説明

改質燃料油の製造方法および装置

【課題】燃料油を改質して実用レベルでの燃料消費量を減らすことが可能な改質燃料油の製造方法および装置の提供。
【解決手段】対地絶縁され、改質する燃料油5が入れられる容器6と、容器6内の燃料油5に対して定時的に電子をチャージする電子発生装置7とを備え、対地絶縁した容器6内に入れられた燃料油5が定時的に電子をチャージされることによって、燃料油5内の不飽和炭素が少なくなり、単結合のみで構成される飽和炭素が増える。そして、このような飽和炭素が増えることによって、燃料油内に含まれる水素原子の数が増えるので、燃料油の爆発力が増し、燃料油の消費量が減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、船舶、航空機、機関車、発電機などの動力用、ストーブなどの暖房用や、ボイラなどの工業用等として使用されるガソリン、重油、軽油や灯油等の燃料油を改質した改質燃料油の製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエネルギ問題は、今後の人類社会の構成や地球環境的に非常に大切な課題である。特に、ガソリンを始めとする石油加工燃料の消費量を低減することは、環境保護やエネルギ保存に大いに貢献し、企業、個人のコスト削減にも繋がることである。しかし、自動車、船舶や航空機等の移動機械の動力源である内燃機関自体の機械的構造を改善し、その効率を上げるためには、莫大な設備投資や研究開発期間を要する。
【0003】
また、既に運用されているこれらの移動機械の内燃機関の構造を改善することは難しいことから、例えば特許文献1に記載のように、3mm〜5mm程度の小間隔を介してアース体と対向する印加体に、概ね2000〜10000ボルトの微電流の電荷を付与し、この小間隔に燃料油や潤滑油等を通過させることにより、この燃料油や潤滑油等に電気的刺激を与えて、その粘性や表面張力等の諸物性を改良変化させる試みがなされている。
【0004】
【特許文献1】特開平2−238090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように特許文献1に記載の方法によれば、燃料油や潤滑油の粘性および表面張力の物性は改良される。また、粘性および表面張力が改良された潤滑油では、潤滑性能が向上されたことを容易に体感できると思われる。しかしながら、燃料油の場合、粘性および表面張力が改良されたとしても、これらの粘性および表面張力と燃焼状態との関係が不明であり、実用レベルでどの程度の効果が得られるのかは分からない。
【0006】
そこで、本発明においては、自動車、船舶、航空機、機関車、発電機などの動力用、ストーブなどの暖房用や、ボイラなどの工業用等として使用されるガソリン、重油、軽油や灯油等の燃料油を改質して実用レベルでの燃料消費量を減らすことが可能な改質燃料油の製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の改質燃料油の製造方法は、対地絶縁した容器内に燃料油を入れ、この燃料油に対して定時的に電子をチャージすることを特徴とする。また、本発明の改質燃料油の製造装置は、対地絶縁され、改質する燃料油が入れられる容器と、容器内の燃料油に対して定時的に電子をチャージする電子発生装置とを備えたものである。
【0008】
これらの発明によれば、対地絶縁した容器内に入れられた燃料油が定時的、すなわち一定時間、電子をチャージされることによって、燃料油内の不飽和炭素が少なくなり、単結合のみで構成される飽和炭素が増える。ここで、飽和炭素とは、炭化水素に含まれる炭素のうち、単結合のみで結合している炭素原子をいい、不飽和炭素とは、炭化水素に含まれる炭素のうち、二重結合などの不飽和結合を有する炭素原子をいう。そして、このような飽和炭素が増えることによって、燃料油内に含まれる水素原子の数が増えるので、燃料油の爆発力あるいは燃焼力が増し、燃料油の消費量が減少する。
【0009】
ここで、電子チャージによる燃料油内の不飽和炭素の飽和炭素化について説明すると、図1(a)に示すように、通常の燃料油は、鎖状で二重結合を有した不飽和炭素1aと飽和炭素1bが混在した状態である。このような燃料油に対して電子をチャージすると、同図(b)に示すように、不飽和炭素1aの二重結合が切れ、大気中の水蒸気に含まれる水素原子が結合して飽和炭素1bへと変化する。このように燃料油に対して電子をチャージすることで、不飽和炭素1aの割合が減少し、飽和炭素1bへと変化した結果、燃料油内に含まれる水素原子の数が増えるので、燃料油の爆発力あるいは燃焼力が増し、この燃料油を燃焼させた際の燃料油の消費量が減少する。
