説明

放射性核種錯化のための緩衝剤の使用

本発明は、キレートと放射性核種、有利にはガリウムとの錯化方法であって、錯化が、放射性核種を緩衝剤溶液中のキレートに加えることによって、加熱することなく有利には周囲温度で実施され、緩衝剤が少なくとも1個のカルボン酸官能基および多くとも2個のカルボン酸官能基を含むという条件で、この溶液の緩衝剤が放射性核種との配位のための2〜5個の官能基を含み、各配位官能基が独立してカルボン酸官能基およびヒドロキシル官能基から選択される方法に関する。それはまた、得られる注射可能な溶液にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤の改善された組成物およびかかる組成物の調製方法に関する。本発明は特に、PET(陽電子放出型断層撮影法)イメージング用の生成物、とりわけPETイメージング用の放射性核種、好ましくはガリウム68を含有する生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人の名義の文献国際公開第2007/042504号パンフレット(特許文献1)は、病院の近くまたは病院内での、非常に大型で高価なサイクロトロンの使用を必要としないので非常に有利である、特にガリウム68(Ga68)での、PETイメージングの利点を詳細に説明している。小さい専用の発生器によって生成したGa68は、まだ標識されていない「ベクター化キレート」(本出願では「コールドキット」と区別せずに呼ばれる)にカップリングし、この配位反応(コールドキットによる放射性核種の錯化)は、Ga68−「放射性標識ベクター化キレート」(本出願では「錯化されたベクター化キレート」と区別せずに呼ばれる)を提供し、それはPETイメージングのために患者に投与される。
【0003】
より具体的には、非常に有利に、ベクター化キレートは、特異的な生物学的標的(例えば、細胞受容体)、特に診断上重要な病的領域を標的にするための「ターゲティング部分」(本出願では「ターゲティング剤」または「バイオベクター」と区別せずに呼ばれる)を含み、前記ターゲティング部分は、典型的には化学的リンカー(任意の適切な結合基による共有結合)によって、シグナル部分を構成するキレートに結び付けられる。このキレートは、放射性核種を錯化することができる(例えば、DOTA、NOTA、またはPCTAなどの大環状キレート)。
【0004】
より具体的には、放射性Ga68の溶液、ガリウム発生器溶出液は、病院の専用のおよび保護区域(放射性医薬品薬局(radiopharmacy)と表示された区域)で、造影製品の製造業者によって提供される、前もって調製されたベクター化キレート溶液(コールドキット)と混合される。
【0005】
有利には、この混合は自動装置で実施され、一方で投与量の発生器溶出液Ga68が、他方で投与量のベクター化キレート(Ga68でまだ放射性標識されていない)が、この装置へ導入される。
【0006】
臨床診療における放射性核種の短い半減期(ガリウム68については68分)を考慮すると、本発明は、放射性標識造影剤の調製条件を常に改善し、特に放射性標識キレートが高純度で得られる非常に迅速で簡単な錯化を達成することを目的とする。より具体的には、本発明は、放射性標識キレートについて少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の収率および純度で、非常に短い時間で錯化を達成することを目的とする。
【0007】
ガリウム技術について、先行技術は先ず第一に、約75℃〜95℃の温度で、少なくとも15分間加熱することによって実施されるガリウム錯化を記載した。条件を満たす程度の純度は、HEPES(スルホン酸誘導体)またはアセテート緩衝剤を使用してこれらの温度で達成された。しかしながら、一方ガリウム68アイソトープの短い寿命と比較すると、この加熱時間は相対的に長く、かつ、適切な装置を必要とする。
【0008】
これらの緩衝剤は、おそらくその有効性がこの錯化に望ましい物理化学的条件、特にpH3.5〜4.5の達成下で証明されたため、およびPET−化合物生化学におけるそれらの一般的用法のために、本出願人の知る限りでは、ガリウム錯化の技術分野の当業者によって使用される唯一のものであると今まで認識されていた。
【0009】
しかしながら、これらの緩衝剤は以下の欠点を有する:
− それらの使用は、(特に濃度およびpHの)非常に特異的な物理化学的条件を必要とする。このように、これらの緩衝剤は、錯化のための広範な作業pH範囲を得ることを可能にせず、それは使用者にとって非常に制限的である。特にこれによって作業条件が固定され、規制に違反するというリスクが付随し、それは勿論医薬製品にとって主要な問題である。例えば、発生器に由来するGa68溶出液の溶液が非常に酸性である場合、使用される緩衝剤はもはや必要とされる緩衝能力を持たない可能性があり、これは、錯化を中断させかつ/またはバイオベクターを損傷する可能性あるため、この生成物が患者へ注射するために満たすべき規格に適合しないことを意味する;
− HEPES緩衝剤は薬局方に記載されておらず、そのためヒトにおける臨床使用の観点から複雑な医薬品規制問題を提起する。
【0010】
錯化過程を改善するために、先行技術研究は、使用することができる緩衝液には言及しなかったが、加熱方法またはかかる加熱の必要性を説明した。
【0011】
このように、先行技術ではその後、文献国際公開第2004/089425号パンフレット(特許文献2)において、配位のより迅速なマイクロ波法が記載され、この方法では加熱ステップを回避することが意図される一方で、依然として同じ緩衝剤が使用されている。しかしながら、このマイクロ波ステップはまた、使用者に制限をもたらし、そして実際に多くの場合この処理に敏感であるベクター化キレート、薬理学的なバイオベクター、特にペプチド、有機薬理作用団、ビタミン、およびタンパク質が損傷および/または分解されるというリスクを示す。
【0012】
これらの問題を回避するために、刊行物Velikyan et al、Bioconjugate Chem、2008、19、569−573(非特許文献1)に記載される配位方法では、周囲温度でかつマイクロ波を伴わないが、特定の非常に特異的な濃度およびpH値で、以前に既に使用された緩衝剤、より正確にはHEPESまたは酢酸ナトリウム緩衝剤が使用される。より具体的には、HEPES緩衝剤はpH4.6〜4.8および1Mで有効であると記載され、アセテ−ト緩衝剤はpH4.6〜4.8および0.4Mで有効であると記載されている。
【0013】
このように、全体としては、先行技術では、特に周囲温度での錯化は、特定の緩衝剤(HEPES、アセテート)のみを非常に特異的な物理化学的条件下で使用する必要があることが教示されている。
【0014】
このように、先行技術を考慮すると、特定の非常に独特でとても厳しい物理化学的条件のみが、周囲温度でのこれらの緩衝剤の使用を可能にする。本発明は、ガリウム錯化のために効率的でかつ様々な化学的条件で使用することができる緩衝剤を得るという課題を解決することを目標としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2007/042504号
【特許文献1】国際公開第2004/089425号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Velikyan et al、Bioconjugate Chem、2008、19、569−573
【発明の概要】
【0017】
驚くべきことに、本出願人は、先行技術におけるよりも厳しくなくより制限されない物理化学的錯化条件(特に濃度およびpH)下で、HEPESおよびアセテート以外である薬局方の特定の適切な緩衝剤を錯化反応のために使用することによって、加熱ステップもマイクロ波も伴わず、特に周囲温度で、特に(15分未満での、好ましくは10分未満での、より好ましくは3〜10分、例えば5〜8分での)錯化の迅速さの観点および放射性標識キレートの品質の観点から、錯化が成功裡に得られることを指摘した。特に、幾つかのキレート(特に、NOTAおよびPCTA)の場合、ならびに、匹敵する物理化学的特性を有することが本出願人によって観察された幾つかの緩衝剤の場合に、非常に満足できる結果が得られた。これらの結果を、加熱またはマイクロ波を伴わず、周囲温度で得ることさえも可能であり、それは先行技術を鑑みると特に意外なことである。もっと強い理由から、これらの緩衝剤は周囲温度で使用できるので、本出願人の薬局方緩衝剤が加熱およびマイクロ波を使って使用できることが明記され、それは、例えばある種のバイオベクターにとって(または錯化を行う自動装置がこの自動プログラミングを含む場合には)望ましい場合もある。
【0018】
本出願人の緩衝剤は、好適な程度の錯化、有利には少なくとも92%、95%、97%、および十分な純度(少なくとも92%、95%、97%)、および好ましくは排除されるべき沈澱の形成を伴わずに、申し分のない錯化を可能にする。
【0019】
より具体的には、本出願人は、以下に記載する少なくとも2個のガリウム68−配位官能基を含む緩衝剤により、詳細な実施例において記載するように、非常に有利な結果を得た。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この趣旨で、第1態様によれば、本発明は、放射性核種、有利にはガリウムでのキレートの錯化方法(本出願では「放射性標識の方法」と区別せずに呼ばれる)であって、錯化が、放射性核種を緩衝剤溶液中のキレートに加えることによって、加熱することなく有利には周囲温度で実施され、緩衝剤が少なくとも1個のカルボン酸官能基および多くとも2個のカルボン酸官能基を含むという条件で、この溶液の緩衝剤が放射性核種との配位のための2〜5個の官能基を含み、各配位官能基が独立してカルボン酸官能基およびヒドロキシル官能基から選択される方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従って、本出願人は、多様でかつ柔軟な使用条件(特にpHおよび加熱条件)を可能にするのに十分に錯化反応速度論が速くなるように、緩衝剤の賢明な選択を行った。
【0022】
本出願では、表現「カルボン酸配位官能基」は、任意のカルボン酸官能基COOH、およびGa68錯化の観点からCOOHと等価である官能基、ならびに特に:
− 例えば次式:

