説明

改良された生育特徴を有する木本植物およびそれを作製するための方法

本発明は、バイオインフォマティクスの手段、EST配列決定からのデータおよびDNAアレイを使用して同定された候補遺伝子の大グループから、商業的な表現型が考えられる遺伝子を選択するための新規で広範な分析のためのプラットフォームに関する。本発明の態様は、その野生型と比べると生育が増大しているトランスジェニック植物を作製する方法を提供する。その方法は、木部形成の異なる段階中に特異的に発現する少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物のレベルを植物中で変化させるステップを含む。本発明の追加の態様は、本発明による組換えポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物の植物細胞または植物子孫を提供する。他の態様は、本発明のヌクレオチド配列を含むDNA構築物およびそのDNA構築物を含む植物細胞または植物子孫に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には分子生物学の分野に関し、植物の生育特徴を改良するための方法に関する。より具体的には、本発明は、植物の表現型を改変するための方法、および木部形成の異なる段階中に特異的に発現する遺伝子の発現が変化し、その結果生育表現型が改変されたトランスジェニック植物に関する。本発明は、本発明の方法に有用な構築物も提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、森林樹木工学および分子育種の主目的は、木材品質および産出量を改善することである。木製品に対する世界的需要は毎年約1.7%で増加しており、世界の森林からの最大持続収穫率にすでに到達しているまたは上回っているという事実にもかかわらず、木材消費のこのような増加が生じている。したがって、世界規模の植林地木材生産が増加する必要性がある。林業植林地は、増加する大気CO2に対応する炭素隔離作物としての利点も有する可能性がある。同様に、例えば、エネルギー生産のための原料に対する需要を満たすために、非木本植物からのバイオマス生産の増加は望ましい。したがって、高等種における細胞発生中の特定の過程を改変するのは、樹木の特性だけではなく、他の植物の特性も改良することになると、商業的に大いに興味深い。
【0003】
頂端分裂組織による植物生育により、一連の一次組織が成長し、茎と根が伸びる。この一次生育に加えて、樹種は二次生育を経て形成層から二次組織「木部」を生成する。二次生育は茎と根の周囲の寸法を増加させる。
【0004】
Sterkyら、1998年(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1998年(95)、13330〜13335頁)は、ヨーロッパヤマナラシ(Populus tremula L.)×アメリカヤマナラシ(tremuloides Michx.)およびコットンウッド(Populus trichocarpa)「Trichobel」の木部形成組織の5629個のexpressed sequence tag(EST)を含む、2種類のポプラ種における大規模遺伝子発見計画の結果を公表している。これらのESTは、2つのcDNAライブラリーについて総数3719個の固有の転写物を有しており、推定される機能はこれらの転写物のうちの2245個に割り当てることができた。筆者らは、示されたESTデータは、植物の二次木部および師部の形成に関与する遺伝子を同定するのに役立つであろうと述べているが、その同定をどのようにしたら実現できるかに関して明確な方向付けをすることができていない。前記Sterkyら、1998年の論文では、未知のまたは不確実な機能を有する非常に多数のESTの存在も明らかにされた。
【0005】
先行技術では(例えば、Sterkyら、1998年)、ライブラリーは活発に生育している樹木から単離した茎組織から構築された。形成層領域ライブラリーは、ヨーロッパヤマナラシ×アメリカヤマナラシの発生中の木部、成長点形成層帯、ならびに発生中および成熟師部を含む混合組織から調製された。これらの形成層組織は、樹皮の皮をむきメスで両曝露表面を擦り取ることにより得られた。発生木部ライブラリーはコットンウッドTrichobelから調製された。これらの組織は、樹皮の皮をむき曝露木部面を擦り取ることにより得られた。そのような方法を使用すれば、全形成層領域、発生木部および師部領域(曝露樹皮を擦り取ることから作製)を表す3つの異なるライブラリーを構築することのみ可能である。先行技術では、形成層領域の遺伝子の発現と発生木部組織で発現する遺伝子が比較された。前記実験は、組織調製プロトコルにより課せられる限界のせいで、おおざっぱな比較しかできなかった。発生木部ライブラリーに使用された組織は、増殖木部細胞から後期木部発生まですべての組織を含有すると考えられる。
【0006】
現存する問題は、どのようにして潜在的に最も重要な遺伝子を同定するか、そして、これらの遺伝子をどのようにして細胞の特定の発生段階および最終特性に関連付けるかということがある。別の問題は、どのようにして、植物中の特定の細胞型および/または機能に関連付けられるこれまで未知の遺伝子を同定するかということがある。最後に、特有の問題は、どのようにして、細胞分裂、細胞増殖、細胞壁合成、アポトーシスおよびプログラム細胞死ならびに樹木生育および木部特性を決定することに関与している他の重要な過程に関与している特定の遺伝子を見つけるかとうことがある。
【0007】
Hertzbergら、2001年(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2001年(98)、14372〜14737頁)およびSchraderら、2005年(Plant Cell、(16)、2278〜2292頁)は、転写プロファイリングを使用して、木部発生中の数千の遺伝子の転写階層を明らかにし、未知の機能をもつ多くの遺伝子のさらなる解明を促進することができる発現データを提供した(Whiteら、1999年(Science 1999年(286)2187〜2184頁);Aharoniら、2000年(Plant Cell 2000年(12)647〜662頁)。しかし、これは樹木などの木本植物では技術的に困難である。HertzbergらおよびSchraderらは、高度に組織化され異なる発生段階間で容易に認識され明確な境界面をもつポプラの発生二次木部を研究した。木部形成は、維管束形成層において開始される。形成層派生物は、分裂、増殖、二次壁形成、木化および最後にプログラム細胞死の過程を通じて木部細胞へと成長する。樹木の維管束成長点の大きな物理的サイズは、限定された発生段階から接線凍結切片化により試料を得る類のない可能性を提供する(Ugglaら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1996年(93)、9282〜9286頁)。ヨーロッパヤマナラシ×アメリカヤマナラシ(ハイブリッドアスペン)における木部形成の個体発生中の特定段階での定常状態mRNAレベルを決定するために、木部発生領域中の30μm厚切片を試料採取し、続いてハイブリッドアスペン(hybrid aspen)に由来する20000個までの固有のESTからなる、いくつかのcDNAマイクロアレイを使用して分析された(Schenaら、1995年、Science 1995年(270)467〜470頁)。
【0008】
EST計画、ゲノム配列決定およびDNAアレイ技術を使用した発現研究からの結果がどこでいつ遺伝子が発現するのかを立証できることは明白であるが、これらの種類の分析手段からのみで遺伝子の生物学的および/または技術的機能を明らかにすることはめったに可能ではない。遺伝子機能を分析し立証するためには、例えば、遺伝子不活化および/または遺伝子過剰発現により機能的特徴付けを実施しなければならない。しかし、興味深くほとんどの場合思いがけない商業的な特徴を備えた遺伝子を同定することができるためには、複数の判定基準に基づいて候補遺伝子を評価する新規の分析のためのプラットフォームの必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第91/14772号
【特許文献2】国際公開第2004097024号
【特許文献3】米国特許第4987071号
【特許文献4】米国特許第5543508号
【特許文献5】米国特許第5231020号
【特許文献6】米国特許第5583021号
【特許文献7】国際公開第2006078431号
【特許文献8】PCT公開国際公開第96/06166号
【特許文献9】PCT公開国際公開第98/53057号
【特許文献10】米国特許第5107065号
【特許文献11】米国特許第6506559号
【特許文献12】米国特許出願公開第2002/0168707 A1号
【特許文献13】米国特許出願第09/423143号(国際公開第98/53083号)
【特許文献14】米国特許出願第09/127735号(国際公開第99/53050号)
【特許文献15】米国特許出願第09/084942号(国際公開第99/61631号)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Sterkyら、1998年(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1998年(95)、13330〜13335頁)
【非特許文献2】Hertzbergら、2001年(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2001年(98)、14372〜14737頁)
【非特許文献3】Schraderら、2005年(Plant Cell、(16)、2278〜2292頁)
【非特許文献4】Whiteら、1999年(Science 1999年(286)2187〜2184頁)
【非特許文献5】Aharoniら、2000年(Plant Cell 2000年(12)647〜662頁)
【非特許文献6】Ugglaら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1996年(93)、9282〜9286頁
【非特許文献7】Schenaら、1995年、Science 1995年(270)467〜470頁
【非特許文献8】Wilson,B.F.、Wodzicki,T.J.およびZhaner,R.(1966)Differentiation of cambial derivates:Proposed terminology.Forest Science 12、438〜440頁
【非特許文献9】Sambrookら、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、第2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、1989年
【非特許文献10】http:/www.ebi.ac.uk/clustalW/Index.html
【非特許文献11】http://www.paralign.org/.
【非特許文献12】H.NeurathおよびR.L.Hill、1979年、The Proteins、Academic Press、New York
【非特許文献13】SladeおよびKnauf、Transgenic Res.2005年4月;109〜15頁
【非特許文献14】Henikoff、TillおよびComai、Plant Physiol、2004年6月;135(2):630〜6頁
【非特許文献15】Ichikawaら、(1997)Nature 390、698〜701頁
【非特許文献16】Kakimotoら、(1996)Science 274:982〜985頁
【非特許文献17】LichtensteinおよびNellen(1997)、Antisense Technology;A Practical Approach IRL Press at Oxford University、Oxford、England
【非特許文献18】Brummel D.A.ら、Plant Journal 2003年、33、793〜800頁
【非特許文献19】Niuら、2006年、Expression of artificial microRNAs in transgenic Arabidopsis thaliana confers virus resistance.Science 2006年、24巻、No.11、1420〜1428頁
【非特許文献20】Gateway vectors for Agrobacterium-mediated plants transformation、Karimi,Mら、Trends In plant Sciences、第7巻、no 5、193〜195頁
【非特許文献21】Wesley S.V.ら、Construct design for efficient,effective and high-throughput gene silencing in plants.Plant Journal 2001年、27、581〜590頁
【非特許文献22】Tuskanら、2006年(G.A Tuskanら、2006年、The genome of Black Cottonwood、Populus tricocarpa(Torr.& Gray)、Science、第313巻、No.5793、1596〜1604頁
【非特許文献23】Vasilら、1984年、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、第I、II、III巻、Laboratory Procedures
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、バイオインフォマティクスの手段、EST配列決定からのデータおよびDNAアレイを使用して同定された候補遺伝子の大グループから、商業的な表現型を有すると考えられる遺伝子を選択するための新規で広範な分析のためのプラットフォームに関する。この分析のためのプラットフォームは、複数の判定基準の組合せに基づいた生育挙動の分析を行う。本発明は、前記判定基準を満たす遺伝子のグループから選択された1個または複数の遺伝子の発現を変えることによりトランスジェニック植物を作製するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の態様は、その野生型と比べると生育が増大しているトランスジェニック植物を作製する方法であって、木部形成の異なる段階中に特異的に発現する少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物レベルを植物中で変化させるステップを含む方法を提供する。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、前記少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループにおける前記遺伝子のRNAi下方調節が:
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および1対100に希釈した毎週施肥Weibulls Rika S NPK 7-1-5の下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における5%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における5%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/もしくは平均直径生育速度(ADGR)における18%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大の直径係数(MDC)における18%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度は4連続樹高データ点にわたりフィットさせて一次関数の勾配として定義され、樹高生育速度値は段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値は各植物ごとにコンピュータ処理される。
【0014】
この新規の分析のためのプラットフォームを使用して分析したいくつかの遺伝子は、興味深くほとんどの場合思いがけない商業的な特徴を示している。したがって、本発明の別の態様は、植物の中で木部形成段階中に特異的に発現する少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物レベルを改変することができるヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチド(DNA構築物)を含むトランスジェニック植物であって、前記少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループにおける前記遺伝子のRNAi下方調節が:
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における5%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における5%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/または平均直径生育速度(ADGR)における18%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大直径係数(MDC)における18%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度は4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値は段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値は各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される、
トランスジェニック植物に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明による組換えポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物の植物細胞または植物子孫を提供する。
【0016】
本発明の追加の態様は、上記の特徴を有するトランスジェニック植物により生成される木材を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、上記の少なくとも1つの配列を含むDNA構築物を提供する。
【0018】
