説明

放射性薬剤吸引装置

【課題】液状放射性医薬剤をバイアルからシリンジへ吸引する際に、吸引を行う医療従事者が被曝しないように遮蔽材を有する放射性薬剤吸引装置に関し、被曝の可能性をより減らし、針先がバイアルのガラス壁を損傷する懸念をなくし、手作業の際に針で指を傷つけにくく、装置をコンパクトにできるようにする。
【解決手段】遮蔽キャビネット1とシリンジ用遮蔽器3とを別に設け、別々に開閉する。薬剤針9及びエア針11を昇降させる昇降機構15は、穿刺された薬剤針9の針先がガラス壁に接触しても衝撃を与えないバネを備える。薬剤針9及びエア針11を取り付けるホルダー部が、遮蔽キャビネット1の開かれた側へ所定距離移動できる引出機構を有する。バイアル5を傾けて収納するための収納部は、傾斜を有し、薬剤針9及びエア針11の降下した針先が、バイアル5の傾いた底部の隅にセットされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状放射性医薬剤をバイアル(バイアル瓶のこと)からシリンジ(注射器のこと)へ吸引する際に、吸引を行う医療従事者が被曝しないように遮蔽材を有する放射性薬剤吸引装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
前記液状放射性医薬剤としては、例えば、PET(陽電子放射断層診断法)用の放射性薬剤であるFDG(フッ素化したブドウ糖誘導体)、SPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影法)放射性医薬品などがある。
【0003】
このような液状放射性医薬剤をバイアルからディスポーザブルシリンジなどに取り出す時、医療従事者が指先に被曝しないように、鉛又はタンブステンなどの遮蔽材の外側から手動又は自動的に操作により、薬剤針がバイアル上部ゴム栓中央部に手動又は自動的に穿刺し、バイアルからシリンジにより薬液を吸引し、人体に谷に自動的に供給する装置を、出願人は既に出願している(下記特許文献1)。
【0004】
この装置は、遮蔽材で覆われた大きなキャビネットの中に、遮蔽材付きのバイアル入りのコンテナと、このバイアルの上部のゴム栓に穿刺する薬剤針およびエア針と、薬剤針にチューブで連通するシリンジと、を備える。そして、薬剤針およびエア針を同軸でサーボモーターにより自動的にバイアルに穿刺し、吸引を行うものである。
【特許文献1】特願平2004−197982 このような装置を一部改良して、液状放射性医薬剤をバイアル(バイアル瓶のこと)からシリンジ(注射器のこと)へ吸引する際に、吸引を行う医療従事者が被曝しないように遮蔽材を有する放射性薬剤吸引装置を製造することが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、前記特許文献1の装置を一部改良して、液状放射性医薬剤をバイアルからシリンジへ吸引する際に、吸引を行う医療従事者が被曝しないように遮蔽材を有する放射性薬剤吸引装置を提供することにある。
そして、仮にそのようにして製造した装置であっても、遮蔽材で覆われた大きなキャビネットへバイアル入りのコンテナやシリンジを、手作業でセットする必要がある。その際、FDGのようにエネルギーの大きい放射性医薬品を取り扱うときに、被曝の可能性が残されていた。
【0006】
すなわち、これまでの鉛又はタングステンシールド付きのシリンジ、及び鉛又はタングステンなどの遮蔽材付きのバイアル入りのコンテナを用いても、バイアル上部からとシリンジ上部からの放射能の漏洩のため、医療従事者への指先被曝の可能性は残される。
(1)特に、1本のバイアルから液状放射性医薬剤を数本のシリンジへ吸収する際に、シリンジを交換するために何度もキャビネットを開けなければならず、そのたびごとに、被曝の可能性が発生する。
(2)また、バイアル内の液状放射性医薬剤を残さず吸引するには、手動又は自動によりバイアルへ穿刺する薬剤針の針先が、バイアルの底部ぎりぎりに位置しなければならない。しかし、手作業に伴う誤差により、針先がバイアルの底部に当たりガラス壁を損傷する懸念がある。
【0007】
(3)また、手作業により薬剤針およびエア針をセットする際には、指を傷つけないように、セットが終わった後に針カバーを外すことが望ましい。しかし、医療現場の限られたスペースの事情から、装置はコンパクトであることが望ましく、装置内部のスペースは狭く、セット後に針カバーを外しにくいため、指を傷つけやすい状況があった。
【0008】
(4)また、装置をコンパクトにしようとすると、装置内部での手作業が困難になった。
この発明は、以上の問題点を解決するために、被曝の可能性をより減らし、針先がバイアルのガラス壁を損傷する懸念をなくし、手作業の際に針で指を傷つけにくく、装置をコンパクトにできる放射性薬剤吸引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、第一発明は、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を充填されたバイアルを収納できる遮蔽キャビネットと、前記遮蔽キャビネットの内部に設けられ、前記バイアルの上部のゴム栓に穿刺される薬剤針と、これらの薬剤針を、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記ゴム栓に向かって針の方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記遮蔽キャビネットの内部に収納されるシリンジに連通し前記薬剤針に連通するチューブと、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記プランジャを引いて吸引を行う吸引動作機構と、を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
