説明

放射性モリブデンの製造方法と装置及びその方法と装置で製造された放射性モリブデン

【課題】放射性診断薬である放射性テクネチウム(99mTc)の親核種である放射性モリブデン99Moの製造方法として、原料としてウランを用いない効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】Mo化合物を水に溶解したMo水溶液を、原子炉の炉心に設置した照射キャプセル中で中性子を照射して98Mo(n,γ)反応によって99Moを生成させ、そのMo水溶液を連続的あるいはバッチ的に回収することによって効率的に99Moを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性診断薬である放射性テクネチウム(99mTc)の親核種である放射性モリブデン99Moの効率的な放射性モリブデンの製造方法と装置及びその方法と装置で製造された放射性モリブデンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガンや内臓疾患あるいは内臓の機能検査などの診断に世界中で広く大量に用いられている放射性テクネチウム(99mTc)はその寿命(半減期)が6.0時間と短いため、通常その親核種である放射性モリブデン99Moが製造され、その99Mo(半減期:66時間)から99mTcを抽出して医療診断などに利用している。
【0003】
その99Moは、従来235Uを95%程度濃縮した高濃縮ウランを原料として、それを原子炉で中性子照射して核分裂反応させ、その核分裂生成物の中の99Moを抽出して製造されている。この濃縮ウランを用いる方法は、特に核不拡散の観点から国際原子力機関IAEAがそのウラン(235U)濃縮度が20%以下の低濃縮ウランを用いる技術に切替えるための働きかけを世界各国に行っており、その技術開発が世界中で進められている。しかし、ウラン濃縮度を20%以下にした低濃縮ウランを99Mo製造用の原料に用いると、核分裂反応に伴って生成する多量の放射性廃棄物が発生し、特にプルトニウムの生成量が約25倍に増えてしまう問題が新たに提起されている。そのため、99Mo製造のためにウランを原料に用いる核分裂法自体が見直されている。
【0004】
99Mo製造のためのウランを原料とする方法で上記の問題があるが、一方99Mo製造のための原料としてウランを用いない方法として天然Mo化合物あるいは98Moが濃縮されたMo化合物の固体物質を原子炉中で中性子線を照射する(n,γ)法による99Moの製造が実用化されている。この場合、天然同位体のMo化合物である酸化モリブデン(MoO3)を粉末状あるいはペレット状のいずれも固体状態で原子炉中で中性子を照射して98Mo(n,γ)99Moの核反応(この核反応を、以下(n,γ)反応あるいは(n,γ)法と示す)により行う。この方法は、ウランを原料にする核分裂法に対し、比放射能が非常に低い99Moしか製造できないが、ウラン法のように核分裂に伴う放射性廃棄物を発生せずしかも低コストの製造ができる利点を有する方法として以前から検討され、現在ゲル法99mTcジェネレータとして実用化されている。しかし(n,γ)法のゲル法99mTcジェネレータの場合は、特にその製造上の再現性と品質面の問題があり、広く普及するに至っていない。(n,γ)法で製造した99Moの比放射能が低いため、従来の小型なカラム型で99mTcを回収する技術を実用化することができなかったが、最近高性能のMo吸着材の開発として下記の特許文献1と特許文献2によって、この比放射能の低い(n,γ)法99Moから99mTcを回収できるようになり、そのためMo化合物を原料とする(n,γ)法によって99Moを製造する方法の実用化に期待が寄せられている。
【特許文献1】特開平8‐309182号公報
【特許文献2】特開平10‐30027号公報
【0005】
以上の通り、固体のMo化合物を原子炉で中性子照射し(n,γ)反応で99Moを生成させ、それから99mTcを抽出する方法の実用性が見出された。本発明は、原子炉で照射するMo化合物を固体状態から水溶液状態に替えることによって、99Moの製造能力を増大してしかも連続的に低コストで製造する方法に関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの(n,γ)法による99Moは、一般に酸化モリブデン(MoO3)の粉末状かペレット状に加工した固体物質を原料として、それを密封容器に封入し、原子炉の材料照射設備で原子炉内に送入し一定時間(一般に5〜7日間)中性子を照射した後で回収し、さらに回収した密封容器を開封しその中の内容物(MoO3中に99Moが生成し混在)をアルカリ性溶液の例えば苛性ソーダやアンモニア水と反応させ溶解させる方法によって製造される。しかし、原料としての酸化モリブデンの調整や品質管理が煩雑であること、一定時間の照射中は同じ照射体を継続して照射する必要があり、そのため原料が入った照射体の入替えができないために99Moの製造能力が低いことなどの課題があった。
【0007】
