説明

放出プロファイルが異なるインプラントデバイス並びにその製造及び使用方法

本明細書では、インプラントデバイス、このインプラントデバイスを含むキット並びにこのインプラントデバイス及びキットを製造及び使用する方法について記載する。1つの態様において、複数のインプラントデバイスは、異なる生理活性剤放出プロファイルを示す少なくとも2つのインプラントを含む。別の態様において、インプラントデバイスは1つ以上の隣接したポリマー体を含み、これらのポリマー体の少なくとも2つによって異なる生理活性剤放出プロファイルがもたらされる。別の態様において、キットは、1つ以上の開示のインプラントデバイスを含む。別の態様において、生理活性剤を患者に送達する方法は、患者に1つ以上の開示のインプラントデバイスを投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年9月17日に出願の先行の米国仮特許出願第61/243303号に基づき、またその優先権の利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
生理活性剤(bioactive agent)が患者の体液又は組織内に放出されるようにインプラント製剤を設計することができる。有用な製剤は、生分解されるにつれて生理活性剤を放出するポリマーを含むものである。ポリマーである1つの目的は水の流入の制限であり、これによって生理活性剤の溶解とそれに続くインプラントからの生理活性剤の放出が制御される。ポリマーには水の流入を制限する等の数多くの利点があるが、目標とする又は効果的な放出プロファイルを達成するのに効果的な適当なポリマー配合を得るのが困難な場合がある。多様な放出プロファイルが医薬品分野において必要とされていて、放出プロファイルは概して治療対象である患者に関する可変事項及び疾患の特定の特徴に左右される。残念なことに、単一のインプラント組成物をベースとした典型的な薬物送達戦略では、多様な放出プロファイルというニーズを満たせないことが多い。
【0002】
このため、製造上の制約を過度に伴うことなく所望の放出プロファイルを効果的に得られる薬物送達戦略が必要とされている。本発明は、このようなニーズ及び他のニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、インプラントデバイス、このインプラントデバイスを含むキット並びにこのインプラントデバイス及びキットを製造及び使用する方法について記載する。1つの態様において、複数のインプラントデバイスは、異なる生理活性剤放出プロファイルを示す少なくとも2つのインプラントを含む。別の態様において、インプラントデバイスは1つ以上の隣接したポリマー体を含み、これらのポリマー体の少なくとも2つによって異なる生理活性剤放出プロファイルがもたらされる。別の態様において、キットは、1つ以上の開示のインプラントデバイスを含む。別の態様において、生理活性剤を患者に送達する方法は、患者に1つ以上の開示のインプラントデバイスを投与することを含む。
【0004】
本発明の利点を以下の説明で部分的に示す。一部は説明から明らかとなり、又は以下に記載の態様の実践を通じて学び得る。以下に記載の利点は、添付の請求項で特に挙げられている要素及びその組み合わせによって実現及び達成される。上述の概要及び以下の詳細な説明が共に例示及び説明上のものに過ぎず、限定的ではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1A】例示的なインプラントデバイスの図である。
【図1B】例示的なインプラントデバイスの図である。
【図1C】例示的なインプラントデバイスの図である。
【図2A】隣接するポリマー体を含む例示的なインプラントデバイスの図である。
【図2B】隣接するポリマー体を含む例示的なインプラントデバイスの図である。
【図2C】隣接するポリマー体を含む例示的なインプラントデバイスの図である。
【図2D】隣接するポリマー体を含む例示的なインプラントデバイスの図である。
【図3】同様の薬物負荷だがポリマーが異なる製剤から放出される累積ゴセレリン量を示すプロットである。
【図4】同じポリマーだが薬物負荷が異なる製剤から放出される累積ゴセレリン量を示すプロットである。
【図5】様々な薬物負荷及びポリマーの製剤から放出される累積ゴセレリン量を示すプロットである。
【図6】様々な薬物負荷及びポリマーの製剤から放出される累積ゴセレリン量を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の化合物、組成物、複合材料、物品、デバイス及び/又は方法を開示及び記載するに先立って、以下に記載の態様が特定の化合物、組成物、複合材料、物品、デバイス、方法又は用途に限定されないことを理解されたい。当然のことながら、これらは変化し得るからである。また、本明細書で使用の専門用語が特定の態様を説明する目的のためのものに過ぎず、限定を意図してはいないことを理解されたい。
【0007】
本明細書及びそれに続く請求項において多数の用語を使用するが、これらは以下の意味を有すると定義される。
【0008】
本明細書全体を通して、文脈上そうではない場合を除いて、用語「含む(comprise)」又はその変化形(含む(comprise)、含んでいる(comprising)等)は、記載されたある整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むが他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を排除しないことを示唆すると理解される。
【0009】
本明細書及び添付の請求項で使用の単数形には、文脈上明らかにそうではない場合を除いて複数の指示対象が含まれることに留意しなくてはならない。したがって、例えば「ある生理活性剤」と言う場合、これには2種以上のこのような物質の混合物等が含まれる。
【0010】
「任意の(optional)」又は「任意で(optionally)」とは、これらの語に続いて記載されている事象又は状況が起きるかもしれず、又は起きないかもしれず、またその説明にはこの事象又は状況が起きる場合と起きない場合とが含まれることを意味する。
【0011】
範囲は、本明細書において「約」ある特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までとして表わされ得る。このような範囲が表わされる場合、別の態様は、そのある特定の値から及び/又はもう一方の特定の値までを含む。同様に、接頭語「約」をつけて値を近似値として表わす場合、特定の値は別の態様を構成することが理解される。また、各範囲の端点は、もう一方の端点との関係においても、及びもう一方の端点とは関係なく、重要であることが更に理解される。
【0012】
ある成分の質量%は、そうではないと特に明記されない限り、その成分が含まれる製剤又は組成物の総質量に基づく。
【0013】
本明細書で使用の「インプラントデバイス」とは、生理活性剤を中に及び/又は表面上に有するポリマーから成る実質的に固体のデバイスのことである。インプラントデバイスは任意のサイズであり得る。幾つかの例において、インプラントデバイスは、トロカール等の注射器具内に収まるようなサイズに形成され得る。インプラントデバイスは、他の添加剤、表面処理、コーティング等も含み得る。インプラントデバイスは、注射、経口投与等を含めた適当な経路を通じて患者に投与され得る。
【0014】
用語「生体適合性(biocompatible)」とは、患者に対して実質的に毒性がない物質のことである。
【0015】
「生分解性(biodegradable)」とは本明細書において一般に、可溶性の種へと崩れていく又は生理条件下でそれ自体は患者に対して毒性がなく(生体適合性)且つ患者による代謝、排出若しくは排泄が可能なより小さい単位若しくは化学種へと分解される材料のことである。
【0016】
「生理活性剤(bioactive agent)」とは、生物活性を有する物質のことである。生理活性剤は、治療、診断、治癒、緩和、防止(すなわち、予防的に)、寛解、調節に使用することができる。或いは、疾患、障害、感染症等に対して別の好適な効果を有し得る。「放出性生理活性剤(releasable bioactive agent)」とは、開示のポリマーから放出させることができるものである。生理活性剤には、患者の身体構造又は身体機能に影響を与える物質、すなわちプロドラッグも含まれ、これらは既定の生理環境に置かれると生理活性性になる又は生理活性性がより高くなる。
【0017】
本明細書で使用の「放出プロファイル(release profile)」とは、時間の経過と共にインプラントデバイスから放出される生理活性剤の量のことである。このため、放出プロファイルが異なる2つ以上のインプラントデバイス又はポリマー体は、時間の経過と共に異なる量の同じ生理活性剤を放出する。放出プロファイルは、当該分野で既知の方法を利用して時間の経過と共に放出される生理活性剤の量を測定することによって求めることができる。2つの異なるインプラントデバイス又はポリマー体の放出プロファイルを比較する場合、各デバイス又はポリマー体から放出される生理活性剤の量をプロットし、各プロットを比較することによってこの2つの異なるインプラントデバイス又はポリマー体が同じ又は異なる放出プロファイルを示すか否かを判断するのが有用であり得る。異なる放出プロファイルを示す2つ以上のデバイス又はポリマー体は、計測できる程度に異なる放出プロファイルを示す。例えば、異なる放出プロファイルを、放出中の任意の時点での異なる放出(又は残留)生理活性剤量によって特徴づけることができる。2つ以上のインプラントデバイス又はポリマーを比較する場合、放出中の任意の時点での放出生理活性剤量は、100%以上の差を含め、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%又はそれより多いパーセンテージで異なり得る。
