説明

放射線撮像装置

【課題】バイアス電源に求められる電流容量を少なくすることができる放射線撮像装置を提供する。
【解決手段】実施の形態の核医学診断装置1は、放射線6を検出するCdTe素子50を有する複数の放射線検出器グループと、複数の放射線検出器グループのそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス電源23と、バイアス電源23と複数の放射線検出器グループのそれぞれの間に設けられ、入力するオン信号によりバイアス電圧を供給しない状態であるオン状態となり、入力するオフ信号によりバイアス電圧を供給する状態であるオフ状態となることで対象となる放射線検出器グループのリフレッシュ処理が行われる複数のリフレッシュ回路504と、複数のリフレッシュ回路504にオン信号又はオフ信号を出力することにより、複数のリフレッシュ回路504を制御するリフレッシュ制御部81と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、CdTe半導体素子のアノード電極とカソード電極間の距離と、これらの電極間に印加されるバイアス電圧の大きさに応じてバイアス電圧を印加する時間を定め、その時間内ではバイアス電圧を印加して計測を行った後、バイアス電圧の印加を停止してバイアス電圧をゼロにする放射線検出方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の放射線検出方法は、連続測定において、電流パルスの高さや頻度が低下する現象を、バイアス電圧の印加を数秒間休止することで回復させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3151487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の放射線検出方法では、バイアス電源によりバイアス電圧が印加されるCdTe半導体素子の数が増加すると、短時間でバイアス電圧の放電及び充電を行うためにバイアス電源に求められる電流容量が大きくなるという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、バイアス電源に求められる電流容量を少なくすることができる放射線撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、放射線を検出する半導体素子を有する複数の放射線検出器グループと、複数の放射線検出器グループのそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス電源と、バイアス電源と複数の放射線検出器グループのそれぞれの間に設けられ、入力する第1の信号によりバイアス電圧を供給しない状態である第1の状態となり、入力する第2の信号によりバイアス電圧を供給する状態である第2の状態となることで対象となる放射線検出器グループのリフレッシュ処理が行われる複数のリフレッシュ部と、複数のリフレッシュ部に第1の信号又は第2の信号を出力することにより、複数のリフレッシュ部を制御するリフレッシュ制御部と、を備えた放射線撮像装置を提供する。
【0008】
また、上記の複数の放射線検出器グループのうち、少なくとも1つを有する複数の検出器ヘッドを備え、バイアス電源が、複数の検出器ヘッドの数と同数であることが好ましい。
【0009】
また、上記のリフレッシュ制御部が、複数の放射線検出器グループのそれぞれにリフレッシュ処理を行うための第1の信号を、予め定められた周期に応じてそれぞれのリフレッシュ部に出力することが好ましい。
【0010】
また、上記のリフレッシュ制御部が、リフレッシュ処理の周期に応じて第1の信号及び第2の信号を出力することが好ましい。
【0011】
また、上記のリフレッシュ制御部が、ダミーイベント信号を生成することが好ましい。
【0012】
また、上記のリフレッシュ制御部が、第1の信号又は第2の信号を生成した時刻を示すタイムスタンプ情報をダミーイベント信号に付加することが好ましい。
【0013】
上記のリフレッシュ制御部が、取得した制御信号に基づいて第1の信号及び第2の信号をリフレッシュ部に出力することが好ましい。
【0014】
また、データ収集時間がリフレッシュ処理にかかる時間よりも短いとき、リフレッシュ処理が、データ収集開始前、又は、データ収集終了後に行われることが好ましい。
【0015】
また、上記のデータ収集時間とリフレッシュ処理にかかる時間との和が周期よりも短いとき、リフレッシュ処理の周期が、フレームごとに変化することが好ましい。
【0016】
また、上記のリフレッシュ制御部が、先頭のフレームに続くn個のフレームの計測が終了する時間が周期よりも短いとき、n個のフレームの計測が終了する時間が周期よりも短いことを満たすnを選択し、リフレッシュ部が、n番目のフレームの計測終了後のn+1番目の測定開始前にリフレッシュ処理を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る放射線撮像装置によれば、バイアス電源に求められる電流容量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係る核医学診断装置の概略図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態に係る複数の放射線検出器が並べられて構成される検出器ヘッドの斜視図である。
【図3】図3は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。
【図4】図4は、第1の実施の形態に係る核医学診断装置の回路構成の概要を示すブロック図である。
【図5】図5は、第1の実施の形態に係る放射線検出器に搭載された放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態に係る検出器のグループに関するブロック図である。
【図7】図7(a)は、第1の実施の形態に係る第1のリフレッシュ処理に関する概略図であり、(b)は、第2のリフレッシュ処理に関する概略図であり、(c)は、第3のリフレッシュ処理に関する概略図である。
【図8】図8は、第2の実施の形態に係る核医学診断装置の回路構成の概要を示すブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施の形態に係る検出器のグループに関するブロック図である。
【図10】図10は、第3の実施の形態に係る放射線検出器に搭載された放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。
【図11】図11は、変形例1に係るダイナミックスキャンデータ収集に関する概略図である。
【図12】図12は、変形例2に係るスタティックスキャンデータ収集に関する概略図である。
