説明

改質装置、後処理装置及び画像形成装置

【課題】複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において画像形成が施されることなどによって形成されたシート状の被加工物の被加工面にプラズマを接触させて同面の改質を行う改質装置であってプラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減する改質装置、この改質装置を備えた、かかる画像形成装置又はかかる画像形成装置の後処理装置の提供。
【解決手段】シート状の被加工物Sの被加工面に対向するように配置され、同被加工面に接触して同被加工面の改質を行うためのプラズマを、同被加工面に向けて形成するための放電電極51と、放電電極51によって形成されるプラズマの前記被加工面に接触する範囲及び/又は強度を制御するプラズマ制御手段91A、91Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において画像形成が施されることなどによって形成されたシート状の被加工物の被加工面にプラズマを接触させて同面の改質を行う改質装置、この改質装置を備えた、かかる画像形成装置又はかかる画像形成装置の後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂フィルム等の被加工物の被加工面にプラズマを接触させて同面の改質を行う技術が種々提案されている(たとえば、〔特許文献1〕ないし〔特許文献5〕参照)。また、出願人は、先に、特願2008−132446において、インクジェット印刷前の記録用メディアの表面をプラズマにより改質する技術を提案したところである。なお、インク画像定着のためにプラズマを用いる技術も種々提案されている(たとえば、〔特許文献6〕ないし〔特許文献8〕参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3897863号公報
【特許文献2】特開平10−78682号公報
【特許文献3】特許第3870605号公報
【特許文献4】特開2001−64421号公報
【特許文献5】特開2008−12919号公報
【特許文献6】特開2007−106105号公報
【特許文献7】特開2008−296526号公報
【特許文献8】特開2008−297506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、プラズマを用いる技術では、省エネルギーの観点から、プラズマを発生させるエネルギーを極力小さくすることが求められるが、被加工物の大きさよりも大きな範囲にプラズマを発生させたり、被加工面の状態によって定まる必要なプラズマの強度よりも大きな強度でプラズマを発生させたりすると、エネルギーの無駄を生じてしまう。
【0005】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において画像形成が施されることなどによって形成されたシート状の被加工物の被加工面にプラズマを接触させて同面の改質を行う改質装置であってプラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減する改質装置、この改質装置を備えた、かかる画像形成装置又はかかる画像形成装置の後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、シート状の被加工物の被加工面に対向するように配置され、同被加工面に接触して同被加工面の改質を行うためのプラズマを、同被加工面に向けて形成するための放電電極と、前記放電電極によって形成される前記プラズマの前記被加工面に接触する範囲及び/又は強度を制御するプラズマ制御手段とを有する改質装置にある。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の改質装置において、前記プラズマ制御手段は、前記放電電極と、前記放電電極との間で前記プラズマを発生させるためのカウンター電極との少なくとも一方の一部を他方に対して変位するように駆動することで前記範囲を設定する電極間距離設定手段とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の改質装置において、前記放電電極を複数備え、前記プラズマ制御手段は、前記複数の放電電極のうちの少なくとも1つが前記プラズマを発生するように当該放電電極を駆動することで前記範囲及び/又は前記強度を設定する放電電極駆動手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置において、前記プラズマ制御手段は、前記放電電極の駆動強度を制御することで前記強度を設定することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の改質装置において、前記被加工物を搬送して前記放電電極に対して移動させる搬送部材を有し、前記プラズマ制御手段は、前記搬送部材が露出した範囲への前記プラズマの接触を停止することを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の改質装置において、前記プラズマによって改質された前記被加工面に、改質によって可能となった加工を施す加工手段を有することを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、前記改質装置において前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質する後処理装置にある。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を同改質装置において改質する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、シート状の被加工物の被加工面に対向するように配置され、同被加工面に接触して同被加工面の改質を行うためのプラズマを、同被加工面に向けて形成するための放電電極と、前記放電電極によって形成される前記プラズマの前記被加工面に接触する範囲及び/又は強度を制御するプラズマ制御手段とを有する改質装置にあるので、プラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができる改質装置を提供することができる。
【0015】
前記プラズマ制御手段は、前記放電電極と、前記放電電極との間で前記プラズマを発生させるためのカウンター電極との少なくとも一方の一部を他方に対して変位するように駆動することで前記範囲を設定する電極間距離設定手段とを有することとすれば、改質を要する範囲に対応して放電電極カウンター電極との間の距離を設定することでプラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができる改質装置を提供することができる。
【0016】
前記放電電極を複数備え、前記プラズマ制御手段は、前記複数の放電電極のうちの少なくとも1つが前記プラズマを発生するように当該放電電極を駆動することで前記範囲及び/又は前記強度を設定する放電電極駆動手段とを有することとすれば、改質を要する範囲及び/又は強度で放電電極を駆動することでプラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができる改質装置を提供することができる。
【0017】
前記プラズマ制御手段は、前記放電電極の駆動強度を制御することで前記強度を設定することとすれば、改質を要する強度で放電電極を駆動することでプラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができる改質装置を提供することができる。
【0018】
前記被加工物を搬送して前記放電電極に対して移動させる搬送部材を有し、前記プラズマ制御手段は、前記搬送部材が露出した範囲への前記プラズマの接触を停止することとすれば、改質に寄与しないプラズマの形成を行わないことでプラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができるとともに搬送部材の耐久性を向上した改質装置を提供することができる。
【0019】
前記プラズマによって改質された前記被加工面に、改質によって可能となった加工を施す加工手段を有することとすれば、プラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができるとともに改質によって可能となった加工も施すことで利便性を向上した改質装置を提供することができる。
【0020】
本発明は、かかる改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、前記改質装置において前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質する後処理装置にあるので、プラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができる改質装置を備え、後処理として高いエネルギー効率で改質を行った出力物を得ることができる後処理装置を提供することができる。
【0021】
