改良された能動電界分極媒体型エアクリーナ
【課題】改良された能動電界分極媒体型エアクリーナを提供する。
【解決手段】誘電性フィルタ材からなる第1パッド16Bと、第1導電性外側スクリーン12Aと、第2導電性外側スクリーン12Bと、第1導電性外側スクリーンを貫通する高圧プローブ130と、第1導電性外側スクリーンに取り付けられ、高圧プローブを包囲する第1絶縁性シールド132Aと、中央スクリーン13に取り付けられ、高圧プローブと接触するように配置された接点134とを備え、該接点は、頭部と軸部を有する留め具を含み、軸部が中央スクリーンを貫通し、頭部が高圧プローブに接触している。
【解決手段】誘電性フィルタ材からなる第1パッド16Bと、第1導電性外側スクリーン12Aと、第2導電性外側スクリーン12Bと、第1導電性外側スクリーンを貫通する高圧プローブ130と、第1導電性外側スクリーンに取り付けられ、高圧プローブを包囲する第1絶縁性シールド132Aと、中央スクリーン13に取り付けられ、高圧プローブと接触するように配置された接点134とを備え、該接点は、頭部と軸部を有する留め具を含み、軸部が中央スクリーンを貫通し、頭部が高圧プローブに接触している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にエアクリーナ装置に関し、詳細には、静電界を利用して媒体および粒子を分極させることによって媒体の粒子捕集効率を向上させるエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
静電吸着の原理は、気流中に存在する汚染物質の除去を向上する目的で長年利用されている。静電気を利用したエアクリーナは主に3つに分類され、それらは静電集塵器、受動静電フィルタ、および能動電界分極媒体型エアクリーナであるが、別の名称で呼ばれることもある。
【0003】
静電集塵器では、粒子を帯電させ、その粒子を逆帯電および/または接地された捕集板で捕集する。
【0004】
受動静電フィルタ(エレクトレットとも呼ばれる)では、特定処理および/または固有特性の組合せによって帯電された媒体(または異なる種類の媒体の組合せ)が使用される。静電荷を持つ粒子がフィルタ媒体に到達した際、これらの粒子は逆の静電荷を持つフィルタ媒体材に吸着される。
【0005】
能動電界分極媒体型エアクリーナは、2つの電極間の電圧差によって発生する静電界を利用する。この2電極間の静電界に誘電フィルタ媒体が配置される。誘電体とは、電気絶縁体、または電流に対し抵抗性を有しかつ電気エネルギーを蓄積可能な物質である。誘電体はそれ自体に電界を集中させる傾向があり、それゆえに静電界を効果的に維持することができる。静電界は媒体の繊維および侵入してくる粒子の両方を分極させ、それにより媒体およびエアクリーナの効率が向上する。フィルタの効率とは、所定の大きさの粒子あるいは所定の大きさの範囲内の粒子が、気流から除去される割合のことをいう。
【0006】
また、カナダ特許第1,272,453号公報には、別の静電エアフィルタの構成が開示されており、この構成では使い捨ての矩形カートリッジが高圧電源に接続されている。カートリッジは導電性内側中央スクリーンで構成され、当該導電性内側中央スクリーンは繊維状誘電体(プラスチックまたはガラス)からなる2層の間に挟まれている。さらに、この2つの誘電層は、導電性材料からなる2つの外側スクリーンの間に挟まれている。導電性内側中央スクリーンに印加される電圧を高くすることにより、導電性内側中央スクリーンおよび逆電位または接地電位に保たれた2つの導電性外側スクリーンとの間に静電界が発生する。高圧静電界によって2つの誘電層の繊維が分極される。
【0007】
エアクリーナは様々な構成および状況で設置することができ、冷暖房空調(HVAC)装置の一部として、また独立型の空気循環清浄装置内においても使用可能である。(例えば家庭用および軽業務用等の)小型HVAC装置では、エアクリーナパネルが(気流に対し直角に)平坦配置で設置されるかあるいは傾斜状フィルタトラックとして設置される場合が多い。一方、大型の装置では、通常複数のエアフィルタがV字状配列構造をなすように配列され、それぞれのフィルタの配置によって、気流の軸に対して直角に延在するZ字状フィルタ列が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、能動電界分極媒体型エアクリーナにおける改良を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔前方空力カウリング〕
本発明の参考例としての一態様によると、複数の能動電界分極媒体型エアクリーナから構成されるV字状配列構造において、気流に対面し隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナの前端を連結する前方空力カウリングを備えている。前方カウリングは気流に対する形状抗力を低減することができ、それによりフィルタの静圧低下(気流に対する抵抗)を抑えることができる。さらに、前方空力カウリングの中空内部には、高圧電源を前方空力カウリング内に包囲するための凹部が形成され、これにより電子部品が保護されかつ絶縁される。また、カウリングは高圧線および低圧線をエアクリーナパネル間および隣り合うエアクリーナモジュール間を延在させるための溝としての機能をもつ。
【0010】
〔後方ダブルヒンジ式エアシール〕
本発明の参考例としての他の態様によると、複数の能動電界分極媒体型エアクリーナから構成されるV字状配列構造において、隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナの後端を連結する後方ダブルヒンジを備えている。後方ダブルヒンジによって、隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナ間に確実なシールが形成される。これにより、隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナ間からの吹き抜けが抑制され、より高い効率を図ることができる。
【0011】
〔分極媒体型エアクリーナ用の改良型電極〕
本発明の参考例としての他の態様によると、高圧電極が導電性を有する押出プラスチック網またはその他同様の材料で形成される。このような材料は動作電圧を著しく高めることを可能にし、それにより効率向上を図ることができる。
【0012】
〔抵抗性中央スクリーンおよび調節型高圧電源〕
本発明の参考例としてのさらなる他の態様によると、2つ以上の能動電界分極媒体型エアクリーナが1つの高圧電源を共有する構成でも良い。そのような構成において、1つの能動電界分極媒体型エアクリーナが短絡した場合、短絡により高圧電源から引き出された電流を中央スクリーンの抵抗が制限することで、同一電源を共有する他の能動電界分極媒体型エアクリーナが通常の動作を継続することができる。
さらに、高圧電源は調節式であっても良く、これにより最適電圧が選択できるようになり、アーク放電を引き起こすことのない最適な静電界が得られる。
【0013】
〔誘電性媒体支持フレーム〕
本発明の参考例としての他の態様によると、能動電界分極媒体型エアクリーナは誘電性媒体支持フレームを備え、誘電性媒体支持フレームはその一方側には中央スクリーンおよび/またはフィルタ媒体を保持するための凹部または棚部を有し、他方側には導電性外側スクリーンを保持する導電性保持フレームとともに確実なシールを形成する凸部を有する。誘電性媒体支持フレームは、短絡や導電性外側スクリーンまたは導電性保持フレーム側へのアーク放電を引き起こすことなく中央スクリーンをフィルタ媒体の端部まで延在させ、この構成によりフィルタ媒体全体により均一な静電界を生じさせることができる。さらに誘電性媒体支持フレームにより形成された縁部は、導電性中央スクリーンの端部におけるコロナ噴霧の発生を防止する。誘電性媒体支持フレームと導電性保持フレームとの間の確実なシールによって、導電性保持フレームとフィルタ媒体の端部の間からの空気漏れ(吹き抜け)が低減される。誘電性媒体支持フレームは硬質または軟質プラスチックで形成することができる。
【0014】
〔平坦導電性外側スクリーン〕
電極間の間隔をより均一にして、能動電界分極媒体型エアクリーナ全体により均一な電界を生じさせるには、導電性外側スクリーンを従来の能動電界分極媒体型エアクリーナの可撓性外側スクリーンよりも比較的平坦に形成する。外側スクリーンの平坦性は、誘電性フィルタ材よりも比較的硬質な材料を使用することで得られる。
【0015】
〔改良された高圧接点〕
従来の能動電界分極媒体型エアクリーナにおける問題の一つは、高圧プローブが中央スクリーンに接触する領域にある。従来技術では通常、高圧接続はプローブまたはクリップが比較的小さい面積で中央スクリーン(または電極)に接することで実現される。時としてこの接触が不良になる場合がある。この構成の問題点としては、時間の経過とともに接点がアーク放電や噴霧放電を起こすようになり、電極上の接触域を浸食し、その結果接触の確実性が低下する。また、この浸食が進むにつれ、最終的に接触が失われる事態にもなり得る。本発明はこのような問題を解消し、様々な手段によりエアクリーナの信頼性を維持する。これは、電極の表面において接続をより広範囲に広げるディスクおよび/またはディスクと留め具を使用することによって、高圧接点の面積を大きくすることで達成される。本発明での各実施形態では、高圧接点領域が円形で示されているが、他の形状でも良い。
また、高圧プローブの領域においてコロナ噴霧および/またはアーク放電が発生する傾向がある。高圧プローブが中央スクリーンに接する領域での噴霧放電およびアーク放電を抑えるために、高圧シールドに包囲された高圧プローブが設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナパネルの等角投影図である。
【図2】図2は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの断面図である。
【図3】図3は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの断面図の詳細部分であり、交換フィルタ媒体がフィルタ保持用の下フレームに挿入されている状態を示す。
【図4】図4は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの断面図の詳細部分であり、交換フィルタ媒体がフィルタ保持用の上フレームに挿入されている状態を示す。
【図5】図5は、本発明の参考例としての、抵抗性中央スクリーンを有し共通高圧電源を共有する複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの概略図である。
【図6】図6は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの上部または下部に使用される前方カウリングの断面図である。
【図7】図7は、図6に示す前方カウリングとともに使用される本発明の参考例としてのヒンジ部の断面図である。
【図8】図8は、本発明の参考例としてのV字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタとともに使用される前方カウリングの断面図である。
【図9】図9は、本発明の参考例としての第1と第2能動電界分極媒体型エアクリーナおよび前方カウリングの組立図である。
