説明

改装ドア

【課題】 既設ドア枠に新設ドアを設置した改装ドアにおける新設ドアの生産を可及的簡易にし得るようにする。
【解決手段】 新設ドア2を、その室内側見付面外周端部にL字段部25を配置し、該新設ドア2のL字段部25に断面U字状の気密材受材26を後付的に取付けて、該気密材受材26に気密材27を配置し、該気密材27を、既設ドア枠1の見込面中間に位置する室外側見付面に対接することによって、改装ドアAの気密性を、既設ドア枠1と新設ドア2間で確保する。これによって、例えば、室内外のドア表面材23、24によってL字段部25を覆い又は該L字段部25を露出する等する如くに、ドア表面材23、24の形状を任意化することができ、ドア表面材23、24の生産性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠を用いて、これに新設ドアを設置することによってドア改装を施した改装ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の改装ドアとして、本出願人らの下記特許文献1は、既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを設置した改装ドアにおいて、新設ドアの少なくとも上端及び左右側端にその室内側見付面端部と見込面室内側端部を断面U字状に形成することによって配置した一連の気密材凹陥溝と、該気密材凹陥溝に設置して上記既設ドア枠の見込面における室内外中間位置の室外側見付面に対接自在とした気密材を備えたものとされ、このとき、上記気密材凹陥溝は、骨材に気密材凹陥溝に応じた凹陥溝を配置し、該凹陥溝を残し又は凹陥溝内に至るように室内外のドア表面材を配置することによって、これを形成したものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−307696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを設置することによって、既設ドア枠と新設ドアとの間で気密性を確保し、工事に伴う塵埃、騒音等を発生することなく、短時間の工事によって、簡易にして高性能の改装ドアとすることができるが、その気密材を設置する気密材凹陥溝は、骨材の凹陥溝を残し又は凹陥溝内に至るように室内外のドア表面材を配置することによって形成したものとされるから、例えば、室内側のドア表面材をフラットとし、室外側のドア表面材を、ドア見込面を覆うように断面U字状とするように、室内外のドア表面材を異なる寸法及び異なる断面形状のものとすることが必要となり、これによって新設ドアの生産が煩雑化し、その生産性が低下する傾向を招き易い。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、上記ドア改装のメリットをそのまま確保しつつ、新設ドアの生産を可及的簡易になし得るようにして、その生産性を確保し得る改装ドアを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に沿って本発明は、新設ドアを、その室内側見付面端部に予めL字段部を配置したものとして、該新設ドアのL字段部に断面U字状又はL字状(この場合はL字段部とU字溝をなすように配置することになる)の気密材受材を後付的に取付けて、該気密材受材に気密材を配置することによって、該気密材を、既設ドア枠の見込面中間に位置する室外側見付面に対接して、該既設ドア枠と新設ドア間で気密性を確保するようにし、これによって、室内外のドア表面材の基本的形状を共通化したり、L字段部をドア表面材で覆うことなく露出することによって、ドア表面材にL字段部に応じた複雑形状部分の配置を省略すること等を含めて、ドア表面材の形状の任意性を確保し得るようにしたものであって、即ち、請求項1に記載の発明を、既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを設置した改装ドアにおいて、新設ドアの少なくとも上端及び左右側端にその室内側見付面端部と見込面室内側端部を断面L字状に欠如して一連に配置したL字段部と、該L字段部に室内側見付面に開口するように連続的に固定した厚肉鋼製の断面U字状又はL字状の気密材受材と、該気密材受材に配置して上記既設ドア枠の見込面における室内外中間位置の室外側見付面に対接自在とした気密材を備えてなることを特徴とする改装ドアとしたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記L字段部の配置を新設ドアの全周に配置することによって、更に気密性を向上したものとするように、これを、上記L字段部を、新設ドアの下端を含む外周に一連に配置することによって上記気密材受材及び気密材を新設ドアの室内側の見付面囲繞状に配置してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、新設ドアを、その室内側見付面端部に予めL字段部を配置したものとして、該新設ドアのL字段部に断面U字状又はL字状の気密材受材を後付的に取付けて、該気密材受材を該段部の補強を兼ね得るようにする一方、該気密材受材に気密材を配置することによって、該気密材を、既設ドア枠の見込面中間に位置する室外側見付面に対接して、該既設ドア枠と新設ドア間で気密性を確保するようにし、これによって、室内外のドア表面材の基本的形状を共通化したり、L字段部をドア表面材で覆うことなく露出することによって、ドア表面材にL字段部に応じた複雑形状部分の配置を省略すること等を含めてドア表面材の形状の任意性を確保し得るようにして、ドア改装のメリットをそのまま確保しつつ、新設ドアの生産を可及的簡易になし得るようにして、その生産性を確保し得る改装ドアを提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記L字段部の配置を新設ドアの全周に配置することによって、更に気密性を向上したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】改装ドアの正面図である。