本発明は、かかる改質装置を有し、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を同改質装置において改質する画像形成装置にあるので、プラズマを発生させるためのエネルギーの無駄を低減し、高いエネルギー効率で改質を行うことができる改質装置を備え、画像形成と併せて高いエネルギー効率で改質を行った出力物を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用した改質装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した改質装置に備えられているカウンター電極の配設態様を示した概略平面図である。
【図3】図1に示した改質装置に備えられている電極間距離設定手段を示した概略正面図である。
【図4】図1に示した改質装置に備えられた各放電電極ローラから沿面放電によるプラズマが被加工物に接触し改質を行っている様子を示した概略拡大正面図である。概念図である。
【図5】図1に示した改質装置において改質が行われる被加工物を出力する装置の一例である画像形成装置の概略正面図である。
【図6】図5に示した画像形成装置から出力された被加工物を図1に示した改質装置で改質するときの様子を示した概略正面図である。
【図7】図5に示したのと同様の構成の画像形成装置及びこの画像形成装置に装着された、本発明を適用した改質装置を備えた後処理装置の概略正面図である。
【図8】本発明を適用した改質装置を備えた画像形成装置の構成を示す概略正面図である。
【図9】加工手段を備えた改質装置の一部を拡大した概略正面図である。
【図10】図1に示したのと異なる構成の改質装置の一部の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に本発明を適用したスタンドアロン型の改質装置の概略を示す。改質装置100は、一般にコピーや印刷等に用いられる普通紙、コート紙の他、OHPシートを含む樹脂フィルムや、カード、ハガキ等の厚紙、封筒等の何れをもシート状言い換えると枚葉状の被加工物Sとし、その表面である被加工面の改質を行うことが可能である。
【0024】
改質装置100において改質を行う被加工面はその少なくとも一部が疎水性であって、この疎水性の被加工面を改質により親水化することを、改質装置100の改質は主目的としている。また、改質装置100は、改質された被加工物Sが、改質によって可能となった加工、たとえばニスの塗工を施されることに供されるようにするために、改質を行う。
【0025】
改質装置100は、かかる改質を行う改質部10と、改質部10を収容した本体99と、本体99内に備えられ本体99内の空気を本体99外に排出する排気手段としての排気装置である排気部20と、本体99外から改質部10に向けて中央揃えで被加工物Sを供給する給送手段としての給送装置である給送部30と、本体99外に設けられ改質部10において改質された被加工物Sを積載する積載手段としての積載装置である積載部40と、改質装置100の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段91A、91Bと、給送部30から被加工物Sを改質部10に供給して改質を開始するための指示等を行う図示しない操作パネルとを有している。
【0026】
改質部10は、給送部30から給送されてきた被加工物Sを改質しながら積載部40に向けて搬送するための搬送手段11と、搬送手段11によって搬送されている被加工物Sの被加工面に改質を施すための改質手段50とを有している。
【0027】
搬送手段11は、給送部30から給送されてきた被加工物Sを改質しながら積載部40に向けて搬送するために同図において反時計方向に回転する被加工物搬送部材としての搬送部材たる無端のベルトである搬送ベルト12と、搬送ベルト12を巻き掛けられた、駆動部材である駆動ローラ13と、駆動ローラ13とともに搬送ベルト12を張架する張架ローラ14、15と、駆動ローラ13を回転駆動する駆動源としてのモータ16を備えた駆動手段17とを有している。
【0028】
図2に示すように、搬送ベルト12は、同図において紙面に沿った上下方向であり、図1に垂直な方向である幅方向において、改質装置100で改質を行う最大サイズであるA4横サイズの被加工物Sの幅よりも大きな幅を有しており、たとえばポリイミド等の絶縁体で構成されている。
【0029】
図1に示すように、駆動ローラ13は、駆動手段17によって回転駆動されることにより、搬送ベルト12を同図において反時計方向に回転駆動する。モータ16は、回転速度が可変である。よって、これに応じて、搬送ベルト12の回転速度も可変に構成されている。搬送ベルト12は、最大時において線速500mm/sec程度の速度で回転する。
張架ローラ14、15は、駆動ローラ13によって回転駆動される搬送ベルト12に従動回転する。
【0030】
張架ローラ14は、搬送ベルト12に、被加工物Sの搬送に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラたる機能を有し、搬送ベルト12が撓むのを防止し、搬送ベルト12を滑らかに移動させ改質ムラを抑制しているとともに搬送ベルト12の移動による偏向を抑制しているが、張架ローラ15等、搬送ベルト12を巻き掛けた他のローラをテンションローラとしても良い。ただしテンションローラは必須ではない。
【0031】
搬送ベルト12は、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分においてほぼ水平方向を向いており、この部分の上面上に被加工物Sを搬送する。搬送ベルト12を巻き掛けた駆動ローラ13及び張架ローラ14、15は、接地されている。これによって絶縁体であるベルトの静電気帯電が抑制される。
【0032】
改質手段50は、搬送ベルト12によって搬送されている被加工物Sの被加工面に対向するように、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分における搬送ベルト12に対向して配置され、かかる被加工面に接触してこの被加工面の改質を行うためのプラズマを、この被加工面に向けて形成するためのローラ状の放電電極である放電電極ローラ51と、放電電極ローラ51との間でかかるプラズマを発生させるための対向電極としてのカウンター電極52を備えた対向電極部53とを有している。
【0033】
改質手段50はまた、放電電極ローラ51を回転自在に支持した支持部材54と、放電電極ローラ51を搬送ベルト12、対向電極部53に向けて付勢する付勢部材としての押圧バネであるバネ55と、かかるプラズマを形成するための電圧を放電電極ローラ51に印加するための電源である高圧電源56とを有している。
【0034】
改質手段50はまた、改質装置100において改質を行う被加工物Sのサイズを検知する第1の検知手段であるサイズ検知手段としてのサイズ検知センサ71と、改質装置100において改質を行う被加工物Sにたとえば後述する画像形成装置200(図5参照)等によって画像が形成されている場合におけるこの画像の状態を検知する第2の検知手段である画像状態検知手段としての画像状態検知センサ72とを有している。
【0035】
放電電極ローラ51は、互いに同一径の金属ローラであって、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分における搬送ベルト12の移動方向に沿って複数備えられている。図2に示すように、各放電電極ローラ51は、搬送ベルト12の幅方向に一致する、かかる移動方向に垂直な方向に延在しており、互いに平行に配設されている。各放電電極ローラ51は、搬送ベルト12の幅方向において搬送ベルト12の配設領域と一致するように配設されている。放電電極ローラ51は、金属部分が露出しているが、誘電体あるいは絶縁体で被覆するようにしても良い。
【0036】
図1に示すように、対向電極部53は、カウンター電極52の他に、カウンター電極52の上面を覆うとともに搬送ベルト12の下面を支持するように配設され、カウンター電極52の絶縁層として機能するガラス板57と、カウンター電極52及びガラス板57を下方から支持した平板状の絶縁体58と、カウンター電極52及び絶縁体58を放電電極ローラ51に近接あるいは放電電極ローラ51から接離するように駆動する電極間距離設定手段としての対向電極駆動手段であるカウンター電極駆動手段80とを有している。
【0037】
カウンター電極52は、アルミニウム製の平板であってアースされている。図2に示すように、カウンター電極52は、搬送ベルト12の移動方向及びこれに垂直な方向において複数の放電電極ローラ51が配設されている領域を含むように配設されている。より詳細には、カウンター電極52は、幅方向においてA3縦サイズ及びA4横サイズよりも僅かに大きな幅を有する第1のカウンター電極部52aと、幅方向においてB5横サイズよりも僅かに大きな幅を有する第2のカウンター電極部52bと、幅方向においてA4縦サイズよりも僅かに大きな幅を有する第3のカウンター電極部52cと、幅方向においてB5縦サイズよりも僅かに大きな幅を有する第4のカウンター電極部52dとを有している。言い換えると、カウンター電極52は、第1のカウンター電極部52aと、第2のカウンター電極部52bと、第3のカウンター電極部52cと、第4のカウンター電極部52dとに分割されている。
【0038】