を有する、環中に含まれる酸官能基;
− アイソテリック(isoteric)官能基、例えばPO3H2(特にリン酸で実証されるような)
を意味することを意図する。
【0023】
官能基スルホン酸は、カルボン酸官能基の定義から排除される。
【0024】
本出願では、緩衝剤は、(カーボネート緩衝剤の場合のように)カルボン酸官能基のC=Oの炭素上に、または(ホスフェート緩衝剤の場合のように)P=O基のP上に、あるいは炭素鎖の別の炭素上に直接ヒドロキシル官能基を有することができる(それ故にアルファ、ベータなど、オメガヒドロキシカルボン酸)。
【0025】
本発明は、同じ官能基に関して、2〜13の幾つかのpKaを有するポリ酸/塩基官能基の場合(特にリン酸緩衝剤の場合)をカバーする。
【0026】
さらに、緩衝剤が2個のカルボン酸官能基を含有する時に、それが少なくとも1個のヒドロキシル官能基も含有する場合に、錯化はさらに良好である(錯化後に沈澱を濾過して除く必要性がない良好な錯化)。従って、好ましくは、本発明は、緩衝剤がヒドロキシル官能基もまた含むことを特徴とする放射性標識方法に関する。
【0027】
実施形態によれば、有利に使用される緩衝剤は、2個のカルボン酸官能基および少なくとも1個のヒドロキシル官能基、そして特に1個または2個のヒドロキシル官能基を含む。
【0028】
実施形態によれば、有利に使用される緩衝剤は、少なくとも1個のカルボン酸官能基および少なくとも1個のヒドロキシル官能基を含む。
【0029】
有利には、緩衝剤は、次の緩衝剤:ラクテート、タータレート、マレート、マレエート、スクシネート、アスコルベート、カーボネート、およびホスフェート、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0030】
(本出願では、用語「ホスフェート緩衝剤」および「リン酸緩衝剤」は、区別せずに用いられる)。有利には、緩衝剤は、モノヒドロキシル化、任意選択的にジ−、トリ−、もしくはテトラヒドロキシル化されかつ任意選択的に不飽和である(特に少なくとも1個の二重結合を有する)C1〜C10モノカルボン酸、または、任意選択的にモノ−、ジ−もしくはトリヒドロキシル化されかつ任意選択的に不飽和である(特に少なくとも1個の二重結合を有する)C1〜C10ジカルボン酸である。
【0031】
これらの緩衝剤は、そのため非常に有利には薬局方に属する。
【0032】
非常に有利には、緩衝剤は、次の緩衝剤:ラクテート、タータレート、およびマレート、またはそれらの混合物から選択される。
【0033】
− タータレートは2個のカルボン酸官能基および2個のヒドロキシル官能基を有する;
− ラクテートは1個のカルボン酸官能基および1個のヒドロキシル官能基を有する
ことが本明細書で喚起される。
【0034】
HEPESおよび酢酸は、それぞれ、ゼロおよび1個のカルボン酸官能基を含むことが喚起される。
【0035】
表1は、特許請求される本発明内に含まれない緩衝剤の式を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表2は、本発明による緩衝剤の式を示す。
【0038】
【表2】

【0039】
本発明の緩衝剤を使用する錯化のための溶液のpHは、有利には1〜14、典型的には3〜11、有利には3〜7である。
【0040】
より具体的には、緩衝能力はpKa値±1であり、例えば、アセテートについては3.75〜5.75を意味することが喚起される。本出願人の緩衝剤により、この範囲ははるかに広くなり、例えば、タータレートについては[2.04〜5.37]、カーボネートについては[5.35〜11.33]、およびホスフェートについては[1.12〜13.67]である。検討中の緩衝剤に依存して、全てのキレートが必ずしも同じ錯化をするわけではないことが明記される場合、特に緩衝能力範囲ならびにキレートおよびバイオベクターの選択を最適化するために、幾つかの緩衝剤を一緒に組み合わせる(緩衝剤混合物)こともまた可能である。従って、例えばNOTAは、ラクテート、カーボネートまたはタータレート緩衝剤について特に有利である。
【0041】
正確なメカニズムは不明であるが、本出願人は、これらの結果を帰納的に説明するために、非常に有効な緩衝剤が、以下を含むという仮説を提案する:
− ガリウムを十分に錯化するのに十分な数の配位官能基:1個の官能基のみを含有するアセテートは、多様な錯化条件(濃度、pH)に有効であるほど十分に錯化しないであろう;1個のスルホネート官能基および1個のヒドロキシル基を含有するHEPESもまた十分には錯化しないであろう;
− しかし、ガリウムとあまりにも多く錯化しないような多すぎない程度の配位官能基:3個のカルボン酸官能基を含有するシトレートは、錯化し過ぎることが分かる。
【0042】
拡大解釈すれば、本発明は、log K Ga68値が3〜6、好ましくは3〜5であるような緩衝剤のケースに関する。
【0043】
本出願人は、緩衝剤によるGa68錯化についての定数(2〜4個の配位官能基を含む緩衝剤のlog K Ga68)が、非常に有利には2〜6、そして非常に有利には3〜5、好ましくは約4(特に3.5〜4.5)であることを理解した。
【0044】
特定の方法で、本出願人は先入観にとらわれず、抗癌剤としてまたは腫瘍イメージング剤として治療に使用されるラクテートなどの公知の有機化合物を、ガリウム錯化剤として使用した(かかる化合物は、ガリウム錯化のためのキレートに対して妨害をもたらす可能性があった)。
【0045】
実施形態によれば、緩衝剤は、上に示された緩衝剤の少なくとも2つの組み合わせ、例えばラクテート緩衝剤とタータレート緩衝剤との混合物である。全ての組み合わせが、本発明の緩衝剤間で、例えば次の割合で可能である:2つの緩衝剤については90/10、80/20、60/40、50/50、および3つの緩衝剤については80/10/10、60/20/20。例えば、所与のキレートに非常に有効な本発明によるラクテート型緩衝剤と、このキレートに余り有効ではない緩衝剤との混合物もまた使用することができよう。本発明による非常に有効な緩衝剤(例えば、ラクテート)と、単独で有効ではない緩衝剤(特に、シトレート)との混合物を、しかし錯化を損なわないように単独で有効ではない緩衝剤の十分に小さい割合を使用するという条件で、使用することもまた、あまり有利ではないが可能である。
【0046】
本発明との関連で使用することができるキレートは、遊離の(すなわち、非ベクター化)キレートまたはベクター化キレートであり、キレートは放射性核種を錯化することができる。有利には、それはベクター化キレートである。本発明の目的のためには、用語「ベクター化キレート」は、特異的な生物学的標的、特に診断上重要な領域を標的にする部分が(化学的リンカーによって)結合している任意のキレートを意味することが意図される。従って、有利には、キレートは、特異的な生物学的標的、特に診断上重要な領域を標的にするための試剤でベクター化されている。
【0047】
有利には、ベクター化キレートのキレート部分は当業者によく知られており、それは好ましくは、NOTAおよびその誘導体、PCTAおよびその誘導体、AAZTAおよびその誘導体など、Ga68の錯化に好ましいキレートの1つである。
【0048】
従って、ベクター化キレートは有利には、ベクター化NOTA、ベクター化PCTA、ベクター化DOTA、ベクター化AAZTAから、有利にはジデアザ−NOTA、ジデアザPCTA、フォレート(folate)NOTA、フォレートPCTA、フォレートAAZTAから選択される。
【0049】
本出願人は、
− NOTA用には、乳酸、酒石酸、または炭酸緩衝剤;
− PCTA用には、乳酸または炭酸緩衝剤
について特に有利な結果を得た。
【0050】
生成物のキレート部分については、数多くのキレート、特に以下を使用することができる:
a)以下の一般式を有する大環状キレート:

