説明

改質ジルコニア微粒子および改質ジルコニア微粒子分散ゾル

【課題】 アルカリ領域に加えて酸性領域でも安定な改質ジルコニア微粒子を提供する。
【解決手段】 この改質ジルコニア微粒子は、表面が五酸化アンチモンおよび/またはシリカで被覆されたジルコニア微粒子であって、該ジルコニア微粒子の表面電位が下記条件で測定した場合に、−120〜−10mVの範囲にある。条件(1):改質ジルコニア微粒子分散液の固形分濃度が1重量%。条件(2):改質ジルコニア微粒子分散液のpHが2〜13の範囲。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が五酸化アンチモンまたはシリカで被覆されているために分散液の広範囲のpH領域にわたって分散性、安定性に優れたジルコニア微粒子、該微粒子分散ゾルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化スズ、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニアなどのコロイド粒子が知られており、光学材料として屈折率を調整するために被膜等に配合して用いられている。
例えば、シリカは低屈折材料として、アルミナは中程度の屈折率材料として、チタニア、ジルコニア等は高屈折率材料として用いられている。
【0003】
チタニア粒子は高屈折率ではあるものの、分散安定性や、用法、用途によっては光触媒活性のために耐光性、耐候性等に問題があった。このため他の成分、例えばシリカ成分などを複合化することによって分散安定性や、耐光性、耐候性等を向上させることが行われているが、複合化成分によっては屈折率を低下させることになることに加えて、光触媒活性を完全に抑制することが困難で、このため耐光性、耐候性等が不充分となることがあった(特許文献1:特開平8−48940号公報参照)。
【0004】
一方、ジルコニア粒子は、光触媒活性は実質的になく、耐光性、耐候性等には優れているものの、均一な粒子径分布を有し、安定性に優れたコロイド領域のジルコニアゾルを得ることが困難であった。
そこで、本願の出願人は粒子成長調整剤の存在下でジルコニアゲルの調製および水熱処理を行うことによって均一な粒子径分布を有し、安定性に優れたジルコニアゾルが得られることを開示している(特許文献2:特開2006−143535号公報参照)。
【0005】
しかしながら、従来公知のジルコニア粒子の分散液、あるいはジルコニア粒子を用いた塗布液は酸性域では容易にゲル化し、安定性に問題があった。
本願発明者等は鋭意検討した結果、ジルコニア粒子を五酸化アンチモンまたはシリカ系複合酸化物で被覆すると広範囲のpH領域で安定なジルコニア微粒子が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−48940号公報
【特許文献2】特開2006−143535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルカリ領域に加えて酸性領域でも安定な改質ジルコニア微粒子、該微粒子分散ゾルおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の改質ジルコニア微粒子は、表面が五酸化アンチモンおよび/またはシリカで被覆されたジルコニア微粒子であって、該ジルコニア微粒子の表面電位が下記条件で測定した場合に、−120〜−10mVの範囲にあることを特徴とする。
条件(1):改質ジルコニア微粒子分散液の固形分濃度が1重量%
条件(2):改質ジルコニア微粒子分散液のpHが2〜13の範囲
本発明の改質ジルコニア微粒子は、さらに、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されていることが好ましい。
−SiX4−n ・・・(1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【0009】
前記改質ジルコニア微粒子は、平均粒子径が5〜120nmの範囲にあることが好ましい。
前記改質ジルコニア微粒子は、屈折率が1.5〜2.1の範囲にあることが好ましい。
【0010】
本発明の改質ジルコニア微粒子分散ゾルは、前記改質ジルコニア微粒子が水および/または有機溶媒に分散してなり、固形分濃度が1〜50重量%の範囲にあることを特徴とする。
【0011】
本発明の改質ジルコニア微粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)からなることを特徴とする。
(a)ZrOとしての濃度0.1〜20重量%のジルコニア微粒子水分散液(A)と、Sbとしての濃度0.1〜20重量%のアンチモン酸アルカリ水溶液(B)またはSiOとしての濃度0.1〜20重量%のケイ酸アルカリ水溶液または4官能アルコキシシラン溶液(C)とを混合した分散液を調製する工程
(b)混合した分散液を陽イオン交換樹脂と接触させる工程
(c)40〜200℃で熟成する工程
【0012】
前記工程(a)で、ジルコニア微粒子水分散液(A)とアンチモン酸アルカリ水溶液(B)またはケイ酸アルカリ水溶液または4官能アルコキシシラン溶液(C)との混合比が、酸化物重量比Sb/ZrOまたはSiO/ZrOとして0.01〜2.3の範囲にあることが好ましい。
【0013】
前記工程(c)についで、下記の工程(d)〜(g)を行うことが好ましい。
(d)工程(c)で得られた改質ジルコニア微粒子水分散液を有機溶媒に溶媒置換する工程
(e)下記式(2)で表される有機ケイ素化合物の水および/または有機溶媒溶液を加える工程
−SiX4−n ・・・(2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
(f)必要に応じて加水分解触媒を加え、有機ケイ素化合物を加水分解して改質ジルコニア微粒子を表面処理する工程
(g)30〜120℃で熟成する工程
【0014】
本発明の改質ジルコニア微粒子の製造方法において、前記改質ジルコニア微粒子は、平均粒子径が5〜120nmの範囲にあることが好ましい。
本発明の改質ジルコニア微粒子の製造方法において、前記改質ジルコニア微粒子は、屈折率が1.5〜2.1の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ジルコニア微粒子の表面が五酸化アンチモンまたはシリカで被覆されており、アルカリ領域に加えて酸性領域でも安定な改質ジルコニア微粒子、該微粒子分散ゾルおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の改質ジルコニア微粒子は、高屈折率で、かつ、屈折率を調整することができ、分散性、安定性に優れているために高屈折率の透明被膜に好適に用いることができる。具体的には、基材と透明被膜の屈折率を同程度に調整することができ、このため干渉縞が生じることもなく、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度、ヘーズ等に優れた透明被膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[改質ジルコニア微粒子]