本形態では、被加工物Sの給送が中央揃えで行われるため、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dは何れも中央揃えで配置されており、それぞれ、A3縦及びA4横サイズ、B5横サイズ、A4縦サイズ、B5縦サイズの被加工物Sの通過領域を含む位置に配置されている。第4のカウンター電極部52dは方形の平板状であり、第3のカウンター電極部52cは第4のカウンター電極部52dを受け入れる方形の孔を有する平板状であり、第2のカウンター電極部52bは第3のカウンター電極部52cを受け入れる方形の孔を有する平板状であり、第1のカウンター電極部52aは第2のカウンター電極部52bを受け入れる方形の孔を有する平板状である。最小サイズの第4のカウンター電極部52dは、搬送ベルト12の移動方向にてすべての放電電極ローラ51が配設されている領域を含む。
【0039】
図示を省略するが、絶縁体58も、カウンター電極52と同じように分割され、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dのそれぞれと同一形状の部分を有している。絶縁体のこれら各部分はそれぞれ、形状が一致した第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dの何れかと一体化されている。
第4のカウンター電極部52dとガラス板57とは一体化された状態で本体99に固定されている。
【0040】
図3に示すように、カウンター電極駆動手段80は、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cのそれぞれに一体化された絶縁体58の下面側において、当該絶縁体58及び当該絶縁体58と一体化された第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cのうちの一つを本体99に対して揺動可能に支持した一対のアーム部材81と、一対のアーム部材81の一方の側面に当接した偏心カム82と、偏心カム82を回転駆動する、制御手段91Bによって駆動が制御されるモータ83と、一対のアーム部材81の他方と本体99とを連結し一方のアーム部材81が偏心カム82に当接した状態を維持させる引っ張りバネ84とを有している。
【0041】
一対のアーム部材81、偏心カム82、モータ83は、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52d及びこれらに一体化された絶縁体58のそれぞれに対して備えられている。
【0042】
このような構成のカウンター電極駆動手段80において、制御手段91Bによってモータ83の1つに通電され当該モータ83が回転すると、これに伴って偏心カム82が回転し、一対のアーム部材81が同期して回転して、当該絶縁体58及びこれに一体化されている第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cのうちの1つが放電電極ローラ51に向けて、あるいは放電電極ローラ51から離間するように、変位する。なお、カウンター電極駆動手段80は、カウンター電極52が本形態のように複数に分割されている場合に、そのうちの少なくとも1つを放電電極ローラ51に対して変位するように駆動するものであって、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dのすべてを放電電極ローラ51に対して変位するように駆動するものであっても良い。
【0043】
制御手段81Bは、同図(a)に示すように、偏心カム82の小径部がアーム部材81に当接し、同図において図示していないガラス板57にカウンター電極52(第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dのうちの1つ)が当接して当該カウンター電極52が放電電極ローラ51に近接している状態と、同図(b)に示すように、偏心カム82の大径部がアーム部材81に当接し、同図において図示していないガラス板57からカウンター電極52(第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dのうちの当該1つ)が離間して当該カウンター電極52が放電電極ローラ51から離間している状態との何れかとなるように、モータ83を駆動する。
【0044】
同図(a)に示している状態では、放電電極ローラ51と当該カウンター電極52(第1のカウンター電極52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cのうちの1つ)との距離が、後述するようにプラズマが形成される距離となるが、同図(b)に示している状態では、放電電極ローラ51と当該カウンター電極52(第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cのうちの当該1つ)との距離が、後述するプラズマが形成されることはないとともに、放電電極ローラ51から当該カウンター電極52へ向けた放電が生じない距離となる。
【0045】
なお、カウンター電極駆動手段80は、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cのそれぞれを独立して放電電極ローラ51に接離する方向に変位させ、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cが放電電極ローラ51から離間したときに、それらの距離がかかるプラズマ及び放電を生じさせることのない距離となるものであれば、本形態の構成に限らず、どのような構成であっても良い。
【0046】
図1に示すように、支持部材54は、各放電電極ローラ51に対応して、複数備えられている。各支持部材54は、本体99に固定されており、各放電電極ローラ51に備えられ放電電極ローラ51の回転中心をなす軸部を回転自在に支持した図示しない導電性の軸受けと、各軸受けを上下方向すなわち搬送ベルト12、対向電極部53に接離する方向に摺動自在に支持した、同方向に延在した図示しない長孔を備えた導電性の図示しない軸受け支持部材とを有している。軸受けと軸受け支持部材との間には導電性グリスが塗布され、軸受けが長孔により軸受け支持部材に対して摺動しても、軸受け支持部材と放電電極ローラ51とが軸受けを介して導通が良好に保たれるようになっている。
【0047】
バネ55は、軸受けを介して各放電電極ローラ51を搬送ベルト12、対向電極部53に向けて付勢するように複数備えられており、各放電電極ローラ51を搬送ベルト12又はこれによって搬送されている被加工物Sの被加工面に当接させる。よって、各放電電極ローラ51は、搬送ベルト12又はこれによって搬送されている被加工物Sの被加工面の移動に連れ回りする。この連れ回りにより、各放電電極ローラ51は、放電による偏磨耗が低減される。
【0048】
高圧電源56は、交流電源からのパルスをトランスで昇圧し、高圧パルスの出力を行うものであり、各軸受け支持部材に電気的に独立した状態で接続され、各軸受け支持部材、各軸受けを介して各放電電極ローラ51に計最大500W出力相当のパルス状の高電圧を印加可能である。なお、各バネ55も、各軸受け支持部材、各軸受け、各放電電極ローラ51と同電位に保たれる。高圧電源56は、制御手段91Aによって各放電電極ローラ51に対する出力を独立して制御されるようになっている。この点については後に詳述する。
【0049】
サイズ検知センサ71は、給送部30に配設され、改質装置において改質を行う被加工物Sのサイズを検知して制御手段91A、91Bに入力する。サイズ検知センサ71は、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分における搬送ベルト12の移動方向に沿った長さ方向における被加工物Sのサイズ及びこれに垂直な幅方向における被加工物Sのサイズを検知可能である。
【0050】
画像状態検知センサ72は、いわゆるスキャナと同様の構成、機能を有するセンサであって、給送部30から改質部10に向けて給送されている被加工物Sの被加工面側に対向するように配設され、同被加工面に画像が形成されている場合におけるこの画像の状態、具体的にはこの画像が文字画像であるか、写真画像であるか、これらの両者であるかや、この画像の位置、面積、濃度、被加工物Sの面積に占める面積率を検知して制御手段91A、91Bに入力する。この点、画像状態検知センサ72は、画像種類検知手段、画像位置検知手段、画像面積検知手段、画像濃度検知手段、画像面積率検知手段として機能する。
【0051】
このような構成の改質手段50においては、高圧電源56によって放電電極ローラ51に高電圧が印加されると、カウンター電極52のうちの第1のカウンター電極部52a及び図3(a)に示した位置を占めているものとの間で放電が生じ、そのカウンター電極52に向けてプラズマが形成される。
【0052】
このようにして、図4に示すように、放電電極ローラ51から搬送ベルト12あるいはこれによって搬送されている被加工物Sに向けて沿面放電によるプラズマが形成される。沿面放電によるプラズマは、被加工物Sの被加工面に対する接触面積が大きいため、被加工面の改質のムラが抑制され、被加工面の改質の均一性が高い精度で確保される。かかる放電、プラズマを生じさせるには、カウンター電極側が誘電体あるいは絶縁体によって被覆されていることを要するため、搬送ベルト12を絶縁体で構成することはこれに適っている。この理由に加えて、さらに、被加工物Sが導電性物質を含む場合には、局所的な放電集中を回避するために、放電電極ローラ51を絶縁体で被覆しても良い。