最後に、本発明の一態様は、本発明によるDNA構築物を含む植物細胞または植物子孫を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】木部形成の異なる段階を示す図である。図1Aは、トルイジンブルーで染色したハイブリッドアスペン茎の横断面である。黒色バーは試料組織の位置を示している。師部試料は、形成層のその他の組織における遺伝子発現の低解像度写真を示すために含む。図1Bは、維管束発生中の異なる細胞型および段階の模式図である。バーは異なった発生段階および主要細胞壁成分の出現の時期と程度を描いている。
【図1b】図1Cは、試料採取した組織中の差次的発現を有する1791個の選択された遺伝子の階層クラスター解析を示している。下のカラースケールは、試料間の倍率変化を示している。図1Dの(I〜X)は、異なった差次的発現パターンをもつ遺伝子のグループを示しており、発現率はlog2スケール。試料は図の下に示されている。
【図2】木部分化データからの、選択された遺伝子の発現パターンを示すグラフである。ハイブリッドアスペンにおける機能解析のためのHertzbergら(2001年)のデータセットから選択された遺伝子の9主要例。図1Dにおけるのと同じ試料および図。グラフは木部分化帯にわたるその遺伝子の発現パターンを示している。発現率は対数スケールである。
【図3】成長点実験データからの選択された遺伝子の発現パターンを示すグラフである。ハイブリッドアスペンにおける機能解析のためのSchraderら(2004年)データセットから選択された遺伝子の6主要例。図1Dにおけるのと同じ試料および図。グラフは形成層帯にわたるその遺伝子の発現パターンを示している。発現データはSchraderら、2004年のBシリーズによる。規準化およびデータ準備の説明のために、発現値は対数スケールである(Schraderら、2004年を参照されたい)。
【図4】樹高生育曲線の例を示すグラフである。4つの異なるデータ点を使用した線形回帰によって得られた直線が示され、黒色の回帰直線は、最大樹高生育速度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本発明をさらに詳細に論じるのに先立って、以下の用語および従来技術をまず定義する。
【0021】
用語「トランスジェニック植物」とは、同一種、変種または品種の野生型植物には存在しない遺伝子材料を含有する植物のことである。前記遺伝子材料には、トランス遺伝子、挿入変異事象(トランスポゾンまたはT-DNA挿入突然変異によるなどの)、活性化標識配列、変異配列、相同組換え事象またはキメラ形成法により改変された配列が挙げられ得る。典型的には、外来遺伝子材料は人的操作により植物に導入されてきた。前記用語は、遺伝子材料が選択マーカーとして機能するように挿入された植物のことでもある。そのような選択マーカーの例には、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノトリシン、クロルスルフロン、メトトレキサート、ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、イミダゾリノン、d-アミノ酸およびグリフォセートが挙げられる。
【0022】
本文脈において、用語「生育」は、茎および根の伸長を含む一次生育、ならびに形成層からの二次組織、すなわち「木部」の生成、および茎と根の周囲の寸法の増加を含む植物の二次生育を含む。したがって、語句「生育の増大」は、本文脈では、同一生育条件の下で生育された場合、トランスジェニック植物のもとになる野生型植物と比べてのトランスジェニック植物の生育の増大に関する。下記のように、トランスジェニック植物は、植物が以下の実施例に定義する「生育差選択判定基準」のうちの少なくとも1つを満たす場合、生育が増大していると特徴付けられる。
【0023】
用語「表現型」とは、本文脈では、生育などの個々の植物の全物理的外観のことである。本文脈で使用される異なった生育表現型の例は、下の表1.2に収載されており、例えば、野生型集団と各構成グループ集団の平均最終樹高のことである「AFH」、または野生型集団と各構成グループ集団の平均最終直径のことである「AFD」と名付けられた表現型を含む。
【0024】
本発明の文脈では、用語「木部形成の段階」とは、Wilson,B.F.、Wodzicki,T.J.およびZhaner,R.(1966)Differentiation of cambial derivates:Proposed terminology.Forest Science 12、438〜440頁において定義されている細胞分裂および細胞増殖などの木部形成の段階のことである。
【0025】
木部形成の異なる段階中に特異的に発現する遺伝子について論じる場合、用語「特異的に発現する」は、その発現が木部形成段階中に増加する遺伝子を示すものとして使用される。木部形成の段階中の前記遺伝子の発現は、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、75%以上、100%以上、200%以上、300%以上、400%以上、500%以上、700%以上または1000%以上など、10%以上増加され得ることが理解されるであろう。
【0026】
用語「遺伝子」とは広く、生物学的機能と関連するDNAの任意のセグメントのことである。遺伝子には、コード配列および/またはコード配列の発現に必要な調節配列が挙げられる。遺伝子には、例えば他のタンパク質の認識配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、または他の調節領域)を形成する非発現DNA核酸セグメントも挙げられる。遺伝子は、対象の供給源からのクローニングまたは既知のもしくは予想される配列情報からの合成を含む種々の供給源から得ることができ、所望のパラメータを有するように設計された配列を含んでいてもよい。
【0027】
用語「RNA干渉」または「RNAi」とは一般的に、二本鎖RNA分子または短ヘアピンRNAが実質的なまたは完全な相同性を共有する核酸配列の発現を変化させるプロセスのことである。
【0028】
用語「RNAi下方調節」とは、1つまたは複数のRNAi種により媒介される核酸配列の発現の減少のことである。用語「RNAi種」とは、RNAiを誘発する特徴的なRNA配列のことである。
【0029】
用語「明期」とは、明と暗の1日周期のことである。
【0030】
用語「核酸構築物」、「DNA構築物」および「ベクター」とは、植物または他の生物を形質転換するために使用される遺伝子配列のことである。前記核酸構築物またはDNA構築物は、形質転換植物において、タンパク質または、例えばアンチセンスRNAなどの核酸配列の発現を指示することができるのがよい。典型的には、そのような核酸構築物またはDNA構築物は、所望の遺伝子産物または5'および3'転写調節エレメントに作動可能に連結された所望の核酸産物に対するコード領域を少なくとも含む。いくつかの実施形態では、そのような核酸構築物またはDNA構築物はキメラである、すなわち、異なる供給源の配列の混合物からなる。しかし、非キメラ核酸構築物またはDNA構築物も本発明では使用してよい。
【0031】
例えば、細胞、ヌクレオチド、ベクター、タンパク質またはポリペプチドに関して使用する場合の用語「組換え」は、典型的には、細胞、ヌクレオチド、またはベクターが、異種(もしくは外来)核酸の導入または天然の核酸の改変により改変されていること、あるいはタンパク質またはポリペプチドが異種アミノ酸の導入により改変されていること、あるいは細胞がそのようにして改変された細胞由来であることを示している。組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞には存在しない核酸配列(例えば、遺伝子)を発現する、または低発現で異常に発現するもしくはまったく発現されないと考えられる天然の核酸配列(例えば、遺伝子)を発現させる。細胞に関して使用される場合の用語「組換え」は、細胞が異種核酸を複製する、または異種核酸にコードされているペプチドもしくはタンパク質を発現することを示している。組換え細胞は天然(非組換え)型の細胞内には存在しない遺伝子を含有することができる。組換え細胞は、遺伝子が人為的な手段により改変され細胞に再導入されている天然型の細胞に存在する遺伝子も含有することができる。前記用語は、細胞から核酸を除去することなく改変されている細胞に内在性の核酸を含有する細胞も包含しており、そのような改変物には、遺伝子置換、部位特異的突然変異、および関連する技術により得られる改変物が挙げられる。
【0032】
用語「核酸配列」とは、一本鎖型のまたは二本鎖型のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーのことである。前記用語は、特に限定しない限り、基準核酸と類似の結合特性を有し天然に存在するヌクレオチドに類似する形で代謝される天然のヌクレオチドの既知類似物を含有する核酸配列を包含する。特定の核酸配列は、明確に示される配列だけではなく、他の形で指示しない限り、暗黙のうちに、その保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドン置換物)および相補的配列も包含している。
【0033】
「ポリヌクレオチド」は複数個の重合したヌクレオチド残基、例えば、少なくとも約15連続重合ヌクレオチド残基、任意選択に少なくとも約30連続ヌクレオチド、少なくとも約50連続ヌクレオチドを含む核酸配列である。多くの例では、ポリヌクレオチドは、ポリペプチド(もしくはタンパク質)またはそのドメインもしくはフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む。さらに、ポリヌクレオチドは、プロモーター、イントロン、エンハンサー領域、ポリアデニル化部位、翻訳開始部位、5'または3'非翻訳領域、レポーター遺伝子、選択マーカーまたは同様のものを含んでいてよい。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAであってよい。ポリヌクレオチドは、改変された塩基または改変された骨格を場合によって含む。ポリヌクレオチドは、例えば、ゲノムDNAもしくはRNA、転写物(mRNAなどの)、cDNA、PCR産物、クローン化DNA、合成DNAもしくはRNA、または同様のものであってよい。ポリヌクレオチドは、センス方向にでもアンチセンス方向にでも配列を含むことができる。
【0034】
用語「ポリペプチド」は、天然に存在するおよびその合成類似物を含む直鎖のアミノ酸残基を定義するのに広く使用されている。
【0035】
本発明の文脈では、「相補的な」は、2つのヌクレオチド配列間でのお互いの正確な対合能力のことである。例えば、オリゴヌクレオチドのある位置のヌクレオチドがDNAまたはRNA分子の対応する位置のヌクレオチドと水素結合することができれば、前記オリゴヌクレオチドと前記DNAまたはRNAはその位置で互いに相補的であるとみなされる。オリゴヌクレオチド内の十分な数のヌクレオチドが標的DNAまたはRNA内の対応するヌクレオチドと水素結合を形成することができて安定な複合体の形成を可能にする場合には、前記DNAまたはRNA鎖は互いに相補的であるとみなされる。
【0036】
本文脈では、語句「相補的配列」または「相補体」は、したがって、ストリンジェントな条件の下で本発明の核酸分子にアニールするヌクレオチド配列のことでもある。
【0037】
用語「ストリンジェントな条件」とは、高い、弱いまたは低いストリンジェンシーの一般的条件のことである。
【0038】
用語「ストリンジェンシー」とは、当技術分野では公知であり、核酸ハイブリダイゼーションが行われる条件(温度、イオン強度および有機溶剤などの他の化合物の存在)に関して使用される。「弱い」または「低い」ストリンジェンシーの条件と比べた場合、「高いストリンジェンシー」条件では、高頻度の相補的塩基配列を有する核酸フラグメントの間でのみ核酸塩基対合は起きる。ハイブリダイゼーションを試験するための適切な条件は、5×SSC中での予浸および、20%ホルムアミド、5×デンハルト液、50mMリン酸ナトリウム、pH6.8、および50mgの変性超音波処理したウシ胸腺DNA溶液中で〜40℃、1時間のプレハイブリダイズ、続いて約40℃、18時間の100mM ATPを補充した同一溶液中でのハイブリダイゼーション、続いて30分間、40℃(低いストリンジェンシー)、好ましくは50℃(中程度のストンジェンシー)、さらに好ましくは65℃(高いストリンジェンシー)、さらに好ましくは約75℃(非常に高いストリンジェンシー)での2×SSC、0.2%SDS中のフィルターの3回洗浄を含む。ハイブリダイゼーション法についてのさらに多くの詳細は、Sambrookら、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、1989年に見出すことができる。
【0039】
用語「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズ」とは、核酸配列が分離された変性過程の逆戻りなどの、相補的または一部相補的核酸配列間の会合を示すのに広く使用される。相補的ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間で、ワトソンクリック、フーグスティーン、逆フーグスティーン水素結合、等がある水素結合によりハイブリダイゼーションは起きる。DNAに一般に存在する4核酸塩基は、G、A、TおよびCであり、そのうちGはCと対合し、AはTと対合する。RNAでは、Tはウラシル(U)で置き換えられ、次にAと対合する。標準二本鎖形成に関与する核酸塩基中の化学基はワトソンクリック面をなす。フーグスティーンは、数年後に、プリン核酸塩基(GおよびA)はそのワトソンクリック面に加えて、二本鎖の外側から認識することができ、水素結合を介してピリミジンオリゴヌクレオチドに結合しそれにより三重らせん構造を形成するのに使用することのできるフーグスティーン面を有することを明らかにした。
【0040】
「サブ配列」または「フラグメント」は、完全配列の任意の部分である。したがって、フラグメントまたはサブ配列とは、それぞれ、アミノ酸(例えば、ポリペプチド)または核酸(例えば、ポリヌクレオチド)のより長い配列の一部を含むアミノ酸または核酸の配列のことである。
【0041】
本文脈では、2つのアミノ酸配列間のまたは2つのヌクレオチド配列間の相同性は、パラメータ「配列同一性」により記述される。
【0042】
用語「配列同一性」は、等長の2つのアミノ酸配列間のまたは2つの核酸配列間の相同性の程度の定量的尺度を示す。比較する2つの配列が等長ではない場合、間隙の挿入または代替的にポリペプチド配列もしくはヌクレオチド配列の末端での切断を可能にして、考えられる最良の一致が得られるように整列させなければならない。配列同一性は、Fell Objekt kan inte skapas genom redigering av faltkoder.として計算することができ、Ndlfは整列させた場合の2つの配列中の非同一残基の総数であり、Nrefは配列のうちの1つの残基の数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCとは75%の配列同一性を有することになる(Ndlf=2およびNref=8)。間隙は、特定の残基(複数可)の非同一性として計測され、すなわち、DNA配列AGTGTCは、DNA配列AGTCAGTCとは75%の配列同一性を有することになる(Ndlf=2およびNref=8)。
【0043】
ヌクレオチド配列に関係する本発明のすべての実施形態に関しては、1つまたは複数の配列間の配列同一性の割合は、初期設定でclustalWソフトウェア(http:/www.ebi.ac.uk/clustalW/Index.html)を使用したアラインメントに基づいていてもよい。ヌクレオチド配列アラインメントでは、これらの設定は:Alignment=3Dfull、Gap Open 10.00、Gap Ext.0.20、Gap separation Dist.4、DNA weight matrix:identity(IUB)である。あるいは、配列はプログラムDNASIS Maxを使用して分析してもよく、配列の比較はhttp://www.paralign.org/.で行える。このサービスはSmith-Waterman(SW)およびParAlignと呼ばれる2つの比較アルゴリズムに基づいている。最初のアルゴリズムはSmithおよびWaterman(1981)により発表され、2つの配列の最適局所的アラインメントを見出す定評のある方法である。もう1つのアルゴリズムのParAlignは、配列アラインメントの発見的方法であり、方法に関する詳細はRognes(2001)に発表されている。スコアマトリックスおよびGap penaltiesのための初期設定ならびにE-値が使用された。
【0044】
2つの核酸またはポリペプチドという文脈での語句「実質的に同一の」または「実質的同一性」とは、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用してまたは目視検査により測定した、最大一致で比較され整列された場合、それぞれ、少なくとも約60%、70%、75%、好ましくは80%もしくは85%、さらに好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはさらに大きなヌクレオチドもしくはアミノ酸残基割合同一性を有する2つ以上の配列またはサブ配列のことである。ある種の態様では、少なくとも約100、110、120、125、130、135、140、145、150、155、160、または165アミノ酸残基などの、長さが少なくとも約50残基のアミノ酸配列の領域にわたって実質的な同一性が存在する。ある種の態様では、少なくとも約200、250、300、330、360、375、400、425、450、460、480、500、600、700、800などの、少なくとも約900ヌクレオチドなどのまたは少なくとも約1kb、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2kb、2.1kb、2.2kb、2.3kb、2.4kb、2.5kb、2.6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kbなどのまたは少なくとも約3kbなどの、少なくとも約150核酸残基の核酸配列の領域にわたり実質的同一性が存在する。いくつかの態様では、アミノ酸または核酸配列は、ポリペプチド配列または対応するコード領域の全長にわたり実質的に同一である。
【0045】
用語「保存的置換」は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミンおよびアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリンおよびメチオニン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、ならびに小アミノ酸(グリシン、アラニン、セリンおよびスレオニン)のグループ内にある。通常、比活性を変えないアミノ酸置換は当技術分野では公知であり、例えば、H.NeurathおよびR.L.Hill、1979年、The Proteins、Academic Press、New Yorkにより記載されている。最も一般的に起こる交換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、およびAsp/Gly、ならびにこれらの逆の交換である。
