説明

放射性液体の分注方法及び分注装置

【課題】シリンジを用いて放射性液体の正確な分注を可能とする分注方法及び分注装置を提供する。
【解決手段】シリンダ30とシリンダ30内で摺動するピストン32とを備えるシリンジ26を用いて、放射性液体を0.2cc分注する。まず、ピストン32を0.5ccまで引いて、第1のチューブ48を通して放射性液体をシリンジ26内に引き出す。次に、ピストン32を0.2ccまで押し戻し、シリンジ26内の放射性液体のうち不要分を第1のチューブ48を通して押し戻す。そして、シリンジ26と第1のチューブ48との連通を遮断すると共にシリンジ26と第2のチューブ52とを連通させ、ピストン32を初期位置である0ccまで押し戻して第2のチューブ52を通して放射性液体を押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジを用いた放射性液体の分注方法及び分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性核種(RI)で標識した化合物を含む放射性液体を体内に投与し、この標識化合物が体内の特定箇所に集まった様子を専用の装置で撮像することによって、疾病等を診断する核医学診断法が開発されている。この診断法では、比較的短寿命の放射性核種(例えば、ポジトロン放出核種として、15Oは2分、11Cは20分、18Fは110分の半減期を持つ)で標識された、15O−水や11C−メチオニンや18F−FDG(フルオロデオキシグルコース)等が放射性液体として用いられる。
【0003】
ここで、放射性液体の投与量は、基本的には画像などの診断情報、被験者の被ばく線量、検査時間などを考慮して決定されるが、被験者に対する実際の投与量が予定よりも多ければ被験者の被ばく線量が多くなり、一方、投与量が予定よりも少なければ検査遂行が不能になり診断の有効性が保てなくなるおそれがあるため、実際の投与量を厳格に管理する必要がある。一方、このように比較的短寿命の放射性核種を用いるときには、放射性液体を取り扱う者の放射線被ばくを防止する必要もある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、取扱者の放射線被ばくを防止すると共に、放射性液体の正確な投与を図ることを目的とした分注投与装置が開発されている。この分注投与装置では、シリンジを用いて自動制御によりバイアル瓶から所定量の放射性液体を引き出し、これを押し出して被験者に繋がるチューブ内に分注する。そして、分注された放射性液体を生理食塩水と共に送り出して、被験者に投与する。
【特許文献1】特開2002−306609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した分注投与装置のバイアル瓶には一日分の放射性液体が貯留されており、同日内における複数回の投与においては、同じバイアル瓶から放射性液体が引き出され、分注投与される。このとき、上記したように放射性核種の寿命が短いため、被験者に投与する放射能量を経時的に一定に保つためには、放射性液体の投与量を経時的に変化させる必要がある(例えば、朝から夕方までの間に0.1cc〜5ccの間で投与量を変化させる必要がある)。従って、シリンジには幅広い投与量について正確な分注が要求される。
【0006】
しかしながら、ディスポーザブルタイプのシリンジのピストンの先端に設けられたパッキンにはあそび(ガタ)があるため、ピストンを単に押し引きして放射性液体を分注する従来の手法では、放射性液体を正確に分注することが難しく、特に少量の放射性液体を分注するときに問題があった。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、シリンジを用いて放射性液体の正確な分注を可能とする分注方法及び分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ピストンのあそび分は、ピストンを引くときに特に影響するものであって、ピストンを押すときにはほぼ正確な位置決めが可能であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0009】