【図13】図13は、変形例3に係るECGゲート測定モードによるデータ収集に関する概略図である。
【図14】図14は、変形例4に係るSPECTスキャンによるデータ収集に関する概略図である。
【図15】図15は、変形例5に係るSPECTスキャンによる高速ファニングスキャンモードにおけるデータ収集に関する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態の要約]
実施の形態に係る放射線撮像装置は、放射線を検出する半導体素子を有する複数の放射線検出器グループと、複数の放射線検出器グループのそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス電源と、バイアス電源と複数の放射線検出器グループのそれぞれの間に設けられ、入力する第1の信号によりバイアス電圧を供給しない状態である第1の状態となり、入力する第2の信号によりバイアス電圧を供給する状態である第2の状態となることで対象となる放射線検出器グループのリフレッシュ処理が行われる複数のリフレッシュ部と、複数のリフレッシュ部に第1の信号又は第2の信号を出力することにより、複数のリフレッシュ部を制御するリフレッシュ制御部と、を備える。
【0020】
[第1の実施の形態]
(核医学診断装置1の構成の概要)
図1は、第1の実施の形態に係る核医学診断装置の概略図である。放射線撮像装置としての核医学診断装置1は、例えば、被検体に投与した薬剤から放出される放射線を検出し、その検出結果に基づいて画像を再構成した再構成画像を生成し、表示部91に表示させるものである。
【0021】
核医学診断装置1は、例えば、図1に示すように、少なくとも1つの検出器ヘッド3を開口部21に回転可能に配置し、この検出器ヘッド3を支持し、被検体の周囲に回転させる機構部を含むガントリ20、及び、ガントリ20の開口部21へ被検体を搬送する寝台22、を有する放射線検出装置2と、撮影条件、収集データの処理、再構成画像の形成、画像データの解析などを統括する制御装置8と、撮影条件、画像処理条件、表示条件や制御装置8への各種指示を入力するための入力部90と、再構成画像や各種指示入力情報を表示する表示部91と、を備えて概略構成されている。
【0022】
放射線検出装置2と制御装置8は、通信ケーブル7によって接続されている。被検体から放出された放射線を検出して生成される放射線検出信号が、通信ケーブル7によりガントリ20を介して、検出器ヘッド3から制御装置8へ出力される。各種制御信号は、放射線検出装置2と制御装置8の間で送受信される。
【0023】
(検出器ヘッド3の構成)
図2は、第1の実施の形態に係る複数の放射線検出器が並べられて構成される検出器ヘッドの斜視図である。図3は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。
【0024】
本実施の形態に係る検出器ヘッド3は、図2に示すように、複数の放射線検出器5を放射線検出器立て300によって保持することにより構成される。具体的には、複数の放射線検出器5が並べられる間隔に応じて予め定められた距離をおいて並び、複数の放射線検出器5が挿入される複数の溝311が形成された複数の支持体31と、支持体31を搭載する基部30と、複数の支持体31の間に設けられ、複数の放射線検出器5のカードエッジ部60のそれぞれが接続される複数のコネクタ32とを備える放射線検出器立て300に複数の放射線検出器5が保持される。支持体31の複数の溝311のそれぞれに本実施の形態に係る複数の放射線検出器5が挿入され、固定されることにより図2に示すような検出器ヘッド3が構成される。
【0025】
複数の支持体31は、基部30上に放射線検出器5の幅に対応する間隔を有して設けられる。そして、複数の支持体31はそれぞれ、複数の壁部310を有しており、各壁部310の間に溝311が形成される。壁部310は、一方の表面にくぼみ部312が設けられ、他方の表面は平坦面313である。図3に示す放射線検出器5の弾性部材実装部55には、例えば、板金を用いて形成される弾性部材56が組み込まれ、支持体31の溝311に放射線検出器5が挿入された場合に、この弾性部材56により放射線検出器5が壁部310の平坦面313に押さえ付けられることにより支持体31に放射線検出器5が固定される。なお、複数の支持体31はそれぞれ金属材料から切削等により形成できる。
【0026】
コリメータ4は、複数の開口を有し、複数の放射線検出器5の上方、すなわち、放射線検出器5の基部30の反対側に備え付けられる。コリメータ4を用いることにより、特定の方向からの放射線6のみを後述するCdTe素子において検出することができる。一例として、コリメータ4の複数の開口は略四角形状に形成される。
【0027】
(放射線検出器5の構成)
本実施の形態に係る放射線検出器5は、γ線、X線等の放射線6を検出する放射線検出器である。図3において放射線6は、紙面の上方から下方に沿って入射してくる。すなわち、放射線6は、放射線検出器5の半導体素子としてのCdTe素子50からカードホルダ53に向かう方向に沿って伝搬して放射線検出器5に入射する。
【0028】
そして、放射線検出器5は、CdTe素子50のそれぞれの側面(つまり、図3の上方に面している面)に放射線6が入射する。したがって、CdTe素子50のそれぞれの側面が放射線6の入射面となっている。このように、半導体素子の側面を放射線6の入射面とする放射線検出器を、エッジオン型の放射線検出器と称する。
【0029】
なお、放射線検出器5は、特定の方向(例えば、被検体から放射線検出器5に向かう方向)に沿って入射してくる放射線6が通過する複数の開口を有するコリメータ4を介して放射線6を検出する。なお、コリメータ4は、多孔平行コリメータであるが、これに限定されず、ピンホールコリメータ等を用いても良い。また、本実施の形態は、エッジオン型でない放射線検出器にも適用することができる。また、本実施の形態に係る放射線検出器5は、カード型の形状を呈する。
【0030】
また、放射線検出器5の基板51はカードホルダ53とカードホルダ54とに挟み込まれて支持される。カードホルダ53とカードホルダ54とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ53が有する溝付穴58にカードホルダ54が有する突起部57が嵌め合わされると共に、カードホルダ54が有する溝付穴(図示しない)にカードホルダ53が有する突起部59が嵌め合わされることにより基板51を支持する。
【0031】
また、弾性部材実装部55は、複数の放射線検出器5を支持する放射線検出器立て300に放射線検出器5が挿入された場合に、放射線検出器5を放射線検出器立て300に押し付けて固定する弾性部材56が設けられる部分である。なお、放射線検出器立て300はカードエッジ部60が挿入されるコネクタ32を有しており、放射線検出器5は、カードエッジ部60がコネクタ32に挿入されて、カードエッジ部60に形成されたパターン60aとコネクタ32とが電気的に接続される。
