説明

放射性廃棄物の処理方法

【課題】簡便かつ容易に減容することができ、また内包された化学物質が水中に漏出することがない放射性廃棄物の処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる放射性廃棄物の処理方法の代表的な構成は、長尺の放射性廃棄物を平坦に圧縮して減容し、長尺のまま保管することを特徴とする。これにより、厳密な位置合わせが不要であり、また切断によって発生する粉塵を回収する必要もないため、簡便かつ容易に減容することができる。また切断しないために内包された化学物質が水中に漏出するおそれがなく、安全に長期間保管することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所において発生する放射性廃棄物のうち、長尺の放射性廃棄物を減容して保管するための処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の原子炉内では核燃料を燃焼(核分裂)させて熱を発生させている。原子炉内にある部材や、炉水に含まれるクラッド(配管などから生じる金属不純物)は、核燃料の燃焼時に生じる中性子の照射を受けることにより放射化され、放射性物質となる。このため、各種部材は廃棄する際には放射性廃棄物となる。放射性廃棄物を大別すると、主に使用済み燃料のうち、再利用できないものは高レベル放射性廃棄物となり、その他の部材は低レベル放射性廃棄物となる。低レベルの放射性廃棄物のうち、比較的放射線レベルの高いものは原子炉から取り出しても放射線と熱を出し続けるため、水中に一時的に長期保管し、放射線量が低減してから埋設などの廃棄処理を行うことが考えられている。
【0003】
例えば、原子炉内に装荷される部材として、燃料棒を収容するチャンネルボックス(CB:Channel Box)や、制御棒(CR:Control Rod)がある。これらの部材は、原子炉の運転によって放射性物質となるため、原子炉建屋とは別に設けたサイトバンカプール内に保管される。保管される期間は、例えば代表的な放射性物質である60Coの半減期が5年程度であるから、10年程度の期間とすることにより、放射能を1/4程度まで低減させることができる。
【0004】
このように、放射性廃棄物は一時的とはいえ数年〜十数年に亘って保管するものであるから、保管する部材の量が徐々に増加する。一方、サイトバンカプールのように保管する施設の収容容積は限られており、容易に増設できるものではない。このため、限られたスペースに効率的に保管するために、減容した上で保管することが行われている。
【0005】
沸騰水型原子炉(BWR)のチャンネルボックスはほぼ四角柱をしており、その内部に燃料棒を収容している。燃料棒は金属廃棄物とは別に処理されることから、抜き出してチャンネルボックスとは別に処理される。このように四角柱(中空)のチャンネルボックスをそのまま保管しておくと、容積率が低い(隙間が多い)。このため、対角の角を切断して2つのアングル形状にし、重ね合わせて収容している。
【0006】
また制御棒は4枚のブレードが略十字型に接合された形状をしている。この形状もこのまま重ね合わせると容積率が低いことから、下部に付属する速度リミッタを切断し、中央部を切断して2つのアングル形状とし、重ね合わせて保管している。
【0007】
このような放射性廃棄物の切断に関しては、従来から様々な方法が提案されている。例えば特許文献1によれば、プラズマアークなどの切断トーチによって切断する方法や、研磨剤が混合された高圧水で切断する方法などがあるが、いずれも二次廃棄物が発生し、その除去に手間がかかる。またアシストガスを用いてレーザー切断を行うと、やはりオフガス処理が必要になる。そこで特許文献1では、バンドソーを用いて縦横に切断することにより、ガス発生がなく、隔壁が不要で、オフガス処理も不要であると説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−122075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の特許文献1の構成にあっても、バンドソーで切断したことによる粉塵(切り子)が発生し、水中に拡散することになる。このため、切断箇所から周囲の水ごと吸引してフィルタ処理をかけることになるが、その際に大量の水を処理する必要があり、設備負担が大きい。また、バンドソーを用いた場合には、切断刃を交換する必要があり、作業者の負担となる。
【0010】
