放射線撮影装置
【課題】透視画像に極端に明るい、または暗い像が写りこんでも、これに影響されることなく診断に好適な輝度補正を行うことができる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明のX線撮影装置1は、元画像P0のヒストグラムH0の一部を除外して調整ヒストグラムH1生成して、これを基に元画像P0の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムH1からは、元画像P0における被検体と無関係の領域に由来する成分が除かれる。この様な急峻なピークは、被検体Mに由来するものではないのである。調整ヒストグラムH1に基づいて画素値を補正すれば、視認性に優れた輝度補正画像P1が取得できる。
【解決手段】本発明のX線撮影装置1は、元画像P0のヒストグラムH0の一部を除外して調整ヒストグラムH1生成して、これを基に元画像P0の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムH1からは、元画像P0における被検体と無関係の領域に由来する成分が除かれる。この様な急峻なピークは、被検体Mに由来するものではないのである。調整ヒストグラムH1に基づいて画素値を補正すれば、視認性に優れた輝度補正画像P1が取得できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の透視画像を撮影する放射線撮影装置に係り、特に放射線透視画像の露出を自動的に制御することができる放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線の透視画像を撮影する放射線撮影装置が配備されている。この様な放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出器とを備えている。このような放射線撮影装置においては、透視画像をモニタに表示する場合、関心部位へのX線露出が適当でないため、関心部位の輝度が診断に適当でない場合がある。
【0003】
そこで、従来の放射線撮影装置は、放射線露出を調整することにより、透視画像の輝度を補正する機能を備えている(例えば特許文献1参照)。この輝度補正の方法について説明する。従来の放射線撮影装置で透視画像の輝度を補正するには、まず、被検体の関心部位を透視画像の中心に来るように被検体の位置を調整して、透視画像を撮影する。こうして、図11に示すように、被検体の関心部位が中央に写りこんだ透視画像Pが取得される。
【0004】
輝度補正は、放射線透視画像の中央部の関心領域Rを構成する画素の画素値を参照して行われる。すなわち、関心領域Rにおける代表値を、目標となる輝度値になるように放射線露出を調整し、画素値の変換を行う。これにより、元の画像の関心領域Rは、所望の輝度値となり、視認性の優れた画像が得られる。
【0005】
輝度補正の際に放射線透視画像の中央部のみを使用する理由は、放射線透視画像の中央部には、撮影の対象が写りこんでいる可能性が高いことと、放射線透視画像の周辺部も含めて輝度補正をすると、視認性を改善する画素値の変換ができないことがあるという理由による。すなわち、図11を参照すれば分かるように、放射線透視画像には、被検体が写りこんでいない領域Nが現れる。この領域Nは、放射線が障害物を通過しないで放射線検出器に検出された領域であるから、他と比べて、極端に明るい画素が密集した塊である。放射線透視画像全体から輝度補正をしてしまうと、放射線撮影装置は、明るい領域Nを暗くしようとして、透視画像全体を極端に暗い画素に変えてしまう。この様に、被検体が写りこんでいない領域Nがあるがゆえ、輝度補正を行っても被検体の視認性は、改善されないのである。従来構成は、領域Nを輝度補正処理から排除する目的で、放射線透視画像の中央部のみを使用して輝度補正を行う構成となっているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−231497号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来構成の放射線撮影装置には次のような問題がある。
すなわち、関心領域Rには、必ずしも被検体の関心部位が写りこむとは限らず、画素値を変換しても視認性をよくすることができないという問題がある。被検体の骨にボルトなどの金属が埋め込まれている場合、この金属が透視画像の関心領域Rに写りこむことがある。この金属は、放射線を透過しないので、透視画像においては、非常に暗い画素が密集して写りこむ。この様に、診断に必要がなく、かつ、周囲の画素とは画素値が極端にかけ離れた塊が関心領域Rに写りこんでしまう。関心領域Rにおける代表値を目標となる輝度値に変換しようとすれば暗い金属部分を明るくすることになり、透視画像における金属部分以外が極端に明るい画素となってしまう。
【0008】
また、被検体が写りこんでいない領域Nが関心領域Rに入り込まない保証はない。すなわち、被検体の両足を一度に撮影する場合、被検体の両足に挟まれた空隙の領域は、透視画像の中央に位置してしまう。これは、被検体が存在しない領域であるのだから、関心領域Rに被検体が写りこんでいない領域Nが存してしまう。このまま放射線露出を調整して撮影を行うと、透視画像は、明るい領域Nが暗くされるのに伴って、極端に暗いものとなる。
【0009】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、透視画像に極端に明るい、または暗い像が写りこんでも、これに影響されることなく診断に好適な輝度補正を行うことができる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出手段と、放射線検出手段から出力された検出信号を基に放射線透視画像を取得する透視画像取得手段と、放射線透視画像のヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、ヒストグラムの両端である第1端、第2端を取得する端部取得手段と、ヒストグラムの第1端と、ヒストグラムが有する極小点のうち最も第1端に近い第1極小点とに挟まれた評価領域を認定して、評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、評価領域の幅を求める評価領域解析手段と、ヒストグラムに現れるピークの高さと幅から、評価領域に含まれるピークの鋭さを示す評価値を取得する評価値取得手段と、評価値と所定値とを比較する比較手段と、評価値が所定値以上であるとき、ヒストグラムから重心点を含む部分を除外した調整ヒストグラムを生成する調整ヒストグラム生成手段と、調整ヒストグラムをスケーリングして画素値の置換表を生成する置換表生成手段と、置換表に基づいて、放射線透視画像の画素値を変換して輝度補正画像を生成する輝度補正手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]本発明の放射線撮影装置は、放射線透視画像のヒストグラムの一部を除外して調整ヒストグラムを生成して、これを基に放射線透視画像の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムからは、放射線透視画像における被検体と無関係の領域に由来する成分が除かれている。したがって、調整ヒストグラムは、被検体が写りこんだ画素の画素値の分布を示したものとなっている。したがって、この調整ヒストグラムを用いて輝度補正を行えば、視認性に優れた輝度補正画像を取得することができる。