以下に、まず本発明に係る改質ジルコニア微粒子について説明する。
本発明に係る改質ジルコニア微粒子は、表面が五酸化アンチモンまたはシリカで被覆されたジルコニア微粒子であって、該ジルコニア微粒子の表面電位が下記条件で測定した場合に、−120〜−10mVの範囲にあることを特徴としている。
条件(1):改質ジルコニア微粒子分散液の固形分濃度が1重量%
条件(2):改質ジルコニア微粒子分散液のpHが2〜13の範囲
なお、本発明では、表面電位を以下、ゼータ電位ということがある。
【0017】
ジルコニア微粒子
本発明の改質ジルコニア微粒子を構成するジルコニア微粒子は、平均粒子径が概ね3〜100nm、さらには5〜80nmの範囲にあることが好ましい。
ジルコニアコア微粒子の平均粒子径が3nm未満の場合は、得ることが困難であり、得られたとしても結晶性が不充分で、結晶性の高いジルコニア微粒子に比して屈折率が低く、分散安定性が低く、凝集することがあり、後述する五酸化アンチモンおよび/またはシリカによる被覆層の形成が困難である。
ジルコニアコア粒子の平均粒子径が100nmを越えると、得られる改質ジルコニア微粒子の平均粒子径が120nmを越える場合があり、光の散乱が強くなり、これを用いた透明被膜の透明性が不充分であったり、ヘーズが高くなる場合がある。
【0018】
前記ジルコニア微粒子としては、本願出願人の出願による特開2006−143535号公報に開示したジルコニアゾルはジルコニア微粒子の平均粒子径が5〜100nmの範囲にあり、粒子径分布が均一で、結晶性および屈折率が高く、好適に用いることができる。
なお、前記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、50個の粒子について粒子径を測定し、これを平均して求めることができる。
【0019】
五酸化アンチモンおよび/またはシリカ被覆層
改質ジルコニア微粒子中の五酸化アンチモンおよび/またはシリカ被覆層の含有量は、酸化物として1〜70重量%、さらには3〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
改質ジルコニア微粒子中の五酸化アンチモンまたはシリカ被覆層の含有量が酸化物として1重量%未満の場合は、被覆層が薄く、表面が酸化アンチモンコロイド粒子あるいはシリカコロイド粒子と同様に充分な負の帯電をせず、即ち、酸化アンチモンまたはシリカと同様のコロイド的特性が得られず、分散性、分散安定性が不充分となり、他の粒子を混合したり、バインダーと混合した際に凝集する場合がある。
改質ジルコニア微粒子中の五酸化アンチモンまたはシリカ被覆層の含有量が酸化物として70重量%を越えると、コア粒子であるジルコニアの割合が少なく、得られる粒子の屈折率が低く、所望の屈折率を有する改質ジルコニア微粒子が得られない場合がある。
【0020】
改質ジルコニア微粒子
本発明の改質ジルコニア微粒子は平均粒子径が5〜120nm、さらには10〜100nmの範囲にあることが好ましい。
改質ジルコニア微粒子の平均粒子径が5nm未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても分散性、安定性等が不充分となることがある。
改質ジルコニア微粒子の平均粒子径が120nmを越えると、改質ジルコニア微粒子を用いた透明被膜のヘーズが悪化する傾向にある。
【0021】
また、本発明の改質ジルコニア微粒子は屈折率が1.5〜2.1、さらには1.8〜2.1の範囲にあることが好ましい。
改質ジルコニア微粒子の屈折率が1.5未満の場合は、本発明の改質ジルコニア微粒子によらずとも他の低屈折率の粒子、例えばシリカを主成分とする粒子を用いることができ、改質ジルコニア微粒子の屈折率が2.1を越えるものは、前記した組成範囲で五酸化アンチモンまたはシリカを被覆した粒子としては得ることが困難である。
本発明の改質ジルコニア微粒子の屈折率は標準屈折率液法によって測定することができる。なお、本発明では、ジルコニアの屈折率は2.15、五酸化アンチモンの屈折率は1.68、シリカの屈折率は1.43である。
【0022】
本発明に係る改質ジルコニア微粒子は、固形分濃度を1重量%に調整したときの改質ジルコニア微粒子分散液のpHが2〜13の範囲で表面電位が−120〜−10mV、さらには−120〜−20mVの範囲にあることが好ましい。
表面電位が−120mV未満の改質ジルコニア微粒子は得ることが困難であり、−10mVを越えると改質ジルコニア微粒子相互間の静電的反発が弱く安定性が不充分になることがあり、透明被膜に用いた場合にヘーズが高くなり、場合によっては透明被膜が白化することがある。
【0023】
表面処理
本発明の改質ジルコニア微粒子は、さらに、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されていることが好ましい。
−SiX4−n ・・・(1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【0024】
このような有機ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
この時の有機ケイ素化合物の処理量は、改質ジルコニア微粒子中の有機ケイ素化合物がR-SiO(4−n)/2として1〜50重量%、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
有機ケイ素化合物の処理量がR-SiO(4−n)/2として1重量%未満の場合は、表面処理が不充分で、分散安定性向上効果が充分得られないことがある。
有機ケイ素化合物の処理量がR-SiO(4−n)/2として50重量%を越えると分散安定性向上効果は得られるが、得られる改質ジルコニア微粒子の屈折率が前記範囲を外れて低くなることがあり、透明被膜に用いた場合、基材の屈折率によっては基材との屈折率差が0.3以上になる場合があり、光学干渉(干渉縞)が発生する場合がある。
【0026】
改質ジルコニア微粒子の表面処理は従来公知の方法を採用することができ、例えば、改質ジルコニア微粒子のアルコール分散液に前記有機ケイ素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機ケイ素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて、有機ケイ素化合物を加水分解することにより行うことができる。