【0018】
本明細書で使用の、インプラントデバイスの「〜部、部位(portion)」とは、インプラントデバイスの一部のことである。インプラントデバイスが複数の「〜部、部位」を有する場合、これらの部位の少なくとも2つは放出プロファイルで異なる。幾つかの例において、「〜部、部位」とはインプラントデバイスの断面、インプラントデバイスのセグメント又はこれらの組み合わせのことである。特定の例において、この「〜部、部位」とは、少なくとも1つの別の断面部(例えば、2つ又は4つの断面部)を含むインプラントデバイスの断面のことである。別の特定の例において、この「〜部、部位」とは、1つ以上の端部によって規定されるインプラントデバイスのセグメントのことであり、端部の少なくとも1つは別の部位の端部に隣接している、すなわち物理的に接続している。各セグメントはそれ自体が1つ以上の部位(断面等)を含み得る。
【0019】
本明細書で使用の「キット」とは、1つ以上の開示のインプラントデバイスの入ったパッケージのことである。キットのインプラントデバイスは、任意で適切な医薬担体中に存在し得る。キットのパッケージはいずれの適切な包装材料でもあり得て、例えばとりわけ滅菌パッケージ、シリンジ、トロカールである。
【0020】
開示の方法及び組成物に使用することができる、それと共に使用することができる、その調製に使用することができる又はその製品である化合物、組成物及び成分を開示する。これらの及び他の材料を本明細書で開示するが、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、群等が開示され、これらの化合物の様々な各個別の及び集合的な組み合わせ並びに順列が具体的にはっきりと開示されなくても、それぞれが具体的に企図され、また本明細書において記載されるものと理解される。例えば、多数の異なるポリマー及び物質が開示され、論じられる場合、そうではないとの記載が特にない限り、ポリマー及び物質の個々の及び全ての組み合わせ並びに順列が具体的に企図されている。このため、例えば分子A、B、Cから成る集合、分子D、E、Fから成る集合及び組み合わせ分子の一例であるA−Dが開示される場合、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれは個別に且つ集合的に企図される。このため、この例においては、組み合わせA−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E及びC−Fのそれぞれが具体的に企図されていて、またA、B及びC並びにD、E及びF並びに組み合わせ例A−Dの開示から開示されたと見なされるべきである。同様に、これらのいかなる部分集合又は組み合わせも具体的に企図され、また開示される。このため、例えば、A−E、B−F及びC−Eの下位群が具体的に企図され、またA、B及びC並びにD、E及びF並びに組み合わせ例A−Dの開示から開示されたと見なされるべきである。この概念は、開示の組成物の製造及び使用の方法におけるステップを含めた、ただしこれらに限定されないこの開示の全ての態様にあてはまる。このため、行い得る様々な追加ステップがある場合、これらの追加ステップのそれぞれを開示の方法のいずれの特定の実施形態で又は実施形態の組み合わせでも行うことができ、またそのような組み合わせのそれぞれが具体的に企図され、また開示されたと見なされるべきであると理解される。
【0021】
本発明は、所望の生理活性剤放出プロファイルを達成するためのインプラントデバイスに関する。1つの態様において、複数のインプラントデバイスを患者に投与することができ、この複数のインプラントデバイスの少なくとも2つは所定の生理活性剤について異なる放出プロファイルをもたらす。それら以外のインプラントデバイスとは異なる放出プロファイルをもたらす少なくとも2つのインプラントデバイスの使用によって、この複数のインプラントデバイスの放出プロファイルは、全てのインプラントデバイスが個別に同じ放出プロファイルを示す複数のインプラントデバイス、又は単一の放出プロファイルしか示すことができない1つのインプラントデバイスとは異なるものになる。複数のインプラントデバイスを組み合わせて使用する場合又は複数のインプラントデバイスがキット内に共に存在する場合、これらのインプラントデバイスは同じサイズ及び/又は形状を有し得る。或いは、異なるサイズ及び/又は形状を有し得る。
【0022】
更なる態様においては、複数のモジュール式ポリマー部位を隣接させて単一のインプラントデバイスにすることができ、この複数のポリマー部位の少なくとも2つは異なる放出プロファイルを示す。この態様においては、形成したポリマー部位を互いに接続することによって単一のユニットを得ることができる。同様の態様において、インプラントデバイスを、2つ以上のポリマーの単一のユニットへの同時製造によって調製することができ、この2つ以上のポリマーの少なくとも2つは異なる放出プロファイルを示す。次に、所望の放出プロファイルに応じて、このようなモジュール式の又は同時製造した単一ユニットインプラントデバイスを、個別に又は別のインプラントデバイスと組み合わせて使用することができる。
【0023】
すなわち、数多くの放出プロファイルを本発明を通じて達成することができる。一般に、本明細書に記載のインプラントデバイスでは、複数のインプラントデバイス、隣接させることができる複数のポリマー体又はこれらの組み合わせの使用を通じて、多種多様な放出制御、持続放出、放出調節、徐放出、パルス放出、放出遅延又はプログラム放出プロファイルが可能になる。
【0024】
インプラントデバイスは一般に1つ以上の生分解性ポリマー体を含み、この1つ以上の生分解性ポリマー体は、その中又はその表面上に放出性生理活性剤を有する。このインプラントデバイスを患者の体内に埋め込むと、生理活性剤がポリマー体から放出されて所望の治療成果がもたらされる。
【0025】
インプラントデバイスのポリマー体は、いずれの適切な生体適合性及び生分解性又は非生分解性ポリマーも含み得る。ポリマーはホモポリマー又はコポリマーであり得て、ブロック若しくはブロック状コポリマー若しくはターポリマー、ランダムコポリマー若しくはターポリマー、星形ポリマー、又はデンドリマーを含む。ポリマー体の所望の特性に応じて、いずれの所望の分子量のポリマーも使用することができる。特定の態様において、高強度のポリマー体が求められる場合は、例えば強度要件を満たすために高分子量のポリマーを使用することができる。他の態様において、例えば材料の強度よりポリマーの再吸収時間が求められる場合は、低分子量又は中分子量のポリマーを使用することができる。
【0026】
分子量が生分解性ポリマーの生分解速度に影響することを考えると、ポリマーの分子量は重要であり得る。生理活性剤放出の拡散メカニズムに関し、ポリマーは、全ての薬物がポリマーから放出されるまで無傷にとどまり、薬物が全て放出されてから分解されるべきである。薬物を、ポリマーの生体侵食が進行するにつれてポリマーから放出させることもできる。ポリマー材料を適切に選択することによって、得られるポリマーが拡散放出特性及び生分解放出特性の両方を示すようなポリマー配合とすることができる。分子量は当該分野で既知の方法によって測定することができ、とりわけゲル浸透クロマトグラフィ法、粘度法、光拡散法が含まれる。
【0027】
一旦患者の体内又は生物媒質中に入ったら所望の時間間隔内で分解するよう、ポリマー体のポリマーを処方することができる。幾つかの態様において、この時間間隔は、約1日未満〜約1ヵ月であり得る。より長く6カ月にわたる時間間隔でもあり得て、例えば約≧0〜約6カ月又は約1〜約6カ月で分解するポリマーが含まれる。他の態様において、ポリマーは最高2年以上のより長い時間間隔で分解し得て、例えば約≧0〜約2年又は約1カ月〜約2年が含まれる。
【0028】
所望の生理活性剤放出メカニズムは、上述したように、ポリマーの選択及び/又は各インプラントデバイス若しくはその部位の選択に影響し得る。例えば、インプラントデバイスを患者に埋め込んでから所望の時間の経過後にインプラントデバイスから生理活性剤が放出されるように又はその放出が可能になるように、生体適合性ポリマーを選択することができる。例えば、生理活性剤のその活性が低下し始める前に、又は生理活性剤の活性が低下し始めるに従って、又は生理活性剤の活性が部分的、例えば少なくとも25%、少なくとも50%若しくは少なくとも75%低下した時に、又は生理活性剤の活性が実質的に低下した時に、又は生理活性剤が完全になくなった若しくはもう活性を有さない時に生理活性剤が放出されるように、又はその放出が可能になるように、ポリマーを選択することができる。
【0029】
適切なポリマーの例には、限定することなく、ポリエステル、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシバレレート、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリホスフェート、ポリホスホエステル、ポリジオキサノン、ポリホスホエステル、ポリホスフェート、ポリホスホネート、ポリホスフェート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカーボネート、ポリアルキルカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリエステルアミド、ポリアミド、ポリアミン、ポリペプチド、ポリウレタン、ポリアルキレンアルキレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリヒドロキシ脂肪酸、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリケタール、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリペプチド、多糖又はポリビニルピロリドンが含まれる。他の非生分解性だが耐久性のポリマーには、限定することなく、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等が含まれる。同様に、他の適切な非生分解性ポリマーには、限定することなく、シリコーン及びポリウレタンが含まれる。