【0053】
放電電極ローラ51が搬送ベルト12の移動方向に沿って複数配置されていること、及び、各放電電極ローラ51が搬送ベルト12又はこれによって搬送されている被加工物Sの被加工面に連れ回りすることで沿面放電やプラズマを形成する部位が変化することも、被加工面の改質の均一性を向上している。なお、放電電極ローラ51の数は、本形態のような4つに限られるものでなく、被加工面の改質の均一性を担保しつつエネルギーの損失が抑制されるように適宜設定される。また、張架ローラ15と駆動ローラ13との間で張架されている部分における搬送ベルト12のその移動方向における長さは、同方向における被加工物Sの長さにかかわらず、放電電極ローラ51からの沿面放電やプラズマによる改質作用が働く領域の同方向における長さ以上であればよい。
【0054】
高圧電源56による各放電電極ローラ51への印加電圧は、制御手段91Aによって独立して制御されるが、かかる沿面放電を生じプラズマを生じさせる場合、かかる印加電圧はこれに十分な大きさとされる。また、かかる印加電圧によって生じるプラズマにより被加工面に与えられるエネルギーの密度は、被加工物Sが搬送ベルト12によって搬送されその被加工面がすべての放電電極ローラ51との対向領域すなわち沿面放電によるプラズマの影響を受ける範囲を通過したときに、かかる被加工面の改質が完了する大きさであって、且つ、改質に必要な大きさよりも過大となることのない大きさとされている。
【0055】
被加工物Sは、改質手段50を経る際に、かかる放電、プラズマによって、空気中の成分や被加工物S自体に含まれている成分によって形成された種々の親水性官能基等の基が被加工面に形成されて表面エネルギーが高くなり、たとえば被加工面に疎水性を有する部分を含んでいる場合にかかる部分が親水化されることにより、被加工面の改質が行われる。
【0056】
排気部20は、本体99内の空気を本体99外に排出し換気を行うことで、かかる沿面放電やプラズマによって生じた、オゾン等の気体生成物や熱を排出するものである。排気部20は、このような排気を行うための空気流を形成する空気流形成手段としてのファン21を備えた空気流形成部22と、ファン21によって形成された本体99内の空気流により本体99内の空気が空気流形成部22に至るまでにかかる空気中のオゾンなど、本体99外にそのまま排気すると環境に与え得る成分を除去する浄化部23とを有している。
【0057】
浄化部23は、かかる空気の流路に沿って、MgO触媒を用いた第1のフィルタとしての複数のオゾンフィルタ24と、活性炭繊維触媒を用いた第2のフィルタとしての複数のオゾンフィルタ25とを有している。浄化部23は、本体99内で発生する気体生成物に応じて、オゾン以外の成分を除去する他のフィルタ等を備えていても良い。
【0058】
給送部30は、本体99外に配設され複数枚の被加工物Sを積載した、サイズ検知センサ71を配設されたトレイ31と、トレイ31上に積載された被加工物Sを改質部10に向けて1枚ずつ送り出す図示しない給送手段と、本体99内に配設され給送手段によって送り出された被加工物Sの先端位置を揃えるようにその自重で搬送ベルト12に当接し搬送ベルト12に従動回転する先端揃えローラ32とを有している。
【0059】
積載部40は、本体99外に配設され改質部10において改質された被加工物Sを多数枚積載可能な積載トレイ41を有している。
積載トレイ41に積載された被加工物Sは、改質によって可能となった加工に供される。たとえば、改質前に被加工面が疎水性の場合にはニスの塗工を施してもニスがはじかれて光沢ムラが生じるようになっていても、改質を行いかかる疎水性の部分が親水化されると、ニスが被加工面の全体になじみ、光沢ムラが防止ないし抑制され質感が向上するとともに、耐久性も向上する。
【0060】
制御手段91A、91Bは、実際には一体であるが、図示及び説明の便宜上、分けた状態で図示及び説明をしている。ただし、制御手段91A、91Bは別体で構成しても良い。
制御手段91A、91Bは何れも、放電電極91によって形成されるプラズマの被加工面に接触する範囲すなわちエリア及び強度を制御するプラズマ制御手段として機能するようになっている。これは、プラズマを用いる技術では、省エネルギーの観点から、プラズマを発生させるエネルギーを極力小さくすることが求められるという観点から、被加工物Sの大きさよりも大きな範囲にプラズマを発生させたり、被加工面の状態によって定まる必要なプラズマの強度よりも大きな強度でプラズマを発生させたりすることを防止ないし抑制し、エネルギーの無駄を生じることを防止ないし抑制するためである。
【0061】
そのため、プラズマ制御手段として機能する制御手段92Aは、サイズ検知センサ71によって検知された被加工物Sの長さ方向のサイズに応じて、各放電電極ローラ51のうちの少なくとも1つがプラズマを発生するように高圧電源56を駆動することで、長さ方向においてプラズマが被加工面に接触する範囲を制御し、改質に必要なエネルギーを被加工面に与える。プラズマ制御手段として機能する制御手段92Aは、これに代えて、あるいはこれとともに、サイズ検知センサ71によって検知された被加工物Sの長さ方向のサイズに応じて、各放電電極ローラ51のうちの少なくとも1つがプラズマを発生するように高圧電源56を駆動することで、プラズマが被加工面に接触する強度を制御し、改質に必要なエネルギーを被加工面に与えるようにしてもよい。これらの制御を行うことに関し、高圧電源56は、複数の放電電極ローラ51のうちの少なくとも1つがプラズマを発生するように放電電極ローラ51を駆動することで、プラズマが、トータルで被加工面に接触する範囲及び/又は強度を設定する放電電極駆動手段として機能する。
【0062】
さらに、プラズマ制御手段として機能する制御手段92Aは、高圧電源56が放電電極駆動手段として機能するこれらの制御に代えて、あるいはこれらの制御とともに、サイズ検知センサ71によって検知された被加工物Sの長さ方向のサイズに応じて、複数の放電電極ローラ51の少なくとも1つによって形成されるプラズマの強度を変えるように高圧電源56による放電電極ローラ51の駆動強度を設定することで、プラズマが被加工面に接触する強度を制御し、改質に必要なエネルギーを被加工面に与えるようにしてもよい。なおこの場合は放電電極ローラ51が改質手段50に1つのみ備えられていても良い。またこの場合のプラズマの強度は0を含んでいてもよく、この場合には上述の制御と一部一致する。
【0063】
プラズマ制御手段として機能する制御手段92Aによるこれらの制御を行う条件としては、サイズ検知センサ71によって検知された被加工物Sの長さ方向のサイズに代えて、あるいはこれとともに、画像種類検知手段、画像位置検知手段、画像面積検知手段、画像濃度検知手段、画像面積率検知手段として機能する画像状態検知センサ72によって検知される、画像種類、画像位置、画像面積、画像濃度、画像面積率の何れか1つあるいは適当な複数の組み合わせを用いても良い。たとえば、画像種類に関しては、文字画像の場合と、文字及び写真画像の場合と、写真画像の場合とでは、この順で被加工面に与えるエネルギーが増加するように放電電極ローラ51を駆動する。また、画像面積、画像濃度に関しては、これが大きいほうが被加工面に与えるエネルギーが増加するように放電電極ローラ51を駆動する。また画像位置に関しては、放電電極ローラ51を駆動するタイミングの制御に用いる。
【0064】
高圧電源56による各放電電極ローラ51への電圧印加から放電開始あるいはプラズマの形成までの応答性は数msecであって極めて高いことから、各放電電極ローラ51と搬送ベルト12との間に被加工物Sが存在せず搬送ベルト12が露出した状態となる場合には、搬送ベルト12が露出した範囲に沿面放電あるいはプラズマが作用することのないように、プラズマ制御手段として機能する制御手段92Aは、給送部30からの被加工物Sの給送タイミングに合わせた適切なタイミングで高圧電源56による各放電電極ローラ51への電圧印加を停止しかかる露出した範囲における搬送ベルト12へのプラズマの接触を停止するようになっており、消費エネルギーの抑制、搬送ベルト12の劣化抑制を成している。
【0065】
プラズマ制御手段として機能する制御手段91Bは、サイズ検知センサ71によって検知された被加工物Sの幅方向のサイズに応じてカウンター電極駆動手段80を駆動し、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dのうち、かかるサイズに対応した大きさのもののみを図3(a)に示した状態とすることで、幅方向において被加工物Sが通過する、改質に必要な範囲にのみプラズマを形成するようにして、幅方向においてプラズマが被加工面に接触する範囲を制御する。たとえば、かかるサイズがB5縦サイズである場合には第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52cのすべてを図3(b)に示した状態として第4のカウンター電極部52dのみを同図(a)に示した状態とし、また、かかるサイズがB5横サイズである場合には第1のカウンター電極部52aのみを同図(b)に示した状態として第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dを同図(a)に示した状態とし、また、かかるサイズがA3縦サイズあるいはA4横サイズである場合には第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52dのすべてを同図(a)に示した状態とする。この点、第1のカウンター電極部52a、第2のカウンター電極部52b、第3のカウンター電極部52c、第4のカウンター電極部52d、カウンター電極駆動手段80も、プラズマ制御手段として機能する。このとき高圧電源56によって供給するエネルギーも、かかる範囲に合わせて調整する。これによって、エネルギーの無駄が防止ないし抑制される。