第二発明は、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を充填されたバイアルを収納できる遮蔽キャビネットと、前記遮蔽キャビネットの内部に設けられ、前記バイアルの上部のゴム栓に穿刺される薬剤針と、これらの薬剤針を、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記ゴム栓に向かって針の方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記遮蔽キャビネットの外部に一体的に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を吸引するためのシリンジを収納できるシリンジ用遮蔽器と、このシリンジに連通し前記シリンジ用遮蔽器及び前記遮蔽キャビネットを貫通して前記薬剤針に連通するチューブと、を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
【0010】
第三発明は、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を充填されたバイアルを収納できる遮蔽キャビネットと、前記遮蔽キャビネットの内部に設けられ、前記バイアルの上部のゴム栓に穿刺される薬剤針9及びエア針と、これらの薬剤針9及びエア針を、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記ゴム栓に向かって針の方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記遮蔽キャビネットの外部に一体的に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を吸引するためのシリンジを収納できるシリンジ用遮蔽器と、このシリンジに連通し前記シリンジ用遮蔽器及び前記遮蔽キャビネットを貫通して前記薬剤針に連通するチューブと、を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
【0011】
第四発明は、さらに、前記昇降機構は、穿刺された薬剤針の針先がガラス壁に接触しても衝撃を与えないバネを備えた衝撃緩和機構を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
第五発明は、さらに、前記昇降機構は、薬剤針9及びエア針を取り付けるホルダー部を有し、このホルダー部が、前記遮蔽キャビネットの開かれた側へ所定距離引き出すことができる引出機構を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
【0012】
第六発明は、さらに、前記昇降機構は、薬剤針9及びエア針を取り付けるホルダー部のうち、直接に針のハブに接触するクランプ部分が、プラスチック製又はアルミ製であることを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
第七発明は、さらに、前記昇降機構は、遮蔽キャビネットの外部に設けられた駆動レバーと、遮蔽キャビネットの内部に設けられ前記駆動レバーに連動して回動する駆動アームと、この駆動アームにより押されて昇降する薬剤針スライダ又はエア針スライダと、前記薬剤針スライダをガイドする薬剤針スライドレールと、前記エア針スライダをガイドするエア針スライドレールと、薬剤針スライダ及びエア針スライダのうち一方に固定され他方を略水平方向にガイドし昇降動作を同期させる接続レールと、を有して構成されることを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
【0013】
第八発明は、さらに、前記遮蔽キャビネットの内部で前記バイアルを傾けて収納するための収納部は、傾斜を有し、前記薬剤針9及びエア針の降下した針先が、前記バイアルの傾いた底部の隅にセットされるように位置することを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
【0014】
第九発明は、さらに、前記遮蔽キャビネットは、箱状をなし、左右側面の一方又は両方に開閉扉を有し、前面を含む前面部分と背面を含む背面部分が分割されており、互いに前後方向にスライド可能なスライド機構を有し、前面部分と背面部分の一方に前記バイアルが収納され、他方に前記昇降機構を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置である。
【発明の効果】
【0015】
第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、又は第九発明によれば、液状放射性医薬剤をバイアルからシリンジへ吸引する際に、吸引を行う医療従事者が被曝しないで済む。
第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、又は第九発明によれば、遮蔽キャビネットとシリンジ用遮蔽器とを別に設けるので、1本のバイアルから液状放射性医薬剤を数本のシリンジへ吸収する際であっても、シリンジを交換するためにシリンジ用遮蔽器のみを開閉すればよく、遮蔽キャビネットは開ける必要がない。よって、その分、被曝の可能性が減少する。
【0016】
第四、第五、第六、第七、第八、又は第九発明によれば、さらに、バネを備えた緩和機構の働きで、針先がバイアルの底部に当たってもガラス壁を損傷する懸念がない。このため、針先がバイアルの底部ぎりぎりに位置でき、バイアル内の液状放射性医薬剤を残さず吸引できる。
【0017】
第五、第六、第七、第八、又は第九発明によれば、さらに、薬剤針又はエア針を取り付けるホルダー部が、遮蔽キャビネットの開かれた側へ所定距離引き出すことができるので、これらの針のセットが容易であり、また、セット後に針カバーを外しやすい。よって、指を傷つけにくい。
【0018】
第六、第七、第八、又は第九発明によれば、さらに、ホルダー部のうちの直接に針のハブに接触するクランプ部分が、プラスチック製又はアルミ製であることから、他の金属製である場合などに比べ、針を締め付ける十分な締付力が得られ、よってクランプ部分、ひいてはホルダー部構造を簡略にでき、結果的に装置をコンパクトにできる。
