放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体
【課題】放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する(ステップT1)。ステップS1〜S4で作成された同時計数パターン用テーブルを参照して、同時計数された放射線の出力情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する(ステップT2)。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【解決手段】放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する(ステップT1)。ステップS1〜S4で作成された同時計数パターン用テーブルを参照して、同時計数された放射線の出力情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する(ステップT2)。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数するための放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体に係り、特に、放射線を同時計数する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本のγ線を検出して複数個の検出器でγ線を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている。
【0003】
このPET装置では、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能である。したがって、PET装置によって得られる断層画像は機能情報を有する。
【0004】
ところで、γ線を同時に検出する、すなわちγ線を同時計数する技術では、γ線を2次元的に検出する2D−PETの他に、近年ではγ線を3次元的に検出する3D−PETが用いられている。かかる3D−PETでは、被検体の近傍に各検出器を大立体角にそれぞれ配設することでγ線の検出効率を高め、検出器の感度を飛躍的に向上させることができる。
【0005】
γ線を同時計数するには同時計数回路に各γ線を入力して、入力されたγ線の時間差が所定のタイムウィンドウ内に収まっているか否かで判断される。実際の同時計数回路では、10ns〜20ns(ns=10-9s)という非常に短いタイムウィンドウ内に検出されたγ線を「同時」とみなしている。したがって、互いに異なる2点で発生したγ線のそれぞれ一方を同時計数する可能性が生じてしまう。これを『偶発同時計数(random coincidence)』という。この偶発同時計数の様子を模式的に示した概略図を図6(a)に示す。一方、一対のγ線の一方あるいは双方が被検体内でコンプトン散乱を起こした後に同時計数された場合、これを『散乱同時計数(scatter coincidence)』という。この散乱同時計数の様子を模式的に示した概略図を図6(b)に示す。図6中の検出器においてハッチングで示した部分は、同時計数した検出器を示す。また、本来であれば一対のγ線の双方が同時計数された場合、これを『真の同時計数(true coincidence)』という。
【0006】
しかしながら、同時計数の検出器の組の数が増大すると、上述した偶発あるいは散乱同時計数といったノイズ成分も増大する。ノイズ成分が増大すると得られた画像のS/N比が頭打ちになる傾向がある。それについて図7を参照して説明する。図7は、被検体に投与される放射線薬剤の濃度に対する同時計数率の変化を示す計数率特性を模式的に示したグラフである。真の同時計数は放射線薬剤の濃度(図7では『放射能濃度』)に比例するのに対し、偶発同時計数はその濃度の2乗に比例する。したがって、真の同時計数率が頭打ちになる。同時計数率と同じ理由で画像のS/N比が頭打ちになる。このことから、ピークとなるS/N比以外では偶発や散乱同時計数のノイズによって良好なS/N比が得られない。
【0007】
そこで、真の同時計数の感度を向上させながら、偶発や散乱同時計数といったノイズ成分を低減させる技術が必要である。これらのノイズ成分を低減させる従来技術としては、以下のようなものが挙げられる。
【0008】
偶発同時計数については上述したタイムウィンドウを狭めることで低減させることができる。また、散乱同時計数についてはエネルギウィンドウを狭めることで低減させることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
各γ線の検出時間差を利用してγ線の発生源(陽子の消滅位置)を特定して、画像のS/N比を改善するTOF(Time of Flight)方式のPETが提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
また、検出器のコンプトン散乱を利用して、図8に示すように、シンチレータを多層に積層した検出器のエネルギからγ線の入射方向を計算するコンプトンカメラも研究されている(例えば、非特許文献3参照)。
【非特許文献1】藤林靖久 田口正俊 天野昌治著, 「核医学イメージング装置」,初版,株式会社コロナ社, 2002年4月25日, p.121−122
【非特許文献2】W. W. Moses, "Time of Flight in PET Revisited", IEEE Trans. Nucl. Sci., vol. 50, pp. 1325-1330, 2003.
【非特許文献3】J. E. Gillam, T. E. Beveridge, "Positron Emission Imaging Using Acquired Cone-Surfaces from Opposing Compton Cameras", Conf. Rec. NSS & MIC, M3-4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した非特許文献1の場合には、タイムウィンドウといった時間分解能やエネルギウィンドウといったエネルギ分解能は、検出器を構成するシンチレータ結晶によって決定される。したがって、性能の大幅な改善には限界があり、これらのウィンドウを十分に狭めることができない。
【0012】
また、上述した非特許文献2の場合には、検出時間差がわかるほどのシンチレータ結晶が現段階では存在しない。つまり、高速かつ高感度なシンチレータ結晶が存在しないので実用化に至っていない。また、TOFの効果は、被検体が人体の場合には体型の大きな人に限られ、例えば日本人のような体型の小さな人を対象とした臨床や小動物に応用することが難しい。
【0013】
また、上述した非特許文献3の場合には、コンプトン散乱が起きることが前提である。もし、γ線がシンチレータ結晶中を透過する、あるいはシンチレータ結晶中で留まる場合には、利用することができない。さらに、感度およびエネルギ分解能を両立させる検出器の開発が困難な上に、入射方向の推定精度に限界がある。したがって、1つのγ線(シングルγ線)のみでは高分解能かつ高感度な画像を得ることが難しい。
【0014】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理を行う放射線同時計数処理方法であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、(A)の同時計数工程では、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する。そして、(B)の計数分離工程では、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムであって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、(A)の同時計数工程では、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する。そして、(B)の計数分離工程では、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、これらの工程を含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることによって、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な放射線同時計数処理記憶媒体であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶することを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、(B)の計数分離工程では、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、これらの工程を含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることによって、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を(α)の放射線検出器によって検出して出力情報を取得する。そして、(β)の出力情報記憶手段によって、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶し、(γ)の演算手段によって、出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置を用いた核医学診断装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段と、(δ)その演算処置で分離された真の同時計数に関する情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段で得られた画像に基づいて核医学診断を行うことを特徴とするものである。
【0024】
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、(γ)の演算手段によって、出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。また、放射線の同時計数をより精度よく行うことで、(δ)の画像処理手段で得られた画像に基づいて核医学診断をより正確に行うことができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5に記載された、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報、を記憶した記憶媒体を特徴とするものである。
【0026】
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、記憶媒体は、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶している。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体によれば、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【実施例】
【0028】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。なお、本実施例では、核医学診断装置として、PET装置を例に採って説明する。
【0029】
本実施例に係るPET装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1を備えている。この天板1は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸Zに沿って平行移動するように構成されている。このように構成することで、天板1に載置された被検体Mは、後述するガントリ2の開口部2aを通って、頭部から順に腹部、足部へと走査されて、被検体Mの投影データや断層画像といった診断データを得る。
【0030】