本発明に係る改質ジルコニア微粒子の態様には次の3種があり、その製造方法については、酸化ジルコニウムを五酸化アンチモンおよび/またはシリカで被覆した粒子が得られれば特に制限はないが、例えば、次のようにして製造することができる。
【0027】
(1)五酸化アンチモンを被覆した改質ジルコニア微粒子
平均粒子径が概ね3〜100nmの酸化ジルコニウム粒子分散液に、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等の水溶液と混合し、熟成し、ついでイオン交換樹脂等によりイオン除去することにより得ることができる。
この時得られる改質ジルコニア微粒子の屈折率(P)は概ね1.80〜2.10の範囲にある。
【0028】
(2)シリカを被覆した改質ジルコニア微粒子
平均粒子径が概ね3〜100nmの酸化ジルコニウム粒子分散液に、珪酸アルカリ水溶液を添加し、必要に応じて加熱し、熟成し、イオン交換樹脂等によりイオン除去することにより得ることができる。
また、別の方法として、平均粒子径が概ね3〜100nmの酸化ジルコニウム粒子分散液に、シリコンアルコキサイドのアルコール溶液を添加し、必要に応じて加水分解触媒として塩酸や硝酸等の酸もしくはアンモニア等の塩基を添加し、熟成することにより得ることができる。
この時得られる改質ジルコニア微粒子の屈折率(P)は概ね1.50〜2.00の範囲にある。
【0029】
(3)シリカと五酸化アンチモンを被覆した改質ジルコニア微粒子
前記(1)と同様にして五酸化アンチモンで被覆した改質ジルコニア微粒子分散液を調製した後、前記(2)と同様にしてシリカを被覆することによって得ることができる。
また、前記(2)と同様にしてシリカで被覆した改質ジルコニア微粒子分散液を調製した後、前記(1)と同様にして五酸化アンチモンを被覆することによって得ることができる。
このとき得られる改質ジルコニア微粒子の屈折率(P)は概ね1.55〜2.05の範囲にある。
【0030】
上記に於いて、五酸化アンチモンおよび/またはシリカの使用量は被覆層の含有量が前記範囲となるように用いる。また、屈折率(P)が後述するように1.50〜2.10の範囲となるように用いる。
これらは、いずれも、五酸化アンチモンおよび/またはシリカで被覆した後、50〜300℃で熟成することが好ましい。熟成を行うと被覆した五酸化アンチモンおよび/またはシリカの結晶化が進むとともに表面電位が低下し、コロイド的性質が増して分散安定性に優れた複合酸化物粒子を得ることができる。
さらに、本発明の改質ジルコニア微粒子の製造方法としては、後述する本発明の改質ジルコニア微粒子の製造方法を採用することが好ましい。
【0031】
[改質ジルコニア微粒子分散ゾル]
次に、本発明に係る改質ジルコニア微粒子分散ゾルについて説明する。
本発明に係る改質ジルコニア微粒子分散ゾルは前記改質ジルコニア微粒子が水および/または有機溶媒に分散してなり、固形分濃度が1〜50重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0032】
有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒を用いることができ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0033】
改質ジルコニア微粒子分散ゾルの濃度は、固形分として1〜50重量%、さらには2〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
改質ジルコニア微粒子分散ゾルの濃度が固形分として1重量%未満の場合は、改質ジルコニア微粒子を含む透明被膜形成用塗布液を調製する場合に、高濃度の塗布液を調製できない場合があり、50重量%を越えると改質ジルコニア微粒子分散ゾルの粘度が高くなるとともに安定性が不充分となり、ゲル化する場合がある。
【0034】
[改質ジルコニア微粒子分散ゾルの製造方法]
次に、本発明に係る改質ジルコニア微粒子分散ゾルの製造方法について説明する。
本発明に係る改質ジルコニア微粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)からなることを特徴としている。
(a)ZrOとしての濃度0.1〜20重量%のジルコニア微粒子水分散液(A)と、Sbとしての濃度0.1〜20重量%のアンチモン酸アルカリ水溶液(B)またはSiOとしての濃度0.1〜20重量%のケイ酸アルカリ水溶液または4官能アルコキシシラン溶液(C)とを混合した分散液を調製する工程
(b)混合した分散液を陽イオン交換樹脂と接触させる工程
(c)50〜120℃で熟成する工程
【0035】
工程(a)
ジルコニア微粒子水分散液(A)としては、前記したジルコニア微粒子の水分散液を用いることができる。特に、本発明に用いるジルコニア微粒子分散液としては、本願出願人の出願による特開2006−143535号公報に開示したジルコニアゾルはジルコニア微粒子の平均粒子径が5〜100nmの範囲にあり、粒子径分布が均一で、結晶性および屈折率が高く好適に用いることができる。
【0036】
ジルコニア微粒子水分散液(A)の濃度はZrOとして0.1〜20重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
ジルコニア微粒子水分散液(A)の濃度がZrOとして0.1重量%未満の場合は、濃度が低すぎて大きな処理設備を必要としたり、生産性が低く経済的でない。
ジルコニア微粒子水分散液(A)の濃度がZrOとして20重量%を越えると、工程(b)で得られる五酸化アンチモンまたはシリカを被覆したジルコニア微粒子が凝集する場合がある。
【0037】
アンチモン酸アルカリ水溶液(B)としては、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等の水溶液を用いる。
アンチモン酸アルカリ水溶液(B)の濃度は、特に制限はないが、Sbとして0.1〜20重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0038】
ケイ酸アルカリ水溶液または4官能アルコキシシラン溶液(C)としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等の水溶液、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン等のアルコールおよび/または水溶液を用いる。
ケイ酸アルカリ水溶液または4官能アルコキシシラン溶液(C)の濃度は、特に制限はないが、SiOとして濃度0.1〜20重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0039】
