の割合のα−メチルスチレンおよび/または0〜22重量%の割合のアクリレートを含み、1500〜5000g/molの重量平均分子量Mおよび>40℃のガラス転移温度を有するビニル(コ)ポリマーと、任意に、
D)リンベースの難燃剤と、
E)ドリッピング防止剤と
を含む組成物。
【請求項2】
20〜98重量部の成分A)と、
1〜80重量部の成分B)と、
0.1〜20重量部の成分C)と、任意に、
1〜30重量部の成分D)と、
0〜1重量部の成分E)とを
含む請求項1による組成物。
【請求項3】
40〜90重量部の成分A)と、
0〜50重量部の成分B)と、
0.5〜10重量部の成分C)と、任意に、
2〜20重量部の成分D)と、
0.1〜0.5重量部の成分E)とを
含む請求項1による組成物。
【請求項4】
成分C)は2000〜4500g/molの重量平均分子量Mおよび>50℃のガラス転移温度を示す請求項1による組成物。
【請求項5】
成分B)として、
1)50〜99重量%の、ビニル芳香族、環−置換ビニル芳香族およびメタクリル酸(C〜C)アルキルエステルを含む群から選択される少なくとも1つと、
2)1〜50重量%の、ビニルシアニド、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステルおよび不飽和カルボン酸の誘導体を含む群から選択される少なくとも1つと
を含む混合物の、5〜95重量%のモノマーの、
グラフトベースとして、<10℃のガラス転移温度を有する95〜5重量%のゴムにおける、
1以上のグラフトポリマーを含む請求項1による組成物。
【請求項6】
群1のモノマーは、スチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートを含む群から少なくとも1つ選択され、群2のモノマーは、アクリロニトリル、マレイン酸無水物およびメチルメタクリレートを含む群から少なくとも1つ選択される請求項5による組成物。
【請求項7】
モノマーはスチレンおよびアクリロニトリルである請求項6による組成物。
【請求項8】
グラフトベースは、ジエンゴム、アクリレートゴム、EP(D)Mゴム、ポリウレタンおよびシリコンゴムおよび先に挙げたゴムの少なくとも2つを含むコンポジットゴムを含む群の少なくとも1つから選択される請求項5による組成物。
【請求項9】
グラフトベースは、ジエンゴム、アクリレートゴムおよびシリコン−アクリレートゴムを含む群から少なくとも1つ選択される請求項8による組成物。
【請求項10】
成分C)として、ビニル芳香族、ビニルシアニド、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体を含む群から選択される少なくとも1つのモノマーからなるビニル(コ)ポリマーを含む請求項1による組成物。
【請求項11】
ビニル(コ)ポリマーは、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、アクリロニトリルおよびマレイン酸無水物を含む群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む請求項10による組成物。
【請求項12】
成分D)は、モノマー状およびオリゴマー状リン酸およびホスホン酸エステル、ホスホネートアミン、ホスファゼンまたはその混合物を含む群から少なくとも1つ選択される請求項1による組成物。
【請求項13】
成分C)として、一般式(IV)
【化1】


(ここで、R、R、RおよびRは互いに独立して、任意にハロゲン化されたC〜Cアルキル、任意にアルキル−および/またはハロゲン−置換されたC〜Cシクロアルキル、C〜C20アリールまたはC〜C12アラルキルを示し、
nは、互いに独立して、0または1を示し、
qは0〜30を示し、かつ
Xは6〜30個のC原子を有する単核または多核芳香族基、または2〜30個のC原子を有する線形または分岐脂肪族基を示し、これらの基はOH置換されてもよく、8個までのエーテル結合を含有してもよい)
を有するモノマー状およびオリゴマー状リン酸またはホスホン酸エステルを含む請求項12による組成物。
【請求項14】
式(IV)におけるXは、
【化2】


またはその塩素化または臭素化誘導体を表し、
はフェニルまたはC〜Cアルキル−置換フェニルを表し、かつ
qは0.5〜6を示す請求項13による組成物。
【請求項15】
潤滑剤または剥離剤、核化剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤または補強剤、難燃協力剤、染料および顔料を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む請求項1による組成物。
【請求項16】
成分C)は、1.5〜17重量%の割合のα−メチルスチレンおよび/または0〜20重量%の割合のアクリレートを示す前出の請求項の1つによる組成物。
【請求項17】
ドリッピング防止剤として、フッ素化ポリオレフィンを、成分B)によるグラフトポリマーまたはビニル(コ)ポリマーと共にプレ−化合物またはマスターバッチの形態で含有する前出の請求項の1つによる組成物。
【請求項18】
フッ素化ポリオレフィンは、スチレン/アクリロニトリルまたはポリメチルメタクリレートに基づくコポリマーと共にプレ−化合物またはマスターバッチの形態で使用される請求項17による組成物。
【請求項19】
成形部品の製造のための請求項1による組成物の使用。
【請求項20】
請求項1による組成物から得られうる成形部品。

【公表番号】特表2007−508400(P2007−508400A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515932(P2006−515932)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006420
【国際公開番号】WO2005/000962
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】