【0032】
放射線検出器5は、例えば、基板51の片側に4つのCdTe素子50が一定の間隔で配置され、他方側に4つのCdTe素子50が一定の間隔で配置されている。
【0033】
フレキシブル基板52は、例えば、フィルム状の樹脂(例えば、ポリイミド)を用いて形成された基板である。
【0034】
フレキシブル基板52は、図1の紙面に対して下部に、略半円形状の接続部520〜接続部523を有する。接続部520〜接続部523は、導電性材料を用いて形成されたパターンであり、例えば、Cu等を用いて形成される。接続部520は、図3に示すように、基板端子510と電気的に接続するように構成されている。同様に、接続部521は基板端子511と、接続部522は基板端子512と、接続部523は基板端子513と、電気的に接続するように構成されている。なお、図3では、フレキシブル基板52の反対側のフレキシブル基板と電気的に接続する基板端子及び反対側のフレキシブル基板の図示を省略している。
【0035】
また、CdTe素子50に設けられた複数の溝部(図示せず)は、素子表面に略等間隔で設けられる。さらに、CdTe素子50は、一例として、7つの溝部を有する。
【0036】
この溝部で分けられるCdTe素子の部分のそれぞれが、放射線6を検出する1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、1つのCdTe素子は、複数の画素を有することになる。そして、1つの放射線検出器5が8つのCdTe素子50を備え、1つのCdTe素子50が8つのピクセルを有する場合、1つの放射線検出器5は、64ピクセルの解像度を有することになる。溝部の数を増減させることにより、1つのCdTe素子50のピクセル数を増減させることができる。
【0037】
また、基板51は、複数のCdTe素子50のそれぞれが搭載される第1の端部側の幅が、複数のCdTe素子50が搭載される第1の端部側の反対側の第2の端部側よりも広く形成される。なお、第2の端部側において基板51はカードホルダ53及びカードホルダ54によって支持される。また、第2の端部側には、放射線検出器5と外部の制御回路とを電気的に接続可能である複数のパターン60aが設けられたカードエッジ部60が設けられる。また、CdTe素子50と電気的に接続する基板51に形成された素子接続部(図示せず)とカードエッジ部60との間には、複数のCdTe素子50のそれぞれと、素子接続部を介して電気的に接続する抵抗、コンデンサ等の電子部品を搭載する複数の電子部品搭載部61が設けられる。なお、電子部品搭載部61には、後述するApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)、及びField Programmable Gate Array(FPGA)等が搭載される。
【0038】
なお、基板51は、一例として、幅広の方向、すなわち長手方向は40mm程度の長さを有して形成される。そして、基板51は、幅広の部分の端部から幅が狭くなっている部分の端部まで、すなわち、素子接続部が設けられている部分の端からカードエッジ部60の端までの短手方向において、20mm程度の長さを有して形成される。
【0039】
本実施の形態において、半導体素子を構成する化合物半導体としては、例えば、CdTeを用いたがこれに限定されず、γ線等の放射線を検出するCdZnTe(CZT)素子、HgI素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。
【0040】
(核医学診断装置1の回路構成)
図4は、第1の実施の形態に係る核医学診断装置の回路構成の概要を示すブロック図である。
【0041】
核医学診断装置1の放射線検出装置2は、図4に示すように、例えば、n個の検出器ヘッドと、n個の検出器ヘッドに接続された1つのバイアス電源23と、をガントリ20に備えている。図4では、一例として、第1の検出器ヘッド3a〜第nの検出器ヘッド3zを図示している。この第1の検出器ヘッド3a〜第nの検出器ヘッド3zは、検出器ヘッド3と同じ構成を有するものとする。
【0042】
制御装置8は、図4に示すように、時間管理部800を有する制御部80と、リフレッシュ制御部81と、を備えて概略構成されている。
【0043】
制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を用いて構成されている。
【0044】
時間管理部800は、リフレッシュ処理の開始時間等を管理する。制御部80は、この時間管理部800からの指示、又は、入力部90に入力された指示に基づいてリフレッシュ制御信号を生成する。
【0045】
また、制御部80は、入力部90及び表示部91と接続されている。入力部90は、例えば、キーボード等の入力装置であり、操作に応じた操作信号を生成し、制御部80に出力する。表示部91は、例えば、液晶モニタであり、制御部80から出力される表示制御信号に基づいて再構成画像を表示する。制御部80は、寝台22を駆動するための寝台制御信号を寝台22に出力する。制御部80は、各検出器ヘッドにデータ制御信号及び収集制御信号を出力する。データ制御信号は、検出器ヘッドで撮像するフレームの情報等の信号である。収集制御信号は、放射線の入射により発生した電荷の収集を制御する信号である。
【0046】
さらに、制御部80は、リフレッシュ制御部81と接続されている。リフレッシュ制御部81は、制御部80から出力されたリフレッシュ制御信号に基づいて、予め定められた周期で後述するリフレッシュ回路を第1の状態としてのオン状態又は第2の状態としてのオフ状態にするための第1の信号としてのSWオン信号及び第2の信号としてのSWオフ信号を生成する。以下に、検出器ヘッド3のリフレッシュ処理について説明する。
【0047】
(リフレッシュ処理について)
図5は、第1の実施の形態に係る放射線検出器に搭載された放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。
【0048】
放射線6がCdTe素子50に入射して相互作用(光電効果、コンプトン散乱、電子対生成のいずれか)を行うことにより、CdTe素子50内の原子が電離し、電子と正孔のペアが発生する。このペアの数は、入射する放射線6のエネルギーに比例するため、これを正確に読み出すことにより優れたエネルギー決定精度(エネルギー分解能)を得ることができる。
【0049】
CdTe素子50に発生した電子と正孔は、ただCdTe素子50に入射しただけの場合、再結合して消滅する。そこで、CdTe素子50の陽電極及び陰電極間に高電圧(例えば、600V)のバイアス電圧を印加して電極間に電場を発生させることで、電子は陽電極に向けて移動し、正孔は陰電極に向けて移動する。放射線検出器5の放射線検出回路500は、この移動を信号として読み出し、出力する回路である。