【0046】
本明細書で使用する用語「保存的に置換された変異体」とは、1つまたは複数の保存的置換を含むヌクレオチド配列の変異体のことである。
【0047】
一般におよび本文脈において、用語「サイレント置換」とは、コドンのセンスに影響を与えずしたがってポリペプチド構造にまったく影響を与えない塩基置換のことである。当業者であればわかるように、サイレント置換は、遺伝子コードの縮重のせいで可能である。
【0048】
用語「保存ドメイン」とは、複数の種間で類似しているポリペプチド中のアミノ酸配列またはDNAもしくはRNA中のヌクレオチド配列のことである。既知の一連の保存配列はコンセンサス配列により表される。アミノ酸モチーフは多くの場合保存配列で構成されている。さらに、用語「保存配列」とは、進化を通じてずっと基本的に無変化のままである核酸配列分子中の塩基配列またはタンパク質中のアミノ酸配列のことである。「コンセンサス配列」は、核酸配列中の各位置に最も多く存在する塩基、またはタンパク質中の各位置に最も多く存在するアミノ酸を表す理想的配列の点から定義されている。「コンセンサス配列」は、配列同一性を最大化するように、核酸配列またはタンパク質のあらゆる既知の例を整列させることにより同定される。ある配列がコンセンサス配列として受け入れられるためには、それぞれの特定の塩基またはアミノ酸はその位置で適度に優勢でなければならないし、その配列の大半は、1または2などのごくわずかな置換でコンセンサスと関連付けられなければならない。
【0049】
本明細書で使用される用語「プロモーター」とは、遺伝子の転写開始の上流に位置し、転写を開始し調節するRNAポリメラーゼおよび他のタンパク質の認識および結合に関与する配列決定因子の領域のことである。植物に有用なプロモーターは、植物起源でなくてもよい。「基本プロモーター」は、転写開始に必要な転写複合体の構築に必要な最小配列である。基本プロモーターには多くの場合、通常、転写開始部位から15ヌクレオチドと35ヌクレオチド上流間に位置するTATAボックスエレメントが含まれる。基本プロモーターには、転写開始部位から通常40ヌクレオチドと200ヌクレオチド、好ましくは60ヌクレオチド〜120ヌクレオチド上流間に位置するCCAATボックスエレメント(典型的には、配列CCAAT)および/またはGGGCG配列も含まれることがある。
【0050】
本明細書で「構成的プロモーター」と呼ばれるプロモーターは、必ずしもすべてではないが大半の環境条件および発生または細胞分化の状態の下で、転写を積極的に促進する。構成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写開始領域、およびアグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTDNAの1'または2'プロモーター、およびトウモロコシユビキチン-1プロモーターなどの、当業者に公知の種々の植物遺伝子の他の転写開始領域が挙げられる。器官特異的プロモーターは、例えば、種子、ジャガイモ塊茎、および果実などの貯蔵シンク組織の、もしくは成長点などの代謝シンク組織のプロモーター、グルテリン、プロラミン、グロブリンもしくはイネのアルブミンプロモーターなどの種子特異的プロモーター、レグミンB4およびソラマメ(Vicia faba)の未知の種子タンパク質遺伝子のソラマメプロモーター、種油体タンパク質のプロモーター、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の貯蔵タンパク質napAプロモーター、または当技術分野で公知の、例えば、国際公開第91/14772号に記載の他のあらゆる種子特異的プロモーターでもよい。さらに、プロモーターは、イネもしくはトマトのrbcsプロモーター、クロレラウイルスアデニンメチルトランスフェラーゼ遺伝子プロモーター、またはイネのaldP遺伝子プロモーターなどの葉特異的プロモーター、あるいはジャガイモpin2プロモーターなどの創傷誘導性プロモーターでもよい。
【0051】
本発明の文脈での「誘導性プロモーター」とは、光、化学的濃度、タンパク質濃度、生物、細胞、または細胞小器官内の条件、等などのある種の条件の下で調節されるプロモーターのことである。誘導性プロモーターの例には、HSPプロモーターならびにPARSK1、すなわち、セリン-スレオニンキナーゼ酵素をコードしているシロイヌナズナ(Arabidopsis)遺伝子の、脱水状態、アブシジン酸および塩化ナトリウムにより誘導されるプロモーターがある。基本的に、誘導性プロモーターの制御下での発現は、用いられる刺激に応じて「スイッチが入る」または増加される。刺激の性質はプロモーターにより異なり、上記の環境要因を含むこともある。前記刺激の不在の下での発現レベルがどうであれ、いかなる誘導性プロモーターからの発現も、正確な刺激の存在の下では増加される。
【0052】
本明細書で使用するように、用語「組織特異的な」とは、一般にあらゆる組織に存在するわけではない、または対象の組織のみに存在していることもある特定の組織の特徴のことである。本出願では、「組織特異的な」は、遺伝子調節エレメント(プロモーターまたはプロモータープラスエンハンサーおよび/もしくはサイレンサー)、それが調節する遺伝子、あるいはそのような遺伝子のポリペプチド産物に関して使用される。遺伝子調節エレメントまたは「組織特異的プロモーター」の文脈では、前記用語は、プロモーター(ならびにエンハンサーおよび/またはサイレンサーエレメントなどの他の調節エレメントも)は特定の分化系列、組織、または細胞型の細胞において連結された配列の転写を指示するが、その分化系列、組織、または細胞型ではない細胞または組織においては実質的に不活性であることを意味する。本発明による有用な組織特異的プロモーターは、他の組織の細胞におけるまたは同一分化系列の形質転換されたもしくは悪性の細胞におけるよりも、特定の組織における転写物産生の点で、少なくとも5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、500倍または1000倍も活性である。遺伝子または遺伝子のポリペプチド産物の文脈では、用語組織特異的は、遺伝子のポリペプチド産物がその特定の組織または細胞型の細胞において検出可能であるが、ある種の他の細胞型においては実質的に検出可能ではないことを意味する。特に関連する組織特異的プロモーターには、植物中の木部形成組織において特異的に発現するまたは活性なプロモーター配列が挙げられる。そのようなプロモーターの例は、国際公開第2004097024号に記載のLmp1、Lmx2、Lmx3、Lmx4およびLmx5プロモーターである。
【0053】
「転写終結配列」とは、転写のためにゲノムDNA上の遺伝子またはオペロンの末端を標す遺伝子配列の部分のことである。転写終結配列は、ポリアデニル化シグナルで新生RNAを同時転写的に切断して、RNAポリメラーゼによる転写産物のさらなる伸長を停止するタンパク質因子により認識される。核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれると「作動可能に連結」される。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写を増加させるならば、コード配列に作動可能に連結されている。「作動可能に連結された」は、連結されているDNA配列が典型的に近接しており、2つのタンパク質コード領域を結合させる必要がある場合には、近接していて読み枠内にあることを意味する。しかし、エンハンサーは通常、プロモーターから数キロ塩基離されている場合に機能し、イントロン配列は可変長であることがあるために、一部のポリヌクレオチドエレメントは作動可能に連結されてはいるが近接していないことがある。
【0054】
本発明の文脈では、用語「形質転換」および「トランスフォーミング」は、交互におよび、それぞれ「トランスフェクティング」および「トランスフェクション」の同義語として使用され、DNAを細胞に導入するプロセスのことである。対象の遺伝子またはプロモーターの少なくとも一部を含むDNA構築物を、以前述べたように、個々の細胞、培養細胞、宿主生物の一部としての細胞、受精卵母細胞もしくは配偶体または胚性細胞でもよい宿主細胞に導入することができる。宿主細胞に関して使用される場合の用語「導入」は、組換えベクターDNAを標的宿主細胞に導入するための当技術分野で公知の標準手順であることを意味する。そのような手順には、トランスフェクション、感染、形質転換、自然の取り込み、エレクトロポレーション、遺伝子銃およびアグロバクテリウムが挙げられるが、これらは限定されるものではない。
【0055】
「再生可能細胞」とは、植物全体を再生することができるもとになる植物細胞を意味する。再生可能細胞は、当技術分野では「全能性」としても知られる遺伝的潜在能力を維持してきた細胞であることは理解されるであろう。再生可能細胞は、培養下で生育された場合、親植物の全遺伝的潜在能力を発現する適切な刺激が必要なこともあることはさらに理解されるであろう。
【0056】
トランスジェニック植物を作製する方法
遺伝子選択のための機能解析
生育に関して植物の表現型を変えるかつ/または改変するのに用いるための候補遺伝子は、例えば、Hertzbergら、(2001)およびSchraderら、(2004)に記載されている先行技術手順を使用して同定することができる。生育を調節することに関与する候補遺伝子は、例えば、先行技術知識を使用して同定された特別な特徴を備えた転写因子間で同定することもできる。候補遺伝子のそのような同定は、生育関連特性/機能を対象とする機能的なゲノム計画のポジティブな結果を最大限にするために重要であると当技術分野では知られている。したがって、本発明の第1の態様は、その野生型と比べると生育が増大しているトランスジェニック植物を作製する方法であって、木部形成段階中に特異的に発現する少なくとも1つの遺伝子の遺伝子産物のレベルを植物中で変化させるステップを含む方法を提供する。
【0057】
そのような候補遺伝子のターゲティングに基づいているが、本発明は、機能解析の新規のアプローチによりさらに選択されている遺伝子のターゲティングを含む、トランスジェニック植物を作製する方法を提供する。
【0058】
本態様の一実施形態によれば、
少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループにおける前記遺伝子のRNAi下方調節が、
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における5%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における5%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/もしくは平均直径生育速度(ADGR)における18%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大直径係数(MDC)における18%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度は4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値は段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値は各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される。
【0059】
1リットル当たり84グラムのN、1リットル当たり2グラムのP1、および1リットル当たり56グラムのKを含有する肥料は、現在商品名Weibulls Rika S NPK 7-1-5の下で入手できる。この肥料の組成は以下の通り(すべてg/l):N tot=84、NO3=55、NH4=29、P=12、K=56、Mg=7.2、S=7.2、B=0.18、Cu=0.02、Fe=0.84、Mn=0.42、Mo=0.03、Zn=0.13。
【0060】
追加の実施形態では、さらに厳密な一連の判定基準が適用される。本実施形態によれば、
少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループにおける前記遺伝子のRNAi下方調節が、
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における8%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における8%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/もしくは平均直径生育速度(ADGR)における22%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大直径係数(MDC)における22%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度は4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値は段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値は各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される。
【0061】
本発明の利点は、本発明が生育特徴を決定することへの候補遺伝子の関与を評価するためのきわめて感度のよい分析のためのプラットフォームを提供することである。遺伝子評価法は、以前は植物の樹高または直径などの単一の判定基準による表現型の評価に基づいていたが、本方法によれば、平均最終樹高、最大最終樹高、平均の最大樹高生育速度、および最大の最大樹高生育速度を含む複数の判定基準に基づいて表現型を特徴付けることができる。この分析のためのプラットフォームを使用すれば、生育が増大した植物を作製するための方法において使用する新たな標的遺伝子の同定および選択が可能になる。もっと簡単なアプローチを使用すれば、これらの標的遺伝子は、生育特徴の決定に関与しているとはみなされなかったと考えられる可能性があり、または生育表現型を生み出すのにごくわずかな役割しか果たしていないとみなされたと考えられる可能性がある。
【0062】
本発明の特定の実施形態では、有利な植物表現型は、対応する野生型植物と比べて、上記の判定基準により評価され選択された候補遺伝子の発現レベルを改変することにより生み出される。これらの態様によれば、
a)配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列、
b)配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列に少なくとも60%同一のヌクレオチド配列、
c)a)またはb)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物のレベルを植物中で変化させることを含む方法が提供される。
【0063】
配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60により特定される配列は、ハイブリッドアスペンからクローン化された候補遺伝子の部分的配列を表す。当業者であれば理解するように、これらの遺伝子に由来する、配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60に記載される配列への、5'および3'追加配列は、Sambrookらに記載される技術などの従来のクローン化技術を使用して容易に達成可能である。
【0064】
核酸構築物
本発明のさらに特定の実施形態によれば、前記方法は、
d) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60から選択される配列を含むヌクレオチド配列、
e) d)のヌクレオチド配列の相補的ヌクレオチド配列、
f) d)またはe)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
g) d)、e)およびf)における配列のいずれか1つと少なくとも60%同一の核酸配列、ならびに
h) d)、e)またはf)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、組換えDNA構築物などの核酸構築物を提供する段階を含む。
【0065】
本発明の追加の実施形態では、c)またはg)における核酸配列が、a)、c)、d)、e)またはf)における配列のうちのいずれか1つと少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも87%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.5%同一など、a)、c)、d)、e)またはf)における配列のうちのいずれか1つに少なくとも65%同一である。
【0066】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、a)のヌクレオチド配列は、配列番号1、5、6、9、11、12、15、17、56、57および58からなる群から選択される。
【0067】
本発明の核酸配列および核酸/DNA構築物を作製するための種々の方法が当技術分野には存在する。DNAクローンを同定し単離するための手順は当業者には公知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning-A Laboratory Manual(第2版)、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、1989年に記載されている。あるいは、本発明の核酸配列は、特異的または縮重プライマーの適切な選択により本発明に適合させた種々のインビトロ増幅法によって作製することができる。例えば、本発明の相同核酸を作製するための、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Q beta-レプリカーゼ増幅および他のRNAポリメラーゼ媒介技術(例えば、NASBA)を含むインビトロ増幅法へ当業者を導くのに十分なプロトコルの例は、上記のSambrookに見られる。
【0068】
あるいは、本発明の核酸構築物は、固相合成法により作製されたフラグメントから構築することができる。典型的には、最大約100塩基のフラグメントを個別に合成し、次に酵素的にまたは化学的にライゲートして、所望の配列、例えば、転写因子のすべてまたは一部をコードするポリヌクレオチドを作製する。例えば、ホスホラミダイト法を使用した化学合成は当業者には公知である。そのような方法に従って、オリゴヌクレオチドを合成し、精製し、その相補鎖にアニールし、ライゲートし、次に適切なベクターに場合によってクローン化する。
【0069】
