説明

放射線不透過性の高分子ステント

【課題】ステントのような高分子医療用具に有用な高分子組成物を提供する。該高分子組成物は、選択的にジカルボン酸及び/またはポリ(アルキレンオキサイド)のような他の基とともに、ハロゲン含有でチロシン由来のジフェノールを含み、その結果、これらの高分子組成物から形成される医療用具は、生体吸収性かつ本質的に放射線不透過性であり、このような用具の意図した用途と一致した物理的機械的性質を提供する。
【解決手段】加水分解に不安定なポリマーを、0〜4のpKaを有する酸を多く含む溶媒の溶解して、tert−ブチルエステル基の替わりに遊離カルボン酸基を有するポリマー組成物を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2004年8月13日に出願された米国仮出願第60/601,743に対して、35 U.S.C.第119(e)の下に優先権を主張し、そこでの開示は、参照することにより援用される。
【0002】
発明の分野
本発明の好ましい実施形態は、ステントのような高分子医療用具に係る。より詳細には、ここで開示される高分子組成物は、選択的にジカルボン酸及び/またはポリ(アルキレンオキサイド)のような他の基とともに、ヨウ素含有でチロシン由来のジフェノールを含み、その結果、これらの高分子組成物から形成されるステントは、生体吸収性かつ本質的に放射線不透過性であり、それらの意図した用途と一致した物理的機械的性質を示す。
【背景技術】
【0003】
背景
血管ステントは、様々な用途、特に心臓病治療に幅広く用いられている。1998年には、約6100万人の米国人が何らかの形で心臓病を患っており、約1990年以降、心臓病は死因の単独1位であると報告されている。心臓病の1タイプである冠動脈疾患(CAD)は、少なくとも部分的には、動脈におけるプラークの積み重なり(動脈硬化)による、血液を心筋に供給する動脈を通る血流の阻害を特徴としている。CADは、米国で起こる死亡の5分の1を占めているのではないかという疑いがある。2001年には、約110万人の人々が新規または再発性の心筋梗塞(冠動脈疾患による心臓発作)を患っていた。例えば、米国心臓協会による報告である「心臓及び発作の統計最新版」(2001、米国心臓協会、ダラス、テキサス州)を参照。現在、50万人を超える米国人が閉鎖した冠動脈に対して日常的に治療を受けている。この数は、高齢化を考慮すると、この10年で2倍になるだろうと予測されている。
【0004】
血管ステントは通常、メッシュチューブを含み、血管形成術による治療の間、バルーンを用いて動脈を伸ばした(stretch)後、前記メッシュチューブが動脈中に挿入されて動脈が閉鎖しない状態を維持する。一般的には、血管ステントは、大腿動脈を介して挿入されて冠動脈中の所望の位置まで押されるバルーンカテーテル上に配置される。そこで、バルーンは膨らみ、これによりステントを拡張し、ステントを所定の位置に固定させるために血管壁に対抗してステントを押し込む。
【0005】
ほとんどのステントは、例えばステンレス鋼またはニチノールなどの金属で構成される。このような金属ステントは、ある程度所望の特性、例えば、主動脈及びX線不透過像を開けて押さえるだけの十分な放射状の(radial)強度(移植されたステントが、X線検査/X線透視検査によって視認されモニタリングされるようにする)を有するが、金属ステントは、顕著に不利な点も多数示す。例えば、動脈中での金属ステントの挿入及び拡張は、罹患血管を更に傷つける傾向にあり、ステントの支柱(strut)を通じて、平滑筋細胞及びマトリックスタンパク質の内的成長という結果によって、潜在的に内膜過形成の発達及び更なる血管の閉塞へとつながる。金属ステントの使用と関連する別の不利な点は、一旦配置されると、有用な期間が経過した後でも長期間、金属ステントは血管壁内の永住者となるということである。実際に、ステントの有用な寿命は約6〜9月の範囲にあると見積もられている。この期間の後、永続的な金属の挿入によって血管構造に課される慢性ストレス及び負担は、ステント内再狭窄を促進すると考えられている。金属ステントの使用に関連する別の不利な点は、血管内における複数の永続的な金属ステントの配置がその後の外科的バイパス手術に対する障害となりうるということである。更に、第1の金属ステントの配置は、同じ血管内の遠位部位での第2のステントの後発的な運搬に対する物理的なハードルとなりうる。金属ステントとは対照的に、生体吸収性ステントは血管内で寿命を迎えない可能性がある。更に、ステント上に被覆されるだけでなく、薬剤及び/または生物剤が用具そのものに組み込まれうるので、生体吸収性ステントは、より多くの治療上の容量を運搬するために用いられうる。更に、このようなステントは、複数の薬剤及び/または生物剤を、同時にまたはライフサイクルの様々な時に運搬し、血管の病気の特定の態様または現象を治療することができる。更に、生体吸収性ステントは、血管のほぼ同じ領域に対する反復治療をも可能としうる。
【0006】
従って、一過性の(すなわち、生体吸収性)及び放射線不透過性のステントを開発する上で、重要かつ満たされていないニーズがあり、ここで、永続的な金属ステントの使用に関連する多くの不利な点または制限を迂回または緩和する間に、これらのステントを製造するために用いられる高分子物質は、所望の質の金属(例えば、十分な放射状強度及び放射線不透過性など)を有する。
【0007】
米国特許第6,475,477(「‘477 特許」)は、ポリマーの分解及び再吸収を促進する、加水分解に不安定なポリマー骨格及びペンダントの遊離カルボン酸基を伴う、放射線不透過性の生体適合性ポリマーから形成されるステントを開示している。開示されているポリマーの多くは、ステントにおける使用に決して理想的ではないというだけでなく、遊離カルボン酸基を有するポリマーは、パラジウム触媒及び水素の存在下、水素化分解を介してポリマーから選択的に除去された、ベンジル保護された遊離酸基を伴うモノマーから調製される。このような方法は、殆どまたは全くポリマー骨格を分解せずにベンジル保護基を除去するのに効果的であるが、ここで用いられるパラジウム触媒は比較的高価であり、微量のパラジウムをポリマー産物から除去するのは困難である。
【0008】
遊離カルボン酸基の存在は非常に望ましい特徴であるので、新規の合成方法は、遊離カルボン酸基及び生体吸収性ポリマー骨格の両方を含むポリマーの調製に要求されており、金属ステントの所望の性質を有する生体吸収性及び放射線不透過性のステントに対する従来満足されていないニーズに見合うものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の要約
本発明の要約の目的に対して、本発明のいくつかの態様、有利な点及び新規な特徴を上記で説明してきた。もちろん、必ずしもこのような利点の全てが、本発明のいかなる特定の実施形態によっても達成されるとは限らないことは理解されねばならない。このように、本発明は、ここで教示または示唆されうるのと同様、必ずしも他の利点を達成しなくともここで教示または示唆される一の利点または一群の利点を達成または最適化するやり方で具体化または実行されてもよい。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、放射線不透過性の、生体吸収性ステントが開示される。このステントは、ステントを本質的に放射線不透過性とするのに十分なハロゲン原子を含む生体吸収性ポリマーを含む。ステントは更に、シート状のステント、網状のステント、自己拡張ステント、ワイヤー状のステント、可変のステント、並びにスライド及びロック式のステントからなる群から選択された構造を含みうる。他のバリエーションでは、ステントは拡張可能なバルーンであり、チューブ部材を形成するために配置される2以上の実質上変形しない部材を含み、前記変形しない部材は、チューブ部材を崩壊した直径から拡張した直径まで拡張させるために、スライド可能なようにまたは回転するように相互接続している。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態では、化学式Iで示される1以上の単位を含むポリマーを含む放射線不透過性の生体吸収性ステントが開示される:
【0012】
【化1】

【0013】
前記式で、各Xは、独立してIまたはBrであり、各ジフェノール単位に対するY1及びY2は独立して0〜4であり、各ジフェノール単位に対するY1+Y2は1〜8である。
【0014】
前記式で、R及びRは独立して、18までの炭素原子、並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントの遊離カルボン酸基を更に含む;
前記式で、Aは、
【0015】
【化2】

【0016】
のいずれかであり;
前記式で、Rは、約18までの炭素原子、並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含む、飽和または不飽和で、置換または非置換のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり;
前記式で、Pは、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位であり;fは0から1未満であり;gは0〜1であり;そして、f+gは0〜1の範囲である。
【0017】
好ましくは、ヨウ素及び臭素が共に環の置換基として存在する。更に、全てのX基は好ましくはオルト配向である。Y1及びY2は、独立して2以下であってもよく、Y1+Y2は1、2、3または4である。他のバリエーションでは、Y1+Y2は2または3である。全てのX基は好ましくはヨウ素である。
【0018】
本発明の他のバリエーションでは、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位の重量分率(weight fraction)は約75wt%未満である。好ましいバリエーションでは、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位の重量分率は約50wt%未満である。より好ましくは、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)は、約40wt%未満の重量分率を有するポリ(エチレングリコール)である。最も好ましくは、ポリ(エチレングリコール)単位の重量分率は、約1〜25wt%である。Pは独立して、CからCまで、またはC−Cのコポリマーでありうる。
【0019】
本発明の他のバリエーションでは、fは約0以上0.5以下の値をとりうる。好ましくは、fは約0.25未満である。より好ましくは、fは約0.1未満である。更により好ましくは、fは約0.001から約0.08までの値をとる。最も好ましくは、fは約0.025と約0.035との間の値をとる。
【0020】
本発明の他のバリエーションでは、gは0より大きく、通常0を超えて約0.5までの値をとり、好ましくは、gは約0.1を超えて約0.35までである。より好ましくは、gは約0.2から約0.3までである。更により好ましくは、gは約0.01と約0.25との間の値をとり、最も好ましくは、gは約0.05と約0.15との間である。
【0021】
本発明の他のバリエーションでは、R及びRは共にペンダントのCOOR基を含む;その際、Rに対して、サブグループRは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの範囲の炭素原子のアルキル基である;並びにその際、Rに対して、サブグループRは水素原子である。他の好ましい実施形態では、R及びRはそれぞれ独立して以下の構造を有する:
【0022】
【化3】

【0023】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択される;前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択される;この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;前記式で、各Rに対して、Qは遊離カルボン酸基を含み、各Rに対して、Qは独立して水素並びにカルボン酸のエステル及びアミドからなる群から選択され、ここで該エステル及びアミドは、18個までの炭素原子、並びに生理活性化合物のエステル及びアミドを含む、アルキル及びアルキルアリール基のエステル及びアミドからなる群から選択される。
【0024】
本発明の好ましいバリエーションでは、R及びRはそれぞれ独立して下記構造を有する:
【0025】
【化4】

【0026】
前記式で、Rは、18以下の炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;前記式で、各Rに対して、Rは水素原子であり、各Rに対して、Rは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む、1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である。
【0027】
本発明のより好ましいバリエーションでは、R及びRは独立して下記の構造を有する:
【0028】
【化5】

【0029】
前記式で、j及びmは独立して、1〜8の整数であり、前記式で、各Rに対して、Rは水素原子であり、各Rに対して、Rは独立してO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む、1から約18までの炭素原子を有するアルキル基から選択される。
【0030】
好ましくは、Rに対する各Rサブグループは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む、1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である。より好ましくは、Rに対する各Rサブグループは独立して、エチルまたはブチルのいずれかである。
【0031】
本発明の他のバリエーションでは、Aは−C(=O)−基である。一方、Aは下記式であってもよい:
【0032】
【化6】

【0033】
前記式で、RはC−C12のアルキル、C−C14のアリールまたはC−C14のアルキルアリールである。好ましくは、Rは、Aが天然の代謝産物であるジカルボン酸の一部であるように選択される。より好ましくは、Rは、−CH−C(=O)−、−CH−CH−C(=O)−、−CH=CH−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、zは0以上8以下の整数である。より好ましくは、zは1〜8の整数である。
【0034】
本発明の他のバリエーションでは、ステントは効果的な量の治療薬を更に含む。好ましくは、その量は再狭窄、血栓症、プラーク形成、プラーク崩壊、及び炎症を阻害するのに十分な量であり、並びに/または治療(healing)を促進するのに十分な量である。他のバリエーションでは、ポリマーが少なくとも一部のステント上にコーティングを形成する。このポリマーコーティングは、選択された生物応答を促進するのに適していることが好ましい。
【0035】
本発明の他の実施形態によれば、化学式Iによって表される1単位以上を含むポリマーが開示される:
【0036】
【化7】

【0037】
前記式で、Xはそれぞれ独立してIまたはBrであり、各ジフェノール単位に対するY1及びY2は独立して0〜4であり、各ジフェノール単位に対するY1+Y2は1〜8であり;前記式で、R及びRはそれぞれ独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから選択された0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントの遊離カルボン酸基を更に含む;
前記式でAは、
【0038】
【化8】

【0039】
のいずれかである:
前記式で、Rは飽和または不飽和で、置換または非置換の、約18までの炭素原子並びにO及びNから選択された0から8までのヘテロ原子を含む、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基である;
前記式で、Pはポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位であり;fは0から1未満であり;gは0〜1であり;f+gは0〜1の範囲である。
【0040】
好ましくは、Y1及びY2は独立して2以下であり、Y1+Y2は1、2、3または4である。全てのX基も、好ましくはオルト配向である。化学式Iのポリマーの他のバリエーションでは、Y1+Y2は2または3である。全てのX基は好ましくはヨウ素である。
【0041】
好ましくは、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位の重量分率は、約75wt%未満である。化学式Iのポリマーの好ましいバリエーションでは、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位の重量分率は、約50wt%未満である。より好ましくは、Pは約40wt%未満の重量分率を有するポリ(エチレングリコール)単位である。最も好ましくは、ポリ(エチレングリコール)単位の重量分率は、約1及び25wt%の間である。Pは独立して、CからCまで、またはC−Cまでのコポリマーでありうる。
【0042】
化学式Iのポリマーに対する他のバリエーションでは、fは約0以上0.5以下の値をとりうる。好ましくは、fは約0.25未満である。より好ましくは、fは約0.1未満である。更により好ましくは、fは約0.001から約0.08までの値をとる。最も好ましくは、fは約0.025及び約0.035の間の値をとる。
【0043】
化学式Iのポリマーに対する他のバリエーションでは、gは0より大きく、通常gは0より大きく約0.5以下の間の値をとる。好ましくは、gは約0.1より大きく、約0.35までである。より好ましくは、gは約0.2から約0.3までである。更により好ましくは、gは約0.01及び約0.25の間の値をとる。最も好ましくは、gは約0.05及び約0.15の間である。
【0044】
化学式Iのポリマーに対する他のバリエーションでは、R及びRは共に、ペンダントCOOR基を含む;前記式でRに対して、サブグループRは独立して、O及びNから選択された0から5までのヘテロ原子を含む、1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である;前記式でRに対して、サブグループRは水素原子である。他の好ましい実施形態では、R及びRは独立して、下記の構造を有する:
【0045】
【化9】

【0046】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは、−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して、0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;前記式で、各Rに対して、Qは遊離カルボン酸基を含み、各Rに対して、Qは独立して、水素並びにカルボン酸のエステル及びアミドからなる群から選択され、この際、該エステル及びアミドは、18までの炭素原子並びに生理活性化合物のエステル及びアミドを含む、アルキル及びアルキルアリール基のエステル及びアミドからなる群から選択される。
【0047】
本発明に対する好ましいバリエーションでは、R及びRはそれぞれ独立して下記の構造を有する:
【0048】
【化10】

【0049】
前記式で、Rは、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;前記式で、各Rに対して、Rは水素原子であり、各Rに対して、Rは独立して、O及びNから選択された0から5までのヘテロ原子を含む、1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である。
【0050】
化学式Iのポリマーに対するより好ましいバリエーションでは、R及びRはそれぞれ独立して以下の構造を有する:
【0051】
【化11】

【0052】
前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、前記式で、Rに対する各Rサブグループは独立して、1から約18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり、前記式で、Rに対する各Rサブグループは水素原子であり;
化学式Iのポリマーに対する一のバリエーションでは、Rに対する各Rサブグループはエチルまたはブチルである。
【0053】
化学式Iのポリマーに対する他のバリエーションでは、Aは−C(=O)−である。代わりに、Aは下記式である。
【0054】
【化12】

【0055】
化学式Iのポリマーに対する他のバリエーションでは、RはC−C12のアルキル、C−C14のアリールまたはC−C14のアルキルアリールである。より好ましくは、Rは−CH−C(=O)−、−CH−CH−C(=O)−、−CH=CH−及び(−CH−)からなる群から選択され、この際、zは0以上8以下の整数である。
【0056】
体内腔の内側の部位を治療するためのシステムが開示されている。前記システムは配置手段を有するカテーテル、及び放射線不透過性の生体吸収性ステントを含み、ここで、前記カテーテルはステントを前記部位に運搬するのに適しており、前記配置手段はステントを配置させるのに適している。前記システムの好ましい実施形態では、カテーテルは無線のワイヤーカテーテル、同軸の迅速−交換カテーテル及び多交換運搬カテーテルからなる群から選択される。
【0057】
tert−ブチルエステル基の代わりに遊離カルボン酸基を有する新規なポリマー組成物を形成するために、加水分解に不安定なポリマーから該tert−ブチルエステル基を選択的に除去するための方法が開示される。前記方法は、加水分解に不安定なポリマーを、遊離カルボン酸基を有する新規なポリマー組成物を形成するために、酸分解によってtert−ブチルエステル基を選択的に除去するのに効果的な約0から約4までのpKaを有する酸を多く含む溶媒に溶解させることを含む。
【0058】
好ましくは、加水分解に不安定なポリマーは、該溶媒に溶解する。一実施形態では、前記溶媒は実質的に前記酸からなる。バリエーション群では、前記溶媒はクロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。前記酸は、ギ酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。好ましくは、前記酸はギ酸である。
【0059】
前記方法に対する一バリエーションでは、前記加水分解に不安定なポリマーは、化学式IIで表される1以上の単位を含む:
【0060】
【化13】

