説明

放射性物質汚染水の浄化方法

【課題】汚染により荒廃した広範囲の国土を救うべく放射性物質汚染水の浄化方法を提供しようとするもの。
【解決手段】放射性物質汚染水(1)を電気分解(2)して変成する電解工程と、電解後に変成した放射性物質を除去する分離工程とを有することを特徴とする。電解工程で放射性物質汚染水を電気分解することにより、例えば放射性セシウム(Cs)や放射性ヨウ素(I)を、次亜放射性ヨウ素酸(HOI)、次亜塩素酸放射性セシウム(CsOCl)、次亜放射性ヨウ素酸放射性セシウム(CsOI)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)などの化合物の形に変成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば放射性セシウムや放射性ヨウ素やストロンチウムなどによる放射性物質汚染水の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電コスト面等から原発推進政策が取られている。
2010年に日本国の資源エネルギー庁 (経済産業省) は、各エネルギーにおける1
kWhあたりの発電コストを次のように試算している(非特許文献1)。
太陽光 49 円
風力 (大規模)10-14円
水力 (小規模除く) 8-13円
火力 7 - 8 円
原子力 5 - 6 円
地熱 8 - 22 円
これらを比較すると、原子力発電は他の発電方式と比べて確かにコスト面の優位性を有しているものと考えられる。
ところで、東日本において巨大地震による大津波の発生が引き起こした原発事故で、広範囲にわたる農地や牧場その他の土壌の放射性物質による陸上汚染や、河川水・海水の水質汚染が極めて深刻で重大な社会問題となっている。
【非特許文献1】wikipedia「原子力発電」<URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB#.E5.8E.9F.E5.AD.90.E5.8A.9B.E7.99.BA.E9.9B.BB.E3.81.A8.E3.81.9D.E3.81.AE.E4.BB.96.E3.81.AE.E7.99.BA.E9.9B.BB.E3.82.B3.E3.82.B9.E3.83.88.E8.A9.A6.E7.AE.97>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこでこの発明は、汚染により荒廃した広範囲の国土を救うべく放射性物質汚染水の浄化方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
この発明の放射性物質汚染水の浄化方法は、放射性物質汚染水を電気分解して変成する電解工程と、電解後に変成した放射性物質を除去する分離工程とを有することを特徴とする。
ここで、前記放射性物質汚染水は、放射性物質で汚染された河川水や海水の他に、放射性物質により汚染された“土壌の洗浄水”等も含むものである。すなわち、放射性物質により汚染された土壌を洗浄する際、放射性物質が滲出した汚染水についてもこの発明を適用できるものである。
【0005】
この発明によると、電解工程で放射性物質汚染水を電気分解することにより、例えば放射性セシウム(Cs)や放射性ヨウ素(I)やストロンチウム(Sr)を、次亜放射性ヨウ素酸(HOI)、次亜塩素酸放射性セシウム(CsOCl)、次亜放射性ヨウ素酸放射性セシウム(CsOI)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)などの化合物の形に変成することができる。
そして、分離工程で電解後に変成した放射性物質から成る化合物を、活性炭に吸着させたり、RO膜に引っ掛けたりすることにより液相から除去することができる。
【0006】
また、放射性物質汚染水の電気分解により、放射性セシウム(Cs)や放射性ヨウ素(I)やストロンチウム(Sr)が電解の電気エネルギーを吸収し、陽子と中性子の集合体であって大きな歪みを孕んだ放射性の原子核の崩壊を促進して放射性が低減することとなる。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
放射性物質を液相から除去することができるので、荒廃した広範囲の国土を洗浄して救う放射性物質汚染水の浄化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
この実施形態の放射性物質汚染水の浄化方法は、放射性物質汚染水を電気分解して変成する電解工程と、電解後に変成した放射性物質を除去する分離工程とを有する。
前記放射性物質として、原発(原子力発電所)で副生する放射性セシウム137(137Cs)や放射性ヨウ素131(131I)やストロンチウム90(90Sr)などを例示することができる。前記電気分解は無隔膜で行うことができ、有隔膜で行うことも出来、食塩などの電解質を添加して行うことができる。前記分離工程では、活性炭、ゼオライトなどの吸着粒子やRO膜などの分離膜を使用することができる。
【0009】
前記放射性物質汚染水は、事故原発から放出された放射性物質で汚染された河川水や海水の他に、事故原発から放出された放射性物質により汚染された広範囲にわたる農地や牧場その他の土壌の洗浄水等も含むものである。すなわち、原発から放出された放射性物質により汚染された土壌を洗浄する際、放射性物質が滲出した汚染水についてもこの方法で浄化することができる。
