説明

改質剤製造装置及び改質剤

【課題】金属シリコン、硼砂、苛性ソーダ及び水を原料として、コンクリート強化剤や耐火材料の性能向上剤などとして使用可能な改質剤を効率的に製造することができ、安全性にも優れた改質剤製造技術を提供する。
【解決手段】改質剤製造装置10は、メタルシリコンMSを収容した原料容器11を収容可能な密閉性を有する反応槽12と、反応槽12内に注水する給水経路13と、反応槽12に苛性ソーダS及び硼砂Bを入れる投入経路15と、反応槽12内の収容物を昇温させる加熱手段16と、反応槽12内に形成される液体Rを原料容器11内のメタルシリコンMSに向かって吹き付ける噴射手段18と、を備えている。原料容器11は網状体で形成され、反応槽12内の一対のレール22上に載置されている。反応槽12上面には排気筒26が立設され、原料容器11の出し入れ用の出入口28と、出入口28を開閉する蓋体29と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの強化剤あるいは耐火材料の性能向上剤などとして使用される改質剤及びその製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属シリコン、硼砂、苛性ソーダ及び水を混合して反応させることによって生成される液状の改質剤及びその製造方法などについては、従来、様々な技術が提案されているが、本願発明に関連するものとして、例えば、特許文献1記載の「水性造膜性無機化合物の製造方法」がある。
【0003】
特許文献1には、所定の反応容器内に、苛性ソーダ、水、金属シリコン及び硼砂を、順次、投入していくことにより、液状の水性造膜性無機化合物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−14801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の「水性造膜性無機化合物の製造方法」は比較的小規模の製造技術として好適であるが、工業レベルの大量の改質剤を効率良く製造することは困難である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、金属シリコン、硼砂、苛性ソーダ及び水を原料として、コンクリートの強化剤あるいは耐火材料の性能向上剤などとして使用可能な改質剤を提供すること及びこの改質剤を効率的に製造することができ、安全性にも優れた改質剤製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の改質剤製造装置は、メタルシリコンを収容した原料容器を収容可能な密閉性を有する反応槽と、前記反応槽内に注水する給水経路と、前記反応槽に苛性ソーダ及び硼砂を入れる投入経路と、前記反応槽内の収容物を昇温させる加熱手段と、前記反応槽内に形成される液体を前記原料容器内のメタルシリコンに向かって吹き付ける噴射手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、反応槽内において、メタルシリコン、水、苛性ソーダ及び硼砂の混合物を加熱するとともに、反応槽内に形成される液体をメタルシリコンに向かって吹き付けるので、メタルシリコンの溶解が速やかに行われ、改質剤を効率的に製造することができる。また、原材料の混合、加熱などは密閉性を有する反応槽内で行われるので、安全性にも優れている。
【0009】
ここで、前記反応槽内に形成される液体を溢流経路を経由して貯留する補助タンクと、前記補助タンク内に貯留された液体を前記反応槽内へ送り込む還流経路を設けることが望ましい。
【0010】
このような構成とすれば、反応槽内で形成される液体を、外部に溢れさせることなく、循環させながら反応に供することができるので、製造効率の向上に有効である。
【0011】
また、前記加熱手段として、前記反応槽内に当該反応槽内と区画された状態で配置された発熱筒と、前記発熱筒内に向かって火炎放射するバーナと、前記発熱筒内から前記反応槽外に排出される高温気体を前記反応槽の外面に沿って流動させる反応槽加温用ケーシングと、を設けることが望ましい。
【0012】
このような構成とすれば、バーナの熱の散逸を防止することができるので、エネルギ効率を高めることができる。
【0013】