本発明に係る放射性液体の分注方法は、シリンダとシリンダ内で摺動するピストンとを備えるシリンジを用いて放射性液体を所定量分注する分注方法である。この方法は、ピストンを目標位置よりも大きく引いて、放射性液体をシリンジ内に引き出す第1の工程と、ピストンを目標位置まで押し戻す第2の工程と、ピストンを目標位置から所定量分だけ押し戻し、放射性液体を分注する第3の工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この分注方法では、ピストンを目標位置よりも大きく引いてから、目標位置まで押し戻し、その位置から所定量分だけピストンを押し戻して、放射性液体を分注している。従って、ごく少量の放射性液体を分注するときであっても、ピストンのあそび分の影響を排除して、正確な分注が可能になる。
【0011】
ここで上記目標位置は、上記所定量分に対応した位置である、ことを特徴としてもよい。このようにすれば、ピストンが初期位置に戻るまでに、所定量分の放射性液体の分注を1回行うことができる。
【0012】
また上記目標位置は、上記所定量の複数回分に対応した位置である、ことを特徴としてもよい。このようにすれば、ピストンを所定量分だけ押し戻す動作を繰り返すことにより、ピストンが初期位置に戻るまでに、所定量分の放射性液体の分注を複数回連続して行うことができる。
【0013】
本発明に係る放射性液体の分注方法では、ピストンの先端には弾性を有するパッキンが設けられており、第1の工程においてピストンを引くときの目標位置からの超過引き量は、少なくともパッキンの弾性変形によるあそび分より大きいと好ましい。このようにすれば、パッキンの弾性変形によるあそび分の影響を十分に排除することができる。
【0014】
本発明に係る放射性液体の分注装置は、シリンダとシリンダ内で摺動するピストンとを備えるシリンジを用いて放射性液体を所定量分注する装置である。この装置は、ピストンを往復動させる駆動装置と、駆動装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、ピストンを目標位置よりも大きく引いてから、ピストンを目標位置まで押し戻した後、ピストンを所定量分だけ押し戻すようにように、駆動装置を制御することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る放射性液体の分注装置は、放射性液体の貯留先とシリンジとを連通する第1の流路と、シリンジと放射性液体の分注先とを連通する第2の流路と、第1及び第2の流路の間でシリンジと連通する流路を切り替える流路切替手段と、を備え、制御装置は、ピストンを目標位置よりも大きく引いてから目標位置まで押し戻す間は、シリンジと第1の流路とを連通させ、ピストンを目標位置から所定量分だけ押し戻す間は、シリンジと第2の流路とを連通させるように、流路切替手段を制御すると好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリンジを用いて放射性液体を正確に分注することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る放射性液体の分注投与装置10の構成を示す図である。図1に示すように、分注投与装置10は、放射性液体を分注するための分注装置12と、分注された放射性液体を被験者に投与するための投与器14と、分注された放射性液体を投与器14に送り出すための送出器16と、を備えている。
【0019】
分注装置12は、分注部18と制御部(制御装置)20とを有している。分注部18は、放射性液体を貯留するバイアル瓶22を収容する収容部24を有している。この収容部24は、例えば上部開口からバイアル瓶22を挿入する井戸型の容器であり、全体が放射線を遮蔽する鉛やタングステン等の材料から形成されている。
【0020】
また分注部18は、放射性液体を分注するためのシリンジ26を保持する保持部28を有している。この保持部28は、例えばシリンジ26を一端から挿通して保持する筒型の容器であり、全体が放射線を遮蔽する鉛やタングステン等の材料から形成されている。
【0021】
シリンジ26は、図2に示すように、シリンダ30とこのシリンダ30内で摺動するピストン32とを備えている。ピストン32の先端には、ゴム等の弾性体から形成されたパッキン34が設けられている。従って、ピストン32をシリンダ30内で押し引きすることで、先端口36から放射性液体を吸入したり、吐出したりすることができる。
【0022】
また分注部18は、ピストン32を駆動して押し引きする駆動装置38を有している。この駆動装置38としては、例えばステッピングモータを用いることができる。