【0030】
インプラントデバイスは、例えばセルロース、及びエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む変性セルロースなど、様々な多糖を含むことができる。インプラントデバイスは、アミラーゼ、スターチ、マルトデキストリン、グリコーゲン、キチン又は変性多糖、例えば疎水性変性多糖も含み得る。疎水性変性多糖の例には、C1〜C10アルキル側鎖、飽和側鎖、不飽和側鎖、脂肪酸側鎖等で疎水性に変性されたマルトデキストリンが含まれる。
【0031】
適切なポリマーの他の具体例には、CAMEOポリマー(エステル−アミドポリマー)、POLYACTIVEポリマー及びSYNBIOSYSポリマー(エステル−ウレタンポリマー)が含まれる。更なる例には、ポリ(グリコリド)、ペンダントメチル基を有するポリ(ラクチド)及びC2〜C12側鎖を有するグリコリド(ヘキシル変性グリコリド等)を含む側鎖を有する又は有さないポリエステルが含まれる。
【0032】
適切なポリマーの更なる具体例には、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)若しくはポリ(ヒドロキシブタレート)を含有するコポリマー、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコール及びポリオルトエステルのコポリマー、生分解性ポリウレタン、ポリ(アミノ酸)、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー、ポリアセタール、ポリケタール、ポリホスホエステル、ポリヒドロキシバレレート若しくはポリヒドロキシバレレートを含有するコポリマー、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(マレイン酸)並びにこれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせ又はブレンドの1つ以上が含まれる。
【0033】
ブロックコポリマーが望ましい場合、有用な生分解性ポリマーの例は、親水性又は水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)を含むがこれらに限定されない)の1つ以上のブロックを、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン又はこれらの組み合わせを含む別の生体適合性又は生分解性ポリマーの1つ以上のブロックと組み合わせて含むものである。
【0034】
好ましい態様において、有用な生体適合性ポリマーは、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、ジオキサノン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド又はこれらの組み合わせの1つ以上の残基を含むものである。更に別の態様において、有用な生体適合性ポリマーは、ラクチド、グリコリド、カプロラクトン又はこれらの組み合わせの1つ以上の残基を含むものである。
【0035】
ラクチド系ポリマーは、全てのラセミ及び立体特異性の形態のラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチドを含むがこれらに限定されない)又はこれらの組み合わせを含めたいずれのラクチド残基も含み得る。ラクチドを含む有用なポリマーには、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)及びポリ(DL−ラクチド)並びにポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−コ−グリコリド)及びポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)を含むポリ(ラクチド−コ−グリコリド)又はこれらのコポリマー、ターポリマー、組み合わせ若しくはブレンドが含まれるがこれらに限定されない。ラクチド/グリコリドポリマーは簡便には、ラクチド及びグリコリドモノマーの開環を通じた溶融重合によって形成することができる。加えて、ラセミ体のDL−ラクチド、L−ラクチド及びD−ラクチドポリマーは市販されている。L−ポリマーはより結晶性が高く、またDL−ポリマーより再吸収が遅い。グリコリド及びDL−ラクチド又はL−ラクチドを含むコポリマーに加えて、L−ラクチド及びDL−ラクチドのコポリマーが市販されている。ラクチド又はグリコリドのホモポリマーも市販されている。
【0036】
特定の態様において、生分解性ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)又はポリ(ラクチド)とポリ(グリコリド)との混合物の場合、ポリマー中のラクチド及びグリコリドの量は変化し得る。更なる態様において、生分解性ポリマーは、0〜100モル%、40〜100モル%、50〜100モル%、60〜100モル%、70〜100モル%又は80〜100モル%のラクチド、及び0〜100モル%、0〜60モル%、10〜40モル%、20〜40モル%又は30〜40モル%のグリコリドを含有し、ラクチド及びグリコリドの量は100モル%である。更なる態様において、生分解性ポリマーはポリ(ラクチド)、95:5ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、85:15ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、75:25ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、65:35ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)又は50:50ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)であり得て、比はモル比である。
【0037】
別の態様において、ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)又はポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)であり得る。1つの態様において、ポリマーはポリ(ラクチド−カプロラクトン)であり得て、様々な態様において、95:5ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、85:15ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、75:25ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、65:35ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)又は50:50ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)であり得て、比はモル比である。
【0038】
インプラントデバイスで使用される生理活性剤はそれほど重要ではなく、多種多様な生理活性剤を使用することができる。典型的には、生理活性剤は、インプラントデバイス又はその部位から、通常はその分解又は生体侵食が進むにつれて放出させることができるが、単純な拡散メカニズム又は他のメカニズムを通じて放出させることもできるものである。1つの態様においては、ポリマー及び生理活性剤の加工を、生理活性剤がしっかりと混ぜ合わされる又はポリマー全体に分散する(例えば、均質に又は実質的に均質に)ような条件下で行うことができる。或いは、ポリマー及び生理活性剤の加工を、生理活性剤がポリマー体又はインプラントデバイスのごく一部の上又は中に局在するような条件下で行うことができる。このため、ポリマーは、生理活性剤の含有量が多い領域及びそれほど多くない領域を含み得る。インプラントデバイスは、多数の生理活性剤を単体で又は組み合わせで含み得る。
【0039】
ポリマーから隣接する組織又は体液中へと放出可能な様々な形態の生理活性剤を使用することができる。これを目的として、液体又は固体の生理活性剤を本明細書に記載のインプラントに取り込ませることができる。生理活性剤は少なくともごくわずかに水溶性であり、好ましくは適度に水溶性である。生理活性剤は、活性成分の塩を含み得る。このため、生理活性剤は酸性、塩基性又は両性の塩であり得る。生理活性剤は、水素結合可能な非イオン性分子、極性分子又は分子複合体であり得る。生理活性剤を組成物に、例えば非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミド、ポリマー/薬物コンジュゲートの形態又は他の形態で含ませることによって効果的な生物活性又は生理活性を得ることができる。
【0040】