さらに、本発明の改質剤は、前述した改質剤製造装置を用いて製造した改質剤であって、微細化された無機高分子の親水コロイド及び微細化された水分子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、金属シリコン、硼砂、苛性ソーダ及び水を原料として、コンクリートの強化剤あるいは耐火材料の性能向上剤などとして使用可能な改質剤を提供することができ、また、この改質剤を効率的に製造することができ、安全性にも優れた改質剤製造技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である改質剤製造装置を示す一部省略側面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】図1に示す改質剤製造装置を構成する反応槽加温用ケーシング示す一部省略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1,図2に示すように、本実施形態の改質剤製造装置10は、メタルシリコンMSを収容した原料容器11を収容可能な密閉性を有する反応槽12と、反応槽12内に注水する給水経路13と、反応槽12に苛性ソーダS及び硼砂Bを入れる投入経路15と、反応槽12内の収容物を昇温させる加熱手段16と、反応槽12内に形成される液体Rを原料容器11内のメタルシリコンMSに向かって吹き付ける噴射手段18と、を備えている。
【0017】
反応槽12は円筒形状をなし、その軸心が略水平をなすように配置されている。原料容器11は通液性を有する網状体で形成され、反応槽12内に、その軸心と平行に配置された一対のレール22上に載置されている。反応槽12の上面の加熱手段16寄りの部分には、反応槽12内と連通する排気筒26が立設されている。また、反応槽12の加熱手段16と反対側には、原料容器11を反応槽12に出し入れするための出入口28と、出入口28を開閉する蓋体29と、が設けられている。
【0018】
また、反応槽12内に形成される液体Rを、溢流経路19を経由して貯留する補助タンク20と、補助タンク20内に貯留された液体Rを反応槽12内へ送り込むための還流経路21及びポンプPが設けられている。
【0019】
加熱手段16として、反応槽12内に当該反応槽12内と区画された状態で配置された発熱筒23と、発熱筒23内に向かって火炎放射するバーナ24と、発熱筒23内から反応槽12外に排出される高温気体を反応槽12の外周の下面領域に沿って流動させる反応槽加温用ケーシング25と、が設けられている。バーナ24から放射される火炎によって昇温した発熱筒23によって、反応槽12内の液体Rが加熱される。
【0020】
発熱筒23内の高温気体は、発熱筒22の先端付近から反応槽12外へ配設された排気経路27を通過して、反応槽加温用ケーシング25内に設けられた区画室25a内へ排出され、当該区画室25aを形成する隔壁25bに開設された通気口25cを通過して、反応槽加温用ケーシング25内に流れ込む。
【0021】
反応槽加温用ケーシング25内に流れ込んだ高温気体は、その内部を出入口28側に向かって拡散していき、この過程で反応槽加温用ケーシング25の加温に供された後、加熱手段16と反対側に、反応槽加温用ケーシング25内と連通した状態で立設された排気筒30を上昇して大気中へ放出される。
【0022】
ここで、図1〜図3を参照し、改質剤製造装置10を用いた改質剤製造方法について説明する。図1に示すように、メタルシリコンMSを収容した反応容器11を台車31に載せて改質剤製造装置10まで運び込み、蓋体29を開いて出入口28から反応槽12内へ装入する。この後、蓋体29で出入口28を閉塞し、給水経路13から反応槽12内へ注水する。所定量の注水が終わったら、バーナ24を点火して、加熱を開始する。
【0023】
反応槽12内の液体Rの温度が60℃に達したら、投入経路15の開閉手段32を開いて苛性ソーダSを反応槽12内へ投入する。これにより、苛性ソーダSと液体Rとが反応し、液体Rの温度が99℃程度まで上昇していく。この過程において、反応槽12内の液体Rを、ポンプ(図示せず)で吸い込み、噴射手段18から原料容器11内のメタルシリコンMSに向かって吹き付けることにより、メタルシリコンMSの溶解を促進する。
【0024】
苛性ソーダSの投入後、60分程度経過した時点で、投入経路15から反応槽12内へ硼砂Bを投入すると、前述した反応が沈静化されるが、そのまま反応を進行させる。硼砂Bの投入後、50分程度が経過したら、反応槽12内の液体Rの比重及びpHを計測する。比重1.35程度、pH12〜13となっていれば、反応完了と判断することができるので、バーナ24などを停止して、室温レベルまで放冷すると、反応槽12内に液体Rを改質剤として取り出すことができる。
【0025】