【0019】
第七、第八、又は第九発明によれば、さらに、薬剤針9及びエア針を同期して昇降させる昇降機構の構造が簡略にでき、結果的に装置をコンパクトにできる。
第八、又は第九発明によれば、さらに、バイアルを傾けて収納することで、液状放射性医薬剤を傾いた底部の隅に集めることができ、残さず吸引できる。
第九発明によれば、さらに、遮蔽キャビネットが前後方向にスライド可能なスライド機構を有し、このスライド可能な前面部分と背面部分の一方にバイアルが収納され、他方に昇降機構を有することで、手作業時にバイアルと昇降機構を離し作業スペースを拡げることができ、結果的に装置をコンパクトにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施形態を、図1〜図10に示す。
((装置概要))
この実施形態の放射性薬剤吸引装置は、遮蔽キャビネット1とシリンジ用遮蔽器3が別々に設けられ(図1)、互いに独立して開閉可能である。そして、遮蔽キャビネット1は、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し、開閉可能で、内部に液状放射性医薬剤を充填されたバイアル5(図3)を収納できる。シリンジ用遮蔽器3は、遮蔽キャビネット1の外部に一体的に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し、開閉可能で、内部に液状放射性医薬剤を吸引するためのシリンジ7(図9)を収納できる。
【0021】
薬剤針9及びエア針11は、遮蔽キャビネット1の内部に設けられ、バイアル5の上部のゴム栓13(図3)に穿刺される。これらの薬剤針9及びエア針11を、昇降機構15の働きで、遮蔽キャビネット1の外部からの力により、ゴム栓13に向かって針の方向に沿って昇降させる。
【0022】
吸引を行うシリンジ7はチューブ17の一端に連通し、このチューブ17(図7、図9、図10)は、シリンジ用遮蔽器及び遮蔽キャビネット1を貫通して、薬剤針9に連通する。
((装置外観))
図1に、この実施形態に係る装置全体の概要を示す。
図1のうち(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図である。
液状放射性医薬剤を充填されたバイアル5(図3)を収納できる箱状の遮蔽キャビネット1と、液状放射性医薬剤を吸引するためのシリンジ7(図9)を収納できるシリンジ用遮蔽器3とが別々に設けられる。それぞれが独立して開閉可能である。
遮蔽キャビネット1の外部の左側面には、ヒンジ19を介して開閉扉21が設けられる。遮蔽キャビネット1の外部の正面には、開閉扉21のロックを行う開閉レバー23が取り付けられる。また、遮蔽キャビネット1の外部の右側面には、装置内部の昇降機構15を駆動させる手動式の駆動レバー22が設けられる。遮蔽キャビネット1の外部に一体的にシリンジ用遮蔽器3が設けられている。
【0023】
(放射線遮蔽材)
遮蔽キャビネット1及びシリンジ用遮蔽器3の全面は、遮蔽材で覆われている。遮蔽材の材質としてはタングステン、タングステン合金、鉛、鉛ガラス、タンタル、ビスマス等が用いられる。
【0024】
特に、鉛は加工が容易なため、用いられるが、生理食塩水の接触により腐食・汚染が見られるため、使用に際し、ステンレス、プラスチック、ゴム、塗料、めっき等により被覆することが望ましい。また、一部の面を内部が観察できるように鉛ガラス、鉛含有アクリル樹脂板を用いることができる。さらに、一部をのぞき窓にすることもできる。
【0025】
遮蔽材の厚さは使用する放射性薬剤の種類にもよるが、一般的に5〜30mm、好ましくは10〜20mmが用いられる。
【0026】
(開閉扉21)
装置の左側面には、遮蔽材からなる開閉扉21が設けられており、薬剤針9およびエア針11の取り付け作業にあたっては、この開閉扉21を開いて作業を行う。
【0027】
(スライド機構)
遮蔽キャビネット1は、箱状をなし、前記したように左側面に開閉扉21を有するが、さらに、図2に示すように、前面を含む前面部分25と背面を含む背面部分27が分割されており、背面部分27が装置用架台29に固定しており、この背面部分27に対して、前面部分25が前後方向にスライド可能なスライド機構31を有する。前面部分25の上部と下部にスライダー33A、33Bが形成され、背面部分27の上部と下部に、このスライダー33A、33Bをガイドするスライドガイド35A、35Bが形成される。
【0028】
前面部分25にバイアル入りのコンテナ37が収納され、背面部分27に前記昇降機構15を有する。
作業時には、作業者は装置の前面に立ち、前面部分25をスライド機構31により手前に引き出すことで、左右側面が大きく開放される。また、バイアル入りのコンテナ37と、昇降機構15とを離し、両者の間に作業スペースSを拡げることができる。この状態で、作業者は、左右の手により、遮蔽材付きのバイアル入りのコンテナ37を、収納部トレイ39に置くなどの作業を行う。
【0029】
(放射性薬剤)
ここで用いられる液状の放射性薬液とはPET(陽電子断層診断法:Positron
Emission Tomography)検査用の短寿命核種を含むFDG(フッ素18で標識された製剤:[18F]-2-deoxy-2-fluoro-D-glucose)、FDPA(フッ素18で標識された製剤:6-[18F]-fluoro-3,4-dihydroxy-
phenyl-L-alanine)、FDA(6-[18F]-fluoro-dopamine)等があるが、主に、[18F]-2-deoxy-2-fluoro-D-glucoseが使用される。他に、99mTc、123I、131I、201Tl、67Ga、51Cr等のSPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影法:Single
