説明

放射性物質で汚染されたスラッジを移送する方法および装置

【課題】放射性廃棄物である廃スラッジを貯蔵タンクから一旦取り出して、タンクの検査時に、堆積中に固結したスラッジを効果的に崩して容易に移送する方法とその装置を提供する。
【解決手段】貯蔵タンクT1内部で堆積したスラッジ層の上に存在する上澄み水に対して空気を吹き込んで局部的に撹拌することにより流動性のスラッジ液を形成し、このスラッジ液をスラッジ移送ポンプP1により貯蔵タンクから吸い出して移送タンクT2に移送する。移送タンクにおいて生じた上澄み水2を貯蔵タンクに返還し、上澄み水噴出装置6を通じて噴出させ、スラッジ堆積層11に向かって勢いよく吹き当てることにより破砕する操作を継続する。空気吹き込み装置および上澄み水吹噴出装置の位置の変更を、監視カメラ7で監視し、制御装置8により制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質で汚染された、有害で危険な廃棄物であるスラッジを、貯蔵タンクから他のタンクに移送する方法と、その方法の実施に使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などの放射性物質を取扱う場所では、使用する水の浄化装置から発生する使用済みのフィルター材などが、廃スラッジ(以下、単に「スラッジ」という。)として発生する。放射能が高いスラッジは、通常、貯蔵タンク内で貯蔵して放射能を減衰させる。スラッジは、長期間貯蔵するあいだに固結した状態となりやすい。スラッジの種類によっては、沈降が早く、早期に固結するものがある。この、密に固結した状態のスラッジは、放射性物質を含み有害で危険であることから取扱いが難しく、スラッジの貯蔵、移送の設備およびその運転操作に使用する機器には、高い信頼性が要求される。
【0003】
たとえばスラッジ貯蔵タンクの健全性を確認するためには、タンク内に貯蔵しているスラッジを、いったんタンク外部へ移送して、タンクを点検可能にすることが必要である。そのほかにもスラッジを移送する必要が生じることがある。移送に当たっては、固結したスラッジを崩して、流動性をもった液の状態にしなければならない。そこで、スラッジを上澄み水に分散させて流動性をもたせることを意図して、通常、既存のタンクには、その底部に撹拌用のエアーバブリング管が設置されているが、この設備をもって、タンク内に多量堆積しているスラッジと上澄み水との全体を撹拌することは、実際上困難である。
【0004】
貯蔵タンク内のスラッジを移送するに当たって、従来は、液の吸い上げと移送のために、(1)電動モータ式水中ポンプ、(2)空気作動型ダイヤフラムポンプまたは(3)電動モータ駆動式スクリューポンプなどが使用され、流動性の液を形成するために撹拌を行なうためには、(4)水中撹拌ポンプ、(5)水中撹拌スクリューまたはエア撹拌機などが使用されてきた。
【0005】
電動モータ式水中ポンプは、比較的小容量の、したがって高さが低いタンク類でスラッジ貯蔵をした場合、揚程の低下は認められるものの、使用することはできる。しかし、大型の貯蔵タンクでは、高さによる抵抗やスラッジ粘性抵抗により、揚程の限界近くでは、配管も含めて閉塞が発生しやすい。空気作動型ダイヤフラムポンプは、約0.6MPaの吐出能力を有するが、液の濃度が高くなって粘性が増すと吐出流量が低下し、ケーシング内が廃スラッジで閉塞されたり動作不能となったりし、それに伴った配管も閉塞する。電動モータ駆動式スクリューポンプは、スクリュー部からケーシング部に移行する、容積が増大する部分で流速が低下し、廃スラッジが滞留してポンプ内部が閉塞を起して動作不良となり、それにつれて配管も詰まる。
【0006】
ポンプ手段の閉塞は、装置を分解し、内部を洗浄することによって機能の回復ができるが、放射性物質を含むスラッジにて閉塞している場合、ポンプ自身が高線量当量率となるため、分解することには困難が伴う。遮蔽設備を設けて分解するほかなく、保管に当たっては、遮蔽容器に入れなければならない。