本明細書のシステムに取り込ませる生理活性剤の例には、ペプチド、タンパク質(例えばホルモン、酵素、抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲート)、核酸(例えばアプタマー、iRNA、siRNA、DNA、RNA、アンチセンス核酸等、アンチセンス核酸類似体等)、VEGF阻害剤、大環状ラクトン、ドーパミンアゴニスト、ドーパミンアンタゴニスト、低分子量化合物又は高分子量化合物が含まれるがこれらに限定されない。開示のインプラントでの使用が企図される生理活性剤には、タンパク質同化剤、制酸剤、抗喘息薬、抗コレステロール及び抗脂質薬、抗凝固薬、抗痙攣薬、止瀉薬、制吐薬、抗感染薬(抗菌薬、抗微生物薬を含む)、抗炎症薬、抗躁薬、代謝拮抗剤、制嘔吐剤、抗悪性腫瘍薬、抗肥満薬、解熱剤及び鎮痛剤、鎮痙薬、抗血栓薬、鎮咳薬、抗尿酸血症薬、抗狭心症薬、抗ヒスタミン剤、食欲抑制薬、生物製剤、脳血管拡張薬、冠動脈拡張薬、気管支拡張薬、細胞障害性薬物、鬱血除去薬、利尿薬、診断薬、赤血球生成剤、去痰薬、胃腸鎮静薬、血糖上昇剤、睡眠薬、血糖降下剤、免疫調節薬、イオン交換樹脂、緩下薬、ミネラルサプリメント、粘液溶解剤、神経筋作用薬、末梢血管拡張薬、向精神薬、鎮静薬、刺激薬、甲状腺剤及び抗甲状腺剤、組織増殖剤、子宮弛緩薬、ビタミン又は抗原物質が含まれる。
【0041】
他の生理活性剤には、アンドロゲン阻害剤、多糖、増殖因子、ホルモン、抗血管新生因子、デキストロメトルファン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、塩酸クロフェジアノール、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸ピリラミン、コハク酸ドキシラミン、クエン酸フェニルトロキサミン、塩酸フェニレフリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、エフェドリン、リン酸コデイン、硫酸コデインモルヒネ(codeine sulfate morphine)、ミネラルサプリメント、コレスチラミン(cholestryrmine)、N−アセチルプロカインアミド、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、グアイフェネシン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、ホルモン、インターフェロン、サイトカイン及びワクチンが含まれる。
【0042】
インプラント中の生理活性剤として使用することができる代表的な薬物には、ペプチド性薬物、タンパク性薬物、脱感作物質、抗原、抗感染薬(例えば抗生物質、抗微生物薬、抗ウイルス剤、抗菌薬、抗寄生虫薬、抗真菌物質及びこれらの組み合わせ)、抗アレルギー薬、アンドロゲン性ステロイド、鬱血除去薬、睡眠薬、ステロイド系抗炎症剤、抗コリン作用薬、交感神経刺激薬、鎮静薬、縮瞳薬、精神賦活薬、精神安定薬、ワクチン、エストロゲン、プロゲステロン作用薬、液性因子(humoral agent)、プロスタグランジン、鎮痛薬、鎮痙薬、抗マラリア薬、抗ヒスタミン剤、心臓作用剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗パーキンソン病薬、降圧薬、βアドレナリン遮断薬、栄養剤並びにベンゾフェナントリジンアルカロイドが含まれるがこれらに限定されない。生理活性剤は更に、刺激薬、鎮静薬、睡眠薬、鎮痛薬、抗痙攣薬等として作用可能な物質であり得る。
【0043】
他の生理活性剤には、鎮痛薬(例えばアセトアミノフェン、アセチルサリチル酸等)、麻酔薬(例えばリドカイン、キシロカイン等)、食欲減退剤(例えばデキサドリン、酒石酸フェンジメトラジン等)、抗関節炎薬(例えばメチルプレドニゾロン、イブプロフェン等)、抗喘息薬(例えば硫酸テルブタリン、テオフィリン、エフェドリン等)、抗生物質(例えばスルフィソキサゾール、ペニシリンG、アンピシリン、セファロスポリン、アミカシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピン等)、抗真菌薬(例えばアンホテリシンB、ナイスタチン、ケトコナゾール等)、抗ウィルス薬(例えばアシクロビル、アマンタジン等)、抗がん剤(例えばシクロホスファミド、メトトレキサート、エトレチナート等)、抗凝固薬(例えばヘパリン、ワルファリン等)、抗痙攣薬(例えばフェニトインナトリウム、ジアゼパム等)、抗鬱薬(例えばイソカルボキサジド、アモキサピン等)、抗ヒスタミン剤(例えば塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、ホルモン(例えばインスリン、プロゲスチン、エストロゲン、コルチコイド、グルココルチコイド、アンドロゲン等)、精神安定薬(例えばトラジン、ジアゼパム、塩酸クロルプロマジン、レセルピン、塩酸クロルジアゼポキシド等)、鎮痙薬(例えばベラドンナアルカロイド、塩酸ジシクロミン等)、ビタミン及びミネラル(例えば必須アミノ酸、カルシウム、鉄、カリウム、亜鉛、ビタミンB12等)、心血管作動薬(例えば塩酸プラゾシン、ニトログリセリン、塩酸プロプラノロール、塩酸ヒドララジン、パンクレリパーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ等)、ペプチド及びタンパク質(例えばLHRH、ソマトスタチン、カルシトニン、成長ホルモン、グルカゴン様ペプチド、成長放出因子(growth releasing factor)、アンギオテンシン、FSH、EGF、骨形成因子(BMP)、エリスロポエチン(erythopoeitin)(EPO)、インターフェロン、インターロイキン、コラーゲン、フィブリノゲン、インスリン、第VIII因子、第IX因子、Enbrel(登録商標)、Rituxan(登録商標)、Herceptin(登録商標)、α−グルコシダーゼ、Cerazyme/Ceredose(登録商標)、バソプレシン、ACTH、ヒト血清アルブミン、γ−グロブリン、構造タンパク質、血液製剤タンパク質、複合タンパク質、酵素、抗体、モノクローナル抗体等)、プロスタグランジン、核酸、炭水化物、脂肪、麻薬(例えばモルヒネ、コデイン等)、精神治療薬、抗マラリア薬、L−ドーパ、利尿薬(例えばフロセミド、スピロノラクトン等)、抗潰瘍薬(例えば塩酸ランチジン、塩酸シメチジン等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0044】
生理活性剤は免疫調節薬でもあり得て、例えばサイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子等、アレルゲン(例えばネコのフケ、カバノキの花粉、チリダニ、牧草花粉等)、細菌(例えば肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿連鎖球菌(Streptococcus Pyrogenes)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphteriae)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ミュータンス菌(Streptococcus mutans)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、チフス菌(Salmonella typhi)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ペスト菌(Yersinia pestis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、レプトスピラ・インターロガンス(Leptspirosis interrogans)、ライム病ボレリア(Borrelia burgddorferi)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)等)の抗原、ウィルス(例えば天然痘、インフルエンザA及びB、RSウィルス(respiratory synctial)、パラインフルエンザ、麻疹、HIV、SARS、水痘−帯状疱疹、単純ヘルペス1及び2、サイトメガロウィルス(cytomeglavirus)、エプスタイン・バー、ロタウィルス、ライノウィルス、アデノウィルス、乳頭腫ウィルス、ポリオウィルス、ムンプス、狂犬病、風疹、コクサッキーウィルス、ウマ脳炎、日本脳炎、黄熱病、リフトバレー熱、リンパ球性脈絡髄膜炎、B型肝炎等)の抗原、真菌、原虫及び寄生生物(例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcuc neoformans))、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroids)、リケッチア・リケッチ(Rickettsia ricketsii)、リケッチア・チフィ(Rickettsia typhi)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジア・シタッシ(Chlamyda psittaci)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanasoma brucei)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)等)の抗原を含む。これらの抗原は、不活化全生物体(whole killed organism)、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物又はこれらの組み合わせの形態であり得る。
【0045】