【0012】
ヒストグラムの端を調整ヒストグラムから除外するかどうかは、評価領域の評価値が所定値以上であるかどうかで決定される。評価値は、評価領域に含まれるピークの鋭さを示す値である。つまり、本発明の構成によれば、画素値が極端な鋭いピークが調整ヒストグラムから除去される。この様なピークは、被検体に由来するものではないと考えられる。被検体に由来する画素値は、ヒストグラムにおいて幅広くなだらかに延在する傾向にあるからである。
【0013】
また、上述の放射線撮影装置において、評価値が所定値未満であるとき、評価領域解析手段は、ヒストグラムの第1端と、ヒストグラムが有する極小点のうち第1極小点に次いで第1端に近い第2極小点とに挟まれた領域を評価領域と認定して、評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、評価領域の幅を求めればより望ましい。
【0014】
また、上述の放射線撮影装置において、第1端と第2極小点とに挟まれた評価領域における評価値が、所定値未満であるとき、評価領域解析手段は、評価領域の認定における極小点を第2端側に変更しながら評価領域を次第に広げてゆき、評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、評価領域の幅を求めればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成によれば、被検体に由来するものではない画素値が複数のピークに分裂してヒストグラムに現れたとしても、それを確実に除くことができる。つまり第1端に被検体に由来するものではないピークが複数に分裂しても、評価領域解析手段は評価領域を第2端側に変更しながら次第に広げていき、評価値を算出する構成となっているので、被検体に由来するものではないピークをヒストグラムから確実に除去することができる。
【0016】
また、上述の放射線撮影装置において、評価値は、ヒストグラムの重心点における強度の値から評価領域の幅を除算したものであればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な態様を示したものである。評価領域に存在するピークは、ピークの重心点における強度の値が大きく(ピークが高く),かつピークの幅が狭いほど鋭いピークであると認定される。つまり、評価値をヒストグラムの重心点における強度の値から評価領域の幅を除算したものとすれば、評価領域に存するピークの鋭さが、確実に判別できるのである。なお、評価領域の一端は、極小点となっていることから、評価領域には、確実にピークが存在することになる。
【0018】
また、上述の放射線撮影装置において、重心点の画素値をGと、第1端の画素値をbとしたとき、調整ヒストグラム生成手段は、ヒストグラムの2G−bからbまでの範囲を除外して調整ヒストグラムを生成すればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成によれば、ヒストグラムのどこを切り捨てて調整ヒストグラムとするかは、評価領域の重心点を基に決定される。すなわち、第1端から重心点までの幅(基準幅)をピークの幅の半分であるものとして、ピークの全域が省かれるようにヒストグラムの除外範囲を決定するのである。すなわち、除外されるべきピークの第1端側の終端は、第1端であり、第2端側の終端は、第1端から基準幅の2倍の幅だけ第2端に近づいたトリミング基準点となる。調整ヒストグラム生成手段がヒストグラムの2G―bからbまでの範囲を除外すれば、ヒストグラムにおいて第1端からトリミング基準点までの部分が除去されることになる。
【0020】
また、上述の放射線撮影装置において、第1端は、ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であり、第2端は、ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成によれば、放射線透視画像に表れた被検体が写りこんでいない領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。すなわち、鋭いピークの除去は、画素値の高い(明るい側)から行われる。放射線透視画像において被検体が写りこんでいない領域は、何ら障害物を通過しないで放射線が放射線検出器に入射した部分であるから、その画素値は、高いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムの画素値の明るい側で鋭いピークとなっている部分が除去されて、調整ヒストグラムが生成されるので、確実に被検体と無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【0022】
また、上述の放射線撮影装置において、第1端は、ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であり、第2端は、ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成によれば、放射線透視画像に表れた被検体に埋め込まれた金属の影が写りこんだ領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。この場合、鋭いピークの除去は、画素値の低い(暗い側)から行われる。放射線透視画像において金属の影が写りこんだ領域は、本来被検体ではありえない程度に放射線を透過させないものであるから、その画素値は、低いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムの画素値の暗い側で鋭いピークとなっている部分が除去されて、調整ヒストグラムが生成されるので、確実に被検体と無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の放射線撮影装置は、放射線透視画像のヒストグラムの一部を除外して調整ヒストグラムを生成して、これを基に放射線透視画像の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムからは、放射線透視画像における被検体と無関係の領域に由来する成分が除かれる。ヒストグラムの端を調整ヒストグラムから除外するかどうかは、ピークの鋭さを示す評価領域の評価値が所定値以上であるかどうかで決定される。こうして、画素値が極端な鋭いピークが調整ヒストグラムから除去される。この様な急峻なピークは、被検体に由来するものではないのである。調整ヒストグラムに基づいて画素値を補正すれば、視認性に優れた放射線透視画像が取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】実施例1に係るヒストグラム取得部を説明するフローチャートである。
【図4】実施例1に係る評価領域解析部を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る調製ヒストグラム生成部を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る置換表生成部を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る評価領域解析部を説明する模式図である。