天板1の他に、本実施例装置は、開口部2aを有したガントリ2と、互いに近接配置された複数個のシンチレータブロック3aと複数個のフォトマルチプライヤ3bとを備えている。本実施例では、図4に示すように16×16のシンチレータからなるシンチレータブロック3aおよび16×16の検出素子からなるフォトマルチプライヤ3bを用いるが、シンチレータの数よりフォトマルチプライヤ3bの検出素子数は少なくてもよい。シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bは、被検体Mの体軸Z周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ2内に埋設されている。フォトマルチプライヤ3bは、シンチレータブロック3aよりも外側に配設されている。
【0031】
シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bからなるγ線検出器3の具体的な配置としては、例えば、被検体Mの体軸Zと平行な方向にはγ線検出器3のシンチレータが16個並び、被検体Mを囲むγ線検出器3が多(L)角形のリングからなる場合において多角形の各辺にγ線検出器3がL個並ぶ、すなわちLユニットの検出器が被検体Mの体軸Z周りを囲むように配設される形態が挙げられる。なお、被検体Mを囲むγ線検出器3の径によってγ線検出器3が並ぶ個数はL個に限定されない。γ線を同時に検出する、すなわちγ線を同時計数する一対となるγ線検出器3の組み合わせは、リングの中心に横たわる被検体Mを挟んで互いに対向した2つのγ線検出器3ユニット内のγ線検出器の1つずつで一対を構成する。また、本実施例では、シンチレータブロック3aが、シンチレータ層を多層に積層してコンプトン散乱が起きやすくなるように構成されている。また、このγ線検出器3は、3次元(DOI)検出器である。シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bからなるγ線検出器3は、この発明における放射線検出器に相当する。
【0032】
その他にも、本実施例装置は、天板駆動部4とコントローラ5とメモリ部6と入力部7と出力部8と同時計数回路9と再構成部10とを備えている。天板駆動部4は、天板1の上述した移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0033】
コントローラ5は、本実施例装置を構成する各部分を統括制御する。コントローラ5は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。なお、本実施例では、コントローラ5は、メモリ部6の後述する同時計数パターン用テーブル6aを参照して図2に示すγ線同時計数処理に係る演算処理を実行する機能を備えている。また、γ線同時計数処理を実行する場合には、メモリ部6の後述するγ線同時計数処理プログラム6bを読み出すことで行われる。したがって、コントローラ5は、この発明における演算手段に相当する。
【0034】
メモリ部6は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例では、同時計数回路9や再構成部10で処理されたデータについてはRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。ROMには、同時計数パターン用テーブル6aやγ線同時計数処理プログラム6bを予め記憶している。同時計数パターン用テーブル6aの具体的な作成方法やγ線同時計数処理プログラム6bの具体的な処理については、図2のフローチャートで後述するとともに、同時計数パターン用テーブル6aの内容については、図3、図4の説明図で後述する。同時計数パターン用テーブル6aは、この発明における出力情報記憶手段(記憶媒体)に相当し、γ線同時計数処理プログラム6bを記憶したROMは、この発明における放射線同時計数処理記憶媒体に相当する。
【0035】
入力部7は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ5に送り込む。入力部7は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部8はモニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0036】
再構成部10は、メモリ部6のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部7で入力された命令をコントローラ5が実行することで実現される。再構成部10はメモリ部6とともに、この発明における画像処理手段に相当する。
【0037】
放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)が投与された被検体Mから発生したγ線をシンチレータブロック3aが光に変換して、変換されたその光をフォトマルチプライヤ3bが光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素)として同時計数回路9に送り込む。
【0038】
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本のγ線が発生する。同時計数回路9は、発光したシンチレータブロック3aの位置とγ線の入射タイミングとをチェックし、前記一対を構成する2つのシンチレータブロック3aにγ線が同時に入射したときのみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一対を構成する2つのシンチレータブロック3aの内の一方のみにγ線が入射したときには、同時計数回路9は、ポジトロンの消滅により生じたγ線ではなくノイズとして扱い、そのときに送り込まれた画像情報もノイズと判定してそれを棄却する。
【0039】
実際には、同時計数回路9でかかる処理を行ったとしてもノイズを除去しきれずに、偶発あるいは散乱同時計数といったノイズ成分が残る。そこで、続いて、上述したγ線同時計数処理を行って、出力情報に相当する画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。
【0040】
同時計数回路9に送り込まれた画像情報を投影データとして、再構成部10に送り込む。再構成部10がその投影データを再構成して、被検体Mの断層画像を求める。断層画像を、コントローラ5を介して出力部8に送り込む。このようにして、再構成部10で得られた断層画像に基づいて核医学診断を行う。
【0041】
同時計数パターン用テーブル6aの具体的な作成方法やγ線同時計数処理プログラム6bの具体的な処理について、図2のフローチャートを参照して説明するとともに、同時計数パターン用テーブル6aの内容については、図3、図4の説明図を参照して説明する。図2は、予め用意しておく同時計数パターン用テーブル6aの作成処理、および未知のγ線を検出した際のγ線同時計数処理プログラム6bによる同時計数処理を一連として、その流れを示したフローチャートである。また、図3は、入射角度をそれぞれ変えたときのイベントを模式的に示した説明図であって、図4は、フォトマルチプライヤ3bからの出力分布の一例を模式的に示した説明図であり、(a)はシンチレータブロック3aの結晶内でγ線の正常な発光による光電効果が起きたとき、(b)はコンプトン散乱が起きたときである。なお、図3では、一対をなし同時計測を行う2つのγ線検出器が前記リングの中心軸を通り中心軸に対して垂直な軸上で互いに対向して配置している構成を例に採って説明する。この場合を、対向軸がリングの中心軸に対して垂直であるという。
【0042】
なお、本明細書における『イベント』とは、同時検出の対象となるγ線検出器3にγ線を入射して検出する動作を入射角度などを変えて繰り返すことで、イベント数をN(本実施例では2000)とする。また、本明細書における『次元』とは、同時計数を行う一対になる2つのγ線検出器3の総チャンネル数である。
【0043】
(ステップS1)イベントごとのシミュレーション
図3に示すように、シミュレーションを行うために同時検出の対象となる一対を構成する2つのγ線検出器31を用意して、γ線検出器31にγ線を入射して検出する動作を、入射角度を変えて繰り返すことでイベント数を増やす。
【0044】
なお、γ線検出器31に入射されるγ線についても、放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線を用いずに、同時検出の対象となるγ線を用いる。すなわち、γ線源(図示省略)を備えて、そのγ線源から照射されたγ線を用いる。このとき、入射角度を所望の角度に設定できるように、鉛(Pb)などからなるコリメータ(図示省略)を備えて、γ線の入射角度を調節する。図3では、前記一対をなし同時計測を行う2つの検出器に、入射角度θが0°、15°、30°および45°で各々γ線が入射する場合(N=4の場合)と、その後処理とを示している。なお、ガンマ線の入射により生じる図4に示されるような散乱パターンは、対向するγ線検出器3に同じ角度でγ線が入射した場合であっても、それぞれの検出器で異なるものとなる。
【0045】
(ステップS2)パターン分け
図3の一対構成においては、入射角度θが0°で一対をなす2つの検出器の両方に同時に入射されたときにγ線が散乱や偶発を起こさずに入射されたとして、そのときに得られた画像情報を真の同時計数に関する情報とする。それに対して、入射角度θがそれ以外の15°、30°または45°の場合には、γ線がコンプトン散乱によってあるいは偶発的に入射されたとして、そのときに得られた画像情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とする。このようにして、真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とを入射角度によりパターン分けして、同時計数パターンを取得する。
【0046】
なお、上述したように、同時検出の対象となる一対をなすγ線検出器3の組み合わせは、図3のように対向軸がリングの中心軸に対して垂直をなす組み合わせのみならず、対向軸がリングの中心軸を通らない組み合わせも含まれる。それらも、図3で述べた手法と同じ手順で、それぞれパターン分けを行う。この場合、真の同時計数に関する情報とみなす入射角度はα°であり、それ以外の入射角度の場合は偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とみなす(図11(b)を参照)。つまり、同時計数可能なγ線検出器の組み合わせを、互いに対向するγ線検出器ユニットと被検体Mとの位置関係を考慮し、真の同時計数の起こりえる組み合わせを予め選定しておき、その全てについてパターン分けを行い、真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分類しておく。
【0047】
γ線検出器の対向軸がリングの中心軸に対して垂直をなす一対においてはθ=0°が、対向軸が中心軸を通らない場合、図11(a)に示すように、両検出器を結ぶ線とそれぞれの検出器の検出中心軸(検出器の検出面の中心から立てた垂直軸)とのなす角度が、請求項でいう所定の角度となる。
【0048】
そして、対向軸がリングの中心軸を通らない一対においては、一対をなす同時計数可能なγ線検出器の位置関係や被検体Mとの位置関係が上述したように既知なので、真の同時計数に関する情報とみなす入射角度α°をこれらの位置関係に基づいて求めることができる。図11(a)に示すように、例えば各検出器の距離をt1とし、それぞれの検出器の検出中心軸(検出器の検出面の中心から立てた垂直軸)の距離をt2とすると、α°(=α´[rad])=sin-1(t2/t1)で所定の角度α°を求めることができる。
【0049】
同時検出の対象となるγ線検出器31を構成するフォトマルチプライヤ3bからの出力分布の一例は、図4に示すとおりである。図4の出力分布は、縦横に16チャンネル×16チャンネル分のγ線検出器3による画像情報の分布である(図4では『16ch』)。もし、図4(a)に示すようにシンチレータブロック3aの結晶内で光電効果が起きれば、その結晶中で留まって吸収されるが、偶発あるいは散乱の判断をせずに、真の同時計数に関するイベントとして用いる(図3では『光電吸収イベント』)。もし、図4(b)に示すようにシンチレータブロック3aの結晶内でコンプトン散乱が起きれば、少なくとも2点で白く光る。光電吸収イベントを含め、これらのイベントを多重散乱イベントとして用いる。
【0050】
(ステップS3)イベント数に達したか?