述べたように、上記の配列はハイブリッドアスペン由来である。当業者であれば理解するように、記載の配列の相同体は他の種から単離してもよく、その非限定的な例には、アカシア、ユーカリ、シデ、ブナ、マホガニー、クルミ、オーク、セイヨウトネリコ、ヒッコリー、カバの木、クリ、ハンノキ、カエデ、スズカケノキ、イチョウ、ヤシ、モミジバフウ、糸杉、ベイマツ、モミ、セコイア、アメリカツガ、ヒマラヤスギ、ビャクシン、カラマツ、マツ、アメリカスギ、トウヒおよびイチイ、リンゴ、セイヨウスモモ、セイヨウナシ、バナナ、オレンジ、キーウィ、レモン、サクランボ、ブドウ、イチジク、ワタ、タケ、スイッチグラス、クサヨシ、ならびにゴムノキが挙げられる。記載の配列の有用な相同体は、ヤナギ科(Salicaceae family)の、例えば、ヤナギ属およびポプラ属の広葉樹植物から単離してもよい。この属の植物は慣用名:ヤナギ(willow)、ポプラ(poplar)およびアスペン(aspen)で知られている。
【0070】
特に、本発明によるヌクレオチド配列は、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列、またはその相補的ヌクレオチド配列から選択される配列を含む。
【0071】
上記のc)またはf)におけるサブ配列またはフラグメントは、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチド、少なくとも22ヌクレオチド、少なくとも23ヌクレオチド、少なくとも24ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、例えば、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも35ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも45ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも55ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも65ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも75ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド、少なくとも85ヌクレオチド、少なくとも90ヌクレオチド、少なくとも95ヌクレオチドなどの、または少なくとも100ヌクレオチドなどの、少なくとも15ヌクレオチドを含むことは明らかであろう。ある種の実施形態では、上記のc)またはf)におけるサブ配列またはフラグメントは、少なくとも約200、250、300、330、360、375、400、425、450、460、480、500、600、700、800などの、少なくとも約900ヌクレオチドなどの、または少なくとも約1kb、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2kb、2.1kb、2.2kb、2.3kb、2.4kb、2.5kb、2.6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kbなどの、または少なくとも約3kbなどの、少なくとも約150核酸残基を含む。
【0072】
特に、本発明による方法は、記載された特定の配列と比べると、保存的変異体を含むヌクレオチド配列を含む、組換えDNA構築物などの核酸構築物を提供するステップを含んでもよく、本発明によれば、コードされたポリペプチド中の1つだけ、または少数のアミノ酸を変化させることも提供され使用される。したがって、a)のポリペプチドの保存的に置換された変異体を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を提供し使用することは本発明の範囲内である。
【0073】
ポリヌクレオチドにコードされているアミノ酸配列を変えない配列変化は、「サイレント」置換と名付けられている。それぞれメチオニンおよびトリプトファンをコードするコドンATGおよびTGGの例外はあるが、同一アミノ酸を表す可能なコドンのうちのいずれも、当技術分野で利用することができる種々の技術、例えば、部位特異的突然変異誘発により置換することができる。したがって、本発明は、ヌクレオチド配列がヌクレオチド配列中にサイレント置換を含む組換え核酸構築物も提供することができる。
【0074】
本発明のある種の追加の実施形態では、前記サブ配列またはフラグメントは、項目a)またはd)下の上記のヌクレオチド配列の保存ドメインと少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも87%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.5%同一など、項目a)またはd)下の上記のヌクレオチド配列の保存ドメインに少なくとも65%の配列同一性を有する。
【0075】
遺伝子産物のレベルを改変することを得るためのアプローチ
本発明は、ある種の遺伝子の発現を低下させる、またはいくつかの場合には無効にすることにより使用され、これをどのように実行できるかについての非限定的な例が本明細書に示されている。上記の核酸構築物または組換えDNA構築物は、野生型と比べて生育特徴が改変されている植物の同定のために使用してもよい。そのような植物は、例えば、天然に存在する変異体でも、遺伝的に改変されていて改変された生育特性を示す植物でもよい。そのような目的のために、本発明による核酸構築物または組換えDNA構築物は、例えば、従来のハイブリダイゼーションアッセイにおけるプローブとしても、核酸フラグメントの特異的増幅のためのプライマーとしても使用してよい。
【0076】
本発明の主要部分は、遺伝子産物の下方調節がどのようにして所望の効果を与えるかであるが、本明細書に示される遺伝子の発現を変えることを利用して所望の特性を改変することができること、これがデータのもう1つの見方であること、およびこの見方の効果は植物内で遺伝子産物を増加させることも所望の形質を改変する方法であることも示している。遺伝子産物のレベルを増加させる異なる方法があり、これらの方法は下の遺伝子産物を下方調節する方法と並行して下に記載されている。
【0077】
遺伝子調節配列の変化は発現パターンを変化させることができ、コード配列の変化は遺伝子機能を変化させることができるので、これらの遺伝子は、マーカー支援育種の標的として使用することもできると考えられ、これらの遺伝子を操作すれば所望の形質を変化させることがわかっている。
【0078】
さらに、本発明による核酸構築物または組換えDNA構築物は、それぞれの植物生育表現型を改変するために、遺伝子置換という目的のために使用してもよい。
【0079】
内在性遺伝子発現の抑制は、例えば、リボザイムを使用して実現することができる。リボザイムは、高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を有するRNA分子である。リボザイムの作製および使用は、米国特許第4987071号および米国特許第5543508号に開示されている。アンチセンス技術は下記で論じられているが、アンチセンスRNAにハイブリダイズする内在性mRNA分子を切断し、それにより今度は内在性遺伝子発現のアンチセンス阻害が増強されるように、アンチセンスRNAを含む合成リボザイム配列を使用してRNA切断活性を前記アンチセンスRNAに与えることができることに言及すべきである。
【0080】
関連する遺伝子相同体にコードされているRNAが過剰発現されているベクターを使用して、例えば、Jorgensenの米国特許第5231020号に記載された形で対応する内在性遺伝子の同時抑制を得ることができる。そのような同時抑制(センス抑制とも名付けられている)は、全遺伝子配列を植物細胞に導入する必要はなく、導入された配列が対象の内在性配列とまったく同一である必要もない。しかし、ハイブリダイゼーションの特異性が増加するので、例えば、導入された配列が伸長されるので、および/または導入された配列と内在性転写因子遺伝子間の配列類似性が増加するので、前記抑制効率は増強されることになる。
【0081】
翻訳不可能型の遺伝子、例えば、1つもしくは複数の終止コドン、またはナンセンス変異を含む配列を発現するベクターを使用して、内在性転写因子の発現を抑制し、それによってその因子の活性を低下させるまたは除去し、1つもしくは複数の形質を改変することもできる。そのような構築物を作製するための方法は、米国特許第5583021号に記載されている。特に、そのような構築物は、中途終止コドンを遺伝子に導入することにより作製することができる。
【0082】
標的DNA挿入を実施する1つの方法は、国際公開第2006078431号に記載のレトロウイルスDNA組込み機構の使用によるものである。この技術は、インテグラーゼをDNA結合タンパク質(繋留タンパク質)に作動可能に連結することにより、レトロウイルスとレトロトランスポゾンインテグラーゼの組込み部位特異性を改変する可能性に基づいている。インテグラーゼの工学的処理は、好ましくは、PCRによるインテグラーゼの野生型コード配列の改変を介して、核酸レベル上で実施される。したがって、インテグラーゼ複合体は、所望の部分に向けてもよいし、ゲノムDNAの望ましくない部分から離して向け、それにより所望の組込み部位特徴を作り出してもよい。
【0083】
別のそのような技術は「ゲノム中の標的化誘導局所的損傷」であり、これは遺伝子機能を標的された形で改変する非遺伝子組換え法である。このアプローチは、例えば、エチルメタンスルホン酸(EMS)を植物に変異導入し、後に特定の所望の遺伝子が改変されている個体を見つけることを含む。前記技術は、例えば、SladeおよびKnauf、Transgenic Res.2005年4月;14(2):109〜15頁およびHenikoff、TillおよびComai、Plant Physiol、2004年6月;135(2):630〜6頁に記載されている。
【0084】
遺伝子の発現を無効にするための別の方法は、アグロバクテリウムツメファシエンスのT-DNAを使用した挿入突然変異によるものである。挿入変異体を作製後、変異体をスクリーニングして、適切な遺伝子中に前記挿入体を含有する変異体を同定することができる。所望の遺伝子で単一トランス遺伝子挿入事象を含有する植物を交雑させて、前記突然変異についてホモ接合の植物を作製することができる。
【0085】
当業者には明らかであるように、植物の形質は、cre-loxシステムを使用することにより改変することもできる。植物ゲノムは、その後Creリコンビナーゼと接触させる第1および第2のlox部位を含むように改変することができる。前記lox部位が同一方向であれば、前記2つの部位間に介在するDNA配列は切除される。前記lox部位が反対方向であれば、介在する配列は反転される。
【0086】
他の手段により、例えば、T-DNA活性化タギング法により遺伝子を異所的に発現させることによって、内在性遺伝子の活性または発現レベルを操作することにより発現カセットの不在の下で、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを植物内で発現させることもできる(Ichikawaら、(1997)Nature 390、698〜701頁;Kakimotoら、(1996)Science 274:982〜985頁)。この方法は、植物を複数の転写エンハンサーを含有する遺伝子タグで形質転換する必要があり、前記タグがゲノム内に挿入されると、隣接遺伝子コード配列の発現が調節解除される。別の例では、植物内の転写機構を、本発明のポリヌクレオチドの転写レベルを増加させるように改変することができる(例えば、DNA結合モチーフ内の特定のアミノ酸を変えることによるジンクフィンガータンパク質のDNA結合特異性の改変を記載しているPCT公開国際公開第96/06166号および国際公開第98/53057号を参照されたい)。
【0087】
発現のアンチセンス抑制
しかし、上記のヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物は、生育が増大した植物表現型を得るための発現のセンスおよびアンチセンス抑制のためには、例えば、特定の遺伝子の発現を下方調節するためには特に有用である。すなわち、本発明のヌクレオチド配列、またはそのサブ配列もしくはアンチセンス配列を使用して、天然に存在する相同核酸の発現を遮断することができる。例えば、LichtensteinおよびNellen(1997)、Antisense Technology;A Practical Approach IRL Press at Oxford University、Oxford、Englandに記載のような種々の従来のセンスおよびアンチセンス技術が当技術分野では公知である。アンチセンスアプローチの目的は、標的遺伝子に相補的な配列を使用してその発現を遮断し、単一の選択されたタンパク質のレベルが選択的に低下されているまたは無効にされている変異株化細胞または生物を創り出すことである。
【0088】
例えば、生育の増大により特徴付けられる植物表現型を作製するためのトランスジェニック植物における遺伝子産物の発現の低下または除去(すなわち、「ノックアウト」)は、対象のポリペプチドに対応するアンチセンス構築物をcDNAとして導入することにより、得ることができる。アンチセンス抑制では、遺伝子産物またはその一部をコードするcDNAを、発現ベクター中のプロモーター配列に対して逆方向(コード配列に関して)に配置する。導入された配列は、全長cDNAまたは遺伝子である必要はないし、形質転換される植物型に存在するcDNAまたは遺伝子と同一である必要はない。典型的には、アンチセンス配列は、対象の標的遺伝子またはRNAにハイブリダイズすることができるだけでよい。したがって、導入された配列の長さが短い場合は、内在性転写因子配列に対するより高度な相同性が効果的なアンチセンス抑制には必要となる。種々の長さのアンチセンス配列を利用することができるが、好ましくは、ベクター中の導入されたアンチセンス配列は、長さが16〜28ヌクレオチド、17〜26ヌクレオチドまたは18〜24ヌクレオチドなどの、長さが15〜30ヌクレオチドの範囲であり、典型的には、アンチセンス配列の長さが増加するに従って、改善されたアンチセンス抑制が観察されるであろう。好ましくは、ベクター中のアンチセンス配列の長さは100ヌクレオチドよりも大きいものになる。記載されているアンチセンス構築物の転写により、植物細胞中の内在性遺伝子から転写されるmRNA分子の逆相補体であるRNA分子が産生される。
【0089】
植物細胞において適用される遺伝子発現のアンチセンス調節についてのさらに入念な説明は、米国特許第5107065号を参照されたい。前記特許文献の内容はその全体を本明細書に組み込まれているものとする。
【0090】
RNA干渉
二本鎖RNAにより誘導される遺伝子サイレンシングは、一般的にRNA干渉またはRNAiと呼ばれている。RNA干渉とは、二本鎖リボ核酸(dsRNA)のフラグメントが、前記dsRNAと相同配列を共有する特定の遺伝子の発現に干渉する分子機構である。このプロセスは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られる、マイクロRNAをプロセシングする同一細胞機構に媒介される。前記プロセスはリボヌクレアーゼタンパク質ダイサーにより開始され、ダイサーは外因性二本鎖RNA分子に結合して切断し、各末端に少数の不対突出塩基のある20〜25塩基対の二本鎖フラグメントを作り出す。ダイサーにより作り出され、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる短二本鎖フラグメントは分離されて、活動性RISC複合体に組み込まれる。RNA転写物の一部がRNAi分子または構築物により標的とされると、転写物全体が下方調節される。
【0091】
RISC複合体の触媒的に活性な成分は、動物では、標的mRNA鎖のsiRNA誘導切断を媒介するエンドヌクレアーゼであるアルゴノートタンパク質として知られている。ダイサーにより作り出されるフラグメントは二本鎖であるため、前記フラグメントはそれぞれ理論上機能的siRNAを作り出すことができると考えられるが、前記二本鎖のうちガイド鎖として知られる一本鎖のみがアルゴノートタンパク質に結合し、遺伝子サイレンシングをもたらす。もう一方のアンチガイド鎖またはパセンジャー鎖は、RISC活性化の進行中にRISC基質として分解される。ガイドとして選択される鎖は、その5'末端がより安定している鎖である傾向があるが、鎖選択は、ダイサーがRISC組込み前にdsRNAを切断する方向に依存してはいない。
【0092】
実験室で使用されるRNA干渉は、多くの場合、mRNA切断を誘導する完璧に塩基対合したdsRNA分子を必要とする。RISCへの組込み後、siRNAはその標的mRNAに塩基対合し、RISC成分タンパク質アルゴノートを誘導してmRNAを切断させ、それによってmRNAが翻訳鋳型として使用されるのを妨げる。インビトロまたはインビボで安定であるためには、siLNAまたはsiRNA化合物の配列はその標的核酸に100%相補的である必要はない。siRNA化合物(および下記のsiLNA化合物)がその標的分子に相補的であり特異的にハイブリダイズ可能であるという事実は、前記siRNA(またはsiLNA)化合物は標的の正常な機能に対する所望の干渉を与えるのに十分強く特異的に標的分子に結合する一方、非標的mRNAの機能は影響を受けないままであることを意味するだけである。
【0093】
オリゴに組み込まれるLNAモノマーは、RNA様構造のオリゴおよびRNA様構造の前記オリゴが形成され得るハイブリッドを誘導することは公知である。LNA残基は、LNA組込みの3'-末端の方に組み込まれたDNA残基にその構造を向け、5'-末端の方に向ける程度は少ないことも明らかにされている。この結果は、RNA鎖をDNAモノマーで修飾することが可能になることであり、1つまたは複数のLNA残基が前記DNAモノマーに隣接していれば、それらもRNA構造となることになる。したがって、DNAとLNAはRNAモノマーに取って代わることができ、それにもかかわらず前記オリゴは全体的なRNA様構造となることになる。DNAはRNAよりもはるかに安価であり、合成しやすく、よりヌクレアーゼ安定であり、したがって、そのような修飾はsiRNAの全体的使用および適応性を改善することになる。
【0094】
生物は、外来dsRNAを取り込みそれをRNAi経路で使用する細胞の能力が異なる。しかし、植物では、RNAiによって引き起こされる遺伝子サイレンシングは植物内の細胞から細胞へと広がることができ、したがって、RNA干渉の効果は植物では全身性であり遺伝性でもある。
【0095】
dsRNAの転写による植物でのRNAi遺伝子抑制のさらに入念な説明は、米国特許第6506559号、米国特許出願公開第2002/0168707号A1、および米国特許出願第09/423143号(国際公開第98/53083号参照)、米国特許出願第09/127735号(国際公開第99/53050号参照)および米国特許出願第09/084942号(国際公開第99/61631号参照)を参照されたい。これら特許文献はすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれているものとする。
