放射線信号処理装置、およびそれを備えた放射線検出器
【課題】蛍光の残光の影響を受けずに蛍光の発生位置を正確に特定するように補正することができる放射線信号処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の構成によれば、カウント比Rが算出される。このカウント比Rは、放射線検出器1の異なる2つの位置におけるγ線のカウント数の比である。このカウント比Rを繰り返し算出し続ければ、蛍光の発生の分布の変化をモニタリングすることができる。補正指示部13は、残光成分の影響のない状態で算出された標準カウント比Rと、逐次算出されるカウント比Rとを比較して、その比較結果いかんによって、位置特定部11に位置を補正する旨の指示を与える。この様にすることで、残光成分の影響によりズレてしまったγ線の入射位置(蛍光の発生位置)を補正により正しい位置とすることができる。
【解決手段】本発明の構成によれば、カウント比Rが算出される。このカウント比Rは、放射線検出器1の異なる2つの位置におけるγ線のカウント数の比である。このカウント比Rを繰り返し算出し続ければ、蛍光の発生の分布の変化をモニタリングすることができる。補正指示部13は、残光成分の影響のない状態で算出された標準カウント比Rと、逐次算出されるカウント比Rとを比較して、その比較結果いかんによって、位置特定部11に位置を補正する旨の指示を与える。この様にすることで、残光成分の影響によりズレてしまったγ線の入射位置(蛍光の発生位置)を補正により正しい位置とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消滅放射線対の検出信号を補正する放射線信号処理装置、およびそれを備えた放射線検出器に係り、特に、放射線の検出位置を補正することができる放射線信号処理装置、およびそれを備えた放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線薬剤の分布をイメージングするポジトロンエミッショントモグラフィー装置(PET)の具体的な構成について説明する。従来のPET装置は、放射線を検出する放射線検出器が円環状に並んで構成される検出器リングが備えられている。この検出器リングは、被検体内の放射性薬剤から放出される互いが反対方向となっている一対のγ線(消滅放射線対)を検出する。
【0003】
放射線検出器51の構成について説明する。放射線検出器51は、図9に示すように、シンチレータ結晶が3次元的に配列されたシンチレータ52と、シンチレータ52に吸収されたγ線から発した蛍光を検出する光検出器53とを備えている。光検出器53は、検出素子がマトリックス上に配列された検出面を備えている。そして、光検出器53の検出面とシンチレータ52の一面とが光学的に接続されている(特許文献1参照)。
【0004】
シンチレータ52に入射した放射線は、多数の光子に変換されて光検出器53に向かう。このとき、光子は、空間的に広がりながらシンチレータ52の内部を進んでマトリックス上に配列された光検出器53の各々の検出面に入射する。つまり、蛍光による多数の光子は、複数の検出素子に同時に分配され検出されることになる。
【0005】
放射線検出器51は、複数の検出素子によって捕捉された蛍光の検出データを用いてシンチレータ2のどこで蛍光が発したのかを知る構成となっている。すなわち、放射線検出器51は、複数の検出素子により検出面における蛍光の光束の重心の位置を求めるのである。この重心の位置こそが蛍光の発生した位置を意味している。この位置データは、被検体の放射性薬剤をマッピングするときに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−279057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の放射線の検出には次のような問題点がある。すなわち、放射線検出器51に入射する放射線の線量が多くなると、蛍光の発生位置の特定が不正確となる問題点がある。
【0008】
この問題は、蛍光の光束の重心の算出方法に関係があるので、この算出方法について説明する。簡単のため、光検出器53の検出面は、図10に示すように2×2の検出素子から構成されているものとする。検出素子a1……a4から出力された蛍光の検出信号をA1……A4とする。A1……A4は、各検出素子a1……a4が検出した蛍光の強度を示している。蛍光の光束のx方向における重心の位置Xは、中心の位置を原点として、次のように表される。
X={(A1+A3)−(A2+A4)}/{(A1+A2+A3+A4)}……(1)
【0009】
(A1+A3)をXa,(A2+A4)Xbとすると、X=(Xa−Xb)/(Xa+Xb)の関係が成り立つ。
【0010】
同様に、蛍光の光束のy方向における重心の位置Yは、a5の位置を原点として、次のように表される。
Y={(A1+A2)−(A3+A4)}/{(A1+A2+A3+A4)}……(2)
【0011】
(A1+A2)をYa,(A3+A4)Ybとすると、Y=(Ya−Yb)/(Ya+Yb)の関係が成り立つ。
【0012】
放射線検出器51に入射する放射線の線量が多くなると、蛍光の検出強度が見かけ上大きくなる現象が発生する。次は、この現象について説明する。図11は、検出素子が検出する蛍光の時間的な変化を表している。シンチレータで発した蛍光は、弱いながらもしばらくは検出素子を照らし続ける。放射線検出において、この様な残光の消失まで考慮すると蛍光の検出にかかる時間が長くなりすぎるので、放射線検出器51は、この残光を無視して蛍光を測定する。すなわち、放射線検出器51は、図11に示すように、ある期間Pに検出素子a1……a4が出力した検出強度を時間で積分して、蛍光の検出強度A1……A4を算出する。このとき残光は蛍光の検出強度として加味されない。
【0013】
放射線検出器51に入射する放射線の線量が多くなると、前の蛍光の残光が消滅し終わらないうちに次の蛍光が発せられる。つまり、時間的な幅を有する蛍光同士が経時的にオーバーラップすることになる。すなわち、図12に示すように、蛍光の検出強度を算出する際に、Sで示す残光成分が足し合わされてしまう。
【0014】
この様な現象は、検出強度A1……A4のうちの全てで発生する。Xa,Xb,Ya,Ybに係る残光成分をそれぞれα,β,δ,γで表すと、残光成分存在下で算出される重心の位置X,Yは次のようになる。
X={(Xa+α)−(Xb+β)}/{(Xa+α)+(Xb+β)}……(3)
Y={(Ya+γ)−(Yb+δ)}/{(Ya+γ)+(Yb+δ)}……(4)
【0015】
残光成分α,β,δ,γは、ほぼ同じ値をとるので、式3,式4の分子の残光成分は、相殺される。しかし、式3,式4の分母における残光成分は消去されず、むしろ足し合わされて増幅される。従って、位置X,Yの値は、残光成分の影響を受けて、実際とは異なる値となってしまう。具体的には、残光成分の存在は、式3,式4における分母を大きくし、位置X,Yの値の絶対値を小さくしてしまう。
【0016】
残光成分が重心の位置マッピングにどのような影響を与えるかを説明する。今、シンチレータ2を構成するシンチレータ結晶の各々の中心から蛍光が発せられたとする。図13に示す点pがこのときの蛍光の発生位置である。残光成分の影響を受けない場合、放射線検出器51は、図13に示すとおりに蛍光の発生位置を特定する。
【0017】
検出される蛍光に残光成分が含まれていると、放射線検出器51は、図13に示す蛍光の発生位置を正しく特定することができない。すなわち、残光の影響により、式3,4に示すX,Yの値の絶対値が見かけ上、小さくなってしまう。すると、図14に示すように、算出される蛍光の発生位置がシンチレータ2の中心側に見かけ上ずれ、蛍光の発生の分布が縮小する。この様に、従来の技術によれば、蛍光の残光によって、蛍光の発生位置を正確に特定することができない。
【0018】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射線検出器において、蛍光の残光の影響を受けずにγ線の入射位置を正確に特定するように補正することができる放射線信号処理装置、およびそれを備えた放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線信号処理装置は、放射線を蛍光に変換するシンチレータを有する放射線検出器から出力された検出データを受信して、これを基に放射線検出器における放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、放射線検出器の異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたカウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、標準カウント比記憶手段より標準カウント比を読み出して、これとカウント比とを比較することで、位置特定手段に放射線の発生位置の補正の実行を指示する補正指示手段とを備え、カウント比算出手段、および補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]本発明の構成によれば、カウント比が算出される。このカウント比は、放射線検出器の異なる2つの位置における放射線のカウント数の比である。この位置としては、例えば、放射線検出器の視野範囲における一番外側の領域と、その領域よりも視野範囲の内側に存する領域である。このカウント比を繰り返し算出し続ければ、蛍光の発生の分布の変化を逐次モニタリングすることができる。検出される蛍光同士の経時的にオーバーラップすることにより、残光成分の影響が放射線の入射位置特定に影響を及ぼすようになると、カウント比が変動する。より具体的には、カウント比は、蛍光の発生の分布の縮小が激しいほど激しく変化する。補正指示手段は、残光成分の影響のない状態で算出された標準カウント比と、逐次算出されるカウント比とを比較して、その比較結果いかんによって、位置特定手段に位置を補正する旨の指示を与える。この様にすることで、残光成分の影響によりズレた放射線の入射位置を補正により正しい位置とすることができる。補正指示手段は、この様な比較と補正の指示を一定時間おきに繰り返す。この様にすれば、放射線の入射位置は徐々に補正され、確実に正しい位置となる。