【0066】
ただし、画像位置検知手段として機能する画像状態検知センサ72によって検知された画像位置が、幅方向において被加工物Sのサイズよりも小さい場合など、改質を行うべき被加工面の位置が幅方向において被加工物Sのサイズよりも小さい場合には、被加工物Sのサイズによれば同図(a)を占めるべきカウンター電極部であっても、同図(b)に示す位置に変位させ、これに合わせて高圧電源56によって供給するエネルギーを調整することにより、さらに消費エネルギーが抑制される。
【0067】
なお、本形態では、放電電極ローラ51が、搬送ベルト12の移動方向にのみ複数備えられているが、放電電極ローラ51は、これに代えて、あるいはこれとともに、幅方向において複数備えられていてもよく、この場合に、各放電電極ローラ51によるプラズマの形成が高圧電源56により独立して制御されるのであれば、この高圧電源56を、上述と同様に、複数の放電電極ローラ51のうちの少なくとも1つがプラズマを発生するように放電電極ローラ51を駆動することで、プラズマが、トータルで被加工面に接触する範囲及び/又は強度を設定する放電電極駆動手段として機能するように構成することが可能である。
【0068】
この場合、プラズマ制御手段として機能する制御手段91Aに、プラズマ制御手段として機能する制御手段91Bによる上述したのと同様の制御すなわちサイズ検知センサ71によって検知された被加工物Sの幅方向のサイズ、あるいは、画像状態検知センサ72によって検知された画像位置に応じて、高圧電源56を駆動し、幅方向に複数設けられた放電電極ローラ51のうち、かかるサイズに対応した大きさのもののみを駆動することで、幅方向において被加工物Sが通過する、改質に必要な範囲にのみプラズマを形成するようにして、幅方向においてプラズマが被加工面に接触する範囲を設定する制御を行うことが可能である。さらに、幅方向に複数設けられた放電電極ローラ51の、幅方向における各位置について、画像種類検知手段、画像位置検知手段、画像面積検知手段、画像濃度検知手段、画像面積率検知手段として機能する画像状態検知センサ72によって検知される、画像種類、画像位置、画像面積、画像濃度、画像面積率の何れか1つあるいは適当な複数の組み合わせを用いて、各放電電極ローラ51により被加工面に与えるエネルギーの制御を行うことや、さらに画像位置を用いて各放電電極ローラ51を駆動するタイミングの制御を行なうことも可能である。このような制御により、消費エネルギーが抑制される。
【0069】
操作パネルは、給送部30から被加工物Sを改質部10に供給して改質を開始するための指示の他、サイズ検知センサ71、画像状態検知センサ72によって検知される各種情報を入力するように構成することが可能である。この点、操作パネルは、サイズ入力手段、画像状態入力手段、画像種類入力手段、画像位置入力手段、画像面積入力手段、画像濃度入力手段、画像面積率入力手段として機能し得る。なお、操作パネルでは、これを用いて入力した各種情報と、サイズ検知センサ71、画像状態検知センサ72によって検知された各種情報との何れを優先して用いるかを設定可能とすることが望ましい。
【0070】
以上のように構成された改質装置100によって被加工物Sの改質を行うことにより、被加工物Sの加工が良好に行われることとなり、被加工物Sの市場における価値が向上する。改質装置100は、エネルギーの浪費を防止ないし抑制して被加工物Sの改質を行ものであり、また、被加工物Sを搬送しながら改質することで多量の被加工物Sを一括して改質可能となっていることから、使用感が極めて高い。
【0071】
さて、以上述べた改質装置100は、これによって改質を行う被加工物Sを特に限定していないが、被加工物Sとして、たとえば、画像形成装置によって画像形成が行われた出力物を用いることが可能である。
【0072】
画像形成装置には種々あるが、乾式トナー等を用いて画像形成を行う、たとえば複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等の画像形成装置においては、この画像形成装置による画像形成を行う過程で、普通紙等の記録媒体が疎水性を発揮するようになる加工が行われる。すなわち、トナーが固体パラフィン等のワックスを含むワックス含有トナーである場合には、かかるトナーによって形成されたトナー像を記録媒体に定着させるときに、トナー中のワックス成分がトナー像表面に滲出し、トナー像部分が疎水性を発揮する出力物が形成される。また、トナーがワックス含有トナーでない場合であっても、かかる画像形成装置に、記録媒体に画像を定着させる定着装置が備えられている場合であって、かかる定着装置において、定着装置側に記録媒体や画像が付着することを防止ないし緩和するために、記録媒体や画像にシリコンオイル等の疎水性の離型剤が塗布される場合には、やはり、記録媒体表面が疎水性を発揮する出力物が形成される。その他、画像形成装置の出力物でなくとも、それ自体が樹脂製である場合等は、製造により出力物となった時点で疎水性を有する場合がある。
【0073】
このような出力物は、表面の少なくとも一部が疎水性を発揮するため、親水性を要する加工を施す場合には、かかる表面を改質して親水性をもたせる必要がある。すなわちかかる出力物が改質装置100による改質の対象である被加工面を有する被加工物Sとなる。
【0074】
かかる被加工面を有する被加工物Sを出力物とする装置の一例として、図5に示す画像形成装置を説明する。
同図に示す画像形成装置200は、カラーレーザ複写機とプリンタとの複合機であるが、他のタイプの複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置200は、この画像形成装置200で読み取った原稿の画像データ、または後述する通信部192により外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行う。画像形成装置200は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行い、画像形成後の記録媒体を、表面改質が必要な被加工物Sとなり得る出力物とすることが可能である。
【0075】
画像形成装置200は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての潜像担持体である円筒状の感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKを平行配設したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式を採用している。
【0076】
感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKは、画像形成装置200の本体199の図示しないフレームに回転自在に支持され、像担持体である転写媒体としての転写ベルト111の移動方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0077】
各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための作像ステーションである画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKに備えられている。
【0078】
感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKは、本体199の内部の中央部よりもやや上方に配設された無端のベルトである中間転写体としての転写ベルト111の外周面側すなわち作像面側に位置している。
【0079】
転写ベルト111は、各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト111に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体であり転写媒体である転写紙に一括転写されるようになっている。転写紙の図示は省略している。
【0080】
転写ベルト111に対する重畳転写は、転写ベルト111がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに形成されたトナー像が、転写ベルト111の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト111を挟んで各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKに対向する位置に配設された1次転写ローラ112Y、112M、112C、112BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0081】