【0096】
本発明を例示する特定の実施形態では、c)におけるサブ配列またはフラグメントは、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列を含む。
【0097】
ベクターの構築
一般に、当業者であれば本発明のベクターを構築し、組換え遺伝子発現のためのプロトコルを設計することは十分可能である。ベクターの調製のための一般プロトコルに関する追加の詳細は、Molecular Cloning:a Laboratory Manual:第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。アンチセンス遺伝子に使用するプロモーターは、アンチセンス阻害のレベル、時期、組織、特異性または誘導能に影響を与える可能性がある。さらに、アンチセンスは、標的遺伝子の固有の領域または標的遺伝子が他の関連遺伝子との相同性を共有する領域を選択することによりその特異性を操作することができる。
【0098】
一般に、RNA干渉による遺伝子の抑制は、前記遺伝子のゲノムDNAまたはcDNAのセグメント、例えば、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、もしくは少なくとも750ヌクレオチドなどの、または、少なくとも1.5kb、少なくとも2kb、少なくとも2.5kb、もしくは少なくとも3kbなどの、少なくとも1kbなどの、少なくとも約25ヌクレオチドのセグメントのセンスおよびアンチセンスエレメントであって、転写されたRNAがハイブリダイズしてヘアピン構造を形成するとループを形成することができるイントロンまたは人工的DNAセグメントにより、前記センスおよびアンチセンスDNA成分を直接連結させるまたは結合させることができるセンスおよびアンチセンスエレメントを含むDNAエレメントに作動可能に連結されたプロモーターを有する組換えDNA構築物を使用して実現することができる。
【0099】
本発明の関連する実施形態では、核酸構築物、または組換えDNA構築物は、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結された構成的、誘導性、または組織特異的プロモーターをさらに含む。
【0100】
核酸構築物、または組換えDNA構築物の例は、標的遺伝子のDNAフラグメントの転写を推進するプロモーター、続いて逆方向反復中に存在する比較的短い配列を有し、これが合わさって前記標的遺伝子のRNAi応答が始動する。そのような構築物は、Brummel D.A.ら、Plant Journal 2003年、33、793〜800頁により記載されている。
【0101】
別の例では、プロモーターがマイクロRNAの機能を模倣するRNA分子の発現を推進し、遺伝子特異性を決める配列が組換え的に導入されている人工マイクロRNAが構築される(Niuら、2006年、Expression of artificial microRNAs in transgenic Arabidopsis thaliana confers virus resistance.Science 2006年、24巻、No.11、1420〜1428頁を参照されたい)。マイクロRNAは自然発生することができ、過剰発現されているのみである。
【0102】
本発明の特定の実施形態では、核酸構築物、または組換えDNA構築物は、標的遺伝子の一部、続いて植物機能的イントロン、続いて逆方向の標的遺伝子の同一部分からなる転写カセットの前に強力な構成的プロモーターをさらに含み、転写カセットに転写終結配列が続く。好ましいベクターは、本発明のヌクレオチド配列の1つが逆方向反復方向に挿入されているような種類のベクターである。
【0103】
本発明の現在好ましい実施形態では、核酸構築物、または組換えDNA構築物は配列番号47の配列を含む。
【0104】
RNAiベースアプローチのための現在好ましい核酸構築物は、pK7GWIWG2(I)と名付けられたベクターである。前記ベクターは、Gateway vectors for Agrobacterium-mediated plants transformation、Karimi,Mら、Trends In plant Sciences、第7巻、no 5、193〜195頁に記載されている。同一の基本的な種類のベクターは以前、Wesley S.V.ら、Construct design for efficient,effective and high-throughput gene silencing in plants.Plant Journal 2001年、27、581〜590頁に記載されていた。
【0105】
当業者であれば、本明細書に示される遺伝子の、またはそれに対応するmRNAの一部である任意の配列を使用して、そのようなmRNAのレベルを下方調節することができることを理解するであろう。示された配列が完全mRNAを表していない場合には、Sambrookらに記載された技術などの当業者に公知の種々の技術を使用して完全mRNAをクローン化することができる。ポプラ遺伝子のmRNA転写物に関連するさらに多くの配列を見出すのに重要な最近の供給源は、ブラックコットンウッド(Populus trichocarpa)の公表されたゲノムおよびTuskanら、2006年(G.A Tuskanら、2006年、The genome of Black Cottonwood、Populus tricocarpa(Torr.& Gray)、Science、第313巻、No.5793、1596〜1604頁に記載されている供給源である。
【0106】
植物細胞の形質転換
本発明によれば、その方法は、植物の再生可能細胞を前記核酸構築物または組換えDNA構築物で形質転換し、前記形質転換細胞からトランスジェニック植物を再生させる追加のステップを含む。上記のDNA構築物またはベクターを植物細胞に導入するときには、当業者には公知のある種の配慮をしなければならない。挿入させる核酸は、上記のように転写を推進する効果的な調節エレメントを含有する構築物内で構築すべきである。前記構築物を細胞内に輸送する方法が利用できなければならない。前記構築物が細胞内に入ると、内在性染色体物質への組込みが起こることもあれば起こらないこともある。
【0107】
当業者に公知の形質転換技術を使用して、DNA構築物およびベクターを植物細胞に導入し、植物生育が増大したトランスジェニック植物、特にトランスジェニック樹木を作製することができる。
【0108】
当業者であれば、本発明によれば、多種多様な宿主細胞をDNA構築物およびベクターのレシピエントとして用いてもよいことを理解するであろう。宿主細胞の非限定的な例には、胚組織、カルス組織型I、II、およびIII、胚軸、成長点、根の組織、師部での発現のための組織における細胞が挙げられる。
【0109】
上に収載するように、アグロバクテリウム形質転換は、樹木種、特にポプラなどの広葉樹種を形質転換するのに当業者によって広く利用されている1つの方法である。安定で繁殖性のトランスジェニック植物の作製は、現在当技術分野では常用になっている。微粒子もしくは粒子銃、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、直接DNA取込み、リポソーム媒介DNA取込み、またはボルテックス法などの他の方法は、アグロバクテリウム形質転換が非効率的または無効である場合に、例えば、一部の裸子植物種で使用することができる。
【0110】
あるいは、異なる技術の組合せ、例えば、創傷を誘導するアグロバクテリウム被膜微小粒子の照射または微粒子銃、続いてアグロバクテリウムとの共存培養を用いて、形質転換プロセスの効率を増強することができる。
【0111】
形質転換技術の特定の選択は、ある種の植物種を形質転換する効率、ならびに本発明を好みの特定の方法論で実施する人間の経験および好みにより決定されることは理解されるであろう。核酸を植物細胞に導入する形質転換系の特定の選択は本発明にとって不可欠ではなく、本発明を限定するものでもなく、植物再生のための技術の選択も同じであることは当業者には明らかであろう。
【0112】
形質転換に続いて、トランスジェニック植物は、形質転換ベクターに取り込まれた優性な選択可能マーカーを使用して選択されるのが好ましい。典型的には、そのようなマーカーは形質転換植物に抗生物質または除草剤抵抗性を与え、形質転換体の選択は、前記植物を適切な濃度の前記抗生物質または除草剤に曝露することにより実現することができる。D型アミノ酸を使用し、その植物はL型のみに耐容性を示すことができるという事実に基づいた新規の選択マーカーは、迅速で効率的な環境に配慮した選択系を提供する。この選択系の興味深い特徴は、それが選択も対抗選択も可能にすることである。
【0113】
引き続いて、植物は、例えば、当技術分野では標準的である単一細胞、カルス組織または葉片から再生することができる。ほとんどいかなる植物も、前記植物の細胞、組織および器官から完全に再生することができる。利用できる技術は、Vasilら、1984年、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants、第I、II、III巻、Laboratory Proceduresで概説されている。
【0114】
形質転換植物を選択し成熟するまで生育した後、生育の増大の表現型を示す植物を同定する。さらに、前記表現型が本明細書に開示するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現レベルまたは活性の変化に起因することを確証するのは、ノーザンブロット、RT-PCRもしくはマイクロアレイを使用してmRNA発現を、または免疫ブロットもしくはウェスタンブロットもしくはゲルシフトアッセイを使用してタンパク質発現を解析することにより判定することができる。
【0115】
植物種
本発明によれば、本方法は、トランスジェニック植物のもとになる野生型植物と比べると、生育が増大しているトランスジェニック植物を作製する。本方法の実施形態では、トランスジェニック植物は多年生植物、すなわち2年よりも長く生存する植物である。特定の実施形態では、多年生植物は高度に木化されている茎(または複数の茎)を有する維管束植物と定義される木本植物である。
【0116】
好ましい実施形態では、木本植物は広葉樹植物、すなわち広葉または被子樹木であり、これは、アカシア、ユーカリ、シデ、ブナ、マホガニー、クルミ、オーク、セイヨウトネリコ、ヤナギ、ヒッコリー、カバの木、クリ、ポプラ、ハンノキ、カエデ、スズカケノキ、イチョウ、ヤシおよびモミジバフウからなる群から選択してよい。これらの2つのグループには、特に材木および加熱用バイオ燃料を提供するように生育される急成長種の樹木または木質低木が含まれるために、その変異体を含むヤナギ、ポプラおよびアスペンなどのヤナギ科の広葉樹植物は特に興味深い。スイッチグラスおよびクサヨシのようなバイオエネルギーに使用されるセルロースグラスも興味深い。
【0117】
追加の実施形態では、木本植物は、糸杉、ベイマツ、モミ、セコイア、アメリカツガ、ヒマラヤスギ、ビャクシン、カラマツ、マツ、アメリカスギ、トウヒおよびイチイからなる群から選択できる針葉樹または球果植物である。
【0118】
有用な実施形態では、木本植物は、リンゴ、セイヨウスモモ、セイヨウナシ、バナナ、オレンジ、キーウィ、レモン、サクランボ、ブドウおよびイチジクからなる群から選択できる実の成る植物である。
【0119】
本方法において有用である可能性のある他の木本植物は、ワタ、タケおよびゴムノキからなる群から選択してもよい。
【0120】
DNA構築物
本発明の第2の主態様によれば、上記の少なくとも1つの配列を含む、組換えDNA構築物などのDNA構築物が提供される。特に、組換えDNA構築物は、
a)配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60から選択される配列を含むヌクレオチド配列、
b)a)のヌクレオチド配列の相補的ヌクレオチド配列、
c)a)またはb)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
d)a)、b)およびc)における配列のいずれか1つと少なくとも60%同一である核酸配列、ならびに
e)a)、b)またはc)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含んでいてよい。
【0121】
本発明の選択された実施形態では、d)における核酸配列は、a)、b)およびc)における配列のいずれか1つと少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも87%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.5%同一など、a)、b)およびc)における配列のいずれか1つと少なくとも65%同一である。
【0122】
本発明のこの態様に関連する追加の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60またはその相補的ヌクレオチド配列の配列から選択される配列を含む。
【0123】
さらに本発明のこの態様に関連して、上記のc)におけるサブ配列またはフラグメントは、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチド、少なくとも22ヌクレオチド、少なくとも23ヌクレオチド、少なくとも24ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチドなどの、例えば、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも35ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも45ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも55ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも65ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも75ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド、少なくとも85ヌクレオチド、少なくとも90ヌクレオチド、少なくとも95ヌクレオチド、または少なくとも100ヌクレオチドなど、少なくとも15ヌクレオチドを含むことは明らかであろう。ある種の実施形態では、上記のc)におけるサブ配列またはフラグメントは、少なくとも約200、250、300、330、360、375、400、425、450、460、480、500、600、700、800などの、少なくとも約900ヌクレオチドなどの、または少なくとも約1kb、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2kb、2.1kb、2.2kb、2.3kb、2.4kb、2.5kb、2.6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kbなどの、または少なくとも約3kbなどの、少なくとも約150核酸残基を含む。
【0124】
さらに、上記の論述に従って、前記ヌクレオチド配列は、(a)のポリペプチドの保存的に置換された変異体を含むポリペプチドをコードしている。さらに、前記ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列中にサイレント置換を含む。
【0125】
本発明のこの態様に関する追加の実施形態では、前記サブ配列またはフラグメントは、項目a)の下の上記のヌクレオチド配列の保存ドメインと少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも87%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.5%同一など、項目a)の下の上記のヌクレオチド配列の保存ドメインと少なくとも65%の配列同一性を有する。
【0126】
特定の実施形態では、c)におけるサブ配列またはフラグメントは、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列を含む。
【0127】
追加の実施形態ではおよび上の記載に従って、前記組換えDNA構築物は、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結された構成的、誘導性または組織特異的プロモーターをさらに含む。特に、前記組換えDNA構築物は、標的遺伝子の一部、続いて植物機能的イントロン、続いて逆方向の上記のような標的遺伝子の同一部分からなる転写カセットの前に強力な構成的プロモーターをさらに含んでいてよい。別の好ましい種類の組換えDNA構築物は、上でも説明したように、標的遺伝子のDNAフラグメントの転写を促進するプロモーター、続いて逆方向反復に存在する比較的短い配列を有する。
【0128】
本発明の現在例示される実施形態では、前記組換えDNA構築物は、配列番号47の配列を含む。
【0129】
トランスジェニック植物
本発明の第3の態様は、木部形成段階中に特異的に発現する少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物のレベルを植物中で変化させることができるヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチド(DNA構築物)を含むトランスジェニック植物を提供する。上の記載からの類推により、一実施形態では、前記少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループ中における前記遺伝子のRNAi下方調節が、
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における5%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における5%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/もしくは平均直径生育速度(ADGR)における18%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大直径係数(MDC)における18%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、が選択され、
最大樹高生育速度は4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値は段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値は各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される