【0021】
また、上述の放射線信号処理装置において、カウント比算出手段は、カウント比を放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に算出し、標準カウント比記憶手段は、標準カウント比を放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に記憶し、補正指示手段は、カウント比と標準カウント比とを放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に比較し、位置特定手段は、放射線の発生位置を放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に補正すればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、カウント比算出手段、標準カウント比記憶手段、補正指示手段、位置特定手段の具体的な動作について示すものである。すなわち、各手段は、放射線検出器における縦方向と横方向とについて、カウント比を用いた補正を個別に行う。これにより、放射線信号処理装置は、放射線検出器の縦横で残光成分の影響が異なる場合であっても、的確に位置の補正を行うことができる。
【0023】
また、上述の放射線信号処理装置において、カウント比算出手段は、カウント比の算出を0.001秒以上の間隔で繰り返し、補正指示手段は、補正の指示をカウント比算出手段の動作と同じ間隔で繰り返せばより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、補正指示手段の具体的な構成を示している。カウント比を正確に算出するには、ある程度十分な数のカウント数が必要となる。カウント比算出手段が0.001秒以上の間隔でカウント比の算出を繰り返すようにすれば、カウント比は、十分に信頼できる値となる。
【0025】
また、上述の放射線信号処理装置において、標準カウント比記憶手段が記憶する標準カウント比は、放射線検出器の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となっている条件でカウント比の算出を行うことで得られたものであればより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、標準カウント比記憶手段の具体的な構成を示している。標準カウント比記憶手段が記憶する標準カウント比は、放射線検出器の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率であれば、標準カウント比の算出としては十分であり、信頼性の高い標準カウント比が取得できる。
【0027】
また、本発明に係る放射線検出器は、放射線を蛍光に変換するシンチレータ結晶が2次元的に配列されたシンチレータと、蛍光を検出する光検出器と、光検出器から出力された検出データを受信して、これを基にシンチレータにおける放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、シンチレータの異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたカウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、標準カウント比記憶手段より標準カウント比を読み出して、これとカウント比とを比較することで、位置特定手段に放射線の発生位置の補正を実行させる補正指示手段とを備え、カウント比算出手段、および補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とするものである。
【0028】
上述の構成は、本発明の放射線信号処理装置を放射線検出器に組み込んだ構成を示している。放射線信号処理装置を構成する位置特定手段、カウントデータ記憶手段、カウント比算出手段、標準カウント比記憶手段、補正指示手段を備えた放射線検出器によれば、蛍光の残光成分に影響されず放射線の入射位置を的確に特定することができる放射線検出器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係る放射線信号処理装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る光検出器の構成を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る放射線信号処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施例1に係る放射線信号処理装置の動作を説明する模式図である。
【図9】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図10】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図11】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図12】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図13】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図14】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【実施例1】
【0030】
以降、本発明に係る放射線信号処理装置、および放射線検出器の実施例について説明する。γ線は放射線の一例である。
【0031】
<放射線信号処理装置、および放射線検出器の全体構成>
図1に示すように、実施例1に係る放射線検出器1は、シンチレータ結晶Cが縦横に配列されて構成されたシンチレータ2と、シンチレータ2の下面に設けられ、シンチレータ2から発する蛍光を検知する光検出器3と、シンチレータ2と光検出器3との間に介在する位置に配置されたライトガイド4とを備える。シンチレータ結晶Cの各々は、Ceが拡散したLu2(1−X)Y2XSiO5(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。
【0032】
光検出器3は、マルチアノードタイプであり、入射した蛍光のx,およびyについての位置を弁別することができる。より具体的には、光検出器3は、図2に示すように、縦横に検出素子3aがマトリックス状に配列された検出面3bを有し、この検出面3bがシンチレータ2と光学的に接続されている。蛍光が発生すると、検出素子3aの各々は、蛍光の強度を示す強度的データを出力する。光検出器3は、このデータにどの検出素子3aが検出したのかを示す情報を付加して、位置特定部11に出力する(図1参照)。したがって、光検出器3から出力された検出データには、蛍光の強度情報と位置情報との両方が含まれることになる。位置特定部11は、本発明の位置特定手段に相当する。
【0033】
ライトガイド4は、シンチレータ2で生じた蛍光を光検出器3に導くために設けられている。したがって、ライトガイド4は、シンチレータ2と光検出器3とに光学的に結合されている。
【0034】
放射線検出器1は、光検出器3から出力された検出データを受信して、これを基に、蛍光がシンチレータ2のどこから発せられたかを特定する位置特定部11と、位置特定部11から出力された位置情報を基に、後述のカウント比Rを算出するカウント比算出部12と、カウント比Rを基に、位置特定部11に対しγ線の発生位置の補正を実行させる補正指示部13とを備えている。カウント比算出部12は、本発明のカウント比算出手段に相当し、補正指示部13は、本発明の補正指示手段に相当する。
【0035】
記憶部35は、放射線検出器1の制御に関するパラメータ、テーブル、マップ等の一切を記憶する.記憶部35は、位置特定部11が出力した位置情報を蓄積するカウントデータ記憶部35aと、後述の標準カウント比Rstを記憶する標準カウント比記憶部35bとを備えている。カウントデータ記憶部35aは、本発明のカウントデータ記憶手段に相当し、標準カウント比記憶部35bは、本発明の標準カウント比記憶手段に相当する。
【0036】
放射線検出器1は、各部を統括的に制御する主制御部21を備えている。この主制御部21は、CPUによって構成され、各種プログラムを実行することにより、各部11,12,13を実現する。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0037】
位置特定部11,カウント比算出部12,補正指示部13,主制御部21,記憶部35により、放射線検出器1の光検出器3が出力するデータを処理する放射線信号処理装置9を構成する。放射線信号処理装置9は、少なくとも、放射線検出器1におけるγ線の入射位置を特定できるようになっている。
【0038】
<標準カウント比Rstの取得>
標準カウント比Rstについて説明する。標準カウント比Rstは、診断などに放射線検出器1を用いる前に予め測定しておくものである。この標準カウント比Rstは、十分に線量の少ない放射線源を放射線検出器1の前に置いた状態で十分な時間をかけて取得される。
【0039】
このとき検出される蛍光について説明する。図3は、ある検出素子3aが蛍光を検出する様子を示している。シンチレータ2にγ線が入射すると、シンチレータ2の内部でγ線が蛍光に変換される。図3は、シンチレータ2に異なるタイミングで2つのγ線が入射した場合を示している。発生した蛍光は、すぐに消失することなく、しばらくは、残光として検出素子3aに検出し続けられる。標準カウント比Rstの取得に際しては、γ線の入射する線量が十分に少ないので、残光が消滅してから次の蛍光が発生する。この様に、標準カウント比Rstは、検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたものである。
【0040】
放射線検出器1は、この残光を無視して蛍光を測定する。すなわち、放射線検出器1は、図3に示すように、ある期間Pに検出素子3aが出力した検出強度(図3における斜線部)を時間で積分して、蛍光の検出強度を算出する。