またバンドソーを用いる場合に限らず、切断作業を行う場合には、正確な位置合わせが必要である。しかし、部材はクレーンで吊下して水中を移動させること、および切断作業も水中で行われることから、作業性が悪い。このため部材を切断装置に位置決めするために時間がかかり、切断作業を開始する前の準備に時間と手間を要してしまう。さらに位置決めのための装置を設けた場合には、時間短縮を図れる可能性はあるが、その装置のメンテナンス負担が発生するという問題がある。
【0011】
また、特に制御棒においては、ブレードの内部に中性子吸収棒が収容されており、中性子吸収棒の内部にはBC(Boron carbide:炭化ホウ素)などの化学物質が中性子吸収材として内包されている。このため長さ方向に分断することによる減容を行う場合には、放射化した化学物質が継続的に水中に漏出して拡散してしまうおそれがある。
【0012】
そこで本発明は、簡便かつ容易に減容することができ、また内包された化学物質が水中に漏出することがない放射性廃棄物の処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかる放射性廃棄物の処理方法の代表的な構成は、長尺の放射性廃棄物を平坦に圧縮して減容し、長尺のまま保管することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、放射性廃棄物の厳密な位置合わせが不要であり、また切断によって発生する粉塵を回収する必要もないため、簡便かつ容易に減容することができる。また切断しないために内包された化学物質が水中に漏出するおそれがなく、安全に長期間保管することができる。
【0015】
放射性廃棄物は、ピストン式のプレス機によって長手方向に所定幅ずつ断続的に圧縮することが好ましい。これにより、圧縮するための装置が大型化することを防止することができる。
【0016】
放射性廃棄物は燃料棒を収容する略四角柱のチャンネルボックスであって、チャンネルボックスは略四角柱の対角方向に圧縮してもよい。これにより、従来に比して簡単な作業でありながら同様に容積率を高めることができ、限られたスペースにできるだけ多くの部材を保管することができる。
【0017】
チャンネルボックスは、チャンネルボックスの外周面に突出するように取り付けられたチャンネルスペーサと、チャンネルボックスの開口部の角部に面を形成するクリップと、を有し、チャンネルボックスはチャンネルスペーサおよびクリップを取り付けたままで圧縮してもよい。従来のように切断する場合には、チャンネルスペーサとクリップを切断作業前に取り外す必要があった。しかし本発明のように圧縮する場合にはこれらを取り外す必要がなく、取り付けたまま圧縮することができる。したがって事前作業が簡易となり、作業容易性を高めることができる。
【0018】
放射性廃棄物は4枚のブレードが略十字型に接合された制御棒であって、制御棒はブレードが2枚ずつ近接するように圧縮してもよい。これにより、従来に比して簡単な作業でありながら同様に容積率を高めることができ、限られたスペースにできるだけ多くの部材を保管することができる。
【0019】
ブレードは内部に中性子吸収棒を収容しており、制御棒を圧縮する前に、ブレードを所定幅ごとに挟搾して線状の窪みを設けてもよい。これにより、長期保管の後にブレードを切断する際に、中性子吸収棒がブレードから脱落することを防止することができる。
【0020】
ブレードは内部に中性子吸収棒を収容し、制御棒は下部に速度リミッタを有しており、制御棒を圧縮する前に、ブレードのうち中性子吸収棒が収容されていない位置で切断することにより、速度リミッタを除去してもよい。速度リミッタは剛体のブロックであるため、ピストン式のプレス機では圧縮することが困難であるが、上記のようにあらかじめ除去することにより、プレス機を傷めてしまうおそれがない。なお、中性子吸収棒が収容されていない位置で切断することにより、化学物質が水中に漏出するおそれもない。
【0021】
圧縮はプール内の水中において実施され、プレス機から水面までの高さは放射性廃棄物の長さ以上であって、プレス機は、プールの底面からプレス機の圧縮部までの高さが放射性廃棄物の長さ以上となる架台の上に設置されることが好ましい。これにより、放射性廃棄物を水から出すことなく作業を行うことができる。
【0022】