ことが理解されるであろう。
【0130】
本発明のこの態様の追加の実施形態によれば、
木部形成段階中に発現する遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループ中の遺伝子のRNAi下方調節が、
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大樹高生育速度(MMHGR)における8%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における8%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/もしくは平均直径生育速度(ADGR)における22%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大直径係数(MDC)における22%以上の差;
を引き起こすという判断基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度は4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値は段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値は各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される。
【0131】
本発明の特定の実施形態によれば、
a)配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列、
b)配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列と少なくとも60%同一のヌクレオチド配列、
c)a)またはb)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの遺伝子の遺伝子産物のレベルは、それぞれ対応する野生型植物に見られるレベルと比べると変化している。
【0132】
本発明のさらに別の実施形態によれば、トランスジェニック植物は、
d) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60から選択される配列を含むヌクレオチド配列、
e) d)のヌクレオチド配列の相補的ヌクレオチド配列、
f) d)またはe)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
g) d)、e)およびf)における配列のいずれか1つと少なくとも60%同一の核酸配列、ならびに
h) d)、e)またはf)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチド(DNA構築物)を含む。
【0133】
本発明のこの態様の追加の実施形態では、c)またはg)における核酸配列が、a)、b)、d)、e)またはf)における配列のうちのいずれか1つと少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも87%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.5%同一など、a)、b)、d)、e)またはf)における配列のうちのいずれか1つと少なくとも65%同一である。
【0134】
上記のように、当業者であれば、本発明の核酸配列およびポリペプチド構築物を作製するためには、例えば、クローン化技術、固相合成により作製されるフラグメントの構築による種々の方法が当技術分野には存在することを理解されるであろう。さらに、当業者であれば、記載された配列の相同体は他の種から単離してもよく、その非限定的な例には、アカシア、ユーカリ、シデ、ブナ、マホガニー、クルミ、オーク、セイヨウトネリコ、ヒッコリー、カバの木、クリ、ハンノキ、カエデ、スズカケノキ、イチョウ、ヤシ、モミジバフウ、糸杉、ベイマツ、モミ、セコイア、アメリカツガ、ヒマラヤスギ、ビャクシン、カラマツ、マツ、アメリカスギ、トウヒおよびイチイ、リンゴ、セイヨウスモモ、セイヨウナシ、バナナ、オレンジ、キーウィ、レモン、サクランボ、ブドウ、イチジク、ワタ、タケ、スイッチグラス、クサヨシならびにゴムノキが挙げられることを理解するであろう。記載の配列の有用な相同体は、ヤナギ、ポプラまたはアスペンなどの、ヤナギ科の広葉樹植物から単離してもよい。
【0135】
特に、本発明によるヌクレオチド配列は、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列、またはその相補的ヌクレオチド配列から選択される配列を含む。
【0136】
さらに、上記のc)またはf)におけるサブ配列またはフラグメントは、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチド、少なくとも22ヌクレオチド、少なくとも23ヌクレオチド、少なくとも24ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、例えば、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも35ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも45ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも55ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも65ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも75ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド、少なくとも85ヌクレオチド、少なくとも90ヌクレオチド、少なくとも95ヌクレオチドなどの、または少なくとも100ヌクレオチドなどの、少なくとも15ヌクレオチドを含むことは明らかであろう。ある種の実施形態では、上記のc)またはf)におけるサブ配列またはフラグメントは、少なくとも約200、250、300、330、360、375、400、425、450、460、480、500、600、700、800などの、少なくとも約900ヌクレオチドなどの、または少なくとも約1kb、1.1kb、1.2kb、1.3kb、1.4kb、1.5kb、1.6kb、1.7kb、1.8kb、1.9kb、2kb、2.1kb、2.2kb、2.3kb、2.4kb、2.5kb、2.6kb、2.7kb、2.8kb、2.9kbなどの、または少なくとも約3kbなどの、少なくとも約150核酸残基を含む。
【0137】
特に、本発明によるトランスジェニック植物は、記載された特定の配列と比べると、保存的変異体を含むヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を含んでいてもよく、本発明に従って、コードされたポリペプチド中の1つだけ、または少数のアミノ酸を改変させることも提供され使用される。したがって、a)またはd)のポリペプチドの保存的に置換された変異体を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を含むトランスジェニック植物を提供することは本発明の範囲内である。
【0138】
したがって、本発明は、前記ヌクレオチド配列がヌクレオチド配列中にサイレント置換を含む、すなわち、前記組換えDNA構築物が、前記ポリヌクレオチドにコードされているアミノ酸配列を変えない配列変化を含んでいてもよい組換えDNA構築物も提供することができる。
【0139】
本発明のある種の追加の実施形態では、前記サブ配列またはフラグメントは、
項目a)またはd)下の上記のヌクレオチド配列の保存ドメインと少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも87%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.5%同一など、項目a)またはd)下の上記のヌクレオチド配列の保存ドメインと少なくとも65%の配列同一性を有する。
【0140】
本発明が例示される特定の実施形態では、c)におけるサブ配列またはフラグメントは、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列を含む。
【0141】
追加の実施形態では、本発明に従って提供されるトランスジェニック植物は、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結された構成的、誘導性または組織特異的プロモーターをさらに含む組換えポリヌクレオチド構築物を含む。
【0142】
さらに追加の実施形態では、組換えポリヌクレオチド構築物は標的遺伝子の一部続いて植物機能性イントロン、続いて逆方向の上記のような標的遺伝子の同一部分からなる転写カセットの前に強力な構成的プロモーターをさらに含む。別の好ましい種類の組換えポリヌクレオチド構築物は、上でも説明したように、標的遺伝子のDNAフラグメントの転写を推進するプロモーター、続いて逆方向反復に存在する比較的短い配列を有している。
【0143】
本発明が例示される特定の実施形態では、トランスジェニック植物は、c)におけるサブ配列またはフラグメントが、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列を含む組換えポリヌクレオチド構築物を含む。
【0144】
本発明の現在の好ましい実施形態では、本発明によるトランスジェニック植物は、配列番号47の配列を含む組換えDNA構築物を含む。
【0145】
植物種
本発明によれば、トランスジェニック植物は、好ましくは木本植物または木本種である多年生植物でよい。有用な実施形態では、木本植物は、アカシア、ユーカリ、シデ、ブナ、マホガニー、クルミ、オーク、セイヨウトネリコ、ヤナギ、ヒッコリー、カバの木、クリ、ポプラ、ハンノキ、カエデ、スズカケノキ、イチョウ、ヤシおよびモミジバフウからなる群から選択できる広葉樹植物である。これらの2つのグループには、特に材木および加熱用バイオ燃料を提供するように生育される急成長種の樹木または木質低木が含まれるために、その変異体を含むヤナギ、ポプラおよびアスペンなどのヤナギ科の広葉樹植物は特に興味深い。
【0146】
追加の実施形態では、木本植物は、糸杉、ベイマツ、モミ、セコイア、アメリカツガ、ヒマラヤスギ、ビャクシン、カラマツ、マツ、アメリカスギ、トウヒおよびイチイからなる群から選択できる針葉樹である。
【0147】
有用な実施形態では、木本植物は、リンゴ、セイヨウスモモ、セイヨウナシ、バナナ、オレンジ、キーウィ、レモン、サクランボ、ブドウおよびイチジクからなる群から選択できる実の成る植物である。
【0148】
本方法において有用である可能性のある他の木本植物は、ワタ、タケおよびゴムノキからなる群から選択してもよい。
【0149】
本発明は、本明細書に記載の方法によって得られる上のトランスジェニック植物の任意の植物細胞、ならびに植物の収穫可能部分、種子およびその栄養繁殖体を含むあらゆる植物部分、および植物外植体または植物組織に及ぶ。本発明は、本発明によるDNA構築物を含む植物、その一部、植物細胞または植物子孫も包含する。本発明はさらに広がって、上述の方法のいずれかにより作製された一次の形質転換されたまたはトランスフェクトされた細胞、組織、器官もしくは植物全体の子孫を包含し、唯一の必要条件は、子孫が本発明による方法により親で生み出された特徴と同一の遺伝子型のおよび/または表現型の特徴を示すことである。
【0150】
本発明の態様の1つの文脈において記載された実施形態および特徴は、本発明のその他の態様にもあてはまることに注目すべきである。
【0151】
本出願に引用されているあらゆる特許および非特許文献は、これによって参照によりその全体を組み込まれているものとする。
【0152】
本発明は、この時点で、以下の非限定的な実施例においてさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0153】
[実施例1:木部形成および木部生育に関与する有用な遺伝子の同定)]
(1.1 序論)
木部形成および木部生育に関与する遺伝子の機能を見つけ解明するために、広範なgene mining programを実施し、木工業応用において有用な遺伝子を同定した。
【0154】
(1.2.材料および方法)
(1.2.1 遺伝子選択)
このgene mining programの第1段階は、その機能を知るために試験する遺伝子を限定するために大きな遺伝子プールからいくつかの遺伝子を選択することであった。遺伝子選択法は、Hertzbergら、(2001)およびSchraderら、(2004)に記載されている遺伝子発現パターンに基づいている。
【0155】
Hertzbergら、(2001)では、ポプラの発生中の二次木部の研究が記載されている。ポプラの二次木部は高度に組織化され、異なる発生段階間で容易に認識され明確な境界をもつ。木部形成は維管束形成層において開始される。形成層派生物は、分裂、増殖、二次壁形成、木化および最終的に、プログラムされた細胞死の過程を通じて木部細胞へと成長する。
【0156】
樹木の維管束成長点の大きな物理的サイズを利用して、限定された発生段階から接線凍結切片化により試料を得た。ヨーロッパヤマナラシ×アメリカヤマナラシ(ハイブリッドアスペン)における木部形成の個体発生中の特定段階での定常状態mRNAレベルを決定するために、木部発生領域を通じて30μm厚切片を試料採取し、続いて前記試料はハイブリッドアスペンに由来する2995個の固有のESTからなる、cDNAマイクロアレイを使用して分析した(Hertzbergら、2001年)。
【0157】
続いてこれらの試料をSchraderら、(2004)に記載の通り、マイクロアレイに再ハイブリダイズもさせた。これらの実験から、木部形成の異なった段階中に明確な特異的発現をする遺伝子を選択した(図1を参照されたい)。このことは、遺伝子は通常それが発現する場所でその機能を有するという仮定に基づく。したがって、細胞分裂、細胞増殖および形成層帯での細胞関与などの異なる木部形成段階中に特異的に発現する遺伝子、ならびに成熟帯において二次細胞壁形成中に発現する遺伝子(定義はWilsonら、1966年を参照されたい)は、無作為に選択されたいかなる遺伝子よりも木部形成過程にとって重要である可能性が高い。他の植物成長点同様、維管束形成層(図1、ゾーンA)の主機能は細胞分裂および分化の開始である。主に成長点においておよび初期細胞増殖帯(図1、ゾーンB)において発現する配列は、細胞周期、細胞増殖、線維の成長および一次細胞壁の生合成に関与する候補遺伝子を表している。ゾーンAおよびBは、細胞の運命および細胞同一性を調節する遺伝子も発現すると予想される。細胞増殖は成長点(ゾーンA)においてならびにゾーンBおよびCにおいて起こる。したがって、ゾーンA、BおよびC(図1)全域での発現を有する遺伝子は細胞増殖で機能している可能性がある。細胞増殖が完了するとすぐに、二次細胞壁が全木部細胞(ゾーンD)において蓄積される。二次細胞壁の生合成に関与する遺伝子の大部分は、ゾーンC(ここで導管はその二次細胞壁を開始する)、DおよびE(図1)に存在すると予想された。ゾーンE(図1)において強く上方調節されている遺伝子には、壁孔および細孔の形成の最終段階を通じて細胞壁彫刻のために必要な多くの壁分解酵素、または木化およびプログラムされた細胞死などの線維成熟の後期段階に関連する遺伝子が挙げられる。このゾーンで発現する遺伝子は、線維とは反対に依然生存しその代謝活性を維持しているレイ細胞(ray cell)における代謝および輸送に特異的に関与する遺伝子も含有している。
【0158】
木部発生の異なる段階中に発現する多数の様々な遺伝子は、トランスジェニックポプラ植物におけるRNAi下方調節を使用した機能的ゲノム解析のために選択された。図2は、その機能を調べるために選択され試験された遺伝子の発現パターンの例を示している。
【0159】
この選択に加えて、遺伝子は、Schraderら、(2004)に記載された成長点アレイ遺伝子発現実験に基づいて選択された。この実験では、形成層帯のみが試料採取された。しかし、試料は比較的薄く、形成層成長点に対して比較的高い分解能が得られ、すなわち、一切片が形成層帯のほぼ3細胞層に相当し、したがって、得られた発現プロファイルではほぼ細胞特異的分解能が提供された。この実験から、形成層帯内にピークのある遺伝子または形成層成長点にわたり発現の急な変化を有する遺伝子(Schraderら、2004年)が、トランスジェニックポプラ植物におけるRNAi下方調節を使用した機能的ゲノム解析のために選択された。
【0160】
発現パターンに基づく選択に続いて、前記遺伝子は遺伝子アノテーションに基づいてスクリーニングされ、リボソームタンパク質遺伝子などの、明らかに興味のない遺伝子アノテーションをもつ遺伝子は排除した。生育および木部特性に向けられた機能的なゲノム計画において機能的に試験される遺伝子の厳選を用いることは、コストを削減し興味深い遺伝子をさらに迅速に探し出すためには非常に有益である。
【0161】
機能を解析する目的である遺伝子の選択は、森林バイオテクノロジーのために興味深い機能を経済的に効率的な形で有する遺伝子を発見することの重要な一部ではあるが、産業上の応用でのその使用を見出すための決定的段階は、選択された遺伝子の遺伝子機能を実際に試験することである。本明細書で実施されるような遺伝子選択は、単に、ある種の特性/機能に対する機能的なゲノム計画(例えば、変異体またはトランスジェニック植物/生物を使用した遺伝子の大規模試験)のポジティブな結果を最大とするのに重要である。
【0162】
遺伝子選択の結果は、184個の潜在的遺伝子であり、このうちの150個は最終的に機能的に解析をし、そのうちの17個の遺伝子は、生育および改良された木部の化学的性質に関する樹木の表現型を変えかつ/または改変することへの遺伝子の関与および利用を求めてさらに選択された。184個の選択された遺伝子の発現パターンの例は図2および図3に示されている。
【0163】
(1.2.2 選択された遺伝子のクローン化)
選択された遺伝子は続いて、ゲートウェイ技術(Invitrogen社、USA)を使用して、CaMV35Sプロモーターの制御下にあるRNAiベクター(RNA干渉ベクター、pK7GWIWG2(I))にクローン化した。2つの主要な組のクローニングプライマーを使用し、1つの組は、ベクターおよびポリAテールに結合するユニバーサルプライマー対であり、もう1つの組は遺伝子特異的プライマーであった。PCR産物は、製造元(Invitrogen社、USA)の推奨に従って、まずpDONRベクター(Invitrogen社、USA)に移し、続いて目的のベクターpK7GWIWG2(I)に移行させた。選択された遺伝子の配列、その遺伝子バンク受託番号およびPCRプライマー等は表1.1に収載している。
【0164】
【表1】