従来の固体のMoO3原料を照射する設備は、その設置に膨大なコストがかかる上、製造能力が低くしかもMoO3原料を封入した照射用容器(金属製)を照射する都度新品の容器を用いる必要があり、しかも使用後(照射後)はその容器自体が放射化され放射性汚染廃棄物になってしまうため、99Moの製造量が増大するとともに放射性汚染廃棄物が増大する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は第一に、天然同位体比の98Moを含有するMo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液を用いて、原子炉中で中性子を照射して98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させMo水溶液を回収することによって99Moを得ること、あるいはそのMo水溶液を流通あるいは循環させて98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させ連続的またはバッチ的にMo水溶液を回収することによって99Moを得ること、以上を特徴とする放射性モリブデンの製造方法である。
【0009】
本発明は第二に、天然同位体比の98Moを含有するMo化合物あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物、それらを水に溶解したMo水溶液を原子炉中で中性子を照射して99Moを製造する方法として、当該Mo化合物としてモリブデン酸アンモニウムであることを特長とするMo水溶液を原子炉中で中性子を照射して99Moを製造することを特徴とする放射性モリブデンの製造方法である。
【0010】
本発明は第三に天然同位体比の98Moを含有するMo化合物あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物、それらを水に溶解したMo水溶液を原子炉中で中性子を照射して99Moを製造する前記の第一または第二の方法において、原子炉中で水溶液が照射された際に水の放射線分解によって生成する水素及び酸素の気体を連続的あるいは定期的に抽出し、その抽出ガス中の水素と酸素を不活性気体でパージして廃棄する機能、あるいは抽出ガス中の水素と酸素を触媒で再結合させて水に戻し回収する機能、これらの水の放射線分解によって生成する水素及び酸素の除去回収機能を有することを特長とするMo水溶液を原子炉中で中性子を照射して99Moを製造することを特徴とする放射性モリブデンの製造方法である。
【0011】
本発明は第四に、天然同位体比の98Moを含有する天然Mo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液について、原子炉中で中性子を照射するためにそのMo水溶液を原子炉中に流通させて98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させた後、連続的またはバッチ的にMo水溶液を回収することによって99Moを得る99Moの製造方法において、炉心に流通型の照射キャプセルを設置し、そのキャプセル中にMo水溶液を流通させることによって連続的あるいはバッチ的に99Moを生成させ回収できる機能を有することを特徴とするMo水溶液通液型の放射性モリブデンの製造装置である。
【0012】
本発明は第五に、天然同位体比の98Moを含有する天然Mo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液について、炉心に設置した流通型の照射キャプセル中にMo水溶液を流通させることによって連続的あるいはバッチ的に99Moを生成させ回収できる機能を有するMo水溶液通液型の99Mo製造装置において、一定量のMo水溶液を連続的あるいはバッチ的に注入する設備、生成した99Moを連続的あるいはバッチ的に回収する設備、照射キャプセル中に生成した水の放射線分解反応によって生成した気体の水素と酸素を抽出除去する設備、その抽出した気体の水素と酸素を再結合反応で水に戻す機能を有する触媒を充填した設備、照射キャプセル内の除熱を行うための熱交換器を附属させたMo水溶液の循環設備、生成した99Moを連続的あるいはバッチ的に取出して回収する設備、99Moの生成量及び回収量を測定する設備、さらに生成し回収した99Mo及び共存する娘核種の99mTcから発生するγ線などの放射線を遮蔽するための設備、これら99Moを製造する設備ならびに回収する設備から構成されることを特徴とするMo水溶液を注入し通液し回収するための放射性モリブデンの製造装置である。
【0013】
本発明は第六に、天然同位体比の98Moを含有する天然Mo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液について、原子炉中で中性子を照射するためにそのMo水溶液を原子炉中に流通させて98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させた後、連続的またはバッチ的にMo水溶液を回収することによって99Moを得る99Moの製造方法において、炉心に流通型の照射キャプセルを設置し、そのキャプセル中にMo水溶液を流通させることによって連続的あるいはバッチ的に99Moを生成させ回収できる機能を有するMo水溶液通液型の99Mo製造装置により製造したことを特徴とする放射性モリブデンである。