【0050】
放射線検出回路500は、例えば、CdTe素子50と、ASIC501と、FPGA502と、バイパス回路503と、リフレッシュ部としてのリフレッシュ回路504と、を備えて概略構成されている。
【0051】
ASIC501は、例えば、CdTe素子50から出力されたアナログ信号(放射線検出信号)を処理してデジタル信号を生成するための回路であり、チャージアンプ、波形整形回路、ピークホールド回路及びA/D変換回路等から構成される。
【0052】
FPGA502は、例えば、ASIC501から出力されたデジタル信号に波高を補正する補正処理等により、放射線6の入射した時間及び入射位置(ピクセル)等の情報を含むイベント信号を生成し、制御装置8の制御部80に出力する。
【0053】
バイパス回路503は、例えば、リフレッシュ処理時にCdTe素子50のバイアス抵抗などに流れるリフレッシュ電流をバイパスする機能を有する。このバイパス機能により短時間内にリフレッシュ処理が行われる。通常、リフレッシュ処理に要する時間は、バイアス電源からの電流及びバイアス電圧の大きさ、そして、CdTe素子50に印加されたバイアス電圧からチャージアンプの入力部を電気的に分離するための結合コンデンサの容量とバイアス抵抗の積に依存する。バイアス抵抗には、通常、高抵抗が選ばれることから、それに応じて、リフレッシュ処理に要する時間は長くなる。そこで、短時間内にリフレッシュ処理を完遂させるために、リフレッシュ処理時には、高抵抗のバイアス抵抗に換えて、低いバイアス抵抗成分をもつ回路素子で構成したバイパス機能が利用される。SWオン信号に応じてリフレッシュ回路504がバイアス電圧を供給しない状態であるオン状態となることにより、バイパス回路503を介して結合コンデンサなどに蓄積されたバイアス電圧が高速で放電される。また、SWオフ信号に応じてリフレッシュ回路504がバイアス電圧を供給する状態であるオフ状態となることにより、バイパス回路503を介して結合コンデンサなどにバイアス電圧が高速で充電されるように構成されている。
【0054】
リフレッシュ回路504は、例えば、リフレッシュ制御部81から出力されたSWオン信号によりオン状態となり、SWオフ信号によりオフ状態となる。このリフレッシュ回路504は、例えば、CdTe素子50のポラリゼーション解消のための回路である。
【0055】
ポラリゼーションとは、電荷収集効率が時間と共に減少する現象である。半導体素子には、その結晶中に格子欠陥や残留不純物等が内在する。これらの欠陥により、半導体素子には、深い準位が形成され、結晶中のキャリアが捕獲されたり、放出されたりする。つまり、半導体素子に放射線が入射すると、発生したキャリアが結晶内のトラップに捕獲されたり、放出されたりする。従って、半導体素子は、例えば、キャリアとしての電子が結晶内に留まり、結晶内での散乱中心となったり、空間電荷を発生させたりすることで、キャリアの移動を妨げるので、電荷収集効率が時間と共に減少し、エネルギー分解能が劣化する。また、ポラリゼーションは、半導体素子の温度が高くなるほど、進行が早くなる。また、ポラリゼーションは、印加されるバイアス電圧にも依存し、バイアス電圧が低いほど進行が早くなる。しかし、ポラリゼーションは、半導体素子に印加するバイアス電圧を停止することにより、解消できる。つまり、リフレッシュ処理とは、例えば、半導体素子に印加するバイアス電圧を一時的に停止する処理である。
【0056】
また、リフレッシュ制御部81は、例えば、後述する複数の放射線検出器のグループのそれぞれにリフレッシュ処理を行うためのSWオン信号を、予め定められた周期に応じてそれぞれのリフレッシュ回路504に出力する。
【0057】
(検出器のグループについて)
図6は、第1の実施の形態に係る検出器のグループに関するブロック図である。本実施の形態に係る核医学診断装置1は、1つの検出器ヘッドに搭載される複数の放射線検出器5を1つ以上のグループに分け、さらに、グループごとにリフレッシュ回路を有して概略構成されている。また、核医学診断装置1は、複数の検出器ヘッドに対して1つのバイアス電源23を有する。
【0058】
ガントリ20に搭載された複数の検出器ヘッド3を、第1の検出器ヘッド3a〜第nの検出器ヘッド3zと記述すると、第1の検出器ヘッド3aを構成する複数の放射線検出器5は、例えば、第1の検出器グループ5a〜第mの検出器グループ5zとグループ分けすることができる。また、第1の検出器ヘッド3aは、検出器のグループごとにリフレッシュ回路を有し、第1のリフレッシュ回路504aは第1の検出器グループ5aに接続され、第2のリフレッシュ回路504bは第2の検出器グループ5bに接続され、第mのリフレッシュ回路504zは第mの検出器グループ5zに接続される。
【0059】
他の検出器ヘッドは、例えば、第1の検出器ヘッド3aと同様に、放射線検出器5がm個のグループに分けられる。なお、放射線検出器5のグループ分けは、各検出器ヘッド3内で異なっても良い。
【0060】
バイアス電源23は、定格電流がIsであり、バイアス電流Ib及びリフレッシュ電流Irを第1の検出器ヘッド3aに供給する。この定格電流Isは、Is>Ir>>Ibの関係を満たす電流である。通常、バイアス電源の定格電流Isは、リフレッシュ電流Irにある程度の余裕をもたせた電流が供給できるように選ばれるが、可能な限りリフレッシュ電流Irに近い定格電流値となるように低く選ばれる。第1の検出器グループ5aがリフレッシュ処理の対象であるとき、第1のリフレッシュ回路504aにSWオン信号が入力されて、第1のリフレッシュ回路504aがオン状態となって、第1の検出器グループ5aと接続される第1のリフレッシュ回路504aには、リフレッシュ電流Irが流れる。一方、他の第2の検出器グループ5b〜第mの検出器グループ5zのそれぞれに接続される第2のリフレッシュ回路504b〜第mのリフレッシュ回路504zはオフ状態であって、第2の検出器グループ5b〜第mの検出器グループ5zのそれぞれにバイアス電流Ibが流れる。以下に、第1の実施の形態に係る核医学診断装置1の動作について説明する。
【0061】
(第1の実施の形態の動作)
図7(a)は、第1の実施の形態に係る第1のリフレッシュ処理に関する概略図であり、(b)は、第2のリフレッシュ処理に関する概略図であり、(c)は、第3のリフレッシュ処理に関する概略図である。図7(a)〜図7(c)の横軸は時間tである。
【0062】
制御装置8の時間管理部800は、例えば、核医学診断装置1の稼動時間を測定し、その稼動時間が予め定められたしきい値以上となったとき、制御部80にトリガ信号を出力する。制御部80は、入力したトリガ信号に基づいてリフレッシュ制御信号を生成する。このリフレッシュ信号は、どの順番で、検出器グループのリフレッシュ処理を行うかの情報を含むものである。なお、トリガ信号は、入力部90の操作における指示に基づいて生成されても良い。