【0061】
前記式で、各ポリマー単位に対するXは、独立してBrまたはIであり、Yは0〜4であり、Rは、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴うアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのtert−ブチルエステル基を更に含む。
【0062】
前記方法に対する更なるバリエーションでは、前記加水分解に不安定なポリマーは、約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合している。通常、前記ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率は、約50wt%未満である。約40wt%未満というポリ(エチレングリコール)の重量分率が好ましく、約25wt%未満の重量分率がより好ましい。ステント用途に用いられる加水分解に不安定なポリマーは、好ましくは約0.001及び0.08の間のポリ(エチレングリコール)のモル分率を含む。
【0063】
前記方法に対する更なるバリエーションでは、全てのX基がオルト配向であり、Yは1または2である。好ましくは、全てのXがヨウ素である。
【0064】
前記方法に対する更なるバリエーションでは、Rがアルキル基である。Rは下記の構造を有していてもよい:
【0065】
【化14】

【0066】
前記式で、Rは独立して18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴うアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのt−ブチルエステル基を更に含み;R5a及びRはそれぞれ独立して、水素並びに18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を有する直鎖及び分岐のアルキル基から選択される。
【0067】
代わりに、Rは下記式を含んでもよい:
【0068】
【化15】

【0069】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して、0以上8以下であり;J及びJは独立して、BrまたはIであり;Qはカルボン酸tert−ブチルエステルを含む。
【0070】
前記方法に対する好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0071】
【化16】

【0072】
前記式で、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;Rはtert−ブチルエステル基である。
【0073】
前記方法に対するより好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0074】
【化17】

【0075】
前記式で、j及びmは独立して、1〜8の整数であり、Rはtert−ブチルエステル基である。
【0076】
前記方法に対する更なるバリエーションでは、Rはアリールまたはアルキルアリール基である。好ましくは、化学式IIで表される単位がジフェノール単位を含む。より好ましくは、Rはアルキルアリール基であり、前記ジフェノール単位は化学式IIIで表される:
【0077】
【化18】

【0078】
前記式で、各ポリマー単位に対するXは独立してBrまたはIであり、Y1及びY2は独立して0〜4であり、Y1+Y2は0以上8以下であり、各単位に対するRは独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントのt−ブチルエステル基を更に含む。
【0079】
前記方法に対する更なるバリエーションでは、Rは下記式を含む:
【0080】
【化19】

【0081】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−,−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;Qはカルボン酸tert−ブチルエステルを含む。
【0082】
前記方法に対する好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0083】
【化20】

【0084】
前記式で、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;Rはtert−ブチルエステル基である。
【0085】
前記方法に対するより好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0086】
【化21】

【0087】
前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、Rはtert−ブチルエステル基である。
【0088】
前記方法に対する更なるバリエーションでは、前記加水分解に不安定なポリマーは約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合している。通常、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率は約50wt%未満である。約40wt%未満のポリ(エチレングリコール)の重量分率が好ましく、約25wt%未満の重量分率がより好ましい。ステント用途に用いられる加水分解に不安定なポリマーは、好ましくは約0.001及び0.08の間のモル分率のポリ(エチレングリコール)を含む。全てのX基は、好ましくはオルト配向であり、Y1+Y2は1、2、3または4である。全てのXは好ましくはヨウ素である。
【0089】
前記方法に対する更なるバリエーションでは、前記加水分解に不安定なポリマーは化学式Iで定義される1以上の単位を含んでもよい:
【0090】
【化22】

【0091】
前記式で、Xはそれぞれ独立してIまたはBrであり、各ジフェノール単位に対するY1及びY2は独立して0〜4であり、各ジフェノール単位に対するY1+Y2は0以上8以下である。
【0092】
前記式で、各単位に対するR及びRは独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントのt−ブチルエステル基を更に含み;
前記式で、Aは下記のいずれかである:
【0093】
【化23】

【0094】
前記式で、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含む、飽和または不飽和で、置換または非置換のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり;
前記式で、Pは約75wt%未満の重量分率を有するポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位であり;fは0から1未満であり;gは0〜1であり;f+gは0〜1の範囲である。
【0095】
より好ましくは、R及びRは下記を含む:
【0096】
【化24】

【0097】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)aからなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)nからなる群から選択され;前記式で、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;前記式で、Rに対してQはカルボン酸t−ブチルエステルを含み、各Rに対してQは独立して水素並びにカルボン酸のエステル及びアミドからなる群から選択され、前記式で、該エステル及びアミドは18までの炭素原子並びに生理活性化合物のエステル及びアミドを含むアルキル及びアルキルアリール基のエステル及びアミドからなる群から選択される。
【0098】
前記方法に対する好ましいバリエーションでは、R及びRは独立して下記の構造を有する:
【0099】
【化25】

【0100】
前記式で、Rは、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;前記式で、Rに対してRはtert−ブチルエステル基であり、各Rに対してRは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である。
【0101】
前記方法に対するより好ましいバリエーションでは、R及びRは独立して下記の構造を有する:
【0102】
【化26】

【0103】
前記式で、j及びmは独立して1から8までの整数であり、前記式で、各Rに対してサブグループRは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの炭素原子を有する、直鎖または分岐のアルキル基であり;Rに対して、サブグループRはtert−ブチルエステル(tB)基である。
【0104】
化学式IIによって表される1以上の単位を含むポリマーが開示される:
【0105】
【化27】

【0106】
前記式で、各ポリマー単位に対するXは独立してBrまたはIであり、Yは0〜4であり、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴うアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのtert−ブチルエステル基を更に含む。
【0107】
前記ポリマーは、約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合していてもよい。通常、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率は約50wt%未満である。約40wt%未満のポリ(エチレングリコール)の重量分率が好ましく、約25wt%未満の重量分率がより好ましい。ステント用途に用いられるポリマーは、好ましくは約0.001及び0.08の間のモル分率のポリ(エチレングリコール)を含む。
【0108】
好ましくは、全てのX基はオルト配向であり、Yは1または2であり、全てのXはヨウ素である。
【0109】
化学式IIのポリマーに対する更なるバリエーションでは、Rはアルキル基である。
【0110】
より好ましくは、Rは下記の構造を有する:
【0111】
【化28】

【0112】
前記式で、Rは独立して18までの炭素原子及びOまたはNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのt−ブチルエステル基を更に含み;R5a及びRはそれぞれ独立して、水素と、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を有する直鎖及び分岐のアルキル基とから選択される。
【0113】
更に好ましくは、Rは下記式を含む:
【0114】
【化29】

【0115】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;Qはカルボン酸tert−ブチルエステルを含む。
【0116】
好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を含む:
【0117】
【化30】

【0118】
前記式で、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;Rはtert−ブチルエステル基である。
【0119】
より好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0120】
【化31】

【0121】
前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、前記式で、各Rはtert−ブチルエステル基である。
【0122】
化学式IIのポリマーに対する更なるバリエーションでは、Rはアリールまたはアルキルアリール基であってもよい。前記単位もジフェノール単位を含みうる。一の好ましいバリエーションでは、Rはアルキルアリール基であり、前記ジフェノール単位は化学式IIIで表される:
【0123】
【化32】

【0124】
前記式で、各ポリマー単位に対するXは、独立してBrまたはIであり、Y1及びY2は独立して0〜4であり、Y1+Y2は0以上8以下であり、各単位に対するRは独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントのt−ブチルエステル基を更に含む。化学式IIIのポリマー種は、遊離カルボン酸基を伴う化学式Iのポリマーを含み、前記遊離カルボン酸基において、前記カルボン酸基はtert−ブチルエステルで保護される。化学式Iによるハロゲンを含まないポリマーも含まれる。
【0125】
更なるバリエーションでは、Rは下記式を含む:
【0126】
【化33】

【0127】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;Qはカルボン酸のtert−ブチルエステルを含む。
【0128】
好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0129】
【化34】

【0130】
前記式で、Rは、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;Rはtert−ブチルエステル基である。
【0131】
より好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0132】
【化35】

【0133】
前記式で、j及びmは独立して、1〜8の整数であり、Rはtert−ブチルエステル基である。
【0134】
更なるバリエーションでは、前記ポリマーは、約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合している。通常、前記ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率は約50wt%未満である。約40wt%未満のポリ(エチレングリコール)の重量分率が好ましく、約25wt%未満の重量分率がより好ましい。ステント用途に用いられるポリマーは、好ましくは約0.001及び0.08の間のモル分率のポリ(エチレングリコール)を含む。
【0135】
全てのX基は、好ましくはオルト配向であり、Y1+Y2は1、2、3または4である。全てのXは好ましくはヨウ素である。
【0136】
更なるバリエーションでは、加水分解に不安定なポリマーは、化学式Iで表される1以上の単位を含んでもよい:
【0137】
【化36】

【0138】
前記式で、各Xは独立してIまたはBrであり、各ジフェノール単位に対するY1及びY2は独立して0〜4であり、各ジフェノール単位に対するY1+Y2は、0以上8以下である。
【0139】
前記式で、各単位に対するR及びRは独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントのt−ブチルエステル基を更に含む;
前記式で、Aは下記のいずれかである:
【0140】
【化37】

【0141】
前記式で、Rは約18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含む、飽和または不飽和で、置換または非置換のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり;
前記式で、Pは、約75wt%未満の重量分率を有するポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位であり;fは0から1未満であり;gは0〜1であり;f+gは0〜1の範囲である。
【0142】
より好ましくは、R及びRは下記式を含む:
【0143】
【化38】

【0144】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−,−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;前記式で、Rに対して、Qはカルボン酸t−ブチルエステルを含み、各Rに対してQは独立して水素並びにカルボン酸のエステル及びアミドからなる群から選択され、この際、該エステル及びアミドは、18までの炭素原子並びに生理活性化合物のエステル及びアミドを含むアルキル及びアルキルアリール基のエステル及びアミドからなる群から選択される。
【0145】
好ましいバリエーションでは、R及びRは独立して下記の構造を有する:
【0146】
【化39】

【0147】
前記式で、Rは、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;前記式で、Rに対してRはtert−ブチルエステル基であり、各Rに対してRは独立してO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である。
【0148】
より好ましいバリエーションでは、R及びRは独立して下記の構造を有する:
【0149】
【化40】

【0150】
前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、前記式で、各Rに対してサブグループRは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの炭素原子を有する、直鎖または分岐のアルキル基であり;Rに対してサブグループRはtert−ブチルエステル(tB)基である。
【0151】
本発明の好ましい一実施形態によれば、化学式IIaで表される構造を有する化合物が開示される:
【0152】
【化41】

【0153】
前記式で、XはBrまたはIであり、Yは0〜4であり、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴うアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのtert−ブチルエステル基を更に含む。
【0154】
全てのX基は好ましくはオルト配向であり、Yは1、2、3または4であり、全てのX基はヨウ素である。
【0155】
はアルキル基であってもよく、好ましくは下記の構造を有する:
【0156】
【化42】

【0157】
前記式で、Rは独立して18までの炭素原子及びOまたはNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのt−ブチルエステル基を更に含み;R5a及びRはそれぞれ独立して、水素と、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を有する、直鎖及び分岐のアルキル基とから選択される。
【0158】
化学式IIaの化合物に対する好ましいバリエーションでは、Rは下記式を含む:
【0159】
【化43】

【0160】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;Qはカルボン酸tert−ブチルエステルを含む。
【0161】
好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0162】
【化44】

【0163】
前記式で、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;Rはtert−ブチルエステル基である。
【0164】
より好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0165】
【化45】

【0166】
前記式で、j及びmは、独立して1〜8の整数であり、前記式で、各Rはtert−ブチルエステル基である。
【0167】
他のバリエーションでは、化学式IIaの化合物のRは、前記化合物がジフェノール単位を含むように選択され、好ましくは化学式IIIaで表される:
【0168】
【化46】

【0169】
前記式で、各Xは独立してBrまたはIであり、Y1及びY2は独立して0〜4であり、Y1+Y2は0以上8以下であり、Rは独立して18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントのt−ブチルエステル基を更に含む。
【0170】
ジフェノールに対する好ましいバリエーションでは、Rは下記式を含む:
【0171】
【化47】

【0172】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され;この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;Qはカルボン酸tert−ブチルエステルを含む。
【0173】
好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0174】
【化48】

【0175】
前記式で、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;Rはtert−ブチルエステル基である。
【0176】
より好ましいバリエーションでは、Rは下記の構造を有する:
【0177】
【化49】

【0178】
前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、Rはtert−ブチルエステル基である。
【0179】
本発明の他の実施形態によれば、下記の構造を有する化合物が開示される:
【0180】
【化50】

【0181】
本発明の他の実施形態によれば、下記の構造を有する化合物が開示される:
【0182】
【化51】

【0183】
本発明の他の実施形態によれば、下記の構造を有する化合物が開示される:
【0184】
【化52】

【0185】
本発明の他の実施形態によれば、下記の構造を有する化合物が開示される:
【0186】
【化53】

【0187】
本発明の他の実施形態によれば、下記の構造を有する化合物が開示される:
【0188】
【化54】

【0189】
体内腔の再治療の方法が開示される。前記方法は以下の段階:体内腔の内側の領域に沿って、放射線不透過性の生体吸収性ステントを含む第1の用具を配置し、その際前記第1の用具は、前記ステントが生理的に再吸収(bioresorb)されるまでの第1の処置期間中、その場に存在する段階;及び第1の処置期間の後に前記領域に沿って第2の用具を配置し、結果的に前記体内腔が再治療される段階を含む。
【0190】
前記放射線不透過性の生体吸収性ステントに対する一のバリエーションでは、前記ポリマーは天然物ではない。他のバリエーションでは、前記ポリマーはアミノ酸を更に含む。
【0191】
図面の簡単な説明
図1は、ブタの心臓における従来技術のスチールのステントに対する、本発明の好ましい一実施形態によるポリマーステントのX線比較を表している;
図2Aは、ポリ(I−DTEカーボネート)ステントの拡大断面図を表す光学マイクロ写真である;
図2Bは、本発明の他の好ましい実施形態による、ポリ(I−DTE−コ−2.5%PEG2Kカーボネート)ステントの拡大断面図を表す光学マイクロ写真である;
図3は、Tween20を伴うPBSへの、37℃でのポリ−DTE−カーボネートコーティングからのパクリタキセルの溶解を表す;及び、
図4a−bは、本発明の好ましい一実施形態による、放射線不透過性を示す放射線不透過性の生体吸収性トリヨードチロシン由来ポリカーボネートフィルムのX線比較を表す。
【0192】
発明を実施するための最良の形態
伝統的なX線透視検査によってステントを可視状態にするのに十分なハロゲン原子を有する生体吸収性ポリマーを含む本質的に放射線不透過性の生体吸収性ステントが、本発明の好ましい実施形態として開示される。独自に最適化された特性を示す、ハロゲン化生体吸収性ポリマー調製用の新たな組成物及び方法もここで開示される。
【0193】
この枠組みの中で、特に難問であるのは、遊離カルボン酸基を有する繰り返し単位をあらかじめ設定された比率で含む、ポリマーの合成であった。遊離カルボン酸基はほとんどの縮合反応を阻害するという強い傾向を有しているので、ペンダントの鎖として遊離カルボン酸基を含むポリマーは、縮合型の重合反応により合成することはできないことは、合成ポリマーの化学者の間ではよく知られている。このようにして、間接ルートの合成が採用された。第1に、M.Bodanszky(ペプチド合成の原理、1984、Springer Verlag、ベルリン、ドイツ)によってペプチド一般や、特にアミノ酸であるL−チロシンについて記載されているように、選択的に除去可能な「保護基」によって化学的に不活性にしたカルボン酸基を含むモノマーを調製した。次に、上記の保護されたモノマーを縮合重合反応に供試し、結果的に保護カルボン酸基を含むポリマーを形成した。最終反応段階において、ポリマー骨格を開裂させることなく、またポリマーにとって好ましくない他の構造変化を引き起こすこともなく、前記保護基を選択的に除去した。前記ポリマーが生体吸収性となるように設計された場合、前記ポリマー骨格は直ちに分解しうるように意図的に作られ、これにより前記ポリマー骨格に対して同時にダメージを与えることなく保護基を除去するのが極めて困難となる。本出願人はここで、かかる困難性を克服し、所望の予期せぬ特性を有する高分子ステントをもたらす組成物及び方法を開示する。
【0194】
ステントの製造において使用されるのに最適なポリマーは以下の基準のうち少なくとも数点を満たさなければならない:
・放射線不透過性は、X線透視装置、すなわち病院で用いられる標準的な方法によるヒトの胸のバックグラウンドに対して、ステント構造の視認性を確実なものにするのに十分であることが好ましい;
・ステントの支柱はできるだけ薄いのが好ましく、好ましくは厚さ635μm以下であり、より好ましくは厚さ100μm以下であるが、血管の決裂を防ぐのに十分強靭で、衝撃力に抵抗できなければならない。好ましい一実施形態によれば、ステントは、約50,000から500,000PSI、より好ましくは少なくとも約200,000PSI超の弾性率、及び約1,000PSI超、より好ましくは約5,000PSI超の値の引張強度を示すのがよい。
【0195】
・ステントは、急性血栓症を防げるだけの血液適合性を有しているのが好ましい。従って、用具の表面は、タンパク質吸着及び血小板/単球の接着に抵抗性を有することが好ましい。更に用具の表面は、内皮の過成長を促しつつ、(再狭窄の発生の原因である)平滑筋細胞の接着及び成長を防ぐのが理想である。
【0196】
・ステントは約1−24月、より好ましくは約3−18月、更に好ましくは約3−12月、及び最も好ましくは約3−6月の期間、機械的強度(例えば、フープ強度)を維持するのが好ましい。
【0197】
・ステントが一定期間、体内腔中に存在するように、ステントは所望の生分解及び生物学的再吸収プロファイルを有することが好ましく、結果として、後で生体吸収性の若しくは金属のまたはその他のいかなるステントでも、おおよそ同じ血管の領域を再治療し、または血管のバイパスのような、他の形態の血管の再治療を可能にするのに用いられうる。
【0198】
「ステント」という用語は、以下の代替物としての拡張可能なチューブ部材の実施形態を説明するために、本明細書では広く用いられている:(1)冠状の血管、神経血管及び末梢血管、例えば腎臓の、腸骨の、大腿の、膝窩の鎖骨下動脈及び頸動脈のような血管の体内腔(すなわち、動脈及び/または静脈);(2)現在治療を受けているもの、すなわち消化管内腔(例えば、胃腸の、十二指腸及び食道、胆管)、呼吸器内腔(例えば、気管及び気管支)並びに泌尿器内腔(例えば、尿道)のような、非血管の体内腔;(3)更にこのような実施形態は、生殖の、内分泌の、造血の並びに/または外皮の、筋骨格の/整形外科の及び神経の組織(聴覚の及び眼の用途を含む)のような他の体組織の内腔において有用となりうる;そして、(4)最後に、ステントの実施形態は、塞がった内腔を拡張させ、閉塞を誘導するのに有用となりうる(例えば、動脈瘤嚢を遮断する場合のように)。
【0199】
「生体吸収性」という用語は、(水及び/または化学的に分解する酵素の作用を通じて)生分解を受けるポリマーを説明するために本明細書で用いられており、分解産物のうちの少なくともいくつかは、体によって除去され、及び/または吸収される。「放射線不透過性の」という用語は、例えば以下に限定されないが、X線検査、X線透視装置、他の放射線の形態、MRI、電磁エネルギー、構造イメージング(例えば、X線断層撮影法及びコンピュータ断層撮影法)、並びに機能イメージング(例えば、超音波検査法)などの方法のようなイメージングのためのインビボ解析技術により、視認可能な物体を含む物体または物質を説明するために本明細書では用いられている。「本質的に放射線不透過性の」という用語は、ポリマーへのハロゲン種の共有結合により、本質的に放射線不透過性のポリマーを説明するために本明細書では用いられている。従って、前記用語は、ハロゲン化種、または金属及びそれらの複合体のような他の放射線不透過剤と単に混合したにすぎないポリマーを含まない。
【0200】
生体吸収性で放射線不透過性のステントの開発に関する重要な要求を満たすため、本出願人は、ジカルボン酸、デスアミノチロシル−チロシン及びポリ(アルキレングリコール)のハロゲン化(例えば、ヨウ化または臭化)誘導体から選択される構造単位の組み合わせを含み、ステントなどの、医療用具の製造での使用と一致した、所望の物理的機械的及び物理化学的特性を示す、ある好ましいポリマーを開発した。重要なこととして、本出願人は以前、米国特許第6,475,477号で、様々な特性及び特徴の組み合わせを有する多様なポリマーについて説明したが、本出願人は、本発明の特定のポリマーが、既に説明したポリマーよりも顕著にかつ驚くべきほど優れ、移植可能な医療用具での使用に特に適している特性の組み合わせを示すことを見出した。従って、本発明の好ましい実施形態に従って説明されるステントは:(a)伝統的なX線透視装置により視認するのに十分なほど放射線不透過性であり;(b)動脈または周辺組織の内側への、医学的に適当なレベルの半径方向圧縮を支持するのに十分な強度を有し;(c)ポリマー表面上でのフィブリノーゲン吸着を最小化し、これにより平滑筋細胞の増殖及び接着の可能性を減少させるだけでなく、急性血栓症の発生を抑える表面特性を有し;そして(d)異なる長さの治療時間または治療薬の溶出に対して、ステントの存在を必要とする種々の用途のニーズに応えるのに適応可能な、所望の再吸収プロファイルを有する。
【0201】
本出願人はいかなる特定の動作理論(theory of operation)にも束縛されたくはないが、本出願人は、本発明の医療用具と関連した特性のうち、有益な組み合わせは、少なくとも部分的には前記用具を構成する化学式Iのポリマーについての何らかの特徴に起因するものと信じている。詳細には、本出願人は、特定のレベルのハロゲン(例えばヨウ素)の置換、特定の比率のデスアミノチロシル−チロシンに対するデスアミノチロシル−チロシンのアルキルエステル、並びに好ましいポリマーに導入される、特定の量及び分子量のポリ(アルキレングリコール)(例えば、ポリ(エチレングリコール);「PEG」)単位は、顕著に優れた組み合わせの特性に貢献するものと信じている。
【0202】
「オルト配向」という用語は、フェノキシアルコール基に対するハロゲン原子の配向を説明するために本明細書では用いられている。ポリマーの構造を表す様々なポリマーの化学式の表示は、立体異性体を含むホモポリマー及びヘテロポリマーを含みうるとも理解されている。ホモポリマーは、すべて同じタイプのモノマーからなるポリマーを説明するために本明細書では用いられている。ヘテロポリマーは、2以上の異なるタイプのモノマーからなるポリマーを説明するために本明細書では用いられており、コポリマーとも呼ばれる。ヘテロポリマーまたはコポリマーは、ブロック、ランダム及び交互として知られている種類のいずれであってもよい。更に、様々なポリマーの化学式の表示に関して、本発明の実施形態による産物は、ホモポリマー、ヘテロポリマー及び/またはこのようなポリマーの混合物からなりうる。
【0203】
好ましいポリマー
このように、本発明の一態様によれば、化学式Iで表される1以上の単位を含むハロゲン置換ポリマーが提供される:
【0204】
【化55】