【図10】図10は、本発明の参考例としてのダブルヒンジの第1部分の断面図である。
【図11】図11は、本発明の参考例としてのダブルヒンジの第2部分の断面図である。
【図12】図12は、本発明の参考例としての第1と第2能動電界分極媒体型エアクリーナおよびダブルヒンジ組立体の組立図である。
【図13】図13は、本発明の参考例としてのダブルヒンジ組立体の組立図である。
【図14】図14は、本発明の参考としての能動電界分極媒体型エアクリーナとともに使用される導電性保持フレームの等角投影図である。
【図15】図15は、本発明の参考例としての能動電界分極媒体型エアクリーナとともに使用される保持クリップまたは細長い薄板の等角投影図である。
【図16】図16は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す組立図である。
【図17】図17は、導電性外側スクリーンを本発明の参考例とともに使用される導電性保持フレームに保持するために用いられる保持クリップまたは細長い薄板の組み付け方法を表す断面図である。
【図18】図18は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレームの断面図である。
【図19】図19は、本発明による高圧プローブおよび高圧接点スクリーンの組立図である。
【図20】図20は、本発明による誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す。
【図21】図21は、本発明による、高圧プローブと高圧接点シールドとを含む硬質導電性外側スクリーンと導電性保持フレームを示す。
【図22】図22は、本発明の参考例としての第2実施形態による誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す組立図である。
【図23】図23は、本発明の参考例としての第3実施形態による誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の参考例としての、V字状配列構造100をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナパネル(フィルタ)を示す図である。以下では各フィルタパネル101は「パネル」、「フィルタ」、および/または「エアクリーナ」と称する場合がある。複数の能動電界分極媒体型エアクリーナ101は、積重ね可能な複数のモジュール102にグループ化され、各モジュール102はその幅W、高さH、および奥行Dが適用対象に応じてそれぞれ変更可能である。詳細には、図1に示すV字状配列構造100は8つの積重ね可能モジュール102を有し、各モジュール102には8つの能動電界分極媒体型エアクリーナが備えられるため、合計で64個のエアクリーナが存在する。
【0018】
図16は能動電界分極媒体型エアクリーナの典型例を示す。繊維状誘電体からなる第1パッド16Aは中央スクリーン110の上方に配置されている。また、中央スクリーン110の他方側には誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bが配置されている。誘電性フィルタ材からなる第1パッドは、接着剤121Aや超音波溶接等の適宜な手段によって誘電性媒体支持フレーム120に取り付けられる。誘電性フィルタ材からなる第1パッド16Aの上方には第1導電性外側スクリーン12Aが配置され、また、誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bの下方には第2導電性外側スクリーン12Bが配置される。誘電性フィルタ材からなる第2パッドは、接着剤121Bや超音波溶接等の適宜な手段によって誘電性媒体支持フレーム120に取り付けられる。第1導電性外側スクリーン12Aは第1導電性保持フレーム116Aによって所定位置に保持される。また、第2導電性外側スクリーン12Bは第2導電性保持フレーム116Bによって所定位置に保持される。
【0019】
フィルタ媒体は、誘電性媒体支持フレーム120、繊維状誘電体からなる第1パッド16A、中央スクリーン110、および誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bによって構成される。フィルタ媒体を保持するフィルタ保持フレームは、第1導電性外側スクリーン12Aと第1導電性保持フレーム116A、および第2導電性外側スクリーン12Bと第2導電性保持フレーム116Bによって構成される。
【0020】
動作の際には、高圧電源108の一方の端子が中央スクリーン110に接続され、高圧電源108の他方の端子は、第1導電性外側スクリーン12Aと、通常接地電位に保たれる第2導電性外側スクリーン12Bとに接続される。
【0021】
図16における能動電界分極媒体型エアクリーナの誘電性フィルタ材16Aおよび16Bを通過する空気に含まれる粒子は、エアクリーナ内の電界により分極され、誘電性フィルタ材からなる第1および第2パッド16A、16Bで捕集される。
【0022】
〔前方空力カウリング〕
図2は、図1に示す各モジュール102の断面図である。能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110C、110D、110E、110F、110G、110Hは、V字状配列構造を形成するようにそれぞれ所定位置に保持される。モジュール102の前方では、複数のカウリングがフィルタをそれぞれの所定位置に保持している。詳細には、2つの末端カウリング104Aと104Bがそれぞれモジュール102の上端と下端に配置され、2つの末端カウリングの間には3つの中間カウリング106A、106B、106Cが配置されている。カウリングの空気力学的形状により気流に対する形状抗力を低減することができ、それによってフィルタの空電(空気抵抗)を減らすことができる。
【0023】
図8は中間カウリング106Cの詳細図である。カウリング106Cの本体には着脱可能なキャップ107Aがあり継ぎによって取付けられている。着脱可能キャップによって電源108C(図において原寸通りではない)が挿入可能となり、さらに着脱可能キャップは電源108C内の電子部品を気流から遮断し、電源108Cを外側のフィルタ保持フレームや装置匡体等の接地面から絶縁する。また、中間カウリング106Cには溝またはトレイが設けられ、これを介して低圧線および高圧線がパネル間またはモジュール間を延在する。中間カウリング106Cは第1および第2取付箇所107B、107Cを有する。図6は末端カウリング104Aの詳細図である。末端カウリング104Aには末端部材109(図7に図示)があり継ぎによって結合されている。本発明の参考例としての他の実施形態では、あり継ぎはL字形状やT字形状等様々な形状であっても良い。さらには係合突起が設けられていなく、カウリングがフィルタ保持フレームに接着、ネジ止め、あるいはその他の方法で取付けられていても良い。
【0024】
図9は、前方空力カウリングが2つの能動電界分極媒体型エアクリーナのフィルタ保持フレームに結合された状態を示す組立図である。誘電性フィルタ材からなる第1および第2パッド16A、16Bと中央スクリーン110Aは、誘電性媒体支持フレーム120Aに結合されている。誘電性媒体支持フレーム120Aは、上側導電性フレーム116Aと下側導電性フレーム116Bとの間の所定位置に保持される。下側導電性フレーム116Bは、中間カウリング106の取付箇所107Bにあり継ぎを介して結合されている。
【0025】
同様に、誘電性フィルタ材からなる第1および第2パッド17A、17Bと中央スクリーン110Bは、誘電性媒体支持フレーム120Bに結合されている。誘電性媒体支持フレーム120Bは、上側導電性フレーム116Cと下側導電性フレーム116Dとの間の所定位置に保持される。上側導電性フレーム116Cは、中間カウリング106の取付箇所107Cにあり継ぎを介して結合されている。
【0026】
中間空力カウリング106により、2つの能動電界分極媒体型エアクリーナパネルにおける気流に対する形状抗力を低減することができ、また、モジュールの組立作業時間を短縮することができる。
【0027】
〔後方ダブルヒンジ式エアシール〕
モジュール102の後方において(図2)、複数のダブルヒンジがそれぞれのフィルタを所定位置に保持している。各ダブルヒンジは3つのヒンジH1、H2、H3から構成される。図3に示すように、第1ヒンジH1は上フレーム112Aに連結された第1取付箇所および下フレーム112Bに連結された第2取付箇所を有する。ヒンジH1は、下フレーム112Bを上フレーム112Aから離れる方向に回転させる回転軸を有し、この回転により交換フィルタ媒体が能動電界分極媒体型エアクリーナ110Gに挿入可能になる。
【0028】
同様に、図4に示すように、第2ヒンジH2は上フレーム114Aに連結された第1取付箇所および下フレーム114Bに連結された第2取付箇所を有する。ヒンジH2は、上フレーム114Aを下フレーム114Bから離れる方向に回転させる回転軸を有し、この回転により交換フィルタ媒体が能動電界分極媒体型エアクリーナ110Hに挿入可能になる。
【0029】
第3ヒンジH3は第1ヒンジH1に連結された第1取付箇所および第2ヒンジH2に連結された第2取付箇所を有する。第3ヒンジH3は第3回転軸を有し、この第3回転軸を中心に上側の能動電界分極媒体型エアクリーナ(112A、112B)が下側の能動電界分極媒体型エアクリーナ(114A、114B)に対して一体的に回転することができる。モジュール102の後方においてダブルヒンジを使用することにより、能動電界分極媒体型エアクリーナを互いに異なった角度で装着することができ、装着自由度を高めることができる。さらに、モジュール102の後方におけるダブルヒンジは、エアクリーナの互いに異なる装着角度に関わらず、フィルタ後部に優れたエアシールを形成する。フィルタ後部でのダブルヒンジによる確実なシールによって、吹き抜け、すなわち、フィルタ媒体を通過せずにフィルタ列を通り抜けてしまう気流の量が抑制される。
【0030】
図10、11、12、および13は、本発明の参考例としてのダブルヒンジを示す詳細図である。各ヒンジは、硬質プラスチック部および軟質プラスチック部を有するプラスチック押出材により形成される。図10において、第1ヒンジは第1取付箇所140および第2取付箇所144を有する。第1および第2取付箇所140、144は互いに対して回転部144を中心に回転することができる。軟質材料(通常はプラスチック)からなる回転部141に対して、取付箇所140、144は通常硬質プラスチックまたはその他の硬質材料から成る。多くの場合、回転部141は軟質プラスチックで形成されることで回転軸として機能し、その回転軸を中心に第1および第2取付箇所140、144が回転可能となる。その他の材料の組み合わせ、例えば金属とゴム等も可能である。
【0031】
図13に示すように、図10に示すヒンジを2つ設置し、それらを第3ヒンジと組み合わせて使用することによって本発明の参考例としてのダブルヒンジが形成される。これらのヒンジのうち、第1ヒンジは140Aで示され回転部141Aを有する。また、第2ヒンジは140Bで示され回転部141Bを有する。図13に示す(図11にも示す)第3ヒンジ142Aは、第1取付箇所142および第2取付箇所145を有し、これらは互いに対して回転部143を中心に回転することができる。ヒンジ142Aの第1取付箇所は、あり継ぎを介して第1ヒンジ140Aに連結される。ヒンジ142Aの第2取付箇所は、あり継ぎを介して第2ヒンジ140Bに連結される。第1ヒンジ140A、第2ヒンジ140B、および第3ヒンジ142Aを結合することにより本発明の参考例としてのダブルヒンジが形成される。