ジルコニア微粒子水分散液(A)とアンチモン酸アルカリ水溶液(B)またはケイ酸アルカリ水溶液または4官能アルコキシシラン溶液(C)とを混合した分散液の濃度は、酸化物の合計として0.1〜20重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
混合分散液の濃度が、酸化物の合計として0.1重量未満の場合は、濃度が低すぎて大きな処理設備を必要としたり、生産性が低く経済的でない。
混合分散液の濃度が、酸化物の合計として20重量%を越えると、工程(b)で得られる五酸化アンチモンまたはシリカを被覆したジルコニア微粒子が凝集する場合がある。
【0040】
ジルコニア微粒子水分散液(A)とアンチモン酸アルカリ水溶液(B)またはケイ酸アルカリ水溶液または4官能アルコキシシラン溶液(C)との混合比が、酸化物重量比Sb/ZrOまたはSiO/ZrOとして0.01〜2.3、さらには0.02〜1.5の範囲にあることが好ましい。
酸化物重量比Sb/ZrOまたはSiO/ZrOが0.01未満の場合は、被覆層が薄く、表面が酸化アンチモンコロイド粒子あるいはシリカコロイド粒子と同様に充分な負の帯電をせず、即ち、酸化アンチモンまたはシリカと同様のコロイド的特性が得られず、分散性、分散安定性が不充分となり、他の粒子を混合したり、バインダーと混合した際に凝集する場合がある。
酸化物重量比Sb/ZrOまたはSiO/ZrOが2.3を越えると、コア粒子であるジルコニア微粒子の割合が少なく、得られる粒子の屈折率が低く、所望の屈折率を有する改質ジルコニア微粒子が得られない場合がある。
このとき、混合分散液のpHは概ね2〜5の範囲にある。
【0041】
工程(b)
工程(a)で混合した分散液を陽イオン交換樹脂と接触させる。
陽イオン交換樹脂としては、従来公知の陽イオン交換樹脂(H型)を用いることができ、混合した分散液を陽イオン交換樹脂と接触させることによって、アンチモン酸アルカリまたはケイ酸アルカリからアルカリが脱離し、アンチモン酸またはケイ酸がジルコニア微粒子表面に析出し、被覆層を形成することができる。
【0042】
陽イオン交換樹脂の使用量は、アンチモン酸アルカリまたはケイ酸アルカリの使用量によって異なるが、アンチモン酸アルカリまたはケイ酸アルカリからアルカリを脱離させ、混合分散液を陽イオン交換樹脂と接触させた後のアンチモン酸またはケイ酸を被覆したジルコニア微粒子分散液中にアルカリが実質的に残存しない程度に用いる。
ついで、分散液から陽イオン交換樹脂を分離する。陽イオン交換樹脂を分離した分散液のpHは1〜6、さらには2〜4の範囲にあることが好ましい。
【0043】
工程(c)
ついで、分散液を熟成するが、熟成温度は40〜200℃、さらには60〜120℃が好ましい。
熟成温度が40℃未満の場合は、被覆層が五酸化アンチモンの場合は緻密化、結晶化が不充分なためか、得られる改質ジルコニア微粒子分散ゾルの安定性が不充分であり、被覆層がシリカの場合は緻密化が不充分なためか、得られる改質ジルコニア微粒子分散ゾルの安定性が不充分である。
熟成温度が200℃を越えても改質ジルコニア微粒子分散ゾルの安定性がさらに向上することもなく、熟成時間を短縮できる効果もなく、経済性の点からも有意とはいえない。
なお、熟成時間は、温度によっても異なるが、通常0.5〜12時間である。
【0044】
上記した方法は、酸化ジルコニウム粒子分散液に、アンチモン酸アルカリまたはケイ酸アルカリの水溶液を混合した後、イオン交換樹脂等によりイオン除去する前に熟成する方法に比して、安定性に優れた改質ジルコニア微粒子分散ゾルを得ることができる。
前記工程(c)についで、下記の工程(d)〜(g)を行い、有機ケイ素化合物で表面処理した改質ジルコニア微粒子とすることが好ましい。
【0045】
工程(d)
工程(c)で得られた改質ジルコニア微粒子水分散液を有機溶媒に溶媒置換する。
有機溶媒としては、通常アルコールが用いられ、限外濾過膜法によって溶媒置換する。
改質ジルコニア微粒子の有機溶媒分散液の濃度は、特に制限はないが固形分として通常1〜40重量%、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
【0046】
工程(e)
工程(d)で得られた有機溶媒分散液に、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物の水および/または有機溶媒溶液を加える。
−SiX4−n ・・・(2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
有機ケイ素化合物としては、前記式(1)で表される有機ケイ素化合物と同様の有機ケイ素化合物が用いられる。
有機ケイ素化合物は、得られる改質ジルコニア微粒子中にR-SiO(4−n)/2として1〜50重量%、さらには2〜30重量%の範囲となるように用いることが好ましい。
【0047】
工程(f)
必要に応じて加水分解触媒を加え、有機ケイ素化合物を加水分解して改質ジルコニア微粒子を表面処理する。
加水分解触媒としては、従来公知の酸またはアルカリが用いられる。
なお、分散液が予め水を含まない場合は水を添加するが、水の添加量は従来公知の量でよく、前記有機ケイ素化合物が充分に加水分解できる量とする。
【0048】
工程(g)
ついで、30〜120℃で熟成する。さらに好ましい温度は50〜80℃である。
熟成温度が30℃未満の場合は、加水分解が完結しない場合や、加水分解物の粒子表面への結合が不充分となり、表面処理効果が充分得られないことがある。
熟成温度が120℃を越えても表面処理効果がさらに増すこともなく、有意とはいえない。
なお、熟成時間は、温度によっても異なるが、通常0.5〜2時間である。
【0049】
上記で得られた改質ジルコニア微粒子分散液あるいは表面処理した改質ジルコニア微粒子分散液は所望の分散媒に溶媒置換して改質ジルコニア微粒子分散ゾルとすることができる。
分散媒としては、用途によって異なるが、前記した水および/または有機溶媒が用いられる。
得られた改質ジルコニア微粒子分散ゾルは、固形分濃度が1〜50重量%、さらには2〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
【0050】
また、得られた改質ジルコニア微粒子は平均粒子径が5〜120nm、さらには10〜100nmの範囲にあることが好ましい。
また、改質ジルコニア微粒子は屈折率が1.5〜2.1、さらには1.8〜2.1の範囲にあることが好ましい。
以下、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
[実施例]
改質ジルコニア微粒子(1)分散液の調製
ジルコニアゾル(1)の調製
純水1,302gにオキシ塩化ジルコニウム8水和物(ZrOCl2・8H2O)35gを溶解し、これに濃度10重量%のKOH水溶液122.8gを添加してジルコニウム水酸化物ヒドロゲル(ZrO2濃度1重量%)を調製した。ついで、5時間静置してジルコニウム水酸化物ヒドロゲルを沈降させた後、上澄み液(pH11.0)750g除去した。次に純水750gを添加し、攪拌した後、再び5時間静置した。以上の操作を上澄み液の電導度が0.5ms/cm以下になるまで繰り返し行った。