圧縮は、底面に段差を有するプール内の水中において、低い方の底面の上方で実施することが好ましい。これにより必要とするプールの容積(必要水量)を少なくすることができ、設備の運営管理を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、厳密な位置合わせが不要であり、また切断によって発生する粉塵を回収する必要もないため、簡便かつ容易に減容することができる。また切断しないために内包された化学物質が水中に漏出するおそれがなく、安全に長期間保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】原子力発電所の概略構成を説明する図である。
【図2】燃料集合体を説明する図である。
【図3】制御棒を説明する図である。
【図4】プレス機を説明する図である。
【図5】サイトバンカプールにプレス機を設置した状態を説明する図である。
【図6】チャンネルボックスの減容処理の説明図である。
【図7】制御棒の減容処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0026】
[原子力発電所]
図1は原子力発電所の概略構成を説明する図である。図1に示す原子力発電所100は、沸騰水型原子炉(BWR)である。
【0027】
原子炉圧力容器110は原子炉格納容器120に格納されている。原子炉圧力容器110では、ウラン等からなる燃料が燃料集合体150に収容され、核分裂しながら大量の熱(熱エネルギー)を発生させる。なお燃料集合体150には、制御棒180が挿抜可能に配置されている。燃料集合体150および制御棒180については後述する。
【0028】
原子炉圧力容器110では、復水給水配管132から供給された復水および給水(炉水)が加熱され、約280〜300℃、70〜80気圧程度の高温高圧の蒸気となる。生成された蒸気は蒸気配管130を経由してタービン134へと送られる。
【0029】
タービン134は、蒸気配管130によって運ばれた蒸気が有する熱エネルギーを動力に変える機械である。原子炉圧力容器110にて発生した蒸気は、タービン134を構成する羽根に衝突し回転力を生じる。タービン134は発電機136と同軸でつながっており、タービン134の回転が直接発電機136に伝わり電気を発生させる。発電機136にて発生した電気は変圧器(不図示)へと送電され、電力として様々な場所へ供給される。
【0030】
復水器138は、タービン134を回して発生させた水蒸気を回収して冷却し、水に戻して、再度復水給水配管132を通じて原子炉圧力容器110へ送る。復水器138には、常に海水配管140により海水が循環しており、水蒸気を急激に冷却し液化する。このとき、水蒸気の体積が急激に減少するので圧力が低下し、タービン排気圧を下げることにより、タービン134の回転効率を高めることができる。
【0031】
一般に原子力発電所100では、原子炉圧力容器110および原子炉格納容器120は原子炉建屋10に収容され、タービン134および発電機136はタービン建屋12に収容される。なお、これらの建屋が1つとなっている場合もある。そして原子力発電所100の敷地内には、原子炉建屋10とは別に、廃棄物を処理または保管するためのサイトバンカ建屋14が設けられている。なおサイトバンカ建屋14は必ず設けられているとは限らず、地域単位で共用している場合もある。
【0032】
サイトバンカ建屋14には、不燃性金属類の放射性廃棄物を保管するためのサイトバンカプール210、およびその他の付随する設備を設けている。サイトバンカプール210においては、放射性廃棄物を一時的に長期間保管することにより、放射能の減少を待つ。減容した放射性廃棄物は、専用の容器に充填されて輸送され、所定の施設に埋設処分することが考えられている。高レベル放射性廃棄物である使用済み燃料以外の部材は、低レベル放射性廃棄物として埋設センター500に収容される。なお低レベル放射性廃棄物の中でも、チャンネルボックスや制御棒などの比較的放射能レベルの高い廃棄物は、一般的な地下利用に十分余裕を持った深度の処理場510への処分(余裕深度処分)が考えられている。
【0033】
図2は燃料集合体150を説明する図である。燃料集合体150は、長尺の放射性廃棄物の例としてのチャンネルボックス152の内部に多数本(8×8列や9×9列)の燃料棒154やウォーターロッド156が収容されている。燃料棒154は円筒であって、その内部には、直径10mm、高さ10mm程度の大きさの核燃料のペレットが一列に収容されている。チャンネルボックス152は、中空で長尺(4m程度)の略四角柱の形状をしている。
【0034】