【0032】
図12は、2つの能動電界分極媒体型エアクリーナパネルがダブルヒンジに結合された状態を示す。第1フィルタパネル115Aの上側導電性保持フレーム116Aと下側導電性保持フレーム116Bは、第1ヒンジ140Aに連結されている。詳細には、第1フィルタパネル115Aの上側導電性フレーム116Aは、通常アルミニウム押出材(またはその他の適切材料)からなり、当該アルミニウム押出材は、第1ヒンジ140Aの第1取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状を有する。また、第1フィルタパネル115Aの下側導電性保持フレーム116Bはアルミニウム押出材からなり、当該アルミニウム押出材は、第1ヒンジ140Aの第2取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状をもつ。以下において他の箇所でも記述されるが、フレーム116A、116Bは非導電性材料で形成されていても良い。
【0033】
同様に、第2フィルタパネル115Bの上側導電性フレーム116Cはアルミニウム押出材からなり、当該アルミニウム押出材は、第2ヒンジ140Bの第1取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状をもつ。第2フィルタパネル115Bの下側導電性フレーム116Dはアルミニウム押出材からなり、当該アルミニウム押出材は、第2ヒンジ140Bの第2取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状をもつ。
【0034】
よって、第1フィルタパネル115Aの上側導電性フレーム116Aと下側導電性フレーム116Bは互いに対して第1ヒンジ140Aの回転軸141Aを中心に回転可能である。同様に、第2フィルタパネル115Bの上側導電性フレーム116Cと下側導電性保持フレーム116Dは互いに対して第2ヒンジ140Bの回転軸141Bを中心に回転可能である。本発明の参考例としてのダブルヒンジを使用することによって、第1フィルタパネル115Aと第2フィルタパネル115Bとが互いに対して第3ヒンジ142Aの回転軸143を中心に回転可能になる。
【0035】
外側フレーム部材116A、116B、116C、116Dは、それぞれ管状またはL字状構成要素を略矩形フレームに成形、溶接、あるいは組立てたものによって形成されていても良い。そして、外部スクリーン(図16中の12Aおよび12B)をフレーム部材にネジ止め、溶接、あるいは固着しても良い。同様に、フレームの側面に対するヒンジおよびカウリングの結合を、あり継ぎによってではなく、ネジ止め、接着、あるいは固着によって行っても良い。さらに、上記のあり継ぎ形状は、フレーム部材と前方に配置されたヒンジまたは後方に配置されたカウリングとの間を確実に結合させることができるものであれば、T字状、L字状、またはその他の形状でも良い。
【0036】
〔改良された電極設計〕
従来技術では様々な通気性材料や格子(例えば中央スクリーンとしての使用)が記述されているが、押出プラスチック網は開示されていない。押出プラスチック網は種々の材料から作られているが、そのうち最も一般的なのが低密度または高密度ポリエチレンである。押出プラスチック網は通常、プラスチック樹脂に炭素やその他の物質を添加することで導電性をもつように形成される。それによって得られる導電性は、使用される特定の成分に応じて調整可能であり、制御可能である。また、押出プラスチック網を能動電界分極型エアフィルタにおける中央スクリーン電極の材料として適したものにするために、難燃剤が使用される。製造上および作用上の観点から、押出プラスチック網を能動電界分極媒体型エアクリーナ内の電極として使用することに多くの利点があることがわかっている。押出プラスチック網の主な利点は網部材の形状や構造にある(特に、網の開口部を囲む縁が鋭くないことにある)。
【0037】
電極間に高圧電位が使用される際、数々の要因によりアーク放電、噴霧放電、およびコロナ放電が発生する傾向があり、またそれが発生する場所もそれらの要因に起因する。そのうち重要な要因として、電極の部材または繊維に関する形状、均一性、平坦性、および間隔が挙げられる。鋭い縁、ばり、よれ、抜け繊維や毛羽、尖端等はすべて噴霧放電およびコロナ放電を促進させる。押出プラスチック網は、その特有の製造工程によりこれらの欠点をほぼ解消している。結果として得られる中央スクリーン格子は最高動作電圧を可能とし、それにより電界強度の増加やフィルタ効率の向上を図ることができる。具体的に、押出プラスチック網からなる中央スクリーンは、炭素含浸発泡材よりも20%〜30%高い動作電圧を伝達することができ、またアルミニウムスクリーンよりも40%高い動作電圧を伝達することができる。押出プラスチック網はほぼ平坦に配置されるため、低密度ポリエチレンがこれに非常に適した材料ではあるが、鋭い縁、ばり、よれ、抜け繊維や毛羽、尖端等の鋭利な特性がほぼ無いものであれば、その他の材料も使用可能である。
【0038】
〔抵抗性中央スクリーンおよび調節型高圧電源〕
図2に示す空力カウリングは中空であり、また、中間カウリング106A、106B、106Cにはそれぞれ高圧電源108A、108B、108Cが設けられている。この3つの高圧電源108A、108B、108Cは、8つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110C、110D、110E、110F、110G、110H間で共有される。図5参照。ただし、HVAC装置内の1つまたは全てのモジュールにおける幾つかまたは全てのパネルに対して1つの電源を設ける構成でも良いし、各パネルに対して1つの電源を設ける構成でも良く、要は動作上の冗長性と全体の装置コストとの間のバランスがとれる構成にすることである。そのために、本構成では2以上のパネルが1つの電源を共有し、一パネルが、同一電源を共有する他のパネルの動作に悪影響を及ぼすことがない。
【0039】
本発明の参考例としての一態様によると、各能動電界分極媒体型エアクリーナの中央スクリーンは導電性ではなく抵抗性を有する。図5に示すように、8つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110C、110D、110E、110F、110G、110Hは
それぞれ抵抗器としての記号で表示されている。詳細には、高圧電源108Aは3つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110Cの中央スクリーンに連結されている。また、高圧電源108Bは2つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110D、110Eの中央スクリーンに連結されている。さらに、高圧電源108Cは3つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110F、110G、110Hの中央スクリーンに連結されている。
【0040】
共通の高圧電源と、抵抗性中央スクリーンと能動電界分極媒体型エアクリーナとの組み合わせによって、1つのエアクリーナの中央スクリーンが短絡接地された場合でもフィルタの動作を継続させることができる。例えば、フィルタ110Hの中央スクリーンが(短絡110Sで示すように)短絡接地された場合、短絡110Sと高圧電源との間にある中央スクリーンの残りの抵抗部分が高圧電源108Cの動作を継続させることができる。よって、フィルタ110Hの中央スクリーンが短絡接地されても、同一電源に接続された他のフィルタ(すなわち110Fと110G)は動作を継続する。
【0041】
従来技術のように中央スクリーンが高い導電性を有する場合、1つの中央スクリーンの短絡によって高圧電源からの電圧が崩壊し、結果として同一高圧電源に接続されている全てのフィルタが動作不能になる。一フィルタの中央スクリーンの短絡が他のフィルタを動作不能にしてしまう事態を防ぐため、従来のフィルタ列では各フィルタにつき1つの電源が設けられている。抵抗性中央電極(スクリーン)は、例えば押出プラスチック網や炭素含浸発泡材またはメッシュ材等、様々な材料で形成することができる。本発明の参考例としての他の実施形態では、中央スクリーンは炭素含浸発泡材またはメッシュ材等、消臭性を有する材料で形成されている。
【0042】
さらに、高圧電源108A、108B、108Cは調節式である。すなわち、高圧電源108Aから能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110Cの中央スクリーンに供給される出力電力は調節可能である。同様に、高圧電源108Bから能動電界分極媒体型エアクリーナ110D、110Eの中央スクリーンに供給される出力電力も調節可能である。さらに、上記同様に、高圧電源108Cから能動電界分極媒体型エアクリーナ110F、110G、110Hの中央スクリーンに供給される出力電力も調節可能である。
【0043】
能動電界分極媒体型エアクリーナの中央スクリーンに印加する高圧電位を調節することで静電界強度を最適化することができる。一般的には、アーク放電が発生する前までの最高電圧が最も好ましい電圧である。しかし、最高電圧は高度や湿度等いくつかの要素に左右される。フィルタが海水面と同等の高度に設置される場合、より高い電圧が好ましい。逆に高い高度では、より低い電圧が好ましい。最適電圧は湿度にも関係する。乾燥した気候では、アーク放電を発生させることなく高い電圧をフィルタに印加することができる。高湿度の気候下では、アーク放電防止のためより低い電圧が好ましい。高圧電源108A、108B、108Cの調節機能によって、高度や気候条件に応じて最適静電界を選択することができる。また、アーク電圧は、帯電電極および媒体を形成する両材料の関数となる。さらに、電源の調節機能によって、使用される材料に応じた電圧の最適化も可能になる。
【0044】
〔誘電性媒体支持フレーム〕
図18は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレーム120の断面図である。通常押出成形によって形成される誘電性媒体支持フレームは、縦フランジ部120Aおよび120Dを有する。さらに、誘電性媒体支持フレーム120は、横フランジ部または棚部120C1,120C2を有する。横フランジ部あるいは棚部120C1,120C2は凹部122を形成する。凹部122の反対側には凸部124が設けられ、凸部124はその両側に可撓性フィン126を有する。
【0045】
図16は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレームが能動電界分極媒体型エアクリーナに適用された状態を示す。誘電性媒体支持フレーム120の第1の役目は、能動電界分極媒体型エアクリーナの中央スクリーン110をフィルタ媒体の端部まで延在させることである。誘電性媒体支持フレーム120のもう一つの役目は、上側または下側導電性保持フレーム116A、116Bへのアーク放電を防止するとともに、中央導電性スクリーン110の端部におけるコロナ噴霧を抑えることである。これらの役目を果たすため、誘電性媒体支持フレーム120は凹部122を形成する棚部120C1、120C2の一方の所定位置に中央スクリーン110を保持している。