更なる特定の態様において、生理活性剤は抗生物質を含む。抗生物質は、例えばアミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、アンサマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、カルバセフェム、ロラカルベフ、カルバペネム、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム、セファロスポリン(第1世代)、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(Cefalotin又はCefalothin)、セファレキシン、セファロスポリン(第2世代)、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セファロスポリン(第3世代)、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロスポリン(第4世代)、セフェピム、セファロスポリン(第5世代)、セフトビプロール、グリコペプチド、テイコプラニン、バンコマイシン、マクロライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、モノバクタム、アズトレオナム、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、ポリペプチド、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、キノロン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、スルホンアミド、マフェニド、プロントジル(初期)、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルイミド(sulfanilimide)(初期)、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム−スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール)(TMP−SMX)、テトラサイクリン(デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン他を含む)、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピシン(米国ではリファンピン)、チニダゾール、ロピニロール(ropinerole)、イベルメクチン、モキシデクチン、アファメラノチド(afamelanotide)、シレンギチド又はこれらの組み合わせの1つ以上であり得る。1つの態様において、生理活性剤は、リファンピシン(米国ではリファンピン)とミノサイクリンとの組合せであり得る。
【0046】
インプラントデバイスに取り込ませる薬物の量は、特定の薬物、所望の治療効果及び所望の時間枠に応じて変化する。様々なサイズ及び形状の様々なデバイスは多様な目的に応じた治療上の投薬計画を提供するためのものであることから、デバイスに取り込ませる薬物の量に決定的な上限はない。下限もまた、薬物の活性及びデバイスからのその放出の時間枠に左右される。医薬品分野の当業者なら、所定の薬物の毒性レベル及び最低有効量の決定の仕方がわかる。
【0047】
他の成分(例えば、賦形剤、医薬担体又はアジュバント、マイクロ粒子等)をポリマー及び/又は生理活性剤と組み合わせることも考えられる。このため、特定の態様において、生理活性剤は、医薬組成物中の1成分として存在し得る。医薬品組成物は所望の剤形(例えば、単位剤形、放出制御剤形を含む)に簡便に調製することができ、また製薬で周知のいずれの方法によっても調製することができる。一般に、医薬組成物は、生理活性剤を液体担体又は微粉固体担体又はその両方と均一に且つしっかりと会合させることによって調製される。使用する医薬担体は、例えば固体、液体又は気体であり得る。固体担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸が含まれる。液体担体の例は、液糖、ピーナツ油、オリーブ油及び水である。ガス状担体の例には二酸化炭素及び窒素が含まれる。生理活性剤と混合することができる他の薬学的に許容可能な担体又は成分には、例えば脂肪酸、糖、塩、水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、タンパク質、多糖、カルボキシメチルセルロース、界面活性剤、可塑剤、高分子量若しくは低分子量ポロシゲン(porosigen)、例えばポリマー、塩、糖又は疎水性低分子量化合物、例えばコレステロール、ワックスが含まれ得る。
【0048】
ポリマー及び生理活性剤を様々な技法によって同時加工することができ、例えば、以下で論じるように、混合物を所望の形状又は構造体に溶融押出、射出成型、圧縮成形又はローラー圧縮する。特定の態様においては、ポリマー及び生理活性剤を合わせ又は混合してブレンド又は混合物にする。混合は、当該分野で既知の技法を利用して行うことができる。例えば、ポリマー及び生理活性剤を、例えばパターソン・ケリーV−ブレンダを使用してドライブレンドする(すなわち、ポリマー及び生理活性剤の微粒子の混合)又は加工前に顆粒化することができる。
【0049】
ポリマーからインプラントデバイスを形成するために、様々な方法を利用することができる。好ましい態様において、インプラントは押出成形法(例えば、加熱押出、溶媒押出を通じて)によって形成される。生理活性剤及びポリマーをまず、例えばTurbula Shaker MixerタイプT2F(Artisan Scientific Corporation(301E Mercury Drive Champaign,IL 61822)を含めた多数の商業的供給源から入手可能である)を使用してブレンドすることができる。このブレンドを乾燥させ、フィルム状又は別の適当な固形物に形成し、続いて押出成形することができる。生理活性剤及びポリマーを押出機に別々に加え、続いて押出成形工程中に合わせてブレンドすることもできる。
【0050】
ブレンドを適切なプラストメータ、例えばTinius OlsenモデルUE−4−78メルトプラストメータ(Tinius Olsen Corporation(1065 Easton Road,PO Box1009,Horsham,PA 19044−8009)から入手可能)を使用して押出成形することができる。医薬品分野で使用される他の適切な押出機も使用することができる。例には、一軸スクリュー押出機、例えばRANDCASTLE押出機(Cedar Grove,NJ,U.S.A)、二軸スクリュー押出機又は2つ以上の押出機の組み合わせまでもが含まれる。インプラントデバイスは、押出機に一度通すことで形成することができる。或いは、押出成形を複数回行うことによって生理活性剤及びポリマー混合物を更にブレンド及び/又は加工することができる。加えて、例えば射出成形、圧縮成形等を含む成型技法を利用してインプラントデバイスを形成することもできる。
【0051】
押出成形製剤は、「延伸」技法で調製することもでき、押出成形物を、実際の押出成形速度より若干速い速度で引っ張る又は「延伸」する。この延伸行為によってポリマーを配向する(及び恐らくは特定のポリマーにおいて結晶化を引き起こす)ことができ、この配向はその製剤の放出特性に影響し得る。
【0052】
押出成形後、インプラントデバイスを更に加工することができる。1つの態様においては、押出成形物を2つ以上のセグメントに切断することによって複数のインプラントデバイスを単一の押出成形物から形成することができる。生理活性剤を押出成形物中に均質に分散させる場合、押出成形物のセグメントのサイズによってそのセグメント中の生理活性剤の量が決定されるため、このサイズはそのセグメントの放出プロファイルに影響する。セグメントの表面積もまた同様に、生理活性剤の放出プロファイルに影響する。
【0053】
更なる態様において、押出成形物を複数の分離したセグメントに切断することによって複数のインプラントデバイスを単一の押出成形物から形成することができ、次にこの複数のセグメントを患者に投与することができる。この態様において、複数のセグメントの放出プロファイルは、可変事項の中でもとりわけサイズ、表面積及び表面処理(施す場合)に影響され得る。例えば、単一の押出成形物を1cm、2cm及び3cmのセグメントに切断する場合、この切断されたセグメントが示す放出プロファイルは、単一の押出成形物(6cm)が示す放出プロファイルとは異なるものになり、またこの同じ6cmの押出成形物から形成した3つの3cmのセグメントとも異なるものになる傾向がある。しかしながら、他の態様において、複数のインプラントデバイスが、2つ以上の押出成形物から形成した個々のインプラントデバイスを含み得ることは明白である。
【0054】
1つの態様においては、モジュール式のポリマー体部位を使用することができるため、1つ以上の部位を互いに隣接させることができる。この態様においては、複数のインプラント押出成形物を接続することができる。好ましくは、隣接したインプラントデバイスは、1つの部位がコア周囲でシースを形成する同軸構成によってのみ隣接するものではない。しかしながら、このコア/シース構造は、少なくとももう1つ別の構造が存在する場合、つまり例えば、2つのインプラントデバイスセグメントが2つの端部を有するコア/シースを形成し、1つ以上の追加のインプラントデバイスがこの2つの端部のうちの少なくとも一方に接続され、この追加のインプラントデバイスの少なくとも1つがコア/シース構造に形成されない場合、採用することができる。更なる態様において、インプラントデバイスが2つの端部を有するロッドの場合、この2つの端部の1つ以上を別のインプラントデバイスの端部に接続することができる。個々のインプラントデバイスを隣接させるための様々な方法、例えばとりわけ生体適合性若しくは生分解性接着剤を使用した方法、溶融加工、熱アニール、溶媒アニール、溶液加工による方法を利用することができる。