画像形成装置200は、本体199内に、4つの画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKと、各感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKの下方に対向して配設され、転写ベルト111を備えた中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット110と、転写ベルト111に対向して配設され転写ベルト111に当接し、転写ベルト111への当接位置において転写ベルト111と同方向に回転し無端移動する転写部材としての紙搬送ベルトである2次転写ベルト105を備え転写ベルト111上のトナー像を転写紙に転写するとともに搬送する2次転写装置としての2次転写ユニット176と、画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKの上方に対向して配設された潜像形成手段としての露光装置たる光書込みユニットである光走査装置108とを有している。
【0082】
画像形成装置200はまた、本体199内に、感光体ドラム70Y、70M、70C、70BKと転写ベルト111との間に向けて搬送される転写紙を多数枚積載可能な給紙カセットとしての給紙機構であるシート給送装置161と、シート給送装置161から搬送されてきた転写紙を、画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、転写ベルト111と2次転写ベルト105との間に向けて繰り出すレジストローラ104とを有している。
【0083】
画像形成装置200はまた、本体199内に、トナー像を転写された転写紙に同トナー像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての定着装置106と、定着済みの転写紙を本体199の外部に排出する排紙ローラ対としての排紙ローラ107と、排出ローラ107により本体199の外部に排出された転写紙を積載する排紙トレイ117とを有している。
【0084】
画像形成装置200はまた、本体199上方に、原稿の画像を読み取るスキャナーである読取装置114と、読取装置114の上方に配設され読取装置114に原稿を給送する自動原稿給送装置(いわゆるADF)115とを有している。
【0085】
画像形成装置200はまた、本体199内の最下方に備えられ本体199内の空気を本体199外に排出する排気手段としての排気装置である排気部120と、種々の検知手段による検知結果等に基づき画像形成装置200の動作全般を制御するCPU、メモリ等を含む制御手段191と、外部から画像形成を行うための画像情報を受信する通信手段としての通信部192とを有している。
【0086】
シート給送装置161は、転写紙を複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体199の下部において多段で配設されている。シート給送装置161は、所定のタイミングで、転写紙をレジストローラ104に向けて給送するようになっている。
シート給送装置161から送り出された転写紙は、給紙経路を経てレジストローラ104に至り、レジストローラ104のローラ間に挟まれる。
【0087】
定着装置106は、ベルトユニット162と、ベルトユニット162に圧接された加圧ローラ163とを有している。ベルトユニット162は、無端状の定着ベルト164と、定着ベルト164を張架しながら無端移動させる定着ローラ165と、定着ローラ165とともに定着ベルト164を巻き掛け内部に図示しない熱源を有する加熱ローラ166とを有している
【0088】
定着装置106は、トナー像を担持した転写紙をベルトユニット162と加圧ローラ163との圧接部である定着部に挟み込む態様で通すことで、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を転写紙の表面に定着するようになっている。定着装置106は、シリコンオイル等の離型剤を用いないオイルレス定着方式を採用している。
【0089】
排気部120は、本体199内の空気を本体199外に排出し換気を行うことで、画像形成によって生じた、オゾン等の気体生成物や熱を排出するものである。排気部120は、このような排気を行うための空気流を形成する空気流形成手段としてのファン121を備えた空気流形成部122と、ファン121によって形成された本体199内の空気流により本体199内の空気が空気流形成部122に至るまでにかかる空気中のオゾンなど、本体199外にそのまま排気すると環境に与え得る成分を除去する浄化部123とを有している。
【0090】
通信部192は、画像形成を行うための画像情報を画像形成装置100に入力するPC、電話回線、インターネット、LAN等の通信回線に接続可能な他、画像形成装置100に着脱可能な種々の後処理装置が画像形成装置100に装着された場合にはその後処理装置との間で種々の情報を授受するようになっている。
【0091】
画像形成ユニット160Y、160M、160C、160BKについて、そのうちの一つの、感光体ドラム70Yを備えた画像形成ユニット160Yの構成を代表して構成を説明する。なお、他の画像形成ユニットの構成に関しても実質的に同一であるので、以下の説明においては、便宜上、画像形成ユニット160Yの構成に付した符号に対応する符号を、他の画像形成ユニットの構成に付すかこれを省略し、詳細な説明についても適宜省略することとする。
【0092】
感光体ドラム70Yを備えた画像形成ユニット160Yは、感光体ドラム70Yの周囲に、図中反時計方向であるその移動方向に沿って、1次転写ローラ112Yと、クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置であるクリーニング装置170Yと、図示しない除電手段としての除電ランプを備えた除電装置と、帯電手段としての帯電装置190Yと、現像手段としての現像ユニットである現像器たる現像装置180Yとを有している。
【0093】
光走査装置108は、感光体ドラム70Yに帯電装置190Yが対向した帯電領域と現像装置180Yが対向した現像領域との間の領域に、画像情報に応じて変換した光情報に基づいて、光変調及び偏向されたレーザー光Lを走査しながら照射して、帯電装置190Yにより帯電された後の感光体ドラム70Yの表面の被走査面をスポット照射によって露光し、現像装置180Yによってイエロートナー像として可視像化される、画像情報に応じた静電潜像を書き込むようになっている。
【0094】
現像装置180Yは、感光体ドラム70Yに近接対向して配設された現像ローラ181Yと、現像ローラ181Y上の現像剤を一定の高さに規制する図示しないドクターブレードと、現像剤を攪拌するとともに現像ローラ181Yに現像剤を供給するための図示しない搬送スクリュと、乾式でワックス含有のトナーであるイエロートナーを収容した図示しないトナーボトルと、これらを収容した図示しない現像ケースと、直流成分の現像バイアスを現像ローラに印加する図示しないバイアス印加手段等とを有している。
【0095】
現像ケース内の現像剤は、磁性キャリアと、イエロートナーとを含む二成分現像剤であって、この現像剤には、トナーボトルからイエロートナーが補給、供給され、搬送スクリュによって、供給されたイエロートナーと現像剤とが攪拌搬送されながら攪拌混合され、摩擦帯電され、現像ローラ181Yに供給され担持される。
【0096】
以上のような構成の画像形成装置200の動作等について説明する。
感光体ドラム70Yは、回転に伴い、帯電装置190Yにより表面を一様にマイナス帯電される。
光走査装置108からのレーザー光Lの露光走査によりイエロー色に対応した静電潜像を形成される。
この静電潜像は現像装置180Yにより現像剤中のイエロー色のトナーにより現像され、現像により得られたイエロー色のトナー像を1次転写ローラ112YによりA1方向に移動する転写ベルト111に1次転写され、転写後に残留した残留トナーをクリーニング装置170Yにより除去される。
次いで、除電装置により残留電荷が除去されて帯電装置190Yによる次の除電、帯電に供される。
【0097】
他の感光体ドラム70M、70C、70BKにおいても同様に各色のトナー像が形成等され、形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ112M、112C、112BKにより、A1方向に移動する転写ベルト111上の同じ位置に順次1次転写される。転写ベルト111上に重ね合わされたトナー像は、転写ベルト111のA1方向の回転に伴い、2次転写ベルト105との対向位置である2次転写ニップまで移動して転写紙に密着し、2次転写バイアスやニップ圧の作用によって転写紙に2次転写され、転写紙上にフルカラー画像が形成される。
【0098】
転写ベルト111と2次転写ベルト105との間に搬送されてきた転写紙は、シート給送装置161から繰り出されてフィードされ、レジストローラ104によって、転写ベルト111上のトナー像の先端部が2次転写ベルト105に対向するタイミングで送り出されたものである。