上述したステップS1およびS2を各々のイベント毎に行い、イベント数N(本実施例2000)に達したか否かを判定する。イベント数Nに達していない場合には、ステップS1に戻って、ステップS1およびS2を繰り返し行う。イベント数Nに達した場合には、次のステップS4に進む。
【0051】
(ステップS4)同時計数パターンテーブルへの記憶
一対となるγ線検出器についてこのようにパターン分けされた同時計数パターンの数は、次元の数とイベント数とを乗算した数となる。図3では、512次元×N(2000)個の分の同時計数パターンが得られたときを図示している。図3中の行列は、N個の行および512次元の列からなり、『Anode』は画像情報を示し、『Anode』の最初の下付き添え字はイベントの数[1,2,…,N]を示す。また、図3中の行列は、『Anode』の最後の下付き添え字のうち、『det1』は一方のγ線検出器31を示し、『det2』は一方のγ線検出器31に対向した他方のγ線検出器を示す。
【0052】
図3に示すような種々の同時計数パターンを、同時検出の対象となる一対をなすγ線検出器の全てについて一対ごとに同時計数パターン用テーブル6aに記憶する。かかる同時計数パターンは、後述する(ステップT2)同時計数パターン用テーブルの参照(『パターンマッチング』とも呼ばれる)で用いられる。この同時計数パターン用テーブルの作成処理には、例えばサポートベクタマシン(SVM)によるパターン認識法を用いて行えばよい(前田英作著,痛快!サポートベクトルマシン−古くて新しいパターン認識法,「情報処理」,NTTコミュニケーション科学基礎研究所,第42巻,第7号,2001年7月)。
【0053】
図9を参照して、より具体的に説明する。図9は、同時検出の対象となるγ線検出器のある組み合わせにおける画像情報をパターン分けするときの様子を模式的に示した説明図であって、イベント数が少ないときの様子を図9(a)とし、さらにイベント数を増やしたときの様子を図9(b)とする。説明の便宜上、図9および後述する図10は、同時計数を行う一対になるγ線検出器3の総チャンネル数である複数次元(図3では512次元)の画像情報を模式的に平面状に示す図であるとする。
【0054】
このステップS4も含めて、上述したステップSの処理をSVMに当てはめて説明する。SVMでは、上述したγ線検出器の次元などのように定量的に扱えるものを『特徴量』と呼ぶ。このようなd個の特徴量に着目したとすると、あるγ線検出器で検出された画像情報は『特徴空間』と呼ばれるd次元空間の1点xとして表すことができる。このd次元ベクトルxを『パターン』あるいは『特徴ベクトル』と呼び、特に、γ線検出器で検出された画像情報から得られるパターンを『学習パターン』と呼ぶ。図3のように512次元の場合には、512個の特徴量、すなわちd次元の特徴ベクトルxは512ということになる。また、一対となる(同時検出の対象となる)γ線検出器の組み合わせごとに、512次元ベクトルの画像情報が上述したステップS1〜S3にわたってイベント数Nだけ得られることになる。このようなステップS1〜S3の操作を『学習』と呼び、学習で得られた画像情報を『識別規則』と呼ぶ。
【0055】
ステップS2で真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分類されるが、真の同時計数に関する情報の集合をχ1とし、偶発あるいは散乱同時計数に関する情報の集合をχ2とする。真の同時計数に関する情報を『1』とするとともに、偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を『−1』とすると、識別規則は下記(1)式のように表される。
【0056】
【数1】
【0057】
上記(1)式中のfW(x)はxを引数とする関数であり、『識別関数』と呼ばれる。wは関数fのパラメータを表すベクトルである。特徴空間上の識別境界はgW(x)=0で与えられる。
【0058】
真の同時計数に関する情報の集合χ1を、図9では『○』で図示し、偶発あるいは散乱同時計数に関する情報の集合χ2を、図9では『×』で図示する。特徴空間上の識別境界gW(x)=0は、例えば図9(b)のようになる。
【0059】
同じ要領でステップS3のようにイベント数を増やして、図9に示す特徴空間上の同時計数を得る。そして、同時計数パターンを同時計数パターン用テーブル6aに記憶する。この計数パターンが、請求項でいう出力情報に相当する。ここまでのステップS1〜S4が、同時計数パターン用テーブル6aの作成処理であって、ここまでの処理に係るγ線検出器31による検出はシミュレーションで行われる。
【0060】
かかる同時計数パターン用テーブル6aの作成方法によれば、ステップS1では、同時検出の対象となるγ線検出器31にγ線を入射して検出するイベントを各検出器ごとに、ステップS1〜S3で繰り返すとともに入射角度θを変えて繰り返して、入射角度θごとの出力情報である画像情報を取得する。
【0061】
そして、ステップS2では、所定の入射角度θ(本実施例ではθが0°のとき)で同時に検出されたときの画像情報を真の同時計数に関する情報とするととともに、それ以外の入射角度θ(本実施例ではθが15°、30°または45°)で検出されたときの画像情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報として、パターン分けして同時計数パターンを取得する。かかる同時計数パターンの取得を、同時計数可能なγ線検出器の組み合わせ全てについて組み合わせごとにそれぞれ行う。そして、ステップS4でその同時計数パターンを同時計数パターン用テーブル6aに組み合わせごとにそれぞれ記憶する。
【0062】
以上をまとめると、このようにして得られた同時計数パターン用テーブル6aは、同時検出の対象となるγ線検出器31にγ線を入射して検出して得られた入射角度θごとの画像情報に基づいて、所定の入射角度θで同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度θで検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報として、シミュレーションによりパターン分けされた同時計数パターンが予め記憶されたテーブルである。
【0063】
これでγ線同時計数処理プログラム6bが、次のステップT1、T2を実行する準備ができたことになる。具体的には、γ線同時計数処理プログラム6bを実施例装置に組み込んで、コントローラ5がγ線同時計数処理プログラム6bを読み出して実行することでステップT1、T2が実現される。
【0064】
(ステップT1)実際の同時計数処理
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線を用いて実際の同時計数処理を行う。このγ線が図1に示すγ線検出器3に入射すると、その発光をこのγ線検出器3が検出して画像情報を出力する。なお、真の同時計数、偶発あるいは散乱の同時計数に関わらず、上述したようにγ線を同時計数するときのみ出力するようにコントローラ5は同時計数回路9を制御する。ステップT1は、この発明における(A)の同時計数工程に相当する。
【0065】
(ステップT2)同時計数パターン用テーブルの参照
ステップS1〜S4で作成された同時計数パターン用テーブル6bに記憶した画像情報を出力したのと同様に、ステップT1で同時計数された未知のγ線の画像情報を出力する。
【0066】
次に、その新たに出力した画像情報を、どの部分で出力されたかという出力情報と、同時計数パターン用テーブル6bに記憶されている画像情報との参照結果(すなわちSVMにおける識別規則)とに基づいて、その未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。他のγ線の画像情報についても同様に行って、未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。この同時計数パターン用テーブルの参照は、パターンマッチングとも呼ばれている。ステップT2は、この発明における(B)の計数分離工程に相当する。
【0067】
パターンマッチングについて図10を参照して、より具体的に説明する。図10に示すように、この未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報または偶発・散乱同時計数に関する情報のいずれかに分類する。未知のγ線の入射による画像情報を『△』で表す。未知のγ線の画像情報が、図9および図10に示す識別境界gW(x)=0を基準にして、『○』で表した真の同時計数に関する情報の集合χ1に属するか、または『×』で表した偶発あるいは散乱同時計数に関する情報の集合χ2に属するか否かを決定する。図10では、『△』で表した未知のγ線の画像情報が、『○』で表した真の同時計数に関する情報の集合χ1に属する場合を図示している。この場合には、『△』で表した未知のγ線の画像情報は、真の同時計数に関する情報χ1に分類されて、『×』で表した偶発あるいは散乱同時計数に関する情報χ2から分離される。
【0068】
かかるγ線同時計数処理および上述の構成を備えた本実施例装置によれば、ステップT1では、放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線をγ線検出器3が検出して、同時計数のときのみ出力情報である画像情報を取得する。そして、コントローラ5によって、ステップT2では、同時計数パターン用テーブル6bを参照して、同時計数されたγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。
【0069】
具体的には、同時検出の対象となるγ線検出器31にγ線を入射して検出して得られた入力角度θごとの出力情報(本実施例では画像情報)に基づいて、所定の入射角度θで同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度θで同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。
【0070】
この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、これらのステップT1、T2を含むγ線同時計数処理をコントローラ5に実行させることによってγ線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0071】
本実施例装置では、γ線の同時計数をより精度よく行うことで、再構成部10で得られた断層画像に基づいて核医学診断をより正確に行うことができる。
【0072】
同時計数パターン用テーブル6aに記憶された同時計数パターンのデータは、既にパターン分けされたデータである。このデータを学習に用いたデータ(Training Data)とするとともに、未知のγ線の画像情報のデータを学習に用いなかったデータ(Non Training Data)とする。各データを上述したサポートベクタマシン(SVM)に入力し、真(True)/偶発(Random)の判別能を調べた結果を、図5に示す。図5(a)はγ線を1mm×1mmの領域に入射した場合で、図5(b)はγ線を5.8mm×5.8mmの領域に入射した場合(いずれの入射領域も図5では『Irradiation Area』で示す)である。縦軸はその識別精度(図5では『Answer Ratio』)であって、入射角度θが0°と15°のとき、入射角度θが0°と30°のとき、入射角度θが0°と45°のときの学習に用いたデータ(Training Data)および学習に用いなかったデータ(Non Training Data)に関する識別精度の結果である。なお、入射の対象となるシンチレータとして単結晶を用いている。