チャンネルボックス152の上部には、燃料集合体150をクレーンで持ち上げるためのハンドル158が設けられている。またチャンネルボックス152の外周面にはチャンネルスペーサ160が外周面から突出するように取り付けられており、隣接するチャンネルボックス152との距離を保つように構成されている。チャンネルボックス152の上端の開口部の角部には略三角形状のクリップ162が取り付けられており、チャンネルボックス152のゆがみ防止と、燃料棒154やウォーターロッド156を弾性的に保持するストッパの役割を有している。
【0035】
チャンネルボックス152は、ジルカロイ(ジルコニウムにスズ等を添加した合金)によって形成されている。ジルカロイは中性子の吸収反応断面積が非常に小さく、また融点が高い(1800℃以上)ためである。
【0036】
図3は長尺の放射性廃棄物の例としての制御棒180を説明する図である。制御棒180は4枚のブレード182が、中央のタイロッド184によって略十字型に接合された形状をしている。ブレード182は、中空のシース186と、中実の下部ブレード188とから構成されている。シース186の中には中性子吸収棒190が収容されており、中性子吸収棒の内部にはBCが中性子吸収材として内包されている。制御棒180はセルと呼ばれる格子の中を昇降可能となっており、それぞれのセルに4つの燃料集合体150が装荷され、4つのブレード182がそれぞれ燃料集合体150の間に挿抜される。
【0037】
制御棒180の下部には、速度リミッタ192が取り付けられている。速度リミッタ192の下には、制御棒駆動機構(不図示)が嵌合するカップリングソケット194が設けられている。速度リミッタ192は傘型の形状をしており、制御棒落下時の速度を緩和する役割を有している。
【0038】
図4はプレス機を説明する図である。プレス機300は防水仕様であって、プールの水中において圧縮(減容処理)を行う。プレス機300の圧縮部は、ピストン302と、ピストン302を稼働させる水圧シリンダー304、ピストン302と対向するテーブル306、テーブル306の押し当て面の下方に配置された落下口308から構成される。またテーブル306の下方には、制御棒の減容処理を行う際に速度リミッタを切断除去する切断刃310が配置されている。
【0039】
プレス機300は、架台314の上に載置されている。架台314は剛性を有する枠組みであって、その高さはプールの底面からプレス機300の圧縮部までの高さが放射性廃棄物の長さ以上となるように設定されている。中間部に落下物受け316を有している。落下物受け316は、例えばドラム缶を利用することができ、落下口308の下からプレス機300の外側まで移動可能になっている。
【0040】
図5はサイトバンカプール210にプレス機300を設置した状態を説明する図である。サイトバンカプール210のプールサイドには、水中の部材を移動させるためのホイスト式のクレーン212が配置されている。サイトバンカプール210は底面に段差を有しており、上段底214よりも下段底216の方が深くなっている。上段底214には取り外したままの各種部材を貯蔵するための原形廃棄物貯蔵ラック220が配置されている。下段底216には、上述したプレス機300が架台314の上に載置された状態で設置されている。また下段底216には、圧縮された減容片および雑個体を貯蔵しておくための貯蔵箱架台222が設置されている。
【0041】
ここでプレス機300から水面までの高さは処理対象となる放射性廃棄物の長さ以上である。また上記したように、プールの下段底216の底面からプレス機300の圧縮部までの高さが放射性廃棄物の長さ以上となっている。これにより、原形廃棄物貯蔵ラック220に収容された放射性廃棄物をクレーン212によってプレス機300まで移動させ、プレス機300において圧縮(減容処理)を行ってから、貯蔵箱架台222に収容するまで、水から出すことなく作業を行うことができる。
【0042】
また、サイトバンカプール210の底面に段差を設け、プレス機300を下段底216に設置したことにより、必要とするプールの容積(必要水量)を少なくすることができる。したがって、設備の運営管理を容易にすることができる。
【0043】
図6はチャンネルボックスの減容処理の説明図であって、図6(a)は減容処理のフローチャート、図6(b)は圧縮されたチャンネルボックスの形状を説明する図である。
【0044】
図6(a)に示すように、クレーン212によってチャンネルボックス152をプレス機300まで移動し、圧縮部にチャンネルボックス152を上方から挿入する(S102)。次に、チャンネルボックス152を所定幅ずつ降下させながら、プレス機300のピストン302によって順次平坦に圧縮する(S104)。ここで所定幅とはピストン302の縦幅であって、たとえば30cm前後である。