【0055】
別の同様の態様において、インプラントデバイスは、単一の複合体(composite article)を形成するために同時製造された異なるポリマー体部位を含み得る。この態様に従って様々な構造が構成され得て、以下で論じるように、例えば横軸に対して垂直の方向から見た場合に2つ以上の断面及び/又はコア/シース若しくは他の適切な構造を有するポリマー体又はその部位が含まれる。好ましくは、2つ以上のポリマー体を同時に押出成形して複合インプラントデバイスを形成する。上述したように、この態様において、ポリマー体部位の少なくとも2つは異なる放出プロファイルを示す。
【0056】
様々な押出成形法を利用することによって、同時押出成形されたポリマー体を含むインプラントデバイスを形成することができる。一端から見た場合に2つ以上の断面を有するインプラントデバイスの場合、ポリマー部位を含む各セクションは、1つの押出機からの押出物の一部と別の押出機からの押出物の一部を同時に送り出し、次にこの2つ以上の部位をダイヘッド出口付近で接合することによって形成することができる。端部で隣接した2つ以上のポリマー体部位(セグメント)を有するインプラントデバイスの場合は、2つ以上の押出機が原料供給源から来たポリマーをダイヘッドに送り出し、次にこのダイヘッドが2つ以上の押出機の原料供給源間で切り替えを行うことによって、1本の押出成形物を製造することができる。コア/シース構造又は他の同様の構造の場合、典型的な同軸押出成形法を利用することができ、2つ以上のポリマー体部位が同時に押出成形される。この構造の場合、同軸ダイヘッドを使用することができ、内側部位すなわちコアが形成され、次にダイヘッドが別の押出機からの押出物をそのコアの周囲に通すことによって外側のシースが形成される。
【0057】
インプラントデバイスの正確な形状は、所望の治療効果、インプラントデバイスの使用が意図された生理環境、外科手技及び利便性を含めた様々な要素に左右される。しかしながら、様々な態様において、インプラントデバイスは、ロッド、ファイバ、シリンダ、ビード、リボン、ディスク、ウェハ、自由形状固形物又は他の様々な形状の固形物の形状であり得る。デバイスはいずれの規則正しい又は不規則な形状も有し得て、また円形、矩形、三角形、楕円形、二葉形、三葉形、クローバー形、C形状、パイ片形状、三日月形等の任意の断面を有し得る。特定の態様において、インプラントデバイスは細長い本体と2つの端部を有するロッド形状である。図1を参照するが、例えば、様々なロッド型インプラントデバイス100を使用することができる。図1Aでは、1つの部位を有する単一のポリマー体110を含む実質的に均質なインプラントデバイス100を、異なる放出プロファイルをもたらす1つ以上の別のインプラントデバイスと共に使用することができる。図1B及び図1Cでは、2つの断面部(112、114)又は4つの断面部(116、118、120、122)を有するポリマー体110を含むインプラントデバイス100を使用することができる。このようなデバイスは、上述の押出成形法に従って形成することができる。好ましくは、インプラントデバイスが少なくとも2つの断面部を含む場合、少なくとも1つの断面部は別の断面部とは異なる放出プロファイルを示す。
【0058】
図2を参照するが、インプラントデバイス200は、隣接する2つ以上のポリマー体部位を含み得る。このようなインプラントデバイスは、2つ以上のモジュール式部位を接続する又は例えば2つ以上の部位を同時製造することによって形成することができる。図2Aを参照するが、例えば、ポリマー体の2つのロッド状セグメント(205、210)を、そのそれぞれの端部で隣接させることができる。図2B〜2Dを参照するが、このような端部と端部とを合わせる構造は、断面が異なる(例えば、2つ以上の断面(図2Bの215、220及び図2Dの222、224、226、228)を有するセグメント又は図2Cに図示されるようなシース230に取り囲まれたコア235を有する部位)インプラントデバイスセグメントと組み合わせて使用することもできる。上述したように、インプラントデバイスの1つ以上の部位又はセクションは、別の部位又はセクションとは異なる放出プロファイルを示し得る。
【0059】
一般に、インプラントデバイスのサイズはその意図する用途に左右されるため可変である。例えば、主に薬物を送達するために使用され且つ注射器具によって投与されるインプラントデバイスの場合、このインプラントデバイスは、トロカール等の注射器具(例えば、センチメートル範囲)内に収まるサイズに形成される。上述したように、複数のインプラントデバイスのそれぞれのサイズは、生理活性剤の量ひいてはその放出プロファイルに影響し得る。このため、インプラントデバイスのサイズを、所望の放出プロファイルが得られるように選択することができる。キット用のインプラントデバイスの正確な形状は、所望の治療効果、埋め込みが可能な物品の使用が意図される生理環境、外科手技及び利便性を含めた様々な要素に左右される。
【0060】
開示のインプラントデバイスを、事実上いずれの更なるインプラント加工法と組み合わせて使用することもできる。このため、インプラントデバイスの1つ以上の表面をコーティング組成物で被覆することができる。このコーティング組成物は、別の成分(別の生理活性剤、添加剤等)を更に含み得て、例えばとりわけ塩、糖、多糖、水溶性添加剤、非水溶性添加剤、部分的に水溶性の添加剤、水溶性ポリマー、非水溶性ポリマー及び部分的に水溶性のポリマーが含まれる。
【0061】
インプラントデバイスのその表面の少なくとも一部又は全てに溶媒処理を施すこともできる。インプラントデバイスのための溶媒処理法は、Ticeらの「Methods for manufacturing delivery devices and devices thereof」(米国特許出願公開第20060029637号)の明細書に記載され、この文献は、溶媒処理法のその教示に関し、参照によって全て本明細書に組み込まれる。様々な態様において、インプラントデバイスのその表面の一部だけ、例えばインプラントデバイスの端部又は縦側だけが処理を施され得る。更なる態様において、複数のインプラントデバイスは、溶媒処理を施された1つ以上のインプラントデバイス、溶媒処理を施されていない1つ以上のインプラントデバイス及び/又は異なるやり方で(例えば、異なる部位上に又は異なる溶媒若しくは溶媒溶液を使用して)溶媒処理を施された1つ以上のインプラントデバイスを含み得る。様々な組み合わせの溶媒処理プロトコルを採用することによってインプラントデバイスの放出プロファイルを更にカスタマイズすることもできる。インプラントデバイスに溶媒処理を施す場合、インプラントデバイスの処理に使用する溶媒は溶媒だけを含有し得る又は溶媒処理後にインプラントデバイスの少なくとも一部を被覆するポリマー若しくは別の物質を含有し得る。このため、幾つかの態様において、インプラントデバイスを、溶媒処理法を利用して浸漬被覆することができる。
【0062】
好ましい態様においては、少なくともそのうちの2つが放出プロファイルで異なる複数のインプラントデバイスを使用することによって所望の累積放出プロファイルを得る。1つの特定の態様においては、単体で押出成形されたロッドから形成された2つ以上のインプラントデバイスを一緒に使うことによって所望の累積放出プロファイルを得る。この複数のインプラントデバイスを単一の混合物、例えば複数のインプラントデバイスを含む注射可能な組成物として又は別々のインプラント、例えば別々に注射するインプラントとして使用することができる。
【0063】
1つの態様において、複数のインプラントデバイスがキット中に存在し得る。キット中の複数のインプラントデバイスの少なくとも2つが異なる放出プロファイルを示す限り、キットの複数のインプラントデバイスはそれぞれ単一又は複数のポリマー体を含み得る。キットはインプラントデバイスに適したパッケージ又は容器を含み得る。例には滅菌パッケージが限定することなく含まれる。更なる態様において、キットにはあらかじめ包装された注射器具が同封され得て、この包装済みの注射器具は、インプラントデバイスを装填した注射器具を含む。適切な注射器具には、限定することなくシリンジ、トロカール等が含まれる。
【0064】
キットは、生理活性剤との関連で上述したように、インプラントデバイスを含有する組成物、例えば医薬組成物も含み得る。上記の医薬組成物のいずれを利用しても、インプラントデバイスを患者に送達するための媒質を含有させる又は提供することができる。
【0065】
上述したように、インプラントデバイスを使用することによって、生理活性剤を、例えばその生理活性剤が効果的な疾患を治療するために、それを必要とする患者に投与する。インプラントデバイスは、患者のいずれの組織又は体液にも投与することができる。同様に、投与方式もいずれの適切なものであり得て、例えば皮下注射、経口投与等である。投与するインプラントデバイスの数は一般に生理活性剤の所望の用量に基づいて選択され、この用量は疾患によって大きく異なるが、医薬品分野の当業者なら簡単に求めることができる。
【0066】
インプラントデバイスはいずれの所望の患者にも埋め込むことができる。患者は脊椎動物、例えば哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類又は両生類であり得る。本明細書で開示の方法の患者は、例えばヒト、ヒト以外の霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット又はげっ歯類であり得る。患者という用語は特定の年齢や性別を表わさない。このため、雌雄を問わず成体の及び新生児(仔)の患者並びに胎児もカバーすることが意図される。