【0010】
なお、燃料油に対する電子のチャージは、1時間以上、より好ましくは4時間以上、さらに好ましくは12時間以上行うことが望ましい。燃料油がガソリンの場合、不飽和炭素の不飽和結合の鎖が短く、不飽和炭素原子に水素原子が結合しやすいので1時間以上の電子チャージであれば不飽和炭素の飽和炭素化が認められるが、燃料油の消費量の減少を実感するためには4時間以上の電子チャージを行うことが望ましい。12時間未満の電子チャージでは増加した飽和炭素が元の状態へと戻りやすいので、12時間以上の電子チャージを行うことが望ましく、12時間以上の電子チャージでは、改質効果を長期に渡って維持することができるので、改質燃料油の長期保存が可能となる。なお、不飽和炭素の不飽和結合の鎖が長い重油、灯油や軽油の場合には、1時間以上の電子チャージにより不飽和炭素の飽和炭素化は認められるが、改質効果を長期に渡って維持するためには15時間以上の電子チャージを行うことが望ましい。なお、この電子チャージの時間は改質する燃料油の量には無関係である。
【0011】
また、燃料油に対する電子のチャージは、30ボルト以上、より好ましくは1000ボルト以上の電圧を印加して発生させた電子により行うことが望ましい。30ボルト以上の電圧を印加して発生させた電子により定時的に電子チャージを行うことで、不飽和炭素の不飽和結合を解き、不飽和炭素原子に水素原子を結合させて飽和炭素化することができるが、1000ボルト未満での電子チャージでは増加した飽和炭素が元の状態へと戻りやすいので、1000ボルト以上での電子チャージを行うことが望ましく、1000ボルト以上での電子チャージでは、改質効果を長期に渡って維持することができるので、改質燃料油の長期保存が可能となる。なお、1000ボルトの場合には400時間以上、3000ボルトの場合には100時間以上、22000ボルトの場合には12時間以上、定時的に電子チャージすることで、燃料油内に含まれる水素原子を十分に増やし、燃料油の爆発力あるいは燃焼力を増すことが可能である。
【0012】
また、燃料油に対する電子のチャージは、一旦電子をチャージした後、所定時間放置後、再度電子をチャージすることにより行うことが望ましい。一旦電子チャージ後、所定時間放置することにより、不飽和炭化水素が飽和炭化水素化した後に燃料油と馴染んで安定する。その後、再度電子チャージすることで、電子チャージの効果が倍増する。なお、3回以上電子チャージを繰り返すと、無駄に電子チャージすることになり効率が落ちるので、電子チャージは2回とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
(1)対地絶縁した容器内に燃料油を入れ、この燃料油に対して定時的に電子をチャージした燃料油は、炭素原子に結合する水素原子の数が増え、燃料油の爆発力あるいは燃焼力が増し、燃料油の消費量を減らすことが可能となる。また、爆発力あるいは燃焼力が増すことで完全燃焼も助長されるので、不完全燃焼により排出される一酸化炭素およびすす状炭素の量を減らすことができる。
【0014】
(2)燃料油に対する電子のチャージを、1時間以上行うことで、ガソリン、灯油や軽油などの燃料油の種類に関わらず、飽和炭素を増やして、燃料油の爆発力あるいは燃焼力を増すことができるので、燃料油の消費量を減らすことができる。特に、12時間以上の電子チャージでは、改質効果を長期に渡って維持することができるので、改質燃料油の長期保存が可能となる。
【0015】
(3)燃料油に対する電子のチャージを、30ボルト以上の電圧を印加して発生させた電子により行うことで、電子チャージの時間に関わらず、確実に不飽和炭素の不飽和結合を解き、不飽和炭素原子に水素原子を結合させて十分に水素原子を増やし、燃料油の爆発力あるいは燃焼力を増すことが可能となる。特に、1000ボルト以上での電子チャージでは、改質効果を長期に渡って維持することができるので、改質燃料油の長期保存が可能となる。
【0016】
(4)燃料油に対する電子のチャージは、一旦電子をチャージした後、所定時間放置後、再度電子をチャージすることにより行うことにより、電子チャージの効果を倍増することができ、さらに燃料油の爆発力あるいは燃焼力を増して燃料油の消費量を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図2は本発明の実施の形態における改質燃料油の製造装置の概略構成図である。