【0045】
図6(b)に示すように、チャンネルボックス152はほぼ四角柱であるから、略四角柱の対角方向に圧縮することが好ましい。これにより低い圧力で圧縮することができると共に、従来に比して簡単な作業でありながら同様に容積率を高めることができ、限られたスペースにできるだけ多くの部材を保管することができる。また、圧縮する際には、チャンネルスペーサ160およびクリップ162は取り付けられたままでよい。これにより、事前作業が簡易となり、作業容易性を高めることができる。
【0046】
チャンネルボックス152の全長に亘って圧縮が終了すると、減容片をプレス機300から上方に抜き出す(S106)。そして減容片を貯蔵箱架台222へと移動して、長尺のまま保管する(S108)。なお、減容処理終了後は、上段底214に不図示のラックを設け、長期保管してもよい。
【0047】
図7は制御棒の減容処理の説明図であって、図7(a)は減容処理のフローチャート、図7(b)はクリンプ処理を説明する図、図7(c)は圧縮された制御棒の形状を説明する図である。
【0048】
図7(a)に示すように、まず制御棒180の下部に設けられた速度リミッタ192を切断して除去する(S202)。切断は、中性子吸収棒190が収容されていない下部ブレード188の位置で行う。速度リミッタ192は剛体のブロックであるため、ピストン式のプレス機300では圧縮することが困難であるが、上記のようにあらかじめ除去することにより、プレス機300を傷めてしまうおそれがない。なお、中性子吸収棒190が収容されていない位置で切断することにより、化学物質が水中に漏出するおそれもない。
【0049】
次に、ブレード182にクリンプ処理を行う(S204)。詳しくは、中性子吸収棒190が収容された位置であるシース186を、所定幅ごとに挟搾して線状の窪み186aを設ける。図7(b)に示すクリンパ330は、ニッパーのように2枚の対向する刃でブレード182を挟み込むクリンパアーム332と、クリンパアーム332を動作させる水圧シリンダー334とから構成される。
【0050】
クリンパ330はブレード182を切断するものではなく、シース186を変形させて、内部に収容された中性子吸収棒190を保持固定させるためのものである。本実施形態ではプレス機300によって圧縮のみを行い、切断せずに保管するが、いずれ埋設する際には切断してドラム缶やコンテナに充填することが想定される。そこで上記のように窪み186aを設けておけば、ブレード182を切断した際に中性子吸収棒190が脱落することを防止することができ、取り回しを容易にすることができる。
【0051】
窪み186aを設けた制御棒180は、クレーン212によってプレス機300まで移動し、圧縮部に上方から挿入する(S206)。次に、制御棒180を所定幅ずつ降下させながら、プレス機300のピストン302によって順次平坦にする(S208)。
【0052】
図7(c)に示すように、制御棒180は4枚のブレードが略十字型に接合された形状をしているから、ブレード182が2枚ずつ近接するように圧縮することが好ましい。これにより低い圧力で圧縮することができると共に、従来に比して簡単な作業でありながら同様に容積率を高めることができ、限られたスペースにできるだけ多くの部材を保管することができる。
【0053】
制御棒180の全長に亘って圧縮が終了すると、減容片をプレス機300から上方に抜き出す(S210)。そして減容片を貯蔵箱架台222へと移動して、長尺のまま保管する(S212)。なお、減容処理終了後は、上段底214に不図示のラックを設け、長期保管してもよい。
【0054】
上記説明したように、圧縮処理は切断処理に比して厳密な位置合わせが不要であり、また切断によって発生する粉塵を回収する必要もないため、簡便かつ容易に減容することができる。また切断しないために内包された化学物質が水中に漏出するおそれがなく、安全に長期間保管することができる。
【0055】