【0165】
【表2】

【0166】
【表3】

【0167】
KR121
KR121の追加の配列決定分析により、配列番号48と呼ばれる新配列が得られた。この新配列は、5プライム末端に約28塩基を付加し、配列内の約10塩基を更新することにより配列番号18を補完する。
【0168】
KR125
KR125の追加の配列決定分析により、配列番号49と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、5プライム末端に約32塩基を付加し、配列内の約10塩基を更新し、3プライム配列の別の881塩基を付加することにより配列番号19を補完する。
【0169】
KR129B
配列番号50は、間違った遺伝子モデル配列が完全配列として与えられたために、配列番号3に完全に取って代わる。
【0170】
KR140
KR140の追加の配列決定分析により、配列番号51と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、3プライム末端に約287塩基を付加することにより配列番号21を補完し、KR140の完全配列として配列番号4を更新することにもなる。
【0171】
KR152
KR152の追加の配列決定分析により、配列番号52と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、7塩基を更新することにより配列番号22を補完する。
【0172】
KR163
KR163の追加の配列決定分析により、配列番号53と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、配列番号23および配列番号24がそれぞれ5および3プライム部分をカバーする全cDNAをカバーする。配列番号53は前記配列の中間に351塩基を付加している。配列番号53は、また5プライム末端に約46塩基を付加し、前記配列中で約10塩基を更新している。
【0173】
KR221
KR221の追加の配列決定分析により、配列番号54と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、5プライム末端に約11塩基を付加し、500番目の塩基から3プライム末端までの配列を更新することにより、配列番号25および配列番号7を補完する。
【0174】
KR224
KR224の追加の配列決定分析により、配列番号55と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、前記配列の3プライムに約778塩基を付加し、前記配列内で約10塩基を更新することにより配列番号26を補完する。この配列は224の完全配列として配列番号8も更新することになる。
【0175】
KR235
KR235の追加の配列決定分析により、配列番号56と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、配列番号27および配列番号28がそれぞれ5および3プライム部分をカバーする全cDNAをカバーする。配列番号56は前記配列の中間に161塩基を付加している。配列番号56は、KR235の完全配列として配列番号9も更新することになる。
【0176】
KR242
KR242の追加の配列決定分析により、配列番号57と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、前記配列において約30塩基を更新することにより配列番号30および配列番号11を補完する。
【0177】
KR292
KR292の追加の配列決定分析により、配列番号58と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、5プライム末端において約36塩基を付加し、配列内で約20塩基を更新することにより配列番号31および配列番号12を補完する。
【0178】
KR313
KR313の追加の配列決定分析により、配列番号59と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、配列番号32および配列番号33がそれぞれ5および3プライム部分をカバーする全cDNAをカバーする。配列番号59は前記配列の中間に84塩基を付加し、前記配列内で約6塩基を更新している。
【0179】
KR318
KR318の追加の配列決定分析により、配列番号60と呼ばれる新配列が得られた。この配列は、配列番号34、配列番号35および配列番号14に完全に取って代わる。最初に示された配列は、クローン混合のせいで間違っていた。示されるトランス遺伝子は新配列番号60に基づいている。
【0180】
(1.2.3 植物形質転換)
CaMV35S:逆方向反復DNA構築物は、アグロバクテリウムに、続いてハイブリッドアスペンのヨーロッパヤマナラシ×アメリカヤマナラシに形質転換された。以後「ポプラ」と称するクローンT89は、基本的にNilssonら、(1992)に記載の通りに形質転換され再生された。構築物ごとにほぼ3〜8種の独立した系統が作製された。1つの構築物を使用して作製された1つのそのようなグループのトランスジェニック樹木、例えば、1つの構築物から発出する異なったトランスジェニック樹木は今後は「構成グループ」と呼ばれる。各構成グループ内の各トランスジェニック系統、例えば、KR555-2B KR555-3A、KR555-2Bなどは、異なった形質転換事象であり、したがって、組換えDNAが植物ゲノム中の異なった位置に挿入されている可能性が最も高い。このせいで、1つの構成グループ内の異なる系統は部分的に異なっている。例えば、異なる形質転換事象は、本明細書で使用する種類のRNAi構築物を使用した場合には遺伝子下方調節のレベルが異なる植物を作製することになることが知られている。
【0181】
(1.2.4 植物生育)
トランスジェニックポプラ系統は、明期18時間および温度22℃/15℃(昼/夜)の下、温室内で、その野生型対照(wt)樹木と一緒に生育された。植物は毎週Weibulls Rika S NPK 7-1-5 希釈1対100を施肥した(最終濃度NO3、55g/l;NH4、29g/l;P、12g/l;K、56g/l;Mg、7.2g/l;S、7.2g/l;B、0.18g/l;Cu、0.02g/l;Fe、0.84g/l;Mn、0.42g/l;Mo、0.03g/l;Zn、0.13g/l)。植物は収穫までに8〜9週間生育した。この時期中、その樹高および直径を週1から2回測定した。多くの野生型樹木(典型的には15〜25樹木)およびいくつかの構成グループ(典型的には6〜20構成グループ)を含む多くのトランスジェニック樹木は、上の同一条件の下で温室で同時に生育した。野生型樹木と構成グループ間の比較はすべて、各生育グループ内で行う。
【0182】
(1.2.5 試料採取)
主な2つのタイプの収穫および試料採取を実施した。1つの一般的なタイプは、例えば、化学分析、木部形態学的解析、遺伝子発現解析、木部密度解析およびメタボロミクス解析用であった。ならびに、もう1つのタイプは、樹皮、木部、葉および根の乾燥重量測定用であった。
【0183】
(1.2.6 構成グループの選択)
生育の第1回目では、RNAiを使用して下方調節した特定の遺伝子をもつ樹木のグループ、すなわち、構成グループごとに、いくつかの以下の解析:生育測定を実施した。野生型対照樹木と比べて表現型変異を示した構成グループを選び出すために、これらのデータを解析した。
【0184】
生育データに基づいて、構成グループおよびそれによって生育特徴を改変するために利用することが可能な遺伝子を選択するために、いくつかの解析および因子を実施し計算した。選択判定基準および方法は下に記載する通りであった。
【0185】
<生育解析>
・対数期中の生育
上で定義した生育条件の下で、植物は、温室でほぼ80cmの樹高までまたは40日まで指数関数的生育パターン(植物樹高)を示す。植物ごとに、これらの範囲内で植物樹高のデータ点を使用して、
h(t)=h0*eat
(式中、h0は定数(t=0での樹高)およびaは指数関数的生育速度として定義される)
の形態で指数関数にフィットさせた。
【0186】
・最大樹高生育速度
別の樹高生育速度尺度(本明細書では「最大樹高生育速度」と名付ける)は、4連続樹高データ点にわたってフィットさせた一次関数の勾配として定義した。樹高生育速度値は、段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等で計算した。例は図4を参照されたい。各植物ごとに段階的な線形回帰分析から生み出される最大値として定義された最大生育速度はコンピュータ処理した。構成グループ中の個々の形質転換体からの高い最大樹高生育速度値の一次データは、不良値に基づかないようにチェックした。樹高生育曲線の例を示している図4から、樹高生育速度は生育の第1部分中は増加し、次に植物はその最大樹高生育に到達し、次に生育速度は植物が大きくなるに従って低下することがわかる。これらの段階は植物が異なれば時期も異なり、植物の測定にノイズがいくらか加わるために、速度法を使用した我々の上記の最大樹高生育は、異なった個々の樹木に対しこれらの条件で最大生育速度を計算するのに非常に有用である。
【0187】
・直径生育速度
上に定義する生育条件の下で、茎幅は時間の経過とともに比較的線形増加を示す。直径データに関する線形回帰は、直径生育を評価するために使用した。
d(t)=c*t+d0
(式中、d0は初期幅であり、cは直径生育速度(勾配)である)
【0188】
・最終樹高および直径
また、最終樹高および直径を使用して改変された構成グループを選択した。これらの値は、樹木生育能力および組織培養から土壌へ移植し温室へ置くときの生育を開始する樹木の能力の両方を考慮に入れる。
【0189】
<選択パラメータ>
上記の生育パラメータ、すなわち、直径生育速度、最大樹高生育速度、最終樹高および最終直径において、野生型集団と比べて有意なまたは明白な増加を示した構成グループは、その生育特性において改変された構成グループとして点数化し、したがって、相当する遺伝子を使用してこれらの特性を改変することができる。選択判定基準は下で述べている。2つの異なった選択レベル、すなわち1つは基本的なレベルであり、もう1つは格別の関心のある生育表現型を与える構築物用である。
【0190】
<生育差選択判定基準>
表1.2では、生育選択判定基準に使用した表現型を表すのに使用した略称を収載している。
【0191】
【表4】

【0192】
生育差選択判定基準は以下の通りである。
1.構成グループAFH、MFH、AMHGRおよびMMHGRが、対応する野生型グループAFH、MFH、AMHGRおよびMMHGRよりも少なくとも5%(もしくは2番目に高いレベルでは8%)大きい場合、または
2.構成グループAFD、MFD、ADGRおよびMDCが、対応する野生型グループAFD、MFD、ADGRおよびMDCよりも少なくとも5%(もしくは2番目に高いレベルでは8%)大きい場合、または
3.構成グループAFH、AFD、AMHGRもしくはADGRが、対応する野生型グループAFH、AFD、AMHGRもしくはADGRよりも少なくとも18%(もしくは2番目に高いレベルでは22%)大きい場合、または
4.構成グループMFH、MFD、MMHGRもしくはMDCが、対応する野生型グループMFH、MFD、MMHGRもしくはMDCよりも少なくとも18%(もしくは2番目に高いレベルでは22%)大きい場合。
【0193】
ラージスケールの機能的なゲノム計画を実行すると、得られるデータには一定量の変動と不確実性が生じる。この設定では、以下に示すようような原因から変動が生じる:構成グループ内の系統が異なれば下方調節の量も異なるために、構成グループ内の、試験に供した1つの系統から全ての系統が、表現型を示す可能性があること;植物を組織培養から温室に移植するときの植物状態のわずかな変動による実験手順中に起きる生育の変動、および生育周期中の異なった時点中の温室内での位置の違いに基づく変動。これらの変動は、データを解析する際に処理しなければならない。これらのことに基づいて、生育が増大した構成グループを選択するために、5%の増加および18%の増加という2つの異なる閾値を使用した。選択基準1および2は5%増加を使用しているが、この増加は、樹高生育に対応する全表現型AFH、MFH、AMHGRおよびMMHGRに、または直径生育に対応する全表現型AFD、MFD、ADGRおよびMDCに存在しなければならない。植物の一部または1つのみにおよび1つの表現型クラスのみに表現型が見られる場合、無作為の変動に基づいて構成グループを選択しないように、高い方の18%増加を使用してポジティブな構成グループを選択した(選択基準3と4は、それぞれ平均値と最大個体値に基づいて選択する)。これらの数は野生型データに対してチェックした。フィルター3および4の18%レベルを通過する野生型植物はなく、例えば、生育グループのいずれにおいても野生型植物で、使用した生育表現型のいずれかにおいて2番目に高い値の野生型よりも18%を超える高い値を有するものはなかった。フィルター1および2で使用した5%レベルは、4%未満の偽ポジティブ(25遺伝子中1つ)を生じ、例えば、野生型対照集団から5野生型植物を無作為に取り出して、それがフィルター1および2を通過するかを試験し、全生育グループに対してそれを実施し、これを10回繰り返せば、その回数のうちの4%において取り出した野生型植物はフィルターを通過するであろう。これは偽ポジティブを評価する非常に厳しい方法である。なぜならば、野生型対照グループは5植物でより低くなっているからである。格別の関心にある遺伝子に使用されるもっと高い値8%では、これは1.5%未満の偽ポジティブを生じる。
【0194】
これらの判定基準のうち1つまたは複数を満たす構成グループを選択した。
【0195】
<節間長測定>
FDL結節から60cm下方茎に含まれるすべての節を計数し、平均節間長を計算した。
【0196】
(1.3 結果)
特定の構成グループおよび対応する野生型グループの生育生データは、表1.3から1.20に示している。表の行は、特定の構成グループ(「KR」と名付ける)と対応する野生型グループ(「T89」と名付ける)の個体の樹高および直径測定値を含んでいる。測定の時間、すなわち温室内での日数は表の上部見出しに示している。
【0197】
(構成グループKR221)
構築物KR221は、EST A013P18U遺伝子バンク番号AI162169に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、Dゾーンにおいて上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。前記構成グループ集団は、wt集団と比べると、直径生育速度が21%平均増を示している。構成グループは生育フィルター判定基準(3)を満たしている。
【0198】
【表5】

【0199】
(構成グループKR224)
構築物KR224は、EST A013P46U遺伝子バンク番号AI162193に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年のデータから選択され、Bシリーズの試料8においてその最も高い発現を有する。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、最も高い個体を比べた場合、野生型と比べて増大した最終樹高を示している(11%)。前記構成グループは、最も速く生育する個体を比べた場合、野生型と比べて最大樹高生育速度の11%増も示している。下の表1.21で示されるように、前記構成グループは生育フィルター判定基準(1)を満たしている。
【0200】
【表6】

【0201】
【表7】

【0202】
(構成グループKR240)
構築物KR240は、EST A018P19U遺伝子バンク番号AI162476に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、CおよびDゾーンにおいて上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、平均値を比べた場合野生型対照の20%と比べて直径生育速度の増加を示している。下の表1.21で示されるように、KR240構成グループは生育フィルター判定基準(3)および(4)を満たしている。
【0203】
【表8】

【0204】
(構成グループKR292)
構築物KR292は、EST A041P18U遺伝子バンク番号AI163398に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年データから選択され、Bシリーズの試料6〜8においてその最も高い発現を有する。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、最も広い個体の14%と比べた場合、野生型と比べて増大した最終幅を示している。前記構成グループは、最も速く生育する個体を比べた場合、野生型と比べて直径生育速度の15%増も示している。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(2)を満たしている。
【0205】
【表9】

【0206】
(構成グループKR313)
構築物KR313は、EST A047P40U遺伝子バンク番号AI163745に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年データから選択され、Bシリーズの試料8〜10においてその最も高い発現を有し、Hertzbergら、2001年データでは前記遺伝子はB試料においてその最も高い発現を有する。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は20%増の最大樹高生育速度を誘導する。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(4)を満たしている。
【0207】
【表10】

【0208】
(構成グループKR459)
構築物KR459は、EST UB12CPE03遺伝子バンク番号BU820650に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年データから選択され、Bシリーズの試料6においてその最も高い発現を有する。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は樹高生育の増大を誘導し、構成グループおよび野生型対照グループの最も速い生育個体を比べた場合、最終樹高は24%大きく、最大樹高生育速度は23%大きい。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(4)を満たしている。
【0209】
【表11】

【0210】
(構成グループKR463)
構築物KR463は、EST UB24CPA08遺伝子バンク番号CK106533に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年データから選択され、Bシリーズの試料6においてその最も高い発現を有する。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、野生型対照樹木と比べて平均直径生育速度の18%増を示している。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(3)および(4)を満たしている。
【0211】
【表12】

【0212】
(構成グループKR465)
構築物KR465は、EST UB29DPE02遺伝子バンク番号CK106678に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年データから選択され、Bシリーズの試料9においてその最も高い発現を有する。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、直径生育速度の23%増を示している。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(3)を満たしている。
【0213】
【表13】

【0214】
(構成グループKR121)
構築物KR121は、EST A043P46U遺伝子バンク番号AI163516に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、Eゾーンで下方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、wt対照樹木と比べると、最終樹高、最終直径、最終最大樹高生育速度および直径生育速度の、それぞれ14%、16%、9%、15%増を示している。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(2)および(3)を満たしている。
【0215】
【表14】

【0216】
【表15】

【0217】
(構成グループKR125)
構築物KR125は、EST A045P41U遺伝子バンク番号AI163624に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、Dゾーンで上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は、最終直径および直径生育速度のそれぞれ12および6%増を示している。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(2)を満たしている。
【0218】
【表16】

【0219】
(構成グループKR140)
構築物KR140は、EST A061P49U遺伝子バンク番号AI164435に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、Dゾーンで上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は、樹高生育の増大を誘導し、最大樹高生育速度は、構成グループと野生型対照グループの平均を比べると12%大きくなっている。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(1)を満たしている。
【0220】
【表17】