【0023】
また分注部18は、放射能量計測器40を有している。この放射能量計測器40は、第3のチューブ54の途中に形成された、例えばコイル状のバッファルーフ54Aに収容された放射性液体の放射能量を計測する。バッファルーフ54Aを含めてこの放射能量計測器40の周りは、筒型の放射線遮蔽壁42で覆われている。放射線遮蔽壁42は、鉛やタングステン等の放射線を遮蔽する材料から形成されている。
【0024】
また分注部18は、廃液ボトル44を収容する収容部46を有している。この収容部46に廃液ボトル44がセットされ、セットアップ時などにおいて使用され不要になった液体が収容される。
【0025】
上記したバイアル瓶22とシリンジ26とは、第1のチューブ(第1の流路)48を介して連絡されている。第1のチューブ48の一端にはカテラン針50が設けられており、このカテラン針50がバイアル瓶22内に差し込まれる。シリンジ26と放射能量計測器40とは、第2及び第3のチューブ52,54を介して連絡されている。放射能量計測器40と廃液ボトル44とは、第4のチューブ56を介して連絡されている。ここで、シリンジ26と第1及び第2のチューブ48,52との間には三方活栓(流路切替手段)58が設けられており、シリンジ26と連通する流路を第1及び第2のチューブ48,52の間で切り替え可能になっている。また、第2及び第3のチューブ52,54と後述する第6のチューブ64との間にも三方活栓60が設けられており、第3のチューブ54と連通する流路を第2及び第6のチューブ52,64の間で切り替え可能になっている。更に、第3及び第4のチューブ54,56と後述する第7のチューブ66との間にも三方活栓70が設けられており、第3のチューブ54と連通する流路を第4及び第7のチューブ56,66の間で切り替え可能になっている。また、第1のチューブ48の経路上近傍には、放射能濃度センサ72が設けられており、放射能量計測器40の手前の第3のチューブ54の経路上近傍には、放射線通過センサ74が設けられている。
【0026】
また分注部18は、上記した各装置等を収容し、放射線が外部に漏れ出るのを防止する放射線遮蔽壁76を有している。放射線遮蔽壁76は、鉛やタングステン等の放射線を遮蔽する材料から形成されている。
【0027】
制御部20は、分注部18の駆動装置38や各三方活栓58,60,70を制御する。
【0028】
投与器14は、被験者毎に交換可能なエアベントフィルタ76と翼付針78を有している。エアベントフィルタ76は、空気を遮断する。分注部18の三方活栓70とエアベントフィルタ76とは、第7のチューブ66を介して連絡されている。また翼付針78とエアベントフィルタ76との間は、第8のチューブ68を介して連絡されている。また、分注部18の外部であって第7のチューブ66の経路上近傍には、放射線通過センサ80が設けられている。
【0029】
送出器16は、第3のチューブ54内に分注された放射性液体を被験者に向けて送り出すためのシリンジ82と、駆動装置84とを有している。シリンジ82は、シリンダ86とピストン88を有し、第5のチューブ62を介して生理食塩水等の液体(以下、生理食塩水として説明する。)の貯留先と連絡されている。第5のチューブ62の一端には注射針90が設けられており、この注射針90が生理食塩水パック92に差し込まれる。またシリンジ82は、第6のチューブ64を介して分注部18の三方活栓60に連絡されている。第5及び第6のチューブ62,64とシリンジ82との間には三方活栓94が設けられており、シリンジ82と連通する流路を第5及び第6のチューブ62,64の間で切り替え可能になっている。
【0030】
駆動装置84は、送出器16のシリンジ82のピストン88を駆動して往復動させる。これにより、生理食塩水パック92からシリンジ82内に生理食塩水が吸入吐出される。この駆動装置84や三方活栓94も、前述した制御装置20により制御される。
【0031】
次に、本実施形態に係る放射性液体の分注投与方法について説明する。
【0032】
まず、分注投与装置10のセットアップを行う。最初に、一日一回程度の頻度で交換されるディスポーザブル部品(シリンジ26,82、チューブ48,52,54,56,62,64,66,68、三方活栓58,60,70,94、針50,78,90、フィルタ76など)をセットする。次に、例えば2GBq/20ml〜8GBq/30ml程度の放射性液体を貯留するバイアル瓶22を収容部24に収容し、カテラン針50をバイアル瓶22内に差し込む。放射性液体としては、例えば18F−FDG(フルオロデオキシグルコース)や15O−水や11C−メチオニンを用いることができる。