【0063】
リフレッシュ制御部81は、入力されたリフレッシュ制御信号に基づいてSWオン信号を生成し、図7(a)に示す時間tにおいて、第1のリフレッシュ処理を行う第1の検出器ヘッド3aの第1のリフレッシュ回路504aに出力する。なお、他のリフレッシュ回路は、オフ状態のままであって、バイアス電圧が印加された状態であり、引き続き放射線6の検出を行う。
【0064】
SWオン信号は、例えば、図6に示すように、第1の検出器ヘッド3aの第1のリフレッシュ回路504aに入力する。SWオン信号が入力した第1のリフレッシュ回路504aは、オン状態となり、リフレッシュ電流Irが流れる。
【0065】
なお、リフレッシュ処理による放射線の計測停止期間は、バイアス電圧を遮断した時点からゼロ電位となるまでに要する放電時間、ゼロ電位を保つ一定の時間、バイアス電圧の供給開始時点から充電に必要な充電時間、及びバイアス電圧が安定し、放射線を検出可能となる待ち時間、を含む。
【0066】
リフレッシュ制御部81は、第1のリフレッシュ処理を停止させるSWオフ信号を生成し、第1のリフレッシュ回路504aに出力する。第1のリフレッシュ回路504aは、SWオフ信号の入力により、時間tにおいて、オフ状態となり、第1の検出器グループ5aに対するバイアス電源23からのバイアス電圧の供給が開始され、第1のリフレッシュ処理は終了する。
【0067】
次に、リフレッシュ制御部81は、図7(b)に示すように、第1のリフレッシュ処理が終了してから周期T後の時間tに第2のリフレッシュ処理を開始するためSWオン信号を生成し、リフレッシュ処理を行う第1の検出器ヘッド3aの第2のリフレッシュ回路504bに出力する。
【0068】
SWオン信号は、例えば、図6に示すように、第1の検出器ヘッド3aの第2のリフレッシュ回路504bに入力する。SWオン信号が入力された第2のリフレッシュ回路504bはオン状態となり、リフレッシュ電流Irが流れる。
【0069】
リフレッシュ制御部81は、第2のリフレッシュ処理を停止させるSWオフ信号を生成し、第2のリフレッシュ回路504bに出力する。第2のリフレッシュ回路504bは、SWオフ信号の入力により、時間tにおいて、オフ状態となり、第2の検出器グループ5bに対するバイアス電源23からのバイアス電圧の供給が開始され、第2のリフレッシュ処理は終了する。続いて、核医学診断装置1は、周期T後、図7(c)に示す時間t〜時間tの間、第3の検出器グループに対する第3のリフレッシュ処理を行う。
【0070】
核医学診断装置1は、上記の処理を周期Tで繰り返し、第mのリフレッシュ処理が終了すると、続いて、第2の検出器ヘッドの第1の検出器グループのリフレッシュ処理を行い、全ての検出器ヘッドの全ての検出器グループのリフレッシュ処理が終了するまでリフレッシュ処理を続ける。
【0071】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態に係る核医学診断装置1によれば、ガントリ20に搭載される複数の検出器ヘッドの複数の放射線検出器5をいくつかのグループに分け、このグループごとにリフレッシュ処理を行うので、一度にリフレッシュ処理を行う場合と比べて、バイアス電源に求められる電流容量が少なくなる。電流容量が少ないので、バイアス電源が小さくなり、核医学診断装置1を小型化することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、核医学診断装置が検出器ヘッドごとにバイアス電源を有する点で第1の実施の形態と異なっている。なお、以下に示す各実施の形態において、第1の実施の形態と同じ機能及び構成を有する部分については、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0073】
(核医学診断装置1の回路構成)
図8は、第2の実施の形態に係る核医学診断装置の回路構成の概要を示すブロック図である。図9は、第2の実施の形態に係る検出器のグループに関するブロック図である。
【0074】
核医学診断装置1の放射線検出装置2は、図8に示すように、例えば、n個の検出器ヘッドと、それぞれの検出器ヘッドに接続されたn個のバイアス電源と、をガントリ20に備えている。図8では、一例として、第1の検出器ヘッド3a〜第nの検出器ヘッド3zと、第1のバイアス電源23a〜第nのバイアス電源23zと、を図示している。
【0075】
第1のバイアス電源23aは、図9に示すように、定格電流がIsであり、バイアス電流Ib及びリフレッシュ電流Irを第1の検出器ヘッド3aに供給する。また、第2のバイアス電源は第2の検出器ヘッドに、第mのバイアス電源23zは第nの検出器ヘッド3zにバイアス電圧を供給する。この定格電流Isは、Is>Ir>>Ibの関係を満たす電流である。以下に、第2の実施の形態に係る核医学診断装置1の動作について説明する。
【0076】
(第2の実施の形態の動作)
制御装置8の時間管理部800は、例えば、核医学診断装置1の稼動時間を測定し、その稼動時間が予め定められたしきい値以上となったとき、制御部80にトリガ信号を出力する。制御部80は、入力されたトリガ信号に基づいてリフレッシュ制御信号を生成する。
【0077】
リフレッシュ制御部81は、入力されたリフレッシュ制御信号に基づいてSWオン信号を生成し、第1のリフレッシュ処理を行う第1の検出器ヘッド3aの第1のリフレッシュ回路504aに出力する。なお、他のリフレッシュ回路は、オフ状態のままであって、バイアス電圧が印加された状態であり、引き続き放射線6の検出を行う。
【0078】
SWオン信号は、例えば、図9に示すように、第1の検出器ヘッド3aの第1のリフレッシュ回路504aに入力する。SWオン信号が入力した第1のリフレッシュ回路504aはオン状態となり、リフレッシュ電流Irが流れる。
【0079】
リフレッシュ制御部81は、第1のリフレッシュ処理を停止させるSWオフ信号を生成し、第1のリフレッシュ回路504aに出力する。第1のリフレッシュ回路504aは、SWオフ信号の入力により、オフ状態となり、第1の検出器グループ5aに対する第1のバイアス電源23aからのバイアス電圧の供給が開始され、第1のリフレッシュ処理は終了する。
【0080】
次に、リフレッシュ制御部81は、第1のリフレッシュ処理が終了してから期間T後に第2のリフレッシュ処理を開始するためSWオン信号を生成し、リフレッシュ処理を行う第1の検出器ヘッド3aの第2のリフレッシュ回路504bに出力する。
【0081】
SWオン信号は、例えば、図9に示すように、第1の検出器ヘッド3aの第2のリフレッシュ回路504bに入力する。SWオン信号が入力された第2のリフレッシュ回路504bはオン状態となり、リフレッシュ電流Irが流れる。