【0221】
【表18】

【0222】
(構成グループKR152)
構築物KR152は、EST A077P51U遺伝子バンク番号AI165178に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、Eゾーンで下方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は、樹高生育の増大を誘導し、構成グループと野生型対照グループの平均を比べると最終樹高は10%および最大樹高生育速度は11%大きくなっている。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(1)を満たしている。
【0223】
【表19】

【0224】
【表20】

【0225】
(構成グループKR163)
構築物KR163は、EST A086P08U遺伝子バンク番号AI165576に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、Cゾーンで上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は、最も速い生育個体を比べた場合、野生型と比べ最大30%増の直径生育速度を与えた。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(2)および(4)を満たしている。
【0226】
【表21】

【0227】
【表22】

【0228】
(構成グループKR235)
構築物KR235は、EST A017P24U遺伝子バンク番号AI162414に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、DおよびEゾーンで上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は、最も速い生育個体を比べた場合、野生型と比べ最大17%増の最大樹高生育速度を与えた。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(1)および(4)を満たしている。
【0229】
【表23】

【0230】
(構成グループKR242)
構築物KR242は、EST A018P65U遺伝子バンク番号AI162510に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年データから選択され、Bシリーズの試料8〜10において上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、樹高生育の増大(構成グループとwt対照植物の最も高い個体を比べた場合、最大16%の樹高増)も、直径生育の増大(構成グループと対照植物間の平均を比べた場合、16%の直径生育速度増)も示している。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(1)、(3)および(4)を満たしている。
【0231】
【表24】

【0232】
【表25】

【0233】
(構成グループKR318)
構築物KR318は、EST A050P08U遺伝子バンク番号AI163860に相当する。この遺伝子は、Schraderら、2004年データから選択され、Bシリーズの試料6〜9において上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構築物は樹高生育の増大も直径生育の増大も与える。構成グループと野生型対照グループの最も高い値をもつ個体を比べた場合、最大樹高生育速度の増加は21%であり、直径生育速度の増加は13%であった。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(1)、および(4)を満たしている。
【0234】
【表26】

【0235】
(構成グループKR129B)
構築物KR129は、EST A047P55U遺伝子バンク番号AI163758に相当する。この遺伝子は、Hertzbergら、2001年データから選択され、CおよびDゾーンで上方調節されている。この構築物は生育の増大を誘導する。この構成グループは、14%増の最終樹高と8%増の最大樹高生育速度の樹高生育の増大を示している。下の表1.21で示されるように、この構築物は生育フィルター判定基準(1)を満たしている。
【0236】
【表27】

【0237】
下の表1.21では、対応する野生型グループと比べた特定の構成グループの樹高と直径生育尺度の比(例えば、平均最終樹高(AFH)比:AFH構成グループ/AFH野生型グループ)が示されている。表1.22は、コンピュータ処理した生育尺度AFH、AFD、AMHGR、ADGR、MFH、MFD、MMHGRおよびMDCの比が含まれる(上記の生育尺度の公表)。
【0238】
【表28】

【0239】
(1.4 考察)
機能的なゲノム計画において機能的に解析される遺伝子の選択のために適正量のデータと情報を使用することにより、生育特性を対象とする本願発明において、植物、特に樹木において生育を改変するのに利用することができるいくつかの遺伝子を見つけることができた。
【0240】
この計画において試験した全遺伝子のうち、格別な関心のある遺伝子を探すために本明細書で設定した生育判定基準の第1選択レベルを通過したのは18%未満であり、第2レベルを通過したのは9%未満であった。格別な関心のある遺伝子を探すために本明細書で設定した生育判定基準の第2レベルを通過した構成グループは、KR121、KR152、KR163、KR235、KR242、KR292、KR459およびKR465である。これは選択して試験すべき遺伝子のごく一部であるが、その数は試験に供した遺伝子の無作為な選択から予想される数と比べると高く、試験に供した遺伝子について我々が行った類の選択の重要性および有用性を示している。
【0241】
前述の例は以下のこと、すなわち、樹高または直径などの単一の判定基準に従って表現型を比べた場合、生育判定基準フィルター3および4により選択した遺伝子などの強力な表現型を引き起こす遺伝子を記録し選択することができることも例示している。しかし、平均最終樹高、最大最終樹高、平均の最大樹高生育速度、および最大の最大樹高生育速度などの複数の判定基準に従って表現型を比べることにより、一部の遺伝子の発現の下方調節には全体的な生育特徴に対して驚くほど大きな効果があることが明らかとなった。例示したように、これにより、その発現の下方調節により植物生育に対しかなりの効果をもたらす遺伝子のサブセットの同定が可能になった。遺伝子のこのサブセットの同定は、現在の技術水準に対して明らかに進歩したものであり、表現型形質が改善されたトランスジェニック植物の作製のために有望な形質転換事象の作製および選択が著しく促進された。
【0242】
遺伝子発現を下方調節することが可能な様々な方法を使用して商業的な系統を作製する場合、様々な方法で多くの系統を作製し、所望の特性についてその系統を試験することができる。形質遺伝子の下方調節のレベルが異なれば、多くの場合結果も異なることになるために、こうしたことが実行できると考えられる。これは、本実施例のデータに明確に見ることができる。次に、最も有望な形質転換事象を選択することになる。
【0243】
(参考文献)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
その野生型と比べると生育が増大しているトランスジェニック植物を作製する方法であって、木部形成段階中に特異的に発現する少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物のレベルを植物中で変化させるステップを含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループ中における前記遺伝子のRNAi下方調節が:
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における5%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における5%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/もしくは平均直径生育速度(ADGR)における18%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大直径係数(MDC)における18%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度が4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値が段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値が各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループ中における前記遺伝子のRNAi下方調節が、
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)、最大最終樹高(MFH)、平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における8%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)、最大最終直径(MFD)、平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における8%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)、平均最終直径(AFD)、平均の最大樹高生育速度(AMHGR)もしくは平均直径生育速度(ADGR)における22%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)、最大最終直径(MFD)、最大の最大樹高生育速度(MMHGR)もしくは最大直径係数(MDC)における22%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度が4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値が段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値が各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
a) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列、
b) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列に少なくとも60%同一のヌクレオチド配列、
c) a)またはb)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物のレベルを植物中で変化させるステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
d) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60から選択される配列を含むヌクレオチド配列、
e) d)のヌクレオチド配列の相補的ヌクレオチド配列、
f) d)またはe)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
g) d)、e)およびf)における配列のいずれか1つと少なくとも60%同一の核酸配列、ならびに
h) d)、e)またはf)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を提供するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヌクレオチド配列が、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列、またはその相補的ヌクレオチド配列から選択される配列を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
a)またはd)のヌクレオチド配列が、配列番号1、5、6、9、11、12、15、17、56、57および58からなる群から選択される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
c)またはf)におけるサブ配列またはフラグメントが少なくとも15ヌクレオチドを含む、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ヌクレオチド配列が、(a)のポリペプチドの保存的に置換された変異体を含むポリペプチドをコードする、請求項4から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列中にサイレント置換を含む、請求項4から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
サブ配列またはフラグメントが、請求項4a)に記載のヌクレオチド配列の保存ドメインと少なくとも65%の配列同一性を有する、請求項4から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
c)またはf)におけるサブ配列またはフラグメントが、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列を含む、請求項4から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
組換えDNA構築物が、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結された構成的、誘導性、または組織特異的プロモーターをさらに含む、請求項4から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
組換えDNA構築物が、請求項4に定義されるヌクレオチド配列、続いて植物機能的イントロン、続いて逆方向の請求項4に定義されるヌクレオチド配列を含む転写カセットの前に強力な構成的プロモーターをさらに含む、請求項4から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
組換えDNA構築物が配列番号47の配列を含む、請求項4から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
植物の再生可能細胞を前記組換えDNA構築物で形質転換し、前記形質転換細胞からトランスジェニック植物を再生する追加のステップを含む、請求項4から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
トランスジェニック植物が多年生植物である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
多年生植物が木本植物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
木本植物が広葉樹植物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
広葉樹植物が、アカシア、ユーカリ、シデ、ブナ、マホガニー、クルミ、オーク、セイヨウトネリコ、ヤナギ、ヒッコリー、カバの木、クリ、ポプラ、ハンノキ、カエデ、スズカケノキ、イチョウ、ヤシおよびモミジバフウからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
広葉樹植物がその変異体を含むヤナギ科の植物である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
木本植物が針葉樹である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
針葉樹が、糸杉、ベイマツ、モミ、セコイア、アメリカツガ、ヒマラヤスギ、ビャクシン、カラマツ、マツ、アメリカスギ、トウヒおよびイチイからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
木本植物が実の成る植物である、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
実の成る植物が、リンゴ、セイヨウスモモ、セイヨウナシ、バナナ、オレンジ、キーウィ、レモン、サクランボ、ブドウおよびイチジクからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
木本植物が、ワタ、タケおよびゴムノキからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
木部形成段階中に特異的に発現する少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物のレベルを植物内で変化させることができるヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物であって、
前記少なくとも1個の遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループ中における前記遺伝子のRNAi下方調節が、
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)および最大最終樹高(MFH)および平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における5%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)および最大最終直径(MFD)および平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における5%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)および/もしくは平均最終直径(AFD)および/もしくは平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および/もしくは平均直径生育速度(ADGR)における18%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)および/もしくは最大最終直径(MFD)および/もしくは最大の最大樹高生育速度(MMHGR)および/もしくは最大直径係数(MDC)における18%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度が4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値が段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値が各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される、トランスジェニック植物。
【請求項28】
木部形成段階中に発現する前記遺伝子は、3〜8種のトランスジェニック植物のグループ中における前記遺伝子のRNAi下方調節が、
明期18時間、温度22℃/15℃(昼/夜)および毎週施肥N 84g/l、P1 2g/l、K 56g/lの下で、温室で8週間生育したトランスジェニック植物の前記グループを、同一条件の下で生育した野生型植物のグループと比べた場合、
a)平均最終樹高(AFH)、最大最終樹高(MFH)、平均の最大樹高生育速度(AMHGR)および最大の最大樹高生育速度(MMHGR)における8%以上の差;ならびに/または
b)平均最終直径(AFD)、最大最終直径(MFD)、平均直径生育速度(ADGR)および最大直径係数(MDC)における8%以上の差;ならびに/または
c)平均最終樹高(AFH)、平均最終直径(AFD)、平均の最大樹高生育速度(AMHGR)もしくは平均直径生育速度(ADGR)における22%以上の差;ならびに/または
d)最大最終樹高(MFH)、最大最終直径(MFD)、最大の最大樹高生育速度(MMHGR)もしくは最大直径係数(MDC)における22%以上の差;
を引き起こすという判定基準に合致することで、選択され、
最大樹高生育速度が4連続樹高データ点にわたりフィットさせた一次関数の勾配を計算することにより定義され、樹高生育速度値が段階的な方法でデータ点1〜4、データ点2〜5等について計算され、最大樹高生育速度値が各植物ごとに生育速度値から最終的に選択される、請求項27に記載のトランスジェニック植物。
【請求項29】
a) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列、
b) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60のヌクレオチド配列に少なくとも60%同一のヌクレオチド配列、
c) a)またはb)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む少なくとも1個の遺伝子の遺伝子産物のレベルが変化している、請求項27または28に記載のトランスジェニック植物。
【請求項30】
d) 配列番号1、2、5、6、10、13、15、16、17、50、51、54、55、56、57、58、60などの、配列番号1〜17、50、51、54〜58、60から選択される配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
e) d)のヌクレオチド配列の相補的ヌクレオチド配列、
f) d)またはe)のヌクレオチド配列のサブ配列またはフラグメント、
g) d)、e)およびf)における配列のいずれか1つと少なくとも60%同一の核酸配列、ならびに
h) d)、e)またはf)のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件の下でハイブリダイズするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む組換えポリヌクレオチド(DNA構築物)を含むトランスジェニック植物。
【請求項31】
ヌクレオチド配列が、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列、またはその相補的ヌクレオチド配列から選択される配列を含む、請求項28に記載のトランスジェニック植物。
【請求項32】
b)またはf)におけるサブ配列またはフラグメントが少なくとも15ヌクレオチドを含む、請求項29または30に記載のトランスジェニック植物。
【請求項33】
ヌクレオチド配列が、a)またはd)のポリペプチドの保存的に置換された変異体を含むポリペプチドをコードしている、請求項29から32のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項34】
ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列中にサイレント置換を含む、請求項29から33のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項35】
サブ配列またはフラグメントが、請求項29のヌクレオチド配列の保存ドメインと少なくとも65%の配列同一性を有する、請求項29から34のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項36】
c)におけるサブ配列またはフラグメントが、配列番号20、29、36、37、38、48、49、51〜60などの、配列番号18〜38、48、49、51〜60の配列を含む、請求項29から35のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項37】
組換えDNA構築物が、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結された構成的、誘導性、または組織特異的プロモーターをさらに含む、請求項29から36のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項38】
組換えDNA構築物が、請求項4に定義されるヌクレオチド配列、続いて植物機能的イントロン、続いて逆方向の請求項4に定義されるヌクレオチド配列を含む転写カセットの前に強力な構成的プロモーターをさらに含む、請求項29から37のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項39】
組換えDNA構築物が配列番号47の配列を含む、請求項29から38のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項40】
前記植物が木本種に属する、請求項27から39のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【請求項41】
前記植物が広葉樹植物である、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項42】
前記植物が、アカシア、ユーカリ、シデ、ブナ、マホガニー、クルミ、オーク、セイヨウトネリコ、ヤナギ、ヒッコリー、カバの木、クリ、ポプラ、ハンノキ、カエデ、スズカケノキ、イチョウ、ヤシおよびモミジバフウからなる群から選択される、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項43】
前記植物がその変異体を含むポプラ群由来である、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項44】
前記植物がその変異体を含むヤナギ群由来である、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項45】
前記植物が針葉樹である、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項46】
前記植物が、糸杉、ベイマツ、モミ、セコイア、アメリカツガ、ヒマラヤスギ、ビャクシン、カラマツ、マツ、アメリカスギ、トウヒおよびイチイからなる群から選択される、請求項44に記載のトランスジェニック植物。
【請求項47】
前記植物が、タケおよびゴムノキからなる群から選択される、請求項40に記載のトランスジェニック植物。
【請求項48】
請求項27から47のいずれかに記載のトランスジェニック植物の植物細胞または植物子孫。
【請求項49】
請求項27から47のいずれかに記載のトランスジェニック植物により生成される木材。
【請求項50】
請求項3から11に記載の少なくとも1つの配列を含むDNA構築物。
【請求項51】
請求項50に記載のDNA構築物を含む植物細胞または植物子孫。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1a】
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【図1b】
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【公表番号】特表2010−511405(P2010−511405A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540207(P2009−540207)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050939
【国際公開番号】WO2008/069747
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509159171)スヴェトリー・テクノロジーズ・アーベー (6)
【Fターム(参考)】