【0046】
図22は、本発明の参考例としての他の実施形態の誘電性媒体支持フレーム120Xを示す。凹部の代わりに、誘電性媒体支持フレーム120Xは1つの横フランジ部あるいは棚部120Zを有する。誘電性フィルタ材からなる第1パッド16A、中央スクリーン110、および誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bは、棚部120Z上に載置される。誘電性フィルタ材からなる第1パッドは、接着剤121Xや超音波溶接等の適宜な手段によって誘電性媒体支持フレーム120に取り付けられる。
【0047】
図23は、本発明の参考例としての更なる他の実施形態の誘電性媒体支持フレーム120Yを示す。図23では、接着剤(図16中の121A、121B、あるいは図22中の121X)の使用が省略されている。誘電性フィルタ材からなる第1パッド16A、中央スクリーン110、および誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bが、誘電性媒体支持フレーム120Yの凹部122Y内に位置するように凹部122Yは十分な大きさに形成される。
【0048】
また、誘電性媒体支持フレーム(図16中の120)と上側および下側導電性保持フレーム(図16中の116A、116B)の絶縁性・導電性を逆にしても良い。すなわち、誘電性媒体支持フレーム120が導電性を有するように(または完全な絶縁体とはせずに)しても良く、上側および下側保持フレーム116A、116Bを絶縁体(誘電性または非導電性)とするか、保持フレームの接合面に保持クリップを巻くか保持フレームに絶縁材料を塗布することで絶縁性を持たせるようにしても良い。後者の場合、中央スクリーン110を非導電性および/または絶縁性の上側および下側保持フレーム116A、116Bの間に配置することで、誘電性媒体支持フレーム120が省略可能である。
【0049】
誘電性媒体支持フレームの第2の役目は、上側導電性保持フレーム116Aと下側導電性保持フレーム116Bとの間に確実なシールを形成することである。このために誘電性媒体支持フレームの凸部124と可撓性フィン126は、上側導電性保持フレーム116Aと下側導電性保持フレーム116Bとの間に確実なシールを形成する。また、誘電性媒体支持フレームの凸部は、上側と下側導電性保持フレーム116A、116Bの間に押し込まれるのではなく、上側導電性保持フレーム116Aおよび/または下側導電性保持フレーム116Bに対して押圧されていても良い。通常、凸部124は媒体支持フレーム120と保持フレーム116A、116Bとの間に確実なシールを形成できるものであれば、どのような形状であっても良い。
【0050】
〔平坦導電性外側スクリーン〕
第1導電性外側スクリーン12Aは、上側導電性保持フレーム116Aによって所定位置に保持される。第2導電性外側スクリーン12Bは、下側導電性保持フレーム116Bによって所定位置に保持される。明瞭化のため、図16では外側スクリーン12A、12Bをそれぞれ上側および下側導電性保持フレーム116A、116Bに保持するための保持クリップ(図15と図17では118)は省略する。図15は保持クリップ118の断面図である。図17は、保持クリップ118の導電性保持フレーム116に対する組み付け方法を表す詳細図である。まず、導電性外側スクリーン12が導電性保持フレーム116の凹部に挿入される。そして保持クリップ118を所定位置まで回すことによって、保持クリップ118により導電性外側スクリーン12が導電性保持フレーム116内に保持される。保持クリップ118は細長い薄板で、フレームの全長にわたって延びる。
【0051】
(図17に示す)導電性外側スクリーン12は、繊維状誘電体からなるパッド(図16中の16Aまたは16B)上に接して載置された際、ほぼ平坦になるような十分な剛性を持った材料で形成される。導電性外側スクリーン12はそれ自体空気を通すことができる。導電性外側スクリーン12は、有孔固形シート材またはエキスパンドメタル等のエキスパンドシート材で形成されていても良い。エキスパンドメタルは、スリットを有するシート材を引き伸ばしてスリットを広げることによって形成され、そのスリットが気流のための通路となる。
【0052】
繊維状誘電体からなるパッド16A、16Bよりも比較的剛性な導電性外側スクリーン12A、12Bは、それぞれ誘電体に対し加圧することで、誘電体の反りあるいは枕状に撓む現象を防ぐ。よって、導電性保持スクリーン116A、116Bが誘電性フィルタ材からなるパッド16A、16Bのまわりを閉じた状態になると、導電性外側スクリーン12A、12Bはほぼ平坦で、かつ互いに略平行に配置された状態になる。
【0053】
ほぼ平坦な導電性外側スクリーン12A、12Bによって、能動電界分極媒体型エアクリーナ全体により均一な電界を生じさせることができる。従来では、外側スクリーンが枕状に撓むことがあり、その場合最高電圧が(通常端部近辺の)最小間隔によって制限されてしまう。また、従来では能動電界分極媒体型エアフィルタの中央におけるスクリーン領域のほとんどが(端部付近の領域に比べ)中央スクリーンから遠くなってしまい、これにより静電界が低減し、結果としてフィルタ効率が低下する。従来技術に比べ、本発明の参考例における静電界はフィルタ媒体全体にわたってより均一で、より高い電圧に維持できる。したがって、より大きな静電界を持続させることができる。
【0054】
〔改良された中央スクリーンとの高圧接点〕
図16に示すように、高圧電源108の第1端子は中央スクリーン110に連結されている。従来技術では、高圧プローブが導電性外側スクリーンを突き抜け、繊維状誘電体からなるパッド16Aを貫通あるいは2つのパッド16A、16Bの間を通ることで中央スクリーン110に押圧接触する。このような接触はたいてい確実性に欠ける。高圧プローブが中央スクリーンと接触しない場合、誘電性フィルタ材からなるパッド16A、16Bにわたって静電界を発生させることができなくなり、フィルタ効率を極度に低下させる。さらに、高圧プローブの鋭利な先端が導電性外側スクリーン12A、12Bへのコロナ噴霧および/またはアーク放電を引き起こすことがしばしばある。また、中央スクリーンの材料は通常希薄で通気性があり、さらに接触面積が比較的小さいため、アーク放電によって中央スクリーンが浸食され、接触が失われることがある。
【0055】
本発明では、中央スクリーンにおける高圧プローブとの接触域に導電性ディスクが取り付けられている。図19参照。中央スクリーンに接触域を設けることで、より弾力性を有する材料が使用可能となり、さらに帯電電極(中央スクリーン)との接触面積を増やすことができる。
【0056】
フィルタ媒体に比較的希薄な材料が使用される場合、貫通式高圧プローブが使用可能であり、ディスクが中央スクリーンの両側に配置される。しかし、より高密度なフィルタ媒体が使用される場合、1枚の導電性ディスクを高密度フィルタ媒体に押圧させ、もう1枚の導電性ディスクを中央スクリーンに押圧させる構成が好ましい。この場合、2枚の導電性ディスクは互いに機械的および電気的に接続される。
【0057】
図19は本発明による、中央スクリーンとの接触を確実にするために高圧シールドに保護された高圧接点を示す。リベット136は中央スクリーン13に設けられた穴に通され、(例えばチタン製等の)導電性ディスク133によって中央スクリーン13に固定されることで、リベット136と帯電電極または中央スクリーン13との間に良好な接続が得られる。上記に代えて、第2の金属製ディスクをリベット頭部の下に配置しても良い。
【0058】
本発明の他の実施形態では、高圧プローブ130が導電性外側スクリーン12Aを貫通して高圧接点134まで延びる。高圧接点134は、絶縁性誘電体からなる高圧シールド132Aに囲まれている。同様に、リベット136の下端と金属製ディスク133は、絶縁性誘電体からなる高圧シールド132Bに囲まれている。あるいは高圧プローブが導電性保持フレーム116A、116Bの内部を通るように配置されていても良い。
【0059】
図20は、図19に示すフィルタ媒体の上面図である。誘電性フィルタ材からなるパッド16Aは、誘電性媒体支持フレーム120に囲まれている。リベットあるいは取付手段136は誘電性フィルタ材からなるパッド16Aを貫通する。
【0060】
図21は、図19に示すフィルタ媒体を保持するフレームの上面図である。導電性外側スクリーン12を保持するためのフレームは、4つの導電性外側フィルタ保持フレーム部116と4つのプラスチック製端部キャップ128によって構成される。高圧接点134は絶縁性高圧シールド132A内に配置される。
【0061】
動作中において導電性外側フィルタ保持フレーム116A、116B(図19参照)がフィルタ媒体(120、16A、13、16B)のまわりを閉じた状態では、高圧接点134がリベット136の頭部に接触する。さらに、高圧シールド132A、132Bが誘電性フィルタ材からなるパッド16A、16Bに対しわずかに加圧する。高圧接点134はリベット136の頭部に確実に接続される。絶縁性高圧シールド132A、132Bは高圧接点134の先端からのコロナ噴霧を低減させ、さらに高圧接点134から導電性外側スクリーン12Aと12Bへアーク放電が発生する可能性を抑える。
【0062】
高圧接点134は通常剛性チタンまたはその他の弾力性材料により形成される。リベット136の頭部と接触する際、中央スクリーン13がわずかに撓むことがある。この中央スクリーン13の撓みを抑えるために、高圧接点134はバネ接点でも良い。中央スクリーン13上の接触域136の他の構成として、導電性ディスクを中央スクリーン13の上側に配置するか、または一対の導電性ディスクのうち一方を中央スクリーンの上側に配置し他方を下側に配置して、留め具を中央スクリーンに貫通させて両ディスクを保持するようにしても良い。重要な点は、高圧プローブ134の剛性、導電性外側スクリーンの剛性、あるいは両方の剛性によって、高圧プローブ134の先端とディスクまたはディスク・リベット結合136との間に確実な機械的接続が得られることである。結果として、振動、媒体の動き、または中央スクリーン(電極)の動き等に影響されることのない安定した接続が得られる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にエアクリーナ装置に関し、詳細には、静電界を利用して媒体および粒子を分極させることによって媒体の粒子捕集効率を向上させるエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
静電吸着の原理は、気流中に存在する汚染物質の除去を向上する目的で長年利用されている。静電気を利用したエアクリーナは主に3つに分類され、それらは静電集塵器、受動静電フィルタ、および能動電界分極媒体型エアクリーナであるが、別の名称で呼ばれることもある。
【0003】
静電集塵器では、粒子を帯電させ、その粒子を逆帯電および/または接地された捕集板で捕集する。
【0004】
受動静電フィルタ(エレクトレットとも呼ばれる)では、特定処理および/または固有特性の組合せによって帯電された媒体(または異なる種類の媒体の組合せ)が使用される。静電荷を持つ粒子がフィルタ媒体に到達した際、これらの粒子は逆の静電荷を持つフィルタ媒体材に吸着される。