【0205】
前記式で、各Xは独立してIまたはBrであり、各ジフェノール単位に対するY1及びY2は独立して0〜4であり、各ジフェノール単位に対するY1+Y2は1〜8である。
【0206】
前記式で、各R及びRは独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含む、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントの遊離カルボン酸基を更に含み;
前記式で、Aは下記式:
【0207】
【化56】

【0208】
のいずれかであり;
前記式で、Rは約18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含む、飽和または不飽和で、置換または非置換のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり;
前記式で、Pはポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位であり;fは0から1未満であり;gは0〜1であり;f+gは0〜1の範囲である。
【0209】
化学式Iに対する好ましいバリエーションでは、ヨウ素及び臭素は共に、環の置換基として存在する。他の好ましいバリエーションでは、全てのX基がオルト配向である。好ましくは、Y1及びY2は独立して2以下であり、Y1+Y2は1、2、3または4であり、より好ましくは2または3である。化学式Iに対するより好ましいバリエーションでは、全てのX基がヨウ素である。
【0210】
化学式Iの好ましい実施形態では、P、すなわちポリ(C−Cのアルキレングリコール)は約75wt%未満であり、より好ましくは約50wt%未満である。ポリ(アルキレングリコール)の重量分率は好ましくは10,000以下の分子量を有する。更に好ましい実施形態では、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)は約40wt%未満の重量分率を有するポリ(エチレングリコール)であり、最も好ましくは約1及び25wt%の間である。Pは独立して、CからCまでだけでなく、C−Cのコポリマーであり、後者(C−Cのコポリマー)はあらゆる組み合わせで表されると理解されている。
【0211】
好ましい実施形態では、fは約0以上0.5以下の値であればよく、より好ましくはfは約0.25未満であり、更に好ましくは約0.1未満である。より好ましいバリエーションでは、fは約0.001を超えて約0.08までの値であればよく、最も好ましくは、約0.025と約0.035との間である。
【0212】
化学式Iの好ましい実施形態では、gは0より大きく、通常は約0と0.5との間の値である。より好ましくは、gは約0.1を超えて約0.35までであり、更に好ましくは、gは約0.2から約0.3までである。より好ましいバリエーションでは、gは約0.01と約0.25との間の値であればよく、より好ましくは約0.05と約0.15との間である。
【0213】
化学式Iに対する他の好ましいバリエーションでは、R及びRが共にペンダントのCOOR基を含み;この際、各Rに対してサブグループRは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む、1から約18の範囲の炭素原子を有するアルキル基であり;この際、Rに対して、サブグループRは水素原子である。
【0214】
化学式Iに対する他の好ましいバリエーションでは、R及びRは各々独立して下記の構造を有する:
【0215】
【化57】

【0216】
前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され、前記式で、Rは−CH=CH−、−CHJ−CHJ−及び(−CH−)からなる群から選択され、この際、a及びnは独立して0以上8以下であり;J及びJは独立してBrまたはIであり;前記式で、Rに対して、サブグループQは遊離カルボン酸基を含み、各Rに対して、サブグループQは独立して水素並びにカルボン酸のエステル及びアミドからなる群から選択され、この際、該エステル及びアミドは、18までの炭素原子、並びに生物学的及び薬学的に活性な化合物であるエステル及びアミドを含むアルキル及びアルキルアリール基のエステル及びアミドからなる群から選択される。
【0217】
化学式Iに対する他の好ましいバリエーションでは、R及びRは各々独立して下記の構造を有する:
【0218】
【化58】

【0219】
前記式で、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり;前記式で、mは1〜8の整数であり;前記式で、Rに対して、サブグループRは水素原子であり、各Rに対して、Rは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である。
【0220】
化学式Iに対するより好ましいバリエーションでは、R及びRは各々独立して下記の構造を有する:
【0221】
【化59】

【0222】
前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、前記式で、Rに対してサブグループRは水素原子であり、各Rに対して、Rは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの炭素原子を有するアルキル基である。好ましくは、Rに対する各Rサブグループは独立して、1から約18個までの炭素原子、並びにO及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含むアルキル基であり、より好ましくはエチルまたはブチルのいずれかである。
【0223】
化学式Iに対する他の好ましいバリエーションでは、Aは−C(=O)−基である。化学式Iに対する他の好ましいバリエーションでは、Aは下記式である:
【0224】
【化60】

【0225】
前記式で、RはC−C12のアルキル、C−C14のアリールまたはC−C14のアルキルアリールである。好ましくは、Rは、Aが天然の代謝産物であるジカルボン酸の一部となるように選択される。より好ましくは、Rは−CH−C(=O)−、−CH−CH−C(=O)−、−CH=CH−及び(−CH−)から選択される部分であり;この際、zは0から8まで、より好ましくは1〜8の整数である。
【0226】
本発明の他の好ましい実施形態では、化学式IIで表される1以上の単位を含むポリマーが開示される:
【0227】
【化61】

【0228】
前記式で、各ポリマー単位に対するXは独立してBrまたはIであり、Yは0〜4であり、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴う、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのtert−ブチルエステル基を更に含む。
【0229】
がアルキルである場合、Rは好ましくは下記の構造を有する:
【0230】
【化62】

【0231】
前記式で、Rは化学式IIについて本明細書で定義された通りであり、全ての開示されるバリエーションを含み;R5a及びRは各々独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから独立して選択される0から8までのヘテロ原子を有する、水素並びに直鎖及び分岐のアルキル基から選択される。
【0232】
加水分解に不安定なポリマーは約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合していてもよい。通常、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率は約50wt%未満である。約40wt%未満の重量分率のポリ(エチレングリコール)が好ましく、約25wt%未満の重量分率がより好ましい。ステントの用途に対する加水分解に不安定なポリマーは、好ましくは約0.001及び0.08の間のモル分率のポリ(エチレングリコール)を含む。
【0233】
好ましいRのアリールまたはアルキルアリール種は、化学式IIによって表される単位がジフェノールとなるように選択される。更に好ましい種では、Rのフェノール環はヨウ化または臭化されて、放射線不透過性のポリマーを提供する。
【0234】
本発明の他の好ましい実施形態では、化学式IIIで表される、1以上のジフェノール単位を含むポリマーが開示される:
【0235】
【化63】

【0236】
前記式で、X、Y1、Y2及びRは、化学式IIIに関して本明細書で説明したのと同じであり、全ての開示されたバリエーションを含み、Y1+Y2は0以上8以下である。ポリマーは約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合していてもよい。通常、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率は約50wt%未満である。約40wt%未満の重量分率のポリ(エチレングリコール)が好ましく、約25wt%未満の重量分率がより好ましい。ステントの用途に対する加水分解に不安定なポリマーは、好ましくは約0.001と0.08の間のモル分率のポリ(エチレングリコール)を含む。
【0237】
化学式IIIのポリマー種は遊離カルボン酸基を伴う化学式Iのポリマーを含み、そこでカルボン酸基はtert−ブチルエステルで保護される。化学式Iのポリマーは、ハロゲンフリーであってもよい。このようにして、化学式Iによるポリマーが開示され、前記ポリマーにおけるX、Y1、Y2、R、R、P、A、f及びgは化学式Iに関して上記で説明したのと同じであり、Rの遊離カルボン酸基がtert−ブチルで保護され、Y1+Y2も0に等しくなりうる点を除き、全ての開示されたバリエーションを含む。
【0238】
本発明はこのように、t−ブチルで保護された化学式I、II及びIIIのポリマーも含み、前記ポリマーは、ポリマーが重合する原料となる、t−ブチルで保護されたモノマーだけでなく、加水分解に不安定な骨格及びペンダントのカルボン酸基も伴うポリマーの調製において従来未知の有用性を有する。
【0239】
本発明の好ましい一実施形態によれば、化学式IIaによって表される構造を有するモノマーが開示される:
【0240】
【化64】

【0241】
前記式で、XはBrまたはIであり、Yは0〜4であり、Rは18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴うアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのtert−ブチルエステル基を更に含む。
【0242】
全てのX基は、好ましくはオルト配向であり、Yは1、2、3または4であり、全てのX基はヨウ素である。
【0243】
はアルキル基であってもよく、好ましくは下記の構造を有する:
【0244】
【化65】

【0245】
前記式で、R及びそのバリエーションは化学式IIaに関して上記で説明したのと同じであり;R5a及びRは各々独立して、水素、並びに18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を有する直鎖及び分岐のアルキル基から選択される。
【0246】
他のバリエーションでは、化学式IIaの化合物のRは、前記化合物がジフェノール単位を含むように、好ましくは化学式IIIaによって示されるように選択される:
【0247】
【化66】

【0248】
前記式で、各Xは独立してBrまたはIであり、Y1及びY2は独立して0〜4であり、Y1+Y2は0以上8以下であり、R及びそのバリエーションは化学式IIIaに関して上記で示されたものと同じである。
【0249】
本発明の更に好ましい実施形態では、以下のモノマーが開示される:
化合物001:
【0250】
【化67】

【0251】
化合物002:
【0252】
【化68】

【0253】
化合物003:
【0254】
【化69】

【0255】
化合物004:
【0256】
【化70】

【0257】
化合物005:
【0258】
【化71】

【0259】
本発明の一部の実施形態、例えば、放射線不透過性が所望の特徴ではないか、放射線不透過性がステントの高分子以外の成分(例えば、被覆された金属ステント)によってもたらされる場合には、本発明の本態様によるポリマーは本質的に放射線不透過性である必要はない。放射線不透過性の考慮とは独立して、前記ポリマーはポリ(アルキレングリコール)ブロック(例えば、PEG)を含む必要もない。
【0260】
t−ブチルで保護された遊離カルボン酸基を伴うポリマーなどの、化学式Iのいくつかの好ましい実施形態では、RのうちRはエチルかブチルのいずれかであり、Rは−CH−CH−または−CH−CH−CH−CH−のいずれかである。化学式Iの表示は概略的であり、Aが常にPまたはフェノール環のいずれかと結合している点以外は高分子骨格の全域にわたって、ランダムな配列で異なるサブユニットが存在しうるように、示されたポリマーの構造はPの位置に関してランダムコポリマーであるということが更に理解される。
【0261】
本発明で示されるポリマーの全てに対して、Aがカルボニル(C=O)である場合、得られるポリマーはポリカーボネートを含む。Aが下記式の場合:
【0262】
【化72】