図2に示すように、本実施形態における改質燃料油の製造装置は、4本の高圧絶縁碍子3によって対地絶縁した架台4と、架台4に固定され、改質を施す燃料油5を入れて静止状態で保持する容器6と、1000〜22000ボルトの高圧静電電圧を印加して電子を発生させる電子発生装置7とを備える。
【0018】
架台4は、高圧絶縁碍子3によって対地絶縁されたステンレス鋼製であって、電子発生装置7の出力端子が接続されている。高圧絶縁碍子3は、例えば日本碍子社製SP30(衝撃耐電圧200KV、注入耐電圧85KV/1分間)を用いることができるが、絶縁の状態に応じてその大きさや数を適宜増減することができる。また、電子発生装置7についても対地絶縁し、地中への漏電を防いで架台4へ効率良く電子がチャージされるようにしている。
【0019】
また、容器6もステンレス鋼製であり、架台4と電気的に導通されている。このような容器6では、電子発生装置7から架台4への電子のチャージによって容器6に電子がチャージされる。なお、本実施形態においては、容器6への電子のチャージがより良好に働くようにするため、架台4をステンレス鋼製としているが、容器6と架台4とが電気的に通電されていれば他の材質としても良い。
【0020】
また、容器6内には、電子が燃料油5に浸透しやすくするため、活性炭にて形成した電極(図示せず。)を設置している。このような活性炭電極によれば、容器6内の燃料油5に含まれる不純物を吸着するため、燃料油5への電子のチャージが効率良く行われるようになる。なお、この活性炭電極は、吸着した不純物を除去するために、一定の時間と処理量で交換する。
【0021】
このような改質燃料油の製造装置では、対地絶縁された架台4に燃料油5が入った容器6を安定させ、電子発生装置7から1000〜22000ボルトの高圧静電電圧を印加して発生させた電子をチャージする。このとき、燃料油5がガソリンであれば最低12時間〜400時間のチャージ時間とする。例えば、1000ボルトの場合には400時間以上、3000ボルトの場合には100時間以上、22000ボルトの場合には12時間以上とする。
【0022】
こうして得られた燃料油5は、図1(a),(b)に示すように不飽和炭素1aが、飽和炭素1bへ変化することで、燃料油内の不飽和炭素1aの割合が減少する。これにより、燃料油5内に含まれる水素原子の数が増え、燃料油の爆発力あるいは燃焼力が増す。こうして改質された改質燃料油は、燃焼させた際の燃料油の消費量が減少する。また、爆発力あるいは燃焼力が増すことで完全燃焼も助長されるので、不完全燃焼により排出される一酸化炭素およびすす状炭素の量を減らすことができる。
【0023】
また、電子発生装置7は、一般に50〜260万円程度のものであるため、本実施形態における燃料油5を得るためのコストは極めて安く、この電子発生装置7のランニングコストも含めて全体のコストを低くすることができる。
【0024】
また、この電子チャージは、一旦電子をチャージした後、所定時間放置後、再度電子をチャージすることにより行うことが好ましく、このように間を置いて電子チャージを再度行うことで、電子チャージの効果を倍増することができ、さらに燃料油の爆発力あるいは燃焼力を増して燃料油の消費量を減らすことができる。
【0025】
また、本実施形態における改質燃料油の製造装置では、改質する燃料油5に高電位水を1cc(燃料油5の0.000025%)程度を添加することも望ましい。高電位水を添加することで、炭素原子に水素原子が結合しやすくなり、電子チャージの時間を短縮することが可能となる。
【0026】
なお、本実施形態においては、燃料油としてガソリンを例にとって説明したが、重油、軽油や灯油等の他の燃料油の場合も同様に容器6内に入れて処理することで改質することが可能であり、改質したこれらの燃料油の燃焼力を増すことができるので、燃料油の消費量を減らすことができる。
【0027】
また、本実施形態においては1000〜22000ボルトの高圧静電電圧を印加して電子を発生させる電子発生装置7を用いたが、30ボルト以上1000ボルト未満のものでも使用することが可能である。また、22000ボルト超のものでも使用することが可能であり、高圧電圧のものであればチャージ時間を短縮することが可能である。
【0028】