【0073】
シミュレーションで得られたデータ、すなわち学習に用いたデータ(Training Data)について、図5の結果より識別精度が、学習に用いなかったデータ(Non Training Data)のときよりも良好であることがわかる。図5では単結晶のシンチレータであったが、多結晶に入射するにつれて識別精度が低下するものの、一定精度で真(True)/偶発(Random)の判別が可能であることが確認されている。
【0074】
本実施例装置で得られた被検体Mの投影データや断層画像といった診断データの画像のS/N比は、一般に雑音等価計数(noise equivalent count)で記述される。雑音等価計数をNECRとすると、雑音等価計数NECRは下記(2)式で表される。
【0075】
NECR=(a×T)2/(a×T+b×R+c×S) …(2)
ここで、Tは真の同時計数(true coincidence)、Rは偶発同時計数(random coincidence)、Sは散乱同時計数(scatter coincidence)をそれぞれ表す。a,b,cは比例計数で通常はa=b=c=1である。
【0076】
タイムウィンドウやエネルギウィンドウを狭めることで、偶発や散乱同時計数R,Sのノイズの成分をある程度低減させることが可能である。さらに、この発明により、真の同時計数Tと偶発や散乱同時計数R,Sとを分離することでTとR,Sとを判別して、さらに、a>bまたはa>cとすることで雑音等価計数NECRを向上させることが可能になる。
【0077】
このa,b,cの比率をどの程度改善することができるかは、判別性能に依存するが、一定レベルの判別能が得られる可能性があれば、検出器の種類によらず適用することが可能であり、時間分解能やエネルギ分解能の限界を超えて、雑音等価計数NECRを向上させることができる。この発明では、図5の結果によって一定レベルの判別能が得られることが確認されたので、この発明が適用することで、検出器の種類によらず雑音等価計数NECRを向上させることができる。
【0078】
また、ノイズ成分である偶発や散乱同時計数を低減させることができれば、画質向上による診断能の改善と、実質的な感度向上による被曝の低減と診断時間の短縮が可能になる。この発明で得られる効果は、上述した非特許文献2でのTOF(Time of Flight)方式と異なり被検体のサイズに依存しないので、全身用・頭部用・小動物用などの核医学診断装置に幅広く適用することができる。
【0079】
さらに、ポジトロンの消滅によって発生するγ線(消滅γ線)以外のγ線を発生させるポジトロン核種を測定する場合に問題となっていたバックグラウンドイベントの削減にも有効であるので、I−124などの長半減期の核種を使った放射性薬剤にも有効であると考えられる。
【0080】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0081】
(1)上述した実施例では、PET装置を例に採って説明したが、この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数して核医学診断を行う核医学装置であれば、PET装置に限定されずに適用することができる。
【0082】
(2)上述した実施例では、シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bから構成されるγ線検出器3が静止したままでγ線を検出する静止型であったが、シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bが被検体Mの周りを回転しながらγ線を検出する回転型でもよい。
【0083】
(3)この発明は、吸収補正を行うために被検体の近傍に外部線源を備えた装置にも適用することができる。すなわち、被検体Mに投与する放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)と同種の放射線を外部線源から照射して、吸収補正データ(トランスミッションデータ)を求めて、この吸収補正データを用いて吸収補正を行う前に、真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離することも可能である。
【0084】
(4)この発明は、PET装置とX線CT装置とを備えたPET−CTのように、核医学診断装置とX線CT装置とを組み合わせた装置にも適用することができる。
【0085】
(5)上述した実施例では、出力情報(実施例では画像情報)は、多チャンネルのγ線検出器から得られた電気信号の出力値であったが、出力情報はこれに限定されない。これらの電気信号から再構築した分布の和(エネルギ情報)や広がりの大きさなどの物理量を出力情報として用いることができる。また、パターン分けする手法については、サポートベクタマシン(SVM)によるパターン認識法に限定されない。
【0086】
(6)上述した実施例では、シンチレータ層を多層に積層した3次元(DOI)検出器であったが、検出器の種類については、特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。
【図2】同時計数パターン用テーブルの作成処理、およびγ線同時計数処理プログラムによる同時計数処理の一連の流れを示したフローチャートである。
【図3】対向軸がリングの中心軸に対して垂直をなす組み合わせにおいて、入射角度をそれぞれ変えたときのイベントを模式的に示した説明図である。
【図4】フォトマルチプライヤからの出力分布の一例を模式的に示した説明図であり、(a)はシンチレータブロックの結晶内でγ線の正常な発光による光電効果が起きたとき、(b)はコンプトン散乱が起きたときである。
【図5】(a)、(b)は、真(True)/偶発(Random)の判別能を調べた結果である。
【図6】(a)は偶発同時計数の様子を模式的に示した概略図であり、(b)は散乱同時計数の様子を模式的に示した概略図である。
【図7】被検体に投与される放射線薬剤の濃度に対する同時計数率の変化を示す計数率特性を模式的に示したグラフである。
【図8】従来のコンプトンカメラを使用したときの模式図である。
【図9】(a)、(b)は、同時検出の対象となるγ線検出器のある組み合わせにおける画像情報をパターン分けするときの様子を模式的に示した説明図である。
【図10】γ線同時計数処理時に同時計数された未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報または偶発・散乱同時計数に関する情報のいずれかに分類するときの様子を模式的に示した説明図である。
【図11】(a)、(b)は、対向軸がリングの中心軸を通らない組み合わせにおいて、入射角度をそれぞれ変えたときのイベントを模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0088】
3 … γ線検出器
5 … コントローラ
6a … 同時計数パターン用テーブル
6b … γ線同時計数処理プログラム
10 … 再構成部
M … 被検体
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数するための放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体に係り、特に、放射線を同時計数する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本のγ線を検出して複数個の検出器でγ線を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている。
【0003】
このPET装置では、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能である。したがって、PET装置によって得られる断層画像は機能情報を有する。
【0004】
ところで、γ線を同時に検出する、すなわちγ線を同時計数する技術では、γ線を2次元的に検出する2D−PETの他に、近年ではγ線を3次元的に検出する3D−PETが用いられている。かかる3D−PETでは、被検体の近傍に各検出器を大立体角にそれぞれ配設することでγ線の検出効率を高め、検出器の感度を飛躍的に向上させることができる。
【0005】
γ線を同時計数するには同時計数回路に各γ線を入力して、入力されたγ線の時間差が所定のタイムウィンドウ内に収まっているか否かで判断される。実際の同時計数回路では、10ns〜20ns(ns=10-9s)という非常に短いタイムウィンドウ内に検出されたγ線を「同時」とみなしている。したがって、互いに異なる2点で発生したγ線のそれぞれ一方を同時計数する可能性が生じてしまう。これを『偶発同時計数(random coincidence)』という。この偶発同時計数の様子を模式的に示した概略図を図6(a)に示す。一方、一対のγ線の一方あるいは双方が被検体内でコンプトン散乱を起こした後に同時計数された場合、これを『散乱同時計数(scatter coincidence)』という。この散乱同時計数の様子を模式的に示した概略図を図6(b)に示す。図6中の検出器においてハッチングで示した部分は、同時計数した検出器を示す。また、本来であれば一対のγ線の双方が同時計数された場合、これを『真の同時計数(true coincidence)』という。
【0006】
しかしながら、同時計数の検出器の組の数が増大すると、上述した偶発あるいは散乱同時計数といったノイズ成分も増大する。ノイズ成分が増大すると得られた画像のS/N比が頭打ちになる傾向がある。それについて図7を参照して説明する。図7は、被検体に投与される放射線薬剤の濃度に対する同時計数率の変化を示す計数率特性を模式的に示したグラフである。真の同時計数は放射線薬剤の濃度(図7では『放射能濃度』)に比例するのに対し、偶発同時計数はその濃度の2乗に比例する。したがって、真の同時計数率が頭打ちになる。同時計数率と同じ理由で画像のS/N比が頭打ちになる。このことから、ピークとなるS/N比以外では偶発や散乱同時計数のノイズによって良好なS/N比が得られない。
【0007】
そこで、真の同時計数の感度を向上させながら、偶発や散乱同時計数といったノイズ成分を低減させる技術が必要である。これらのノイズ成分を低減させる従来技術としては、以下のようなものが挙げられる。
【0008】
偶発同時計数については上述したタイムウィンドウを狭めることで低減させることができる。また、散乱同時計数についてはエネルギウィンドウを狭めることで低減させることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
各γ線の検出時間差を利用してγ線の発生源(陽子の消滅位置)を特定して、画像のS/N比を改善するTOF(Time of Flight)方式のPETが提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
また、検出器のコンプトン散乱を利用して、図8に示すように、シンチレータを多層に積層した検出器のエネルギからγ線の入射方向を計算するコンプトンカメラも研究されている(例えば、非特許文献3参照)。
【非特許文献1】藤林靖久 田口正俊 天野昌治著, 「核医学イメージング装置」,初版,株式会社コロナ社, 2002年4月25日, p.121−122
【非特許文献2】W. W. Moses, "Time of Flight in PET Revisited", IEEE Trans. Nucl. Sci., vol. 50, pp. 1325-1330, 2003.