(式中:
M−M1−M2はピリジン核を形成するか、
またはM1およびM2は存在せず、Mは結合を表すか、
または、Rが独立してCH2CO2−もしくはHもしくはCHX−CO2−から選択され、少なくとも1つのRがCHXCO2−であり、そしてXがL(リンカー)−B(バイオベクター)である状態で、MはN−Rであり、M1およびM2は水素原子もしくはメチルを表す);
b)直鎖状キレート、とりわけEDTA、DTPAジエチレントリアミノ五酢酸、N−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]−3−(4−エトキシフェニル)プロピル]−N−[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]−L−グリシン(EOB−DTPA)、N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]−L−グルタミン酸(DTPA−GLU)、N,N−ビス[2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]エチル]−L−リジン(DTPA−LYS)、N,N−ビス[2−[カルボキシメチル[(メチルカルバモイル)メチル]アミノ]エチル]グリシン(DTPA−BMA)などの、DTPAのモノアミドもしくはビスアミド誘導体、4−カルボキシ−5,8,11−トリス(カルボキシメチル)−1−フェニル−2−オキサ−5,8,11−トリアザトリデカン−13−酸(BOPTA)から選択される直鎖状キレート。
【0051】
1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(DO3A)、10−(2−ヒドロキシプロピル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸(HPDO3A)、2−メチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(MCTA)、(アルファ,アルファ’,アルファ’’,アルファ’’’)−テトラメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTMA)および3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−3,6,9−三酢酸(PCTA)からの大環状キレートが特に使用されてもよい。
【0052】
1個以上のカルボン酸基が、相当する塩、エステルもしくはアミドの形態にある誘導体;または4−カルボキシ−5,11−ビス(カルボキシメチル)−1−フェニル−12−[(フェニルメトキシ)メチル]−8−(ホスホノメチル)−2−オキサ−5,8,11−トリアザトリデカン−13−酸、N,N’−[(ホスホノメチルイミノ)ジ−2,1−エタンジイル]ビス[N−(カルボキシメチル)グリシン]、N,N’−[(ホスホノメチルイミノ)ジ−2,1−エタンジイル]ビス[N−(ホスホノメチル)グリシン]、N,N’−[(ホスフィノメチルイミノ)ジ−2,1−エタンジイル]ビス[N−(カルボキシメチル)グリシン]、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラキス[メチレン(メチルホスホン)]酸、または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラキス[メチレン(メチルホスフィン)]酸など、1個以上のカルボン酸基がホスホン基および/またはホスフィン基で置き換えられている相当する化合物もまた、使用されてもよい。
【0053】
HOPOおよび公知の誘導体、AAZTA、DOTAガドフルオリン、DO3A、HPDO3A、TETA、TRITA、HETA、DOTA−NHS、M4DOTA、M4DO3A、PCTAおよびそれらの2−ベンジル−DOTA−アルファ−(2−フェネチル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−酢酸−4,7,10−トリス(メチル酢酸)、2−ベンジル−シクロヘキシルジエチレントリアミン五酢酸、2−ベンジル−6−メチル−DTPA、6,6’’−ビス[N,N,N’’,N’’−テトラ(カルボキシメチル)アミノメチル)−4’−(3−アミノ−4−メトキシフェニル)−2,2’:6’,2’’−ターピリジン、N,N’−ビス(ピリドキサール−5−ホスフェート)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(DPDP)ならびにエチレンジニトリロテトラキス(メチルホスホン)酸(EDTP)誘導体からのキレートもまた、使用されてもよい。
【0054】
より広範には、シグナル実体を形成するキレートは、文献国際公開第2007/042504号パンフレット(式および関連定義について参照により援用される)ならびに文献国際公開第01/60416号パンフレットの式に相当してもよく、それらは、


に従い、Xは金属カチオンに配位することができる基(好ましくはO−、OH、NH2、OPO3−、Rが脂肪族鎖のNHR)であり、Yはバイオベクターに結合することができる連結基(例えば、Yは、nが1〜5、有利にはn=2である(CH2)n−CO2Hである)である。
【0055】
C−官能化を示すNOTA化合物(NOTAの炭素原子上へグラフトされた少なくとも1つの基Yがバイオベクターのカップリングを可能にする)および環中に少なくとも1つの追加のCH2基を有するNOTA化合物が、有利に使用されてもよい。有利には、それは式

のNOTA誘導体である。
【0056】
P730またはDOTA−GAとも表示される本出願人のキレート、特に文献欧州特許第661279号明細書(米国特許第5,919,432号明細書)の式VおよびVI、とりわけ、その製造がこの文献の26〜32ページに特に明確に記載されている

ならびに、とりわけ米国特許第6,440,956号明細書に本出願人によって記載されているPCTAバックボーンを有するキレートも、同様に使用されてもよい。
【0057】
NOTA誘導体、NODA誘導体、NODA−GAがまた使用されてもよい。
【0058】
以下のキレート:



、スルホン酸官能基の存在が排出を肝臓へよりむしろ腎臓へ変えさせる可能性がある、DIP−LICAMキレートまたは誘導体(DIP−LICAMSおよびTIP−LICAMS)がまた使用されてもよい。