【図2】改装ドアの背面図である。
【図3】改装ドアの縦断面図である。
【図4】改装ドアの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、Aは改装ドアであり、該改装ドアAは、既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠1に新設ドア2を設置したものとして、新設ドア2の少なくとも上端及び左右側端にその室内側見付面端部と見込面室内側端部を断面L字状に欠如して一連に配置したL字段部25と、該L字段部25に室内側見付面に開口するように連続的に固定した厚肉鋼製の断面U字状又はL字状の気密材受材26と、該気密材受材26に配置して上記既設ドア枠1の見込面における室内外中間位置の室外側見付面に対接自在とした気密材27を備えたものとしてあり、本例にあって、上記L字段部25は、これを、新設ドア2の下端を含む外周に一連に配置することによって上記気密材受材26及び気密材27を新設ドア3の室内側の見付面囲繞状に配置したものとしてある。
【0012】
本例にあって、図示省略の既設のドアは、鋼製の既設ドア枠1に、既設ドアとして、同じく鋼製のプレスドアをヒンジで吊支持して形成した、例えば、KJドアとして知られる昭和年代後半の集合住宅用のものであり、このとき該既設ドアは、既設ドア枠1の上下の横枠及び左右の縦枠に、これらを断面S字状とするように、その見込面における室内外中間位置に面内方向に突出する段部を形成し、該段部の室外側見付面に既設ドアの外周端部を対面するように配置したものとすることによって気密材を備えず、従って、気密性に欠けたものとされているところ、該既設ドアを、断熱性、防音性を備えた新設ドア2、即ち、両面フラッシュドアに交換的に配置することによって、上記集合住宅の居住性を向上するようにしてある。
【0013】
ドア改装は、該既設のドアのうちの上記プレスドアの既設ドアを既設ドア枠1から取り外して、該既設ドアと交換的に既設ドア枠1に、例えば、既設のヒンジを除去して、新設したヒンジ7、例えば耐震性を備えた耐震丁番を設置し、該新設したヒンジ7に、新設ドア2を吊支持して、改装を行ったものとしてあり、これによって、該ドア改装は斫り作業を必要としないか又は施錠用のトロヨケ設置用に部分的な斫りを施す程度として騒音の発生や塵埃の発生を可及的に抑制し、短時間の可及的に簡易な工事によって改装を完了することができ、また、既設ドア枠1に、新設ドア2を設置するための新設ドア枠を被覆配置するような必要がないから、従って、既設ドア枠の開口を狭小化することなく、該開口をそのまま維持したものとすることができる。
【0014】
本例にあって新設ドア2は、中骨21と、該中骨21間の空間に配置したハニカム材22と、上記中骨21と該ハニカム材22を被覆するように配置した室内外のドア表面材23、24と、室内側見付面端部と見込面室内側端部の外周に一連に配置したL字段部25に、例えば底壁をネジ固定した断面U字状の気密材受材26と、該気密材受材26に配置した気密材27を備えて形成したものとしてある。このとき、該新設ドア2は、その厚さを、例えば36mmとして、上記断面S字状をなす既設ドア枠1における室外側の室外側見付面によって画される開口に配置し、上記ヒンジ7による吊支持によって、該室外側見付面の開口において室外側に向けて外開きの開閉を行うようにしたものとしてある。
【0015】
本例にあって中骨21は、厚肉鋼板製、例えば肉厚1.6mmの厚肉鋼板のU字材乃至中空の新設ドア2の高さ及び横幅の長さに合せた長尺材にして、その室内側見付面の外側にそれぞれ新設ドア2のL字段部25に合せて形成したL字部を備えたものとしてあり、このとき該中骨21は、その長手方向端部を相互に留め接合することによって、上記L字部を該矩形の枠組みに一連に連続するように配置して、新設ドア2外周に沿う矩形の枠組みによる新設ドア2の構造躯体をなすものとしてある。
【0016】
ハニカム材22は、例えば、薄肉アルミ製のものを用いて、上記矩形の枠組みを施し又はその面内に必要に応じて配置した面内の中骨によって区画された空間に配置してあり、これによって該ハニカム材22は、該中骨21と後述の室内外のドア表面材23、24間にあって、空気層を形成し、断熱性と防音性を確保したものとしてある。
【0017】
ドア表面材23、24は、鋼板製、例えば、肉厚0.6mmの塗装鋼板を用いた室内側及び室外側のものを表裏一対として備える一方、該室内側及び室外側のドア表面材23、24は、その形状を、それぞれ室内外の各見付面と、該見付面の上下左右の端部にそれぞれ見込面の中間位置に至り、該見込面をそれぞれ室内外中間位置まで部分的に被覆するように突片を配置したものとし、これによって該室内外のドア表面材23、24は、その基本的形状を共通化した断面U字状としたものとしてあり、本例の室内側のドア表面材23にあっては、更にその見付面と上記突片間に上記L字段部25を配置してあり、該L字段部25は上記中骨21に形成したL字部に合せた見付幅と見込幅を有するものとしてある。ドア表面材23、24は、例えば、室内側のドア表面材23をフラットとし、室外側のドア表面材24を室外側見付面から該L字段部25を覆い又は該L字段部25近傍の見込面を覆うようにしてL字段部25を覆うことなく、該L字段部25を露出したものとすること、室内側及び/又は室外側のドア表面材23及び/又は24によって上記L字段部25の一部又は全部を覆うようにして、ドア表面材23及び/又は24によって該L字段部の露出を防止したものとすること等を含めて、その断面形状を自在とすることによって形状の任意性を確保し得るから、該ドア表面材23、24の形成に際しては、上記中骨21とハニカム材22を被覆するに適当な断面形状を設定し、生産性よく、その生産を行うことが可能となる。