【非特許文献3】J. E. Gillam, T. E. Beveridge, "Positron Emission Imaging Using Acquired Cone-Surfaces from Opposing Compton Cameras", Conf. Rec. NSS & MIC, M3-4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した非特許文献1の場合には、タイムウィンドウといった時間分解能やエネルギウィンドウといったエネルギ分解能は、検出器を構成するシンチレータ結晶によって決定される。したがって、性能の大幅な改善には限界があり、これらのウィンドウを十分に狭めることができない。
【0012】
また、上述した非特許文献2の場合には、検出時間差がわかるほどのシンチレータ結晶が現段階では存在しない。つまり、高速かつ高感度なシンチレータ結晶が存在しないので実用化に至っていない。また、TOFの効果は、被検体が人体の場合には体型の大きな人に限られ、例えば日本人のような体型の小さな人を対象とした臨床や小動物に応用することが難しい。
【0013】
また、上述した非特許文献3の場合には、コンプトン散乱が起きることが前提である。もし、γ線がシンチレータ結晶中を透過する、あるいはシンチレータ結晶中で留まる場合には、利用することができない。さらに、感度およびエネルギ分解能を両立させる検出器の開発が困難な上に、入射方向の推定精度に限界がある。したがって、1つのγ線(シングルγ線)のみでは高分解能かつ高感度な画像を得ることが難しい。
【0014】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理を行う放射線同時計数処理方法であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、(A)の同時計数工程では、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する。そして、(B)の計数分離工程では、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムであって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【0018】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、(A)の同時計数工程では、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する。そして、(B)の計数分離工程では、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、これらの工程を含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることによって、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な放射線同時計数処理記憶媒体であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶することを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、(B)の計数分離工程では、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、これらの工程を含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることによって、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段とを備えることを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を(α)の放射線検出器によって検出して出力情報を取得する。そして、(β)の出力情報記憶手段によって、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶し、(γ)の演算手段によって、出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置を用いた核医学診断装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段と、(δ)その演算処置で分離された真の同時計数に関する情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段で得られた画像に基づいて核医学診断を行うことを特徴とするものである。
【0024】
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、(γ)の演算手段によって、出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。また、放射線の同時計数をより精度よく行うことで、(δ)の画像処理手段で得られた画像に基づいて核医学診断をより正確に行うことができる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5に記載された、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報、を記憶した記憶媒体を特徴とするものである。
【0026】
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、記憶媒体は、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶している。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る放射線同時計数処理方法、放射線同時計数処理プログラムおよび放射線同時計数処理記憶媒体、並びに放射線同時計数装置およびそれを用いた核医学診断装置、記憶媒体によれば、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、放射線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【実施例】
【0028】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。なお、本実施例では、核医学診断装置として、PET装置を例に採って説明する。
【0029】
本実施例に係るPET装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1を備えている。この天板1は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸Zに沿って平行移動するように構成されている。このように構成することで、天板1に載置された被検体Mは、後述するガントリ2の開口部2aを通って、頭部から順に腹部、足部へと走査されて、被検体Mの投影データや断層画像といった診断データを得る。
【0030】
天板1の他に、本実施例装置は、開口部2aを有したガントリ2と、互いに近接配置された複数個のシンチレータブロック3aと複数個のフォトマルチプライヤ3bとを備えている。本実施例では、図4に示すように16×16のシンチレータからなるシンチレータブロック3aおよび16×16の検出素子からなるフォトマルチプライヤ3bを用いるが、シンチレータの数よりフォトマルチプライヤ3bの検出素子数は少なくてもよい。シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bは、被検体Mの体軸Z周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ2内に埋設されている。フォトマルチプライヤ3bは、シンチレータブロック3aよりも外側に配設されている。
【0031】
シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bからなるγ線検出器3の具体的な配置としては、例えば、被検体Mの体軸Zと平行な方向にはγ線検出器3のシンチレータが16個並び、被検体Mを囲むγ線検出器3が多(L)角形のリングからなる場合において多角形の各辺にγ線検出器3がL個並ぶ、すなわちLユニットの検出器が被検体Mの体軸Z周りを囲むように配設される形態が挙げられる。なお、被検体Mを囲むγ線検出器3の径によってγ線検出器3が並ぶ個数はL個に限定されない。γ線を同時に検出する、すなわちγ線を同時計数する一対となるγ線検出器3の組み合わせは、リングの中心に横たわる被検体Mを挟んで互いに対向した2つのγ線検出器3ユニット内のγ線検出器の1つずつで一対を構成する。また、本実施例では、シンチレータブロック3aが、シンチレータ層を多層に積層してコンプトン散乱が起きやすくなるように構成されている。また、このγ線検出器3は、3次元(DOI)検出器である。シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bからなるγ線検出器3は、この発明における放射線検出器に相当する。
【0032】
その他にも、本実施例装置は、天板駆動部4とコントローラ5とメモリ部6と入力部7と出力部8と同時計数回路9と再構成部10とを備えている。天板駆動部4は、天板1の上述した移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0033】
コントローラ5は、本実施例装置を構成する各部分を統括制御する。コントローラ5は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。なお、本実施例では、コントローラ5は、メモリ部6の後述する同時計数パターン用テーブル6aを参照して図2に示すγ線同時計数処理に係る演算処理を実行する機能を備えている。また、γ線同時計数処理を実行する場合には、メモリ部6の後述するγ線同時計数処理プログラム6bを読み出すことで行われる。したがって、コントローラ5は、この発明における演算手段に相当する。