【0005】
能動電界分極媒体型エアクリーナは、2つの電極間の電圧差によって発生する静電界を利用する。この2電極間の静電界に誘電フィルタ媒体が配置される。誘電体とは、電気絶縁体、または電流に対し抵抗性を有しかつ電気エネルギーを蓄積可能な物質である。誘電体はそれ自体に電界を集中させる傾向があり、それゆえに静電界を効果的に維持することができる。静電界は媒体の繊維および侵入してくる粒子の両方を分極させ、それにより媒体およびエアクリーナの効率が向上する。フィルタの効率とは、所定の大きさの粒子あるいは所定の大きさの範囲内の粒子が、気流から除去される割合のことをいう。
【0006】
また、カナダ特許第1,272,453号公報には、別の静電エアフィルタの構成が開示されており、この構成では使い捨ての矩形カートリッジが高圧電源に接続されている。カートリッジは導電性内側中央スクリーンで構成され、当該導電性内側中央スクリーンは繊維状誘電体(プラスチックまたはガラス)からなる2層の間に挟まれている。さらに、この2つの誘電層は、導電性材料からなる2つの外側スクリーンの間に挟まれている。導電性内側中央スクリーンに印加される電圧を高くすることにより、導電性内側中央スクリーンおよび逆電位または接地電位に保たれた2つの導電性外側スクリーンとの間に静電界が発生する。高圧静電界によって2つの誘電層の繊維が分極される。
【0007】
エアクリーナは様々な構成および状況で設置することができ、冷暖房空調(HVAC)装置の一部として、また独立型の空気循環清浄装置内においても使用可能である。(例えば家庭用および軽業務用等の)小型HVAC装置では、エアクリーナパネルが(気流に対し直角に)平坦配置で設置されるかあるいは傾斜状フィルタトラックとして設置される場合が多い。一方、大型の装置では、通常複数のエアフィルタがV字状配列構造をなすように配列され、それぞれのフィルタの配置によって、気流の軸に対して直角に延在するZ字状フィルタ列が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、能動電界分極媒体型エアクリーナにおける改良を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔前方空力カウリング〕
本発明の参考例としての一態様によると、複数の能動電界分極媒体型エアクリーナから構成されるV字状配列構造において、気流に対面し隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナの前端を連結する前方空力カウリングを備えている。前方カウリングは気流に対する形状抗力を低減することができ、それによりフィルタの静圧低下(気流に対する抵抗)を抑えることができる。さらに、前方空力カウリングの中空内部には、高圧電源を前方空力カウリング内に包囲するための凹部が形成され、これにより電子部品が保護されかつ絶縁される。また、カウリングは高圧線および低圧線をエアクリーナパネル間および隣り合うエアクリーナモジュール間を延在させるための溝としての機能をもつ。
【0010】
〔後方ダブルヒンジ式エアシール〕
本発明の参考例としての他の態様によると、複数の能動電界分極媒体型エアクリーナから構成されるV字状配列構造において、隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナの後端を連結する後方ダブルヒンジを備えている。後方ダブルヒンジによって、隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナ間に確実なシールが形成される。これにより、隣り合う能動電界分極媒体型エアクリーナ間からの吹き抜けが抑制され、より高い効率を図ることができる。
【0011】
〔分極媒体型エアクリーナ用の改良型電極〕
本発明の参考例としての他の態様によると、高圧電極が導電性を有する押出プラスチック網またはその他同様の材料で形成される。このような材料は動作電圧を著しく高めることを可能にし、それにより効率向上を図ることができる。
【0012】
〔抵抗性中央スクリーンおよび調節型高圧電源〕
本発明の参考例としてのさらなる他の態様によると、2つ以上の能動電界分極媒体型エアクリーナが1つの高圧電源を共有する構成でも良い。そのような構成において、1つの能動電界分極媒体型エアクリーナが短絡した場合、短絡により高圧電源から引き出された電流を中央スクリーンの抵抗が制限することで、同一電源を共有する他の能動電界分極媒体型エアクリーナが通常の動作を継続することができる。
さらに、高圧電源は調節式であっても良く、これにより最適電圧が選択できるようになり、アーク放電を引き起こすことのない最適な静電界が得られる。
【0013】
〔誘電性媒体支持フレーム〕
本発明の参考例としての他の態様によると、能動電界分極媒体型エアクリーナは誘電性媒体支持フレームを備え、誘電性媒体支持フレームはその一方側には中央スクリーンおよび/またはフィルタ媒体を保持するための凹部または棚部を有し、他方側には導電性外側スクリーンを保持する導電性保持フレームとともに確実なシールを形成する凸部を有する。誘電性媒体支持フレームは、短絡や導電性外側スクリーンまたは導電性保持フレーム側へのアーク放電を引き起こすことなく中央スクリーンをフィルタ媒体の端部まで延在させ、この構成によりフィルタ媒体全体により均一な静電界を生じさせることができる。さらに誘電性媒体支持フレームにより形成された縁部は、導電性中央スクリーンの端部におけるコロナ噴霧の発生を防止する。誘電性媒体支持フレームと導電性保持フレームとの間の確実なシールによって、導電性保持フレームとフィルタ媒体の端部の間からの空気漏れ(吹き抜け)が低減される。誘電性媒体支持フレームは硬質または軟質プラスチックで形成することができる。
【0014】
〔平坦導電性外側スクリーン〕
電極間の間隔をより均一にして、能動電界分極媒体型エアクリーナ全体により均一な電界を生じさせるには、導電性外側スクリーンを従来の能動電界分極媒体型エアクリーナの可撓性外側スクリーンよりも比較的平坦に形成する。外側スクリーンの平坦性は、誘電性フィルタ材よりも比較的硬質な材料を使用することで得られる。
【0015】
〔改良された高圧接点〕
従来の能動電界分極媒体型エアクリーナにおける問題の一つは、高圧プローブが中央スクリーンに接触する領域にある。従来技術では通常、高圧接続はプローブまたはクリップが比較的小さい面積で中央スクリーン(または電極)に接することで実現される。時としてこの接触が不良になる場合がある。この構成の問題点としては、時間の経過とともに接点がアーク放電や噴霧放電を起こすようになり、電極上の接触域を浸食し、その結果接触の確実性が低下する。また、この浸食が進むにつれ、最終的に接触が失われる事態にもなり得る。本発明はこのような問題を解消し、様々な手段によりエアクリーナの信頼性を維持する。これは、電極の表面において接続をより広範囲に広げるディスクおよび/またはディスクと留め具を使用することによって、高圧接点の面積を大きくすることで達成される。本発明での各実施形態では、高圧接点領域が円形で示されているが、他の形状でも良い。
また、高圧プローブの領域においてコロナ噴霧および/またはアーク放電が発生する傾向がある。高圧プローブが中央スクリーンに接する領域での噴霧放電およびアーク放電を抑えるために、高圧シールドに包囲された高圧プローブが設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナパネルの等角投影図である。
【図2】図2は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの断面図である。
【図3】図3は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの断面図の詳細部分であり、交換フィルタ媒体がフィルタ保持用の下フレームに挿入されている状態を示す。
【図4】図4は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの断面図の詳細部分であり、交換フィルタ媒体がフィルタ保持用の上フレームに挿入されている状態を示す。
【図5】図5は、本発明の参考例としての、抵抗性中央スクリーンを有し共通高圧電源を共有する複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの概略図である。
【図6】図6は、本発明の参考例としての、V字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタの上部または下部に使用される前方カウリングの断面図である。
【図7】図7は、図6に示す前方カウリングとともに使用される本発明の参考例としてのヒンジ部の断面図である。
【図8】図8は、本発明の参考例としてのV字状配列構造をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナフィルタとともに使用される前方カウリングの断面図である。
【図9】図9は、本発明の参考例としての第1と第2能動電界分極媒体型エアクリーナおよび前方カウリングの組立図である。
【図10】図10は、本発明の参考例としてのダブルヒンジの第1部分の断面図である。
【図11】図11は、本発明の参考例としてのダブルヒンジの第2部分の断面図である。
【図12】図12は、本発明の参考例としての第1と第2能動電界分極媒体型エアクリーナおよびダブルヒンジ組立体の組立図である。
【図13】図13は、本発明の参考例としてのダブルヒンジ組立体の組立図である。
【図14】図14は、本発明の参考としての能動電界分極媒体型エアクリーナとともに使用される導電性保持フレームの等角投影図である。
【図15】図15は、本発明の参考例としての能動電界分極媒体型エアクリーナとともに使用される保持クリップまたは細長い薄板の等角投影図である。
【図16】図16は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す組立図である。
【図17】図17は、導電性外側スクリーンを本発明の参考例とともに使用される導電性保持フレームに保持するために用いられる保持クリップまたは細長い薄板の組み付け方法を表す断面図である。
【図18】図18は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレームの断面図である。
【図19】図19は、本発明による高圧プローブおよび高圧接点スクリーンの組立図である。
【図20】図20は、本発明による誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す。
【図21】図21は、本発明による、高圧プローブと高圧接点シールドとを含む硬質導電性外側スクリーンと導電性保持フレームを示す。
【図22】図22は、本発明の参考例としての第2実施形態による誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す組立図である。