【図8】実施例1に係る調製ヒストグラム生成部を説明する模式図である。
【図9】本発明の1変形例を説明する模式図である。
【図10】本発明の1変形例を説明する模式図である。
【図11】従来のX線撮影装置を説明する模式図である。
【実施例1】
【0026】
以下、実施例1に係る放射線撮影装置について説明する。なお、実施例1におけるX線は、本発明の放射線の一例である。
【0027】
<装置の構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板2と、天板2の上部に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下部に設けられたX線を検出するフラット・パネル・ディテクタ(FPD)4と、FPD4のX線を検出する検出面を覆うように設けられた間接X線を吸収するX線グリッド5と、X線管3を制御するX線管制御部6と、FPD4から出力された検出信号を組み立てて被検体Mの透視像が写りこんだX線透視画像を取得する画像生成部11と、X線透視画像のヒストグラムを取得するヒストグラム取得部12と、ヒストグラムを分析する端部取得部13,評価領域解析部14,および評価値取得部15と、ヒストグラムの分析結果を基にヒストグラムを編集する調整ヒストグラム生成部21と、置換表Tを生成する置換表生成部22と、編集されたヒストグラムを用いてX線透視画像の輝度補正を行う輝度補正部23とを備えている。
【0028】
X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。また、評価領域解析部14は本発明の評価領域解析手段に相当し、評価値取得部15は本発明の評価値取得手段に相当する。また、画像生成部11は本発明の透視画像取得手段に相当し、置換表生成部22は本発明の置換表生成手段に相当する。また、端部取得部13は本発明の端部取得手段に相当し、調整ヒストグラム生成部21は本発明の調整ヒストグラム生成手段に相当する。また、輝度補正部23は本発明の輝度補正手段に相当し、ヒストグラム取得部12は本発明のヒストグラム取得手段に相当する。
【0029】
また、X線撮影装置1は、術者の指示を入力させる操作卓31と、X線透視画像を表示させる表示部32とを有している。そして、X線撮影装置1は、各部6,11,12,13,14,15,21,22,21を統括的に制御する主制御部34を備えている。主制御部34は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。また、X線撮影装置1は、後述の所定値を記憶する情報記憶部33を備えている。
【0030】
<動作の説明>
次に、X線撮影装置1の動作について説明する。術者が操作卓31を通じてX線透視画像の取得の指示を行うと、X線撮影装置1は、X線管3からX線ビームを照射させ、これをFPD4に検出させる。画像生成部11は、FPD4から出力された検出信号を基に、被検体の透視像が写りこんだ元画像P0を取得する[図2のステップS1,および図3(a)参照]。元画像P0は、輝度補正がなされていないので、視認しづらいものとなっている。
【0031】
ヒストグラム取得部12は、画像生成部11から元画像P0を取得して、このヒストグラムH0を取得する(図2のステップS2参照)。得られたヒストグラムH0は、図3(b)に示すように、画素値を横軸とするスペクトルデータであり、元画像P0を構成する画素値の分布を示したものである。
【0032】
図3(a)の被検体Mが写りこんでいない領域Nの画素値は、被検体が写りこんでいる領域Dの画素値よりも高く、領域Dに見られる画素値は、様々な値が幅広く存在しているのに対し、領域Nに見られる画素値は、互いに似通っている。すなわち、元画像P0のヒストグラムH0は、図3(b)に示すように、画素値の高い側(明るい側)に鋭いピークとして現れた領域Nに由来する部分nと、画素値の低い側に広範囲に亘って現れた領域Dに由来する部分hとで構成されることになる。
【0033】
このヒストグラムH0は、端部取得部13に送出される。端部取得部13では、ヒストグラムH0において、元画像P0が分布する領域を求める。すなわち、図3(b)における元画像P0が分布する領域の明るい側の端の画素値である明端bと暗い側の端の画素値である暗端dとをヒストグラムH0から読み取る(図2のステップS3参照)。この明端bと暗端dに挟まれた領域に部分nと部分hとのいずれも含まれることになる。なお、元画像P0に存在する画素の画素値の全てが明端bと暗端dの間に含まれる必要はなく、両端に挟まれた領域に元画像P0に存在する画素の画素値の概ねが所属していればよい。暗端は、本発明の第2端に相当し、明端は、本発明の第1端に相当する。
【0034】
ヒストグラムH0,明端b,および暗端dは、評価領域解析部14に送出される。評価領域解析部14では、ヒストグラムH0を微分して、ヒストグラムH0に含まれる極小点を求める(図2のステップS4参照)。評価領域解析部14で求められた極小点を画素値が明端bに近いものから順に第1極小点k1,第2極小点k2と呼ぶことにする[図3(b)参照]。評価領域解析部14は、ヒストグラムH0と各極小点における画素値と、明端bの画素値を評価値取得部15に送出する(図2のステップS5参照)。
【0035】
評価値取得部15は、図4に示すように、第1極小点k1と明端bとに挟まれた領域を評価領域R1と認定し、評価領域R1の重心点G1を求める。そして、評価領域R1に存するヒストグラムの重心点における強度の値を求める。重心点における強度の値をAとし、評価領域R1の画素値の幅をBとする。重心点G1とは、評価領域R1に存するヒストグラムH0の1部分の偏りを考慮した中心である。具体的には、重心点G1とは、評価領域R1の暗い側の端である第1極小点k1から重心点G1までの区間のヒストグラムH0の重心点における強度の値と、評価領域R1の明るい側の端である明端bから重心点G1までの区間のヒストグラムH0の重心点における強度の値とが同一の値となるような点である(図4参照)。
【0036】
評価値取得部15は、AからBを除算して評価領域R1に含まれるピークの鋭さを示す評価値D1を算出する(図2のステップS6参照)。この評価値D1が大きいほど狭い画素値の幅に、ピークが強い強度で存在していることになるので、より評価領域R1に含まれるピークが鋭いことを意味する。つまり、図3(b)のnのように、狭い範囲に似通った画素値の画素が多数存在すれば、A/Bの値(評価値D1)が大きくなるのである。
【0037】
比較部16は、評価値D1が所定値以上であるか比較する(図2のステップS7参照)。そして、評価値D1が所定値以上である場合、評価領域R1に含まれるピークは、十分に鋭いものと認定する。この所定値は、情報記憶部33に記憶されている。比較部は、本発明の比較手段に相当する。
【0038】