【0041】
位置特定部11は、光検出器3から出力された検出データを受信して、これを基に、蛍光がシンチレータ2のどこから発せられたかを特定する。具体的には、蛍光がシンチレータ2から発せられるごとに、蛍光の検出強度が検出素子3aの位置に対応させたマップを生成する。このマップを基に、蛍光の発生位置を示す位置情報を取得する。
【0042】
この蛍光の位置情報の取得方法について説明する。図4に示すように検出面3bの中心点を原点とし、蛍光の発生位置はこれを基準に示すものとする。原点から見て左側の領域をRXaとし、原点から見て右側の領域をRXbとする。原点から見て上側の領域をRYaとし、原点から見て下側の領域をRYbとする。
【0043】
位置特定部11は、所定の重み付け演算をしながら領域RXa,領域RXb,領域RYa,領域RYbの4領域について検出素子3aが出力した蛍光の検出強度を合計して合計値Xa,Xb,Ya,Ybを取得する。そして、位置特定部11は、蛍光の発生位置(X,Y)を、次の式で算出する。
X=(Xa−Xb)/(Xa+Xb)……(5)
Y=(Ya−Yb)/(Ya+Yb)……(6)
【0044】
位置特定部11は、蛍光の発生位置を特定する度に式5,6を用いて蛍光の発生位置を示す位置情報を算出し、これをカウントデータ記憶部35aに送出する。カウントデータ記憶部35aでは、発生位置が送られてくる度に、蛍光を観察した数を記憶する。この蛍光のカウントは、シンチレータ結晶C毎に行われる。したがって、カウントデータ記憶部35aは、シンチレータ結晶Cの位置と蛍光のカウント数とが関連した標準テーブルTSを保持していることになる。
【0045】
カウント比算出部12は、カウントデータ記憶部35aに記憶される蛍光のカウント数がある程度蓄積されるのを待って、標準テーブルTSから標準カウント比Rstを算出する。具体的には、カウント比算出部12は、検出面3bにおける1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となるのを待って標準カウント比Rstの算出を開始する。この標準カウント比Rstの算出方法について説明する。
【0046】
図5は、標準テーブルTSを示している。標準テーブルTSは、シンチレータ結晶Cの各々を表すセルが2次元的に配列されたものとなっている。そして、このセルの各々にカウント数が格納されている。標準テーブルTSの横方向(x方向)に位置する最前段の列をa1,2番目に前段の列をa2,2番目に後段の列をan−1,最後段の列をanとする。カウント比算出部12は、a1,a2,an−1,anに属する各セルのカウント数を合計して、各列の合計値Σa1,Σa2,Σan−1,Σanを算出する。標準テーブルTSは、標準カウント比Rstを次の式に基づいて算出する。
Rst=(Σa2+Σan−1)/(Σa1+Σan)……(7)
【0047】
つまり、カウント比算出部12は、シンチレータ2の横方向(x方向)における両端から数えて1番目に位置する2列に属するシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、同様に、シンチレータ2の横方向(x方向)における両端から数えて2番目に位置する2列に属するシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、それらの比を求めることで標準カウント比Rstを求める。
【0048】
カウント比算出部12は、シンチレータ2の縦方向(y方向)についても標準カウント比Rstを求める。標準テーブルTSの縦方向(y方向)に位置する最前段の列をb1,2番目に前段の列をb2,2番目に後段の列をbn−1,最後段の列をbnとして(図6参照),各列の合計値をΣb1,Σb2,Σbn−1,Σbnとすると、標準カウント比Rstは、次の式に基づいて算出する。
Rst=(Σb2+Σbn−1)/(Σb1+Σbn)……(8)
【0049】
このように、カウント比算出部12は、標準カウント比を縦方向と横方向とについて個別に算出する。横方向についての標準カウント比をRst(x)とし、縦方向についての標準カウント比をRst(y)とする。標準カウント比Rst(x),Rst(y)は、標準カウント比記憶部35bに記憶される。標準カウント比記憶部35bは、標準カウント比Rstを放射線検出器1における縦方向と横方向とについて個別に記憶する。
【0050】
この標準カウント比Rstは、蛍光の残光の影響がない状態で取得されたものであるので、シンチレータ2の端部における蛍光のカウント数の本来の検出状況を表している。
【0051】
<放射線検出器を用いたγ線の検出方法>
次に、放射線検出器1を用いたγ線の検出の方法について説明する(図7参照)。放射線検出器1を用いてγ線を検出するには、まず、被検体由来のγ線の検出が開始され(検出開始ステップS1),放射線検出器1におけるγ線の入射位置が特定される(位置特定ステップS2)。そして、カウント比Rが算出され(カウント比算出ステップS3),カウント比Rと標準カウント比Rstとが比較される(比較ステップS4)。最後に、比較結果を基に位置データの補正が行われる(補正ステップS5)。これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0052】
<検出開始ステップS1>
放射性薬剤を投与された被検体が放射線検出器1の前に置かれ、γ線の検出が開始される。なお、標準カウント比Rstは算出済みである。
【0053】
このとき検出される蛍光について説明する。図8は、ある検出素子3aが蛍光を検出する様子を示している。シンチレータ2にγ線が入射すると、シンチレータ2の内部でγ線が蛍光に変換される。図8は、シンチレータ2に異なるタイミングで3つのγ線が入射した場合を示している。発生した蛍光は、すぐに消失することなく、しばらくは、残光として検出素子3aから検出し続けられる。被検体を用いた撮像に際して、γ線を放出する線量が多い場合、残光が消滅しないうちに次の蛍光が発生する確率が増す。特に数秒の長い残光がある場合は定常的な微弱光として検出されオーバーラップする。
【0054】
放射線検出器1は、図3に示すように、ある期間Pに検出素子3aが出力した検出強度(図3における斜線部)を時間で積分して、蛍光の検出強度を算出する。そのときに、前の蛍光の残光成分も足し合わされて、蛍光の検出強度は、見かけ上、大きくなる(図12参照)。
【0055】
<位置特定ステップS2>
位置特定部11は、光検出器3から出力された検出データを受信して、これを基に、蛍光がシンチレータ2のどこから発せられたかを特定する。具体的には、蛍光がシンチレータ2から発せられるごとに、蛍光の検出強度が検出素子3aの位置に対応させたマップを生成する。このマップを基に、蛍光の発生位置を示す位置情報を取得する。この位置情報が放射線断層撮影装置における放射線薬剤の分布のイメージングに用いられる。
【0056】
位置特定部11の動作は上述の図4を用いた説明と同様である。合計値Xa,Xb,Ya,Ybの残光成分をそれぞれα,β,γ,δとすると、位置特定部11の算出する蛍光の発生位置(X,Y)は、次の様に表せる。
X={(Xa+α)−(Xb+β)}/{(Xa+α)+(Xb+β)}……(9)
Y={(Ya+γ)−(Yb+δ)}/{(Ya+γ)+(Yb+δ)}……(10)
【0057】
αとβはほぼ同じ値であり、γとδはほぼ同じ値であるので、図13,図14を用いて説明したように、残光成分の影響でX,Yの絶対値が見かけ上小さくなる。すなわち、シンチレータ2の端部に近い蛍光の発生位置が特に残光成分の影響を受けてズレる。つまり、撮影が開始されて当初において、実際の蛍光の発生位置と位置特定部11が出力した位置情報は食い違っている。このズレは、下記の各ステップにより補正されて消去されることになる。
【0058】
<カウント比算出ステップS3>
位置特定部11は、蛍光の発生位置を特定する度に蛍光の発生位置を示す位置情報をカウントデータ記憶部35aに送出する。カウントデータ記憶部35aでは、発生位置が送られてくる度に、蛍光を観察した数を記憶する。この蛍光のカウントは、シンチレータ結晶C毎に行われる。したがって、カウントデータ記憶部35aは、シンチレータ結晶Cの位置と蛍光のカウント数とが関連したテーブルTを保持していることになる。
【0059】
カウント比算出部12は、カウントデータ記憶部35aに記憶される蛍光のカウント数が一定量となるのを待って、テーブルTからカウント比Rを算出する。具体的には、カウント数の蓄積の開始からある長さの時間Aを経過した後にカウント比Rの算出がされるようになっている。時間Aの長さは、0.001秒以上が選択される。この間にも位置特定部11は、相当数の蛍光の位置情報を算出している。
【0060】
カウント比算出部12が動作している間にも位置特定部11は次々と位置情報を算出し続けている。カウントデータ記憶部35aが保持するテーブルTは、時間A毎に更新されることになる。以下の説明では、一番最初に生成されたテーブルTに対して行われる動作を説明している。
【0061】
カウント比Rの算出方法は、標準カウント比Rstと同様である(図5,図6参照)。カウント比算出部12は、テーブルTを基に、カウント比を縦方向と横方向とについて個別に算出する。横方向についてのカウント比をR(x)とし、縦方向についてのカウント比をR(y)とする。この様に、カウント比算出部12は、カウント比Rを放射線検出器1における縦方向と横方向とについて個別に算出する。
【0062】
<比較ステップS4>
カウント比Rは、補正指示部13に送られる。補正指示部13は、標準カウント比記憶部35bに記憶されている標準カウント比Rstを読み出してカウント比Rを比較する。実際には、補正指示部13は、横方向に関する標準カウント比Rst(x)とカウント比R(x)とを比較し、縦方向に関する標準カウント比Rst(y)とカウント比R(y)とを比較することになる。この様に、補正指示部13は、標準カウント比Rstとカウント比Rとを縦方向と横方向について個別に比較する。
【0063】
残光成分のオーバーラップの影響により、シンチレータ2の端部に近い蛍光の発生位置がズレる。カウント比Rは、このズレ具合を表した指標となっている。仮に、被検体の検出において残光成分の影響が全くないとすると、カウント比Rは、標準カウント比Rstに等しくなる。