Photon Emission Computed Tomography)用放射性同位元素核種からなる治療用および検査用注射液にも適用できる。
【0030】
((昇降機構15))
図3〜図6において、昇降機構15を説明する。
(概略)
この昇降機構15は、遮蔽キャビネット1の外部に設けられた駆動レバー22と同軸に、遮蔽キャビネット1の内部に駆動アーム41が設けられる。よって、手動により駆動レバー22が回動されると、駆動アーム41も連動して回動する。この駆動アーム41により押されて昇降する薬剤針スライダ43は、鉛直方向に配置される薬剤針スライドレール45によって昇降方向にガイドされる。
【0031】
そして、エア針スライダ47は、傾斜して配置されるエア針スライドレール49によって斜めの昇降方向にガイドされる。薬剤針スライダ43に固定された水平な接続レール51が、エア針スライダ水平方向にガイドする。これにより、二つのスライダの昇降動作を同期させる。
【0032】
エア針スライダ47を斜めに昇降させることで、二つの針を、バイアル5の上部の狭い面積のゴム栓13に、正確に穿刺させることができる。
【0033】
(機構の詳細)
図3(A)に示すように、昇降機構15を構成する外部の駆動レバー22は、遮蔽キャビネット1を貫通する駆動シャフト53により、遮蔽キャビネット1の内部の駆動アーム41と同軸に連通される。図4、図5図6に示すように、薬剤針スライドレール45は、2本の平行レールからなる。エア針スライドレール49は、1本のレールからなる。薬剤針スライダ43及びエア針スライダ47は、リニアベアリングが装着されていて、それぞれのレール45,49の上を滑らかに移動するようになっている。
【0034】
接続レール51の片端は、薬剤針スライダ43に固定されており、エア針スライダ47にはリニアベアリングが装着されていて、エア針スライダ47がこの接続レール51の上を滑らかに移動できるようになっている。
駆動アーム41の先端には、長孔55が形成され、この長孔55に薬剤針スライダ43に形成されたピン57が挿入されている。
【0035】
また駆動アーム41にはアームスプリング59の下端が連結され、アームスプリング59の上端は装置本体に連結されている。よって、アームスプリング59は駆動アーム41を常に上方へ引っ張る。そして、アームスプリング下端が、駆動アーム41の回動に伴い、回動軸63を越える際には引き伸ばされ、超えてしまうと縮む。
【0036】
(動作)
図1(D)に示すように、駆動レバー22を「針上位置」より「針下位置」の方向に回動して下げると、駆動アーム41はこの回動と連動して回動し、長孔55がピン57を、上下方向に押し、よって、薬剤針スライダ43を下方に押し下げる(図4(E)、図5(B))。一方、エア針スライダ47も薬剤針スライダ43に固定されている接続レール51により、薬剤針ライダ同様に下方に押し下げられる。薬剤針スライダ43、及びエア針スライダ47が下方に押し下げられることにより、それぞれのスライダに取り付けてある薬剤針9及びエア針11は、同期して、バイアル5のゴムに同時に穿刺される。また、駆動レバー22を元の「針上位置」に戻すことにより、これらの針をバイアル5から抜くことができる。
【0037】
また、アームスプリング59の働きにより、駆動レバー22及び駆動アーム41が水平位置を境に上方にある場合、すなわち、アームスプリング59が図で示す垂直軸Aより左側にある場合は、駆動アーム41を上方の「針(上)位置」に、移動するように作動する。逆に駆動レバー22及び駆動アーム41が水平位置を境に下方にある場合、すなわち、アームスプリング59が垂直軸Aより右側にある場合は、駆動アーム41を下方の「針(下)位置」に移動するように作動する。
【0038】
これにより駆動レバー22の動きに節度をあたえることができ、また、バイアル5に穿刺された薬剤針9は、このアームスプリング59の作用により適正な力でバイアル5の底部に押しつけられる。
【0039】
((収納部トレイ39の傾斜))
図2、図3に示すように、バイアル5の入った遮蔽材付きのコンテナ37を、収納する収納部トレイ39は、所定角度傾斜させる。この傾斜角度は使用するバイアル5の容量にもよるが一般的に10〜25°、好ましくは15〜20°である。これにより、薬剤針9が穿刺されたときに針先が、傾いたバイアル瓶の底部の低端部に位置し、バイアル5中の薬剤のほとんどを吸引することができる。
【0040】
((衝撃緩和機構及び引出機構))
図7、図8において、薬剤針9及びエア針11のそれぞれに設けられる衝撃緩和機構及び引出機構を説明する。図は、例として、薬剤針9ものを示す。
針9、11は、針ロックレバー67によって開閉する針ホルダ69によって取り付けられる。この針ホルダ69が針9、11に実際に接触する部分はクランプ71と呼ばれ、この実施形態では、このクランプ71はプラスチック製が用いられる。
すなわち、針9、11は、チューブ17が接続される針9、11のハブ73の部分を針接続コネクタ75に通される。この針接続コネクタ75が針ホルダ69のクランプ71の縦孔77に通される。すなわち、クランプ71はU字状で左右の爪79を有し、U字の基部は、爪79側が開放した縦孔77になっている。
【0041】
この縦孔77の内部には窓が形成され、非円断面を有する押圧軸81の一部が露出する。非円断面は、例えば丸棒(ステンレス材)の一部が面取りされて得られる。押圧軸81は針ロックレバー67に固定される。針ロックレバー67の回動により、押圧軸81が軸周りに回動すると、非円断面の面取りされていない面が露出することで、この面が針接続コネクタ75を押圧しロックがなされる。
【0042】
針ホルダ69は、横長の部材で、四角断面を有し、対応する四角断面の挿入穴83を有する針ホルダベース85に引き出し可能に挿入される。針ホルダベース85の側面には位置決めプランジャ87と、周り止めピン88とが設けられ、これらの先端が針ホルダ69の側面に形成された図示しない位置決め穴に嵌合し、引出後に戻された位置へ位置決めする。