比較部16は、評価値D1が所定値以上である場合、調整ヒストグラム生成部21にヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点G1とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、ヒストグラムH0における明端bから、重心点G1を含むトリミング領域を取り除いた調整ヒストグラムH1を生成する(図2のステップS9参照)。このトリミングの方法について具体的に説明する。調整ヒストグラム生成部21は、重心点G1と明端bとの画素値の幅L1を取得する(図5参照)。この幅L1は、画素値bから画素値G1を減算することで求められる。次に、調整ヒストグラム生成部21は、画素値が重心点G1から第2端d側に幅L1だけ離れたトリミング基準点tr1を算出する。このトリミング基準点tr1は、重心点の画素値G1から幅L1を減算することで求められる。すなわち、トリミング基準点tr1は、画素値G1−(画素値b−画素値G1)=2×G1−bと等しいことになる。調整ヒストグラム生成部21は、トリミング基準点tr1と明端bとに挟まれたトリミング領域をヒストグラムH0から除去して調整ヒストグラムH1を生成する。生成された調整ヒストグラムH1は、図6の上部のようになっている。
【0039】
調整ヒストグラムH1は、置換表生成部22に送出される。置換表生成部22は、調整ヒストグラムH1をスケーリングして、輝度補正の目標となる置換目標ヒストグラムを生成する(図2のステップS10参照)。すなわち、調整ヒストグラムH1は、暗端dと、トリミング基準点tr1との間の狭い領域にしか延在していないものを、線形的に引き伸ばして、例えば、暗端dを最も暗い画素値である0とし、トリミング基準点tr1を最も明るい画素値である4,000とする。この置換目標ヒストグラムH2は、図6の下部のようになっている。置換表生成部22は、調整ヒストグラムH1における画素値の各々が、置換目標ヒストグラムH2においてどのような画素値に変更されたかを対応付けた置換表Tを生成する。この置換表Tは、輝度補正部23に出力される。
【0040】
輝度補正部23は、置換表Tを基に元画像P0の構成する画素を置き換える(図2のステップS11参照)。こうして、狭いものとなっていた元画像P0における画素値の分布が、置き換えにより、広いものとなり、コントラストが視認に適した輝度補正画像P1が取得されるのである。なお、元画像P0における暗端dよりも暗い画素の画素値は、0に置換され、トリミング基準点tr1よりも明るい画素の画素値は、4,000に置換される。この輝度補正画像P1が表示部32に表示され一連の動作は終了となる。
【0041】
次に、図2のステップS7において、評価値D1が所定値よりも小さい場合について説明する。この場合、評価値取得部15は、評価領域を広げて評価値と設定値とを比較する。
【0042】
上述のように評価値D1が所定値よりも小さい場合とは、図7に示すように、領域N[図3(a)参照]に由来する部分nが複数のピークに分裂する場合である。この場合、第1極小点k1と明端bとに挟まれた評価領域R1の評価値D1は、所定値よりも小さいものとなる。この場合、評価値取得部15は、評価領域R1を拡張した別の領域を評価領域R2として認定する。この評価領域R2は、図7に示すように、極小点のうち第1極小点k1に次いで明端bに近い第2極小点k2から明端bまでの領域である。
【0043】
評価値取得部15は、この新たな評価領域R2について、評価値D2と、評価領域R2の重心点G2とを求める。比較部16は、評価値D2が所定値以上である場合、調整ヒストグラム生成部21にヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点の画素値G2とを送出する。調整ヒストグラムH1は、2×G2−画素値bで求められるトリミング基準点tr2から明端bまでをトリミング領域として認定する。調整ヒストグラム生成部21は、トリミング領域をヒストグラムH0から除去して調整ヒストグラムH1を生成する。図2のステップ10以降の動作は、上述の構成と同様である。
【0044】
また、評価値D2が所定値よりも小さかった場合、評価値取得部15は、評価領域の幅を決定する極小点を暗端d側に移動させながらその度ごとに評価値を算出し、比較部16は、これと所定値とを比較する。評価値が所定値以上となった時点で、比較部16は、ヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、これを基に調整ヒストグラムH1を生成するのである。
【0045】
極小点の全てについて評価領域を求めても、所定値以上とならなかった場合、評価値取得部15は、これ以上の評価値の算出をやめ、調整ヒストグラム生成部21にトリミングを行わない旨の指示を送出する(図2のステップS8参照)。調整ヒストグラムH1は、ヒストグラムH0と等しくなる。
【0046】
次に、調整ヒストグラム生成部21が行うトリミング領域について説明する。ヒストグラムに表れるピークは図8に示すように、ある程度の広がりを持って現れる。このピークは重心点Gを中心とした画素値ついて左右対称の形状をしているのが一般的である。そこで、このピークの重心点Gから明るい側の端部bとの距離と、ピークの重心点Gから暗い側の端部Trとの距離は、同じであると予想できる。実際のヒストグラムにおいて、ピーク同士が重なることで、各ピークの端部を予想することが難しい。しかし、重心点Gの画素値と端部のどちらか(例えば端部b)の画素値が分かれば、これを基に、もう一方の端部の位置を計算することができる(すなわち、Tr=2b−G)。トリミング基準点は、この予測される端部に相当する。
【0047】
以上のように、実施例1のX線撮影装置1は、元画像P0のヒストグラムH0の一部を除外して調整ヒストグラムH1を生成して、これを基に元画像P0の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムH1からは、元画像P0における被検体Mと無関係の領域に由来する成分が除かれている。したがって、調整ヒストグラムH1は、被検体Mが写りこんだ画素の画素値の分布を示したものとなっている。したがって、この調整ヒストグラムH1を用いて輝度補正を行えば、視認性に優れた輝度補正画像P1を取得することができる。
【0048】
また、実施例1の比較部16において、ヒストグラムH0の端を調整ヒストグラムH1から除外するかどうかは、評価領域Rの評価値Dが所定値以上であるかどうかで決定される。評価値Dは、評価領域Rに含まれるピークの鋭さを示す値である。つまり、実施例1の構成によれば、画素値が極端な鋭いピークが調整ヒストグラムH1から除去される。この様なピークは、被検体Mに由来するものではないと考えられる。被検体Mに由来する画素値は、ヒストグラムH0において幅広くなだらかに延在する傾向にあるからである。
【0049】
実施例1のX線撮影装置1は、被検体Mに由来するものではない画素値が複数のピークに分裂してヒストグラムH0に現れたとしても、それを確実に除くことができる。つまり明端bに被検体Mに由来するものではないピークが複数に分裂しても、評価領域解析部14は評価領域Rを暗端d側に変更しながら次第に広げていき、評価値Dを算出する構成となっているので、被検体Mに由来するものではないピークをヒストグラムH0から確実に除去することができる。
【0050】
また、比較部16において、評価領域Rに存在するピークは、ピークの重心点における強度の値が大きく(ピークが高く),かつピークの幅が狭いほど鋭いピークであると認定される。つまり、評価値DをヒストグラムH0の重心点における強度の値から評価領域Rの幅を除算したものとすれば、評価領域Rに存するピークの鋭さが、確実に判別できるのである。なお、評価領域Rの一端は、極小点となっていることから、評価領域Rには、確実にピークが存在することになる。