【0263】
得られるポリマーはポリアリーレートを含む。2つの末端のOH基を伴うモノマーから重合しうる他のいかなるポリマー及び特にジフェノールから重合しうるポリマーのみならず、化学式II及びIIのポリマーもポリカーボネート及びポリアリーレートを含む。化学式II及びIIIのポリアリーレートは、化学式Iのポリアリーレートの調製に対して開示されたジカルボン酸のポリマーを含む。
【0264】
いくつかの好ましい実施形態では、アルキル基は(イソプロピルまたはtert−ブチルのような)分枝、または直鎖であることがあり得、O、N及びSのようなヘテロ原子を含むことができると理解される。
【0265】
化学式Iの表示は概略的であり、示されたポリマー構造は、Pの位置に関してランダムコポリマーであり、その結果、Aが好ましくはPまたはフェノール環のいずれかと結合している点以外は高分子骨格の全域にわたって、異なるサブユニットがランダムな配列で発生しうるということが理解される。
【0266】
化学式Iがポリアリーレートを定義する実施形態で、Rは好ましくは、約18までの炭素原子を含む、飽和または不飽和で、置換または非置換のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基である。いくつかの好ましい実施形態では、Rは、直鎖または分枝鎖のいずれかにおいて約2及び約12の間の炭素原子を含むアルキル基である。R基は、重合中に他のモノマー化合物と交差反応しないかまたはその傾向がないか、さもなければ以下で説明するように、重合を介して本ポリマーの形成を著しく阻害しないかまたはその傾向がない任意の適当な官能基で置換されうる。いくつかの好ましい実施形態では、Rは化学式IにおけるポリアリーレートのA部分が天然の代謝産物または非常に生体適合性のある化合物のいずれかであるジカルボン酸に由来するように選択される。例えば、いくつかの実施形態では、化学式IにおけるポリアリーレートのA部分がクレブス回路として知られる細胞呼吸経路の中間体ジカルボン酸に由来するように、Rは選択される。このようなジカルボン酸としては、α−ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及びオキサル酢酸が挙げられる。他の好ましい生体適合性のあるジカルボン酸は、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸及びアゼライン酸が挙げられる。別の方法を述べるならば、Rはより好ましくは−CH=CH−及び(−CH−)から選択される一部分であり、この際、zは0から8までの、好ましくは2以上8以下の整数である。
【0267】
好ましい芳香族ジカルボン酸の中には、テレフタル酸、イソフタル酸、及びビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンのようなビス(p−カルボキシフェノキシ)アルカンがある。
【0268】
化学式IにおけるPはポリ(アルキレングリコール)であり、好ましくは一般的に、単位当たり約10,000未満の分子量を有するポリ(エチレングリコール)のブロック/単位である。より一般的には、ポリ(エチレン グリコール)のブロック/単位は、単位当たり約4,000未満の分子量を有する。前記分子量は好ましくは、単位当たり約1,000及び約2,000の間である。
【0269】
同じポリ(アルキレングリコール)及びその好ましい種は、化学式II及びIIIのポリマーにおいて共重合していてもよい。
【0270】
化学式Iの好ましい実施形態におけるポリ(エチレングリコール)単位のモル分率、すなわち(f)は、0及び1未満の間、通常は0以上約0.5以下の値であればよい。fはより好ましくは約0.25未満であり、更に好ましくは約0.1未満である。fは、より好ましいバリエーションでは約0.001を超えて約0.08まで、最も好ましくは約0.025及び約0.035の間の値であればよい。ポリ(アルキレングリコール)と共重合する場合には、同じモル分率が化学式II及びIIIのポリマーにあてはまる。
【0271】
化学式Iで示されるように、別段の示唆がない限り、本明細書に開示されたモル分率は、化学式Iの高分子単位における、ジフェノールのカルボン酸エステルのモノマー単位、ジフェノールの遊離カルボン酸単位及びポリ(アルキレングリコール)単位の総モル量に基づくものである。
【0272】
本出願人は、本発明のポリマーにおける遊離カルボン酸単位のモル分率、例えばDT単位が、このようなポリマーで作られた前記用具の分解/再吸収可能な性質を更に調節するために本発明により調節されうるということを認識している。例えば、約35%の遊離カルボン酸単位(0.35のモル分率)を含むポリマーは約15日間で90%再吸収されるが、より少ない量の遊離カルボン酸を伴うポリマーは、望ましいことに体中でより長い寿命を有しうることを本出願人は認識している。更に、好ましいモル分率の範囲にわたって、ポリマー中の遊離カルボン酸の量を別の方法で調節することによって、得られるポリマーは異なる用具の寿命を要求する様々な用途での使用に適応しうる。一般に、遊離カルボン酸単位のモル分率が高いほど、前記用具の体中での寿命は短くなり、このような用具はより短い寿命が要求される用途に一層適応する。6月以上の寿命が要求されるいくつかの実施形態では、遊離カルボン酸単位の現在好ましい範囲のポリマーが望まれる傾向にある。好ましい実施形態によれば、遊離カルボン酸に由来する化学式Iにおける繰り返し単位のモル分率(g)は、約0及び0.5の間の範囲であり、より好ましくはgは約0.1を超えて約0.35までであり、更に好ましくはgは約0.2から約0.3までである。より好ましいバリエーションでは、gは約0.01及び約0.25の間、最も好ましくは約0.05及び約0.15の間の値であればよい。
【0273】
本出願人は、ハロゲン化の程度及び遊離カルボン酸単位のモル分率が増大するにつれて、ポリマーのガラス転移温度が上昇することも認識している。より高い重量%のポリ(アルキレンオキサイド)は通常、高分子ステントの設計技術において通常の知識を有する者によって好ましいと考えられる範囲内にポリマーガラス転移温度を維持するために、より高いレベルのヨウ化及び/またはより高いモル分率の遊離カルボン酸単位を有するポリマーに用いられる。
【0274】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明のコポリマーは、約20,000から約500,000まで、好ましくは約50,000から約300,000まで、より好ましくは約75,000から約200,000までの重量平均分子量(Mw)を有する。コポリマーの多分散性(P)値は、約0.5から約10まで、より好ましくは約1.5から2.5まで、最も好ましくは約2の範囲である。本発明のポリマーの対応する数平均分子量(Mn)は以下を用いて計算できる:
【0275】
【数1】