【0007】
撹拌機についても、水中撹拌ポンプ、水中撹拌機で廃スラッジと上澄み水とを撹拌する初期の段階では、スラッジ濃度が薄いため作動するが、撹拌が進んで液の濃度や粘性が高くなった段階では、ケーシング内部にスラッジが詰まって、インペラーが動作不能となる。そのため、貯蔵タンク全体としてスラッジ濃度が高い場合、撹拌機により撹拌することは、タンク全体はむろん、部分的にせよ、困難である。エアの吹き込みを人力によって行なう撹拌方法は、マンホールという限定した位置に作業員が居て実施するものであり、マンホールはタンク天板の隅に位置しており、タンク径が大きく、高さも高いタンクでは、操作する撹拌手段自身の重量も重くなることから、撹拌できる範囲は、マンホール直下近くに限定される。
【0008】
比較的線量当量率が低く、被ばくのおそれが低いタンクからのエア撹拌作業は、人力により行なっており、長さ10m程度のポールの端にエアホースを取付け、数人がかりでスラッジに挿入したり目的の位置へ移動させたりするが、操作が難しく、改善が求められていた。タンク天板の上部に、移送機材などを設置して作業するだけの有効な空間が存在する場合には、タンク天板上のマンホールから作業者が入って、水中ポンプや撹拌装置をタンク内部へ設置し、直接操作してスラッジをタンク外部へ移送することが行なわれているが、被ばくの機会が多い、危険な作業である。固結したスラッジの塊を粉砕するためには、高圧水のジェットが有効であるが、そのための水を外部から供給すると、放射能を有する廃水の量が増加し、廃棄物処理系の負荷が増す。
【0009】
高圧水供給管と空気供給管とをそなえた混気ジェットポンプを、スラッジ吸上げ手段として採用し、その周囲に固形スラッジ破砕リングを置き、上方に洗浄水を噴出する掻寄せ洗浄水噴出リングを設けたユニットからなる、スラッジの吸上げ装置が提案された(特許文献1)。この装置は、固形スラッジ破砕リングで固結しているスラッジを機械的に破砕し、混気ジェットポンプで吸い上げてタンク外に運び出し、上方から噴出した洗浄水で周囲のスラッジを掻寄せて、混気ジェットポンプで吸い出そうというものである。混気に乗せられて吸い上げられたスラッジは、別のスラッジ分離塔に運ばれ、そこで空気を分離し、静置されることによって上澄み液が生じるから、それを上記の高圧水および洗浄水として循環使用する。
【0010】
このスラッジ吸上げ装置のユニット全体は、駆動装置により上下され、タンク内の任意の高さに位置することができる。しかし、ユニットはマンホールから吊り下げてタンクに入れるので、固結したスラッジを効果的に破砕し吸い上げられるのは、やはりマンホール直下とその近傍の、限定された範囲内でしかない。この発明の意義は、貯蔵タンク内の上澄み水を循環使用するため、他から洗浄水を補給せず、したがって放射能で汚染された物質を増加させないで済むことである。
【0011】
新規に建設する設備に関しては、あらかじめスラッジ貯蔵タンクの底部に、スラッジ抜き出しノズルを有する配管を設置しておき、このスラッジ抜き出しノズルに対向して希釈ノズルを設けるとともに、廃スラッジを撹拌するための水を噴出する噴流ノズルを設けることが提案された(特許文献2)。この設備においては、希釈ノズルからの希釈水で廃スラッジを希釈し、噴流ノズルからの噴流水で廃スラッジを撹拌したのち、スラッジ抜き出しノズルから廃スラッジをタンク外へ抜き出す。この場合も、希釈ノズルからの希釈水および(または)噴流ノズルからの噴流水として、上澄み水を利用すれば、スラッジの抜き出しに新たに必要となる洗浄水の負担を、軽減し、またはなくすことができる。しかし、このようなスラッジ抜き出しは、既存の設備に対しては適用できない。
【特許文献1】特開平5−317610