【0064】
残光成分のオーバーラップの影響によりシンチレータ2の両端におけるカウント数が見かけ上少なくなると、カウント比Rは、標準カウント比Rstからズレてくる。具体的には、残光成分の影響により蛍光の発生位置がシンチレータ2の中心にズレる程(図13,図14参照),カウント比Rは標準カウント比Rstよりも大きくなる。つまり、カウント比Rと標準カウント比Rstとを比較すれば、蛍光の発生位置がどの程度実際からズレているかがわかるということである。この様にカウント比Rは、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動する。
【0065】
<補正ステップS5>
補正指示部13は、標準カウント比Rstとカウント比Rとが不一致である認めた場合、位置特定部11に位置データの補正を行うように指示する。位置特定部11は、蛍光の発生位置(X,Y)の算出を次のように変更する。Px,Pyは、補正目的で付加される補正値である。
X={(Xa+α)−(Xb+β)}/{(Xa+α)+(Xb+β)−Px}……(11)
Y={(Ya+γ)−(Yb+δ)}/{(Ya+γ)+(Yb+δ)−Py}……(12)
【0066】
すなわち、位置特定部11は、横方向の位置の算出に係る式11の分母から補正値Pxを減算し、縦方向の位置の算出に係る式12の分母から補正値Pyを減算して位置(X,Y)を算出する。補正値は、正の値であるので、分母の中で残光成分と補正値Pとが相殺される。これにより、位置特定部11は、残光成分に影響されず蛍光の発生位置を正しく特定することができる。この様に、位置特定部11は、蛍光の発生位置を縦方向と横方向について個別に補正する。
【0067】
なお、上述のカウント比算出ステップS3,比較ステップS4,および補正ステップS5は、時間Aが定める一定時間おきに繰り返し行われる。これにより、時間A経過毎にカウント比Rが算出され、カウント比Rと標準カウント比Rstとが比較され、補正の指示がされることになる。補正指示部13が標準カウント比Rstよりもカウント比Rが大きいと判定する度に補正値Pが増加するように設定し、補正指示部13が標準カウント比Rstよりもカウント比Rが小さいと判定する度に補正値Pが減少するように設定すれば、位置特定部11における蛍光の発生位置の特定は次第に正確となっていくことになる。
【0068】
なお、被検体を検出している間に、残光成分の影響が変動する場合もある。カウント比Rが変動したのに合わせて補正値Pを調整するようにすれば、このような事態にも問題なく蛍光の発生位置の正確性は保たれる。
【0069】
以上のように、実施例1の構成によれば、カウント比Rが算出される。このカウント比Rは、放射線検出器1の異なる2つの位置におけるγ線のカウント数の比である。この位置としては、例えば、放射線検出器1の視野範囲における(シンチレータ2における)一番外側の領域a1,an,b1,bnと、その領域よりも視野範囲の内側に存する領域a2,an−1,b2,bn−1である。このカウント比Rを繰り返し算出し続ければ、蛍光の発生の分布の変化をモニタリングすることができる。検出される蛍光同士の経時的にオーバーラップすることにより、残光成分の影響がγ線の入射位置(蛍光の発生位置)の特定に影響を及ぼすようになると、カウント比Rが変動する。より具体的には、カウント比Rは、蛍光の発生の分布の縮小が激しいほど激しく変化する。補正指示部13は、残光成分の影響のない状態で算出された標準カウント比Rと、逐次算出されるカウント比Rとを比較して、その比較結果いかんによって、位置特定部11に位置を補正する旨の指示を与える。この様にすることで、残光成分の影響によりズレたγ線の入射位置(蛍光の発生位置)を補正により正しい位置とすることができる。補正指示部13は、この様な比較と補正の指示を一定時間おきに繰り返す。この様にすれば、γ線の入射位置(蛍光の発生位置)は徐々に補正され、確実に正しい位置となる。
【0070】
また、カウント比算出部12,標準カウント比記憶部35b,補正指示部13,および位置特定部11は、放射線検出器1のシンチレータ2における縦方向と横方向とについて、カウント比Rを用いた補正を個別に行う。これにより、放射線信号処理装置9は、放射線検出器1の縦横で残光成分の影響が異なる場合であっても、的確に位置の補正を行うことができる。
【0071】
カウント比Rを正確に算出するには、ある程度十分な数のカウント数が必要となる。カウント比算出部12が0.001秒以上の間隔でカウント比Rの算出を繰り返すようにすれば、カウント比Rは、十分に信頼できる値となる。
【0072】
また、標準カウント比記憶部35bが記憶する標準カウント比Rは、放射線検出器1の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となってれば、標準カウント比Rの算出としては十分であり、信頼性の高い標準カウント比Rが取得できる。
【0073】
(1)上述した各実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、LGSO(Lu2(1−X)G2XSiO5)やGSO(Gd2SiO5)などのほかの材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0074】
(2)上述した各実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いてもよい。
【0075】
(3)上述した各実施例において、カウント比算出部12,標準カウント比記憶部35b,補正指示部13,および位置特定部11は、放射線検出器1のシンチレータ2における縦方向と横方向に分け、それぞれカウント比Rを用いた補正を個別に行っているが、シンチレータ2の最外周端から数えて1番目に位置する1周のシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、同様に、シンチレータ2の最外周端から数えて2番目に位置する1周のシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、それらの比を求めることで標準カウント比Rを求めてもよい。
【符号の説明】
【0076】
R カウント比
Rst 標準カウント比
1 放射線検出器
2 シンチレータ
3 光検出器
9 放射線信号処理装置
11 位置特定部(位置特定手段)
12 カウント比算出部(カウント比算出手段)
13 補正指示部(補正指示手段)
35a カウントデータ記憶部(カウントデータ記憶手段)
35b 標準カウント比記憶部(標準カウント比記憶手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、消滅放射線対の検出信号を補正する放射線信号処理装置、およびそれを備えた放射線検出器に係り、特に、放射線の検出位置を補正することができる放射線信号処理装置、およびそれを備えた放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線薬剤の分布をイメージングするポジトロンエミッショントモグラフィー装置(PET)の具体的な構成について説明する。従来のPET装置は、放射線を検出する放射線検出器が円環状に並んで構成される検出器リングが備えられている。この検出器リングは、被検体内の放射性薬剤から放出される互いが反対方向となっている一対のγ線(消滅放射線対)を検出する。
【0003】
放射線検出器51の構成について説明する。放射線検出器51は、図9に示すように、シンチレータ結晶が3次元的に配列されたシンチレータ52と、シンチレータ52に吸収されたγ線から発した蛍光を検出する光検出器53とを備えている。光検出器53は、検出素子がマトリックス上に配列された検出面を備えている。そして、光検出器53の検出面とシンチレータ52の一面とが光学的に接続されている(特許文献1参照)。
【0004】
シンチレータ52に入射した放射線は、多数の光子に変換されて光検出器53に向かう。このとき、光子は、空間的に広がりながらシンチレータ52の内部を進んでマトリックス上に配列された光検出器53の各々の検出面に入射する。つまり、蛍光による多数の光子は、複数の検出素子に同時に分配され検出されることになる。
【0005】
放射線検出器51は、複数の検出素子によって捕捉された蛍光の検出データを用いてシンチレータ2のどこで蛍光が発したのかを知る構成となっている。すなわち、放射線検出器51は、複数の検出素子により検出面における蛍光の光束の重心の位置を求めるのである。この重心の位置こそが蛍光の発生した位置を意味している。この位置データは、被検体の放射性薬剤をマッピングするときに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−279057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の放射線の検出には次のような問題点がある。すなわち、放射線検出器51に入射する放射線の線量が多くなると、蛍光の発生位置の特定が不正確となる問題点がある。
【0008】
この問題は、蛍光の光束の重心の算出方法に関係があるので、この算出方法について説明する。簡単のため、光検出器53の検出面は、図10に示すように2×2の検出素子から構成されているものとする。検出素子a1……a4から出力された蛍光の検出信号をA1……A4とする。A1……A4は、各検出素子a1……a4が検出した蛍光の強度を示している。蛍光の光束のx方向における重心の位置Xは、中心の位置を原点として、次のように表される。
X={(A1+A3)−(A2+A4)}/{(A1+A2+A3+A4)}……(1)
【0009】
(A1+A3)をXa,(A2+A4)Xbとすると、X=(Xa−Xb)/(Xa+Xb)の関係が成り立つ。
【0010】
同様に、蛍光の光束のy方向における重心の位置Yは、a5の位置を原点として、次のように表される。
Y={(A1+A2)−(A3+A4)}/{(A1+A2+A3+A4)}……(2)
【0011】
(A1+A2)をYa,(A3+A4)Ybとすると、Y=(Ya−Yb)/(Ya+Yb)の関係が成り立つ。