【0099】
転写紙は、すべての色のトナー像を一括して転写され、担持すると、2次転写ユニット176によって、具体的には2次転写ベルト105の回転によって搬送されて定着装置106に進入し、加圧ローラ163とベルトユニット162との間の定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を定着され、転写紙上にフルカラー画像が定着される。
【0100】
この定着の際、トナー像を構成しているトナー粒子中に含有されているワックスは、トナー像表面に染み出し、トナー像表面を離型性を有する疎水性の膜でコーティングし、トナー像が定着ベルト164に付着することを防止ないし抑制する。
定着装置106を通過した定着済みの転写紙は、排紙ローラ107を経て、排紙トレイ117上にスタックされる。
【0101】
このようにして、排紙トレイ117上にスタックされた、画像形成装置200によって画像形成を行われた転写紙は、画像形成装置200の出力物となる。この出力物は、主にトナー像が形成されている領域において、表面が疎水性を有する。この出力物に、親水性を要する加工を良好に行うには、これに先立って、この出力物表面を被加工面としてその疎水性の部分を親水化する改質を行う必要がある。
【0102】
なお、定着装置106が、定着ベルト164にシリコンオイル等の、疎水性を有する離型剤を塗布するオイル塗布タイプである場合にも、定着ベルト164に塗布された離型剤が転写紙に転移することから、出力物の表面は疎水性を有することとなり、離型性を含む同表面を被改質面として親水化する改質を行う必要がある。
【0103】
そこで、上述したスタンドアロン型の改質装置100を用いてかかる出力物の表面の改質を行うには、かかる出力物を、トナー像の表面を含むその表面を被加工面として有する被加工物Sとし、図6に示すように、排紙トレイ117上にスタックされた出力物を、被加工物Sとして給送部30にセットして、操作パネルを操作して、給送部30から改質部10への被加工物Sの給送を開始することとなる。
【0104】
図7に示すように、改質装置100は、スタンドアロン型でなく、画像形成装置200において画像形成済みの出力物を被加工物としこの被加工物の後処理を行う、画像形成装置200に着脱可能な後処理装置195に備えられているものであっても良い。この後処理装置195に備えられた改質装置100は、上述の改質装置100と比べ、先端揃えローラ32を除く給送部30を省略されている一方で、通信部192との間で通信を行う通信手段としての通信部92を備えている。また、この改質装置100では、通信部92において、画像形成装置200の出力物である被加工物についてのサイズ、画像状態、画像種類、画像位置、画像面積、画像濃度、画像面積率といった、サイズ検知センサ71、画像状態検知センサ72によって検知される各種情報が、画像形成装置200側から入力されるようになっている。そのため、この改質装置100では、サイズ検知センサ71、画像状態検知センサ72も省略されており、また操作パネルも省略可能である。
画像形成装置200は、上述の画像形成装置200と比べ、排紙トレイ117を省略されている。
【0105】
後処理装置195は、画像形成装置200に装着されると、通信部92が通信部192との間で通信可能となる。後処理装置195は、画像形成装置200において画像形成装置が開始されると、その旨が通信部192から通信部92に入力され、改質部10及び排気部20が動作を開始し、また排紙ローラ107によって画像形成装置200から排出された出力物が被加工物として先端揃えローラ32と搬送ベルト12との間に進入して改質装置100において改質が行われる。
【0106】
このとき、画像形成装置200における画像形成速度が通信部192から通信部92に入力され、搬送ベルト12の回転速度が画像形成速度に合致するように、モータ16の回転速度が調整される。これによって、後処理装置195において被加工物のジャムが生じることなく且つ速やかに、被加工物の改質が行われる。また、被加工物についてのサイズ、画像状態、画像種類、画像位置、画像面積、画像濃度、画像面積率も通信部192から通信部92に入力され、すでに述べたように消費エネルギーを抑制しつつ被加工物の改質が行われる。その他の動作はすでに述べたとおりである。
【0107】
図8に示すように、改質装置100は、画像形成装置200自体に備えられていても良い。この場合、同図に示しているように、定着装置106に改質部10を組み込み、定着ベルト164を搬送ベルト12と共用し、また、排気部120を排気部20と共用し、シート給送装置161を給送部30と共用し、排紙トレイ117を積載部40と共用する。このように、画像形成装置200が改質装置100を備え、画像形成済みの出力物を改質装置100における被加工物としその被加工面の改質を改質装置100で行うようにすれば、部品の共用を行うことで部品点数が削減され、低コスト化、小型化において利点がある。この場合も画像形成装置200における画像形成に用いられる情報あるいはこの情報によって生成される情報を、被加工物についてのサイズ、画像状態、画像種類、画像位置、画像面積、画像濃度、画像面積率として改質装置100において用いることで、すでに述べたように消費エネルギーを抑制しつつ被加工物の改質が行われる。
【0108】
これら各種の改質装置100は、被加工物を改質することで改質された被加工面に、その改質によって可能となった加工を施す加工手段を有していても良い。改質装置100は、疎水性を有する被加工面を親水性に改質する機能を有するため、かかる加工手段としては、疎水性の面には塗工性が低く親水性の面には塗工性が高いニスを塗工するニスコーターが挙げられる。改質装置100がこの加工手段としてのニスコーターを有する例として、図9に、図1又は図7に示した改質装置100が、かかる加工手段としての加工装置であるニスコーター60を有する構成例を示す。
【0109】
ニスコーター60は、液状のニスを貯容した貯容部61と、貯容部61に一部が浸漬された第1のローラ62と、第1のローラ62に当接し第1のローラ62からニスを塗布される第2のローラ63と、第2のローラ63に当接し第2のローラ63からニスを塗布されるとともに第2のローラ63から塗布されたニスを、搬送ベルト12によって搬送されている被加工物に塗布する第3のローラ64と、被加工物に塗布されたニスを乾かすための乾燥手段としてのファン65とを有している。第3のローラ64は搬送ベルト12あるいはこれによって搬送されている被加工物に連れ回りし、第2のローラ63は第3のローラに連れ回りし、第1のローラ62は第2のローラ63に連れ回りする。
【0110】
このような構成の改質装置100によれば、改質とともに、改質によって可能となった加工を施す一連の処理が連続して行われる。また、ファン65でニスを乾かすことで、積載トレイ41上に積載された被加工物にニスの裏移りが生じることが防止ないし抑制されるとともに、ニスによる被加工面のつやが早期に現れる。
【0111】
なお、ニスが紫外線硬化型の場合は、ファン65に代えて、又はこれとともに、紫外線照射手段としての紫外線照射光源等をニスコーター60に配設しても良い。また、ニスの塗布は、ローラによる塗布に限らず、インクジェット方式等の、バリアぶるにパターンニング可能な塗工手段を用いても良い。
【0112】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0113】
たとえば、図10に示すように、対向電極部53は、放電電極ローラ51との間でプラズマを発生させるための対向電極としてのカウンター電極として、平板状でなく、ローラ状のカウンター電極ローラ52を有していても良い。カウンター電極ローラ52は各放電電極ローラ51と対を成すように複数備えられている。この場合、カウンター電極は被加工物の搬送方向において分割されているといえる。カウンター電極ローラ52はアルミニウム等の導電性であり、表面を誘電体あるいは絶縁体で被覆されている。カウンター電極ローラ52は、搬送ベルト12に連れ回りする。よって、平板状のカウンター電極52と異なり、搬送ベルト12の摺接が生じないため、搬送ベルト12の負担が軽く、搬送ベルト12が経時的に良好な状態を維持される。この場合、カウンター電極駆動手段は、複数のカウンター電極ローラ52のうちの少なくとも1つを放電電極ローラ51に対して変位する。
【0114】
搬送ベルト12は、図示を省略するが、アルミニウム等の金属あるいはシリコンゴム等の基材に金属粒子等を分散した導電性の無端状の基体と、基体の外周面側にコーティング等によって形成されたシリコン製の誘電性の表面層とを有している。導電性の基体は、耐腐食性のあるステンレスで構成しても良い。表面層は、耐オゾン性のあるシリコンゴムを被覆して形成するのが好ましい。表面層は実質的に絶縁性の抵抗値を有している。駆動ローラ13、張架ローラ14、15のうち少なくとも駆動ローラ13と張架ローラ15とはアースに接続することが好ましい。
【0115】
このような構成の改質手段50においては、各放電電極ローラ51に高電圧が印加され、カウンター電極52のうちの第1のカウンター電極部52a及び図3(a)に示した位置を占めているものとの間で放電が生じ、そのカウンター電極52に向けてプラズマが形成されるにあたり、搬送ベルト12の導電性の基体も、対向電極言い換えるとカウンター電極として機能する。この点、搬送ベルト12も、対向電極部53を構成しているといえる。