【0052】
得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルに酒石酸0.96gを加えて充分に攪拌を行った。ついで、pH11.0になるまで濃度10重量%のKOH水溶液を加え、超音波を1時間照射してヒドロゲルの分散処理をした後、限外濾過膜を用いて電導度が0.35ms/cm以下になるまで洗浄した。次に、陰イオン交換樹脂(ROHM AND HAAS社製:デュオライトUP5000)を2.6g加え、脱イオンを行った。ついで、得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルをオートクレーブに充填し、165℃で6時間水熱処理を行った。このときpHは10.7であった。ついで、水熱処理して得られた分散液を乾燥した後650℃で2時間焼成してジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末は立方晶,単斜晶の混晶体であった。
【0053】
次に、純水161.9gに酒石酸4.4gを溶解した水溶液にジルコニア粉末36gを加え、ついで、濃度10重量%のKOH水溶液30gを加えてpH12.3のジルコニア粉末分散液とした。ジルコニア粉末分散液を分散機(カンペ(株)製:BATCH SAND)にて分散させ、ジルコニアゾルとした。得られたジルコニアゾルを遠心分離器にセットし、2,500rpmで5分間遠心分離処理を行なった後、限外濾過膜を用いて電導度が100μs/cm程度になるまで洗浄し、ついで、陰イオン交換樹脂(デュオライトUP-5000)40gを加えて脱イオン処理を行い、樹脂を分離し、ZrO濃度1重量%のジルコニアゾル(1)を調製した。
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無く、平均粒子径30nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.1であった。
【0054】
五酸化アンチモン被覆
ジルコニアゾル(1)210gとアンチモン酸カリウム水溶液(Sb2O5として濃度1重量%)90gを混合し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DAIAION PK-216H)330gを充填したイオン交換塔を通過させた後、90℃で1時間熟成して五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(1)を調製した。得られたゾルのpHは2.6であった。
【0055】
シリカ被覆
得られた五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(1)277gにテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製:エチルシリケート-A)1.15gを加え、ついでメタノール277gを加えた後、50℃で15時間熟成を行った。ついで、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換し、固形分濃度2重量%の五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(1)を調製した。
【0056】
表面処理
次に、五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(1)119gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-503)0.18gを加え、50℃で16時間熟成し、固形分濃度2重量%の改質ジルコニア微粒子(1)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(1)について、平均粒子径および屈折率を測定し、結果を表に示した。また、表面電位は、改質ジルコニア微粒子(1)分散液の濃度を1重量%に調整し、分散液の1部を採取し、これに0.1NのHCl水溶液を加えてpH3の分散液、他の1部に0.1NのNaOH水溶液を加えてpH10の分散液とし、ゼータ電位測定装置(SYSMEX社製:ゼータサイザー3000HS)にてゼータ電位を測定し、結果を表に示した。
さらに、分散性の評価として、下記の方法で透明被膜付基材を調製し、透明被膜のヘーズを測定し、結果を表に示した。
【0057】
透明被膜付基材(1)の調製
アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒:酢酸ブチル)をイソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン(1:1)で希釈して樹脂濃度30重量%の透明被膜形成用樹脂成分を調製した。
この透明被膜形成用樹脂成分10gに、改質ジルコニア微粒子(1)分散液10gを混合して透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0058】
透明被膜形成用塗布液(1)を、PETフィルム(東洋紡製コスモシャイン A4100、厚さ:188μm、屈折率:1.67、基材ヘーズ0.8%)にバーコーター法(#14)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、600mJ/cmの紫外線を照射して硬化させて膜付基材(1)を製造した。得られた透明被膜のヘーズをヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定し、ヘーズおよび透明被膜の外観観察結果から改質ジルコニア微粒子の透明被膜中の分散性を下記のように評価した。
評価基準
基材のヘーズと同等 :◎
若干ヘーズが増加するが、目視では区別できない :○
ヘーズが増加し、目視で白化が認められる :△
ヘーズが大きく増加し、目視で顕著な白化が認められる:×
【0059】
[実施例2]
改質ジルコニア微粒子(2)分散液の調製
五酸化アンチモン被覆
実施例1と同様にして調製したジルコニアゾル(1)240gとアンチモン酸カリウム水溶液(Sb2O5として濃度1重量%)60gを混合し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DAIAION PK-216H)330gを充填したイオン交換塔を通過させた後、90℃で1時間熟成して五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(2)を調製した。得られたゾルのpHは2.5であった。