改質剤製造装置10を用いて形成された改質剤は用途を限定しないので、様々な用途に使用することができるが、例えば、生コンクリートに混入すると、固化後のコンクリートの強度が30%程度向上するという効果、あるいは、焼却炉を形成する炉材に混入させると断熱機能が顕著に高まるという効果が得られた。
【0026】
また、前記改質剤を放射線被射体に散布した後、セメントと前記改質剤とで固めると、放射線を遮蔽することができる。さらに、焼却炉の煙道の出口付近に、煙道を排煙進行方向と直角に曲げた部分を設け、この部分に前記改質剤を噴霧すると、ダイオキシンを捕捉することができる。
【0027】
さらに、改質剤製造装置10を用いて製造された改質剤は、ミネラルの電子反応を応用することにより、無機高分子のコロイドの分子結合がナノレベルまで微細化された親水コロイド及び微細化された水分子を含んでいる。水の分子結合をより小さくすることにより、表面張力が小さくなり、これを超親水性と表現することがあるが、これによって、浸透力が著しく強なり、濡れ性も増大する。このことは、改質剤の接触角度を測定することによって確認することができる。
【0028】
即ち、微細化された親水コロイドを含まない通常の液体(水)の接触角度が60度程度であるのに対し、改質剤製造装置10を用いて製造された改質剤の接触角度は2度程度であり、両者間には著しい違いがあることが分かる。
【0029】
このような理由により、改質剤製造装置10を用いて製造された改質剤は、例えば、放射性物質にも浸透して改質する作用を有する。また、この改質剤は、水そのものも微細化されることによって親水性が増大しているため、例えば、ペイント、シンナー、塩化ビニル、ゴムなどに浸透させることによって不燃性の素材を形成することが可能である。
【0030】
そのほか、改質剤製造装置10を用いて製造された改質剤を水と混合して、厨房や調理現場などの排水経路(例えば、下水道管など)に流すと、恰も人為的に清掃したかのように、下水道管内を清浄化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、金属シリコン、硼砂、苛性ソーダ及び水を原料として、コンクリートの強化剤あるいは耐火材料の性能向上剤などとして使用可能な改質剤の製造技術として、様々な産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 改質剤製造装置
11 原料容器
12 反応槽
13 給水経路
15 投入経路
16 加熱手段
18 噴射手段
19 溢流経路
20 補助タンク
21 還流経路
22 レール
23 発熱筒
24 バーナ
25 反応槽加温用ケーシング
25a 区画室
25b 隔壁
25c 通気口
26,30 排気筒
27 排気経路
28 出入口
29 蓋体
31 台車
32 開閉手段
B 硼砂
N 苛性ソーダ
MS メタルシリコン
P ポンプ
R 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルシリコンを収容した原料容器を収容可能な密閉性を有する反応槽と、前記反応槽内に注水する給水経路と、前記反応槽に苛性ソーダ及び硼砂を入れる投入経路と、前記反応槽内の収容物を昇温させる加熱手段と、前記反応槽内に形成される液体を前記原料容器内のメタルシリコンに向かって吹き付ける噴射手段と、を備えたことを特徴とする改質剤製造装置。
【請求項2】
前記反応槽内に形成される液体を溢流経路を経由して貯留する補助タンクと、前記補助タンク内に貯留された液体を前記反応槽内へ送り込む還流経路を設けた請求項1記載の改質剤製造装置。
【請求項3】
前記加熱手段として、前記反応槽内に当該反応槽内と区画された状態で配置された発熱筒と、前記発熱筒内に向かって火炎放射するバーナと、前記発熱筒内から前記反応槽外に排出される高温気体を前記反応槽の外面に沿って流動させる反応槽加温用ケーシングと、を設けた請求項1記載の改質剤製造装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の改質剤製造装置を用いて製造した改質剤であって、微細化された無機高分子の親水コロイド及び微細化された水分子を含むことを特徴とする改質剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−82586(P2013−82586A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224195(P2011−224195)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(508106666)