また、チャージ時間は1時間以上12時間未満とすることも可能であるが、12時間未満の電子チャージでは増加した飽和炭素が元の状態へと戻りやすい。そのため、前述のように12時間以上の電子チャージを行うことが望ましく、12時間以上の電子チャージでは、改質効果を長期に渡って維持することができるので、改質燃料油の長期保存が可能である。また、400時間超の電子チャージを行うことも可能であるが、この場合、長時間の電子チャージを行っても改質効果はあまり変わらない。
【実施例】
【0029】
本実施形態における改質燃料油の製造装置による燃料油の改質効果について検証した。試料は、11000ボルトでの電子チャージ前後のガソリンを重水素化クロロホルム(CDCl3)の10%溶液にして、1H−NMRスペクトルを測定した。測定に用いた装置は、日本電子株式会社製JNM−EX400型FT−NMR(フーリエ変換型核磁気共鳴)装置であり、測定核は1H(水素原子核)、測定周波数は400MHz、測定温度は20℃であった。
【0030】
なお、1H−NMRスペクトルの解析において、スペクトルに出現する1Hの信号は、芳香族化合物の水素(fa)と不飽和結合の水素(fo)と飽和結合の水素(fp)からなり、このうち、芳香族化合物の信号には溶媒として使用した重水素化クロロホルム(CDCl3)中のクロロホルム(CHCl3)の信号が重なっているため、解析はfaを除外して行った。
【0031】
この測定結果をそれぞれのガソリンを用いて自動車にて走行した際の燃費とともに表1に示した。なお、燃費の測定に使用した自動車は、トヨタ社製カローラII(平成12年式、排気量1300cc)である。
【0032】
【表1】

【0033】
表1から分かるように、電子チャージを行う前のガソリン(比較例1)に比べて、電子チャージを行ったガソリン(実施例1,2)の方がfpの割合が大きくなり、燃費も向上している。また、電子チャージ時間が長いものの方がfpの割合が大きく、燃費も良い。なお、ガソリン全体に占めるfoの割合は極めて少ないが、foの鎖状の二重結合(不飽和結合)がわずかでも飽和結合となることで、爆発力が高まり、燃費は向上する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の改質燃料油の製造方法および装置は、自動車、船舶、航空機、機関車、発電機などの動力用、ストーブなどの暖房用や、ボイラなどの工業用等として使用されるガソリン、重油、軽油や灯油等の燃料油を改質して燃料消費量を減らすことができる改質燃料油を得るための方法および装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】燃料油の分子の結合状態を示す図であって、(a)は処理前の状態を示す図、(b)は処理後の状態を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における改質燃料油の製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1a 不飽和炭素
1b 飽和炭素
3 高圧絶縁碍子
4 架台
5 燃料油
6 容器
7 電子発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対地絶縁した容器内に燃料油を入れ、この燃料油に対して定時的に電子をチャージすることを特徴とする改質燃料油の製造方法。
【請求項2】
前記燃料油に対する電子のチャージは、1時間以上行うことを特徴とする請求項1記載の改質燃料油の製造方法。
【請求項3】
前記燃料油に対する電子のチャージは、30ボルト以上の電圧を印加して発生させた電子により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の改質燃料油の製造方法。
【請求項4】
前記燃料油に対する電子のチャージは、一旦電子をチャージした後、所定時間放置後、再度電子をチャージすることにより行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の改質燃料油の製造方法。
【請求項5】
対地絶縁され、改質する燃料油が入れられる容器と、
同容器内の燃料油に対して定時的に電子をチャージする電子発生装置と
を備えた改質燃料油の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−222994(P2008−222994A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99796(P2007−99796)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(501448543)
【Fターム(参考)】