【図23】図23は、本発明の参考例としての第3実施形態による誘電性媒体支持フレームの使用方法を示す組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の参考例としての、V字状配列構造100をなすように配列された複数の能動電界分極媒体型エアクリーナパネル(フィルタ)を示す図である。以下では各フィルタパネル101は「パネル」、「フィルタ」、および/または「エアクリーナ」と称する場合がある。複数の能動電界分極媒体型エアクリーナ101は、積重ね可能な複数のモジュール102にグループ化され、各モジュール102はその幅W、高さH、および奥行Dが適用対象に応じてそれぞれ変更可能である。詳細には、図1に示すV字状配列構造100は8つの積重ね可能モジュール102を有し、各モジュール102には8つの能動電界分極媒体型エアクリーナが備えられるため、合計で64個のエアクリーナが存在する。
【0018】
図16は能動電界分極媒体型エアクリーナの典型例を示す。繊維状誘電体からなる第1パッド16Aは中央スクリーン110の上方に配置されている。また、中央スクリーン110の他方側には誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bが配置されている。誘電性フィルタ材からなる第1パッドは、接着剤121Aや超音波溶接等の適宜な手段によって誘電性媒体支持フレーム120に取り付けられる。誘電性フィルタ材からなる第1パッド16Aの上方には第1導電性外側スクリーン12Aが配置され、また、誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bの下方には第2導電性外側スクリーン12Bが配置される。誘電性フィルタ材からなる第2パッドは、接着剤121Bや超音波溶接等の適宜な手段によって誘電性媒体支持フレーム120に取り付けられる。第1導電性外側スクリーン12Aは第1導電性保持フレーム116Aによって所定位置に保持される。また、第2導電性外側スクリーン12Bは第2導電性保持フレーム116Bによって所定位置に保持される。
【0019】
フィルタ媒体は、誘電性媒体支持フレーム120、繊維状誘電体からなる第1パッド16A、中央スクリーン110、および誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bによって構成される。フィルタ媒体を保持するフィルタ保持フレームは、第1導電性外側スクリーン12Aと第1導電性保持フレーム116A、および第2導電性外側スクリーン12Bと第2導電性保持フレーム116Bによって構成される。
【0020】
動作の際には、高圧電源108の一方の端子が中央スクリーン110に接続され、高圧電源108の他方の端子は、第1導電性外側スクリーン12Aと、通常接地電位に保たれる第2導電性外側スクリーン12Bとに接続される。
【0021】
図16における能動電界分極媒体型エアクリーナの誘電性フィルタ材16Aおよび16Bを通過する空気に含まれる粒子は、エアクリーナ内の電界により分極され、誘電性フィルタ材からなる第1および第2パッド16A、16Bで捕集される。
【0022】
〔前方空力カウリング〕
図2は、図1に示す各モジュール102の断面図である。能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110C、110D、110E、110F、110G、110Hは、V字状配列構造を形成するようにそれぞれ所定位置に保持される。モジュール102の前方では、複数のカウリングがフィルタをそれぞれの所定位置に保持している。詳細には、2つの末端カウリング104Aと104Bがそれぞれモジュール102の上端と下端に配置され、2つの末端カウリングの間には3つの中間カウリング106A、106B、106Cが配置されている。カウリングの空気力学的形状により気流に対する形状抗力を低減することができ、それによってフィルタの空電(空気抵抗)を減らすことができる。
【0023】
図8は中間カウリング106Cの詳細図である。カウリング106Cの本体には着脱可能なキャップ107Aがあり継ぎによって取付けられている。着脱可能キャップによって電源108C(図において原寸通りではない)が挿入可能となり、さらに着脱可能キャップは電源108C内の電子部品を気流から遮断し、電源108Cを外側のフィルタ保持フレームや装置匡体等の接地面から絶縁する。また、中間カウリング106Cには溝またはトレイが設けられ、これを介して低圧線および高圧線がパネル間またはモジュール間を延在する。中間カウリング106Cは第1および第2取付箇所107B、107Cを有する。図6は末端カウリング104Aの詳細図である。末端カウリング104Aには末端部材109(図7に図示)があり継ぎによって結合されている。本発明の参考例としての他の実施形態では、あり継ぎはL字形状やT字形状等様々な形状であっても良い。さらには係合突起が設けられていなく、カウリングがフィルタ保持フレームに接着、ネジ止め、あるいはその他の方法で取付けられていても良い。
【0024】
図9は、前方空力カウリングが2つの能動電界分極媒体型エアクリーナのフィルタ保持フレームに結合された状態を示す組立図である。誘電性フィルタ材からなる第1および第2パッド16A、16Bと中央スクリーン110Aは、誘電性媒体支持フレーム120Aに結合されている。誘電性媒体支持フレーム120Aは、上側導電性フレーム116Aと下側導電性フレーム116Bとの間の所定位置に保持される。下側導電性フレーム116Bは、中間カウリング106の取付箇所107Bにあり継ぎを介して結合されている。
【0025】
同様に、誘電性フィルタ材からなる第1および第2パッド17A、17Bと中央スクリーン110Bは、誘電性媒体支持フレーム120Bに結合されている。誘電性媒体支持フレーム120Bは、上側導電性フレーム116Cと下側導電性フレーム116Dとの間の所定位置に保持される。上側導電性フレーム116Cは、中間カウリング106の取付箇所107Cにあり継ぎを介して結合されている。
【0026】
中間空力カウリング106により、2つの能動電界分極媒体型エアクリーナパネルにおける気流に対する形状抗力を低減することができ、また、モジュールの組立作業時間を短縮することができる。
【0027】
〔後方ダブルヒンジ式エアシール〕
モジュール102の後方において(図2)、複数のダブルヒンジがそれぞれのフィルタを所定位置に保持している。各ダブルヒンジは3つのヒンジH1、H2、H3から構成される。図3に示すように、第1ヒンジH1は上フレーム112Aに連結された第1取付箇所および下フレーム112Bに連結された第2取付箇所を有する。ヒンジH1は、下フレーム112Bを上フレーム112Aから離れる方向に回転させる回転軸を有し、この回転により交換フィルタ媒体が能動電界分極媒体型エアクリーナ110Gに挿入可能になる。
【0028】
同様に、図4に示すように、第2ヒンジH2は上フレーム114Aに連結された第1取付箇所および下フレーム114Bに連結された第2取付箇所を有する。ヒンジH2は、上フレーム114Aを下フレーム114Bから離れる方向に回転させる回転軸を有し、この回転により交換フィルタ媒体が能動電界分極媒体型エアクリーナ110Hに挿入可能になる。
【0029】
第3ヒンジH3は第1ヒンジH1に連結された第1取付箇所および第2ヒンジH2に連結された第2取付箇所を有する。第3ヒンジH3は第3回転軸を有し、この第3回転軸を中心に上側の能動電界分極媒体型エアクリーナ(112A、112B)が下側の能動電界分極媒体型エアクリーナ(114A、114B)に対して一体的に回転することができる。モジュール102の後方においてダブルヒンジを使用することにより、能動電界分極媒体型エアクリーナを互いに異なった角度で装着することができ、装着自由度を高めることができる。さらに、モジュール102の後方におけるダブルヒンジは、エアクリーナの互いに異なる装着角度に関わらず、フィルタ後部に優れたエアシールを形成する。フィルタ後部でのダブルヒンジによる確実なシールによって、吹き抜け、すなわち、フィルタ媒体を通過せずにフィルタ列を通り抜けてしまう気流の量が抑制される。
【0030】
図10、11、12、および13は、本発明の参考例としてのダブルヒンジを示す詳細図である。各ヒンジは、硬質プラスチック部および軟質プラスチック部を有するプラスチック押出材により形成される。図10において、第1ヒンジは第1取付箇所140および第2取付箇所144を有する。第1および第2取付箇所140、144は互いに対して回転部144を中心に回転することができる。軟質材料(通常はプラスチック)からなる回転部141に対して、取付箇所140、144は通常硬質プラスチックまたはその他の硬質材料から成る。多くの場合、回転部141は軟質プラスチックで形成されることで回転軸として機能し、その回転軸を中心に第1および第2取付箇所140、144が回転可能となる。その他の材料の組み合わせ、例えば金属とゴム等も可能である。
【0031】
図13に示すように、図10に示すヒンジを2つ設置し、それらを第3ヒンジと組み合わせて使用することによって本発明の参考例としてのダブルヒンジが形成される。これらのヒンジのうち、第1ヒンジは140Aで示され回転部141Aを有する。また、第2ヒンジは140Bで示され回転部141Bを有する。図13に示す(図11にも示す)第3ヒンジ142Aは、第1取付箇所142および第2取付箇所145を有し、これらは互いに対して回転部143を中心に回転することができる。ヒンジ142Aの第1取付箇所は、あり継ぎを介して第1ヒンジ140Aに連結される。ヒンジ142Aの第2取付箇所は、あり継ぎを介して第2ヒンジ140Bに連結される。第1ヒンジ140A、第2ヒンジ140B、および第3ヒンジ142Aを結合することにより本発明の参考例としてのダブルヒンジが形成される。
【0032】
図12は、2つの能動電界分極媒体型エアクリーナパネルがダブルヒンジに結合された状態を示す。第1フィルタパネル115Aの上側導電性保持フレーム116Aと下側導電性保持フレーム116Bは、第1ヒンジ140Aに連結されている。詳細には、第1フィルタパネル115Aの上側導電性フレーム116Aは、通常アルミニウム押出材(またはその他の適切材料)からなり、当該アルミニウム押出材は、第1ヒンジ140Aの第1取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状を有する。また、第1フィルタパネル115Aの下側導電性保持フレーム116Bはアルミニウム押出材からなり、当該アルミニウム押出材は、第1ヒンジ140Aの第2取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状をもつ。以下において他の箇所でも記述されるが、フレーム116A、116Bは非導電性材料で形成されていても良い。
【0033】
同様に、第2フィルタパネル115Bの上側導電性フレーム116Cはアルミニウム押出材からなり、当該アルミニウム押出材は、第2ヒンジ140Bの第1取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状をもつ。第2フィルタパネル115Bの下側導電性フレーム116Dはアルミニウム押出材からなり、当該アルミニウム押出材は、第2ヒンジ140Bの第2取付箇所に連結すべくあり継ぎ形状をもつ。
【0034】
よって、第1フィルタパネル115Aの上側導電性フレーム116Aと下側導電性フレーム116Bは互いに対して第1ヒンジ140Aの回転軸141Aを中心に回転可能である。同様に、第2フィルタパネル115Bの上側導電性フレーム116Cと下側導電性保持フレーム116Dは互いに対して第2ヒンジ140Bの回転軸141Bを中心に回転可能である。本発明の参考例としてのダブルヒンジを使用することによって、第1フィルタパネル115Aと第2フィルタパネル115Bとが互いに対して第3ヒンジ142Aの回転軸143を中心に回転可能になる。