【0060】
シリカ被覆
五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(2)277gを用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度10重量%の五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(2)を調製した。
表面処理
次に、五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(2)119gを用いた以外は実施例1と同様にして、固形分濃度2重量%の改質ジルコニア微粒子(2)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(2)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0061】
[実施例3]
改質ジルコニア微粒子(3)分散液の調製
五酸化アンチモン被覆
実施例1と同様にして調製したジルコニアゾル(1)150gとアンチモン酸カリウム水溶液(Sb2O5として濃度1重量%)150gを混合し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DAIAION PK-216H)330gを充填したイオン交換塔を通過させた後、90℃で1時間熟成して五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(3)を調製した。得られたゾルのpHは2.7であった。
【0062】
シリカ被覆
五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(3)277gを用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度10重量%の五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(3)を調製した。
表面処理
次に、五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(3)119gを用いた以外は実施例1と同様にして、固形分濃度2重量%の改質ジルコニア微粒子(3)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(3)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0063】
[実施例4]
改質ジルコニア微粒子(4)分散液の調製
ジルコニアゾル(2)の調製
純水1,302gにオキシ塩化ジルコニウム8水和物(ZrOCl2・8H2O)35gを溶解し、これに濃度10重量%のKOH水溶液122.8gを添加してジルコニウム水酸化物ヒドロゲル(ZrO2濃度1重量%)を調製した。ついで、5時間静置してジルコニウム水酸化物ヒドロゲルを沈降させた後、上澄み液(pH11.0)750g除去した。次に純水750gを添加し、攪拌した後、再び5時間静置した。以上の操作を上澄み液の電導度が0.5ms/cm以下になるまで繰り返し行った。
【0064】
得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルに酒石酸1.44gを加えて充分に攪拌を行った。ついで、pH11.0になるまで濃度10重量%のKOH水溶液を加え、超音波を1時間照射してヒドロゲルの分散処理をした後、限外濾過膜を用いて電導度が0.35ms/cm以下になるまで洗浄した。次に、陰イオン交換樹脂(ROHM AND HAAS社製:デュオライトUP5000)を2.6g加え、脱イオンを行った。ついで、得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルをオートクレーブに充填し、140℃で6時間水熱処理を行った。このときpHは10.7であった。
ついで、水熱処理して得られた分散液を乾燥した後500℃で2時間焼成してジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末は立方晶,単斜晶の混晶体であった。
【0065】
次に、純水161.9gに酒石酸8.8gを溶解した水溶液にジルコニア粉末36gを加え、ついで、濃度10重量%のKOH水溶液30gを加えてpH12.3のジルコニア粉末分散液とした。ジルコニア粉末分散液を分散機(カンペ(株)製:BATCH SAND)にて分散させ、ジルコニアゾルとした。得られたジルコニアゾルを遠心分離器にセットし、2,500rpmで5分間遠心分離処理を行なった後、限外濾過膜を用いて電導度が100μs/cm程度になるまで洗浄し、ついで、陰イオン交換樹脂(デュオライトUP-5000)40gを加えて脱イオン処理を行い、樹脂を分離し、ZrO濃度1重量%のジルコニアゾル(2)を調製した。
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無く、平均粒子径15nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.0であった。
【0066】
五酸化アンチモン被覆
ジルコニアゾル(2)210gとアンチモン酸カリウム水溶液(Sb2O5として濃度1重量%)90gを混合し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DAIAION PK-216H)330gを充填したイオン交換塔を通過させた後、90℃で1時間熟成して五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(4)を調製した。得られたゾルのpHは2.6であった。
シリカ被覆
五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(4)277gを用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度10重量%の五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(4)を調製した。
【0067】
表面処理
次に、五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(4)119gを用いた以外は実施例1と同様にして、固形分濃度2重量%の改質ジルコニア微粒子(4)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(4)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0068】
[実施例5]
改質ジルコニア微粒子(5)分散液の調製
ジルコニアゾル(3)の調製