【0018】
気密材受材26は、厚肉鋼板製、例えば、肉厚1.5mm以上、本例にあっては1.6mm乃至2.3mmのように厚肉の塗装鋼板を用いて、高さを上記L字段部25の見込幅に、底壁を該L字段部25の見付幅に合わせた断面U字状として、室内側のドア表面材23の外周端部にU字溝を形成するものとしてあり、該気密材受材26は、その底壁をL字段部25の室内側見付面に突き当てて、該底壁側からのネジをドア表面材23を介して、例えば、20〜30cmの所定間隔で長手方向多数箇所において上記中骨21に螺入することによって新設ドア2の外周に該外周囲繞状にその固定を行ってあり、これによって該気密材受材26のU字溝を、既設ドア枠1、特に上記断面S字状をなす既設ドア枠1の室内外を区分する室内外中間位置の室外側見付面に向けて開口するように配置してある。このとき、該気密材受材26は、その各長手方向先端を留め切りし、該先端を相互に突合せるように、それぞれ新設ドア2に固定することによって、そのU字溝を新設ドアの室内側見付面に一連に連続した状態に配置してある。
【0019】
該気密材受材26に配置した気密材27は、合成ゴム製にして嵌入基部と該嵌入基部に突出した軟質の中空気密部を一体に成形したものとしてあり、嵌入基部を気密材受材のU字溝内に圧入するように嵌入して、その中空気密部を、新設ドア2における室内側のドア表面材23から室内側に突出するように新設ドア2の外周端部囲繞状に配置し、新設ドア2を閉成することによって該中空気密部を既設ドア枠1の上記室外側見付面に対して圧着するように対接することによって、該既設ドア枠1の室外側見付面と新設ドア2の室内側見付面の外周端部間で、改装ドアAとしての気密性を確保したものとしてある。
【0020】
このように形成した改装ドアAは、既設ドア枠1に対して新設したヒンジ7で吊支持して、その外開きの開閉を自在としたものとなるとともに新設ドア2が断熱性及び防音性を備えることによって、既設ドア枠1を用いながら、既設のプレスドアに比して、居住性を大きく向上したものとすることができる。また、このとき、新設ドア2に上記L字段部25を配置し、該L字段部25に、上記肉厚を1.5mm以上とする如くに、厚肉鋼板とした気密材受材26を固定したことによって、該気密材受材26が新設ドア2に対して補強枠を兼用するものとなし得て、該新設ドア2にL字段部25を配置したことによる新設ドア2のドア厚減少の該部位を補強する補強機能を付与したものとすることができる。
【0021】
図中11は、新設ドア2の開閉と施錠用に配置した錠、例えばプッシュプル錠3のデッドボルトとドアガード4の受用に該既設ドア枠1の戸先側における縦枠の室内側見込面に、裏面のモルタルを部分的に斫って配置したトロヨケ、5は新設ドア2のドアスコープ、6は同じく新設ドア2の郵便受け、8はドアクローザーを示す。
【0022】
図示した例は以上のとおりに構成したが、上記新設ドアのL字段部を上端及び左右側端に配置し、これらに気密材を配置したものとして改装ドアを形成すること、気密材受材を断面L字状に形成し、その底壁からの起立片を、新設ドアのL字段部の外側を画するように配置して、該L字段部の起立面との間でU字溝を形成するようにすること等を含めて、本発明の実施に当って既設ドア枠、新設ドア、室内外のドア表面材、L字段部、気密材受材、気密材等の各具体的形状、構造、材質、これらの関係、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0023】
A 改装ドア
1 既設ドア枠
11 トロヨケ
2 新設ドア
21 中骨
22 ハニカム材
23 室内側のドア表面材
24 室外側のドア表面材
25 L字段部
26 気密材受材
27 気密材
3 プッシュプル錠
4 ドアガード
5 ドアスコープ
6 郵便受け
7 ヒンジ
8 ドアクローザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを設置した改装ドアにおいて、新設ドアの少なくとも上端及び左右側端にその室内側見付面端部と見込面室内側端部を断面L字状に欠如して一連に配置したL字段部と、該L字段部に室内側見付面に開口するように連続的に固定した厚肉鋼製の断面U字状又はL字状の気密材受材と、該気密材受材に配置して上記既設ドア枠の見込面における室内外中間位置の室外側見付面に対接自在とした気密材を備えてなることを特徴とする改装ドア。
【請求項2】
上記L字段部を、新設ドアの下端を含む外周に一連に配置することによって上記気密材受材及び気密材を新設ドアの室内側の見付面囲繞状に配置してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149467(P2012−149467A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10531(P2011−10531)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(598081045)フジメタル株式会社 (23)
【出願人】(596108977)株式会社アイ・エス (12)
【Fターム(参考)】