【0051】
また、調整ヒストグラム生成部21において、ヒストグラムH0のどこを切り捨てて調整ヒストグラムH1とするかは、評価領域Rの重心点Gを基に決定される。すなわち、明端bから重心点Gまでの幅(基準幅)をピーク等(ピークまたは、ピーク群)の幅の半分であるものとして、ピーク等の全域が省かれるようにヒストグラムH0の除外範囲を決定するのである。すなわち、除外されるべきピーク等の明端b側の終端は、明端bであり、暗端d側の終端は、明端bから基準幅の2倍の幅だけ暗端dに近づいたトリミング基準点Trとなる。調整ヒストグラム生成部21がヒストグラムH0の2G―b(トリミング基準点Tr)からbまでの範囲を除外すれば、ヒストグラムH0において明端bからトリミング基準点Trまでの部分が確実に除去されることになる。
【0052】
また、実施例の構成によれば、元画像P0に表れた被検体Mが写りこんでいない領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。すなわち、鋭いピーク等の除去は、画素値の高い(明るい側)から行われる。元画像P0において被検体Mが写りこんでいない領域は、何ら障害物を通過しないで放射線がFPD4に入射した部分であるから、その画素値は、高いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムH0の画素値の明るい側で鋭いピーク等となっている部分が除去されて、調整ヒストグラムH1が生成されるので、確実に被検体Mと無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【0053】
本発明は、上述の構成に限られず、以下のように変形実施することができる。
【0054】
(1)上述の実施例1の構成によれば被検体が写りこんでいない明るい領域に影響されないで輝度補正を行うものであったが、本発明はこれに限られない。すなわち、被検体の体内に埋め込まれた金属の影に影響されない輝度補正を行う構成とすることもできる。元画像P0に被検体の金属が写りこんでいると、そのヒストグラムH0は、図9のように暗端d側に極端に鋭いピークが現れる。評価値取得部15は、暗端dに最も近い第1極小点k1と暗端dとに挟まれた領域を評価領域R1と認定し、評価領域R1の重心点G1を求め、ヒストグラムH0の重心点における強度の値Aを求める。評価領域R1の重心点の値をAとし、評価領域R1の画素値の幅をBとしたとき、評価値D1は、A/Bである。重心点G1とは、評価領域R1に存するヒストグラムH0の1部分の偏りを考慮した中心である。
【0055】
比較部16は、評価値D1が所定値以上であるか比較する(図2のステップS7参照)。比較部16は、評価値D1が所定値以上である場合、調整ヒストグラム生成部21にヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点G1とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、ヒストグラムH0における明端bから、重心点G1を含むトリミング領域を取り除いた調整ヒストグラムH1を生成する。すなわち、調整ヒストグラム生成部21は、G1+(G1−d)=2×G1−dで求められるトリミング基準点Tr1から暗い部分をトリミング領域と認定してこの部分をヒストグラムH0から除去することで調整ヒストグラムH1を生成する(図10参照)。
【0056】
また、評価値D1が所定値よりも小さい場合、評価値取得部15は、評価領域の幅を決定する極小点を明端b側に移動させながらその度ごとに評価値を算出し、比較部16はこれを所定値と比較する。評価値が所定値以上となった時点で、ヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、暗端dの値と、重心点G1とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、これを基に調整ヒストグラムH1を生成する。その様子は、図2におけるステップS5〜ステップS8と同様である。
【0057】
上述の構成によれば、元画像P0に表れた被検体Mに埋め込まれた金属の影が写りこんだ領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。この場合、鋭いピーク等の除去は、画素値の低い(暗い側)から行われる。元画像P0において金属の影が写りこんだ領域は、本来被検体Mではありえない程度に放射線を透過させないものであるから、その画素値は、極端に低いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムH0の画素値の暗い側で鋭いピークとなっている部分が除去されて、調整ヒストグラムH1が生成されるので、確実に被検体Mと無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【0058】
(2)上述の実施例1の構成によれば被検体が写りこんでいない明るい領域に影響されないで輝度補正を行うものであったが、本発明はこれに限られない。すなわち、実施例1に基づいてヒストグラムのトリミングを行った後、上述の変形例に基づいて、トリミングを行ってもよい。これにより、被検体が写りこんでいない領域、および被検体に埋め込まれた金属に影響されることなく、診断に好適な輝度の補正が行えるようになる。
【0059】
(3)上述した実施例1は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0060】
(4)上述した実施例1のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【0061】
(5)上述した実施例1において所定値は、固定であったが、評価領域が更新されるたびに比較される所定値を変更する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
b 明端(第1端)
d 暗端(第2端)
G 重心点
H0 ヒストグラム
H1 調整ヒストグラム
T 置換表
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
11 画像生成部(透視画像取得手段)
12 ヒストグラム取得部(ヒストグラム取得手段)
13 端部取得部(端部取得手段)
14 評価領域解析部(評価領域解析手段)
15 評価値取得部(評価値取得手段)
16 比較部(比較手段)
21 調整ヒストグラム生成部(第1調整ヒストグラム生成手段)
22 置換表生成部(置換表生成手段)
23 輝度補正部(輝度補正手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の透視画像を撮影する放射線撮影装置に係り、特に放射線透視画像の露出を自動的に制御することができる放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には、放射線の透視画像を撮影する放射線撮影装置が配備されている。この様な放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出器とを備えている。このような放射線撮影装置においては、透視画像をモニタに表示する場合、関心部位へのX線露出が適当でないため、関心部位の輝度が診断に適当でない場合がある。