【0035】
外側フレーム部材116A、116B、116C、116Dは、それぞれ管状またはL字状構成要素を略矩形フレームに成形、溶接、あるいは組立てたものによって形成されていても良い。そして、外部スクリーン(図16中の12Aおよび12B)をフレーム部材にネジ止め、溶接、あるいは固着しても良い。同様に、フレームの側面に対するヒンジおよびカウリングの結合を、あり継ぎによってではなく、ネジ止め、接着、あるいは固着によって行っても良い。さらに、上記のあり継ぎ形状は、フレーム部材と前方に配置されたヒンジまたは後方に配置されたカウリングとの間を確実に結合させることができるものであれば、T字状、L字状、またはその他の形状でも良い。
【0036】
〔改良された電極設計〕
従来技術では様々な通気性材料や格子(例えば中央スクリーンとしての使用)が記述されているが、押出プラスチック網は開示されていない。押出プラスチック網は種々の材料から作られているが、そのうち最も一般的なのが低密度または高密度ポリエチレンである。押出プラスチック網は通常、プラスチック樹脂に炭素やその他の物質を添加することで導電性をもつように形成される。それによって得られる導電性は、使用される特定の成分に応じて調整可能であり、制御可能である。また、押出プラスチック網を能動電界分極型エアフィルタにおける中央スクリーン電極の材料として適したものにするために、難燃剤が使用される。製造上および作用上の観点から、押出プラスチック網を能動電界分極媒体型エアクリーナ内の電極として使用することに多くの利点があることがわかっている。押出プラスチック網の主な利点は網部材の形状や構造にある(特に、網の開口部を囲む縁が鋭くないことにある)。
【0037】
電極間に高圧電位が使用される際、数々の要因によりアーク放電、噴霧放電、およびコロナ放電が発生する傾向があり、またそれが発生する場所もそれらの要因に起因する。そのうち重要な要因として、電極の部材または繊維に関する形状、均一性、平坦性、および間隔が挙げられる。鋭い縁、ばり、よれ、抜け繊維や毛羽、尖端等はすべて噴霧放電およびコロナ放電を促進させる。押出プラスチック網は、その特有の製造工程によりこれらの欠点をほぼ解消している。結果として得られる中央スクリーン格子は最高動作電圧を可能とし、それにより電界強度の増加やフィルタ効率の向上を図ることができる。具体的に、押出プラスチック網からなる中央スクリーンは、炭素含浸発泡材よりも20%〜30%高い動作電圧を伝達することができ、またアルミニウムスクリーンよりも40%高い動作電圧を伝達することができる。押出プラスチック網はほぼ平坦に配置されるため、低密度ポリエチレンがこれに非常に適した材料ではあるが、鋭い縁、ばり、よれ、抜け繊維や毛羽、尖端等の鋭利な特性がほぼ無いものであれば、その他の材料も使用可能である。
【0038】
〔抵抗性中央スクリーンおよび調節型高圧電源〕
図2に示す空力カウリングは中空であり、また、中間カウリング106A、106B、106Cにはそれぞれ高圧電源108A、108B、108Cが設けられている。この3つの高圧電源108A、108B、108Cは、8つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110C、110D、110E、110F、110G、110H間で共有される。図5参照。ただし、HVAC装置内の1つまたは全てのモジュールにおける幾つかまたは全てのパネルに対して1つの電源を設ける構成でも良いし、各パネルに対して1つの電源を設ける構成でも良く、要は動作上の冗長性と全体の装置コストとの間のバランスがとれる構成にすることである。そのために、本構成では2以上のパネルが1つの電源を共有し、一パネルが、同一電源を共有する他のパネルの動作に悪影響を及ぼすことがない。
【0039】
本発明の参考例としての一態様によると、各能動電界分極媒体型エアクリーナの中央スクリーンは導電性ではなく抵抗性を有する。図5に示すように、8つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110C、110D、110E、110F、110G、110Hは
それぞれ抵抗器としての記号で表示されている。詳細には、高圧電源108Aは3つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110Cの中央スクリーンに連結されている。また、高圧電源108Bは2つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110D、110Eの中央スクリーンに連結されている。さらに、高圧電源108Cは3つの能動電界分極媒体型エアクリーナ110F、110G、110Hの中央スクリーンに連結されている。
【0040】
共通の高圧電源と、抵抗性中央スクリーンと能動電界分極媒体型エアクリーナとの組み合わせによって、1つのエアクリーナの中央スクリーンが短絡接地された場合でもフィルタの動作を継続させることができる。例えば、フィルタ110Hの中央スクリーンが(短絡110Sで示すように)短絡接地された場合、短絡110Sと高圧電源との間にある中央スクリーンの残りの抵抗部分が高圧電源108Cの動作を継続させることができる。よって、フィルタ110Hの中央スクリーンが短絡接地されても、同一電源に接続された他のフィルタ(すなわち110Fと110G)は動作を継続する。
【0041】
従来技術のように中央スクリーンが高い導電性を有する場合、1つの中央スクリーンの短絡によって高圧電源からの電圧が崩壊し、結果として同一高圧電源に接続されている全てのフィルタが動作不能になる。一フィルタの中央スクリーンの短絡が他のフィルタを動作不能にしてしまう事態を防ぐため、従来のフィルタ列では各フィルタにつき1つの電源が設けられている。抵抗性中央電極(スクリーン)は、例えば押出プラスチック網や炭素含浸発泡材またはメッシュ材等、様々な材料で形成することができる。本発明の参考例としての他の実施形態では、中央スクリーンは炭素含浸発泡材またはメッシュ材等、消臭性を有する材料で形成されている。
【0042】
さらに、高圧電源108A、108B、108Cは調節式である。すなわち、高圧電源108Aから能動電界分極媒体型エアクリーナ110A、110B、110Cの中央スクリーンに供給される出力電力は調節可能である。同様に、高圧電源108Bから能動電界分極媒体型エアクリーナ110D、110Eの中央スクリーンに供給される出力電力も調節可能である。さらに、上記同様に、高圧電源108Cから能動電界分極媒体型エアクリーナ110F、110G、110Hの中央スクリーンに供給される出力電力も調節可能である。
【0043】
能動電界分極媒体型エアクリーナの中央スクリーンに印加する高圧電位を調節することで静電界強度を最適化することができる。一般的には、アーク放電が発生する前までの最高電圧が最も好ましい電圧である。しかし、最高電圧は高度や湿度等いくつかの要素に左右される。フィルタが海水面と同等の高度に設置される場合、より高い電圧が好ましい。逆に高い高度では、より低い電圧が好ましい。最適電圧は湿度にも関係する。乾燥した気候では、アーク放電を発生させることなく高い電圧をフィルタに印加することができる。高湿度の気候下では、アーク放電防止のためより低い電圧が好ましい。高圧電源108A、108B、108Cの調節機能によって、高度や気候条件に応じて最適静電界を選択することができる。また、アーク電圧は、帯電電極および媒体を形成する両材料の関数となる。さらに、電源の調節機能によって、使用される材料に応じた電圧の最適化も可能になる。
【0044】
〔誘電性媒体支持フレーム〕
図18は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレーム120の断面図である。通常押出成形によって形成される誘電性媒体支持フレームは、縦フランジ部120Aおよび120Dを有する。さらに、誘電性媒体支持フレーム120は、横フランジ部または棚部120C1,120C2を有する。横フランジ部あるいは棚部120C1,120C2は凹部122を形成する。凹部122の反対側には凸部124が設けられ、凸部124はその両側に可撓性フィン126を有する。
【0045】
図16は、本発明の参考例としての誘電性媒体支持フレームが能動電界分極媒体型エアクリーナに適用された状態を示す。誘電性媒体支持フレーム120の第1の役目は、能動電界分極媒体型エアクリーナの中央スクリーン110をフィルタ媒体の端部まで延在させることである。誘電性媒体支持フレーム120のもう一つの役目は、上側または下側導電性保持フレーム116A、116Bへのアーク放電を防止するとともに、中央導電性スクリーン110の端部におけるコロナ噴霧を抑えることである。これらの役目を果たすため、誘電性媒体支持フレーム120は凹部122を形成する棚部120C1、120C2の一方の所定位置に中央スクリーン110を保持している。
【0046】
図22は、本発明の参考例としての他の実施形態の誘電性媒体支持フレーム120Xを示す。凹部の代わりに、誘電性媒体支持フレーム120Xは1つの横フランジ部あるいは棚部120Zを有する。誘電性フィルタ材からなる第1パッド16A、中央スクリーン110、および誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bは、棚部120Z上に載置される。誘電性フィルタ材からなる第1パッドは、接着剤121Xや超音波溶接等の適宜な手段によって誘電性媒体支持フレーム120に取り付けられる。
【0047】
図23は、本発明の参考例としての更なる他の実施形態の誘電性媒体支持フレーム120Yを示す。図23では、接着剤(図16中の121A、121B、あるいは図22中の121X)の使用が省略されている。誘電性フィルタ材からなる第1パッド16A、中央スクリーン110、および誘電性フィルタ材からなる第2パッド16Bが、誘電性媒体支持フレーム120Yの凹部122Y内に位置するように凹部122Yは十分な大きさに形成される。
【0048】
また、誘電性媒体支持フレーム(図16中の120)と上側および下側導電性保持フレーム(図16中の116A、116B)の絶縁性・導電性を逆にしても良い。すなわち、誘電性媒体支持フレーム120が導電性を有するように(または完全な絶縁体とはせずに)しても良く、上側および下側保持フレーム116A、116Bを絶縁体(誘電性または非導電性)とするか、保持フレームの接合面に保持クリップを巻くか保持フレームに絶縁材料を塗布することで絶縁性を持たせるようにしても良い。後者の場合、中央スクリーン110を非導電性および/または絶縁性の上側および下側保持フレーム116A、116Bの間に配置することで、誘電性媒体支持フレーム120が省略可能である。
【0049】
誘電性媒体支持フレームの第2の役目は、上側導電性保持フレーム116Aと下側導電性保持フレーム116Bとの間に確実なシールを形成することである。このために誘電性媒体支持フレームの凸部124と可撓性フィン126は、上側導電性保持フレーム116Aと下側導電性保持フレーム116Bとの間に確実なシールを形成する。また、誘電性媒体支持フレームの凸部は、上側と下側導電性保持フレーム116A、116Bの間に押し込まれるのではなく、上側導電性保持フレーム116Aおよび/または下側導電性保持フレーム116Bに対して押圧されていても良い。通常、凸部124は媒体支持フレーム120と保持フレーム116A、116Bとの間に確実なシールを形成できるものであれば、どのような形状であっても良い。