【0014】
本発明によれば、従来の高コストな照射設備に比べはるかに低コストの照射キャプセルと呼ばれる照射設備を用いる方法であり、そこに連続的あるいはバッチ的にMo水溶液を通液する方法により、99Moの製造能力を増大して連続的に低コストで製造できる。
【0015】
本発明によれば、溶液を外部から注入し回収できる通液型の照射キャプセルを設置することによって、目的とする99Moを外部からMo水溶液を連続的あるいはバッチ的に注入するだけで製造でき、その99Mo製造に伴って発生する従来法の照射容器のような放射性汚染廃棄物の発生は無い。しかも、生成した99Moを含むMo水溶液は回収した後の処理操作が不要で、その状態のままガラス製バイアル瓶のような専用容器に分取回収し梱包するだけで出荷できるため、原料の仕込みから目的物である99Moの回収に至るプロセス全体を従来法に比べ簡素化できる。
【0016】
以上のように、本発明によれば、設備費が安価である、製造に伴う放射性汚染廃棄物の発生が無い、製造工程全体がシンプルである、それらの理由から99Mo製造コストが安価であるなどの特徴を有している。
【発明の効果】
【0017】
従来の固体照射法の場合、MoO3の粉末状あるいはそれをペレット状に加工して使用するが、中性子照射後は99Moが多量に生成するため、照射後に行う水溶液に溶解する操作はなるべくペレット状が望ましい。その理由は、それを溶解する操作の段階で放射性の99Moを多量に含む粉末の場合、その粉末が飛散したりこぼす恐れがあり、そのため放射性物質(99Mo)で作業区域を汚染する恐れがあるためである。さて、原料としてのMoO3をペレット状に調整することは、そのペレット化に複雑な操作を伴いしかもペレット化の操作で不純物が混入し易いためその品質を管理し維持することに困難が伴う。一方、本発明の原料であるMo水溶液の場合は、用いるMo化合物(モリブデン酸アンモニウム)の品質を高純度に保つことによってそれを純度の高い水に溶解するだけで調整することが可能であり、Mo水溶液中に不純物がある場合でもアルミナカラム等に通液するだけで吸着除去できるため、Mo水溶液照射法の場合は固体MoO3照射法に比べその照射体原料の調整が容易であり高い品質を維持することが容易である。
【0018】
次に、固体照射法の場合は、MoO3照射体が粉末状の場合はまず石英管で密封し、その後さらにそれを金属製(一般にアルミニウム系金属)の照射用容器に密封封入する必要がある。なお、MoO3照射体がペレット状の場合は、直接金属製の照射用容器に密封封入する。しかも、それら照射用容器は、中性子照射によって放射化されるため放射性汚染廃棄物となってしまう。一方、本発明のMo水溶液照射法の場合は、一定量のMo水溶液を連続的あるいはバッチ的にポンプで配管を通して照射キャプセルへ注入するだけの操作であり、照射用容器が不要であるため99Mo製造に伴う放射性汚染廃棄物が発生しない。
【0019】
固体照射法の場合の99Mo製造能力としては、例えば日本原子力研究開発機構が有する材料試験炉JMTRの場合、既存設備を改造した場合で220Ci(99Mo)/週であり、さらに増設した場合でも合計570Ci(99Mo)/週であり、しかもそれらの改造費や設置費としては7〜15億円程度要するという試算がある。それに比べ本発明の溶液照射用キャプセルの場合は、そのキャプセルサイズが内径55mmφで中性子が照射される700mmの高さのゾーン(有効内容積:1.66L)にモリブデン酸アンモニウムの28%水溶液を277mL/日の割合で通液するだけで上記の施設増設後の固体照射法とほぼ同等の一系統569Ci(99Mo)/週の製造能力があり、しかもその設備設置費は一系統に付き2億円程度と試算されるため、従来法に比べ99Mo製造能力と設備費の点でも本発明の優位性が分かる。
【0020】
次に、99Mo製造プロセスで比較すると、従来の固体照射法の場合は、照射用容器を原子炉の材料照射設備で原子炉内に送入し一定時間(一般に5〜7日間)中性子を照射した後で回収し、さらに回収した密封容器を開封してからその中の内容物(MoO3中に99Moが生成し混在)をアルカリ性溶液の例えば苛性ソーダやアンモニア水と反応させ溶解させる方法によって製造されるため、照射体の途中入替えができないこと、99Moを含むMoO3照射体を別な施設で開封し溶解させる必要があることなど、99Mo製品として出荷できる状態にするためのプロセスが複雑である。一方、本発明のMo水溶液照射法の場合は、99Mo回収設備のポンプを作動させるだけで99Moを含むMo水溶液を回収でき、しかもその状態のまま容器に分取し梱包するだけで出荷できるため、原料の仕込みから99Mo製品の回収に至るプロセス全体がシンプルである。