【0276】
従って、本発明のコポリマーのMn値は約10,000から約250,000まで、より好ましくは約25,000から約150,000まで、更に好ましくは約37,500から約100,000までである。前記分子量は、更なる補正をすることなくポリスチレン標準品と比較したゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0277】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によるポリマーはステント(または他の医療用具)が製造される原料となるポリマーだけでなく、t−ブチルで保護されたカルボン酸基を伴う前駆体ポリマー、すなわちRのRがt−ブチル基である化学式Iのポリマーも含むと更に理解されている。
【0278】
ステント、及びステントのシステム
本発明の好ましい実施形態では、本質的に放射線不透過性で生体適合性のある生体吸収性ステントが開示される。ステントはチューブ部材を含み、上述のポリマーのいずれかを更に含み、その際、前記チューブ部材は、シート状のステント、網状のステント、自己拡張ステント、ワイヤーステント、可変のステント、並びにスライド及びロック式のステントからなる群から選択される構造を含む。いくつかの実施形態では、前記ポリマーは金属ステント上の被覆物である。より好ましくは、前記ステントは拡張可能なバルーンであり、チューブ部材を形成するために用意された少なくとも2つの実質上可変しない部材を含み、前記可変しない部材は、スライド可能なようにまたは回転するように、前記チューブ部材を崩壊した直径から拡張した直径まで拡張させるために相互接続している。別のバリエーションでは、前記チューブ部材は、スライド可能なように用いられた一連の放射状の部材、及び第1の崩壊した直径から第2の拡張した直径まで、放射状の部材の一方向の(one−way)スライドを可能にする一以上の固定構造(locking mechanism)を含む。
【0279】
運搬カテーテル上に装着される崩壊したステントは、本明細書ではステントシステムと称される。カテーテルは、無線のワイヤーカテーテル、同軸の急速な交換構造及び多交換の運搬基盤、例えばメドトロニック ジッパー テクノロジー(Medtronic Zipper Technology)を含むがこれに制限されることはない。このようなカテーテルは、例えばボンゼル(Bonzel)の米国特許第4,762,129号及び5,232,445号、並びにヨック(Yock)の米国特許第4,748,982;5,496,346;5,626,600号;5,040,548号;5,061,273号;5,350,395号;5,451,233号及び5,749,888号で説明されているものを含んでもよい。更に、カテーテルは、例えば米国特許第4,762,129号;5,092,877号;5,108,416号;5,197,978号;5,232,445号;5,300,085号;5,445,646号;5,496,275号;5,545,135号;5,545,138号;5,549,556号;5,755,708号;5,769,868号;5,800,393号;5,836,965号;5,989,280号;6,019,785号;6,036,715号;5,242,399号;5,158,548号;及び6,007,545号で説明されているものを含んでもよい。上記の特許の開示は、それらを参照することにより、それら全体として本明細書に引用される。
【0280】
カテーテルは、超音波効果、電界、磁界、光及び/または温度効果を生み出すことのような様々な目的に特化されうる。加熱カテーテルは例えば、WO9014046A1だけでなく、米国特許第5,151,100号、5,230,349号;6,447,508号;及び6,562,021号で説明されているものを含んでもよい。赤外線発光カテーテルは例えば、米国特許第5,910,816号及び5,423,321号で説明されているものを含んでもよい。上記特許及び特許出願の開示は、それらを参照することにより、それら全体として本明細書に引用される。
【0281】
本発明の好ましい態様に従って製造されるステントは、既知の出願に適応するあらゆる構造(例えば、スライド及びロック式のステント、シート状のステント(時にはジェリーロール(jelly−roll)ステントとも称される)、可変のステント並びに自己拡張ステント)を有してもよい。
【0282】
本発明の好ましい態様に従って製造されるステントは、既知の出願にあてはまるあらゆる構造(例えば、スライド及びロック式のステント、シート状のステント(時にはジェリーロール(jelly−roll)ステントとも称される)、可変のステント並びに自己拡張ステント)を有してもよい。好ましくは、本発明のステントは、動脈を、血管形成のような医療処置を介して開いた後、ヒトのような動物の動脈または組織中に容易に移植可能なように設計され、並びに拡張可能な及び/または動脈を開いた状態に保持するのに適したように設計される。本発明において使用に適当なステント構造の例は、「スライド及びロック式の」ステントを含み、米国特許第6,033,436号;6,224,626号及び6,623,521号、並びに2004年7月21日に出願された同時係属の米国出願第10/897,235号に開示されたものを含み;それらは参照することにより本明細書に引用される。
【0283】
本願での使用に適した他の構造は、金属及び高分子のステントにおいて伝統的に使用されているものを含み、様々なメッシュ、ジェリーロール(jelly−roll)、シート、シグザグ形及びらせんコイル状の構造、例えばPalmazによる米国特許第4,733,665、並びに制御可能な拡張及び弾性限界を超えた力で可変する人工器官の一部を有するその後続特許のような可変のステントを含む。他のステント構造は、下記の構造及びその後続を含む:Lauによる米国特許第5,344,426号、Fordenbacherによる米国特許第5,549,662号及び5,733,328号、Carpenterによる米国特許第5,735,872号及び5,876,419号、Wijayによる米国特許第5,741,293号、Ryanによる米国特許第5,984,963号、Khosraviによる米国特許第5,441,515号及び5,618,299号、Stackによる米国特許第5,059,211号;5,306,286号及び5,527,337号、Sigwartによる米国特許第5,443,500号、Daytonによる米国特許第5,449,382号、Boatmanによる米国特許第6,409,752号など。
【0284】
本明細書に記載されている本発明の好ましい実施形態は、一般的に、体内腔の支持を維持するための拡張可能な医療移植片に関連する。長年にわたり、非常に様々なステントのタイプが提案されている。ステントの構造は実質上変化しうるが、小さな直径を有する崩壊した状態から、より大きな直径を有する拡張した状態まで、事実上全てのステントが拡張可能な形態となるよう製造される。前記した状態の場合、ステントはたいてい血管または他の体内腔を通って、治療部位までカテーテルを介して運搬される。前記治療部位に到達した後、ステントは血管壁を支持するために移植可能な大きさまで放射状に拡張する。前記崩壊した状態から前記拡張した状態までのステントの拡張は、様々な方法で達成されうる。様々なタイプのステントが、構造及び拡張のための手段に基づき、以下で説明される。更なる情報として、様々なステントのタイプがBalcon et alの「ステントの製造、移植及び利用に関する提案」(European Heart Journal(1997)、vol.18、1536−1547頁)、及びPhillips et alの「ステントのノート」(Physician’s Press(1998)、バーミンガム、ミシガン)で説明されており;上記の開示は、それらを参照することにより、それら全体として本明細書に引用される。
【0285】
バルーンの拡張可能なステントは崩壊した状態で製造され、バルーンを用いて所望の直径まで拡張される。運搬中、バルーンの拡張可能なステントは通常、カテーテルの末端部に沿って位置する膨張式のバルーンの外部上に設置される。治療部位に到達後、ステントは、バルーンを膨らませることによって崩壊した状態から拡張した状態まで拡張する。ステントは通常、体内腔の内側の直径以上の直径まで拡張する。例えば、Palmazの米国特許第4,733,665号で教示されているように、ステントの機械的変形によって、拡張可能なステント構造は拡張した状態で保持されうる。代わりに、例えば、Kreamerの米国特許第4,740,207、Beck et alの4,877,030号、及びDerbyshireの5,007,926号で開示されているように、ステント壁の互いのかみ合いによって、バルーンの拡張可能なステントが拡張した状態で保持されてもよい。更に、ステントは、Stack et alの米国特許第5,059,211号に示されているように、ステント内への内皮の成長とともに、ステント壁の一方向のかみ合いによって拡張した状態で保持されてもよい。
【0286】
本明細書で用いられている「放射強度」という用語は、ステントが医学的に有意な損傷を負うことなく耐えられる外圧を示している。ステントの高い放射強度により、バルーンの拡張可能なステントは通常、血管の開通性を確保するために冠動脈で用いられる。体内腔中で配置されている間、バルーンの膨張は、特定の所望の直径までステントを拡張するための調節が可能である。従って、バルーンの拡張可能なステントは、正確な配置やサイジングが重要な複数の用途で使用されうる。バルーンの拡張可能なステントは直接のステント移植にも普通に使用可能であり、その際、ステントを配置する前の、血管の前拡張はない。それどころか、直接のステント移植中、ステントを拡張する間に膨張式のバルーンの拡張により血管が拡張する。
【0287】
医学的に用いられる第1の自己拡張ステントの一つは、Wallstenに対する米国特許第4,954,126号で説明されているように、網状の「壁ステント(WallStent)」である。壁ステントは通常、チャイニーズ フィンガー カフの形態で金属メッシュを含む。カフ(cuff)は、超弾性ではなく、自己拡張ステントファミリーに技術的に同調する網状のステントを提供する。自己拡張ステントの別の例は、Wallに対する米国特許第5,192,307号に開示されており、ここでステント様プロテーゼは、配置に対して拡張可能であるか収縮性である、高分子のまたはシート状の金属から形成される。ステントは開放位置でバイアスをかけ、閉鎖位置でロック可能であってもよく、さもなければ、閉鎖位置の方へバイアスをかけ、開放位置でロック可能であってもよい。前者の場合には、ピンが、ステントを崩壊した状態で保持するために用いられうる。前記ピンは、ステントに拡張した状態をとらせるために除去される。1以上のフックがステントをロックするために、前記壁内に形成されうる。前記フックは、ステントを形成する捲り上げられたシートを機械的に連結するために反対側の壁に形成された補完的な収納部(recess)として作用する。
【0288】
熱拡張ステントは自己拡張ステントに本質的に似ている。しかし、このタイプのステントは、ステント構造の拡張を発生させるために加熱を利用する。
【0289】
このタイプのステントは、ニチノールのような形状記憶合金から形成されうる。熱拡張ステントの更に異なるタイプは、スズでコーティングされた熱拡張コイルで形成されうる。熱拡張ステントは、加熱された流体(heated fluid)を受け入れ可能なカテーテル上で、患部まで運搬されうる。加熱された生理食塩水または他の流体は、ステントが位置するカテーテルの部分を通って通過してもよく、このようにして、ステントへ熱を移送し、ステントが拡張する原因となる。
【0290】
ステントが正確な配置を提供し、治療部位の大きさとなるように拡張可能なバルーンであることが好ましい。このようなステントが、相当な外力を受けている間でも内腔の開通性を維持するのに十分な放射状の強度を有することも好ましい。このようなステントが、放射状の拡張の間に長手方向の短縮をほとんど、または全く示さないように製造されることもまた好ましい。このようなステントが体内腔の湾曲形状に適合するために、長手方向の軸に沿って十分に柔軟性を有することもまた好ましい。このようなステントが、体内腔の内側に適合する機能を有することもまた好ましい。
【0291】
以下に限定されることはないが、シートステント、網状のステント、自己拡張ステント、ワイヤーステント、可変のステント並びにスライド及びロック式のステントを含む様々なステント構造が本技術分野で知られているが、本説明は一例にすぎず、本発明を限定するような方向で解釈されるべきではないということが十分に理解されるであろう。実際、本明細書に記載される放射線不透過性の生体吸収性ポリマーは、本技術分野で知られている様々な他のステントの設計に適用可能である。更に、本技術分野の当業者に想起されうる、本発明の様々な用途及びその変更もまた、本明細書に記載される一般的な概念に含まれる。
【0292】
いくつかの好ましい実施形態は、複数のモジュールを有する拡張可能なスライド及びロック式のステントに関する。前記モジュールは、崩壊した直径から拡張した/配置した直径までの放射状部材についての一方向のスライドを可能にするが、拡張した直径からの放射状の反跳を禁止する、複数のスライド及びロック式の部材を有する。一つの利点は、モジュール及び連動装置のステント設計部材が、強度、準拠(compliance)、湾曲の半径についての機能的特徴を、配置や拡張比でカスタマイズするために変更可能であるということである。いくつかの好ましい実施形態では、ステントは化学式Iで表されたポリマーを含み、その結果、ステントは、時間とともに消えるようになっている放射線不透過性で生体吸収性の物質を含む。いくつかの実施形態では、ステントは治療の荷渡し場(therapeutic delivery platform)としての役割を果たす。
【0293】
いくつかの実施形態は、体内腔中の標的領域を開放し、または拡張するために用いられる、放射状に拡張可能なステントに関する。いくつかの実施形態では、組み立てられたステントは、体内腔中に移植されるべき適当なサイズの、長手方向の軸における長さ、及び放射状の軸における直径を有するチューブ部材を含む。前記チューブ部材の前記長さ及び直径は、以下で説明される構造用部品の数及び構造に応じて、選択された異なる標的内腔中の配置に応じてかなり変化しうる。チューブ部材は、少なくとも第1の崩壊した直径から少なくとも第2の拡張した直径まで調節可能である。1以上の止め具及び接触部材または接触タブがチューブ部材の構造用部品に組み込まれ、これにより、反跳(すなわち、拡張した直径からより崩壊した直径までの崩壊)が約5%未満まで最小化される。
【0294】
いくつかの実施形態に従ったチューブ部材は、「障害物がない直通の内腔」を有し、これは、崩壊した直径または拡張した直径のいずれにおいても内腔中に突き出た構造用部材を全く有しないと定義される。更に、前記チューブ部材は、端部の影響による衝撃を最小化するための平坦な周辺部を有する。前記チューブ部材は、好ましくは薄壁であり(約635マイクロメートル未満から約100マイクロメートル未満までの範囲の選ばれた素材による壁の厚み)、柔軟性があり(例えば、約0.01ニュートン力(Newtons force)/ミリメートルの偏差未満)、小さな血管への運搬及び蛇行血管系を通じた運搬を促進する。前記薄壁の構造は血液の乱流及びこれによる血栓症の危険も最小化するであろう。いくつかの実施形態に従った、配置されたチューブ部材の薄い断面(thin profile)は、ステントのより迅速な内皮化も促進する。
【0295】
前記チューブ部材の壁は、少なくとも一のモジュールを含み、前記モジュールは、一連のスライド及びロック式の放射状部材を含む。好ましくは、複数のモジュールが、隣接したモジュール間の放射状部材のうちの少なくともいくつかを連結する結合部材を介して、長手方向の軸で接続される。前記放射状部材は、前記チューブ部材の周辺を定義するために、各モジュール中に構成される。モジュール中の各放射状部材は、好ましくは、放射状の軸において湾曲した1以上の円周リブを含み、チューブ部材の全周の一部を形成する、離散した単一構造である。各放射状部材における前記リブのうち少なくとも一は、前記リブの長さに沿って配置された一以上の止め具を有する。前記放射状部材のうち少なくともいくつかは、隣接した、周辺にオフセットの放射状部材から前記リブをスライド可能にするために、少なくとも一の連結機構も有する。本発明の一態様では、連結機構は、スライド可能にされた隣接したリブに沿って配置される前記止め具を機能させるためのタブを含む。一の放射状部材に由来する前記タブと隣接する放射状部材に由来する前記止め具との間の前記連結は、ロック式またはラチェット式の機構が形成され、それによって前記隣接する放射状部材が互いに離れて円周上をスライドしうるが、互いの方に向かって円周上をスライドすることを実質的に禁じられるというものである。従って、前記チューブ部材は、より小さな直径からより大きな直径まで放射状に拡張しうるが、より小さな直径への反跳は、ロック式の機構によって最小化される。反跳の量は、前記リブに沿った前記止め具同士の間のサイズ及び間隔を調節することによって、用途に対してカスタマイズされうる。好ましくは前記反跳は約5%未満である。
【0296】
ステントの実施形態についてのいくつかの態様は、米国特許第6,033,436号、6,224,626号及び6,623,521号に開示されており、これらは全てSteinke et alに対して発行されている;これらについてのそれぞれの開示は、それらを参照することにより、全てについて本明細書に引用される。
【0297】
単一の不可欠な部材から形成されたステントは、拡張した状態でステントを固定(ロック)するための特定の機械的特性を有すると上述されているが、様々な他の“スライド及びロック式の”機構が用いられうる。例えば、他の適当なロック式の機構は、Lauによる米国特許第5,344,426号、Carpenterによる米国特許第5,735,872号及び5,876,419号、Wijayによる米国特許第5,741,293号、Ryanによる米国特許第5,984,963号、Khosraviによる米国特許第5,441,515号及び5,618,299号、Stackによる米国特許第5,306,286号、Sigwartによる米国特許第5,443,500号、Daytonによる米国特許第5,449,382号、Boatmanによる米国特許第6,409,752号などで見出される。これらの参考文献はそれぞれ、参照することにより本明細書に引用される。更に、上記特許に開示されているスライド及びロック式の機構の多くは、上述のタイプの、スライド可能な相互接続した部材を含むステントの実施形態を伴う使用に好適となりうる。
【0298】
治療薬及びステントコーティング
本発明に対する他の好ましいバリエーションでは、ステントは、選択された治療効果を発揮するのに十分な量の治療薬(例えば、医薬品及び/または生物剤)を更に含む。本明細書で用いられる場合、「医薬品」という用語は、特定の生理的な(代謝的な)反応を促進する、病気の緩和、治療、または予防に適した物質を含む。本明細書で用いられる場合、「生物剤」という用語は、生体系における構造上及び/または機能上の活性を有するあらゆる物質を含み、制限なく、器官、組織または細胞ベースの誘導体、細胞、ウイルス、ベクター、起源が天然及び組み換え及び合成の、並びにあらゆる配列及びサイズの核酸(動物、植物、微生物及びウイルス)、抗体、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、cDNA、オンコジーン、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、リポタンパク質、糖タンパク質、脂質、炭水化物、多糖、脂質、リポソームまたは他の細胞成分若しくはオルガネラ、例えばレセプター及びリガンドを含む。更に、本明細書で用いられる場合、「生物剤」という用語は、人間の病気またはけがの予防、処置または治療(Public Health Service Act(42 U.S.C. 262(a)のSection 351(a))に当てはまる、ウイルス、血清、毒素、抗毒素、ワクチン、血液、血液成分または誘導体、アレルギー製品または類似製品、またはアルスフェナミン若しくはその誘導体(若しくはあらゆる三価の有機砒素化合物)を含む。更に、「生物剤」という用語は、1)本明細書で用いられる場合、天然若しくは組み換え体の生物、抗体、組織若しくは細胞系またはこのような分子の合成類似体によって生産され、及びこれらから精製された、生物学的に活性のあるペプチド、タンパク質、炭水化物、ビタミン、脂質または核酸を含む「生分子」;2)本明細書で用いられる場合、核酸(デオキシリボ核酸(DNA)若しくはリボ核酸(RNA)のいずれか、遺伝要素、遺伝子、因子、アリル、オペロン、構造遺伝子、調節遺伝子、作動遺伝子、遺伝子相補体、ゲノム、遺伝コード、コドン、アンチコドン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソーム染色体外遺伝要素、プラズマ遺伝子、プラスミド、トランスポゾン、遺伝子変異、遺伝子配列、エクソン、イントロンを含む、「遺伝物質」、及び3)本明細書で用いられる場合、例えば巧みな操作を受ける細胞、組織または器官のような「加工生物製剤」を含みうる。前記治療薬はビタミン若しくはミネラル物質または他の天然要素も含みうる。
【0299】
前記治療薬の量は、再狭窄若しくは血栓症を阻害するのに十分であり、あるいは、ステント組織の任意の他の状態に影響を及ぼすこと、例えば、不安定なプラークを治癒すること、及び/または破裂を防止し若しくは内皮化を促進することが好ましい。前記治療薬は、本発明の好ましい実施形態に従って、抗増殖剤、抗炎症性、抗マトリックスのメタロプロテイナーゼ、並びに脂肪低下、コレステロール変性、抗血栓及び抗血小板の薬からなる群から選択されうる。ステントに関するいくつかの好ましい実施形態では、前記治療薬がポリマーと混合されるか、本技術分野の当業者に知られている他の手段で混合されると、前記治療薬がステント中に含まれる。ステントに関する他の好ましい実施形態では、前記治療薬はポリマーコーティングからステント表面上に運搬される。他の好ましいバリエーションでは、前記治療薬はポリマーコーティング以外の手段により運搬される。ステントに関する他の好ましい実施形態では、前記治療薬は少なくとも一の領域またはステントの一表面から運搬される。前記治療薬は、ステントの少なくとも一部からの前記治療薬の運搬に用いられるポリマーまたはキャリアーと化学的に結合可能であり、及び/または前記治療薬はステント体の少なくとも一部を含むポリマーと化学的に結合可能である。好ましい一実施形態では、2以上の治療薬が運搬されうる。
【0300】
治療薬を運搬しうるステント、例えば忌避性のホスホリルコリンのようなステント上での生体高分子の運搬に加えて、ステントは、確かな医療上の有用性にとって好ましい血管内腔における生物応答を促進するためにあらかじめ定められた他の生体吸収性ポリマーでコーティングされうる。更に、コーティングは、ステントの実施形態を含むために用いられる前記ポリマーの表面特性を隠すために用いられうる。コーティングは、いかなるポリ(アルキレングリコール)も含むかまたは含まない、あらゆるハロゲン化及び/若しくは非ハロゲン化物またはその組み合わせを含みうる、多種類の、あらゆる生体適合性で生体吸収性のポリマーから選択されうる。これらのポリマーは、ホモポリマー及びヘテロポリマー、立体異性体並びに/またはこのようなポリマーの混合物を含む組成のバリエーションを含みうる。これらのポリマーは、例えば、以下に限定されることはないが、ポリカーボネート、ポリアリーレート、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドカーボネート)、トリメチレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサン、ポリヒドロキシ酪酸塩、ポリヒドロキシ吉草酸塩、ポリグリコリド、ポリラクチド並びにそれらの立体異性体及びコポリマー、例えばグリコリド/ラクチドのコポリマーを含みうる。好ましい実施形態では、ステントは、結果として血栓形成の危険を減少させる、負に帯電した赤血球の外膜に反発する負電荷を示すポリマーでコーティングされる。他の好ましい実施形態では、ステントは細胞(例えば、内皮細胞)に対する親和性を示すポリマーでコーティングされ、治癒を促進する。更に他の好ましい実施形態では、ステントは、再狭窄及び/またはマクロファージのような炎症細胞を少なくするために、特定の細胞、例えば動脈の線維芽細胞及び/または平滑筋細胞の接着並びに/若しくは増殖を防ぐポリマーでコーティングされる。
【0301】
治療薬は、生体吸収性ステント中に組み込まれ、及び/またはステント表面の少なくとも一の領域上にコーティングされることが可能であり、その結果、このような治療薬の局所放出をもたらす。好ましい実施形態では、前記治療薬が前記ポリマーと混合され、または本技術分野の当業者に知られた他の方法により混合されると、前記治療薬はステント中に含まれる。ステントについての他の好ましい実施形態では、前記治療薬はポリマーコーティングからステント表面上に運搬される。他の好ましいバリエーションでは、前記治療薬はポリマーコーティング以外の手段によって運搬される。ステントについての他の好ましい実施形態では、前記治療薬は、ステントの少なくとも一の領域または一の表面から運搬される。
【0302】
好ましい治療薬は、ステント血管の内腔中の(新生内膜肥厚、内膜過形成及びステント中の再狭窄を含む)再狭窄を調節するか、血管の平滑筋細胞の過成長を制限する。血管ステントの用途及び体への他の用途は、異なる治療または2以上の治療を要求しうる。
【0303】
様々な化合物が、血管の再狭窄及びステント中の再狭窄を調節するのに有用であると考えられている。血管の開通性を向上させるこれらの好ましい薬剤のうちのいくつかは、以下に制限されることはないが、パクリタキセル、ラパマイシン、ABT−578、エベロリムス、デキサメタゾン、内皮の機能に対する酸化窒素調節分子、タクロリムス、エストラジオール、ミコフェノール酸、C6−セラミド、アクチノマイシン−D及びエポチロン並びに各々の誘導体及び類似体を含む。
【0304】
好ましい治療薬は、血栓症を制限し、若しくは阻害し、または何らかの他の状態のステント組織に影響を及ぼしうる。例えば、不安定なプラークを治癒し、プラーク崩壊を阻害し、内皮化を促進し、または他の細胞型が増殖し、細胞外基質分子を生産し堆積するのを制限する。前記治療薬は、以下に制限されることはないが:本発明の好ましい実施形態に従って、抗増殖剤、抗炎症性で抗マトリックスのメタロプロテイナーゼ、並びに脂肪を低下させ、抗血栓の、抗血小板剤からなる群から選択されうる。
【0305】
好ましいステントの実施形態では、前記用具が、抗炎症性、脂肪低下/基質変化の治療性、及び/または抗増殖性のような不安定なプラークの損傷を処置するための治療薬を運搬する。前記抗炎症性は、炎症の効果的な中和剤であるアスピリン、アンジオテンシンレセプターの阻害剤であるロサルタン、または3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤であるプラバスタチンを含みうる。3−HMG−CoAレダクターゼ阻害剤であるスタチン、例えばプラバスタチン及びフルバスタチンの更なる運搬は、間質性のコラーゲン遺伝子の発現であり得、前記不安定なプラークの損傷を効果的に安定化させる、マトリックスのメタロプロテイナーゼ(MMP−1、MMP−3及びMMP−9)の発現を低下させうる。脂質低下剤、例えば、プラバスタチンについての局所的なステントの運搬も、プラークの安定化を向上しうる。
【0306】
好ましいステントの実施形態では、前記用具は、糖タンパク質IIb/IIIaレセプター阻害または他の手段によって作用する、以下に制限されることはないが、アスピリン、プラビックス(硫酸クロピドグレル)、チクロピジン、インテグレリン及びジピリダモールのような抗血小板剤を運搬する。他の好ましいステントの実施形態では、前記用具は、例えば、ヘパリン、低分子量のヘパリン(LMWH)、硫酸デキストラン及びヘパリンが共有結合しているポリアミン、内在性移植(STS Biopolymers製のMEDI−COAT)のためのヘパリン含有ポリマーコーティング、ポリウレタンの尿素/ヘパリン、R−ヒルジン、ヒルログ(Hirulog)、ヒルジン/プロスタサイクリン及び類似体、アルガトロバン(argatroban)、エフェガトラン(efegatran)並びにマダニ抗凝固ペプチド(tick anticoagulant peptide)のようなトロンビン阻害または他の手段によって作用する抗トロンビン剤を運搬する。更なる抗血栓形成物質及び製剤は、以下に限定されることはないが、内皮由来の弛緩因子、プロスタグランジンI.サブ2、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、レオプロ(ReoPro):抗血小板糖タンパク質Ilb/lIIaインテグリンレセプター、フィブリン及びフィブリンペプチドA、脂質低下薬、例えば、オメガ−3脂肪酸、並びにChrysalis Vascular Technologies製のクリ生理食塩水(Chrysalin)(aka TRAP−508)を含みうる。
【0307】
様々な化合物が、他の病理学的事象及び/または血管の病気に対して処置を施す。これらの治療のための標的化合物の中には、内皮の損傷を処置するための薬剤(例えば、VEGF;FGF)、細胞の活性化及び表現型(例えば、MEF−2&Gaxモジュレーター;NFKBアンタゴニスト;細胞サイクル阻害剤)を調節する薬剤、無調節の細胞成長のための薬剤(例えば、E2Fデコイ;RB変異体;細胞サイクル阻害剤)、無調節のアポトーシスのための薬剤(例えば、BaxまたはCPP32誘導剤;Bcl−2阻害剤;インテグリンアンタゴニスト)、並びに細胞の異常転移のための薬剤(例えば、インテグリンアンタゴニスト;PDGF阻害剤;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤)がある。
【0308】
コーティングされるか、または本発明の実施形態のステントポリマー中に組み込まれる前記治療薬は、ホスト中の活性部位の観点から分類されうる。以下の薬剤は、細胞外で、または特定の膜レセプター部位で作用を発揮すると考えられている。これらは、コルチコイド及び他のイオンチャネル阻害剤、成長因子、抗体、レセプター阻害剤、融合毒素(fusion toxins)、細胞外マトリックスタンパク質、ペプチド、または他の生分子(例えば、ホルモン、脂質、マトリックスメタロプロテイナーゼなど)、放射線、インターロイキン−1(IL−1)のようなサイトカインなどの抗炎症剤、並びに炎症応答を調節する腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、ガンマインターフェロン(インターフェロン−γ)及びトラニラストを含む。
【0309】
他の種類の治療薬は、細胞膜で効果を発揮する。これらは、情報伝達カスケードに関与するもの、例えば共役タンパク質、膜関連及び細胞質のタンパク質キナーゼ及びエフェクター、チロシンキナーゼ、成長因子レセプター、並びに接着分子(セレクチン及びインテグリン)などを含む。
【0310】
いくつかの化合物は細胞質中で活性があり、例えば、ヘパリン、リボザイム、サイトキシン、アンチセンスオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを含む。他の治療上のアプローチは、細胞核をターゲットにしている。これらは、遺伝子組み込み、プロト−オンコジーン、特に細胞分裂に重要なもの、核タンパク質、細胞サイクル遺伝子及び転写因子を含む。
【0311】
生体吸収性ステント中に組み込まれるステントコーティング及び/またはデポー製剤として有用となりうる他の治療剤は、以下を含む:抗体、例えば、単球走化性の補充及び接着、マクロファージ接着並びに関連する事象の阻害用のICAM−1抗体(Yasukawa et al.,1996,Circulation);血管のSMC増殖を調節するキメラ毒素または単一毒素のような毒素ベースの治療(Epstein et al.,1991,Circulation);多数のFGF−2レセプターを伴う細胞中のSMC増殖を選択的に止めるbFGF−サポリン(Chen et al,1995,Circulation)、PDGF−誘導及び/またはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK−AP−1)−誘導シグナル伝達を阻害することによって、スラミンが転移及び増殖を阻害する(Hu et al,Circulation,1999);化学的に安定なプロスタサイクリン類似体(PGI)であるベラプロストナトリウムが、冠動脈の血管内膜の肥厚及び内腔の狭窄を抑制する(Kurisu et al.,Hiroshima J.Med Sci,1997);ベラパミルが新生内膜の平滑筋細胞増殖を阻害する(Brauner et al.,J Thorac Cardiovasc Surg 1997)、CD154またはCD40レセプターを阻害する治療薬が、アテローム性動脈硬化の進行を制限しうる(E Lutgens et al.,Nature Medicine 1999)、せん断応力の応答因子、または機械ストレス若しくは緊張の因子、または熱ショック遺伝子を調節する治療薬;そして、SMC及び炎症細胞に対する抗化学誘引物質。
【0312】
これに加えて、またはこれに代えて、細胞は、生体吸収性の微小球中に封入されるか、ポリマーまたはハイドロゲルと直接混合されることも可能である。生きた細胞は、継続的に分子、例えばサイトカイン及び成長因子を運搬するために使用可能である。いかなる起源の細胞であっても、本発明の本態様に従って用いられうる。更に、死細胞が用いられてもよく、水分補給すると本来の目的を維持する、保存状態または脱水状態の細胞が用いられうる。天然の、化学的に修飾された(加工された)、及び/または遺伝学的に設計された細胞が用いられてもよい。
【0313】
治療薬は、極性を有していてもよく、または正味で負、正若しくは中性の電荷を有してもよい;前記治療薬は、疎水性、親水性若しくは両性であってもよく、または水に対して大きな親和性を有していてもよい。調節された放出機序、拡散、静脈注射、エアロゾル化または経口によって運搬される他の治療薬との相互作用により、放出が生じうる。放出は、磁場、電場の印加、または超音波の使用によっても生じうる。
【0314】
本発明の他の態様では、ステントはまた、ハイドロゲル、または血液細胞、血液タンパク質若しくは血液分子、細胞外マトリックスまたは他の細胞型の接着を防止するために作用するホスホリルコリン(PC)のような他の物質を組み込み、または運搬しうる。ハイドロゲルは治療薬を運搬しうる。
【0315】
選択された機能または化学的特性を有する、合成の、天然の(植物、微生物、ウイルスまたは動物由来の)及び組み換えの薬剤の使用は、補完的な物質(例えば、抗血栓の及び抗再狭窄の物質;核酸及び脂質の複合体)と混合可能である。薬剤は、ビタミンまたはミネラルの使用を組み込んでもよい。例えば、アミノ酸、核酸(DNA、RNA)、タンパク質若しくはペプチド(例えば、RGDペプチド)、炭水化物基、多糖、リポソームまたは他の細胞成分若しくはオルガネラ、例えばレセプター及びリガンドが関与する相互作用または機序を通じて直接的または間接的に機能するものと混合可能である。
【0316】
再狭窄を調節するための遺伝学的アプローチは、以下に制限されることはないが、以下のものを含む:PDGFの発現を調節するPDGFR−ββ mRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用;核抗原c−mybまたはc−mycオンコジーンに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用(Bauters et al.,1997,Trends CV Med);血管の平滑筋細胞の細胞サイクルを調節するcdk2キナーゼ(サイクリン依存性キナーゼ)に対するアンチセンスホスホロチオエート(phosphorothioate)オリゴデオキシヌクレオチドの使用(Morishita et al,1993, Hypertension);内皮化のような再生創傷治癒を促進し、内膜成長を減退させるVEGF遺伝子(またはVEGF自体)の使用(Asahara et al,1995);血管の平滑筋細胞増殖を減少させる酸化窒素シンテターゼ遺伝子(eNOS)の運搬(don Der Leyen et al.,1995,Proc Natl Acad Sci);血管の平滑筋細胞の遊走を減退させ、その結果、再狭窄を減退させる、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1(PAI−1)を発現するアデノウイルスの使用(Carmeliet et al.,1997,Circulation);LDL及びHDLの血清レベルのバランスを取り戻すためのアポリポタンパク質A−1(ApoA1)過剰発現の促進;(例えば、平滑筋細胞の)細胞死を促進するアポトーシス遺伝子産物、及び細胞分裂を調節する細胞走性遺伝子産物(腫瘍抑制タンパク質p53、及びras;p21の過剰発現を抑制するGaxホメオボックス遺伝子産物)の使用;並びに平滑筋細胞増殖を調節するNF−κB活性化(例えばp65)の阻害(Autieri et al.,1994,Biochem Biophys Res Commun)。
【0317】
製造方法
本発明の他の態様によれば、本質的に放射線不透過性で生体適合性のある生体吸収性ステントの製造方法が開示される。前記方法の一態様は、tert−ブチルエステル基の代わりとなる遊離カルボン酸基を有する新たなポリマー組成を形成するために、加水分解に不安定なポリマーに由来するtert−ブチルエステル基の選択的除去を含む。前記開示された方法は、遊離カルボン酸基を形成するために、少なくとも一のt−ブチルエステル基を有する加水分解に不安定なポリマーを、少なくとも一のt−ブチル基を酸分解により選択的に除去するのに効果的な約0から約4までのpKaを有する多量の酸を含む溶媒中に溶解することを含む。
【0318】
前記方法の好ましい一実施形態では、前記ポリマーは前記酸に溶解し、前記溶媒は実質的に前記酸からなる。
【0319】
他の実施形態では、前記溶媒は、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルギ酸及びこれらの2以上の混合物からなる群から選択される。前記方法の更なるバリエーションでは、前記酸は、ギ酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸及びこれらの2以上の混合物からなる群から選択される。前記方法の好ましい一実施形態では、前記酸はギ酸である。
【0320】
化学式Iのポリマー組成物は、様々な方法のいずれを介して調製されてもよい。上述のように、化学式Iによって示されるポリマーは、所定の相対量でジフェノール酸エステル単位、ジフェノール遊離カルボン酸単位及びポリ(アルキレングリコール)単位を含む、ハロゲンで環が置換されたジフェノールポリカーボネートまたはポリアリーレートである。従って、ハロゲンはヨウ素であり、ポリ(アルキレングリコール)単位はポリ(エチレングリコール)(「PEG」)である好ましい実施形態では、前記ポリマーは、所望の比率の(化学式Iに由来するサブグループRがtert−ブチルエステル基であるモノマー化合物を含む)ヨウ素で環が置換された1以上のジフェノールモノマー化合物、及びPEGを重合することを含む方法によって調製されてもよく、その後に、化学式Iのポリマー組成物を形成するためにtert−ブチルエステル保護基を除去する脱保護反応が続く。
【0321】
本発明のポリカーボネートまたはポリアリーレートのポリマーを調製するための、使用に適した方法の例は、米国特許第5,099,060、5,587,507、5,658,995、5,670,602、6,120,491及び6,475,477中に開示されており、その開示は参照によって本明細書に引用される。他の適当な工程、関連する触媒及び溶媒は、本技術分野で知られており、Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonatesで教示されていて(Interscience,New York 1964)、そこでの教示内容は、参照することによって本明細書に引用される。
【0322】
ポリカーボネートもまた、0.1Mのピリジンまたはトリエチルアミンを含む塩化メチレン中にジフェノールモノマー及びポリ(エチレングリコール)を溶解することにより調製されてもよい。約10及び約25wt%の間、好ましくは約20wt%の濃度でトルエンに溶解したホスゲン溶液が、通常約2時間超、シリンジポンプまたは他の手段を用いて一定の速度で添加される。反応混合物は、テトラヒドロフラン(THF)及び水を用いて攪拌することにより急冷され、その後、前記ポリマーがイソプロパノール(IPA)を用いた沈殿により単離される。(もし使用されるならば)残ったピリジンは、強酸の樹脂、例えばAMBERLYST 15を伴うTHFポリマー溶液を攪拌することにより除去される。
【0323】
前述の工程は、特別な操作を要求し、ポリマー骨格の分解を防止するために反応混合物をpH6〜8に維持するように調節された速度で、水酸化ナトリウムを注意深く共添加(co−addition)することも要求する、気体のホスゲンを用いた従来技術の方法を改良するものである。前記従来技術の方法は、相当過度な量のホスゲンも要求する。なぜなら、採用されるかかる条件下では、相当量が加水分解されるからである。本発明の方法は、有利な点として、残ったピリジンのより完全な除去、またはピリジンのトリエチルアミンへの完全な代替ももたらし、これは、より好ましい毒性プロファイルを有する。
【0324】
ポリマーを作るのに用いる、ジフェノールモノマーを調製する方法は、例えば米国特許第5,587,507及び5,670,602に開示されている。特に、このような文献は、エチル(DTE)、ブチル(DTB)、ヘキシル(DTH)、オクチル(DTO)、ベンジル(DTBn)及び他のエステルを含むデスアミノチロシル−チロシンエステルだけでなく、エステル以外のデスアミノチロシル−チロシン遊離カルボン酸(DT)の調製について開示している。例えば、本明細書に開示されるあらゆる手法を介して、フェノール環の一方若しくは両方がヨウ素で置換された2つのフェノール化合物を一緒に結合させることにより、またはあらゆる適当なヨウ化方法を介して、結合の後にヨウ化したジフェノールを形成することにより、ヨウ素−置換ジフェノールモノマーが調製されうる。
【0325】
上述の通り、上記方法のいずれもここでの用途に適しているが、モノマーの遊離カルボン酸基のコモノマーとの交差反応なしに、(DTモノマーのような)遊離カルボン酸基を有するモノマーに由来するペンダントの遊離カルボン酸基を有する好ましいポリカーボネート及びポリアリーレートを調製することは困難であるかもしれない。だが、本発明の好ましいポリマーを含む遊離酸ポリマーは、パラジウム触媒の非存在下で以下に詳述されるような保護ポリマーから合成可能であり、このようにして、伝統的な方法に関連するいかなる不都合をも回避できることを本出願人は見出した。本技術分野の伝統的な教示に反して、t−ブチル(tB)基は、パラジウムを必要とせずに、換言すれば触媒を除去するという他の困難性を伴わずに、簡単にかつ選択的にポリマーから除去される遊離酸の保護基として、非常に有利に使用可能であることを本出願人は発見した。
【0326】
本明細書で用いられる場合、「選択的に除去される」という用語は、全てのt−ブチルの保護基のうち99%超が、ポリマー分子量の10%未満の減少を伴って除去される脱保護反応を示す。本方法が、約99.99%以上、好ましくは約99.995%以上の選択率で供給ポリマーからt−ブチル保護基を除去可能であることを本出願人は発見した。
【0327】
特に、本発明の好ましいポリマーは、ヨウ素環置換アルキルエステルモノマーを、ポリ(エチレングリコール)及び一時的に保護された遊離カルボン酸モノマー(遊離酸の官能基が一時的な保護基を用いてマスクされたモノマー)と重合して一時的な保護基が対応する遊離カルボン酸基を合成するのに選択的に除去可能なポリカーボネートまたはポリアリーレートの高分子単位を形成することにより、有利に調製可能である。
【0328】
ベンジルカルボン酸エステルを、例えば、参照することにより本明細書に引用される、米国特許第6,120,491号で説明されているような遊離カルボン酸基に変換するための方法を含む、非常に多様な好適な保護/脱保護方法はいずれも、本発明の高分子用具の調製用に適用可能である。
【0329】
使用可能な他の方法は、加水分解に不安定なポリマー上のt−ブチルエステル保護基が選択的に除去されて、新たなポリマーに、t−ブチルエステル基に代えて遊離カルボン酸基を与える本発明の新規な脱保護方法である。前記方法では、遊離カルボン酸基を形成するために少なくとも一のt−ブチル基を酸分解により選択的に除去するのに効果的な約0から約4までのpKaを有する量の酸に一以上のt−ブチルエステル基を有する、加水分解に不安定なポリマーを接触させる。
【0330】
好ましい高分子の出発物質は、t−ブチル保護遊離酸を含む少なくとも一の繰り返し単位を有する。本発明の脱保護方法用に適したt−ブチル保護ポリマーの一例は、化学式IIによって表される1以上の単位を含む。好ましいジフェノールポリマーは、化学式IIIによって表される1以上のジフェノール単位、特に、化学式Iの前記t−ブチル保護ポリマーを含む。
【0331】
一般に、本方法により脱保護される1以上の繰り返しのt−ブチル(tB)エステル基を有するポリマーは、非常に多様な方法のいずれによっても得ることができる。放射線不透過性が望ましい場合、モノマーは環がヨウ化または臭素化されるのが適当である。化学式IIは、本明細書で説明されているように調製され、ポリ(アルキレンオキサイド)を伴うそれらのコポリマーを含むポリカーボネート及びポリアリーレートを含む。いくつかの好ましい実施形態では、t−ブチル(tB)エステルの繰り返し単位を含むポリアリーレートまたはポリカーボネートは、t−ブチルエステル保護カルボン酸モノマーを他のモノマーと反応させることにより調製され、得られる。
【0332】
化学式IIは、米国特許第6,284,462号に示されている方法により、そこで開示されている、ペンダントのt−ブチルエステル基を有するモノマー種を用いて調製されたポリ(アミドカーボネート)及びポリ(エステルアミド)も含み、そこでの開示は、参照することにより本明細書に引用される。化学式IIは、例えば、米国特許第4,863,735号によって開示された方法により、t−ブチルエステル保護カルボン酸モノマーを他のモノマーと反応させることにより調製されうるポリイミノカーボネートも含み、そこでの開示は、参照することにより本明細書に引用される。
【0333】
化学式IIは、米国特許第6,238,687号及び5,912,225号によって開示されたリン含有ポリマーも含み、そこでの開示は、参照することにより本明細書に引用され、該ポリマーは例えば、そこで開示された重合方法により、そこで開示された、ペンダントのt−ブチルエステル基を有するモノマーを他のモノマーと反応させることによって調製されうる。上記で参照された米国特許第6,284,462号に開示された、ペンダントのt−ブチルエステル基を伴う脂肪族−芳香族のモノマーは、化学式IIによる他のポリマーを調製するために、チロシン由来のジフェノールに置換されてもよい。
【0334】
化学式IIは、例えば、米国特許第6,602,497号によって開示された方法により、t−ブチルエステル保護カルボン酸モノマーを他のモノマーと反応させることによって調製されうる、厳格に交互のポリ(アルキレンオキサイドエーテル)コポリマーも含み、そこでの開示は、参照することにより本明細書に引用される。
【0335】
このようにして、化学式IIで表される単位を伴うポリマーは、化学式IIaで表されるモノマーから重合可能であり、前記化学式IIaにおいて、R、X及びYは、本明細書で既に定義されている:
【0336】
【化73】