【0082】
リフレッシュ制御部81は、第2のリフレッシュ処理を停止させるSWオフ信号を生成し、第2のリフレッシュ回路504bに出力する。第2のリフレッシュ回路504bは、SWオフ信号の入力により、時間tにおいて、オフ状態となり、第2の検出器グループ5bに対する第1のバイアス電源23aからのバイアス電圧の供給が開始され、第2のリフレッシュ処理は終了する。
【0083】
核医学診断装置1は、上記の処理を周期Tで繰り返し、第mのリフレッシュ処理が終了すると、続いて、第2の検出器ヘッドの第1の検出器グループのリフレッシュ処理を行い、全ての検出器ヘッドの全ての検出器グループのリフレッシュ処理が終了するまでリフレッシュ処理を続ける。
【0084】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態に係る核医学診断装置1によれば、ガントリ20に搭載された検出器ヘッドごとにバイアス電源を有するので、検出器ヘッドごとにバイアス電源を持たないものと比べて、バイアス電圧の供給が安定して行われる。
【0085】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、ダミーイベント信号を生成する点で上記の実施の形態と異なっている。
【0086】
(核医学診断装置1の構成)
図10は、第3の実施の形態に係る放射線検出器に搭載された放射線検出回路とその周辺回路のブロック図である。
【0087】
リフレッシュ制御部81は、SWオン信号及びSWオフ信号の他に、リフレッシュ信号を生成するように構成されている。リフレッシュ信号は、放射線検出回路500のFPGA502に出力される。このリフレッシュ信号は、FPGA502にダミーイベント信号を生成させるトリガ信号である。
【0088】
FPGA502は、リフレッシュ信号が入力されると、ダミーのイベント信号を生成し、また、正規のイベント信号に付加するのと同様にタイムスタンプ情報を付加し、リフレッシュマーカー信号を生成する。このリフレッシュマーカー信号は、制御部80に出力される。リフレッシュマーカー信号に付加されるタイムスタンプ情報は、リフレッシュ処理により、データの計測が停止された時刻を示す。なお、FPGA502は、さらに、リフレッシュ信号からリフレッシュ処理の終了時刻を示すダミーのイベント信号を生成しても良いが、リフレッシュ処理の周期Tは予め定められた値であることから算出可能であるため、終了時刻を示すダミーのイベント信号は生成しないものとする。
【0089】
また、FPGA502は、例えば、心電同期信号等の外部トリガ信号が入力するものとする。
【0090】
核医学診断装置1は、バイアス電圧が、バイアス電源23、リフレッシュ回路504及びバイパス回路503を介してCdTe素子50に供給される。リフレッシュ制御部81が、リフレッシュ処理の時刻を示すダミーイベント信号を生成しない場合、イベント信号の間隔からリフレッシュ処理による計測停止期間、すなわち、不感時間の存在を認識することにより、リフレッシュ処理の開始を認識しても良い。
【0091】
すなわち、通常の動作状況では、イベント信号の到来は、リフレッシュ処理による計測停止期間よりはるかに狭く、リストモードによるイベント信号の時間情報からリフレッシュ処理による計測停止期間を認識できるが、放射線検出回路などのフロントエンドにて、このダミーイベント信号を生成することにより、バックエンドの回路系によりリストデータの時間情報のエラー等の影響を回避することができる。以下に、本実施の形態に係る変形例を示す。
【0092】
(変形例1)
図11は、変形例1に係るダイナミックスキャンデータ収集に関する概略図である。図11は、第1のフレームから第nのフレームまでのデータ収集を図示している。ここでは、リストモード収集を前提としている。
【0093】
ダイナミックスキャンデータ収集とは、被検体に投与された放射性薬剤が被検体内の組織に取り込まれる様子を経時的な画像として、つまり動的な画像が得られるデータとして収集することである。
【0094】
リストモード収集とは、検出されたイベントの付帯情報(半導体素子の位置情報、放射線のエネルギー情報及びその他の情報)に時間情報を付加し(タイムスタンプ情報)、ヒストグラミングすることなく、時系列的にデータを収集するモードである。データ収集終了後、これらの時系列データを所望のフレームデータに再編集し、各フレームの画像を再構成する。
【0095】
図11は、データ収集の期間内に複数回のリフレッシュ処理が行われた場合を示している。図11に示すTrefは、リフレッシュ処理の周期を示し、Trestは、リフレッシュ処理によるデータ計測停止期間を示している。
【0096】
データ計測停止期間において、制御装置8には、本来、放射線6の入射を示すイベント信号は入力しない。しかし、本実施の形態では、リフレッシュ制御部81は、リフレッシュ処理の開始に伴ってリフレッシュ信号を生成するので、制御装置8の制御部80には、リフレッシュ信号が入力したFPGA502により生成されたリフレッシュマーカー信号がダミーイベント信号として入力する。
【0097】
制御装置8は、収集したリストモードデータから所望のフレームデータを編集する際、上記のリフレッシュマーカー信号を読み出し、リストモードデータ内からリフレッシュ処理によるデータ計測停止期間を確認することができ、必要に応じてこのデータ計測停止期間を除いたフレームデータを作成することができる。なお、制御装置8は、リフレッシュ処理が行われた期間を含むフレームデータを編集する場合、リフレッシュ処理が行われた期間を除いた収集時間あたりの計数率を考慮して各フレームデータから画像を再構成する。
【0098】
(変形例2)
図12は、変形例2に係るスタティックスキャンデータ収集に関する概略図である。スタティックスキャンデータ収集とは、被検体の静的な画像が得られるデータを収集することである。
【0099】
図12は、データ収集中のある時刻において1回のリフレッシュ処理が行われたことを示している。この場合は、上記のダイナミックスキャンデータ収集の場合と同様に、制御装置8は、リフレッシュ処理が行われた期間を含むフレームデータを編集する場合、リフレッシュ処理が行われた期間を除いた収集時間あたりの計数率を考慮して各フレームデータから画像を再構成する。
【0100】
(変形例3)
図13は、変形例3に係るECGゲート測定モードによるデータ収集に関する概略図である。ECGゲート測定モードとは、心電同期測定マルチゲートモードとも呼ばれ、外部トリガ信号としてFPGA502に入力した心電パルスのR波に同期させてデータを収集するモードである。
【0101】
図13において、R−R波間隔(Tr−r)は、n個の分画に分けられるとする。
【0102】