【0021】
なお、本発明の溶液照射法による社会的に有用な放射性物質の効率的な製造方法は、他の放射性物質の製造にも利用することができる。その一例として、がん治療に利用できる放射性レニウム(188Re)の場合はその寿命が短いため(188Reの半減期:17.5時間)、188Reの親核種である放射性タングステン188Wを製造し、その188Wから188Reを抽出して治療に用いられる。この場合、本発明により、天然同位体比の186Wを含有するW化合物を水に溶解したW水溶液、あるいは天然同位体比以上に186Wを濃縮したW化合物を水に溶解したW水溶液を用いて、原子炉中で中性子を照射して186W(n,γ)187W→187W(n,γ)188Wの2段階の(n,γ)反応により、W水溶液中に188Wを生成させそのW水溶液を回収することによって188Wを得ること、あるいはそのW水溶液を流通あるいは循環させて186Wを放射化することによってW水溶液中に188Wを生成させ連続的またはバッチ的にW水溶液を回収することによって188Wを得る方法により、目的とする188Wを効率的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の一実施形態を、図1に示す。原子炉の燃料の部分(炉心)に溶液照射用キャプセル4を設置する。このキャプセルはMo水溶液を導入するパイプ9と回収するパイプ10で外部のMo水溶液注入設備(6、7、8)及び生成99Mo回収容器11と接続される。予めモリブデン酸アンモニウム水溶液を調整しMo水溶液補給系6のタンクに入れておく。そのMo水溶液をポンプ7で注入しパイプ9を介して照射用キャプセルに注入される。このMo水溶液の注入は連続的あるいはバッチ的に行うことで、キャプセル内で中性子に照射される時間を調整できる。Mo水溶液の照射時間は5〜7日間必要になるが、キャプセル内のMo水溶液は外部のバルブ操作と循環ポンプ8で系統を循環させ熱交換器13と水の放射線分解によって生成する水素及び酸素ガスを抽気ガス処理系14で除去することで、炉心で放射線照射によりキャプセル内に溜る熱や水の放射線分解により生成するガスを除去できる。
【0023】
一定の中性子照射を受けたMo水溶液を99Mo回収容器11に一定量回収することにより、99Moを回収できる。この容器11には高い放射能の99Moが回収されるため、そこから放出されるγ線等の放射線を鉛などで遮蔽し、作業者の放射線被曝を低減する必要がある。99Mo回収操作は、ポンプ8・15の操作だけで行えるため、自動化することも可能である。なお、キャプセル内容積1.66L中のMo水溶液の水の放射線分解によって生成する水素及び酸素はそれぞれ一日当り0.18NLと0.09NLと少ないが、系内に溜る恐れがあるため、Mo水溶液の循環や回収の際に抽気ガス処理系14で抽気して除去する。この水素及び酸素ガスは、例えば窒素ガスやヘリウムガスのような不活性ガスでパージして系外へ排気除去するか、あるいは触媒を用いて水素と酸素を再結合させて水の状態に戻しそれをMo水溶液中に戻す。
【0024】
99Mo回収容器11に回収したMo水溶液を99Mo分取装置17へ移送し、その溶液をガラス製バイアル瓶のような99Mo出荷用容器に直接分取する。この99Mo出荷用容器は放射線遮蔽付きの輸送容器にその容器のまま入れて梱包することによって、99Mo製品として出荷できる。Mo水溶液照射法の場合、99Moの回収から99Mo製品の出荷までを短時間で行えるため、寿命の短い99Mo(半減期:66時間)の自然崩壊による減損を最小限に抑えることが可能になる。
【0025】
本発明により、日本を含む世界中で日常的に大量に医療診断で使用されている99mTcの親核種99Moの効率的な製造が可能となる。99Moは、現在高濃縮ウランを原料とする方法でそのほとんどが製造されている。しかし、従来のウランを原料とする核分裂法の場合は前記0003欄に記載した問題があるため、現在ウランを原料として用いない(n,γ)法の製造法に切替える動きがある。本発明は、(n、γ)法で99Moを大量に製造する場合に、大きな社会貢献が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例であるMo水溶液通液方式の99Mo製造装置を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 原子炉
2 炉心
3 原子炉冷却水
4 照射用キャプセル
5 遮蔽付きグローブボックス
6 Mo水溶液補給系
7 Mo水溶液注入ポンプ
8 Mo水溶液循環ポンプ
9 キャプセルへの溶液導入パイプ
10 キャプセルへの溶液回収パイプ
11 99Mo回収容器(放射線遮蔽付き)
12 99Mo回収量測定装置
13 熱交換器
14 抽気ガス処理系
15 循環ポンプ
16 99Mo分取装置
17 99Mo出荷用容器
18 輸送容器(放射線遮蔽体付き)