【0012】
放射線検出器51に入射する放射線の線量が多くなると、蛍光の検出強度が見かけ上大きくなる現象が発生する。次は、この現象について説明する。図11は、検出素子が検出する蛍光の時間的な変化を表している。シンチレータで発した蛍光は、弱いながらもしばらくは検出素子を照らし続ける。放射線検出において、この様な残光の消失まで考慮すると蛍光の検出にかかる時間が長くなりすぎるので、放射線検出器51は、この残光を無視して蛍光を測定する。すなわち、放射線検出器51は、図11に示すように、ある期間Pに検出素子a1……a4が出力した検出強度を時間で積分して、蛍光の検出強度A1……A4を算出する。このとき残光は蛍光の検出強度として加味されない。
【0013】
放射線検出器51に入射する放射線の線量が多くなると、前の蛍光の残光が消滅し終わらないうちに次の蛍光が発せられる。つまり、時間的な幅を有する蛍光同士が経時的にオーバーラップすることになる。すなわち、図12に示すように、蛍光の検出強度を算出する際に、Sで示す残光成分が足し合わされてしまう。
【0014】
この様な現象は、検出強度A1……A4のうちの全てで発生する。Xa,Xb,Ya,Ybに係る残光成分をそれぞれα,β,δ,γで表すと、残光成分存在下で算出される重心の位置X,Yは次のようになる。
X={(Xa+α)−(Xb+β)}/{(Xa+α)+(Xb+β)}……(3)
Y={(Ya+γ)−(Yb+δ)}/{(Ya+γ)+(Yb+δ)}……(4)
【0015】
残光成分α,β,δ,γは、ほぼ同じ値をとるので、式3,式4の分子の残光成分は、相殺される。しかし、式3,式4の分母における残光成分は消去されず、むしろ足し合わされて増幅される。従って、位置X,Yの値は、残光成分の影響を受けて、実際とは異なる値となってしまう。具体的には、残光成分の存在は、式3,式4における分母を大きくし、位置X,Yの値の絶対値を小さくしてしまう。
【0016】
残光成分が重心の位置マッピングにどのような影響を与えるかを説明する。今、シンチレータ2を構成するシンチレータ結晶の各々の中心から蛍光が発せられたとする。図13に示す点pがこのときの蛍光の発生位置である。残光成分の影響を受けない場合、放射線検出器51は、図13に示すとおりに蛍光の発生位置を特定する。
【0017】
検出される蛍光に残光成分が含まれていると、放射線検出器51は、図13に示す蛍光の発生位置を正しく特定することができない。すなわち、残光の影響により、式3,4に示すX,Yの値の絶対値が見かけ上、小さくなってしまう。すると、図14に示すように、算出される蛍光の発生位置がシンチレータ2の中心側に見かけ上ずれ、蛍光の発生の分布が縮小する。この様に、従来の技術によれば、蛍光の残光によって、蛍光の発生位置を正確に特定することができない。
【0018】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射線検出器において、蛍光の残光の影響を受けずにγ線の入射位置を正確に特定するように補正することができる放射線信号処理装置、およびそれを備えた放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線信号処理装置は、放射線を蛍光に変換するシンチレータを有する放射線検出器から出力された検出データを受信して、これを基に放射線検出器における放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、放射線検出器の異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたカウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、標準カウント比記憶手段より標準カウント比を読み出して、これとカウント比とを比較することで、位置特定手段に放射線の発生位置の補正の実行を指示する補正指示手段とを備え、カウント比算出手段、および補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]本発明の構成によれば、カウント比が算出される。このカウント比は、放射線検出器の異なる2つの位置における放射線のカウント数の比である。この位置としては、例えば、放射線検出器の視野範囲における一番外側の領域と、その領域よりも視野範囲の内側に存する領域である。このカウント比を繰り返し算出し続ければ、蛍光の発生の分布の変化を逐次モニタリングすることができる。検出される蛍光同士の経時的にオーバーラップすることにより、残光成分の影響が放射線の入射位置特定に影響を及ぼすようになると、カウント比が変動する。より具体的には、カウント比は、蛍光の発生の分布の縮小が激しいほど激しく変化する。補正指示手段は、残光成分の影響のない状態で算出された標準カウント比と、逐次算出されるカウント比とを比較して、その比較結果いかんによって、位置特定手段に位置を補正する旨の指示を与える。この様にすることで、残光成分の影響によりズレた放射線の入射位置を補正により正しい位置とすることができる。補正指示手段は、この様な比較と補正の指示を一定時間おきに繰り返す。この様にすれば、放射線の入射位置は徐々に補正され、確実に正しい位置となる。
【0021】
また、上述の放射線信号処理装置において、カウント比算出手段は、カウント比を放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に算出し、標準カウント比記憶手段は、標準カウント比を放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に記憶し、補正指示手段は、カウント比と標準カウント比とを放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に比較し、位置特定手段は、放射線の発生位置を放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に補正すればより望ましい。
【0022】
[作用・効果]上述の構成は、カウント比算出手段、標準カウント比記憶手段、補正指示手段、位置特定手段の具体的な動作について示すものである。すなわち、各手段は、放射線検出器における縦方向と横方向とについて、カウント比を用いた補正を個別に行う。これにより、放射線信号処理装置は、放射線検出器の縦横で残光成分の影響が異なる場合であっても、的確に位置の補正を行うことができる。
【0023】
また、上述の放射線信号処理装置において、カウント比算出手段は、カウント比の算出を0.001秒以上の間隔で繰り返し、補正指示手段は、補正の指示をカウント比算出手段の動作と同じ間隔で繰り返せばより望ましい。
【0024】
[作用・効果]上述の構成は、補正指示手段の具体的な構成を示している。カウント比を正確に算出するには、ある程度十分な数のカウント数が必要となる。カウント比算出手段が0.001秒以上の間隔でカウント比の算出を繰り返すようにすれば、カウント比は、十分に信頼できる値となる。
【0025】
また、上述の放射線信号処理装置において、標準カウント比記憶手段が記憶する標準カウント比は、放射線検出器の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となっている条件でカウント比の算出を行うことで得られたものであればより望ましい。
【0026】
[作用・効果]上述の構成は、標準カウント比記憶手段の具体的な構成を示している。標準カウント比記憶手段が記憶する標準カウント比は、放射線検出器の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率であれば、標準カウント比の算出としては十分であり、信頼性の高い標準カウント比が取得できる。
【0027】
また、本発明に係る放射線検出器は、放射線を蛍光に変換するシンチレータ結晶が2次元的に配列されたシンチレータと、蛍光を検出する光検出器と、光検出器から出力された検出データを受信して、これを基にシンチレータにおける放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、シンチレータの異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたカウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、標準カウント比記憶手段より標準カウント比を読み出して、これとカウント比とを比較することで、位置特定手段に放射線の発生位置の補正を実行させる補正指示手段とを備え、カウント比算出手段、および補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とするものである。
【0028】
上述の構成は、本発明の放射線信号処理装置を放射線検出器に組み込んだ構成を示している。放射線信号処理装置を構成する位置特定手段、カウントデータ記憶手段、カウント比算出手段、標準カウント比記憶手段、補正指示手段を備えた放射線検出器によれば、蛍光の残光成分に影響されず放射線の入射位置を的確に特定することができる放射線検出器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1に係る放射線信号処理装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る光検出器の構成を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図4】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る標準カウント数の取得方法を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る放射線信号処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施例1に係る放射線信号処理装置の動作を説明する模式図である。