【0034】
メモリ部6は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例では、同時計数回路9や再構成部10で処理されたデータについてはRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。ROMには、同時計数パターン用テーブル6aやγ線同時計数処理プログラム6bを予め記憶している。同時計数パターン用テーブル6aの具体的な作成方法やγ線同時計数処理プログラム6bの具体的な処理については、図2のフローチャートで後述するとともに、同時計数パターン用テーブル6aの内容については、図3、図4の説明図で後述する。同時計数パターン用テーブル6aは、この発明における出力情報記憶手段(記憶媒体)に相当し、γ線同時計数処理プログラム6bを記憶したROMは、この発明における放射線同時計数処理記憶媒体に相当する。
【0035】
入力部7は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ5に送り込む。入力部7は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部8はモニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0036】
再構成部10は、メモリ部6のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部7で入力された命令をコントローラ5が実行することで実現される。再構成部10はメモリ部6とともに、この発明における画像処理手段に相当する。
【0037】
放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)が投与された被検体Mから発生したγ線をシンチレータブロック3aが光に変換して、変換されたその光をフォトマルチプライヤ3bが光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素)として同時計数回路9に送り込む。
【0038】
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本のγ線が発生する。同時計数回路9は、発光したシンチレータブロック3aの位置とγ線の入射タイミングとをチェックし、前記一対を構成する2つのシンチレータブロック3aにγ線が同時に入射したときのみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一対を構成する2つのシンチレータブロック3aの内の一方のみにγ線が入射したときには、同時計数回路9は、ポジトロンの消滅により生じたγ線ではなくノイズとして扱い、そのときに送り込まれた画像情報もノイズと判定してそれを棄却する。
【0039】
実際には、同時計数回路9でかかる処理を行ったとしてもノイズを除去しきれずに、偶発あるいは散乱同時計数といったノイズ成分が残る。そこで、続いて、上述したγ線同時計数処理を行って、出力情報に相当する画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。
【0040】
同時計数回路9に送り込まれた画像情報を投影データとして、再構成部10に送り込む。再構成部10がその投影データを再構成して、被検体Mの断層画像を求める。断層画像を、コントローラ5を介して出力部8に送り込む。このようにして、再構成部10で得られた断層画像に基づいて核医学診断を行う。
【0041】
同時計数パターン用テーブル6aの具体的な作成方法やγ線同時計数処理プログラム6bの具体的な処理について、図2のフローチャートを参照して説明するとともに、同時計数パターン用テーブル6aの内容については、図3、図4の説明図を参照して説明する。図2は、予め用意しておく同時計数パターン用テーブル6aの作成処理、および未知のγ線を検出した際のγ線同時計数処理プログラム6bによる同時計数処理を一連として、その流れを示したフローチャートである。また、図3は、入射角度をそれぞれ変えたときのイベントを模式的に示した説明図であって、図4は、フォトマルチプライヤ3bからの出力分布の一例を模式的に示した説明図であり、(a)はシンチレータブロック3aの結晶内でγ線の正常な発光による光電効果が起きたとき、(b)はコンプトン散乱が起きたときである。なお、図3では、一対をなし同時計測を行う2つのγ線検出器が前記リングの中心軸を通り中心軸に対して垂直な軸上で互いに対向して配置している構成を例に採って説明する。この場合を、対向軸がリングの中心軸に対して垂直であるという。
【0042】
なお、本明細書における『イベント』とは、同時検出の対象となるγ線検出器3にγ線を入射して検出する動作を入射角度などを変えて繰り返すことで、イベント数をN(本実施例では2000)とする。また、本明細書における『次元』とは、同時計数を行う一対になる2つのγ線検出器3の総チャンネル数である。
【0043】
(ステップS1)イベントごとのシミュレーション
図3に示すように、シミュレーションを行うために同時検出の対象となる一対を構成する2つのγ線検出器31を用意して、γ線検出器31にγ線を入射して検出する動作を、入射角度を変えて繰り返すことでイベント数を増やす。
【0044】
なお、γ線検出器31に入射されるγ線についても、放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線を用いずに、同時検出の対象となるγ線を用いる。すなわち、γ線源(図示省略)を備えて、そのγ線源から照射されたγ線を用いる。このとき、入射角度を所望の角度に設定できるように、鉛(Pb)などからなるコリメータ(図示省略)を備えて、γ線の入射角度を調節する。図3では、前記一対をなし同時計測を行う2つの検出器に、入射角度θが0°、15°、30°および45°で各々γ線が入射する場合(N=4の場合)と、その後処理とを示している。なお、ガンマ線の入射により生じる図4に示されるような散乱パターンは、対向するγ線検出器3に同じ角度でγ線が入射した場合であっても、それぞれの検出器で異なるものとなる。
【0045】
(ステップS2)パターン分け
図3の一対構成においては、入射角度θが0°で一対をなす2つの検出器の両方に同時に入射されたときにγ線が散乱や偶発を起こさずに入射されたとして、そのときに得られた画像情報を真の同時計数に関する情報とする。それに対して、入射角度θがそれ以外の15°、30°または45°の場合には、γ線がコンプトン散乱によってあるいは偶発的に入射されたとして、そのときに得られた画像情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とする。このようにして、真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とを入射角度によりパターン分けして、同時計数パターンを取得する。
【0046】
なお、上述したように、同時検出の対象となる一対をなすγ線検出器3の組み合わせは、図3のように対向軸がリングの中心軸に対して垂直をなす組み合わせのみならず、対向軸がリングの中心軸を通らない組み合わせも含まれる。それらも、図3で述べた手法と同じ手順で、それぞれパターン分けを行う。この場合、真の同時計数に関する情報とみなす入射角度はα°であり、それ以外の入射角度の場合は偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とみなす(図11(b)を参照)。つまり、同時計数可能なγ線検出器の組み合わせを、互いに対向するγ線検出器ユニットと被検体Mとの位置関係を考慮し、真の同時計数の起こりえる組み合わせを予め選定しておき、その全てについてパターン分けを行い、真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分類しておく。
【0047】
γ線検出器の対向軸がリングの中心軸に対して垂直をなす一対においてはθ=0°が、対向軸が中心軸を通らない場合、図11(a)に示すように、両検出器を結ぶ線とそれぞれの検出器の検出中心軸(検出器の検出面の中心から立てた垂直軸)とのなす角度が、請求項でいう所定の角度となる。
【0048】
そして、対向軸がリングの中心軸を通らない一対においては、一対をなす同時計数可能なγ線検出器の位置関係や被検体Mとの位置関係が上述したように既知なので、真の同時計数に関する情報とみなす入射角度α°をこれらの位置関係に基づいて求めることができる。図11(a)に示すように、例えば各検出器の距離をt1とし、それぞれの検出器の検出中心軸(検出器の検出面の中心から立てた垂直軸)の距離をt2とすると、α°(=α´[rad])=sin-1(t2/t1)で所定の角度α°を求めることができる。
【0049】
同時検出の対象となるγ線検出器31を構成するフォトマルチプライヤ3bからの出力分布の一例は、図4に示すとおりである。図4の出力分布は、縦横に16チャンネル×16チャンネル分のγ線検出器3による画像情報の分布である(図4では『16ch』)。もし、図4(a)に示すようにシンチレータブロック3aの結晶内で光電効果が起きれば、その結晶中で留まって吸収されるが、偶発あるいは散乱の判断をせずに、真の同時計数に関するイベントとして用いる(図3では『光電吸収イベント』)。もし、図4(b)に示すようにシンチレータブロック3aの結晶内でコンプトン散乱が起きれば、少なくとも2点で白く光る。光電吸収イベントを含め、これらのイベントを多重散乱イベントとして用いる。
【0050】
(ステップS3)イベント数に達したか?