リフレッシュ処理が行われた場合、リフレッシュ処理が開始された時刻に対応してリフレッシュマーカーが制御装置8に収集される。制御装置8は、リストモードデータから所望の時相データに編集する際、このリフレッシュマーカーを読み出し、リフレッシュ処理によるデータ計測停止期間を確認し、データ欠損のないR−R波間隔データを選択し、同時相の分画データを加算し、各時相データの画像を作成する。
【0103】
(変形例4)
図14は、変形例4に係るSPECT(Single PhotonEmission Computed Tomography)スキャンによるデータ収集に関する概略図である。図14における上部の図は、複数セットのステップである第1のSPECTスキャン〜第mのSPECTスキャンを示し、図14における中央の図は、1セットのステップとしての第2のSPECTスキャンを拡大した図であり、図14の下部の図は、リフレッシュ処理が行われた時間を示す図である。ステップ&シュートスキャンデータ収集とは、検出器ヘッドを被検体の回りに連続的又は非連続的に回転させてデータを収集するものである。
【0104】
図14では、ステップ数をn、SPECTスキャン数をmとしている。本変形例では、n個のステップ数でSPECT撮像に必要な1セットの投影データが得られるものとする。なお、ステップあたりの収集時間Tacqはおよそ30sであり、ステップ数はおよそ60である。
【0105】
本変形例では、リフレッシュ処理の周期Trefは、ステップあたりの収集時間Tacqと同程度であり、計測停止期間TrestはTacq>>Trestである。
【0106】
本変形例では、各ステップでのデータ計測中に生じるリフレッシュ処理の回数が異なる場合、制御装置8は、取得したリフレッシュマーカーから各ステップでの全計測停止期間(Trestの和)を求め、各ステップにおいて、計測停止期間を除いた収集時間あたりの計数率を考慮して画像を再構成する。なお、m個のSPECTスキャンデータは、必要に応じて加算され、画像が再構成される。
【0107】
(変形例5)
図15は、変形例5に係るSPECTスキャンによる高速ファニングスキャンモードにおけるデータ収集に関する概略図である。図15では、ステップ数をn、SPECTスキャン数を5としている。
【0108】
高速ファニングスキャンモードでは、SPECTスキャンあたりの時間はおよそ120sであり、ステップあたりの収集時間はおよそ2sと極めて短い。本変形例では、リストモード収集であったとしても、リフレッシュ処理におけるデータ損失は修復が困難となる。
【0109】
従って、高速ファニングスキャンモードの場合、予め定められたデータ収集プロトコルが、Tacq<<Trefのとき、計測実施前にリフレッシュ処理を開始し、各ステップでの収集直後、すなわち、次のステップへの移動時間Trest’内にリフレッシュ処理を終了させる。
【0110】
制御装置8は、指定されたデータ収集プロトコルに基づいて上記の条件を満足する収集制御信号をリフレッシュ制御部81に出力する。FPGA502及びリフレッシュ回路504は、最適化されたリフレッシュ信号、SWオン信号及びSWオフ信号が入力する。
【0111】
ここで、他の変形例として、SPECTスキャンモードにおいて、ステップ数と各ステップへの移動時間を含む計測停止期間Trest’と収集時間Tacqの和が、リフレッシュ周期Trefより短い場合、特に、高速ファニングスキャンを前提とするようなSPECT装置では、ある一定ステップごとにリフレッシュ処理の影響を受ける。
【0112】
上記の場合、同一のステップにリフレッシュ処理が重複して複数回行われることがある。このため、リフレッシュ処理の実行にあたっては、SPECTスキャンごとにリフレッシュ処理の周期を変えることが好ましい。
【0113】
同様に、ダイナミックモードにおいて、次のような設定が選べるものとする。先頭フレームに引き続く連続的な、或いは、不連続的なn個のフレームの計測が終了する時間をTacq、nとするとき、リフレッシュ制御部81は、Tacq、n≦Trefを満たすnを選び、リフレッシュ回路504は、n番目のフレームの計測終了後、n+1番目の計測開始直前にリフレッシュ処理を行う。同様に、n+1番目のフレームを先頭フレームとして、リフレッシュ制御部81は、次のTacq、n≦Trefを満たすnを選び、リフレッシュ回路504は、n番目のフレームの計測終了後、n+1番目の計測開始直前にリフレッシュ処理を行う。制御装置8は、この処理を設定された全フレームに対して逐次行う。なお、上記の条件を満たすnが存在しないとき、計測中のフレーム期間内の任意の時間でリフレッシュ処理を行う。
【0114】
さらに、制御装置8において、ポラリゼーション或いは何らかの不具合により、ノイズを発生している放射線検出器が検知された場合、その放射線検出器が属する検出器グループ或いは半導体素子のグループを、選択的にリフレッシュ処理を行う。
【0115】
なお、制御装置8は、検出器グループがk個からなる検出器系に対して、計測開始時点において、第1の検出器グループから第kの検出器グループを順次或いは任意の順序で互いに時間的に重複することなくリフレッシュ処理が行われる場合、フレームモード収集において、全検出器グループのリフレッシュ処理が終了した時点からデータ収集を開始しても良い。
【0116】
また、フレームモードの場合、制御装置8は、指定されたデータ収集モードに従ってリフレッシュ処理を行っても良い。この場合、制御装置8は、各検出器グループに予め定めた計測開始遅延時間(Tdelay=Trest)を設定し、個別の検出器グループ或いは半導体素子グループに対してリフレッシュ処理を行う。各検出器グループの計測開始遅延時間Tdelayは、第1の検出器グループに対してkTref、第kの検出器グループに対してTrefとする。ここで、k=1、2、3…とする。
【0117】
従って、各検出器グループでは、それぞれ計測開始遅延時間Tdelayが異なり、第1の検出器グループの計測開始遅延時間Tdelayが最大となる。すなわち、全体としてkTdelay=kTrest時間後に実際の計測を開始すればよい。
【0118】
制御装置8は、フレームモード収集に基づくスタティックモード或いはダイナミックモードにおいて、Tacq<Trefの場合、計測開始前に上述した遅延時間に従って、全検出器グループに対するリフレッシュ処理を行った後、実際の計測を開始し、各検出器グループは、Tacq期間内には、リフレッシュ処理を行わないようにすればよい。
【0119】
同様に、制御装置8は、フレームモード収集に基づくスタティックモードにおいて、Tacq>Trefの場合、上記の収集開始時のリフレッシュ処理に続くリフレッシュ処理は、収集期間中に実行されても良い。
【0120】
上記のように、全検出器グループに対して、リフレッシュ処理を終了させる場合と、各検出器グループに対して共通の計測開始遅延時間Tdelay後に実際の計測を開始する場合の2通りが選べるものとする。
【0121】