【0337】
モノマー調製は、本明細書で参照される特許で説明されている。特に、以下を参照:米国特許第6,284,462、4,863,735、6,238,687、5,912,225及び6,602,497、これらの開示は、参照することにより全て本明細書に引用される。
【0338】
化学式I及びIIIで表されるジフェノール単位を伴うポリマーは、化学式IIIaで表されたジフェノールモノマーから重合可能であり、前記化学式IIIaにおいて、R、X,Y1及びY2は本明細書で既に定義されている:
【0339】
【化74】

【0340】
前記ポリマーを、有効量の前記酸を含む適当な溶媒中に溶解することにより、前記ポリマーを前記酸と接触させてもよい。脱保護されるポリマーが溶解する、任意の適当な不活性溶媒が、本方法の供給段階の反応混合物中で使用されてもよい。適当な溶媒の例は、クロロホルム、塩化メチレン、THF、ジメチルギ酸などを含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記溶媒は塩化メチレンを含む。
【0341】
酸分解による供給ポリマーのカルボン酸基からの、t−ブチル保護基の選択除去を促進可能な、任意の適当な弱酸が、本方法により使用可能である。いくつかの適当な弱酸の例は、約0から約4までのpKaを持つ酸を含み、ギ酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸などを含む。いくつかの好ましい実施形態では、前記弱酸はギ酸である。
【0342】
本方法の完全な脱保護を用いることにより、最小限の分子量のロスを達成することができる(<1%)。従って、使用される弱酸の量は、ポリマーの溶解を阻害せずに前記溶媒に添加できる最大量とすべきである。特定のポリマー形成により、完全な脱保護が1〜4日以内に生じるであろう。前記ポリマーはその後、イソプロパノールか水のいずれかの中で沈殿により回復する。(酸ではない)前記溶媒中での再溶解及び再沈殿は、いかなる残留酸も除去するであろう。
【0343】
弱酸は、系中で溶解するポリマーに対する溶媒としての役目を果たす。このような環境の下で、脱保護はより迅速に4〜8時間以内に生じ、別のプロセス溶媒の要求を排除する。本実施形態で、好ましい酸はギ酸である。同様の沈殿及び再沈殿の段階が、前記ポリマーを回収し精製する目的で使用されてもよい。
【0344】
前記接触段階、またはその一部は、酸分解によりt−ブチル保護基を選択的に除去するのに効果的な任意の適当な状態の下で行われてもよい。本技術分野の当業者であれば、必要以上の実験をすることなくt−ブチル基を選択的に除去するために、本発明の接触段階で用いられる、非常に様々な酸分解方法のいずれをも容易に適合させることができるであろう。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、前記接触段階は約25℃及び約1気圧で実行される。
【0345】
ここでの開示を考慮すれば、本技術分野の当業者は、t−ブチル保護遊離カルボン酸の繰り返し単位を含む対応ポリマーから、遊離カルボン酸基を有する様々な加水分解に不安定なポリマー、及び特に、様々な医療用具に用いられる本発明のポリマーを容易に合成可能であろう。
【0346】
重合及び脱保護後に、本発明の好ましい実施形態に従って、前記ポリマーの適当なワークアップ(work up)が、多様な用途に適当な様々なステントまたは他の医療用具を合成するための、多くの公知の方法のいずれによっても達成されうる。例えば、いくつかの好ましい実施形態では、本ポリマーは、押出成形、加圧成形、射出成形、溶媒キャスティング法、回転成形、それらの2以上の組み合わせなどを含む方法によってステントへと成形される。更に、ステントは、少なくとも一の線維材料、硬化材料、積層材料、及び/または織布を含んでもよい。
【0347】
このような方法は、レーザー切断、エッチング、機械切断または他の方法による、ポリマーの切断押出シートのような二次元の製造方法、及びその結果得られた切断部分をステントとして集めること、または固体形態からの用具の三次元の類似の製造方法を更に含んでもよい。いくつかの他の実施形態では、前記ポリマーは、本発明のポリマーまたは他の材料、例えば金属のうちいずれかからなる移植可能な用具、特にステントの表面上のコーティングへと形成される。このようなコーティングは、ディッピング法、スプレーコーティング、それらの組み合わせなどのような技術により、ステント上に形成されうる。
【0348】
他の用途
本発明の実施形態による、前記好ましいポリマーに関連する特性の非常に有利な組み合わせは、ステントの他に様々な医療用具、特に、好ましくは放射線不透過性で生体適合性があり、様々な生体吸収時間を有する、移植可能な医療用具の製造用に十分適している。例えば、いくつかの実施形態では、前記ポリマーは、整形外科、再生医療、歯科用途、創縫合、胃の保護バンド、薬物送達、癌の処置、他の心臓血管用途、及び胆汁、食道、膣、肺の気管/気管支などのような非心臓血管ステントに対して移植可能な用具の製造用に適当であると、本出願人は認識している。更に、前記ポリマーは、例えば、創縫合用に適当な止め金及びクリップ、組織を骨及び/または軟骨に接着すること、出血を止めること(ホメオスタシス)、卵管結紮、外科的接着予防などだけでなく、癌性組織及び器官の除去において、移植可能で放射線不透過性のディスク、プラグ、及び組織除去の領域を追跡するのに用いられる他の用具を製造するのに適している。本発明のポリマーが、ステントに加えて医療用具、特に移植可能な医療用具用の様々なコーティングを製造するのに十分適していることも、本出願人は認識している。
【0349】
更に、いくつかの好ましい実施形態では、本ポリマーは、前十字靱帯(ACE)、腱板/回旋カップ(rotator cup)及び他の骨格の変形の矯正、予防、復元及び修復を含む用途で、例えば、放射線不透過性で生分解性のスクリュー(干渉スクリュー)、放射線不透過性で生分解性の縫合錘などを含む、様々な整形外科の用具を作る際に有利に用いられうる。
【0350】
本発明のポリマーから有利に形成可能な他の用具としては、再生医療で用いられる用具が挙げられる。適当な用具の例としては、(血管のグラフト、神経再生に用いられるグラフトまたは移植片のような)再生医療の骨組(scaffold)及びグラフトが挙げられる。本ポリマーは、体内の傷をふさぐのに効果的に用いられる様々な用具の形成に用いられてもよい。例えば、様々な外科的、化粧品の用途、及び心臓の創縫合に用いられる、生分解性の縫合糸、クリップ、止め金、有刺状または網状の縫合糸、移植可能な器官支持体などが形成されうる。
【0351】
歯科用途で用いられる様々な用具は、本発明の好ましい態様により有利に形成されうる。外科医/歯科医が単純なX線画像によってそのような移植片の配置及び持続機能を解明できるように、例えば、誘導された組織再生に対する用具、義歯装着者に対する歯槽堤の再配置、及び上顎−顔面の骨の再生に対する用具は、放射線不透過性により有利となりうる。
【0352】
本ポリマーは、肥満の治療に用いられる胃の保護バンドの製造においても有用である。放射線不透過性保護バンドの製造は、人間の体内での前記用具のより効果的なモニタリング、及び肥満のより効果的な治療をもたらす。
【0353】
血管内のステント及び非心臓血管のステントに加えて、本ポリマーは、多くの他の心臓血管及び血管の用具に有用である。例えば、弁、腱索の再配置、弁形成リング、小葉修復パッチ、血管のグラフト、血管、中隔欠損に対するパッチ、動脈及び静脈アクセス閉鎖用具(プラグ)などは、心臓弁、管などの再配置修復用に形成可能である。更に、人工心臓の部分、例えば粗い表面/線維性層(ベローポンプ)が、本発明のポリマーで形成されてもよい。
【0354】
本ポリマーは、非常に多様な治療上の運搬用具の製造に更に有用である。このような用具は、例えば、従来定義されているような医薬品(すなわち薬剤)及び/または生物剤、並びに生分子、遺伝物質及び加工された生体物質などを含む様々な治療上での使用に適合しうる。治療薬を体に運搬可能なあらゆる輸送システムが構築可能であり、癌、血管内の問題、歯の問題、肥満、感染などの治療における治療上の運搬のための用具を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるいかなる上記用具も、(他のいかなる機能に加えて)治療上の運搬用具としての使用に適合しうる。調節された治療上の運搬システムが調製されてもよく、該システムにおいて、生物学的または薬学的に活性の及び/または非活性の薬剤は、高分子マトリックス中に物理的に組み込まれるか若しくは分散するか、または本発明のポリカーボネート若しくはポリアリーレートと物理的に混合される。調節された治療上の運搬システムは、これらのポリマーをコーティングとして使用することなく、すなわち前記コーティングの代わりに他のポリマーまたは物質の使用によって、治療薬を、(少なくとも一の本ポリマーからなる)生体吸収性ステント用具の表面に直接塗布することによっても調製されうる。
【0355】
治療上の運搬用途で、本発明の放射線不透過性で生体吸収性のポリマーを用いることについての一つの主な利点は、治療薬の放出及び移植可能な治療上の運搬システムの存在をモニタリングすることについての容易性である。高分子マトリックスの放射線不透過性は、共有結合したハロゲン置換基によるので、放射線不透過性のレベルは、移植後、任意の時期に移植部位に依然として存在する、分解した治療上の運搬マトリックスの残量に直接関連する。好ましい実施形態では、分解した治療上の運搬システムからの治療薬の放出速度は、ポリマー再吸収の速度と相関があるだろう。このような好ましい実施形態では、X線不透過像の残留度(residual degree)についての単純な定量的測定は、移植された治療上の運搬システムからの治療薬の放出のレベルをモニタリングする方法を担当医に提供することとなる。
【0356】
下記で説明される以下の無制限な例は、本発明のいくつかの態様を実証する。全ての部及び百分率は、別段の記載がない限り重量単位であり、全ての温度は摂氏である。
【実施例】
【0357】
実施例
使用される用語及び略語
以下の略語は、様々なヨウ化化合物を同定するために用いられる。TEはチロシンエチルエステルを表し、DATはデスアミノチロシンを表し、DTEはデスアミノチロシルチロシンエチルエステルを表す。DTEのホスゲン化によって得られるポリマーは、ポリ(DTEカーボネート)として示される。略語の前の「I」は、モノヨウ化(例えば、ITEはモノヨウ化TEを表す)を示し、略語の前のIは、ジヨウ化(例えば、IDATはジヨウ化DATを表す)を示す。DTEにおいて、もし「I」がDの前にあれば、それは、ヨウ素がDAT上にあることを意味し、もし「I」がDの後にあれば、それは、ヨウ素がチロシン環上にあることを意味し(例えば、DITEは、チロシン環上に2つのヨウ素原子を伴うDTEを表す)。以下の図式はこの用語を更に明らかにする。
【0358】
【化75】