上述したステップS1およびS2を各々のイベント毎に行い、イベント数N(本実施例2000)に達したか否かを判定する。イベント数Nに達していない場合には、ステップS1に戻って、ステップS1およびS2を繰り返し行う。イベント数Nに達した場合には、次のステップS4に進む。
【0051】
(ステップS4)同時計数パターンテーブルへの記憶
一対となるγ線検出器についてこのようにパターン分けされた同時計数パターンの数は、次元の数とイベント数とを乗算した数となる。図3では、512次元×N(2000)個の分の同時計数パターンが得られたときを図示している。図3中の行列は、N個の行および512次元の列からなり、『Anode』は画像情報を示し、『Anode』の最初の下付き添え字はイベントの数[1,2,…,N]を示す。また、図3中の行列は、『Anode』の最後の下付き添え字のうち、『det1』は一方のγ線検出器31を示し、『det2』は一方のγ線検出器31に対向した他方のγ線検出器を示す。
【0052】
図3に示すような種々の同時計数パターンを、同時検出の対象となる一対をなすγ線検出器の全てについて一対ごとに同時計数パターン用テーブル6aに記憶する。かかる同時計数パターンは、後述する(ステップT2)同時計数パターン用テーブルの参照(『パターンマッチング』とも呼ばれる)で用いられる。この同時計数パターン用テーブルの作成処理には、例えばサポートベクタマシン(SVM)によるパターン認識法を用いて行えばよい(前田英作著,痛快!サポートベクトルマシン−古くて新しいパターン認識法,「情報処理」,NTTコミュニケーション科学基礎研究所,第42巻,第7号,2001年7月)。
【0053】
図9を参照して、より具体的に説明する。図9は、同時検出の対象となるγ線検出器のある組み合わせにおける画像情報をパターン分けするときの様子を模式的に示した説明図であって、イベント数が少ないときの様子を図9(a)とし、さらにイベント数を増やしたときの様子を図9(b)とする。説明の便宜上、図9および後述する図10は、同時計数を行う一対になるγ線検出器3の総チャンネル数である複数次元(図3では512次元)の画像情報を模式的に平面状に示す図であるとする。
【0054】
このステップS4も含めて、上述したステップSの処理をSVMに当てはめて説明する。SVMでは、上述したγ線検出器の次元などのように定量的に扱えるものを『特徴量』と呼ぶ。このようなd個の特徴量に着目したとすると、あるγ線検出器で検出された画像情報は『特徴空間』と呼ばれるd次元空間の1点xとして表すことができる。このd次元ベクトルxを『パターン』あるいは『特徴ベクトル』と呼び、特に、γ線検出器で検出された画像情報から得られるパターンを『学習パターン』と呼ぶ。図3のように512次元の場合には、512個の特徴量、すなわちd次元の特徴ベクトルxは512ということになる。また、一対となる(同時検出の対象となる)γ線検出器の組み合わせごとに、512次元ベクトルの画像情報が上述したステップS1〜S3にわたってイベント数Nだけ得られることになる。このようなステップS1〜S3の操作を『学習』と呼び、学習で得られた画像情報を『識別規則』と呼ぶ。
【0055】
ステップS2で真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分類されるが、真の同時計数に関する情報の集合をχ1とし、偶発あるいは散乱同時計数に関する情報の集合をχ2とする。真の同時計数に関する情報を『1』とするとともに、偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を『−1』とすると、識別規則は下記(1)式のように表される。
【0056】
【数1】
【0057】
上記(1)式中のfW(x)はxを引数とする関数であり、『識別関数』と呼ばれる。wは関数fのパラメータを表すベクトルである。特徴空間上の識別境界はgW(x)=0で与えられる。
【0058】
真の同時計数に関する情報の集合χ1を、図9では『○』で図示し、偶発あるいは散乱同時計数に関する情報の集合χ2を、図9では『×』で図示する。特徴空間上の識別境界gW(x)=0は、例えば図9(b)のようになる。
【0059】
同じ要領でステップS3のようにイベント数を増やして、図9に示す特徴空間上の同時計数を得る。そして、同時計数パターンを同時計数パターン用テーブル6aに記憶する。この計数パターンが、請求項でいう出力情報に相当する。ここまでのステップS1〜S4が、同時計数パターン用テーブル6aの作成処理であって、ここまでの処理に係るγ線検出器31による検出はシミュレーションで行われる。
【0060】
かかる同時計数パターン用テーブル6aの作成方法によれば、ステップS1では、同時検出の対象となるγ線検出器31にγ線を入射して検出するイベントを各検出器ごとに、ステップS1〜S3で繰り返すとともに入射角度θを変えて繰り返して、入射角度θごとの出力情報である画像情報を取得する。
【0061】
そして、ステップS2では、所定の入射角度θ(本実施例ではθが0°のとき)で同時に検出されたときの画像情報を真の同時計数に関する情報とするととともに、それ以外の入射角度θ(本実施例ではθが15°、30°または45°)で検出されたときの画像情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報として、パターン分けして同時計数パターンを取得する。かかる同時計数パターンの取得を、同時計数可能なγ線検出器の組み合わせ全てについて組み合わせごとにそれぞれ行う。そして、ステップS4でその同時計数パターンを同時計数パターン用テーブル6aに組み合わせごとにそれぞれ記憶する。
【0062】
以上をまとめると、このようにして得られた同時計数パターン用テーブル6aは、同時検出の対象となるγ線検出器31にγ線を入射して検出して得られた入射角度θごとの画像情報に基づいて、所定の入射角度θで同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度θで検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報として、シミュレーションによりパターン分けされた同時計数パターンが予め記憶されたテーブルである。
【0063】
これでγ線同時計数処理プログラム6bが、次のステップT1、T2を実行する準備ができたことになる。具体的には、γ線同時計数処理プログラム6bを実施例装置に組み込んで、コントローラ5がγ線同時計数処理プログラム6bを読み出して実行することでステップT1、T2が実現される。
【0064】
(ステップT1)実際の同時計数処理
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線を用いて実際の同時計数処理を行う。このγ線が図1に示すγ線検出器3に入射すると、その発光をこのγ線検出器3が検出して画像情報を出力する。なお、真の同時計数、偶発あるいは散乱の同時計数に関わらず、上述したようにγ線を同時計数するときのみ出力するようにコントローラ5は同時計数回路9を制御する。ステップT1は、この発明における(A)の同時計数工程に相当する。
【0065】
(ステップT2)同時計数パターン用テーブルの参照
ステップS1〜S4で作成された同時計数パターン用テーブル6bに記憶した画像情報を出力したのと同様に、ステップT1で同時計数された未知のγ線の画像情報を出力する。
【0066】
次に、その新たに出力した画像情報を、どの部分で出力されたかという出力情報と、同時計数パターン用テーブル6bに記憶されている画像情報との参照結果(すなわちSVMにおける識別規則)とに基づいて、その未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。他のγ線の画像情報についても同様に行って、未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。この同時計数パターン用テーブルの参照は、パターンマッチングとも呼ばれている。ステップT2は、この発明における(B)の計数分離工程に相当する。
【0067】
パターンマッチングについて図10を参照して、より具体的に説明する。図10に示すように、この未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報または偶発・散乱同時計数に関する情報のいずれかに分類する。未知のγ線の入射による画像情報を『△』で表す。未知のγ線の画像情報が、図9および図10に示す識別境界gW(x)=0を基準にして、『○』で表した真の同時計数に関する情報の集合χ1に属するか、または『×』で表した偶発あるいは散乱同時計数に関する情報の集合χ2に属するか否かを決定する。図10では、『△』で表した未知のγ線の画像情報が、『○』で表した真の同時計数に関する情報の集合χ1に属する場合を図示している。この場合には、『△』で表した未知のγ線の画像情報は、真の同時計数に関する情報χ1に分類されて、『×』で表した偶発あるいは散乱同時計数に関する情報χ2から分離される。
【0068】
かかるγ線同時計数処理および上述の構成を備えた本実施例装置によれば、ステップT1では、放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線をγ線検出器3が検出して、同時計数のときのみ出力情報である画像情報を取得する。そして、コントローラ5によって、ステップT2では、同時計数パターン用テーブル6bを参照して、同時計数されたγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離する。
【0069】
具体的には、同時検出の対象となるγ線検出器31にγ線を入射して検出して得られた入力角度θごとの出力情報(本実施例では画像情報)に基づいて、所定の入射角度θで同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度θで同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する。
【0070】
この偶発あるいは散乱同時計数に関する情報を真の同時計数に関する情報から分離することで、偶発あるいは散乱同時計数に関するノイズ成分を低減させることができる。その結果、これらのステップT1、T2を含むγ線同時計数処理をコントローラ5に実行させることによってγ線の同時計数をより精度よく行うことができる。
【0071】
本実施例装置では、γ線の同時計数をより精度よく行うことで、再構成部10で得られた断層画像に基づいて核医学診断をより正確に行うことができる。
【0072】
同時計数パターン用テーブル6aに記憶された同時計数パターンのデータは、既にパターン分けされたデータである。このデータを学習に用いたデータ(Training Data)とするとともに、未知のγ線の画像情報のデータを学習に用いなかったデータ(Non Training Data)とする。各データを上述したサポートベクタマシン(SVM)に入力し、真(True)/偶発(Random)の判別能を調べた結果を、図5に示す。図5(a)はγ線を1mm×1mmの領域に入射した場合で、図5(b)はγ線を5.8mm×5.8mmの領域に入射した場合(いずれの入射領域も図5では『Irradiation Area』で示す)である。縦軸はその識別精度(図5では『Answer Ratio』)であって、入射角度θが0°と15°のとき、入射角度θが0°と30°のとき、入射角度θが0°と45°のときの学習に用いたデータ(Training Data)および学習に用いなかったデータ(Non Training Data)に関する識別精度の結果である。なお、入射の対象となるシンチレータとして単結晶を用いている。
【0073】
シミュレーションで得られたデータ、すなわち学習に用いたデータ(Training Data)について、図5の結果より識別精度が、学習に用いなかったデータ(Non Training Data)のときよりも良好であることがわかる。図5では単結晶のシンチレータであったが、多結晶に入射するにつれて識別精度が低下するものの、一定精度で真(True)/偶発(Random)の判別が可能であることが確認されている。