【図9】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図10】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図11】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図12】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図13】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【図14】従来の放射線検出器を説明する模式図である。
【実施例1】
【0030】
以降、本発明に係る放射線信号処理装置、および放射線検出器の実施例について説明する。γ線は放射線の一例である。
【0031】
<放射線信号処理装置、および放射線検出器の全体構成>
図1に示すように、実施例1に係る放射線検出器1は、シンチレータ結晶Cが縦横に配列されて構成されたシンチレータ2と、シンチレータ2の下面に設けられ、シンチレータ2から発する蛍光を検知する光検出器3と、シンチレータ2と光検出器3との間に介在する位置に配置されたライトガイド4とを備える。シンチレータ結晶Cの各々は、Ceが拡散したLu2(1−X)Y2XSiO5(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。
【0032】
光検出器3は、マルチアノードタイプであり、入射した蛍光のx,およびyについての位置を弁別することができる。より具体的には、光検出器3は、図2に示すように、縦横に検出素子3aがマトリックス状に配列された検出面3bを有し、この検出面3bがシンチレータ2と光学的に接続されている。蛍光が発生すると、検出素子3aの各々は、蛍光の強度を示す強度的データを出力する。光検出器3は、このデータにどの検出素子3aが検出したのかを示す情報を付加して、位置特定部11に出力する(図1参照)。したがって、光検出器3から出力された検出データには、蛍光の強度情報と位置情報との両方が含まれることになる。位置特定部11は、本発明の位置特定手段に相当する。
【0033】
ライトガイド4は、シンチレータ2で生じた蛍光を光検出器3に導くために設けられている。したがって、ライトガイド4は、シンチレータ2と光検出器3とに光学的に結合されている。
【0034】
放射線検出器1は、光検出器3から出力された検出データを受信して、これを基に、蛍光がシンチレータ2のどこから発せられたかを特定する位置特定部11と、位置特定部11から出力された位置情報を基に、後述のカウント比Rを算出するカウント比算出部12と、カウント比Rを基に、位置特定部11に対しγ線の発生位置の補正を実行させる補正指示部13とを備えている。カウント比算出部12は、本発明のカウント比算出手段に相当し、補正指示部13は、本発明の補正指示手段に相当する。
【0035】
記憶部35は、放射線検出器1の制御に関するパラメータ、テーブル、マップ等の一切を記憶する.記憶部35は、位置特定部11が出力した位置情報を蓄積するカウントデータ記憶部35aと、後述の標準カウント比Rstを記憶する標準カウント比記憶部35bとを備えている。カウントデータ記憶部35aは、本発明のカウントデータ記憶手段に相当し、標準カウント比記憶部35bは、本発明の標準カウント比記憶手段に相当する。
【0036】
放射線検出器1は、各部を統括的に制御する主制御部21を備えている。この主制御部21は、CPUによって構成され、各種プログラムを実行することにより、各部11,12,13を実現する。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。
【0037】
位置特定部11,カウント比算出部12,補正指示部13,主制御部21,記憶部35により、放射線検出器1の光検出器3が出力するデータを処理する放射線信号処理装置9を構成する。放射線信号処理装置9は、少なくとも、放射線検出器1におけるγ線の入射位置を特定できるようになっている。
【0038】
<標準カウント比Rstの取得>
標準カウント比Rstについて説明する。標準カウント比Rstは、診断などに放射線検出器1を用いる前に予め測定しておくものである。この標準カウント比Rstは、十分に線量の少ない放射線源を放射線検出器1の前に置いた状態で十分な時間をかけて取得される。
【0039】
このとき検出される蛍光について説明する。図3は、ある検出素子3aが蛍光を検出する様子を示している。シンチレータ2にγ線が入射すると、シンチレータ2の内部でγ線が蛍光に変換される。図3は、シンチレータ2に異なるタイミングで2つのγ線が入射した場合を示している。発生した蛍光は、すぐに消失することなく、しばらくは、残光として検出素子3aに検出し続けられる。標準カウント比Rstの取得に際しては、γ線の入射する線量が十分に少ないので、残光が消滅してから次の蛍光が発生する。この様に、標準カウント比Rstは、検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたものである。
【0040】
放射線検出器1は、この残光を無視して蛍光を測定する。すなわち、放射線検出器1は、図3に示すように、ある期間Pに検出素子3aが出力した検出強度(図3における斜線部)を時間で積分して、蛍光の検出強度を算出する。
【0041】
位置特定部11は、光検出器3から出力された検出データを受信して、これを基に、蛍光がシンチレータ2のどこから発せられたかを特定する。具体的には、蛍光がシンチレータ2から発せられるごとに、蛍光の検出強度が検出素子3aの位置に対応させたマップを生成する。このマップを基に、蛍光の発生位置を示す位置情報を取得する。
【0042】
この蛍光の位置情報の取得方法について説明する。図4に示すように検出面3bの中心点を原点とし、蛍光の発生位置はこれを基準に示すものとする。原点から見て左側の領域をRXaとし、原点から見て右側の領域をRXbとする。原点から見て上側の領域をRYaとし、原点から見て下側の領域をRYbとする。
【0043】
位置特定部11は、所定の重み付け演算をしながら領域RXa,領域RXb,領域RYa,領域RYbの4領域について検出素子3aが出力した蛍光の検出強度を合計して合計値Xa,Xb,Ya,Ybを取得する。そして、位置特定部11は、蛍光の発生位置(X,Y)を、次の式で算出する。
X=(Xa−Xb)/(Xa+Xb)……(5)
Y=(Ya−Yb)/(Ya+Yb)……(6)
【0044】
位置特定部11は、蛍光の発生位置を特定する度に式5,6を用いて蛍光の発生位置を示す位置情報を算出し、これをカウントデータ記憶部35aに送出する。カウントデータ記憶部35aでは、発生位置が送られてくる度に、蛍光を観察した数を記憶する。この蛍光のカウントは、シンチレータ結晶C毎に行われる。したがって、カウントデータ記憶部35aは、シンチレータ結晶Cの位置と蛍光のカウント数とが関連した標準テーブルTSを保持していることになる。
【0045】
カウント比算出部12は、カウントデータ記憶部35aに記憶される蛍光のカウント数がある程度蓄積されるのを待って、標準テーブルTSから標準カウント比Rstを算出する。具体的には、カウント比算出部12は、検出面3bにおける1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となるのを待って標準カウント比Rstの算出を開始する。この標準カウント比Rstの算出方法について説明する。
【0046】
図5は、標準テーブルTSを示している。標準テーブルTSは、シンチレータ結晶Cの各々を表すセルが2次元的に配列されたものとなっている。そして、このセルの各々にカウント数が格納されている。標準テーブルTSの横方向(x方向)に位置する最前段の列をa1,2番目に前段の列をa2,2番目に後段の列をan−1,最後段の列をanとする。カウント比算出部12は、a1,a2,an−1,anに属する各セルのカウント数を合計して、各列の合計値Σa1,Σa2,Σan−1,Σanを算出する。標準テーブルTSは、標準カウント比Rstを次の式に基づいて算出する。
Rst=(Σa2+Σan−1)/(Σa1+Σan)……(7)
【0047】
つまり、カウント比算出部12は、シンチレータ2の横方向(x方向)における両端から数えて1番目に位置する2列に属するシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、同様に、シンチレータ2の横方向(x方向)における両端から数えて2番目に位置する2列に属するシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、それらの比を求めることで標準カウント比Rstを求める。
【0048】
カウント比算出部12は、シンチレータ2の縦方向(y方向)についても標準カウント比Rstを求める。標準テーブルTSの縦方向(y方向)に位置する最前段の列をb1,2番目に前段の列をb2,2番目に後段の列をbn−1,最後段の列をbnとして(図6参照),各列の合計値をΣb1,Σb2,Σbn−1,Σbnとすると、標準カウント比Rstは、次の式に基づいて算出する。
Rst=(Σb2+Σbn−1)/(Σb1+Σbn)……(8)
【0049】
このように、カウント比算出部12は、標準カウント比を縦方向と横方向とについて個別に算出する。横方向についての標準カウント比をRst(x)とし、縦方向についての標準カウント比をRst(y)とする。標準カウント比Rst(x),Rst(y)は、標準カウント比記憶部35bに記憶される。標準カウント比記憶部35bは、標準カウント比Rstを放射線検出器1における縦方向と横方向とについて個別に記憶する。
【0050】
この標準カウント比Rstは、蛍光の残光の影響がない状態で取得されたものであるので、シンチレータ2の端部における蛍光のカウント数の本来の検出状況を表している。
【0051】
<放射線検出器を用いたγ線の検出方法>
次に、放射線検出器1を用いたγ線の検出の方法について説明する(図7参照)。放射線検出器1を用いてγ線を検出するには、まず、被検体由来のγ線の検出が開始され(検出開始ステップS1),放射線検出器1におけるγ線の入射位置が特定される(位置特定ステップS2)。そして、カウント比Rが算出され(カウント比算出ステップS3),カウント比Rと標準カウント比Rstとが比較される(比較ステップS4)。最後に、比較結果を基に位置データの補正が行われる(補正ステップS5)。これらの各ステップについて順を追って説明する。
【0052】
<検出開始ステップS1>
放射性薬剤を投与された被検体が放射線検出器1の前に置かれ、γ線の検出が開始される。なお、標準カウント比Rstは算出済みである。
【0053】
このとき検出される蛍光について説明する。図8は、ある検出素子3aが蛍光を検出する様子を示している。シンチレータ2にγ線が入射すると、シンチレータ2の内部でγ線が蛍光に変換される。図8は、シンチレータ2に異なるタイミングで3つのγ線が入射した場合を示している。発生した蛍光は、すぐに消失することなく、しばらくは、残光として検出素子3aから検出し続けられる。被検体を用いた撮像に際して、γ線を放出する線量が多い場合、残光が消滅しないうちに次の蛍光が発生する確率が増す。特に数秒の長い残光がある場合は定常的な微弱光として検出されオーバーラップする。
【0054】
放射線検出器1は、図3に示すように、ある期間Pに検出素子3aが出力した検出強度(図3における斜線部)を時間で積分して、蛍光の検出強度を算出する。そのときに、前の蛍光の残光成分も足し合わされて、蛍光の検出強度は、見かけ上、大きくなる(図12参照)。
【0055】
<位置特定ステップS2>
位置特定部11は、光検出器3から出力された検出データを受信して、これを基に、蛍光がシンチレータ2のどこから発せられたかを特定する。具体的には、蛍光がシンチレータ2から発せられるごとに、蛍光の検出強度が検出素子3aの位置に対応させたマップを生成する。このマップを基に、蛍光の発生位置を示す位置情報を取得する。この位置情報が放射線断層撮影装置における放射線薬剤の分布のイメージングに用いられる。
【0056】
位置特定部11の動作は上述の図4を用いた説明と同様である。合計値Xa,Xb,Ya,Ybの残光成分をそれぞれα,β,γ,δとすると、位置特定部11の算出する蛍光の発生位置(X,Y)は、次の様に表せる。
X={(Xa+α)−(Xb+β)}/{(Xa+α)+(Xb+β)}……(9)
Y={(Ya+γ)−(Yb+δ)}/{(Ya+γ)+(Yb+δ)}……(10)
【0057】
αとβはほぼ同じ値であり、γとδはほぼ同じ値であるので、図13,図14を用いて説明したように、残光成分の影響でX,Yの絶対値が見かけ上小さくなる。すなわち、シンチレータ2の端部に近い蛍光の発生位置が特に残光成分の影響を受けてズレる。つまり、撮影が開始されて当初において、実際の蛍光の発生位置と位置特定部11が出力した位置情報は食い違っている。このズレは、下記の各ステップにより補正されて消去されることになる。
【0058】
<カウント比算出ステップS3>
位置特定部11は、蛍光の発生位置を特定する度に蛍光の発生位置を示す位置情報をカウントデータ記憶部35aに送出する。カウントデータ記憶部35aでは、発生位置が送られてくる度に、蛍光を観察した数を記憶する。この蛍光のカウントは、シンチレータ結晶C毎に行われる。したがって、カウントデータ記憶部35aは、シンチレータ結晶Cの位置と蛍光のカウント数とが関連したテーブルTを保持していることになる。
【0059】
カウント比算出部12は、カウントデータ記憶部35aに記憶される蛍光のカウント数が一定量となるのを待って、テーブルTからカウント比Rを算出する。具体的には、カウント数の蓄積の開始からある長さの時間Aを経過した後にカウント比Rの算出がされるようになっている。時間Aの長さは、0.001秒以上が選択される。この間にも位置特定部11は、相当数の蛍光の位置情報を算出している。
【0060】
カウント比算出部12が動作している間にも位置特定部11は次々と位置情報を算出し続けている。カウントデータ記憶部35aが保持するテーブルTは、時間A毎に更新されることになる。以下の説明では、一番最初に生成されたテーブルTに対して行われる動作を説明している。
【0061】
カウント比Rの算出方法は、標準カウント比Rstと同様である(図5,図6参照)。カウント比算出部12は、テーブルTを基に、カウント比を縦方向と横方向とについて個別に算出する。横方向についてのカウント比をR(x)とし、縦方向についてのカウント比をR(y)とする。この様に、カウント比算出部12は、カウント比Rを放射線検出器1における縦方向と横方向とについて個別に算出する。
【0062】
<比較ステップS4>
カウント比Rは、補正指示部13に送られる。補正指示部13は、標準カウント比記憶部35bに記憶されている標準カウント比Rstを読み出してカウント比Rを比較する。実際には、補正指示部13は、横方向に関する標準カウント比Rst(x)とカウント比R(x)とを比較し、縦方向に関する標準カウント比Rst(y)とカウント比R(y)とを比較することになる。この様に、補正指示部13は、標準カウント比Rstとカウント比Rとを縦方向と横方向について個別に比較する。
【0063】
残光成分のオーバーラップの影響により、シンチレータ2の端部に近い蛍光の発生位置がズレる。カウント比Rは、このズレ具合を表した指標となっている。仮に、被検体の検出において残光成分の影響が全くないとすると、カウント比Rは、標準カウント比Rstに等しくなる。
【0064】
残光成分のオーバーラップの影響によりシンチレータ2の両端におけるカウント数が見かけ上少なくなると、カウント比Rは、標準カウント比Rstからズレてくる。具体的には、残光成分の影響により蛍光の発生位置がシンチレータ2の中心にズレる程(図13,図14参照),カウント比Rは標準カウント比Rstよりも大きくなる。つまり、カウント比Rと標準カウント比Rstとを比較すれば、蛍光の発生位置がどの程度実際からズレているかがわかるということである。この様にカウント比Rは、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動する。
【0065】
<補正ステップS5>
補正指示部13は、標準カウント比Rstとカウント比Rとが不一致である認めた場合、位置特定部11に位置データの補正を行うように指示する。位置特定部11は、蛍光の発生位置(X,Y)の算出を次のように変更する。Px,Pyは、補正目的で付加される補正値である。
X={(Xa+α)−(Xb+β)}/{(Xa+α)+(Xb+β)−Px}……(11)
Y={(Ya+γ)−(Yb+δ)}/{(Ya+γ)+(Yb+δ)−Py}……(12)
【0066】
すなわち、位置特定部11は、横方向の位置の算出に係る式11の分母から補正値Pxを減算し、縦方向の位置の算出に係る式12の分母から補正値Pyを減算して位置(X,Y)を算出する。補正値は、正の値であるので、分母の中で残光成分と補正値Pとが相殺される。これにより、位置特定部11は、残光成分に影響されず蛍光の発生位置を正しく特定することができる。この様に、位置特定部11は、蛍光の発生位置を縦方向と横方向について個別に補正する。
【0067】
なお、上述のカウント比算出ステップS3,比較ステップS4,および補正ステップS5は、時間Aが定める一定時間おきに繰り返し行われる。これにより、時間A経過毎にカウント比Rが算出され、カウント比Rと標準カウント比Rstとが比較され、補正の指示がされることになる。補正指示部13が標準カウント比Rstよりもカウント比Rが大きいと判定する度に補正値Pが増加するように設定し、補正指示部13が標準カウント比Rstよりもカウント比Rが小さいと判定する度に補正値Pが減少するように設定すれば、位置特定部11における蛍光の発生位置の特定は次第に正確となっていくことになる。
【0068】
なお、被検体を検出している間に、残光成分の影響が変動する場合もある。カウント比Rが変動したのに合わせて補正値Pを調整するようにすれば、このような事態にも問題なく蛍光の発生位置の正確性は保たれる。
【0069】
以上のように、実施例1の構成によれば、カウント比Rが算出される。このカウント比Rは、放射線検出器1の異なる2つの位置におけるγ線のカウント数の比である。この位置としては、例えば、放射線検出器1の視野範囲における(シンチレータ2における)一番外側の領域a1,an,b1,bnと、その領域よりも視野範囲の内側に存する領域a2,an−1,b2,bn−1である。このカウント比Rを繰り返し算出し続ければ、蛍光の発生の分布の変化をモニタリングすることができる。検出される蛍光同士の経時的にオーバーラップすることにより、残光成分の影響がγ線の入射位置(蛍光の発生位置)の特定に影響を及ぼすようになると、カウント比Rが変動する。より具体的には、カウント比Rは、蛍光の発生の分布の縮小が激しいほど激しく変化する。補正指示部13は、残光成分の影響のない状態で算出された標準カウント比Rと、逐次算出されるカウント比Rとを比較して、その比較結果いかんによって、位置特定部11に位置を補正する旨の指示を与える。この様にすることで、残光成分の影響によりズレたγ線の入射位置(蛍光の発生位置)を補正により正しい位置とすることができる。補正指示部13は、この様な比較と補正の指示を一定時間おきに繰り返す。この様にすれば、γ線の入射位置(蛍光の発生位置)は徐々に補正され、確実に正しい位置となる。
【0070】
また、カウント比算出部12,標準カウント比記憶部35b,補正指示部13,および位置特定部11は、放射線検出器1のシンチレータ2における縦方向と横方向とについて、カウント比Rを用いた補正を個別に行う。これにより、放射線信号処理装置9は、放射線検出器1の縦横で残光成分の影響が異なる場合であっても、的確に位置の補正を行うことができる。
【0071】
カウント比Rを正確に算出するには、ある程度十分な数のカウント数が必要となる。カウント比算出部12が0.001秒以上の間隔でカウント比Rの算出を繰り返すようにすれば、カウント比Rは、十分に信頼できる値となる。
【0072】
また、標準カウント比記憶部35bが記憶する標準カウント比Rは、放射線検出器1の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となってれば、標準カウント比Rの算出としては十分であり、信頼性の高い標準カウント比Rが取得できる。
【0073】