純水1,302gにオキシ塩化ジルコニウム8水和物(ZrOCl2・8H2O)35gを溶解し、これに濃度10重量%のKOH水溶液122.8gを添加してジルコニウム水酸化物ヒドロゲル(ZrO2濃度1重量%)を調製した。ついで、5時間静置してジルコニウム水酸化物ヒドロゲルを沈降させた後、上澄み液(pH11.0)750g除去した。次に純水750gを添加し、攪拌した後、再び5時間静置した。以上の操作を上澄み液の電導度が0.5ms/cm以下になるまで繰り返し行った。
【0069】
得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルに酒石酸0.64gを加えて充分に攪拌を行った。ついで、pH11.0になるまで濃度10重量%のKOH水溶液を加え、超音波を1時間照射してヒドロゲルの分散処理をした後、限外濾過膜を用いて電導度が0.35ms/cm以下になるまで洗浄した。次に、陰イオン交換樹脂(ROHM AND HAAS社製:デュオライトUP5000)を2.6g加え、脱イオンを行った。ついで、得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルをオートクレーブに充填し、200℃で6時間水熱処理を行った。このときpHは10.7であった。
ついで、水熱処理して得られた分散液を乾燥した後700℃で2時間焼成してジルコニア粉末を得た。得られたジルコニア粉末は立方晶,単斜晶の混晶体であった。
【0070】
次に、純水161.9gに酒石酸2.2gを溶解した水溶液にジルコニア粉末36gを加え、ついで、濃度10重量%のKOH水溶液30gを加えてpH12.3のジルコニア粉末分散液とした。ジルコニア粉末分散液を分散機(カンペ(株)製:BATCH SAND)にて分散させ、ジルコニアゾルとした。得られたジルコニアゾルを遠心分離器にセットし、2,500rpmで5分間遠心分離処理を行なった後、限外濾過膜を用いて電導度が100μs/cm程度になるまで洗浄し、ついで、陰イオン交換樹脂(デュオライトUP-5000)40gを加えて脱イオン処理を行い、樹脂を分離し、ZrO濃度1重量%のジルコニアゾル(3)を調製した。
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無く、平均粒子径50nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.2であった。
【0071】
五酸化アンチモン被覆
ジルコニアゾル(3)210gとアンチモン酸カリウム水溶液(Sb2O5として濃度1重量%)90gを混合し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DAIAION PK-216H)330gを充填したイオン交換塔を通過させた後、90℃で1時間熟成して五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(5)を調製した。得られたゾルのpHは2.6であった。
シリカ被覆
五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(5)277gを用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度10重量%の五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(5)を調製した。
【0072】
表面処理
次に、五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(5)119gを用いた以外は実施例1と同様にして、固形分濃度2重量%の改質ジルコニア微粒子(5)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(5)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0073】
[実施例6]
改質ジルコニア微粒子(6)分散液の調製
シリカ被覆
実施例1と同様な方法でZrO濃度1.5重量%のジルコニアゾル(1)を調製した。このジルコニアゾル(1)100gとエタノール87.6gおよび濃度28重量%のアンモニア水溶液0.5gとの混合溶液を35℃に加温した後、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製:エチルシリケート-A)0.15gを添加した。ついで、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイアイオンSK-1BH)602.1gを用い、80℃で3時間脱イオンを行った。得られたジルコニアゾルを限外濾過膜を用いて溶媒をアルコールに置換し、固形分濃度5重量%のシリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(6)を調製した。
【0074】
表面処理
次に、シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(6)119gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-503)0.6gを加え、50℃で16時間熟成し、固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(6)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(6)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0075】
[実施例7]
改質ジルコニア微粒子(7)分散液の調製
シリカ被覆
実施例6において、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製:エチルシリケート-A)0.05gを用いた以外は同様にして固形分濃度5重量%のシリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(7)を調製した。
【0076】
表面処理
次に、シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(7)119gを用いた以外は実施例6と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(7)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(7)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0077】
[実施例8]
改質ジルコニア微粒子(8)分散液の調製
シリカ被覆