【0010】
次に、この実施形態の放射性物質汚染水の浄化方法の使用状態を説明する。
この浄化方法によると、電解工程で放射性物質汚染水を電気分解することにより、放射性セシウム137(137Cs)や放射性ヨウ素131(131I)やストロンチウム90(90Sr)を、次亜放射性ヨウ素酸(HO131I)、次亜塩素酸放射性セシウム(137CsOCl)、次亜放射性ヨウ素酸放射性セシウム(137CsO131I)、水酸化ストロンチウム(90Sr(OH)2)などの化合物の形に変成することができる。
そして、分離工程で電解後に変成した放射性物質から成る化合物を、活性炭に吸着させたり、RO膜に引っ掛けたりすることにより液相から除去することができ、荒廃した広範囲の国土を洗浄して救うことができる。
ここで、電解工程では放射性物質の減衰率はともあれ、その濃度と放射能が低減していくことは確かであるので、十分に低レベルになるまで循環して電気分解し、分離工程に移行せしめる。
【0011】
また、放射性物質汚染水の電気分解により、放射性セシウム137(137Cs)や放射性ヨウ素131(131I)やストロンチウム90(90Sr)が電解の電気エネルギーを吸収し、陽子と中性子の集合体であって大きな歪みを孕んだ放射性の原子核の崩壊を促進して放射性が低減することとなる。
具体的には、放射性セシウム137(137Cs)が電気分解の電気エネルギーを吸収すると、β崩壊を促進してバリウム137m (137mBa)に変化し、次いで前記バリウム137m(半減期は約2.55分)はγ線を出して、バリウム137の安定同位元素になり、放射性を喪失することとなる。
また、ヨウ素131(131I)が電気分解の電気エネルギーを吸収すると、β崩壊を促進してキセノン131(131Xe)に変化し、毒性が減少することとなる。
さらに、ストロンチウム90(90Sr)が電気分解の電気エネルギーを吸収すると、β崩壊を促進してイットリウム90(90Y)に変化し、イットリウム90(90Y)もβ崩壊してジルコニウム90(90Zr)となり、放射性を喪失することとなる。
【0012】
(実施例)
〔1〕方法
図1に示すように、反応槽に汚染水1を1500cc貯留し、無隔膜の電気分解機構2との間をポンプPで循環(50cc/min)しながら、電流12Aを流して電気分解を行った。前記汚染水1は攪拌のため、9リットル/ minの流量でポンプPで循環した(電解工程)。こうして、60分電気分解した後の処理水3をRO膜4に通し、濾過処理水5と濃縮水6とに分離した(分離工程)。
【0013】
〔2〕セシウム汚染水の場合
汚染水として、セシウム133(133Cs)汚染水22ppmの浄化を行った。
このセシウム133(133Cs)汚染水の電気分解2を行うと、当初22pmだったセシウム133(133Cs)が60分経過後には16ppm(処理水3)に低減し、さらにRO膜4に通すことにより0.1ppm以下(濾過処理水5)にまで低減した。なお、RO膜4に通水後の濃縮水6は17ppmであった。
この実施例では、放射性ではない普通のセシウム133(133Cs)を使用したが、電気分解で原子を次亜酸等の化合物の形にして除去するという趣旨からすると、放射性セシウム137(137Cs)も同様に低減するものと考えられる。
【0014】
〔3〕ヨウ素汚染水の場合
汚染水として、ヨウ素127(127I)汚染水22ppmの浄化を行った。
このヨウ素127(127I)汚染水の電気分解2を行うと、当初10pmだったヨウ素127(127I)が60分経過後には1.3ppmに低減し(処理水3)、さらにRO膜4に通すことにより0.1ppm以下(濾過処理水5)にまで低減した。
この実施例では、放射性ではない普通のヨウ素127(127I)を使用したが、電気分解で原子を次亜酸等の化合物の形にして除去するという趣旨からすると、放射性ヨウ素131(131I)も同様に低減するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
荒廃した広範囲の国土を洗浄して救うことができることによって、種々の放射性物質汚染水の浄化方法の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の放射性物質汚染水の浄化方法の実施例を説明するシステム・フロー図。
【符号の説明】
【0017】
1 (放射性物質)汚染水
2 電気分解(機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質汚染水1を電気分解2して変成する電解工程と、電解後に変成した放射性物質を除去する分離工程とを有することを特徴とする放射性物質汚染水の浄化方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−40787(P2013−40787A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176043(P2011−176043)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(399049981)株式会社オメガ (70)