また、プレス機300をピストン式としたことにより、圧縮するための装置が大型化することを防止することができる。例えば切断装置であれば、長尺の切断対象物と同じだけの長さのガイドが必要となる。またローラを用いた圧延機であれば、ローラが大径化するために圧延機全体が大型化する。しかし上記のように所定幅ずつ圧縮していく構成であれば、圧縮装置の小型化を図ることが可能となる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、原子力発電所において発生する放射性廃棄物のうち、長尺の放射性廃棄物を減容して保管するための処理方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…原子炉建屋、12…タービン建屋、14…サイトバンカ建屋、100…原子力発電所、110…原子炉圧力容器、120…原子炉格納容器、130…蒸気配管、132…復水給水配管、134…タービン、136…発電機、138…復水器、140…海水配管、150…燃料集合体、152…チャンネルボックス、154…燃料棒、156…ウォーターロッド、158…ハンドル、160…チャンネルスペーサ、162…クリップ、180…制御棒、182…ブレード、184…タイロッド、186…シース、186a…窪み、188…下部ブレード、190…中性子吸収棒、192…速度リミッタ、194…カップリングソケット、200…焼却炉、210…サイトバンカプール、212…クレーン、214…上段底、216…下段底、220…原形廃棄物貯蔵ラック、222…貯蔵箱架台、300…プレス機、302…ピストン、304…水圧シリンダー、306…テーブル、308…落下口、310…切断刃、314…架台、316…落下物受け、330…クリンパ、332…クリンパアーム、334…水圧シリンダー、500…埋設センター、510…処理場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の放射性廃棄物を平坦に圧縮して減容し、長尺のまま保管することを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記放射性廃棄物は、ピストン式のプレス機によって長手方向に所定幅ずつ断続的に圧縮することを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記放射性廃棄物は燃料棒を収容する略四角柱のチャンネルボックスであって、
前記チャンネルボックスは前記略四角柱の対角方向に圧縮することを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記チャンネルボックスは、
前記チャンネルボックスの外周面に突出するように取り付けられたチャンネルスペーサと、
前記チャンネルボックスの開口部の角部に面を形成するクリップと、を有し、
前記チャンネルボックスは前記チャンネルスペーサおよび前記クリップを取り付けたままで圧縮することを特徴とする請求項3に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記放射性廃棄物は4枚のブレードが略十字型に接合された制御棒であって、
前記制御棒は前記ブレードが2枚ずつ近接するように圧縮することを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記ブレードは内部に中性子吸収棒を収容しており、
前記制御棒を圧縮する前に、前記ブレードを所定幅ごとに挟搾して線状の窪みを設けることを特徴とする請求項5に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項7】
前記ブレードは内部に中性子吸収棒を収容し、
前記制御棒は下部に速度リミッタを有しており、
前記制御棒を圧縮する前に、前記ブレードのうち前記中性子吸収棒が収容されていない位置で切断することにより、前記速度リミッタを除去することを特徴とする請求項6に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項8】
前記圧縮はプール内の水中において実施され、
前記プレス機から水面までの高さは前記放射性廃棄物の長さ以上であって、
前記プレス機は、前記プールの底面から該プレス機の圧縮部までの高さが前記放射性廃棄物の長さ以上となる架台の上に設置されることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法。
【請求項9】
前記圧縮は、底面に段差を有するプール内の水中において、低い方の底面の上方で実施することを特徴とする請求項8に記載の放射性廃棄物の処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−75473(P2011−75473A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229193(P2009−229193)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000221535)東電工業株式会社 (25)