【0059】
一般に、Ga3+の周りに十分に安定なケージを形成することができる任意のキレート、特に任意の脂肪族、大環状もしくは直鎖状アミン、または第三級アミンの大環状アミンがまた使用されてもよい。
【0060】
有利には、ベクター化キレート−ターゲティング部分は、診断上重要な病的領域を標的にするバイオベクターであり、バイオベクターは有利には、アミノ酸、4〜15個もしくは4〜10個のアミノ酸を有利に含むペプチド、ポリペプチド、ビタミン、単糖類もしくは多糖類、抗体、核酸、ビシクラム、またはアプタマーである。それはまた、細胞受容体(特に下記の受容体全て)を標的にするバイオベクター、薬理作用団(薬理活性を持った有機分子)、血管形成−ターゲティングバイオベクター、MMP−ターゲティングバイオベクター、チロシン−キナーゼ−ターゲティングペプチド、アテローム斑−ターゲティングペプチドまたはアミロイド斑−ターゲティングバイオベクター、VCAMターゲティングバイオベクター(ペプチドまたは非ペプチド)であってもよい。
【0061】
より広範に、バイオベクターは、例えば、以下のリストから選択される(括弧内の文献および参考文献は例であり、限定リストではない):
1)アンジオポエチンおよびVEGF受容体を標的にするバイオベクター(国際公開第01/97850号パンフレットに記載されている)、ポリヒスチジンなどのポリマー(米国特許第6,372,194号明細書)、フィブリン−ターゲティングポリペプチド(国際公開第2001/9188号パンフレット)、インテグリン−ターゲティングペプチド(国際公開第01/77145号パンフレット、αvβ3については国際公開第02/26776号パンフレット、国際公開第02/081497号パンフレット、例えばRGDWXE)、メタロプロテアーゼMMPを標的にするための擬ペプチドおよびペプチド(国際公開第03/062198号パンフレット、国際公開第01/60416号パンフレット)、例えば、KDR/Flk−l受容体またはTie−1および2受容体を標的にするペプチド(例えば、国際公開第99/40947号パンフレット)、シアリルLewisグリコシド(国際公開第02/062810号パンフレットおよびMueller et al、Eur.J.Org.Chem、2002、3966−3973)、アスコルビン酸などの酸化防止剤(国際公開第02/40060号パンフレット)、タフトシン−ターゲティングバイオベクター(例えば、米国特許第6,524,554号明細書)、Gタンパク質受容体を標的にするためのバイオベクター、GPCR、特にコレシストキニン(国際公開第02/094873号パンフレット)、インテグリン拮抗物質とグアニジン擬態との会合(米国特許第6,489,333号明細書)、αvβ3−ターゲティングまたはαvβ5−ターゲティングキノロン(米国特許第6,511,648号明細書)、インテグリンを標的にするベンゾジアゼピンおよび類似体(米国特許出願公開第2002/0106325号明細書、国際公開第01/97861号パンフレット)、イミダゾールおよび類似体(国際公開第01/98294号パンフレット)、RGDペプチド(国際公開第01/10450号パンフレット)、抗体または抗体フラグメント(TNF−またはIL−誘導可能である、FGF、TGFβ、GV39、GV97、ELAM、VCAM(米国特許第6,261,535号明細書))、標的との相互作用によって変性されるターゲティング分子(米国特許第5,707,605号明細書)、アミロイド沈着物を標的にするための試剤(例えば、国際公開第02/28441号パンフレット)、開裂カテプシンペプチド(国際公開第02/056670号パンフレット)、ミトキサントロンまたはキノン(米国特許第6,410,695号明細書)、上皮細胞−ターゲティングポリペプチド(米国特許第6,391,280号明細書)、システインプロテアーゼ阻害剤(国際公開第99/54317号パンフレット)、米国特許第6,491,893号明細書(GCSF)、米国特許出願公開第2002/0128553号明細書、国際公開第02/054088号パンフレット、国際公開第02/32292号パンフレット、国際公開第02/38546号パンフレット、国際公開第20036059号パンフレット、米国特許第6,534,038号明細書、国際公開第01/77102号パンフレット、欧州特許第1 121 377号明細書、Pharmacological Reviews(52、No.2、179:成長因子PDGF、EGF、FGFなど)、Topics in Current Chemistry(222、W.Krause、Springer)、Bioorganic & Medicinal Chemistry(11、2003、1319−1341;αvβ3−ターゲティングテトラヒドロベンズアゼピノン誘導体)に記載されているバイオベクター。
【0062】
2)血管形成阻害剤、特に臨床試験で試験されたものまたは既に市販されているもの、特に:
− SU101、SU5416、SU6668、ZD4190、PTK787、ZK225846、アザ環状化合物などの、FGFRまたはVEGFR受容体を含む血管形成の阻害剤(国際公開第00/244156号パンフレット、国際公開第02/059110号パンフレット);
− BB25−16(マリマスタット)、AG3340(プリノマスタット)、ソリマスタット、BAY12−9566、BMS275291、メタスタット、ネオバスタットなどの、MMPを含む血管形成の阻害剤;
− SM256、SG545、EC−ECMをブロックする接着分子(EMD 121−974、またはビタキシンなどの)などの、インテグリンを含む血管形成の阻害剤;
− カルボキシアミドトリアゾール、TNP470、スクアラミン、ZD0101などの、抗血管形成作用のより間接的なメカニズムの薬剤;
− 文献国際公開第99/40947号パンフレットに記載されている阻害剤、KDR受容体、ソマトスタチン類似体(国際公開第94/00489号パンフレット)、セレクチン結合ペプチド(国際公開第94/05269号パンフレット)、成長因子(VEGF、EGF、PDGF、TNF、MCSF、インターロイキン)への結合に対して非常に選択的であるモノクローナル抗体;Nuclear Medicine Communications、1999、20に記載されているVEGF−ターゲティングバイオベクター;
− 文献国際公開第02/066512号パンフレットの阻害性ペプチド。
【0063】
3)以下の受容体を標的にすることができるバイオベクター:CD36、EPAS−1、ARNT、NHE3、Tie−1、1/KDR、Flt−1、Tek、ニューロピリン−1、エンドグリン、プレイオトロピン、エンドシアリン、Axl.、alPi、a2ssl、a4P1、a5pl、eph B4(エフリン)、ラミニンA受容体、ニュートロフィリン受容体65、レプチン受容体OB−RP、ケモカイン受容体CXCR−4(および文献国際公開第99/40947号パンフレットに述べられている他の受容体)、ボンベシン/GRP、ガストリンのための受容体、VIP、CCK。
【0064】
4)チロシンキナーゼ阻害剤型のバイオベクター。
【0065】
5)以下から選択される、公知のGPIIb/IIIa受容体阻害剤:(1)GPIIb/IIIa受容体、アブシキシマブに対するモノクローナル抗体のfabフラグメント、(2)エプチフィバチドおよびチロフィバンなど、静脈内注射される小ペプチドおよびペプチド模倣分子。
【0066】
6)フィブリノゲン受容体拮抗物質ペプチド(欧州特許第425 212号明細書)、IIb/IIIa受容体リガンドペプチド、フィブリノゲンリガンド、トロンビンリガンド、アテローム斑を標的にすることができるペプチド、血小板、フィブリン、ヒルジン−ベースのペプチド、IIb/IIIa受容体を標的にするグアニン−ベースの誘導体。
【0067】
7)抗血栓、抗血小板凝集、抗アテローム性動脈硬化、抗再狭窄(anti−restenoic)または抗凝血作用を有する、薬剤として当業者に知られる他のバイオベクターまたはバイオベクターの生物活性フラグメント。
【0068】
8)以下から選択される、特許米国特許第6,537,520号明細書でDOTAに関連して記載されている、αvβ3を標的にする他のバイオベクターまたはバイオベクターの生物活性フラグメント:マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボクオン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリックス、レトロゾール、ラルチトレキシド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、エリプチニウム酢酸塩、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチネート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イフォスファミド、プレドニマスチン、ピシバニール、レバミゾール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、フォルメスタン、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−2アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、コロニー刺激因子−1、コロニー刺激因子−2、デニロイキンディフティトックス、インターロイキン−2、黄体形成ホルモン放出因子。
【0069】
9)特定タイプの癌を標的にするある種のバイオベクター、例えば結腸直腸癌と関係があるST受容体、またはタキキニン受容体を標的にするペプチド。
【0070】
10)ホスフィン型化合物を使用するバイオベクター。
【0071】
11)P−セレクチン、E−セレクチンを標的にするためのバイオベクター;例えば、Morikawa et al、1996、951によって記載されている8−アミノ酸ペプチド、およびまた様々な糖類。
【0072】
12)アネキシンVまたはアポトーシス過程を標的にするバイオベクター。
【0073】
13)非天然アミノ酸で任意選択的に変性された(http//chemlibrary.bri.nrc.ca)、ファージディスプレイなどのターゲティング技術によって得られる任意のペプチド、例えばファージディスプレイライブラリーに由来するペプチド:RGD、NGR、KGD、RGD−4C。
【0074】
14)特に文献国際公開第2003/014145号パンフレットに述べられている、アテローム斑を標的にするための公知の他のペプチドバイオベクター。
【0075】
15)ビタミン、特に、フォレート受容体を標的にすることができる葉酸およびその公知の誘導体。
【0076】
16)ホルモンおよびステロイドを含む、ホルモン受容体のためのリガンド。
【0077】
17)オピオイド受容体−ターゲティングバイオベクター。
【0078】
18)キナーゼ、例えばチロシンキナーゼを標的にするバイオベクター。
【0079】
19)LB4およびVnR拮抗物質。
【0080】
20)ニトロイミダゾールおよびベンジルグアニジン化合物。
【0081】
21)Topics in Current Chemistry、vol.222、260−274、Fundamentals of Receptor−based Diagnostic Metallopharmaceuticalsにまとめられているバイオベクター、特に:
− 腫瘍に過剰発現したペプチド受容体(例えば、LHRH受容体、ボンベシン/GRP、VIP受容体、CCK受容体、タキキニン受容体)を標的するためのバイオベクター、特にソマトスタチンのまたはボンベシンの類似体、任意選択的にグリコシル化オクトレオチドペプチド誘導体、VIPペプチド、アルファ−MSH、CCK−Bペプチド;
− RGD環状ペプチド、フィブリン−ターゲティングペプチド、タフトシン−ターゲティングペプチド、fMLFペプチド(受容体:ラミニン)。
【0082】
22)オリゴ糖、多糖類、単糖類の誘導体、Glut受容体(単糖類受容体)またはグルタミン輸送体を標的にする誘導体。
【0083】
23)スマート型製品のために使用されるバイオベクター。
【0084】
24)心筋生存性マーカー(例えば、テトロフォスミンおよびヘキサキス(2−メトキシ−2−メチルプロピルイソニトリル))。
【0085】
25)糖類および脂肪代謝トレース。
【0086】
26)神経伝達物質受容体(D、5HT、Ach、GABA、NA、NMDA受容体)のリガンド。
【0087】
27)オリゴヌクレオチドおよびアプタマー。
【0088】
28)組織因子。
【0089】
29)国際公開第03/20701号パンフレットに記載されているバイオベクター、特に末梢ベンゾジアゼピン受容体用のPK11195リガンド。
【0090】
30)フィブリン結合ペプチド、特に国際公開第03/11115号パンフレットに記載されているペプチド配列。
【0091】
31)例えば、国際公開第02/085903号パンフレットに記載されているアミロイド斑凝集阻害剤。
【0092】
32)アルツハイマー病を標的にするための化合物、特にベンゾチアゾール、ベンゾフラン、スチリルベンゾオキサゾール/チアゾール/イミダゾール/キノリン、スチリルピリジン型、およびそれらの公知の誘導体のバックボーンを含む化合物。
【0093】
33)ケモカイン受容体を標的にするための、特にCXCR4を標的にするための試剤。
【0094】
任意のRGDペプチドが特に興味深く使用される。
【0095】
特定の一実施形態では、バイオベクターは、ケモカイン受容体を標的にするための、特にCXCR4を標的にするための試剤である。
【0096】
CXCR4を標的にするために、ビシクラム(例えば、国際公開第2006/032704号パンフレットに記載されている誘導体全て)およびペプチド(特に環状ペプチド)、特に、3〜10個のアミノ酸、好ましくは3〜8個のアミノ酸、例えば4〜6個のアミノ酸のペプチドが特に有利に使用されるであろう。有利には、下記の中のペプチドが使用されるであろう:
a)シクロ(D−Tyr−X−Arg−Nal−Gly)

b)シクロ(D−Tyr−Orn−Arg−Nal−Gly)
c)シクロ(D−Tyr−Arg−Arg−X−Gly)