【0067】
生理活性剤は、本発明が有利となる様々な方法論に従って患者に投与することができる。例えば、開示のインプラントデバイスを、疾患の治療に十分な所望の定常状態薬物動態レベルに到達させるために、経口剤形の生理活性剤を使用した用量漸増法で事前に治療した患者に使用することができる。当業者なら、このような先行の用量漸増法で得られた情報を利用することによって必要な放出プロファイルが得られるインプラントデバイス又は複数のインプラントデバイスを処方することができる。したがって、経口での用量漸増法で得られた情報を既知の経口バイオアベイラビリティ値と共に使用することによって、同じ(又は同様の)薬物動態レベルに到達させるためにインプラント製剤から必要とされる等価用量率を推定することができる。このような既定のターゲット用量レベルを利用して複数のインプラントの組み合わせを選択し、患者に投与することによって、疾患の形態及び/又は重症度への対処に必要な所望のターゲット用量率レベルを達成することができる。
【0068】
或いは、インプラント製剤そのものを使用して(例えば、複数のインプラントデバイスを使用して)用量漸増研究を行うことができる。この態様では、疾患の治療に十分な所望の定常状態薬物動態レベルを達成するために、初期の投薬を血漿薬物動態レベルを監視しながら行うことができ、続く投薬を異なる組み合わせのインプラント又はインプラントの部位の組み合わせ又はその両方を使用して行うことができる。所望の定常状態薬物レベルをもたらす適切なインプラント製剤が一旦同定されたら、この製剤を、長期治療又は慢性疾患の治療のための次の投薬段階で使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下の実施例は、本明細書で請求の化合物、組成物、物品、デバイス及び/又は方法をどのようにして形成し評価するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するためのものであり、純粋に本発明を例示することを意図しており、また発明者が発明として見なすものの範囲を限定することを意図していない。数(例えば、量、温度等)に関して精度を確保するための努力がなされたが、若干のエラー及び偏差も考慮されるべきである。特に記載がない限り、「部」とは質量部であり、温度は℃又は周囲温度であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0070】
以下で論じる製剤は、インプラントデバイスの皮下埋め込み、インプラントデバイスの患者への注射(例えば、患者の血流中)を含めた様々な方法によって投与することができた。放出プロファイルは、例えば液体クロマトグラフィ(LC)、質量分析(MS)又はLC−MS混合法を利用して生理活性剤の血中又は血漿中レベルを監視することによって作成することができた。
【0071】
実施例1:インプラントデバイスの形成
以下で論じる特定のインプラントデバイスは、生理活性剤として酢酸ゴセレリンを使用して調製された。以下の製剤のそれぞれは、Turbula Shaker MixerタイプT2Fを使用してブレンドされた。ブレンディングは、各ブレンドについて設定0.67で20分間にわたって行われた。次に、ブレンドを、Tinius OlsenモデルUE−4−78メルトプラストメータを使用して押出成形した。このプラストメータは、直径約80mm、高さ/長さ約160mmの鋼の固形ブロックであり、直径約13mmの中空のコアを有する。コアの開口部は、押出成形されるロッドの所望の直径に基づいて異なるサイズのダイの使用を可能にする段部を有する。以下の実施例では1.2mmのダイを使用したが、これはダイのコアの直径が1.2mmであったことを意味する。このプラストメータの主要ブロックは、このプラストメータの所望の温度への加熱を可能にする、断熱材及び覆いで囲まれたヒーターバンドを有する。ブロックの温度を測定するために熱電対を使用した。次に、制御システムは、この熱電対の値を利用してヒーターバンドをオン又はオフにする。押出成形工程全体を通じて、ヒーターバンドは、オンオフの切り替えによって所望の温度を維持する。それぞれ約2gのブレンドを、90℃に平衡化されたプラストメータに投入した。ブレンドを圧縮するためにプラストメータのコアにチャージングロッドを入れ、このチャージングロッドの端部におもりを載せてブレンドの締固めを支援した。ブレンドを平衡化した。チャージングロッド上に押出荷重を載せた後、排出領域のプラグを外して押出成形を開始した。押出成形ロッドのセグメントが装入物2gで得られた。
【0072】
製剤A
インプラント製剤Aを、生理活性剤及びポリ(DL−ラクチド)を使用して調製した。ポリ(DL−ラクチド)は、インヘレント粘度0.26dL/g(30℃、クロロホルム中のポリマー濃度0.5gm/dLで測定)を有していた。インプラント中の所望の生理活性剤含有量は、酢酸ゴセレリン5質量%であった。製剤Aから得た押出成形ロッドを、各インプラントが1mgの生理活性剤を含有するように切断した。
【0073】
製剤B
インプラント製剤Bを、生理活性剤及び85:15ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)を使用して調製した。ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)は、インヘレント粘度0.37dL/g(30℃、クロロホルム中のポリマー濃度0.5gm/dLで測定)を有していた。インプラント中の所望の生理活性剤含有量は、酢酸ゴセレリン5質量%であった。製剤Bから得た押出成形ロッドを、各インプラントが1mgの生理活性剤を含有するように切断した。
【0074】
製剤C
インプラント製剤Cを、生理活性剤及びポリ(DL−ラクチド)を使用して調製した。ポリ(DL−ラクチド)は、インヘレント粘度0.26dL/g(30℃、クロロホルム中のポリマー濃度0.5gm/dLで測定)を有していた。インプラント中の所望の生理活性剤含有量は、酢酸ゴセレリン10質量%であった。製剤Cから得た押出成形ロッドを、1mgの生理活性剤、2mgの生理活性剤及び4mgの生理活性剤を含有するインプラントが得られるように様々な長さに切断した。
【0075】
製剤D
インプラント製剤Dを、生理活性剤及び85:15ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)を使用して調製した。ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)は、インヘレント粘度0.37dL/g(30℃、クロロホルム中のポリマー濃度0.5gm/dLで測定)を有していた。インプラント中の所望の生理活性剤含有量は、酢酸ゴセレリン25質量%であった。製剤Dから得た押出成形ロッドを、1mgの生理活性剤、2mgの生理活性剤及び4mgの生理活性剤を含有するインプラントが得られるように様々な長さに切断した。
【0076】
製剤E
インプラント製剤Eを、生理活性剤及び85:15ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)を使用して調製した。ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)は、インヘレント粘度0.37dL/g(30℃、クロロホルム中のポリマー濃度0.5gm/dLで測定)を有していた。インプラント中の所望の生理活性剤含有量は、酢酸ゴセレリン10質量%であった。製剤Eから得た押出成形ロッドを、1mgの生理活性剤、2mgの生理活性剤及び4mgの生理活性剤を含有するインプラントが得られるように様々な長さに切断した。
【0077】
製剤F
インプラント製剤Fを、生理活性剤及びポリ(DL−ラクチド)を使用して調製した。ポリ(DL−ラクチド)は、インヘレント粘度0.26dL/g(30℃、クロロホルム中のポリマー濃度0.5gm/dLで測定)を有していた。インプラント中の所望の生理活性剤含有量は、酢酸ゴセレリン25質量%であった。製剤Fから得た押出成形ロッドを、1mgの生理活性剤、2mgの生理活性剤及び4mgの生理活性剤を含有するインプラントが得られるように様々な長さに切断した。
【0078】
実施例2:同一の負荷/異なるポリマー
所望の生理活性剤放出プロファイルを達成するために、ポリマーを変更することができる。その例が、上述の製剤Dと製剤Fとの比較である。製剤D及び製剤Fの放出プロファイルを図3に示す。
【0079】
実施例3:異なる負荷/同一のポリマー
所望の放出プロファイルを達成する別のアプローチは、インプラント中の生理活性剤の負荷を変更することである。その例が、上述の製剤Cと製剤Fとの比較である。製剤C及び製剤Fの放出プロファイルを図4に示す。
【0080】
実施例3:複数のインプラントデバイスの使用
異なる製剤を様々な量で使用することによって、1度で投与する1回分の生理活性剤を調製することができる(図5、6)。図5は、製剤C及び製剤Fの放出を示す。図5のグラフに示された残りは全て4mgの生理活性剤を有するが、異なる製剤のインプラントを組み合わせて得られたものである。図6では、異なる組み合わせとの比較のためのベースとして製剤D及び製剤Fを使用する。これらのグラフから明らかなように、放出動態の操作性は、複数のインプラントの使用を通じて大幅に強化される。
【0081】
実施例4(予言):用量のカスタマイズ
日平均放出率(期間:約4週間)が異なる一組のインプラント製剤を個別に調製することができる。製剤1、2、3では、1日あたり4週間にわたってそれぞれ薬物約2、4及び8μgの放出率(日)が得られる。
【0082】