【0033】
次に、バイアル瓶22に入った放射性液体を、第1のチューブ48及び三方活栓58を介してシリンジ26内に一定量引き込む。次に、三方活栓58、第2のチューブ(第2の流路)52、及び三方活栓60を介して、放射線通過センサ74が放射能を感知するまで、シリンジ26により放射性液体を押し出す。このようにして、第1のチューブ48、三方活栓58、及び第2のチューブ52内を放射性液体で満たすと共に、これら経路上から空気を追い出す。ここで、放射能濃度センサ72は、常時放射能濃度を測定することで、経路上から空気を追い出すのに使用され、無駄となる放射性薬液の量を最小限にする。
【0034】
次に、送出器16のシリンジ82を用いて三方活栓94、第6のチューブ64、三方活栓60、第3のチューブ54、及び三方活栓70内を生理食塩水で満たす。これと同時に、第1のチューブ48、三方活栓58、及び第2のチューブ52内を放射性液体で満たすときに用いた、第3のチューブ54内に残留する放射性液体を廃液ボトル44に排出する。更に、三方活栓70により流路を切り替えて、第7及び第8のチューブ66,68、並びに翼付針78内を生理食塩水で満たす。このようにして経路内全てを液体で満たし、経路上から空気を追い出して、セットアップを完了する。
【0035】
次に、放射性液体の分注投与を開始する。第1の方法における一例として、放射性液体を0.2cc分注する場合について説明する。この例では、10cc用のシリンジ26を用いた。このシリンジ26は、0.1ccを引き出すのにピストン32を0.5mm動かす必要があり、5cc引き出すにはピストン32を25mm動かす必要がある。
【0036】
まず、制御部20により三方活栓58を制御し、シリンジ26と第1のチューブ48とを連通させる。次に、制御部20により駆動装置38を制御し、図3に示すように、目標位置である0.2cc(1.0mm)を超えてピストン32を引く。このとき、目標位置からの超過引き量は、ピストン32のパッキン34の弾性変形によるあそび分よりも大きくする。ここでは、例えば0.3cc分(1.5mm)超過して引き、全体として0.5cc(2.5mm)までピストン32を引く。これにより、第1のチューブ48を通して放射性液体をシリンジ26内に引き出す(第1の工程)。
【0037】
次に、図4に示すように、制御部20により駆動装置38を制御し、ピストン32を目標位置である0.2ccまで押し戻し、シリンジ26内の放射性液体のうち不要分を第1のチューブ48を通して押し戻す(第2の工程)。次に、制御部20により三方活栓58を制御し、シリンジ26と第1のチューブ48との連通を遮断すると共にシリンジ26と第2のチューブ52とを連通させる。そして、図5に示すように、制御部20により駆動装置38を制御し、ピストン32を初期位置である0cc(0mm)まで押し戻して、第2のチューブ52を通して放射性液体を押し出す。このとき、制御部20により三方活栓60を制御することで、第2のチューブ52と第3のチューブ54とが連通されているため、0.2cc分の放射性液体が三方活栓60を介して第3のチューブ54上に分注される(第3の工程)。
【0038】
次に、制御部20により三方活栓60を制御し、第3のチューブ54と第6のチューブ64とを連通させる。そして、送出器16のシリンジ82を介して、生理食塩水を第3のチューブ54内に所定量送り出す。このようにして、第3のチューブ54内に分注された0.2cc分の放射性液体を、バッファループ54Aまで送り込む。このとき、三方活栓70は第3のチューブ54と第4のチューブ56とを連絡しており、第3のチューブ54内に送り込まれた生理食塩水分は廃液ボトル44に排出される。
【0039】
そして、バッファループ54A内に送り込まれた放射性液体の放射能量を、放射能量計測器40により正確に測定する。そして、制御部20により三方活栓70を制御し、第3のチューブ54と第7のチューブ66とを連通させた後、再び送出器16のシリンジ82を介して第3のチューブ54内に生理食塩水を所定速度で送り出す。このようにして、投与器14の第7及び第8のチューブ66,68を通して、翼付針78から被験者に放射性液体を所定速度で投与する。このとき、放射線通過センサ80により第7のチューブ66内を通過する放射性液体の放射線を検知することで、放射性液体が被験者に確実に投与されたかどうかをモニタすることができる。