【特許文献2】特開平9−96697
【0012】
以上挙げたとおり、従来のスラッジ貯蔵−抜出しの技術には、下記のようなさまざまな問題があった。
・在来のポンプや撹拌装置を用いたのでは、貯蔵の間に固結したスラッジの塊を崩すことが容易でない。
・スラッジの塊を崩すのに効果的な高圧水ジェットを用いると、放射性の廃棄物量が増大する。
・タンク内の作業は、放射線による被ばくの危険が高い。
・被ばくを避けてタンク上のマンホールから作業すると、作業に困難が伴い、効率がよくない。
・スラッジの塊を崩すとともに流動化した液を吸い出すポンプのユニットを使用することは、有効に作動する範囲が限られ、大型のタンクには適用困難である。
・あらかじめ装置を設けておく必要のある技術は、設備を新設する場合には実施可能であるが、既存の設備に適用できない。
・ポンプや配管がスラッジで閉塞すると、その対応には、放射線の存在下という困難が伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、放射性廃棄物であるスラッジの移送に関して上記した諸問題を解決し、固結したスラッジを効果的に崩して容易に移送することができ、既存の貯蔵タンク、とくに大型のタンクに対しても適用でき、スラッジ分離塔のような貯蔵タンク以外の設備を必要とせず、そのとき完全に空であるか、または空でなくても容量に余裕のある別の貯蔵タンクを移送タンクとして利用し、処理すべき放射性廃棄物の量を増加させることなく、かつ、作業員の放射線被ばくが避けられるような移送方法と、その方法の実施に使用する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成する本発明のスラッジ移送方法は、図1に示すように、放射性物質で汚染されたスラッジ(1)を、貯蔵タンク(T1)から別のタンクである移送タンク(T2)に移送するためのスラッジ移送方法であって、貯蔵タンク(T1)内部で堆積したスラッジ層の上に存在する上澄み水に対して、空気ノズル(33)から空気を吹き込んで上澄み水を局部的に撹拌することにより、上澄み水にスラッジが巻き込まれた流動性のスラッジ液(12)を形成し、このスラッジ液を貯蔵タンクのほぼ中央部において、スラッジ移送ポンプ(P1)により貯蔵タンクから吸い出して移送タンクに移送し、移送タンクにおいてスラッジ液中のスラッジが沈降することにより生じた上澄み水(2)を、上澄み水返還ポンプ(P2)により貯蔵タンクに返還し、この返還された上澄み水を、上澄み水ノズル(62)を通じて噴出させ、スラッジ液の吸い出しにより露出したスラッジ堆積層(11)に向かって勢いよく吹き当てることによりこれを破砕し、粉砕されたスラッジと上澄み水との流れを、流動性のスラッジ液の吸い上げにより形成された、貯蔵タンクの中央部付近の凹みに流下させ、そこからスラッジ移送ポンプにより吸い上げて移送タンクに移送することからなる操作を継続的に行ない、その間、空気ノズル(33)および上澄み水ノズル(62)の位置の変更を、監視カメラ(7)による監視下に、制御装置(8)により制御するとともに、遮蔽手段(9)により放射線の影響を最小限にする条件下に実施することを特徴とするスラッジ移送方法である。
【0015】
このスラッジ移送方法の実施に使用する本発明のスラッジ移送装置は、これも図1に見るように、放射性物質で汚染されたスラッジ(1)を、貯蔵タンクから移送タンクに移送するためのスラッジ移送装置であって、貯蔵タンク(T1)、移送タンク(T2)、スラッジの上澄み水を撹拌するための、空気供給源(31)、位置を可変に設けた空気パイプ(32)および空気ノズル(33)からなる空気吹き込み装置(3)、撹拌により形成された流動性のスラッジ液(12)を貯蔵タンクから吸い出して移送タンクに移送するための、吸い込み口を上下動可能に設けたスラッジ移送ポンプ(P1)、移送タンクで生じた上