(1)上述した各実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、LGSO(Lu2(1−X)G2XSiO5)やGSO(Gd2SiO5)などのほかの材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0074】
(2)上述した各実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いてもよい。
【0075】
(3)上述した各実施例において、カウント比算出部12,標準カウント比記憶部35b,補正指示部13,および位置特定部11は、放射線検出器1のシンチレータ2における縦方向と横方向に分け、それぞれカウント比Rを用いた補正を個別に行っているが、シンチレータ2の最外周端から数えて1番目に位置する1周のシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、同様に、シンチレータ2の最外周端から数えて2番目に位置する1周のシンチレータ結晶Cに関する蛍光のカウント数を合計し、それらの比を求めることで標準カウント比Rを求めてもよい。
【符号の説明】
【0076】
R カウント比
Rst 標準カウント比
1 放射線検出器
2 シンチレータ
3 光検出器
9 放射線信号処理装置
11 位置特定部(位置特定手段)
12 カウント比算出部(カウント比算出手段)
13 補正指示部(補正指示手段)
35a カウントデータ記憶部(カウントデータ記憶手段)
35b 標準カウント比記憶部(標準カウント比記憶手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を蛍光に変換するシンチレータを有する放射線検出器から出力された検出データを受信して、これを基に前記放射線検出器における放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、
前記カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、前記放射線検出器の異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、
検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出された前記カウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、
前記標準カウント比記憶手段より前記標準カウント比を読み出して、これと前記カウント比とを比較することで、前記位置特定手段に放射線の発生位置の補正の実行を指示する補正指示手段とを備え、
前記カウント比算出手段、および前記補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線信号処理装置において、
前記カウント比算出手段は、前記カウント比を前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に算出し、
前記標準カウント比記憶手段は、前記標準カウント比を前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に記憶し、
前記補正指示手段は、前記カウント比と前記標準カウント比とを前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に比較し、
前記位置特定手段は、放射線の発生位置を前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に補正することを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線信号処理装置において、
前記カウント比算出手段は、前記カウント比の算出を0.001秒以上の間隔で繰り返し、
前記補正指示手段は、補正の指示を前記カウント比算出手段の動作と同じ間隔で繰り返すことを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線信号処理装置において、
前記標準カウント比記憶手段が記憶する前記標準カウント比は、前記放射線検出器の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となっている条件で前記カウント比の算出を行うことで得られたものであることを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項5】
放射線を蛍光に変換するシンチレータ結晶が2次元的に配列されたシンチレータと、
蛍光を検出する光検出器と、
前記光検出器から出力された前記検出データを受信して、これを基に前記シンチレータにおける放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、
前記カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、前記シンチレータの異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、
検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたカウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、
前記標準カウント比記憶手段より前記標準カウント比を読み出して、これと前記カウント比とを比較することで、前記位置特定手段に放射線の発生位置の補正を実行させる補正指示手段とを備え、
前記カウント比算出手段、および前記補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とする放射線検出器。
【請求項1】
放射線を蛍光に変換するシンチレータを有する放射線検出器から出力された検出データを受信して、これを基に前記放射線検出器における放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、
前記カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、前記放射線検出器の異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、
検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出された前記カウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、
前記標準カウント比記憶手段より前記標準カウント比を読み出して、これと前記カウント比とを比較することで、前記位置特定手段に放射線の発生位置の補正の実行を指示する補正指示手段とを備え、
前記カウント比算出手段、および前記補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線信号処理装置において、
前記カウント比算出手段は、前記カウント比を前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に算出し、
前記標準カウント比記憶手段は、前記標準カウント比を前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に記憶し、
前記補正指示手段は、前記カウント比と前記標準カウント比とを前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に比較し、
前記位置特定手段は、放射線の発生位置を前記放射線検出器における縦方向と横方向とについて個別に補正することを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線信号処理装置において、
前記カウント比算出手段は、前記カウント比の算出を0.001秒以上の間隔で繰り返し、
前記補正指示手段は、補正の指示を前記カウント比算出手段の動作と同じ間隔で繰り返すことを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線信号処理装置において、
前記標準カウント比記憶手段が記憶する前記標準カウント比は、前記放射線検出器の放射線検出面1cm2当たり100cps/sec以上の計数率となっている条件で前記カウント比の算出を行うことで得られたものであることを特徴とする放射線信号処理装置。
【請求項5】
放射線を蛍光に変換するシンチレータ結晶が2次元的に配列されたシンチレータと、
蛍光を検出する光検出器と、
前記光検出器から出力された前記検出データを受信して、これを基に前記シンチレータにおける放射線の入射位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段から出力された位置情報を蓄積するカウントデータ記憶手段と、
前記カウントデータ記憶手段に蓄積された位置情報を基に、前記シンチレータの異なる位置における放射線のカウント数の比であり、検出される蛍光同士の経時的なオーバーラップの程度によって変動するカウント比を算出するカウント比算出手段と、
検出される蛍光同士が経時的にオーバーラップしていない状態で算出されたカウント比である標準カウント比を記憶する標準カウント比記憶手段と、
前記標準カウント比記憶手段より前記標準カウント比を読み出して、これと前記カウント比とを比較することで、前記位置特定手段に放射線の発生位置の補正を実行させる補正指示手段とを備え、
前記カウント比算出手段、および前記補正指示手段は、上述の動作を一定時間おきに繰り返すことを特徴とする放射線検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−185840(P2011−185840A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53196(P2010−53196)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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