19 Mo水溶液注入・99Mo回収設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然同位体比の98Moを含有するMo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液を用いて、原子炉中で中性子を照射して98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させMo水溶液を回収することによって99Moを得ること、あるいはそのMo水溶液を流通あるいは循環させて98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させ連続的またはバッチ的にMo水溶液を回収することによって99Moを得ること、以上を特徴とする放射性モリブデンの製造方法。
【請求項2】
前記Mo化合物がモリブデン酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の放射性モリブデンの製造方法。
【請求項3】
天然同位体比の98Moを含有するMo化合物あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物、それらを水に溶解したMo水溶液を原子炉中で中性子を照射して99Moを製造する請求項1〜2の何れかに記載の方法において、原子炉中で水溶液が照射された際に水の放射線分解によって生成する水素及び酸素の気体を連続的あるいは定期的に抽出し、その抽出ガス中の水素と酸素を不活性気体でパージして廃棄する機能、あるいは抽出ガス中の水素と酸素を触媒で再結合させて水に戻し回収する機能、これらの水の放射線分解によって生成する水素及び酸素の除去回収機能を有することを特長とするMo水溶液を原子炉中で中性子を照射して99Moを製造することを特徴とする放射性モリブデンの製造方法。
【請求項4】
天然同位体比の98Moを含有する天然Mo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液について、原子炉中で中性子を照射するためにそのMo水溶液を原子炉中に流通させて98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させた後、連続的またはバッチ的にMo水溶液を回収することによって99Moを得る99Moの製造方法において、原子炉の炉心に流通型の照射キャプセルを設置し、そのキャプセル中にMo水溶液を流通させることによって連続的あるいはバッチ的に99Moを生成させ回収できる機能を有することを特徴とするMo水溶液通液型の放射性モリブデンの製造装置。
【請求項5】
天然同位体比の98Moを含有する天然Mo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液について、炉心に設置した流通型の照射キャプセル中にMo水溶液を流通させることによって連続的あるいはバッチ的に99Moを生成させ回収できる機能を有するMo水溶液通液型の99Mo製造装置において、一定量のMo水溶液を連続的あるいはバッチ的に注入する設備、生成した99Moを連続的あるいはバッチ的に回収する設備、照射キャプセル中に生成した水の放射線分解反応によって生成した気体の水素と酸素を抽出除去する設備、その抽出した気体の水素と酸素を再結合反応で水に戻す機能を有する触媒を充填した設備、照射キャプセル内の除熱を行うための熱交換器を附属させたMo水溶液の循環設備、生成した99Moを連続的あるいはバッチ的に取出して回収する設備、99Moの生成量及び回収量を測定する設備、さらに生成し回収した99Mo及び共存する娘核種の99mTcから発生するγ線などの放射線を遮蔽するための設備、これら99Moを製造する設備ならびに回収する設備から構成されることを特徴とするMo水溶液を注入し通液し回収するための放射性モリブデンの製造装置。
【請求項6】
天然同位体比の98Moを含有する天然Mo化合物を水に溶解したMo水溶液、あるいは天然同位体比以上に98Moを濃縮したMo化合物を水に溶解したMo水溶液について、原子炉中で中性子を照射するためにそのMo水溶液を原子炉中に流通させて98Moを放射化することによってMo水溶液中に99Moを生成させた後、連続的またはバッチ的にMo水溶液を回収することによって99Moを得る99Moの製造方法において、炉心に流通型の照射キャプセルを設置し、そのキャプセル中にMo水溶液を流通させることによって連続的あるいはバッチ的に99Moを生成させ回収できる機能を有するMo水溶液通液型の99Mo製造装置により製造したことを特徴とする放射性モリブデン。

【図1】
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【公開番号】特開2008−102078(P2008−102078A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286159(P2006−286159)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000140627)株式会社化研 (27)