澄み水(2)を貯蔵タンクに返還する、吸い込み口を上下動可能に設けた上澄み水返還ポンプ(P2)、返還された上澄み水を、露出したスラッジ堆積層(11)に吹き当てるための、上澄み水パイプ(61)および位置を可変に設けた上澄み水ノズル(62)を有する上澄み水噴出装置(6)、空気吹き込み装置および上澄み水噴出装置のノズルの位置を監視する監視カメラ(7)およびその位置を制御する制御装置(8)、ならびに放射線の影響を最小限にするための遮蔽手段(9)からなることを特徴とするスラッジ移送装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放射性物質を含み有害で危険なスラッジを、貯蔵タンクに貯蔵していた間、堆積により固結した場合でも、スラッジの塊を容易に崩して上澄み水に分散させ、流動性の高いスラッジ液とすることができ、それを常用のスラリーポンプで移送タンクに移送することができる。固結したスラッジを崩す操作は、空気の吹き込みによる局部的な上澄み水の撹拌と、循環する上澄み水の噴射との併用により効果的に行なわれ、在来の水中撹拌機などを用いたときに経験された、撹拌羽根がスラッジに固着して回転不能になるなどの問題は生じない。上記した空気の吹き込みと循環上澄み水の噴射とは、それを行なうそれぞれのノズルの位置をタンク内で自由に動かすことができるから、タンクの直径が大きい場合でも、また高さが高い場合でも、制約を受けることなく固結したスラッジを崩すことができる。
【0017】
堆積したスラッジに噴射する上澄み水は、移送タンクに移送したスラッジから生じる上澄み水を循環させて使用するから、外部から洗浄水を供給する必要がなく、放射性物質で汚染された廃棄物の量を増大させることがない。作業は、すべて遠隔監視のもとで遠隔操作により行ない、作業者は装置の設置および撤去時に限ってタンク周囲で作業すればよいから、作業員が放射線にさらされる機会は、著しく軽減される。
【0018】
本発明にしたがってスラッジ移送を行なえば、あるスラッジ貯蔵タンクに貯蔵されているスラッジを、別の貯蔵タンクを移送タンクとして使用することにより、特別のスラッジ分離塔などの設備を要することなく移送することができる。したがって本発明は、スラッジ抜き出しのための特段の設備を備えていない、既存の貯蔵タンクに対しても適用することができる。スラッジを完全に移送した貯蔵タンクは、その内部を直接点検することが可能になり、タンクの信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のスラッジ移送装置の構成を示す図1を参照して、本発明のスラッジ移送を説明する。スラッジ貯蔵タンク(T1)内には、一定のレベルまで上澄み水が入っており、上澄み水の下には、放射性物質を含み有害で危険なスラッジが、場合によっては土砂や樹脂のような夾雑物とともに、堆積している。
【0020】
空気吹き込み装置(3)は、制御装置(8)により遠隔操作で駆動され、スラッジ貯蔵タンク(T1)内で、平面上の任意の位置に、また上下方向の任意の深さに、空気ノズル(33)を移動させて挿入し、上澄み水の一部を撹拌し、流動性をもった液を形成させる。流動性をもち移送可能な状態になったスラッジ液(12)を、スラッジ移送ポンプ(P1)により吸引し、隣接するいまひとつのスラッジ貯蔵タンクであり、完全に空であるか、または容量に余裕がある移送タンク(T2)へ移送する。移送は、スラッジ移送系統(4)を通して行なう。
【0021】