【0074】
本実施例装置で得られた被検体Mの投影データや断層画像といった診断データの画像のS/N比は、一般に雑音等価計数(noise equivalent count)で記述される。雑音等価計数をNECRとすると、雑音等価計数NECRは下記(2)式で表される。
【0075】
NECR=(a×T)2/(a×T+b×R+c×S) …(2)
ここで、Tは真の同時計数(true coincidence)、Rは偶発同時計数(random coincidence)、Sは散乱同時計数(scatter coincidence)をそれぞれ表す。a,b,cは比例計数で通常はa=b=c=1である。
【0076】
タイムウィンドウやエネルギウィンドウを狭めることで、偶発や散乱同時計数R,Sのノイズの成分をある程度低減させることが可能である。さらに、この発明により、真の同時計数Tと偶発や散乱同時計数R,Sとを分離することでTとR,Sとを判別して、さらに、a>bまたはa>cとすることで雑音等価計数NECRを向上させることが可能になる。
【0077】
このa,b,cの比率をどの程度改善することができるかは、判別性能に依存するが、一定レベルの判別能が得られる可能性があれば、検出器の種類によらず適用することが可能であり、時間分解能やエネルギ分解能の限界を超えて、雑音等価計数NECRを向上させることができる。この発明では、図5の結果によって一定レベルの判別能が得られることが確認されたので、この発明が適用することで、検出器の種類によらず雑音等価計数NECRを向上させることができる。
【0078】
また、ノイズ成分である偶発や散乱同時計数を低減させることができれば、画質向上による診断能の改善と、実質的な感度向上による被曝の低減と診断時間の短縮が可能になる。この発明で得られる効果は、上述した非特許文献2でのTOF(Time of Flight)方式と異なり被検体のサイズに依存しないので、全身用・頭部用・小動物用などの核医学診断装置に幅広く適用することができる。
【0079】
さらに、ポジトロンの消滅によって発生するγ線(消滅γ線)以外のγ線を発生させるポジトロン核種を測定する場合に問題となっていたバックグラウンドイベントの削減にも有効であるので、I−124などの長半減期の核種を使った放射性薬剤にも有効であると考えられる。
【0080】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0081】
(1)上述した実施例では、PET装置を例に採って説明したが、この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数して核医学診断を行う核医学装置であれば、PET装置に限定されずに適用することができる。
【0082】
(2)上述した実施例では、シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bから構成されるγ線検出器3が静止したままでγ線を検出する静止型であったが、シンチレータブロック3aおよびフォトマルチプライヤ3bが被検体Mの周りを回転しながらγ線を検出する回転型でもよい。
【0083】
(3)この発明は、吸収補正を行うために被検体の近傍に外部線源を備えた装置にも適用することができる。すなわち、被検体Mに投与する放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)と同種の放射線を外部線源から照射して、吸収補正データ(トランスミッションデータ)を求めて、この吸収補正データを用いて吸収補正を行う前に、真の同時計数に関する情報と偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とに分離することも可能である。
【0084】
(4)この発明は、PET装置とX線CT装置とを備えたPET−CTのように、核医学診断装置とX線CT装置とを組み合わせた装置にも適用することができる。
【0085】
(5)上述した実施例では、出力情報(実施例では画像情報)は、多チャンネルのγ線検出器から得られた電気信号の出力値であったが、出力情報はこれに限定されない。これらの電気信号から再構築した分布の和(エネルギ情報)や広がりの大きさなどの物理量を出力情報として用いることができる。また、パターン分けする手法については、サポートベクタマシン(SVM)によるパターン認識法に限定されない。
【0086】
(6)上述した実施例では、シンチレータ層を多層に積層した3次元(DOI)検出器であったが、検出器の種類については、特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。
【図2】同時計数パターン用テーブルの作成処理、およびγ線同時計数処理プログラムによる同時計数処理の一連の流れを示したフローチャートである。
【図3】対向軸がリングの中心軸に対して垂直をなす組み合わせにおいて、入射角度をそれぞれ変えたときのイベントを模式的に示した説明図である。
【図4】フォトマルチプライヤからの出力分布の一例を模式的に示した説明図であり、(a)はシンチレータブロックの結晶内でγ線の正常な発光による光電効果が起きたとき、(b)はコンプトン散乱が起きたときである。
【図5】(a)、(b)は、真(True)/偶発(Random)の判別能を調べた結果である。
【図6】(a)は偶発同時計数の様子を模式的に示した概略図であり、(b)は散乱同時計数の様子を模式的に示した概略図である。
【図7】被検体に投与される放射線薬剤の濃度に対する同時計数率の変化を示す計数率特性を模式的に示したグラフである。
【図8】従来のコンプトンカメラを使用したときの模式図である。
【図9】(a)、(b)は、同時検出の対象となるγ線検出器のある組み合わせにおける画像情報をパターン分けするときの様子を模式的に示した説明図である。
【図10】γ線同時計数処理時に同時計数された未知のγ線の画像情報を真の同時計数に関する情報または偶発・散乱同時計数に関する情報のいずれかに分類するときの様子を模式的に示した説明図である。
【図11】(a)、(b)は、対向軸がリングの中心軸を通らない組み合わせにおいて、入射角度をそれぞれ変えたときのイベントを模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
【0088】
3 … γ線検出器
5 … コントローラ
6a … 同時計数パターン用テーブル
6b … γ線同時計数処理プログラム
10 … 再構成部
M … 被検体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理を行う放射線同時計数処理方法であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを備えていることを特徴とする放射線同時計数処理方法。
【請求項2】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムであって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることを特徴とする放射線同時計数処理プログラム。
【請求項3】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な放射線同時計数処理記憶媒体であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶することを特徴とする放射線同時計数処理記憶媒体。
【請求項4】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段とを備えることを特徴とする放射線同時計数装置。
【請求項5】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置を用いた核医学診断装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段と、(δ)その演算処置で分離された真の同時計数に関する情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段で得られた画像に基づいて核医学診断を行うことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載された、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報、を記憶した記憶媒体。
【請求項1】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理を行う放射線同時計数処理方法であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを備えていることを特徴とする放射線同時計数処理方法。
【請求項2】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムであって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させることを特徴とする放射線同時計数処理プログラム。
【請求項3】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程を含んだ一連の放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるための放射線同時計数処理プログラムを記録した、コンピュータに読み取り可能な放射線同時計数処理記憶媒体であって、(A)前記被検体から発生した放射線を同時計数する同時計数工程と、(B)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する計数分離工程とを含む放射線同時計数処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶することを特徴とする放射線同時計数処理記憶媒体。
【請求項4】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段とを備えることを特徴とする放射線同時計数装置。
【請求項5】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線を同時計数する放射線同時計数装置を用いた核医学診断装置であって、(α)入射された放射線を検出する放射線検出器と、(β)同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報を記憶する出力情報記憶手段と、(γ)前記出力情報記憶手段からの出力情報に基づいて、所定の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を真の同時計数に関する情報とし、それ以外の入射角度で同時に検出されたときの出力情報を偶発あるいは散乱同時計数に関する情報とするように分離する演算処理を行う演算手段と、(δ)その演算処置で分離された真の同時計数に関する情報に基づいて画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段で得られた画像に基づいて核医学診断を行うことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載された、同時検出の対象となる放射線検出器に放射線を入射して検出して得られた入射角度ごとの出力情報、を記憶した記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−71858(P2007−71858A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305944(P2005−305944)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【出願人】(301032942)独立行政法人放射線医学総合研究所 (149)
【Fターム(参考)】
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