【0050】
〔平坦導電性外側スクリーン〕
第1導電性外側スクリーン12Aは、上側導電性保持フレーム116Aによって所定位置に保持される。第2導電性外側スクリーン12Bは、下側導電性保持フレーム116Bによって所定位置に保持される。明瞭化のため、図16では外側スクリーン12A、12Bをそれぞれ上側および下側導電性保持フレーム116A、116Bに保持するための保持クリップ(図15と図17では118)は省略する。図15は保持クリップ118の断面図である。図17は、保持クリップ118の導電性保持フレーム116に対する組み付け方法を表す詳細図である。まず、導電性外側スクリーン12が導電性保持フレーム116の凹部に挿入される。そして保持クリップ118を所定位置まで回すことによって、保持クリップ118により導電性外側スクリーン12が導電性保持フレーム116内に保持される。保持クリップ118は細長い薄板で、フレームの全長にわたって延びる。
【0051】
(図17に示す)導電性外側スクリーン12は、繊維状誘電体からなるパッド(図16中の16Aまたは16B)上に接して載置された際、ほぼ平坦になるような十分な剛性を持った材料で形成される。導電性外側スクリーン12はそれ自体空気を通すことができる。導電性外側スクリーン12は、有孔固形シート材またはエキスパンドメタル等のエキスパンドシート材で形成されていても良い。エキスパンドメタルは、スリットを有するシート材を引き伸ばしてスリットを広げることによって形成され、そのスリットが気流のための通路となる。
【0052】
繊維状誘電体からなるパッド16A、16Bよりも比較的剛性な導電性外側スクリーン12A、12Bは、それぞれ誘電体に対し加圧することで、誘電体の反りあるいは枕状に撓む現象を防ぐ。よって、導電性保持スクリーン116A、116Bが誘電性フィルタ材からなるパッド16A、16Bのまわりを閉じた状態になると、導電性外側スクリーン12A、12Bはほぼ平坦で、かつ互いに略平行に配置された状態になる。
【0053】
ほぼ平坦な導電性外側スクリーン12A、12Bによって、能動電界分極媒体型エアクリーナ全体により均一な電界を生じさせることができる。従来では、外側スクリーンが枕状に撓むことがあり、その場合最高電圧が(通常端部近辺の)最小間隔によって制限されてしまう。また、従来では能動電界分極媒体型エアフィルタの中央におけるスクリーン領域のほとんどが(端部付近の領域に比べ)中央スクリーンから遠くなってしまい、これにより静電界が低減し、結果としてフィルタ効率が低下する。従来技術に比べ、本発明の参考例における静電界はフィルタ媒体全体にわたってより均一で、より高い電圧に維持できる。したがって、より大きな静電界を持続させることができる。
【0054】
〔改良された中央スクリーンとの高圧接点〕
図16に示すように、高圧電源108の第1端子は中央スクリーン110に連結されている。従来技術では、高圧プローブが導電性外側スクリーンを突き抜け、繊維状誘電体からなるパッド16Aを貫通あるいは2つのパッド16A、16Bの間を通ることで中央スクリーン110に押圧接触する。このような接触はたいてい確実性に欠ける。高圧プローブが中央スクリーンと接触しない場合、誘電性フィルタ材からなるパッド16A、16Bにわたって静電界を発生させることができなくなり、フィルタ効率を極度に低下させる。さらに、高圧プローブの鋭利な先端が導電性外側スクリーン12A、12Bへのコロナ噴霧および/またはアーク放電を引き起こすことがしばしばある。また、中央スクリーンの材料は通常希薄で通気性があり、さらに接触面積が比較的小さいため、アーク放電によって中央スクリーンが浸食され、接触が失われることがある。
【0055】
本発明では、中央スクリーンにおける高圧プローブとの接触域に導電性ディスクが取り付けられている。図19参照。中央スクリーンに接触域を設けることで、より弾力性を有する材料が使用可能となり、さらに帯電電極(中央スクリーン)との接触面積を増やすことができる。
【0056】
フィルタ媒体に比較的希薄な材料が使用される場合、貫通式高圧プローブが使用可能であり、ディスクが中央スクリーンの両側に配置される。しかし、より高密度なフィルタ媒体が使用される場合、1枚の導電性ディスクを高密度フィルタ媒体に押圧させ、もう1枚の導電性ディスクを中央スクリーンに押圧させる構成が好ましい。この場合、2枚の導電性ディスクは互いに機械的および電気的に接続される。
【0057】
図19は本発明による、中央スクリーンとの接触を確実にするために高圧シールドに保護された高圧接点を示す。リベット136は中央スクリーン13に設けられた穴に通され、(例えばチタン製等の)導電性ディスク133によって中央スクリーン13に固定されることで、リベット136と帯電電極または中央スクリーン13との間に良好な接続が得られる。上記に代えて、第2の金属製ディスクをリベット頭部の下に配置しても良い。
【0058】
本発明の他の実施形態では、高圧プローブ130が導電性外側スクリーン12Aを貫通して高圧接点134まで延びる。高圧接点134は、絶縁性誘電体からなる高圧シールド132Aに囲まれている。同様に、リベット136の下端と金属製ディスク133は、絶縁性誘電体からなる高圧シールド132Bに囲まれている。あるいは高圧プローブが導電性保持フレーム116A、116Bの内部を通るように配置されていても良い。
【0059】
図20は、図19に示すフィルタ媒体の上面図である。誘電性フィルタ材からなるパッド16Aは、誘電性媒体支持フレーム120に囲まれている。リベットあるいは取付手段136は誘電性フィルタ材からなるパッド16Aを貫通する。
【0060】
図21は、図19に示すフィルタ媒体を保持するフレームの上面図である。導電性外側スクリーン12を保持するためのフレームは、4つの導電性外側フィルタ保持フレーム部116と4つのプラスチック製端部キャップ128によって構成される。高圧接点134は絶縁性高圧シールド132A内に配置される。
【0061】
動作中において導電性外側フィルタ保持フレーム116A、116B(図19参照)がフィルタ媒体(120、16A、13、16B)のまわりを閉じた状態では、高圧接点134がリベット136の頭部に接触する。さらに、高圧シールド132A、132Bが誘電性フィルタ材からなるパッド16A、16Bに対しわずかに加圧する。高圧接点134はリベット136の頭部に確実に接続される。絶縁性高圧シールド132A、132Bは高圧接点134の先端からのコロナ噴霧を低減させ、さらに高圧接点134から導電性外側スクリーン12Aと12Bへアーク放電が発生する可能性を抑える。
【0062】
高圧接点134は通常剛性チタンまたはその他の弾力性材料により形成される。リベット136の頭部と接触する際、中央スクリーン13がわずかに撓むことがある。この中央スクリーン13の撓みを抑えるために、高圧接点134はバネ接点でも良い。中央スクリーン13上の接触域136の他の構成として、導電性ディスクを中央スクリーン13の上側に配置するか、または一対の導電性ディスクのうち一方を中央スクリーンの上側に配置し他方を下側に配置して、留め具を中央スクリーンに貫通させて両ディスクを保持するようにしても良い。重要な点は、高圧プローブ134の剛性、導電性外側スクリーンの剛性、あるいは両方の剛性によって、高圧プローブ134の先端とディスクまたはディスク・リベット結合136との間に確実な機械的接続が得られることである。結果として、振動、媒体の動き、または中央スクリーン(電極)の動き等に影響されることのない安定した接続が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電性フィルタ材からなる第1パッドと、
該第1パッドとほぼ同じ形状と面積を有する誘電性フィルタ材からなる第2パッドと、
第1導電性外側スクリーンと、
第2導電性外側スクリーンと、
前記第1導電性外側スクリーンを貫通する高圧プローブと、
前記第1導電性外側スクリーンに取り付けられ、前記高圧プローブを包囲する第1絶縁性シールドと、
前記第1パッドと前記第2パッドとの間に配置された中央スクリーンに取り付けられ、前記高圧プローブと接触するように配置された接点とを備え、
該接点は、頭部と軸部を有する留め具を含み、前記軸部が中央スクリーンを貫通し、前記頭部が前記高圧プローブに接触している能動電界分極媒体型エアクリーナ。
【請求項2】
前記留め具の軸部に配置された導電性ディスクをさらに含み、前記導電性ディスクは前記中央スクリーンに接触している請求項1に記載の能動電界分極媒体型エアクリーナ。
【請求項3】
前記第2導電性外側スクリーンに取り付けられた第2絶縁性シールドをさらに含み、前記第2絶縁性シールドは前記第1絶縁性シールドの反対側に配置されている請求項1に記載の能動電界分極媒体型エアクリーナ。
【請求項1】
誘電性フィルタ材からなる第1パッドと、
該第1パッドとほぼ同じ形状と面積を有する誘電性フィルタ材からなる第2パッドと、
第1導電性外側スクリーンと、
第2導電性外側スクリーンと、
前記第1導電性外側スクリーンを貫通する高圧プローブと、
前記第1導電性外側スクリーンに取り付けられ、前記高圧プローブを包囲する第1絶縁性シールドと、
前記第1パッドと前記第2パッドとの間に配置された中央スクリーンに取り付けられ、前記高圧プローブと接触するように配置された接点とを備え、
該接点は、頭部と軸部を有する留め具を含み、前記軸部が中央スクリーンを貫通し、前記頭部が前記高圧プローブに接触している能動電界分極媒体型エアクリーナ。
【請求項2】
前記留め具の軸部に配置された導電性ディスクをさらに含み、前記導電性ディスクは前記中央スクリーンに接触している請求項1に記載の能動電界分極媒体型エアクリーナ。
【請求項3】
前記第2導電性外側スクリーンに取り付けられた第2絶縁性シールドをさらに含み、前記第2絶縁性シールドは前記第1絶縁性シールドの反対側に配置されている請求項1に記載の能動電界分極媒体型エアクリーナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−50982(P2012−50982A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214732(P2011−214732)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2008−548878(P2008−548878)の分割
【原出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(508196162)エンヴァイロメンタル マネジメント コンフェデレーション インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2008−548878(P2008−548878)の分割
【原出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【出願人】(508196162)エンヴァイロメンタル マネジメント コンフェデレーション インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
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