スラッジ移送ポンプ(P1)は、貯蔵タンク(T1)のほぼ中央部を上下動し、その部分において、最初は空気の吹き込みによる上澄み水の局部的な撹拌により形成された、流動性のスラッジ液(12)を吸い上げて、移送タンク(T2)に移送する。それにより、貯蔵タンク(T1)の中央部には凹所が形成される。移送タンク(T2)へ移送されたスラッジは、そこで静置されることにより、スラッジが沈降し、その上部に上澄み水(2)が発生する。この上澄み水(2)を上澄み水返還ポンプ(P2)で吸引し、上澄み水移送系統(5)を通じて上澄み水噴出装置(6)へ供給し、上澄み水パイプ(61)を通して上澄み水噴出ノズル(62)から噴出し、凹所の周囲に堆積したスラッジ堆積層(11)に吹き当て、固結しているスラッジの塊を崩す。塊が崩されたスラッジは、上記したように上澄み水ともに流動性をもった液となり、流下して凹所にたまるから、スラッジ移送ポンプ(P1)により吸い上げ、移送タンクに移送することができる。この操作を繰り返すことによって、貯蔵タンク(T1)内のスラッジ(1)を、完全に移送タンク(T2)に移送することができる。
【0022】
貯蔵タンクおよび移送タンクのマンホール部分は、放射線が透過しやすいところであり、スラッジを移送するための機材を設置したマンホールからも、その危険はあるから、以上の操作はいずれも、影響を極力少なくするよう、遮蔽手段(9)を設置した環境において実施し、作業の安全を確保すべきである。この遮蔽手段は、図示したマンホールなどを対象にしたものに限らず、配管を遮蔽するものなど、必要に応じて適宜のものを使用する。
【0023】
本発明によるスラッジ移送の一連の作業は、監視カメラ(7)からの映像をモニターにより確認しつつ、専用の制御装置(8)より、適切に行なう。この装置において、監視装置として、上記の監視カメラ(7)に加えて監視マイクを設け、ポンプの運転音を集音してスピーカーで聞き取れるようにし、音に関しても異常の有無を監視することが好ましい。
【0024】
スラッジ移送ポンプ(P1)およびスラッジ移送系統(4)の配管は、とくにスラッジにより閉塞する危険があり、閉塞した場合はそれらの内部を洗浄して、閉塞を解消する必要がある。望ましくは、圧力の異常な変化など、閉塞が生じる兆候が見られた時点で洗浄を行なって、完全な閉塞を回避すべきである。このような目的で、本発明の装置には、スラッジ移送ポンプおよびスラッジ移送系統に洗浄水を循環させるための、ポンプケーシングおよび配管への洗浄水の入口用および出口用の管台と、遠隔操作により作動する弁とを設けることが推奨される。
【0025】
貯蔵タンクの健全性を確認するには、タンク内壁面を洗浄して、壁面の状況を視認できるようにすることが望ましい。この観点にもとづき、上澄み水噴出装置(6)から噴出させた上澄み水を用いて、貯蔵タンクのタンク内壁面を洗浄できるようにすることもまた、本発明の推奨すべき態様である。
【0026】
一般に、流体を噴出させるノズルは、口径を細くすることで噴出する流体の力を強めることができる。本発明の装置においても同様であるが、やはり適切な口径の範囲がある。たとえば、移送タンクで発生した上澄み水が、上澄み水移送ポンプから上澄み水移送配管を経由して、上澄み水噴出装置から噴出するノズルは、約20mmが適切であることが経験された。20mmを下回る、たとえば15mmに絞ると、ノズル先端から5m以上離れた位置においては、ラセン流の影響で水流の集中度が低下して粉砕力がかえって弱くなり、作業効率が低下する。スラッジ移送の進行によりスラッジ堆積層の表面が下降した場合に、ノズル位置をそれに追従させなくてもスラッジの塊が砕けるようにするには、上記のような適切なノズル径を選択し、ノズル先端から10m離れても粉砕力を保持できるようにすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のスラッジの移送装置の構成を示す概念的な図。
【符号の説明】
【0028】
1 スラッジ
11 スラッジ堆積層 12 流動性のスラッジ液
2 上澄み水
3 空気吹き込み装置
31 空気供給源 32 空気パイプ 33 空気ノズル
4 スラッジ移送系統
5 上澄み水移送系統
6 上澄み水噴出装置
61 上澄み水パイプ 62 上澄み水ノズル