【0003】
そこで、従来の放射線撮影装置は、放射線露出を調整することにより、透視画像の輝度を補正する機能を備えている(例えば特許文献1参照)。この輝度補正の方法について説明する。従来の放射線撮影装置で透視画像の輝度を補正するには、まず、被検体の関心部位を透視画像の中心に来るように被検体の位置を調整して、透視画像を撮影する。こうして、図11に示すように、被検体の関心部位が中央に写りこんだ透視画像Pが取得される。
【0004】
輝度補正は、放射線透視画像の中央部の関心領域Rを構成する画素の画素値を参照して行われる。すなわち、関心領域Rにおける代表値を、目標となる輝度値になるように放射線露出を調整し、画素値の変換を行う。これにより、元の画像の関心領域Rは、所望の輝度値となり、視認性の優れた画像が得られる。
【0005】
輝度補正の際に放射線透視画像の中央部のみを使用する理由は、放射線透視画像の中央部には、撮影の対象が写りこんでいる可能性が高いことと、放射線透視画像の周辺部も含めて輝度補正をすると、視認性を改善する画素値の変換ができないことがあるという理由による。すなわち、図11を参照すれば分かるように、放射線透視画像には、被検体が写りこんでいない領域Nが現れる。この領域Nは、放射線が障害物を通過しないで放射線検出器に検出された領域であるから、他と比べて、極端に明るい画素が密集した塊である。放射線透視画像全体から輝度補正をしてしまうと、放射線撮影装置は、明るい領域Nを暗くしようとして、透視画像全体を極端に暗い画素に変えてしまう。この様に、被検体が写りこんでいない領域Nがあるがゆえ、輝度補正を行っても被検体の視認性は、改善されないのである。従来構成は、領域Nを輝度補正処理から排除する目的で、放射線透視画像の中央部のみを使用して輝度補正を行う構成となっているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−231497号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来構成の放射線撮影装置には次のような問題がある。
すなわち、関心領域Rには、必ずしも被検体の関心部位が写りこむとは限らず、画素値を変換しても視認性をよくすることができないという問題がある。被検体の骨にボルトなどの金属が埋め込まれている場合、この金属が透視画像の関心領域Rに写りこむことがある。この金属は、放射線を透過しないので、透視画像においては、非常に暗い画素が密集して写りこむ。この様に、診断に必要がなく、かつ、周囲の画素とは画素値が極端にかけ離れた塊が関心領域Rに写りこんでしまう。関心領域Rにおける代表値を目標となる輝度値に変換しようとすれば暗い金属部分を明るくすることになり、透視画像における金属部分以外が極端に明るい画素となってしまう。
【0008】
また、被検体が写りこんでいない領域Nが関心領域Rに入り込まない保証はない。すなわち、被検体の両足を一度に撮影する場合、被検体の両足に挟まれた空隙の領域は、透視画像の中央に位置してしまう。これは、被検体が存在しない領域であるのだから、関心領域Rに被検体が写りこんでいない領域Nが存してしまう。このまま放射線露出を調整して撮影を行うと、透視画像は、明るい領域Nが暗くされるのに伴って、極端に暗いものとなる。
【0009】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、透視画像に極端に明るい、または暗い像が写りこんでも、これに影響されることなく診断に好適な輝度補正を行うことができる放射線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、放射線を検出する放射線検出手段と、放射線検出手段から出力された検出信号を基に放射線透視画像を取得する透視画像取得手段と、放射線透視画像のヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、ヒストグラムの両端である第1端、第2端を取得する端部取得手段と、ヒストグラムの第1端と、ヒストグラムが有する極小点のうち最も第1端に近い第1極小点とに挟まれた評価領域を認定して、評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、評価領域の幅を求める評価領域解析手段と、ヒストグラムに現れるピークの高さと幅から、評価領域に含まれるピークの鋭さを示す評価値を取得する評価値取得手段と、評価値と所定値とを比較する比較手段と、評価値が所定値以上であるとき、ヒストグラムから重心点を含む部分を除外した調整ヒストグラムを生成する調整ヒストグラム生成手段と、調整ヒストグラムをスケーリングして画素値の置換表を生成する置換表生成手段と、置換表に基づいて、放射線透視画像の画素値を変換して輝度補正画像を生成する輝度補正手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]本発明の放射線撮影装置は、放射線透視画像のヒストグラムの一部を除外して調整ヒストグラムを生成して、これを基に放射線透視画像の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムからは、放射線透視画像における被検体と無関係の領域に由来する成分が除かれている。したがって、調整ヒストグラムは、被検体が写りこんだ画素の画素値の分布を示したものとなっている。したがって、この調整ヒストグラムを用いて輝度補正を行えば、視認性に優れた輝度補正画像を取得することができる。
【0012】
ヒストグラムの端を調整ヒストグラムから除外するかどうかは、評価領域の評価値が所定値以上であるかどうかで決定される。評価値は、評価領域に含まれるピークの鋭さを示す値である。つまり、本発明の構成によれば、画素値が極端な鋭いピークが調整ヒストグラムから除去される。この様なピークは、被検体に由来するものではないと考えられる。被検体に由来する画素値は、ヒストグラムにおいて幅広くなだらかに延在する傾向にあるからである。
【0013】
また、上述の放射線撮影装置において、評価値が所定値未満であるとき、評価領域解析手段は、ヒストグラムの第1端と、ヒストグラムが有する極小点のうち第1極小点に次いで第1端に近い第2極小点とに挟まれた領域を評価領域と認定して、評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、評価領域の幅を求めればより望ましい。
【0014】
また、上述の放射線撮影装置において、第1端と第2極小点とに挟まれた評価領域における評価値が、所定値未満であるとき、評価領域解析手段は、評価領域の認定における極小点を第2端側に変更しながら評価領域を次第に広げてゆき、評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、評価領域の幅を求めればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成によれば、被検体に由来するものではない画素値が複数のピークに分裂してヒストグラムに現れたとしても、それを確実に除くことができる。つまり第1端に被検体に由来するものではないピークが複数に分裂しても、評価領域解析手段は評価領域を第2端側に変更しながら次第に広げていき、評価値を算出する構成となっているので、被検体に由来するものではないピークをヒストグラムから確実に除去することができる。