【0040】
以上のようにして、放射性液体の分注投与を、繰り返し実行する。なお、放射性液体の寿命は短いため、被験者に投与する放射能量を経時的に一定に保つためには、放射性液体の投与量を経時的に変化させる必要がある。例えば、朝から分注投与を開始したときは、夕方までの間に0.1cc〜5ccの間で投与量を変化させる必要がある。しかしながら、例えば1cc以上を分注するときのように、シリンジ26のピストン32のあそび分による影響を受けて正確な分注ができなくても、その誤差を許容し得るような場合は、単にピストン32を押し引きして、放射性液体を分注してもよい。ただし、このような場合であっても、上記で説明した0.2cc分を分注するときのようにピストン32を制御してもよい。
【0041】
以上、詳述したようにこの分注方法では、放射性液体を分注するとき、ピストン32を目標位置よりも大きく引いてから、目標位置まで押し戻し、その位置から所定量分だけピストンを押し戻して、放射性液体を分注している。従って、ごく少量の放射性液体を分注するときであっても、ピストンのあそび分の影響を排除して、正確な分注及び投与を行うことが可能になる。なお、本発明者の実験により、本実施形態に係る分注方法によれば、分注量のバラツキが10%以内に抑えられることが確認されている。
【0042】
また本実施形態では、制御部20により放射性液体の分注投与を自動制御可能であるため、分注投与作業の効率化と取扱者の放射線被ばくの低減を図ることができる。
【0043】
次に、放射性液体を分注投与する第2の方法について説明する。一例として、放射性液体0.2ccの分注を、5回連続して行う場合について説明する。この例でも、10cc用のシリンジ26を用いた。このシリンジ26は、0.1ccを引き出すのにピストン32を0.5mm動かす必要があり、5cc引き出すにはピストン32を25mm動かす必要がある。
【0044】
上記した第1の方法と同様にセットアップが完了した後、まず、制御部20により三方活栓58を制御し、シリンジ26と第1のチューブ48とを連通させる。次に、制御部20により駆動装置38を制御し、図6に示すように、目標位置である1.0cc(5mm)を超えてピストン32を引く。このとき、目標位置からの超過引き量は、ピストン32のパッキン34の弾性変形によるあそび分よりも大きくする。ここでは、例えば0.5cc分(2.5mm)超過して引き、全体として1.5cc(7.5mm)までピストン32を引く。これにより、第1のチューブ48を通して放射性液体をシリンジ26内に引き出す(第1の工程)。
【0045】
次に、図7に示すように、制御部20により駆動装置38を制御し、ピストン32を目標位置である1.0ccまで押し戻し、シリンジ26内の放射性液体のうち不要分を第1のチューブ48を通して押し戻す(第2の工程)。次に、制御部20により三方活栓58を制御し、シリンジ26と第1のチューブ48との連通を遮断すると共にシリンジ26と第2のチューブ52とを連通させる。そして、図8に示すように、制御部20により駆動装置38を制御し、ピストン32を所定量分である0.2cc分(1mm)だけ押し戻して、第2のチューブ52を通して放射性液体を押し出す。このとき、制御部20により三方活栓60を制御することで、第2のチューブ52と第3のチューブ54とが連通されているため、0.2cc分の放射性液体が三方活栓60を介して第3のチューブ54上に分注される(第3の工程)。第3のチューブ54上に0.2ccの放射性液体を分注した後の工程は、上記した第1の方法と同様である。
【0046】
なおこの方法では、ピストン32を目標位置である1ccから0.2cc分ずつ押し戻し、第3のチューブ54上への0.2cc分の放射性液体の分注と、被験者への投与とを繰り返すことで、連続して複数回(この例では5回)の放射性液体の分注投与を行うことができ、効率的な分注投与が可能となる。
【0047】
この分注方法でも、放射性液体を分注するとき、ピストン32を目標位置よりも大きく引いてから、目標位置まで押し戻し、その位置から所定量分だけピストンを押し戻して、放射性液体を分注している。従って、ごく少量の放射性液体を分注するときであっても、ピストンのあそび分の影響を排除して、正確な分注及び投与を行うことが可能になる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、放射性液体を分注すると共に被験者に投与する場合について説明したが、本発明はシリンジ26を用いて放射性液体を単に分注する場合について広く適用することができる。