Bthとは、

d)シクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−D−Ala):IC50=11nM
e)シクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−D−Asp)、シクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−D−Glu)、シクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−D−Lys)、シクロ(D−Tyr−Arg−Arg−Nal−Gly)

【0097】
バイオベクターとして使用され、かつガリウムを錯化するキレートにカップリングされる化合物a)〜e)は、本発明の緩衝液内でも、先行技術の他の緩衝剤(特にアセテート)と一緒のどちらでも、先行技術からは公知ではない。CXCR4を標的にするための擬ペプチドまたは非ペプチド型の任意の公知化合物、例えば:

が使用されてもよい。
【0098】
有利な実施形態によれば、バイオベクターは、葉酸または葉酸の任意の公知の誘導体、および特に文献国際公開第2004/112839号パンフレットにおける式を有する誘導体などの、フォレート−受容体−ターゲティングバイオベクターである。

式中、
*は、バイオベクターがキレートに結び付く部位を表し;
a)G1は独立して、ハロ、Rf2、ORf2、SRf3、およびNRf4Rf5から構成される群から選択され;好ましくはG1はNH2またはOHから選択され;
b)G2は独立して、ハロ、Rf2、ORf2、SRf3、およびNRf4Rf5から構成される群から選択され;
c)G3、G4は、−(Rf6’)C=、−N=,−(Rf6’)C(Rf7’)−、−N(Rf4’)−から構成される群から独立して選択される二価の基を表し;
好ましくは、G3は、G3を含む環が芳香族であるとき−N=(葉酸)または−CH−(本明細書で以下CB3717と記載される化合物、ラルチトレキシド、MAI)であり、そしてG3は、G3を含む環が非芳香族であるとき−NH−または−CH2−(本明細書で以下AG−2034と記載される化合物、ロメトレキソール)であり;
好ましくは、G4は、G3を含む環が芳香族であるとき−CH−または−C(CH3)−であり、そしてG3を含む環が非芳香族であるとき−CH2−または−CH(CH3)−であり;
e)G5は存在しない(ペメトレキセド化合物)かまたは−(Rf6’)C=,−N=、−(Rf6’)C(Rf7’)−、−N(Rf4’)−から選択され;
f)Jは、5−または6−員複素環または非複素環芳香族環であり、環の原子がC、N、O、Sであることが可能であり;
g)G6は、NまたはC(本明細書では以下3−デアザ−ICI−198,583と記載される化合物)であり;
h)K1およびK2は独立して、−C(Zf)−、−C(Zf)O−、−OC(Zf)−、−N(Rf4’’)−、−C(Zf)−N(Rf4)、−N(Rf4’’)−C(Zf)、−O−C(Zf)−N(Rf4’’)−、−N(Rf4’’)−C(Zf)−O−、N(Rf4’’)−C(Zf)−N(Rf5’’)−、−O−、−S−、-S(O)−、−S(O)2−、−N(Rf4’’)S(O)2−、−C(Rf6’’)(Rf7’’)−、−N(C≡CH)−、−N(CH2−C≡CH)−、C1〜C12アルキルおよびC1〜C12アルコキシから構成される群から選択され;ここで、ZfはOまたはSであり;好ましくは、K1は、Rf4’’、Rf6’’およびRf7’’がHである状態で−N(Rf4’’)−または−C(Rf6’’)(Rf7’’)−であり;A2は任意選択的にアミノ酸に共有結合しており;
i)Rf2、Rf3、Rf4、Rf4’、Rf4’’、Rf5、Rf5’’’、Rf6’’、およびRf7’’は独立して、H、ハロ、C1〜C12アルキル、C1〜C12アルコキシ、C1〜C12アルカノイル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、(C1〜C12アルコキシ)カルボニル、および(C1〜C12アルキルアミノ)カルボニルから構成される群から選択され;
h)Rf6’およびRf7’は独立して、H、ハロ、C1〜C12アルキル、およびC1〜C12アルコキシから構成される群から選択されるか;またはRf6’およびRf7’は一緒になってO=を形成し;
i)Lfは、そのアルファ−アミノ基によって、アミド結合によってK2にまたはK1に結び付いた、天然アミノ酸または天然ポリアミノ酸を必要に応じて含む二価のリンカーであり;
j)p、rおよびsは独立して0または1であり;
k)xは1〜5の整数であり、有利には1に等しい。
【0099】
式(E)には、互変異性型、例えば、G1がOH、SHまたはNHである化合物が含まれる。
【0100】
基K1、K2、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4、Rf4’、Rf4’’、Rf5、Rf5’’、Rf6、Rf7’’、Rf6、Rf7、Rf6’、およびRf7’の少なくとも1つが、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルカノイル、アルケニル、アルキニル、アルコキシカルボニル、またはアルキルアミノカルボニル基を含む本発明の化合物について、この基は好ましくは1〜6個の炭素原子(C1〜C6)、より好ましくは1〜4個の炭素原子(C1〜C4)を含有する。
【0101】
上述の化合物の中で、本発明者らは特に下記の誘導体に焦点を合わせてきた。

【0102】
従って、有利には、バイオベクターはフォレートまたはフォレート誘導体である。
【0103】
従ってフォレート誘導体には、次の化合物:プテロポリグルタミン酸、フォレート受容体を標的にすることができるプテリジン(特にテトラヒドロプテリン、テトラヒドロフォレート、ジヒドロフォレート)が含まれる。
【0104】
フォレート誘導体にはまた、次の化合物:アミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキサート)、N−メチルフォレート、2−デアミノヒドロキシフォレート;ならびに、1−デアザメトプテリンまたは3−デアザメトプテリン、および3’,5’−ジクロロ−4−アミノ−4−デオキシ−N−メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキサート)などそれらのデアザ誘導体が含まれる。
【0105】
フォレート誘導体には、デアザまたはジデアザ化合物が含まれる。用語「デアザ」および「ジデアザ」は、葉酸の窒素原子G3、G5、G6を持たない、公知の誘導体を意味する。例えば、デアザ誘導体には、1−デアザ、3−デアザ、5−デアザ、8−デアザ、および10−デアザ誘導体が含まれる。
【0106】
本出願人による特許国際公開第2007/042504号パンフレットおよび国際公開第2004/112839号パンフレット(参照により援用される)には、典型的には化学的リンカーを用いる、様々なバイオベクターと様々なキレートとの化学的カップリングの多数の例が例示されている。例として、以下のリンカーが挙げられるであろう:
1)アミノ酸。
2)少なくとも1つのバイオベクター官能基および少なくとも1つのキレート官能基と相互作用することができるリンカーL。Lには特に、置換もしくは非置換の、飽和もしくは不飽和の、および直鎖もしくは分枝状であるアルキル鎖、ペプチド、ポリエチレングリコール、およびポリオキシエチレンが含まれる。特に下記が挙げられるであろう:
3)a.1)(CH2)2−フェニル−NH;(CH2)3−NH;NH−(CH2)2−NH;NH−(CH2)3−NH;なしまたは単結合;n=2〜10の(CH2)n、(CH2)n−CO−、−(CH2)nNH−CO−;q=1〜10およびr=2〜10の(CH2CH2O)q(CH2)r−CO−、(CH2CH2O)q(CH2)r−NH−CO−;n=1〜5、有利にはn=4または5の、(CH2)n−CONH−、(CH2)n−CONH−PEG、(CH2)n−NH−、