【0043】
針ホルダ69の後端は、ピン結合89によって、水平シャフト91に結合される。この水平シャフト91は、針ホルダ取付アーム93の一部に固定される。すなわち、針ホルダ取付アーム93は、水平に形成されるコの字形状を有し、このコの字の中央奥に、水平シャフト91が固定される。これにより、コの字の上下の辺部は、横長の針ホルダ69の上下に位置する。
【0044】
針ホルダ取付アーム93のコの字の上辺部95には、押圧スプリング97が設けられ、押圧スプリング97の下端が針ホルダ69の先端の上面を、下方向に弾性的に押圧する。これにより、針先に上向きに衝撃が働いたときに、衝撃を緩和することができる。そして、コの字の下辺部99には、上向きの調整ネジ101が設けられて、調整ネジ101の先端が針ホルダ69の先端の下面を上方に押し上る。調整ネジ101によってこの押し上げ量を調整することで、押圧スプリング97の押圧力が調整される。
【0045】
(引出機構の動作)
針9、11を取り付ける時は、針ホルダ69を持ち手前に引くと、針ホルダ69が水平方向にスライド移動し、引き出される。針ホルダ69のセット位置及び針交換時位置は、位置決めプランジャ87により保持される。
【0046】
そして、針ホルダ69を手前に引き出した状態で、薬剤針9又はエア針11を針カバーが付いたまま取り付ける。この取付が終わった後、さらには、遮蔽材付きのバイアル入りのコンテナ37の収納が終わった後に、針カバーを外し、針ホルダ69を押して元に戻す。
【0047】
このように、針カバーを外すことなく薬剤針9又はエア針11を取り付けることができるので、安全(針刺し防止)・衛生(手の接触防止)に優れている。
すなわち、針ホルダ69を、遮蔽キャビネット1の開かれた手前側へ所定距離引き出すことができるので、十分な作業スペースがある場所でこれらの針9、11のセットを容易に行うことができ、また、セット後に図示しない針カバーを外しやすい。
仮に、引き出すことができないときは、針先とバイアル5などとの間に十分なスペースがないので、セット後には図示しない針カバーを外すことができず、したがって予め針カバーを外した状態で2本の針9、11を取り付ける作業を行わなければならず、誤って手に針9、11が刺さったり、針9、11に手が触れたりして衛生上の問題があった。この実施形態によれば、これらの問題を解決できる。
【0048】
(緩衝機構の動作)
駆動アーム41にはアームスプリング59が取り付けられているため、薬剤針9がバイアル5底部に接触しても衝撃的な負荷がかからないようになっているが、それ以外にも、この押圧スプリング97により衝撃緩和がなされる。
【0049】
すなわち、針ホルダ69は、針ホルダ取付アーム93の押圧スプリング97により下方向に押圧されている。そして、針9、11がバイアル5内に穿刺され、バイアル5の底部に接しているが、さらに下方に力が加わった場合、底部への強い接触が起き、針先に上向きの衝撃が働くことがあるが、押圧スプリング97により図中のストロークSLの分だけ移動し、その衝撃を緩和することができる。
【0050】
(クランプ71の材質)
薬剤針9およびエア針部のハブ73に接触して固定するクランプ71は、針9、11のハブ73の部分が接触する部分は締め付けが十分になるようにプラスチック製部品又はアルミ製部品が貼り付けられる。もっとも、クランプ71の表面のみをプラスチックで被覆する方法でもよい。
【0051】
すなわち、薬剤用ビン針およびエア針部のハブ73を固定するクランプ71は針9、11が接触する部分は締め付けが十分になるようにステンレス材、アルミ材が用いられる。また、これらのステンレス材、アルミ材にプラスチック製部品が貼り付けられるか、クランプ71をプラスチックで被覆する方法が用いられる。使用されるプラスチックとしてはポリアセタール、ナイロン、ABS等のエンジニアリングプラスチック、天然ゴム、BR,SBR,NBR、シリコーン等のゴム類およびポリオレフィン系、ポリスチレン系、塩ビ系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系等の熱可塑性エラストマーが用いられる。中でもポリアセタールが比較的しっかりとクランプできるため好ましい。
【0052】
((シリンジ用遮蔽器3))
図9、図10において、シリンジ7を収納するシリンジ用遮蔽器3を説明する。
(シリンジ7)
図9に示すように、この実施形態で使用されるシリンジ7は、1回の使用毎に回収されるディスポーザブルシリンジ7で、それ自体がある程度、放射線を遮蔽する遮蔽材を有する。すなわち、シリンジ7は、液状放射性医薬剤を吸引し溜める部分105が、タングステン製の遮蔽材を有するシリンジシールド107を備える。シリンジシールド107の中央には鉛ガラス109が設けられ液状放射性医薬剤が観察できる。後方には、プランジャ87を備え、前方には、三方活栓111が接続されている。三方活栓111はチューブ17に連通され薬剤針9に接続される。
【0053】
(遮蔽容器)
図10に示すように、シリンジ7を収納するシリンジ用遮蔽器3は、前方にはシリンジ7の三方活栓111を挿入して覆う略箱状の前方シールド113が設けられる。プラスチック製の三方活栓111内の液状放射性医薬剤による被曝を避けることができる。前方シールド113の後方はシリンジ7のシリンジシールド107に接する。シリンジシールド107の後方には、プランジャ87を上下左右から開閉可能に覆うプランジャシールド上面、下面、左面、右面115A、115B、115C、115Dが接する。プランジャシールドの後方の開口には、プランジャシールド後面117が後付される。プランジャシールド後面117の働きにより、シリンジ7のフランジ部およびプランジャーヘッド部121からの放射線による被曝を避けることができる。
【0054】
プランジャシールド後面117の中央には、プランジャ87を延長するプランジャシャフト123が貫通する。