【0049】
また、ピストン32を引く目標位置や1回の分注量は、任意に設定可能である。例えば、1回で0.3ccの放射性液体を分注する必要があるとき、目標位置を6ccとし、バイアル瓶22から6ccの放射性液体を一度に引き出して、これを0.3ccずつ分注して、20人の被験者に連続投与することも可能である。
【0050】
また、1回の分注量を0.1ccと0.2ccの二通りとし、0.1ccを5回分、及び0.2ccを5回分の計10回分を、シリンジ26に一度に引き出す目標位置とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態に係る放射性液体の分注投与装置の構成を示す図である。
【図2】シリンジの構成を示す分解斜視図である。
【図3】分注方法を説明するための図である(第1の工程)。
【図4】分注方法を説明するための図である(第2の工程)。
【図5】分注方法を説明するための図である(第3の工程)。
【図6】他の分注方法を説明するための図である(第1の工程)。
【図7】他の分注方法を説明するための図である(第2の工程)。
【図8】他の分注方法を説明するための図である(第3の工程)。
【符号の説明】
【0052】
10…分注投与装置、12…分注装置、14…投与器、16…送出器、18…分注部、20…制御部、26…シリンジ、30…シリンダ、32…ピストン、34…パッキン、38…駆動装置、48…第1のチューブ、52…第2のチューブ、58…三方活栓。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと該シリンダ内で摺動するピストンとを備えるシリンジを用いて放射性液体を所定量分注する分注方法であって、
前記ピストンを目標位置よりも大きく引いて、前記放射性液体を前記シリンジ内に引き出す第1の工程と、
前記ピストンを前記目標位置まで押し戻す第2の工程と、
前記ピストンを前記目標位置から前記所定量分だけ押し戻し、前記放射性液体を分注する第3の工程と、
を備えることを特徴とする放射性液体の分注方法。
【請求項2】
前記目標位置は、前記所定量分に対応した位置である、ことを特徴とする請求項1に記載の放射性液体の分注方法。
【請求項3】
前記目標位置は、前記所定量の複数回分に対応した位置である、ことを特徴とする請求項1に記載の放射性液体の分注方法。
【請求項4】
前記ピストンの先端には弾性を有するパッキンが設けられており、
前記第1の工程において前記ピストンを引くときの前記目標位置からの超過引き量は、少なくとも前記パッキンの弾性変形によるあそび分より大きい、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射性液体の分注方法。
【請求項5】
シリンダと該シリンダ内で摺動するピストンとを備えるシリンジを用いて放射性液体を所定量分注する分注装置であって、
前記ピストンを往復動させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ピストンを目標位置よりも大きく引いてから、該ピストンを該目標位置まで押し戻した後、該ピストンを前記所定量分だけ押し戻すように、前記駆動装置を制御することを特徴とする放射性液体の分注装置。
【請求項6】
前記放射性液体の貯留先と前記シリンジとを連通する第1の流路と、
前記シリンジと前記放射性液体の分注先とを連通する第2の流路と、
前記第1及び第2の流路の間で前記シリンジと連通する流路を切り替える流路切替手段と、を備え、
前記制御装置は、
前記ピストンを前記目標位置よりも大きく引いてから該目標位置まで押し戻す間は、前記シリンジと前記第1の流路とを連通させ、前記ピストンを前記目標位置から前記所定量分だけ押し戻す間は、前記シリンジと前記第2の流路とを連通させるように、前記流路切替手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の放射性液体の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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