;HOOC−CH2−O−(CH2)2−O−(CH2)2−O−CH2−COOH;HOOC−(CH2)2−CO2−(CH2)2−OCO−(CH2)2−COOH;HOOC−CH(OH)−CH(OH)−COOH;n=0〜20のHOOC−(CH2)n−COOH、NH2−(CH2)n−NH2;n=1〜10のNH2−(CH2)n−CO2H、NH2−CH2−(CH2−O−CH2)n−CO2H;文献国際公開第2006/095234号パンフレット、104および105ページのA8〜A32で示されるリンカー。
a.2)同一であっても異なってもよいP1−l−P2であって、l=アルキル;アルコキシアルキル;ポリアルコキシアルキル(PEG);1つ以上のスクアレートでまたは1つ以上のアリールで中断されたアルキル;有利にはフェニール;アルケニル;アルキニル;−NH−、−O−、−CO−、−NH(CO)−、−(CO)NH−、−O(CO)−、または−(OC)O−から選択される1つ以上の基で中断されたアルキルであり、
P1およびP2が、O、S、NH、なし、CO2、NHCO、CONH、NHCONH、NHCSNH、SO2NH−、NHSO2−、およびスクアレートから選択され、
Lが、例えば、300〜2000g/モル、特に300〜1000g/モルの分子量を有するP1−l−P2。
P1およびP2は従って、一方ではキレートと、および他方ではバイオベクターと、リンカーをカップリングさせるための基である。
4)(バイオベクターのおよびキレートの)アミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、カルボニル、炭水化物、チオエーテル、2−アミノアルコール、2−アミノチオール、グアニジニル、イミダゾリル、およびフェノール性官能基と反応することができる、米国特許第6,264,914号明細書に記載されているリンカー;定義要約は国際公開第2007/042504号パンフレットに記載。
5)特許米国特許第6,537,520号明細書に記載されている、この文献の定義での式(Cr6r7)g−(W)h−(Cr6ar7a)g’−(Z)k−(W)h’−(Cr8r9)g’’−(W)h’’−(Cr8ar9a)g’’’の特定のリンカー。
6)文献国際公開第02/085908号パンフレットに記載されている特定のリンカー、例えば、
− R3’’’が窒素または酸素と反応することができる基で、CR6’’’R7’’’−、−(R6’’’)C=C(R7’’’)=、−CC−、−C(O)−、−O−、−S−、−SO2−、−N(R3’’’)−、−(R6’’’)C=N−、−C(S)−、−P(OO(OR3’’’))−、−P(O)−(OR3’’’)O−、
− 環状領域(二価のシクロアルキル、二価の複素環)
− ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール
から選択される、直鎖もしくは分枝鎖のリンカー。
7)文献国際公開第03/011115号パンフレット124−125ページのリンカー、特に

【0107】
リンカー(構造およびサイズ)の選択は特に、生物学的ターゲティングおよび/または生体内分布を最適化するように、所望の診断指標に応じて生成物の電荷、親油性および/または親水性を特に制御するように行われてもよい。生体内で生分解可能であるリンカー、PEGリンカーまたはミニ−PEGリンカーが特に使用されてもよい。
【0108】
例として、ベクター化および放射性標識された生成物、ならびに本出願人の緩衝剤(特にラクテート、タータレート、マレート)を使用する緩衝液に可溶化された生成物は、下記式:

のガリウム金属錯体を形成する。用語リンカーおよびバイオベクターは上に示された前の定義の通りである。
【0109】
使用される緩衝剤は典型的には、少なくとも対イオン、特にナトリウムまたはアンモニウムもしくは有機塩基(有利には、メグルミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンテトラミンなどの有機多塩基)のイオンを含む緩衝液の形態にある。例を挙げると、ラクテート緩衝剤は、本出願人が効率を示した、乳酸ナトリウムまたは乳酸アンモニウムとして使用される。
【0110】
本発明はまた、次のステップ:
− 放射性核種、有利にはガリウム68の溶液を調製するステップ、
− ベクター化キレートを製造するステップ、
− 放射性核種の溶液およびベクター化キレートの溶液を、15分未満で、好ましくは10分未満で、より好ましくは7分未満で、加熱することなくかつマイクロ波を伴わず、有利には周囲温度で、本発明による緩衝液中で混合するステップ
を含む、放射性標識造影製品の製造方法に関する。
【0111】
有利には、緩衝剤は、ラクテート、タータレート、マレート、スクシネート、マレエート、アスコルベート、カーボネートおよびホスフェート緩衝剤、ならびにそれらの混合物から、さらにより有利にはラクテート、タータレートおよびカーボネート緩衝剤、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0112】
当業者は、習慣的なやり方で、異なる変形がこの混合物について可能であることを理解する。典型的には、ベクター化キレート(まだ放射性標識されていない)は、緩衝液、およびGa68の酸性溶出液(pH約2)の導入前に、濃厚水溶液の形態で提供される。例えば、本明細書で以下に例示されるように、0.4mlの容量の0.6nM Ga68溶液が、1mlの緩衝液と20μlの1.2Mベクター化キレート溶液とを含有する反応器に加えられる。しかしながら、錯化について等価の結果を与える変形は全て本発明に包含されることが理解される。例えば、適切に希釈したより大量のGa68溶液が提供されてもよい。例えば、バイオベクター貯蔵の理由から、標識されるキレートは、緩衝液で提供され、緩衝液とは異なる水溶液では提供されない。
【0113】
本発明はまた、本発明の緩衝液中での錯化のために適切な場合に必要とされる様々な中間生成物、特に:
− 98%のアセトン、0.05M HCl中の溶液でのGa68の溶出液(Ga68発生器で生成する溶出液)
− 本出願の緩衝剤、有利には乳酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、リン酸、および炭酸緩衝剤、ならびにそれらの組み合わせから選択される緩衝液、
− 緩衝液中または水中の、Ga68放射性核種でまだ錯化されていないベクター化キレートであって、緩衝剤が本出願の緩衝剤、有利には乳酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、リン酸、および炭酸緩衝剤、ならびにそれらの組み合わせから選択される、ベクター化キレート
に関する。
【0114】
緩衝剤の組み合わせ、特に上述の少なくとも2つの緩衝剤、例えば混合した乳酸−コハク酸または乳酸−酒石酸緩衝剤もまた、錯化緩衝液として使用することができ、2つの緩衝剤の組み合わせについて有利には90/10、80/20、70/30、60/40、50/50の割合である。
【0115】
別の態様によれば、本発明は、緩衝剤と放射性核種で錯化されるキレートとを含む注射可能な溶液であって、緩衝剤が少なくとも1個のカルボン酸官能基および多くとも2個のカルボン酸官能基を含むという条件で、緩衝剤が放射性核種との配位のための2〜5個の官能基を含み、各配位官能基が独立してカルボン酸官能基およびヒドロキシル官能基から選択される溶液に関する。
【0116】
緩衝剤およびキレートの特性は、上に定義された通りである。
【0117】
有利には、緩衝液は、緩衝剤に関して0.05〜1.5M、好ましくは緩衝剤に関して0.1〜1M;有利には0.1〜0.5M、例えば0.1〜0.3Mの溶液である。
【0118】
有利には、注射可能な緩衝液中の放射性標識されたベクター化キレートの濃度は、0.1〜100μM、例えば0.5〜20μM、特に1〜10μMである。
【0119】
有利には、患者に投与される溶液はまた、放射線分解、すなわち、投与された診断化合物の分解を制限するために好適である少なくとも1つの賦形剤を含む。これは、生成物を成功裡に貯蔵できるようにするためのマルチ用量/マルチ患者タイプの診断液を調製する場合に、特に有利である。放射線分解防止剤は、当業者に公知であり、特に国際公開第2007/042504号パンフレットおよび国際公開第2005/009393号パンフレットにまとめられている(例:フリーラジカル阻害薬、ジチオカルバメート、PDTC、必要に応じて、アスコルビン酸ナトリウムとのセレノメチオニンまたはセレノシスチンなどの可溶性セレン化合物、メチオニンのような酸化されたアミノ酸を還元することができる誘導体、特にシステイン、メルカプトエタノール、ジチオスレイトールのチオール誘導体)。アルギニンまたはリジン調合物がまた使用されてもよい。
【0120】
緩衝液中の本出願人の生成物は、それらが加熱することなく使用できるという大きな利点を有するが、必要に応じて、放射性医薬品薬局(radiopharmacy)が時々加熱装置を伴わない錯化機器を備えていない場合には、加熱装置付きの機器で使用されてもよい。例えば公知のカチオン樹脂またはアニオン樹脂のどちらかを装備された、様々な自動錯化機器が用いられてもよい。
【0121】
別の態様によれば、本発明は、放射性核種発生器、よりとりわけGa68発生器によって提供される放射性核種の溶液と、非錯化のベクター化キレートの溶液と、緩衝液とを混合するための少なくとも1つの区画を備える、加熱装置を伴わない、有利には自動式である機器(錯化システム)であって、前記緩衝剤が、ラクテート、タータレート、マレエート、スクシネート、マレート、アスコルベート、カーボネート、およびホスフェート、ならびにそれらの混合物から選択される機器に関する。
【0122】
任意の好適な装置はそれに応じて準備される。例えば、提供されるGa68は、自動機械の分配装置を用いて自動機械によってまたは自動機械の前に、自動機械へ導入された単一用量容器を使って単一用量へ分けられる、無菌溶液である。自動機械は、例えば、1人または複数の患者用の注射可能な放射性標識生成物の幾つかの用量を調製することができる混合区画を備える。自動機械はまた、各区画が特に、Ga68放射性核種の用量とベクター化生成物の用量とを混合することができる、幾つかの混合副区画を備えてもよい。自動機械は自動式であってもよい。
【0123】
必要に応じてプログラム化可能である自動機械はまた、必要に応じて製造されるべき製品のタイプおよび注射の方法(手動または自動注射)に応じて、バイオベクターが同一かまたは異なりかつ用量および濃度が異なる、幾つかの異なる注射可能な製品を調製してもよい。本出願の様々な製品、方法、および機器はさらに、分析および画像処理方法と共に、任意の適切なイメージング様式、特にPETイメージング、マルチモーダルイメージング、および必要に応じて、マルチ注射製品、特にPET/MRI、PET/スキャン、PET/スキャン/MRIおよび光学イメージングのために用いられてもよい。本発明は従って、MRIおよび/またはXR−スキャンおよび/または光学装置と組み合わせた、本出願に記載されるような錯化機器を含む任意の医療用イメージング設備に関する。さらに総じて、本発明の錯化化合物および条件に好適な先行技術の任意の装置(特に国際公開第2007/042504号パンフレットにまとめられている)が用いられてもよい。
【実施例】
【0124】
次の詳細な実施例は、
− 本出願人の緩衝剤の有効性を実証し(実施例1)、
− NOTAおよびPCTAキレートと、フォレートおよびペプチドバイオベクターとでのベクター化キレート(キレート+バイオベクター)の調製を例示する(当業者がこうして類似の化合物を、多くの他のバイオベクター、多くの他のリンカー、多くの他のキレートで調製できることが強調される)。
【0125】
実施例1:複数の緩衝剤による錯化の比較
本緩衝剤はpH4で調製される。それらは、0.1Mの弱酸と0.1Mの弱塩基とを混合することによって得られる。
【0126】
手順は、例示のためNOTAおよびPCTAキレートについて詳述する(類似のプロトコルが他のキレートで用いられる):
50mgのNOTAまたはPCTA(0.16ミリモル)を5mlの0.1M緩衝液に溶解させ、0.5mlの69GaCl3の0.5M溶液(1.5当量)を加える。反応媒体を周囲温度で撹拌する。サンプルを15分間定期的に採取し、LC/MSによって分析する。
【0127】
次表で、「完全錯化」は、キレートがガリウムを成功裡に錯化したことを意味する。
【0128】
ポジティブな結果がナトリウムおよびアンモニウム緩衝剤で得られる。
【0129】
クエン酸緩衝剤(先行技術基準)については、大量の配位子(ガリウムと錯化していないキレート)が存在するのに対して、錯体(キレートで錯化されたガリウム)は少量のみであるため、錯化は効率的ではない。実施例は、NOTAおよびPCTAについての例示として提示される。
【0130】
NOTAについて