すなわち、プランジャ87の後端は、プランジャシャフト123の先端に設けられたプランジャホルダー125により保持される。プランジャシャフト123の中央には、シャフトロック127が設けられて、プランジャシールド後面117に対する位置決めがなされ、後端には、プランジャノブ129が設けられる。このプランジャノブ129を引いて吸引を行う。
【0055】
これらのシールドを形成する遮蔽材の材質はタングステンが望ましいが、タングステン合金、鉛、鉛ガラス109、タンタル、ビスマス等が用いられる。これらは、生理食塩液の接触および空気酸化による腐食・汚染が見られるため、使用に際し、ステンレス、プラスチック、ゴム、塗料、めっき等により被覆することが望ましい。
【0056】
((流路とチューブ17))
液状放射性医薬剤の流路は、装置上部に配置されたシリンジ用遮蔽器3のシールド内で、シリンジ7先端の三方活栓111に連通されたエクステンションチューブ17を通って針ホルダ69に固定された薬剤針9のハブ73に接続される。
【0057】
シリンジ7先端の三方活栓111の他方は、図示しない生理食塩液用ディスポーザブルシリンジ7を取り付けることができ、流路の洗浄および流路の液充填に用いることができる。さらに、三方活栓111のもう一方のノズルは、別のエクステンションチューブ17を接続することができ、薬剤用シリンジ内の薬剤を他へ注入することができる。
【0058】
エクステンションチューブ17の材質としてのポリ塩化ビニル製(PVC)は、その優れた物性により(特に,輸液ポンプ等の機器との併用等によるチューブ17に大きな負荷がかかる場合においては,チューブ17の潰れによる閉塞や引っ張りによる破断といった不具合を生じにくく、ひいてはこれらの不具合の結果生じる投薬上の問題や失血等の危険性が低い医療用具として)、国内外において医療の場で広く使用されているため、好ましい。
【0059】
一方,PVCは、その特性である優れた柔軟性を保持するために、材質中に可塑剤が添加されており、この可塑剤としてDEHP:フタル酸ジ-2-エチルヘキシルが、多く用いられているが、接触する溶媒中に溶出することが知られている。そのため、可塑剤としてトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル):TOTM、アジピン酸ジオクチル:DOAを用いたものが、好ましい。また、PVCは各接続部との接着が優れているため、好ましい。
【0060】
PVC以外のチューブ用材質としては、ポリブタジエン、軟質ポリエチレン、ポリウレタン、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマー等が用いられる。
((装置用架台29))
装置は全面が遮蔽材により覆われ、重量があり容易に移動できないため、移動可能なキャスター付きの架台133に置くか、装置自体にキャスターを取り付け、医療機関に搬送し、院内における移動しやすいようにすることも可能である。
【0061】
((手動動作))
この装置は以下のように操作して使用する。
1)バイアル5中の薬剤を吸引するためのディスポーザブルシリンジ7は、装置上部に一体的に設けられたシリンジ用遮蔽器3内に収納する。
2) 遮蔽キャビネット1のスライド機構31を働かせて、前面部を手前に引き出す。
3)左側面の開閉扉21を開ける。
4) 遮蔽キャビネット1内部で、エクステンションチューブ17に薬剤針9を取り付ける。
5)その薬剤針9を薬剤針用ホルダーに取り付け、針カバーをはずす。
6)エア針11をホルダーに取り付け、針カバーをはずす。
7) シリンジ用遮蔽器3を開け、中にあるエクステンションチューブ17の他端を、ディスポーザブルシリンジ7の三方活栓111に取り付ける。
8) シリンジ用遮蔽器3を閉じる。
9)遮蔽材を有するコンテナ37に収められ放射性薬剤又は医薬品の入ったバイアル5を、遮蔽材付きの収納部トレイ39にセットする。
10)コンテナ37のフタを開ける。
11) 遮蔽キャビネット1のスライド機構31を働かせて、前面部を押して、元に戻す。
12) 遮蔽キャビネット1の右側面に付いた駆動レバー22を「針(上)位置」から「針(下)位置」の方向に下げ、薬剤針9およびエア針11をバイアル5に穿刺する。
13) シリンジ用遮蔽器装のプランジャノブ129を引いて、バイアル5内の薬剤を吸引する。
14)右側面に付いた駆動レバー22を元に戻す。
(自動動作)
12)および14)をサーボモーター、コントローラー付きの駆動ユニットを用いて自動で操作を行うことができる。それ以外は手動動作と同様である。
【0062】
((実施形態の効果))
以上の実施形態によれば、遮蔽キャビネット1とシリンジ用遮蔽器3とを別に設けるので、1本のバイアル5から薬剤を数本のシリンジ7へ分けて吸収する際であっても、シリンジ7を交換する際にシリンジ用遮蔽器3のみを開閉すればよく、遮蔽キャビネット1は開ける必要がない。よって、その分、被曝の可能性が減少する。
【0063】
さらに、バネを備えた緩和機構の働きで、針先がバイアル5の底部に当たってもガラス壁を損傷する懸念がない。このため、針先がバイアル5の底部ぎりぎりに接して位置でき、バイアル5内の薬剤を残さず吸引できる。
さらに、薬剤針9及びエア針11のハブ73の部分を取り付ける針ホルダ69が、遮蔽キャビネット1の開かれた側へ所定距離引き出すことができるので、これらの針9、11を取り付けるセットが容易であり、また、セット後に針カバーを外しやすい。よって、指を傷つけにくい。
【0064】
さらに、針ホルダ69のうちの直接に針9、11のハブ73の部分に接触するクランプ71が、全てあるいは表面的にプラスチック製又はアルミ製であることから、全て他の金属製である場合に比べ、針9、11を締め付ける十分な締付力が得られる。よって締付力をうるためにクランプ部分、ひいてはホルダー部構造を複雑にする必要がなく、結果的に装置をコンパクトにできる。
【0065】
さらに、薬剤針9及びエア針11を同期して昇降させる昇降機構15の構造が簡略にでき、結果的に装置をコンパクトにできる。
さらに、収納部トレイ39を傾斜させることで、バイアル5を傾けて収納でき、薬剤を傾いた底部の隅に集めることができ、残さず吸引できる。