後者の場合には、検出器グループごとにその計測収集時刻が異なる。
【0122】
フレームモード収集に基づくダイナミックモードにおいて、Tacq>Trefの場合には、計測開始前に前述した遅延時間に従って、全検出器グループに対するリフレッシュ処理を行った後、実際の計測を開始し、先頭のフレームに引き続く連続的な、或いは、不連続なn番目のフレームの計測終了時間をTacq,nとするとき、Tacq、n≦Trefを満たすnを選び、n番目のフレームの計測が終了後、次のリフレッシュ処理を実施し、各検出器グループに予め定められた計測開始遅延時間Tdelay経過後、n+1番目の計測を開始する。
【0123】
同様に、n+1番目のフレームを先頭フレームとし、次のTacq、n≦Trefを満たすnを選び、n番目のフレームの計測終了後、リフレッシュ処理を行い、n+1番目の計測を開始する。制御装置8は、この処理を逐次行う。
【0124】
前述したような、全検出器グループに対してリフレッシュ処理を終了させる場合と、各検出器グループに対して、共通の計測開始遅延時間Tdelay後に、実際の計測を開始する場合の2通りが選べるものとする。後者の場合には、検出器グループごとにその計測収集時刻が異なる。上記の条件を満たすnが存在しないとき、制御装置8は、計測中のフレーム期間内の任意の時間にリフレッシュ処理を行う。
【0125】
具体的に、リフレッシュ回路504は、例えばスイッチング素子を含む電子回路である。スイッチング素子のオン・オフの切り替えにより、バイアス電源からのバイアス電圧をCdTe素子50に供給する回路構成(オン状態)と、バイアス電源からのバイアス電圧をCdTe素子50から切り離し、かつ、結合コンデンサなどに蓄積されたバイアス電圧を放電する回路構成(オフ状態)とになることができる。
【0126】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態及び変形例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0127】
1…核医学診断装置
2…放射線検出装置
3…検出器ヘッド
3a…第1の検出器ヘッド
3z…第nの検出器ヘッド
4…コリメータ
5…放射線検出器
5a…第1の検出器グループ
5b…第2の検出器グループ
5z…第mの検出器グループ
6…放射線
7…通信ケーブル
8…制御装置
20…ガントリ
21…開口部
22…寝台
23…バイアス電源
23a…第1のバイアス電源
23z…第nのバイアス電源
30…基部
31…支持体
32…コネクタ
50…CdTe素子
51…基板
52…フレキシブル基板
53…カードホルダ
54…カードホルダ
55…弾性部材実装部
56…弾性部材
57…突起部
58…溝付穴
59…突起部
60…カードエッジ部
60a…パターン
61…電子部品搭載部
80…制御部
81…リフレッシュ制御部
90…入力部
91…表示部
300…放射線検出器立て
310…壁部
311…溝
312…くぼみ部
313…平坦面
500…放射線検出回路
501…ASIC
502…FPGA
503…バイパス回路
504…リフレッシュ回路
504a…第1のリフレッシュ回路
504b…第2のリフレッシュ回路
504z…第mのリフレッシュ回路
510〜513…基板端子
520〜523…接続部
800…時間管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する半導体素子を有する複数の放射線検出器グループと、
前記複数の放射線検出器グループのそれぞれにバイアス電圧を供給するバイアス電源と、
前記バイアス電源と前記複数の放射線検出器グループのそれぞれの間に設けられ、入力する第1の信号によりバイアス電圧を供給しない状態である第1の状態となり、入力する第2の信号によりバイアス電圧を供給する状態である第2の状態となることで対象となる放射線検出器グループのリフレッシュ処理が行われる複数のリフレッシュ部と、
前記複数のリフレッシュ部に前記第1の信号又は前記第2の信号を出力することにより、前記複数のリフレッシュ部を制御するリフレッシュ制御部と、
を備えた放射線撮像装置。
【請求項2】
前記複数の放射線検出器グループのうち、少なくとも1つを有する複数の検出器ヘッドを備え、
前記バイアス電源が、前記複数の検出器ヘッドの数と同数である請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記リフレッシュ制御部が、前記複数の放射線検出器グループのそれぞれに前記リフレッシュ処理を行うための前記第1の信号を、予め定められた周期に応じてそれぞれの前記リフレッシュ部に出力する請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記リフレッシュ制御部が、前記リフレッシュ処理の前記周期に応じて前記第1の信号及び前記第2の信号を出力する請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記リフレッシュ制御部が、ダミーイベント信号を生成する請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記リフレッシュ制御部が、前記第1の信号又は前記第2の信号を生成した時刻を示すタイムスタンプ情報を前記ダミーイベント信号に付加する請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記リフレッシュ制御部が、取得した制御信号に基づいて前記第1の信号及び前記第2の信号を前記リフレッシュ部に出力する請求項6に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
データ収集時間が前記リフレッシュ処理にかかる時間よりも短いとき、前記リフレッシュ処理が、データ収集開始前、又は、データ収集終了後に行われる請求項7に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記データ収集時間と前記リフレッシュ処理にかかる時間との和が前記周期よりも短いとき、前記リフレッシュ処理の周期が、フレームごとに変化する請求項8に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記リフレッシュ制御部が、先頭のフレームに続くn個のフレームの計測が終了する時間が前記周期よりも短いとき、前記n個のフレームの計測が終了する時間が前記周期よりも短いことを満たすnを選択し、
前記リフレッシュ部が、n番目のフレームの計測終了後のn+1番目の測定開始前に前記リフレッシュ処理を行う請求項9に記載の放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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