7 監視カメラ
8 制御装置
9 遮蔽手段
T1 貯蔵タンク
T2 移送タンク
P1 スラッジ移送ポンプ
P2 上澄み水返還ポンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質で汚染されたスラッジ(1)を、貯蔵タンク(T1)から別のタンクである移送タンク(T2)に移送するためのスラッジ移送方法であって、貯蔵タンク(T1)内部で堆積したスラッジ層の上に存在する上澄み水に対して、空気ノズル(33)から空気を吹き込んで上澄み水を局部的に撹拌することにより、上澄み水にスラッジが巻き込まれた流動性のスラッジ液(12)を形成し、このスラッジ液を貯蔵タンクのほぼ中央部において、スラッジ移送ポンプ(P1)により貯蔵タンクから吸い出して移送タンクに移送し、移送タンクにおいてスラッジ液中のスラッジが沈降することにより生じた上澄み水(2)を、上澄み水返還ポンプ(P2)により貯蔵タンクに返還し、この返還された上澄み水を、上澄み水ノズル(62)を通じて噴出させ、スラッジ液の吸い出しにより露出したスラッジ堆積層(11)に向かって勢いよく吹き当てることによりこれを破砕し、粉砕されたスラッジと上澄み水との流れを、流動性のスラッジ液の吸い上げにより形成された、貯蔵タンクの中央部付近の凹みに流下させ、そこからスラッジ移送ポンプにより吸い上げて移送タンクに移送することからなる操作を継続的に行ない、その間、空気ノズル(33)および上澄み水ノズル(62)の位置の変更を、監視カメラ(7)による監視下に、制御装置(8)により制御するとともに、遮蔽手段(9)により放射線の影響を最小限にする条件下に実施することを特徴とするスラッジ移送方法。
【請求項2】
放射性物質で汚染されたスラッジ(1)を、貯蔵タンクから移送タンクに移送するためのスラッジ移送装置であって、貯蔵タンク(T1)、移送タンク(T2)、スラッジの上澄み水を撹拌するための、空気供給源(31)、位置を可変に設けた空気パイプ(32)および空気ノズル(33)からなる空気吹き込み装置(3)、撹拌により形成された流動性のスラッジ液(12)を貯蔵タンクから吸い出して移送タンクに移送するための、吸い込み口を上下動可能に設けたスラッジ移送ポンプ(P1)、移送タンクで生じた上澄み水(2)を貯蔵タンクに返還する、吸い込み口を上下動可能に設けた上澄み水返還ポンプ(P2)、返還された上澄み水を、露出したスラッジ堆積層(11)に吹き当てるための、上澄み水パイプ(61)および位置を可変に設けた上澄み水ノズル(62)を有する上澄み水噴出装置(6)、空気吹き込み装置および上澄み水噴出装置のノズルの位置を監視する監視カメラ(7)およびその位置を制御する制御装置(8)、ならびに放射線の影響を最小限にするための遮蔽手段(9)からなることを特徴とするスラッジ移送装置。
【請求項3】
ポンプの運転音を集音し、異常の有無を監視する監視マイクを備えた請求項2のスラッジ移送装置。
【請求項4】
スラッジ移送ポンプ(P1)およびスラッジ移送系統(4)の内部を洗浄する洗浄水を循環させるための、ポンプケーシングおよび配管への洗浄水の入口用および出口用の管台と、遠隔操作により作動する弁とを備えた請求項2のスラッジ移送装置。
【請求項5】
上澄み水噴出装置(6)から噴出させた上澄み水を用いて、貯蔵タンク(T1)のタンク内壁面を洗浄可能にした請求項2のスラッジ移送装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−96116(P2008−96116A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274476(P2006−274476)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(500054329)原電事業株式会社 (11)