さらに、遮蔽キャビネット1が前後方向にスライド可能なスライド機構31を有し、このスライド可能な前面部分25と背面部分27の一方にバイアル5が収納され、他方に昇降機構15を有することで、手作業時にバイアル5と昇降機構15を離し、これによって作業スペースを拡げることができ、装置がコンパクトでも作業が可能になる。結果的に装置をよりコンパクトにできる。
【0066】
「他の実施形態」
以上の実施形態では、遮蔽キャビネット1の外部から手動により、ゴム栓13に向かって針9、11の方向に沿って昇降させる昇降機構15を駆動するものであったが、他の実施形態では、昇降機構15を駆動するサーボモーターなどを設け、自動化することも容易に行える。
【0067】
以上の実施形態では、遮蔽キャビネット1の左側面に開閉扉21を有するものであったが、他の実施形態では、右側面に有するものでも良いし、左右側面の両方に開閉扉21を有するものでも良い。
以上の実施形態では、スライド機構31によって離される前面部分25と背面部分27のうち、前面部分25にバイアル5が収納され、背面部分27に前記昇降機構15を有するものであったが、他の実施形態ではこの関係は逆でも良い。
【0068】
以上の実施形態では、駆動アーム41により直接に押されて昇降するのは薬剤針スライダ43であり、接続レール51を介して間接的にエア針スライダ47が押されて昇降するものであったが、他の実施形態では、この関係は逆にして、直接に押されて昇降するのはエア針スライダ47であり、間接的に押されて昇降するのが薬剤針スライダ43とすることができる。
【0069】
以上の実施形態では、二つの針9、11の昇降動作を同期させる接続レール51は、薬剤針スライダ43に固定され、エア針スライダ47をガイドするものであったが、他の実施形態では、接続レール51は、エアスライダに固定され、薬剤針スライダ43をガイドするものであっても良い。
【0070】
以上の実施形態では、吸引装置は、薬剤針9及びエア針11を有するものであったが、他の実施形態では、薬剤針9のみとすることも可能である。すなわち、バイアル5に薬剤針9を挿入後、ディスポシリンジにより約4〜5mlのエアを、エクステンションチューブ17を介してバイアル5に投入すると、バイアル5内が加圧となるため、エア針11を設けなくても、自然にバイアル5中の薬液がディスポシリンジに抜き出される。
以上の実施形態では、遮蔽キャビネット1の外部に別に設けられたシリンジ用遮蔽器3にシリンジ7を収納するものであったが、他の実施形態ではシリンジ用遮蔽器3を設けず、遮蔽キャビネット1の内部にシリンジを収納することもできる。この場合には、遮蔽キャビネット1の外部からの力により、内部のシリンジ7のプランジャ87を引いて吸引を行う吸引動作機構を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】装置全体の外観図で、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図である。
【図2】装置の開閉扉を取り除いて内部を示す左側面図で、(A)はスライド機構により前面部分が引き出された状態を示す図、(B)はスライド機構により前面部分がもとに戻された状態を示す図である。
【図3】は装置の壁を取り除いて内部の昇降機構を示すもので、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は(B)において昇降機構により針が穿刺された状態を示す図である。
【図4】は図3の装置の壁を取り除いて内部の昇降機構を示すもので、(D)は右側面図、(E)は(D)において昇降機構により針が穿刺された状態を示す図である。
【図5】は図4の装置の外の駆動レバーと内部の昇降機構との関係を示す透視図で、(A)は駆動レバーを上げた状態を示す図、(B)は駆動レバーを下げた状態を示す図である。
【図6】は図5の要部を拡大して示す図である。
【図7】図3(A)の薬剤針又はエア針のそれぞれに設けられる衝撃緩和機構及び引出機構の拡大図を示すもので、(A)は側面図、(B)は断面側面図、(C)は平面図、(D)は(A)の一部を引き出した状態を示す図である。
【図8】は図7の(D)の要部をさらに詳しく示すもので、(E)は一部を断面にした図、(F)は(E)の平面図、(G)は(E)のロックを解除した状態の図、(H)は(G)の平面図である。
【図9】は図1のシリンジ用遮蔽器に収納されるシリンジを示すもので、(A)は水平断面図、(B)は縦断面図である。
【図10】は図1のシリンジ用遮蔽器にシリンジが収納された状態を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…遮蔽キャビネット、3…シリンジ用遮蔽器、5…バイアル、7…シリンジ、9…薬剤針、11…エア針、13…ゴム栓、15…昇降機構、17…チューブ、19…ヒンジ、21…開閉扉、22・・駆動レバー、23…開閉レバー、25…前面部分、27…背面部分、29…装置用架台、31…スライド機構、33…スライダー、35…スライドガイド、37…コンテナ、39…収納部トレイ、41…駆動アーム、43…薬剤針スライダ、45…薬剤針スライドレール、47…エア針スライダ、49…エア針スライドレール、51…接続レール、53…駆動シャフト、55…長孔、57…ピン、59…アームスプリング、61…装置本体、63…回動軸、65…針、67…針ロックレバー、69…針ホルダ、71…クランプ、73…ハブ、75…針接続コネク、77…縦孔、79…爪、81…押圧軸、83…挿入穴、85…針ホルダベース、87…プランジャ、89…ピン結合、91…水平シャフト、93…針ホルダ取付アーム、95…上辺部、97…押圧スプリング、99…下辺部、101…調整ネジ、105…部分、107…シリンジシールド、109…鉛ガラス、111…三方活栓、113…前方シールド、115…右面、117…プランジャシールド後面、119…フランジ部、121…プランジャーヘッド部、123…プランジャシャフト、125…プランジャホルダー、127…シャフトロック、129…プランジャノブ、133…架台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を充填されたバイアルを収納できる遮蔽キャビネットと、前記遮蔽キャビネットの内部に設けられ、前記バイアルの上部のゴム栓に穿刺される薬剤針と、これらの薬剤針を、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記ゴム栓に向かって針の方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記遮蔽キャビネットの内部に収納されるシリンジに連通し前記薬剤針に連通するチューブと、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記シリンジのプランジャを引いて吸引を行う吸引動作機構と、を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置。
【請求項2】
放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を充填されたバイアルを収納できる遮蔽キャビネットと、前記遮蔽キャビネットの内部に設けられ、前記バイアルの上部のゴム栓に穿刺される薬剤針と、これらの薬剤針を、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記ゴム栓に向かって針の方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記遮蔽キャビネットの外部に一体的に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を吸引するためのシリンジを収納できるシリンジ用遮蔽器と、このシリンジに連通し前記シリンジ用遮蔽器及び前記遮蔽キャビネットを貫通して前記薬剤針に連通するチューブと、を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置。
【請求項3】
放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を充填されたバイアルを収納できる遮蔽キャビネットと、前記遮蔽キャビネットの内部に設けられ、前記バイアルの上部のゴム栓に穿刺される薬剤針及びエア針と、これらの薬剤針及びエア針を、遮蔽キャビネットの外部からの力により、前記ゴム栓に向かって針の方向に沿って昇降させる昇降機構と、前記遮蔽キャビネットの外部に一体的に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽材を全面に有し開閉可能で内部に液状放射性医薬剤を吸引するためのシリンジを収納できるシリンジ用遮蔽器と、このシリンジに連通し前記シリンジ用遮蔽器及び前記遮蔽キャビネットを貫通して前記薬剤針に連通するチューブと、を有することを特徴とする放射性薬剤吸引装置。
【請求項4】
前記昇降機構は、穿刺された薬剤針の針先がガラス壁に接触しても衝撃を与えないバネを備えた衝撃緩和機構を有することを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の放射性薬剤吸引装置。
【請求項5】
前記昇降機構は、薬剤針又はエア針を取り付けるホルダー部を有し、このホルダー部が、前記遮蔽キャビネットの開かれた側へ所定距離引き出すことができる引出機構を有することを特徴とする請求項1、2、3、又は4に記載の放射性薬剤吸引装置。
【請求項6】
前記昇降機構は、薬剤針又はエア針を取り付けるホルダー部のうち、直接に針のハブに接触するクランプ部分が、プラスチック製又はアルミ製であることを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5に記載の放射性薬剤吸引装置。
【請求項7】
前記昇降機構は、遮蔽キャビネットの外部に設けられた駆動レバーと、遮蔽キャビネットの内部に設けられ前記駆動レバーに連動して回動する駆動アームと、この駆動アームにより押されて昇降する薬剤針スライダ又はエア針スライダと、前記薬剤針スライダをガイドする薬剤針スライドレールと、前記エア針スライダをガイドするエア針スライドレールと、薬剤針スライダ及びエア針スライダのうち一方に固定され他方を略水平方向にガイドし昇降動作を同期させる接続レールと、を有して構成されることを特徴とする請求項2、3、4、5、又は6に記載の放射性薬剤吸引装置。
【請求項8】
前記遮蔽キャビネットの内部で前記バイアルを傾けて収納するための収納部は、傾斜を有し、前記薬剤針又はエア針の降下した針先が、前記バイアルの傾いた底部の隅にセットされるように位置することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、又は7に記載の放射性薬剤吸引装置。
【請求項9】
前記遮蔽キャビネットは、箱状をなし、左右側面の一方又は両方に開閉扉を有し、前面を含む前面部分と背面を含む背面部分が分割されており、互いに前後方向にスライド可能なスライド機構を有し、前面部分と背面部分の一方に前記バイアルが収納され、他方に前記昇降機構を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、又は8に記載の放射性薬剤吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−325826(P2006−325826A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152149(P2005−152149)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(594118958)株式会社ユニバーサル技研 (11)
【出願人】(501209357)有限会社 エスディー技研 (9)