実施例6において、テトラエトキシシラン(多摩化学工業株式会社製:エチルシリケート-A)0.45gを用いた以外は同様にして固形分濃度5重量%のシリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(8)を調製した。
【0078】
表面処理
次に、シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(8)119gを用いた以外は実施例6と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(8)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(8)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0079】
[実施例9]
改質ジルコニア微粒子(9)分散液の調製
五酸化アンチモン被覆
実施例1と同様にして調製したジルコニアゾル(1)210gとアンチモン酸カリウム水溶液(Sb2O5として濃度1重量%)90gを混合し、90℃で1時間熟成を行った。ついで、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DAIAION PK-216H)330gを充填したイオン交換塔を通過させて、五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(9)を調製した。得られたゾルのpHは2.6であった。
【0080】
シリカ被覆
得られた五酸化アンチモン被覆ジルコニアゾル(9)277gにテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製:エチルシリケート-A)1.15gを加え、ついでメタノール277gを加えた後、50℃で15時間熟成を行った。ついで、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換し、固形分濃度10重量%の五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(9)を調製した。
【0081】
表面処理
次に、五酸化アンチモン/シリカ被覆ジルコニア微粒子アルコール分散液(9)119gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-503)0.18gを加え、50℃で16時間熟成し、固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(9)分散液を調製した。
得られた改質ジルコニア微粒子(9)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0082】
[実施例10]
改質ジルコニア微粒子(10)分散液の調製
五酸化アンチモン被覆
実施例1と同様にして調製したジルコニアゾル(1)210gとアンチモン酸カリウム水溶液(Sb2O5として濃度1重量%)90gを混合し、90℃で1時間熟成を行った。ついで、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:DAIAION PK-216H)330gを充填したイオン交換塔を通過させて、五酸化アンチモンを被覆した改質ジルコニア微粒子(10)分散液を調製した。得られたゾルのpHは2.6であった。
得られた改質ジルコニア微粒子(10)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0083】
[比較例1]
ジルコニア微粒子(R1)分散液の調製
実施例1と同様にして調製したZrO濃度1重量%のジルコニアゾル(1)をジルコニア微粒子(R1)分散液とした。
ジルコニア粒子(R1)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0084】
[比較例2]
ジルコニア微粒子(R2)分散液の調製
実施例1と同様にして調製したZrO濃度1重量%のジルコニアゾル(1)を 限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換し、固形分濃度10重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(R2)を調製した。
表面処理
次に、ジルコニア微粒子アルコール分散液(R2)119gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-503)0.18gを加え、50℃で16時間熟成し、固形分濃度5重量%の表面処理したジルコニア微粒子(R2)分散液を調製した。
得られたジルコニア粒子(R2)について、平均粒子径、屈折率を測定し、結果を表に示した。また、実施例1と同様にして、表面電位および分散性を測定し、結果を表に示した。
【0085】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が五酸化アンチモンおよび/またはシリカで被覆されたジルコニア微粒子であって、該ジルコニア微粒子の表面電位が下記条件で測定した場合に、−120〜−10mVの範囲にあることを特徴とする改質ジルコニア微粒子。
条件(1):改質ジルコニア微粒子分散液の固形分濃度が1重量%
条件(2):改質ジルコニア微粒子分散液のpHが2〜13の範囲
【請求項2】
さらに、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の改質ジルコニア微粒子。
−SiX4−n ・・・(1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【請求項3】
平均粒子径が5〜120nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の改質ジルコニア微粒子。
【請求項4】
屈折率が1.5〜2.1の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子が水および/または有機溶媒に分散してなり、固形分濃度が1〜50重量%の範囲にあることを特徴とする改質ジルコニア微粒子分散ゾル。

【公開番号】特開2012−87052(P2012−87052A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26544(P2012−26544)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【分割の表示】特願2007−280565(P2007−280565)の分割
【原出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】