【0131】
PCTAについて

【0132】
実施例2:ジデアザ−NOTAの合成:

【0133】
段階1:
0.5gの中間体2を、0.6gのK2CO3の存在下で、20mlのCH3CNに溶解させる。20mlのCH3CN中の臭素化誘導体(中間体1)の懸濁液をそれに加える。反応媒体を、18時間、激しく磁気撹拌しながら、アルゴン下で、還流に維持する。周囲温度に戻った後、反応媒体を濾過する。不溶性物質を20mlの水中に取り出し、次に濾過する。濾液を圧力下に蒸発させる。得られた残渣をEt2O中に取り出し、次に濾過する。1.2gの生成物が得られる。[M+H]+=423.16
【0134】
段階2:
前段階で得られた0.6gの中間体を2.4mlのエタノールに懸濁させる。溶解は、6mlの1M NaOHの添加後に完了する。反応媒体を70℃で1時間30分間撹拌する。周囲温度に戻った後、媒体を、HCl 6Nを加えることによってpH 1にする。得られた懸濁液を濾過し、次に水で十分に、その後エタノールで洗浄する。乾燥後に、0.35gの生成物が得られる(収率=80%)。[M+H]+=311.10
【0135】
段階3:
中間体4(1.8ミリモル)および中間体5(1.8ミリモル)を、乾燥条件(CaCl2トラック)下、周囲温度で、DMFに溶解させる。1.4当量のHOBT(2.5ミリモル)、次に1.4当量のEDCI(2.5ミリモル)を反応媒体に加える。周囲温度での一晩の反応後に、反応媒体を250mlの水から沈澱させる。濾過後に、残渣を水で洗浄し、次に減圧下で乾燥させ;0.85gの黄色結晶が81%の収率で得られる。[M+H]+=638.30
【0136】
段階4:
前段階で得られた0.266ミリモルの中間体を1.8mlのTFAに溶解させる。反応媒体を周囲温度で1時間放置し、次に蒸発させる。生成物は、25mlのEt2Oからの結晶化によって得られる。180mgの黄色結晶が得られ、それをRP2シリカでのオープンカラムで精製し、溶出は水(TFA0.05%)/CH3CNで実施する。凍結乾燥後に、50mgの白色生成物が得られる(収率31%)。BP:[M+H]+=482.22、[M+2H]2+=241.68
【0137】
段階5:
活性化エステルの形成
75mgのNOTAGA(tBu)3を2mlのCH2Cl2に溶解させた後、15mg(1当量)のNHS、次に28mg(1当量)のDCCを加える。周囲温度での半時間の反応後に、形成したDCUをWhatman濾紙によって濾過し、濾液をおおよそ0.5mlの最終容量に濃縮する。
【0138】
アミド化
前段階で得られた50mgの中間体を、2当量のNEt3(40μl)の存在下で2.5mlのDMSOに溶解させる。CH2Cl2の溶液での活性化エステルを、それに加える。1時間の反応後に、反応媒体を25mlのEt2Oから沈澱させる。得られた生成物を、50/50(水性溶出液相(TFA pH2.8)/CH3CN)に可溶化した後に、フラッシュクロマトグラフィー(Merck SVF D26−RP18 25〜40μm−31gシリカカートリッジ)による精製に使用する。凍結乾燥後に、24mgの白色結晶が得られる(収率28.4%)。BP:[M+H]+=1007.5、[M+2H]2+=504.44
【0139】
段階6:
前段階で得られた24mgの中間体を1mlのTFAに可溶化する。周囲温度で6時間の反応後に、反応媒体を蒸発させ、25mlのEt2O中に取り出す。10mgの結晶が得られる。
【0140】
段階7:
ステップ6で得られた化合物の1mg/ml水溶液20μlおよび1mlの乳酸ナトリウム緩衝剤0.5M pH3.9を、反応バイアルに導入する。次に混合物HCl 0.05M/アセトンにおける68GaCl3の溶液400μlを加える。反応混合物を室温で15分間インキュベートする。反応バイアルを6mlの水で洗浄し、反応混合物を、1mlのエタノールおよび1mlの超純水で前調整したC−18カラムへ移す。最終生成物を、1mlの50%エタノール/水溶液でカートリッジから溶出する。
【0141】
最終生成物を、0.22μmのMilliporeフィルターに通し、NaCl 0.9%で6mlまで希釈する。
【0142】
類似の手順を、ラクテート、スクシネート、ホスフェート、マレエート、マレート緩衝剤について用いる。
【0143】
実施例3:フォレート−NOTAの合成
a)下記式の化合物:

20g(91.7ミリモル)のBoc2Oを、40mlのCH2Cl2に溶解させる。次に200mlのCH2Cl2中の22g(366.6ミリモル)のジアミノエタンの溶液を滴加する。反応バイアルを室温で2時間混合する。先ず、生成物を水での抽出によって精製する。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過する。次にそれを、CH2Cl2/メタノールのグラジエントで、シリカでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。4gの黄色オイルが得られる。m/z=161(ES+)
【0144】
b)下記式の化合物:

10.27g(24ミリモル)のFmoc−Glu−OtBuを300mlのCH2Cl2に溶解させる。2.8gのNHSおよび4.98gのDCCを導入する。45分後に、反応混合物を濾過し、50mlのCH2Cl2に溶解したa)で得られた3.869gの生成物の溶液に滴加する。室温で2時間後に、生成物を先ず水での抽出によって精製する。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過する。次にそれを、CH2Cl2/アセトンのグラジエントでシリカでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。7gの生成物が得られる。m/z=568(ES+)
【0145】
c)下記式の化合物:

b)で得られた6.5g(11.4ミリモル)の生成物を91mlのアセトニトリルに溶解させる。19.5mlのピペリジンと78mlのアセトニトリルとで得られた溶液を滴加する。アルゴン雰囲気下に室温で2時間置いた後に、反応混合物を蒸発させ、CH2Cl2/メタノールのグラジエントでシリカでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。3.65gのオイルが得られる。m/z=346(ES+)
【0146】
d)下記式の化合物:

3.3g(10.5ミリモル)のプテロイン酸およびc)で得られた3.65gの生成物を、アルゴン下で335mlのDMSOに溶解させる。3.038gのEDCIおよび1gのHOBTを加える。反応混合物を一晩40℃に加熱し、次に水中で沈澱させる。残渣を濾過し、先ず水で、次にEt2Oで洗浄する。6gの赤色粉末が得られる。
m/z=640(ES+)
【0147】
e)下記式の化合物:

d)で得られた6g(9.3ミリモル)の生成物を74mlのTFAに溶解させる。室温で1時間後に、反応混合物を800mlのEt2O中に沈澱させる。濾過後に、4.5gの黄色粉末が得られる。m/z=484(ES+)
【0148】
f)下記式の化合物:

− e)で得られた85mgの化合物および
− 75mgのNOTAGA(tBu)3
から出発して、実施例2のステップ5で記載されたものと同じ手順を適用すると、15mgの化合物が得られる。m/z(ES+)=1009
【0149】
g)下記式の化合物:

f)で得られた20mgの化合物から出発して実施例2のステップ6で記載されたものと同じ手順を適用すると、4mgの化合物が得られる。m/z(ES+)=841
【0150】
h)下記式の化合物:

実施例2のステップ7で記載されたものと同じ手順を適用する。
【0151】
実施例4:PCTA−フォレート(PEGリンカー)の合成

【0152】
最初の2段階は、参考文献Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 10(2000)、2133−2135に記載されている。
【0153】
ステップ3:
1.77gのパイ−サイクレン(Py−cyclen)および381mgのN+But4Br−を8mlの水に溶解させる。次に4mlのアセトニトリル中の1.63mlトリエチルアミンおよびステップ2で得られた3gの化合物を加える。反応混合物を50℃で36時間加熱する。蒸発後に、50mlのEt2Oを導入し、溶液を濾過する。残渣をCH2Cl2に溶解させ、生成物を水での抽出によって精製する。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させる。1.7gのオイルが得られる。m/z=483.31(ES+)
【0154】
ステップ4:
ステップ3で得られた700mgの化合物および650mgのK2CO3を10mlのアセトニトリルに溶解させる。
【0155】
15mlのアセトニトリル中の450mgブロモ酢酸エチルからなる溶液を加え、次に混合物を70℃で30分間、次に50℃で2時間撹拌する。濾過および蒸発後に、生成物を80mlのジクロロメタン中に取り出す。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、蒸発させる。0.77gのオイルが得られる。m/z(ES+)=711.36
【0156】
ステップ5:
ステップ4で得られた400mgの化合物を30mlのエタノールに溶解させる。パラジウムを加え、懸濁液を室温でH2雰囲気下で4時間撹拌する。濾過および蒸発後に、0.3gのオイルが得られる。生成物を、0.05%HCOOH 水溶液とアセトニトリルとのグラジエントで、C18変性シリカ(25〜40μm Merck GX024090320LK)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。0.15gのオイルが得られる。m/z(ES+)=621.65
【0157】
ステップ6:
− 本特許のステップ5で得られた300mgの化合物および
− 特許PCT/FR/01520のe)実施例11で得られる366mgの化合物
から出発して、実施例2のステップ5で記載されたものと同じ手順を適用すると、50mgの化合物が得られる。m/z(ES+)=1246.88
【0158】
ステップ7:
ステップ6で得られた20mgの化合物から出発して、実施例2のステップ6で記載されたものと同じ手順を適用すると、18mgの化合物が得られる。m/z(ES+)=1078.47
【0159】
ステップ8:
実施例2のステップ7で記載されたものと同じ手順を適用する。
【0160】
実施例5:ペプチドでベクター化されたキレート
例えば、国際公開第2007/042504号パンフレット、41〜77ページの実施例に記載されている(そして参照により援用される)ペプチドカップリング法が用いられる。ペプチドバイオベクターを調製し、こうして先行技術から公知であるようにキレート(NOTA、PCTA、DOTA…)にカップリングさせる。具体的には:
1)PCTAキレートについて:
PCTAキレート(国際公開第2007/042504号パンフレット52ページの実施例6ステップ3の化合物)(ガリウムで錯化されていない対応する式)を、国際公開第2007/042504号パンフレット52〜53ページの実施例7に示されているように、ペプチドにカップリングさせる。
2)NOTAキレートについて:
NOTAキレート(ガリウムで錯化されていない、国際公開第2007/042504号パンフレット49ページの実施例4の化合物)を、国際公開第2007/042504号パンフレット50ページの実施例5に示されているように、ペプチドにカップリングさせる;国際公開第2007/042504号パンフレット50ページの例示化合物(ガリウムで錯化されていない対応する式)を、異なるスクアレートリンカー(squarate linker)でNOTAにペプチドカップリングさせる;(CH2)n、PEGなど多くの他のリンカーが同様に調製されることが要約される。
【0161】
得られた化合物[ペプチド(直鎖状または環状)+リンカー+キレート]の例を以下の表に提示する。
【0162】


【0163】
CXCR4に対するペプチドすなわち本出願の段落0096に記載のペプチド(ペプチドa)〜e))について、適切なプロトコルを有利に用いる。
【0164】
得られた緩衝液(ラクテート、タータレート、マレエート、スクシネート…)に投入された化合物(キレート+最終的なリンカー付きペプチド)にこうして、本出願の実施例3に記載のようなガリウム発生器から発生したガリウム溶液を加える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種、有利にはガリウムでのキレートの錯化方法であって、該錯化が、該放射性核種を緩衝剤溶液中の該キレートに加えることによって、加熱することなく有利には周囲温度で実施され、該緩衝剤が少なくとも1個のカルボン酸官能基および多くとも2個のカルボン酸官能基を含むという条件で、この溶液の該緩衝剤が該放射性核種との配位のための2〜5個の官能基を含み、各配位官能基が独立してカルボン酸官能基およびヒドロキシル官能基から選択される、方法。
【請求項2】
前記緩衝剤が少なくとも1個のヒドロキシル官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射性核種がガリウム、有利にはGa68である、請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記緩衝剤が、ラクテート、タータレート、マレート、マレエート、スクシネート、アスコルベート、カーボネート、およびホスフェート緩衝剤、ならびにそれらの混合物から、有利にはラクテート、タータレート、およびカーボネート緩衝剤、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記キレートが、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ビタミン、単糖類もしくは多糖類、抗体、核酸、ビシクラム、またはアプタマーから選択される、診断上重要な病的領域を標的にするための試剤で有利にはベクター化された、ベクター化キレートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ベクター化キレートが、ベクター化NOTA、ベクター化PCTA、ベクター化AAZTA、およびベクター化DOTA、有利にはジデアザ−NOTA、フォレートNOTA、ジデアザPCTA、またはフォレートPCTAから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
緩衝剤および放射性核種と錯化したキレートを含む注射可能な溶液であって、該緩衝剤が少なくとも1個のカルボン酸官能基および多くとも2個のカルボン酸官能基を含むという条件で、該緩衝剤が放射性核種との配位のための2〜5個の官能基を含み、各配位官能基が独立してカルボン酸官能基およびヒドロキシル官能基から選択される、注射可能な溶液。
【請求項8】
前記放射性核種がガリウムである、請求項7に記載の溶液。
【請求項9】
前記緩衝剤が、ラクテート、タータレート、マレート、マレエート、スクシネート、アスコルベート、カーボネート、およびホスフェート緩衝剤、ならびにそれらの混合物から、有利にはラクテート、タータレート、およびカーボネート緩衝剤、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項7および8のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項10】
前記キレートが、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、ビタミン、単糖類もしくは多糖類、抗体、核酸、ビシクラム、またはアプタマーから選択される、診断上重要な病的領域を標的にするための試剤で有利にはベクター化された、ベクター化キレートである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項11】
前記ベクター化キレートが、ベクター化NOTA、ベクター化PCTA、ベクター化AAZTA、およびベクター化DOTA、有利にはジデアザ−NOTA、フォレートNOTA、ジデアザPCTA、またはフォレートPCTAから選択される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項12】
放射性核種発生器、よりとりわけGa68発生器によって提供される放射性核種の溶液と、非錯化キレートの溶液と、緩衝剤溶液とを混合するための少なくとも1つの区画を備える、加熱装置を伴わない、有利には自動的である機器であって、該緩衝剤が、ラクテート、タータレート、マレート、マレエート、スクシネート、アスコルベート、カーボネート、およびホスフェート、ならびにそれらの混合物から選択される、機器。

【公表番号】特表2012−517974(P2012−517974A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549557(P2011−549557)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051709
【国際公開番号】WO2010/092114
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(591052505)
【氏名又は名称原語表記】GUERBET
【Fターム(参考)】