【0016】
また、上述の放射線撮影装置において、評価値は、ヒストグラムの重心点における強度の値から評価領域の幅を除算したものであればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の具体的な態様を示したものである。評価領域に存在するピークは、ピークの重心点における強度の値が大きく(ピークが高く),かつピークの幅が狭いほど鋭いピークであると認定される。つまり、評価値をヒストグラムの重心点における強度の値から評価領域の幅を除算したものとすれば、評価領域に存するピークの鋭さが、確実に判別できるのである。なお、評価領域の一端は、極小点となっていることから、評価領域には、確実にピークが存在することになる。
【0018】
また、上述の放射線撮影装置において、重心点の画素値をGと、第1端の画素値をbとしたとき、調整ヒストグラム生成手段は、ヒストグラムの2G−bからbまでの範囲を除外して調整ヒストグラムを生成すればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成によれば、ヒストグラムのどこを切り捨てて調整ヒストグラムとするかは、評価領域の重心点を基に決定される。すなわち、第1端から重心点までの幅(基準幅)をピークの幅の半分であるものとして、ピークの全域が省かれるようにヒストグラムの除外範囲を決定するのである。すなわち、除外されるべきピークの第1端側の終端は、第1端であり、第2端側の終端は、第1端から基準幅の2倍の幅だけ第2端に近づいたトリミング基準点となる。調整ヒストグラム生成手段がヒストグラムの2G―bからbまでの範囲を除外すれば、ヒストグラムにおいて第1端からトリミング基準点までの部分が除去されることになる。
【0020】
また、上述の放射線撮影装置において、第1端は、ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であり、第2端は、ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成によれば、放射線透視画像に表れた被検体が写りこんでいない領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。すなわち、鋭いピークの除去は、画素値の高い(明るい側)から行われる。放射線透視画像において被検体が写りこんでいない領域は、何ら障害物を通過しないで放射線が放射線検出器に入射した部分であるから、その画素値は、高いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムの画素値の明るい側で鋭いピークとなっている部分が除去されて、調整ヒストグラムが生成されるので、確実に被検体と無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【0022】
また、上述の放射線撮影装置において、第1端は、ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であり、第2端は、ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であればより望ましい。
【0023】
[作用・効果]上述の構成によれば、放射線透視画像に表れた被検体に埋め込まれた金属の影が写りこんだ領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。この場合、鋭いピークの除去は、画素値の低い(暗い側)から行われる。放射線透視画像において金属の影が写りこんだ領域は、本来被検体ではありえない程度に放射線を透過させないものであるから、その画素値は、低いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムの画素値の暗い側で鋭いピークとなっている部分が除去されて、調整ヒストグラムが生成されるので、確実に被検体と無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の放射線撮影装置は、放射線透視画像のヒストグラムの一部を除外して調整ヒストグラムを生成して、これを基に放射線透視画像の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムからは、放射線透視画像における被検体と無関係の領域に由来する成分が除かれる。ヒストグラムの端を調整ヒストグラムから除外するかどうかは、ピークの鋭さを示す評価領域の評価値が所定値以上であるかどうかで決定される。こうして、画素値が極端な鋭いピークが調整ヒストグラムから除去される。この様な急峻なピークは、被検体に由来するものではないのである。調整ヒストグラムに基づいて画素値を補正すれば、視認性に優れた放射線透視画像が取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に係るX線撮影装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係るX線撮影装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】実施例1に係るヒストグラム取得部を説明するフローチャートである。
【図4】実施例1に係る評価領域解析部を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係る調製ヒストグラム生成部を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係る置換表生成部を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る評価領域解析部を説明する模式図である。
【図8】実施例1に係る調製ヒストグラム生成部を説明する模式図である。
【図9】本発明の1変形例を説明する模式図である。
【図10】本発明の1変形例を説明する模式図である。
【図11】従来のX線撮影装置を説明する模式図である。
【実施例1】
【0026】
以下、実施例1に係る放射線撮影装置について説明する。なお、実施例1におけるX線は、本発明の放射線の一例である。
【0027】
<装置の構成>
まず、実施例1に係るX線撮影装置1の構成について説明する。X線撮影装置1は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板2と、天板2の上部に設けられたX線を照射するX線管3と、天板2の下部に設けられたX線を検出するフラット・パネル・ディテクタ(FPD)4と、FPD4のX線を検出する検出面を覆うように設けられた間接X線を吸収するX線グリッド5と、X線管3を制御するX線管制御部6と、FPD4から出力された検出信号を組み立てて被検体Mの透視像が写りこんだX線透視画像を取得する画像生成部11と、X線透視画像のヒストグラムを取得するヒストグラム取得部12と、ヒストグラムを分析する端部取得部13,評価領域解析部14,および評価値取得部15と、ヒストグラムの分析結果を基にヒストグラムを編集する調整ヒストグラム生成部21と、置換表Tを生成する置換表生成部22と、編集されたヒストグラムを用いてX線透視画像の輝度補正を行う輝度補正部23とを備えている。