【0359】
引張試験
試験は、適当なロードセルとともにEndura TEC EMSを用いて行われ、WinTest Software Version 2.22(ミネトンカ、ミネソタ州)及びASTM D882−02 Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheetingによって実行した。端的に言えば、インビボ条件でシミュレーションするために、薄膜サンプルは、0−315℃の範囲の校正温度で、PHI Tulip lab press(モデルQ230)を用いるThermal Press Methodを用いて製造された。前記薄膜は、リン酸緩衝食塩水で30分間水和し、その後浸漬中に引張試験を行った。データを収集し、pH7.4のASTM D 882−02によって解析し、弾性率、降伏点、降伏強度、降伏伸びの割合、最大引張及び最大伸長を得た。
【0360】
再吸収試験
Abramson et alの「ポリマー構造における小さな変化は、分解速度を劇的に増加することができる:チロシン由来のポリカーボネートの特性に関する遊離カルボン酸基の効果」(Sixth World Biomaterials Congress Transactions、Society for Biomaterials 26th Annual Meeting、要約1164(2000))であって、その開示は参照することにより本明細書に引用される、上記文献に示された材料及び方法を用いて、ポリマー分解速度をインビボ及びインビトロで測定された。
【0361】
実施例1:3,5−ジヨード−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸(3,5−ジヨードデスアミノチロシン、IDAT)の調製
50g(0.300mol)のDATを、500mLの95%エタノール中に溶解させる。得られた溶液に対して攪拌しながら146g(0.605mol)のPyIClを添加した。前記溶液は30分間攪拌すると、その固体はゆっくり溶解して淡黄色の溶液をもたらした。これを、30分超かけて、10gのチオ硫酸ナトリウムを含む2.5リットルの水に添加した。前記水を、この添加の間攪拌した。オフホワイトの固体を分離し、濾過により単離し、いくらかの量の脱イオン水で洗浄した。
【0362】
前記固体を、2Lの脱イオン水及び24gの水酸化ナトリウムの入った大きなビーカーに移し、攪拌し溶解した。上記の濾液を、35mLの酢酸(pH約4)で酸性化した。得られた白色の固体を濾過により単離し、いくらかの量の水で洗浄した。ゴム製のダムを用いて、水分を全て排除した。得られた固体を窒素雰囲気下、続いて真空下で乾燥した。得られた乾燥固体を、1:2の比率のアセトンと水で再結晶化することにより精製した。50gのクルードIDATを得て、HPLC及びH NMRで特徴づけを行った。
【0363】
実施例2及び3:ジヨウ化−DTE(IDTE)の調製:
DATに代えてIDATを用いることにより、文献に開示されたものに類似する手段を用いて、ジヨウ化モノマー(IDTE)を調製した。典型的な手段では、53.3g(0.255mol)のチロシンエチルエステル、104g(0.250mol)のIDAT、及び3g(0.025mol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを、1リットルの丸底フラスコ中で、500mLのテトラヒドロフランと攪拌した。前記フラスコを氷水の槽内で10〜18℃まで冷却し、50g(0.255mol)のEDCIを添加し、15〜22℃で1時間攪拌した。その後、5時間室温で攪拌した。反応混合物を250mLまで濃縮し、その後1Lの水及び1Lの酢酸エチルを用いて攪拌した。分液漏斗を用いて、下側の水層を分離し捨てた。有機層をその後、0.4MのHCl、5%ナトリウムジカーボネート溶液及び20%塩化ナトリウム溶液をそれぞれ500mLずつ用いて洗浄した。無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、前記有機層をシロップ状になるまで濃縮し、ヘキサンと攪拌することにより粉末化した。黄淡色の固体を得た。産物をHPLC及びH NMRで特徴づけした。類似した手段を用いて、IDAT及び市販のチロシンt−ブチルエステル(TtBu)を結合させることにより、IDTtBuを調製した。
【0364】
実施例4及び5:ヨードチロシンエステルの調製
3−ヨードチロシンエチルエステル(ITE)及び3,5−ジヨードチロシンエチルエステル(ITE)を、エタノール及び塩化チオニルでエステル化することによって、対応するヨードチロシンから調製した。ヨードチロシンは実施例1の方法によって調製した。
【0365】
実施例6−11:他のヨウ化ジフェノールモノマー
実施例2−3の方法により、以下の2つのフェノール試薬の組み合わせを結合することによって、他の多数のヨウ化モノマーを調製した。以下に、調製されたモノマーを記載する:
DITE:DAT及びITE
IDITE:IDAT及びITE
DTE:IDAT及びTE
DITE:DAT及びITE
DTtB:IDAT及びTtB
DITE:IDAT及びITE
図4a−bは、放射線不透過性で生体吸収性のジヨード及びトリヨードチロシン由来のポリカーボネート膜のX線比較を示す。ポリ(IDITE−コ−20%PEG2k)カーボネート114ミクロン膜は、人間の骨と同等の光密度(photo−density)を有する。ポリ(80%IDTE−コ−20%PEG2k)カーボネートの場合はより低い光密度を有する。
【0366】
実施例12:ヨウ素及びポリ(エチレングリコール)を含むポリマー
97.5モル%のIDTE及び2.5%の分子量2000のポリ(エチレングリコール)を含むポリマー(ポリ(97.5%IDTE−コ−2.5%PEG2kカーボネート))を以下のように調製した。機械式のスターラー、温度計、還流冷却器及びラバーセプタムを設置した3つ口の丸底フラスコ中に、29.7g(0.0488mol)のIDTE、2.5g(0.00125mol)のPEG2000及び215mLの塩化メチレンを添加した。攪拌したところ、澄んだ淡黄色溶液が得られた。この溶液に、15.1mL(0.15mol)のピリジンを添加した。気密性のプラスチック製シリンジ中に、ホスゲンのトルエン溶液(20%)30mL(0.0576mol)を入れ、前記溶液を、シリンジポンプを用いて3時間超かけて、反応フラスコに添加した。一定分量の反応混合物をGPCで解析することにより、分子量を測定した。所望の分子量に達するように、更なるホスゲン溶液(10%以下)を添加した。前記反応混合物を110mLのテトラヒドロフラン及び10mLの水で急冷した。高速のワーリングブレンダー(Waring blender)中で、前記反応混合物を1.5Lの冷2−プロパノールに加えることによって、前記ポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを、2回分に分けた0.5Lの2−プロパノールで粉末化した。微粒状のポリマー粒子を濾過により単離し、真空オーブンで乾燥した。
【0367】
実施例13及び14:ポリ(DTEカーボネート)及びポリ(I−DTEカーボネート)の調製
−DTEに代えてDTE及びI−DTEをそれぞれ用いて、ポリ(DTEカーボネート)及びポリ(I−DTEカーボネート)を実施例12の方法により調製した。
【0368】
実施例15:ステント調製用のポリマー
以下の実施例は、一般にステント調製に用いられるポリ(87.5%IDTE−コ−10%IDTtBu−コ−2.5%PEG2Kカーボネート)の調製に関する。機械式のスターラー、温度計、還流冷却器及びラバーセプタムを設置した3つ口の丸底フラスコ中に、26.6g(0.044mol)のIDTE、3.20g(0.005mol)のIDTtBu、2.5g(0.00125mol)のPEG2000、及び215mLの塩化メチレンを添加した。攪拌したところ、澄んだ淡黄色溶液が得られた。この溶液に、15.1mL(0.15mol)のピリジンを添加した。気密性のプラスチック製シリンジ中に、ホスゲンのトルエン溶液(20%)を30mL(0.0576mol)入れ、シリンジポンプを用いて3時間超かけて、反応フラスコに添加した。一定分量の反応混合物をGPCにより解析することによって、分子量を測定した。所望の分子量に達するために、更なるホスゲン溶液(10%以下)を必要とした。前記反応混合物を110mLのテトラヒドロフラン及び10mLの水で急冷した。高速のワーリングブレンダー中で、前記反応混合物を1.5Lの冷2−プロパノールに添加することにより、前記ポリマーを沈殿させた。得られた膠質のポリマーを2回分に分けた0.5Lの2−プロパノールで粉末化した。微粒状のポリマー粒子を濾過により単離し、真空オーブンで乾燥した。
【0369】
実施例16:t−ブチル側鎖の脱保護
t−ブチル保護基を除去するために、上記で調製した25gのポリ(87.5%IDTE−コ−10%IDTtBu−コ−2.5%PEG2Kカーボネート)を、125mLのトリフルオロ酢酸(TFA)と攪拌し、20%溶液を得た。全てのポリマー粒子を溶液に入れた後、室温で4時間、攪拌を続けた。高速のワーリングブレンダー中で、得られた溶液を1リットルの2−プロパノールに添加することにより、ポリマーを沈殿させた。微量のTFAを除去するために、500mLの2−プロパノールで2回、得られたポリマー粒子を粉末化した。得られた産物を濾過により単離し、IPAで洗浄し、40℃の真空オーブンで乾燥した。
【0370】
実施例17−19:ポリ(DTE−コ−PEGカーボネート)の調製
−DTE及びI−DttBuの両方に代えてDTEを用い、PEG2000に代えてPEG1000を用い、化学量論を、PEGのモル比を増やすように調整して、実施例15の方法により、ポリ(DTE−コ−5%PEG1kカーボネート)を調製した。同じ手段を用いて、ポリ(IDTE−コ−2.5%PEG2000−カーボネート)及びポリ(IDTE−コ−3.4%PEG2000−カーボネート)を調製した。
【0371】
実施例20−25:ポリ(DTE−コ−DTカーボネート)の調製
PEGの使用を省き、DTE対DTの所望の比を得るように化学量論を調整して、ポリ(63%DTE−コ−37%DTカーボネート)を実施例15の方法により調製した。実施例16の方法により、t−ブチル基を脱保護した。前記方法により、ポリ(90%DTE−コ−10%DTカーボネート)、ポリ(85%DTE−コ−15%DTカーボネート)、ポリ(83%DTE−コ−17%DTカーボネート)、ポリ(76%DTE−コ−24%DTカーボネート)及びポリ(75%DTE−コ−25%DTカーボネート)も調製した。
【0372】
実施例26:ポリ(IDTE−コ−2.5モル%PEG2kのアジピン酸塩)の調製
ジフェノールIDTE(2.97g、4.87mmol)、PEG2000(0.250g、0.125mmol)及びアジピン酸(0.731g、5.04mmol)及び0.4gのDPTS(ジメチルアミノピリジル−パラトルエンスルホン酸塩、触媒)を、テフロンラインのキャップ(Teflon−lined cap)を伴う100mLの茶色のボトル中に秤量した。前記ボトルに40mlの塩化メチレンも添加し、安全にキャップした。前記ボトルを10〜15分間攪拌し、その後2.5mL(2.02g、16mmol)のジイソプロピルカルボジイミドを添加し、2時間攪拌し続けた。一定分量のサンプルを回収し、適切な処置後にGPCで解析した。約100,000のMwが望ましい。一旦、所望のMwに達した後、200mLの2−プロパノールを攪拌しながら前記反応混合物に添加した。得られた沈殿物を回収し、窒素気流下で乾燥した。得られた沈殿物をその後、20mLの塩化メチレン中に溶解させ、200mLのメタノールで沈殿させた。その後、前記ポリマーを窒素雰囲気下で乾燥し、続けて真空オーブンで乾燥した。
【0373】
実施例27:ポリ(60%IDTE−コ−20%IDT−コ−20%PEG2kのアジピン酸塩)の重合
ジオール成分(1.83gで3.00mmolのIDTE、0.638gで1.00mmolのIDTtB、及び2.000gで1.00mmolのPEG2000)、並びに二塩基酸(0.731gで5mmolのアジピン酸)及び0.4gのDPTSを、テフロンラインのキャップを伴う100mLの茶色のボトル中に秤量した。前記ボトルに40mlの塩化メチレンも添加し、安全にキャップした。前記ボトルを10〜15分間攪拌し、その後2.5mL(2.02g、16mmol)のジイソプロピルカルボジイミドを添加し、2時間攪拌し続けた。一定分量のサンプルを回収し、適切な処置の後、GPCで解析した。約100,000のMwが望ましい。一旦所望のMwに達した後、200mLの2−プロパノールを前記反応混合物に攪拌しながら添加した。前記沈殿物を回収し、窒素気流下で乾燥した。その後、得られた沈殿物を20mLの塩化メチレンで溶解し、200mLのメタノールで沈殿させた。その後、得られたポリマーを窒素雰囲気下で乾燥し、続けて真空オーブンで乾燥した。
【0374】
脱保護:得られたポリマーをトリフルオロ酢酸(10%w/v)に溶解させ、一昼夜攪拌した。次の日に、攪拌にブレンダーを用いて、得られたポリマーをイソプロパノールで沈殿させた。得られたポリマーをその後、新鮮なイソプロパノールで2回粉末化し、洗浄と次の洗浄との間にフリットフィルターで濾過した。その後、得られたポリマーを窒素雰囲気下で乾燥し、続けて真空オーブンで乾燥した。
【0375】
実施例28:ポリ(IDTE−コ−2.5モル%PEG2kのセバシン酸塩)の調製
ジフェノールIDTE(2.98g、4.89mmol)、PEG2000(0.250 g、0.125mmol)及びセバシン酸(1.01g、5.00mmol)及び0.4gのDPTSを、テフロンラインのキャップを伴う100mLの茶色のボトル中に秤量した。前記ボトルに、40mlの塩化メチレンも添加し、安全にキャップした。前記ボトルを10〜15分間攪拌し、その後、2.5mL(2.02g、16mmol)のジイソプロピルカルボジイミドを添加し、2時間攪拌し続けた。一定分量のサンプルを回収し、適切な処置の後、GPCで解析した。約100,000のMwが望ましい。一旦、所望のMwに達した後、200mLの2−プロパノールを前記反応混合物に攪拌しながら添加した。得られた沈殿物を回収し、窒素気流下で乾燥した。その後、得られた沈殿物を20mLの塩化メチレンで溶解し、200mLのメタノールで沈殿させた。その後、得られたポリマーを窒素雰囲気下で乾燥し、続けて真空オーブンで乾燥した。
【0376】
上記の要求を全て満たすことのできる最適化したポリマー組成を発見することを目的に、本出願人は詳細な研究を行った。鍵となる発見を下記の表1に示す。
【0377】
【表1】