【0116】
このように、搬送ベルト12を導電性の基体と絶縁物との2層構造とした場合には、搬送ベルト12もカウンター電極として機能することにより、図4に示したように、放電電極ローラ51から搬送ベルト12あるいはこれによって搬送されている被加工物Sに向けて沿面放電によるプラズマが形成される。搬送ベルト12がカウンター電極として機能することは、沿面放電を良好に発生させるという利点、放電電極とカウンター電極との距離が近づくためエネルギーの損失が減少し、またかかる放電、プラズマが生じ易くなるという利点がある。これらの利点、特に前者の利点は、後述するように、カウンター電極がローラ状をなす場合に特に顕著である。なお、カウンター電極がカウンター電極52のように平板状である場合には、搬送ベルト12をカウンター電極として機能させることは必須でなく、搬送ベルト12の基材を上述のようにポリイミド等の絶縁体によって構成しても良い。
【0117】
放電電極、カウンター電極の、幅方向での分割の態様は、被加工物の給送の態様すなわち中央揃えであるか片側揃えであるかによって適宜変更されるものである。また、放電電極、カウンター電極の分割数は、たとえばカウンター電極については上述の形態のような4つに限られず、2つ以上であればよい。
【0118】
放電電極、カウンター電極は、分割するのではなく、たとえば放電電極、カウンター電極を弾性変化可能な部材で構成し、弾性変形によりプラズマを形成すべき部分を対向するカウンター電極あるいは放電電極に近づけてプラズマを形成するようにしても良い。この場合、かかる弾性変形を放電電極について行う場合には、この弾性変形を行う構成は、放電電極の一部をカウンター電極に対して変位する放電電極駆動手段として機能する。また、かかる弾性変形をカウンター電極について行う場合には、この弾性変形を行う構成は、カウンター電極の少なくとも一部を放電電極に対して変位するカウンター電極駆動手段として機能する。これら「一部」には、幅方向における一部、被加工物の搬送方向における一部を含む。またこれら対向電極駆動手段、カウンター電極駆動手段は、放電電極とカウンターとの少なくとも一方の少なくとも一部を他方に対して変位するように駆動することでプラズマが被加工面に接触する範囲を設定する電極間距離設定手段として機能するものであり、両者を組み合わせて用いても良い。
【0119】
弾性変形可能なカウンターは、図1に示したような平板状であっても、図10に示したようなローラ状であっても良く、前者の場合には幅方向における一部及び/又は被加工物の搬送方向における一部を弾性変形させ、後者の場合には幅方向における一部を弾性変形させる。
【0120】
本発明にかかる改質装置は、被加工物の種類、たとえば普通紙であるか、コート紙であるか、薄紙であるか、厚紙であるか、OHPシートであるかを検知する第3の検知手段である被加工物種検知手段を備え、これを用いて検知した被加工物種情報を用いて、プラズマ制御手段により放電電極に与えるエネルギーを調整し、被加工面に接触するプラズマの強度を制御するようにしても良い。本発明にかかる改質装置は、後処理装置に備えられている場合には、これに備えた通信手段で被加工物種情報その他上述した各種情報を入力されるようにしても良い。本発明にかかる改質装置は、画像形成装置に備えられている場合には、画像形成装置に用いられる情報を被加工物種情報その他上述した各種情報として用いるようにしても良い。本発明にかかる改質装置は、スタンドアロン型であっても通信手段を備えていてもよく、この通信手段をPC、インターネット、LAN等の通信回線に接続可能にして、かかる通信回線からかかる通信手段で被加工物種情報等の上述した各種情報を入力されるようにしても良い。
【0121】
また、上述の各形態では、放電電極が被加工物に当接するように構成されているが、放電電極は被加工物からたとえば50μm程度の微少距離だけ離間する位置に配設されていても良い。放電電極が被加工物から離間していれば、たとえば被加工物が転写紙である場合にこの転写紙に付着している紙粉が放電電極に付着して放電電極の性能が低下するなど、被加工物に付着している汚れが放電電極に付着して放電電極の性能が低下することが防止ないし抑制される。ただし、放電電極が被加工物から離間している構成では、放電電極とカウンターとの距離が大きくなるため、エネルギーの損失が生じるとともに、沿面放電を阻害する要因ともなるため、この距離は、できるだけ小さいほうが好ましい。なお、放電電極の放電による偏磨耗を低減するためや、沿面放電やプラズマを形成する部位を変化させ被加工面の改質の均一性を向上するために、放電電極を被加工物から離間させた構成においても、放電電極を回転させるのが好ましい。
【0122】
本発明を適用した改質装置を有する画像形成装置あるいは本発明を適用した改質装置の被加工物となる出力物を形成する画像形成装置は、図5に示して説明したようないわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置であっても良い。また、カラー画像形成装置でなく、モノクロ画像形成装置にも本発明を適用可能である。いずれのタイプの画像形成装置でも、中間転写体を用いず、各色のトナー像を転写紙等に直接転写しても良い。ただし、ワックス含有トナーを用いる画像形成装置においては、カラー画像を得る等のためにトナー像を重ね合わせたほうが疎水性が高くなるため、改質を行うことによる効用は高い。
【0123】
本発明を適用した改質装置を有する後処理装置は、改質され出力される被加工物の揃え機能を有していても良い。ステープル機能は、上述のような加工手段を有し加工手段による加工を経た被加工物をステープルするように備えられていることが好ましい。
【0124】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0125】
12 搬送部材
51 放電電極
52、52a、52b、52c、52d カウンター電極
52a、52b、52c、52d、80、91A、92B プラズマ制御手段
56 放電電極駆動手段
60 加工手段
80 電極間距離設定手段
100 改質装置
195 後処理装置
200 画像形成装置
S 被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被加工物の被加工面に対向するように配置され、同被加工面に接触して同被加工面の改質を行うためのプラズマを、同被加工面に向けて形成するための放電電極と、
前記放電電極によって形成される前記プラズマの前記被加工面に接触する範囲及び/又は強度を制御するプラズマ制御手段とを有する改質装置。
【請求項2】
請求項1記載の改質装置において、
前記プラズマ制御手段は、前記放電電極と、前記放電電極との間で前記プラズマを発生させるためのカウンター電極との少なくとも一方の一部を他方に対して変位するように駆動することで前記範囲を設定する電極間距離設定手段とを有することを特徴とする改質装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の改質装置において、
前記放電電極を複数備え、
前記プラズマ制御手段は、前記複数の放電電極のうちの少なくとも1つが前記プラズマを発生するように当該放電電極を駆動することで前記範囲及び/又は前記強度を設定する放電電極駆動手段とを有することを特徴とする改質装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置において、
前記プラズマ制御手段は、前記放電電極の駆動強度を制御することで前記強度を設定することを特徴とする改質装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の改質装置において、
前記被加工物を搬送して前記放電電極に対して移動させる搬送部材を有し、
前記プラズマ制御手段は、前記搬送部材が露出した範囲への前記プラズマの接触を停止することを特徴とする改質装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の改質装置において、
前記プラズマによって改質された前記被加工面に、改質によって可能となった加工を施す加工手段を有することを特徴とする改質装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、前記改質装置において前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質する後処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし6の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を同改質装置において改質する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−60737(P2011−60737A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212528(P2009−212528)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)