患者1は、(経口バージョンの薬物を使用した事前の用量漸増法に基づく)それまでの経験から、約8μg/日のレベルでのこの薬物による治療を、この患者の特定の形態及び重症度の疾患の治療に必要としていると判明している。
【0083】
患者2は、(これまでの同様の経験から)、12μg/日のレベルでのこの薬物による治療を、この患者の特定の形態及び重症度の疾患の治療に必要としていると判明している。
【0084】
患者3は、(これまでの同様の経験から)、14μg/日のレベルでのこの薬物による治療を、この患者の特定の形態及び重症度の疾患の治療に必要としていると判明している。
【0085】
本発明を使用して、患者1はしたがって1回分の製剤3の投与によって治療することができた。患者2はしたがって1回分の製剤2及び1回分の製剤3の投与によって治療することができた。患者3はしたがって1回分の製剤1、1回分の製剤2及び1回分の製剤3の投与によって治療することができた。製剤1〜3は、上述したように、インプラントの組み合わせ又は図1B、1C、図2A〜Dのような異なるポリマー体若しくはセクションを有するインプラントの使用又はその両方によって得ることができる。
【0086】
様々な改変及び変更を、本明細書に記載の化合物、複合材料、キット、物品、デバイス、組成物及び方法に加えることができる。本明細書に記載の化合物、複合材料、キット、物品、デバイス、組成物及び方法の他の態様は、本明細書に開示の化合物、複合材料、キット、物品、デバイス、組成物及び方法の仕様及び実践を考えると明らかである。仕様及び実施例は例示と見なされることを意図したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性剤を患者に送達するための方法であって、
患者に複数のインプラントデバイスを投与することによって、該生理活性剤を前記患者に送達することを含み、
各インプラントデバイスが、前記生理活性剤を中に及び/又は表面上に有する生分解性ポリマー体を含み、前記生理活性剤が前記ポリマー体から放出可能であり、
放出プロファイルが、前記生理活性剤の前記ポリマー体からの放出を特徴付け、
前記インプラントデバイスの少なくとも2つが放出プロファイルで異なる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
各インプラントデバイスが、ほぼ同時に前記患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のインプラントデバイスが、1回の注射で投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者が疾患を有し、投与ステップによって前記疾患の治療に有効な量の前記生理活性剤が前記患者に投与される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記患者が疾患を有し、投与ステップに先立って、前記疾患の治療に有効な生理活性剤の量及び放出プロファイルが決定され、また
前記疾患の治療に有効な生理活性剤の量及び放出プロファイルが得られるように前記複数のインプラントデバイスを選択することによって前記疾患を治療する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記生理活性剤の量及び放出プロファイルが、前記生理活性剤の用量を前記患者に事前に投与した際に生じた用量反応の評価を通じて決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患が、慢性疾患である、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
生理活性剤を患者に送達するための方法であって、
患者にインプラントデバイスを投与することによって生理活性剤を前記患者に送達することを含み、
前記インプラントデバイスが、少なくとも2つの隣接した部位を有するポリマー体を含み、各部位が前記生理活性剤をその中及び/又はその表面上に含み、前記生理活性剤が前記少なくとも2つの隣接した部位から放出可能であり、
放出プロファイルが、前記生理活性剤の前記部位のそれぞれからの放出を特徴付け、
少なくとも2つの部位が放出プロファイルで異なり、
前記部位がコア/シース構成のみで隣接しない、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記インプラントデバイスが、注射剤として投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が疾患を有し、投与ステップによって前記疾患の治療に有効な量の前記生理活性剤が、前記患者に投与される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が疾患を有し、投与ステップに先立って、前記疾患の治療に有効な生理活性剤の量及び放出プロファイルが決定され、また
前記疾患の治療に有効な生理活性剤の量及び放出プロファイルが得られるように前記インプラントデバイスの部位を選択することによって前記疾患を治療する、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記生理活性剤量及び放出プロファイルが、前記生理活性剤の用量を前記患者に事前に投与した際に生じた用量反応の評価を通じて決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が、慢性疾患である、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー体が、少なくとも2つの断面部を含む、請求項8〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー体が、4つの断面部を含む、請求項8〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー体が、少なくとも2つのセグメントを含む、請求項9〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのセグメントが、2つ以上の部位を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記セグメントの少なくとも1つが、2つの部位のコア/シース構造に構成され、少なくとも1つの別のセグメントが、1つ以上の部位の非コア/シース構造に構成される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
複数のインプラントデバイスを含むキットであって、
各インプラントデバイスが、生理活性剤を中に及び/又は表面上に有する生分解性ポリマー体を含み、前記生理活性剤が、前記ポリマー体から放出可能であり、
放出プロファイルが、前記生理活性剤の前記ポリマー体からの放出を特徴付け、
前記インプラントの少なくとも2つが放出プロファイルで異なる
ことを特徴とするキット。
【請求項20】
前記複数のインプラントデバイスが、医薬担体中に含有される、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記複数のインプラントデバイスを患者に注射するための注射器具を更に含む、請求項19又は20に記載のキット。
【請求項22】
前記複数のインプラントデバイスが、前記注射器具に装填される、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
放出プロファイルで異なる前記インプラントの少なくとも2つが、異なる生分解性ポリマー、異なる生理活性剤の量、異なる生理活性剤、異なるサイズ、異なる表面特性又はこれらの組み合わせを含む、請求項20〜22のいずれかに記載のキット。
【請求項24】
インプラントデバイスであって、
少なくとも2つの部位を有するポリマー体を含み、前記部位のそれぞれが生理活性剤をその中及び/又はその表面上に含み、前記生理活性剤が、前記少なくとも2つの隣接した部位から放出可能であり、
放出プロファイルが、前記生理活性剤の前記部位のそれぞれからの放出を特徴付け、
少なくとも2つの部位が、放出プロファイルで異なり、
前記部位がコア/シース構成のみで隣接しない、
ことを特徴とするインプラントデバイス。
【請求項25】
前記ポリマー体が、少なくとも2つの断面部を含む、請求項24に記載のインプラントデバイス。
【請求項26】
前記ポリマー体が、4つの断面部を含む、請求項24又は25に記載のインプラントデバイス。
【請求項27】
前記ポリマー体が、少なくとも2つのセグメントを含む、請求項24〜26のいずれかに記載のインプラントデバイス。
【請求項28】
少なくとも1つのセグメントが2つ以上の部位を含む、請求項24〜27に記載のインプラントデバイス。
【請求項29】
前記セグメントの少なくとも1つが、コア/シース構造に構成され、少なくとも1つの別のセグメントが、非コア/シース構造に構成される、請求項28に記載のインプラントデバイス。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−505251(P2013−505251A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529897(P2012−529897)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/049104
【国際公開番号】WO2011/035013
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512069658)エボニック デグサ コーポレイション (9)
【Fターム(参考)】