【0378】
(f=0、g=0、X=Y=0、R=エチル及びA=−C(=O)−の場合の化学式Iで表される)ポリ(DTEカーボネート)が、生体吸収性ステントの製造用として有望な候補材料となるのに十分に強固であることを、表1は実証している(1行目を参照)。しかし、この材料は、放射線不透過性ではなく、十分に血液適合性でもない。上記で概説したように、ヨウ素置換基の導入が、前記ポリマーの機械強度を減少させる。モノヨウ化(2行目)で、前記ポリマーは、有用なステント材料となるのに依然として十分強固であるが、X線透視装置によって可視となるのに十分なほど、放射線不透過であるわけではない。2つのヨウ素原子を前記ポリマー構造中に組み込むと、得られるポリマーは十分に放射線不透過性ではあるが、その機械強度はもはや不十分である(3行目)。同様に、PEGを前記ポリマー骨格に組み込む(f=0.05)と、得られるポリマーは劇的に弱くなる(4行目)。実際、わずかに5mol%のPEGでも、ポリマーの強度及び剛性が50%減少することとなり、それ自体で用いる場合に、ステント材料としての更なる考慮より、相当するポリマーを完全に不適格であるとみなす;ラミネート及びマルチポリマーのステント設計は、特定の設計目的のためにこのようなポリマーを用いてもよい。
【0379】
かような背景に対して、ヨウ素及び低百分率のPEGをともに、前記ポリマー中に組み入れることは、前記ポリマーの機械特性を顕著に向上させることについての非自明であって完全に予期せぬ効果を有するということを本出願人は現在発見している(表1の5行目を参照)。ポリマー科学の技術分野の当業者は、自信を持って相乗効果を予測しうる:PEG及びヨウ素は各々独立して、前記ポリマーの機械強度を減少させるので、PEG及びヨウ素をともに、同じポリマー中に同時に組み込むことは、ヨウ素及びPEGをともに含むポリマーの機械強度の著しい減少となったはずである。この予想に反して、ヨウ素及びPEGの組み合わせでの組み込みは、結果的にポリ(DTEカーボネート)を強度及び剛性において超えたポリマー組成となる「抗相乗」効果を有する。
【0380】
表1の5行目のポリマー組成は実際、十分に機能的なステントの製造に有用であるほど十分に強固であり、動物の心臓におけるX線透視検査によって視認できるほどに十分に放射線不透過性であることを、図1は実証している。医学的に用いられるステンレス鋼のステントとの比較は、視認についての事実上同等のレベルを示している。図2A及び2Bは、PEGのないヨウ素置換基を含むポリマー組成があまりにもろいので、機能的なステントの製造が可能ではない可能性があることを実証している光学マイクロ写真である。(PEGのない)ポリ(I−DTEカーボネート)から形成されたステントのフレームが、穏やかな操作の下、複数の部位で壊れた(矢印を参照)ことを、図2Aは示す。前記ポリマーの機械特性は、PEG及びヨウ素をともに同時に前記ポリマーに組み込むことにより、劇的に向上した。ポリ(I−DTE−コ−2.5%PEG2Kカーボネート)がステントへと容易に加工されるのに十分な剛性及び展性を有することを、図2Bは示す。表1の5行目のポリマー組成はこのようにして、ステント製造に対して十分に強固で可塑性があった。
【0381】
ポリマーの機械特性に対する、DT組み込みの重要でない効果を表2は実証している。降伏強度が減少し壊れる傾向があるが、用具の再吸収の時間が劇的に減少するにも関わらず、伸長率及び弾性率は事実上、不変状態を維持している。
【0382】
【表2】

【0383】
実施例29:高分子表面へのフィブリノーゲンの吸着
テストポリマー及びステンレス鋼の表面への、ヒトのフィブリノーゲン吸着の経時変化を、Quartz Crystal Microbalance with Dissipationモニタリング(QCM−D、Q−Sense AB、モデルD300、イエーテボリ、スウェーデン)を用いて測定した。
【0384】
QCM−Dは重量法であり、表面に付着する、液体中の材料の質量をリアルタイムで測定するのに有用である。石英表面に結合する質量の増加により、結晶の振動数が減少する。更に、この用具は表面−吸着質量によって誘導される消費の変化を測定できる。
【0385】
QCM−Dは重量法であり、表面に付着する、液体中の材料の質量をリアルタイムで測定するのに有用である。石英表面に結合する質量の増加により、結晶の振動数が減少する。更に、この用具は表面−吸着質量によって誘導される消費の変化を測定できる。
【0386】
水晶(Q−Sense、Cat # QSX−301)をポリマー溶液(塩化メチレン中の1%ポリマー)でスピンコーティングした。ステンレス鋼の薄膜(Q−Sense、Cat # QSX−304)でコーティングされた、市販の水晶も用いた。典型的な実験を開始するために、前記結晶をQCM−D機器中に挿入し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中、37℃で恒温した。安定な基準に到達後、フィブリノーゲン溶液を注入し、吸着された質量によって誘導された振動数及び散逸変化をリアルタイムで記録した。(更に振動数及び散逸値に有意な変化がないことにより示されるように、)前記フィブリノーゲン溶液を結合飽和に達するまで恒温した。非結合のフィブリノーゲンをセンサー表面から除去するために、フィブリノーゲンを含まないPBSを前記吸着工程後のあらゆる洗浄段階で用いた。ヒトのフィブリノーゲンはCalbiochem(Cat 341576)から購入し、終濃度が3mg/mLとなるまでPBSで希釈した。全ての実験は、12%(標準平均誤差)未満の標準偏差で3回行った。
【0387】
以下の洗浄手段を用いることにより、水晶を10回まで再利用できる:水晶を、1:1:5の比率のH(30%)、NHOH及び超純水からなる洗浄溶液で処理(80℃、15分)した。その後、結晶を超純水で入念に洗浄し、窒素でブロー乾燥した。最後に、前記結晶をUV及びオゾンに15分間さらした(UVOクリーナー、Jelight社、アーバイン、カリフォルニア州、米国)。
【0388】
表3はインビトロでのフィブリノーゲン吸着に関する、異なるステントのポリマー製剤についての比較評価を要約する。フィブリノーゲンは、鍵となる血液タンパク質である。血液と接触する人工表面へのフィブリノーゲン吸着度は、該表面の血液適合性の傾向についての信頼性のある指標と広くみなされている。一般的なルールとして、生物医学工学の技術分野の当業者には知られていることであるが、材料上へのフィブリノーゲン吸着のレベルが低いほど、その材料の血液適合性は高い。
【0389】
【表3】

【0390】
表3を参照すると、項目1(ステンレス鋼)は、低レベルの血栓形成及び優れた血液適合性があると知られている、医学的に用いられるステント材料を表す。ステンレス鋼は制御の役目を果たし、許容できるレベルのフィブリノーゲン吸着を示す。表3の項目2はダクロン、すなわち血管の用途での医療上の利用を単に制限するにすぎない公知の血栓形成材料である。ダクロンは、全てのテスト材料の中で最大レベルのフィブリノーゲン吸着を有する。項目3は、ポリ(DTEカーボネート)、すなわち化学式Iで表されるポリマーの中のベース材料である。その高レベルのフィブリノーゲン吸着は、本ポリマーが血液に接触する医療用具用として有望な候補ではないことを示している。ヨウ素のみの導入(項目4)またはDT単位のみの導入(項目5)のいずれかは、フィブリノーゲン吸着のレベルを減少させる傾向にあるが、その減少は、これらのポリマー組成のいずれかに、ステントに用いる有望な材料としての資格を与えるのに十分であるとは言えない。
【0391】
ヨウ素、DT及びPEGの同時の導入が、機械的に強固なポリマーを提供する必要性に見合うだけのPEGレベルで、フィブリノーゲン吸着の主たる減少をもたらすことを、前述は実証している。この一般的な処方計画の中に、本出願人は更に別の予期せぬ知見を提供する:項目6及び7の比較は、ポリマー組成中の、PEG量の非常に小幅で付加的な増加が、タンパク質吸着に関して自明でなくかつ予想し得ない効果を有することを示している。ポリマー組成6へのフィブリノーゲン吸着は、この組成をステント用の有望な候補材料とみなせるほど十分低い一方で、ポリマー組成7に添加された、たった0.9mol%の付加的なPEGは、医学上用いられるステンレス鋼に対する血液適合性の点で優れているように見えるポリマー組成をもたらした。
【0392】
表3のポリマー組成7は、本出願人によって初めて認識された別の鍵となる設計原理を実証している:ヨウ素及びPEGが、化学式Iによってカバーされたポリマー組成中に付随して導入されると、非常に低モル比のPEGはフィブリノーゲンの表面吸着のレベルを劇的に減少させるのに十分である。前記ポリマー組成の機械特性に関するヨウ素及びPEGについての既に説明した効果と組み合わせて、本出願人は、ステントの用途に用いるポリマーの機械特性及び生物学的特性をともに同時に最適化する方法を発見している。
【0393】
実施例30:インビトロでの薬剤溶出速度論
これは、いくつかのポリマーからの薬剤の放出に対し決定され、物理化学的な特徴及び「シンク(sink)」状態下での37℃での溶媒抽出の必要条件に基づくものであり、溶解の均質性を確実にするための攪拌を伴うものである。ポリマー(下記の表を参照)中の治療剤(例えば、薬剤)を、金属ステントまたは金属表面上のポリマー膜の表面上にコーティングしてもよく、また、前記膜をプレスする前に、前記ポリマーに組み込み、または混合してもよい。
【0394】
膜のサイズは、薬剤負荷及び定量に対する検出限界に適合するように調節される。典型的な手段は、化合物の抽出または沈殿を含みうるものであり、続けて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた定量を行う。3%ウシ血清アルブミン(BSA)または35%Tween20のリン酸緩衝食塩水(PBS)のような適当な溶出溶媒を使用する。24時間から28日間まで、溶出を測定してもよい。溶出後、膜及び/または溶媒の薬剤量を分析する。このHPLCアッセイからの質量バランス測定を用いて、各薬剤に対して溶出速度を算出する。全体の溶出プロファイルに対する、各時点で測定した量を用いることにより、溶解した割合を算出する。
【0395】
【表4】

【0396】
表面上にコーティングされるか、またはポリマー中に組み込まれ、及び膜状に圧縮された様々なポリマーを伴う薬剤の溶出は、薬剤溶出を実証している。図3は、DAT環上でポリマーをヨウ素で修飾し、PEGをポリマーの主鎖に添加することにより、ポリ−DTE−カーボネートからの薬剤の溶出を調整することができるということを示している。SEMの試験は、スチールステントに直接塗布されたポリマーが接着し、ステント配置後でも損傷がないことを示した。SEMは、スチールまたはポリマーのステントに塗布されたポリマー−薬剤が接着し、ステント配置後でも損傷がないであろうことも実証している。金属及びポリマーのステントに塗布された薬剤を伴うポリマーは、インビボで28日間試験した場合のブタの冠動脈における生体適合性を実証し、(薬剤でコーティングされていないステントに対する)再狭窄の減少により、前記薬剤、すなわち抗増殖薬が溶出し、その効果を満たすことが示された。
【0397】
好ましい実施形態についての前述の説明は、特許請求の範囲で表されるように、本発明を制限するというよりもむしろ明らかにするものとして捉えられるべきである。上述で説明された特徴についての多数のバリエーション及び組み合わせは容易に十分理解されうるので、上述で説明された特徴についての多数のバリエーション及び組み合わせを、請求項で説明されるように、本発明から離れることなく利用できる。このようなバリエーションは、本発明の思想と範囲からの逸脱とみなされることはなく、このようなバリエーションは全て、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0398】
【図1】図1は、ブタの心臓における従来技術のスチールのステントに対する、本発明の好ましい一実施形態によるポリマーステントのX線比較を表している。
【図2】図2Aは、ポリ(I−DTEカーボネート)ステントの拡大断面図を表す光学マイクロ写真である。
【図3】図2Bは、本発明の他の好ましい実施形態による、ポリ(I−DTE−コ−2.5%PEG2Kカーボネート)ステントの拡大断面図を表す光学マイクロ写真である。
【図4】図3は、Tween20を伴うPBSへの、37℃でのポリ−DTE−カーボネートコーティングからのパクリタキセルの溶解を表す。
【図5】図4aは、本発明の好ましい一実施形態による、放射線不透過性を示す放射線不透過性の生体吸収性トリヨードチロシン由来ポリカーボネートフィルムのX線比較を表す。
【図6】図4bは、本発明の好ましい一実施形態による、放射線不透過性を示す放射線不透過性の生体吸収性トリヨードチロシン由来ポリカーボネートフィルムのX線比較を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
tert−ブチルエステル基の代わりに遊離カルボン酸基を有する新規なポリマー組成物を形成するために、加水分解に不安定なポリマーから該tert−ブチルエステル基を選択的に除去する方法であり、該加水分解に不安定なポリマーを、遊離カルボン酸基を有する新規なポリマー組成物を形成するために、酸分解によってtert−ブチルエステル基を選択的に除去するのに効果的な約0から約4までのpKaを有する酸を多く含む溶媒に溶解させることを含む、方法。
【請求項2】
該加水分解に不安定なポリマーが該溶媒に溶解する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該溶媒が実質的に該酸からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該溶媒が、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジメチルギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該酸が、ギ酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該酸がギ酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該加水分解に不安定なポリマーが、化学式IIで表される1以上の単位を含む、請求項1に記載の方法:
【化1】

前記式で、各ポリマー単位に対するXは、独立してBrまたはIであり、Yは0〜4であり、Rは、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴うアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのtert−ブチルエステル基を更に含む。
【請求項8】
該加水分解に不安定なポリマーが、約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率が約40wt%未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
全てのX基がオルト配向であり、Yが1または2である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
全てのXがヨウ素である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
がアルキル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
が下記の構造を有する、請求項12に記載の方法:
【化2】

前記式で、Rは独立して18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を伴うアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、ペンダントのt−ブチルエステル基を更に含み;R5a及びRはそれぞれ独立して、水素並びに18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を有する直鎖及び分岐のアルキル基から選択される。
【請求項14】
が下記化学式を含む、請求項13に記載の方法:
【化3】

前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、各Rはtert−ブチルエステル基である。
【請求項15】
該ポリマーが、10,000以下の分子量を有する約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率が約25wt%未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該ポリマー単位のRがアリールまたはアルキルアリール基である、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
化学式IIで表される該単位がジフェノール単位を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
がアルキルアリール基であり、該ジフェノール単位が化学式IIIで表される、請求項18に記載の方法:
【化4】

前記式で、各ポリマー単位に対するXは独立してBrまたはIであり、Y1及びY2は独立して0〜4であり、Y1+Y2は0以上8以下であり、各単位に対するRは独立して、18までの炭素原子並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rは更にペンダントのt−ブチルエステル基を含む。
【請求項20】
が下記化学式を含む、請求項19に記載の方法:
【化5】

前記式で、j及びmは独立して1〜8の整数であり、Rはtert−ブチルエステル基である。
【請求項21】
該ポリマーが約75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合している、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
該ポリ(C−Cのアルキレングリコール)の重量分率が約40wt%未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
全てのX基がオルト配向であり、Y1+Y2が1、2、3または4である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
全てのXがヨウ素である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
該加水分解に不安定なポリマーが化学式Iで定義される1以上の単位を含む、請求項1に記載の方法:
【化6】

前記式で、Xはそれぞれ独立してIまたはBrであり、各ジフェノール単位に対するY1及びY2は独立して0〜4であり、各ジフェノール単位に対するY1+Y2は0以上8以下である。
前記式で、R及びRは独立して、18までの炭素原子、並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含むアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり、Rはペンダントの遊離カルボン酸基を更に含む;
前記式で、Aは、
【化7】

であり;
前記式で、Rは、約18までの炭素原子、並びにO及びNから選択される0から8までのヘテロ原子を含む、飽和または不飽和で、置換または非置換のアルキル、アリールまたはアルキルアリール基であり;
前記式で、Pは、ポリ(C−Cのアルキレングリコール)単位であり;fは0から1未満であり;gは0〜1であり;そして、f+gは0〜1の範囲である。
【請求項26】
が下記の構造を有する、請求項25に記載の方法:
【化8】

前記式で、j及びmは独立して1から8までの整数であり、前記式で、各Rに対してサブグループRは独立して、O及びNから選択される0から5までのヘテロ原子を含む1から約18までの炭素原子を有する、直鎖または分岐のアルキル基であり;Rに対して、サブグループRはtert−ブチルエステル(tB)基である。
【請求項27】
全てのXがオルト配向であり、Y1+Y2が1、2、3または4である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
全てのX基がヨウ素である、請求項5に記載の方法。
【請求項29】
該ポリマーは、ポリカーボネート、ポリアリーレート、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドカーボネート)、ポリイミノカーボネートまたはリン含有ポリマーであり、ヨウ化置換または臭素化置換の放射線不透過性ポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項30】
該ポリマーは、ポリカーボネート、ポリアリーレート、ポリ(エステルアミド)、ポリ(アミドカーボネート)、ポリイミノカーボネートまたはリン含有ポリマーであり、75wt%までのポリ(C−Cのアルキレングリコール)と共重合してなる、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−1799(P2009−1799A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162259(P2008−162259)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【分割の表示】特願2007−525589(P2007−525589)の分割
【原出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(505421375)ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ (9)
【Fターム(参考)】