【0028】
X線管3は、本発明の放射線源に相当し、FPD4は、本発明の放射線検出手段に相当する。また、評価領域解析部14は本発明の評価領域解析手段に相当し、評価値取得部15は本発明の評価値取得手段に相当する。また、画像生成部11は本発明の透視画像取得手段に相当し、置換表生成部22は本発明の置換表生成手段に相当する。また、端部取得部13は本発明の端部取得手段に相当し、調整ヒストグラム生成部21は本発明の調整ヒストグラム生成手段に相当する。また、輝度補正部23は本発明の輝度補正手段に相当し、ヒストグラム取得部12は本発明のヒストグラム取得手段に相当する。
【0029】
また、X線撮影装置1は、術者の指示を入力させる操作卓31と、X線透視画像を表示させる表示部32とを有している。そして、X線撮影装置1は、各部6,11,12,13,14,15,21,22,21を統括的に制御する主制御部34を備えている。主制御部34は、CPUによって構成され、種々のプログラムを実行することにより、各部を実現している。また、上述の各部は、それらを担当する演算装置に分割されて実行されてもよい。また、X線撮影装置1は、後述の所定値を記憶する情報記憶部33を備えている。
【0030】
<動作の説明>
次に、X線撮影装置1の動作について説明する。術者が操作卓31を通じてX線透視画像の取得の指示を行うと、X線撮影装置1は、X線管3からX線ビームを照射させ、これをFPD4に検出させる。画像生成部11は、FPD4から出力された検出信号を基に、被検体の透視像が写りこんだ元画像P0を取得する[図2のステップS1,および図3(a)参照]。元画像P0は、輝度補正がなされていないので、視認しづらいものとなっている。
【0031】
ヒストグラム取得部12は、画像生成部11から元画像P0を取得して、このヒストグラムH0を取得する(図2のステップS2参照)。得られたヒストグラムH0は、図3(b)に示すように、画素値を横軸とするスペクトルデータであり、元画像P0を構成する画素値の分布を示したものである。
【0032】
図3(a)の被検体Mが写りこんでいない領域Nの画素値は、被検体が写りこんでいる領域Dの画素値よりも高く、領域Dに見られる画素値は、様々な値が幅広く存在しているのに対し、領域Nに見られる画素値は、互いに似通っている。すなわち、元画像P0のヒストグラムH0は、図3(b)に示すように、画素値の高い側(明るい側)に鋭いピークとして現れた領域Nに由来する部分nと、画素値の低い側に広範囲に亘って現れた領域Dに由来する部分hとで構成されることになる。
【0033】
このヒストグラムH0は、端部取得部13に送出される。端部取得部13では、ヒストグラムH0において、元画像P0が分布する領域を求める。すなわち、図3(b)における元画像P0が分布する領域の明るい側の端の画素値である明端bと暗い側の端の画素値である暗端dとをヒストグラムH0から読み取る(図2のステップS3参照)。この明端bと暗端dに挟まれた領域に部分nと部分hとのいずれも含まれることになる。なお、元画像P0に存在する画素の画素値の全てが明端bと暗端dの間に含まれる必要はなく、両端に挟まれた領域に元画像P0に存在する画素の画素値の概ねが所属していればよい。暗端は、本発明の第2端に相当し、明端は、本発明の第1端に相当する。
【0034】
ヒストグラムH0,明端b,および暗端dは、評価領域解析部14に送出される。評価領域解析部14では、ヒストグラムH0を微分して、ヒストグラムH0に含まれる極小点を求める(図2のステップS4参照)。評価領域解析部14で求められた極小点を画素値が明端bに近いものから順に第1極小点k1,第2極小点k2と呼ぶことにする[図3(b)参照]。評価領域解析部14は、ヒストグラムH0と各極小点における画素値と、明端bの画素値を評価値取得部15に送出する(図2のステップS5参照)。
【0035】
評価値取得部15は、図4に示すように、第1極小点k1と明端bとに挟まれた領域を評価領域R1と認定し、評価領域R1の重心点G1を求める。そして、評価領域R1に存するヒストグラムの重心点における強度の値を求める。重心点における強度の値をAとし、評価領域R1の画素値の幅をBとする。重心点G1とは、評価領域R1に存するヒストグラムH0の1部分の偏りを考慮した中心である。具体的には、重心点G1とは、評価領域R1の暗い側の端である第1極小点k1から重心点G1までの区間のヒストグラムH0の重心点における強度の値と、評価領域R1の明るい側の端である明端bから重心点G1までの区間のヒストグラムH0の重心点における強度の値とが同一の値となるような点である(図4参照)。
【0036】
評価値取得部15は、AからBを除算して評価領域R1に含まれるピークの鋭さを示す評価値D1を算出する(図2のステップS6参照)。この評価値D1が大きいほど狭い画素値の幅に、ピークが強い強度で存在していることになるので、より評価領域R1に含まれるピークが鋭いことを意味する。つまり、図3(b)のnのように、狭い範囲に似通った画素値の画素が多数存在すれば、A/Bの値(評価値D1)が大きくなるのである。
【0037】
比較部16は、評価値D1が所定値以上であるか比較する(図2のステップS7参照)。そして、評価値D1が所定値以上である場合、評価領域R1に含まれるピークは、十分に鋭いものと認定する。この所定値は、情報記憶部33に記憶されている。比較部は、本発明の比較手段に相当する。
【0038】
比較部16は、評価値D1が所定値以上である場合、調整ヒストグラム生成部21にヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点G1とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、ヒストグラムH0における明端bから、重心点G1を含むトリミング領域を取り除いた調整ヒストグラムH1を生成する(図2のステップS9参照)。このトリミングの方法について具体的に説明する。調整ヒストグラム生成部21は、重心点G1と明端bとの画素値の幅L1を取得する(図5参照)。この幅L1は、画素値bから画素値G1を減算することで求められる。次に、調整ヒストグラム生成部21は、画素値が重心点G1から第2端d側に幅L1だけ離れたトリミング基準点tr1を算出する。このトリミング基準点tr1は、重心点の画素値G1から幅L1を減算することで求められる。すなわち、トリミング基準点tr1は、画素値G1−(画素値b−画素値G1)=2×G1−bと等しいことになる。調整ヒストグラム生成部21は、トリミング基準点tr1と明端bとに挟まれたトリミング領域をヒストグラムH0から除去して調整ヒストグラムH1を生成する。生成された調整ヒストグラムH1は、図6の上部のようになっている。
【0039】
調整ヒストグラムH1は、置換表生成部22に送出される。置換表生成部22は、調整ヒストグラムH1をスケーリングして、輝度補正の目標となる置換目標ヒストグラムを生成する(図2のステップS10参照)。すなわち、調整ヒストグラムH1は、暗端dと、トリミング基準点tr1との間の狭い領域にしか延在していないものを、線形的に引き伸ばして、例えば、暗端dを最も暗い画素値である0とし、トリミング基準点tr1を最も明るい画素値である4,000とする。この置換目標ヒストグラムH2は、図6の下部のようになっている。置換表生成部22は、調整ヒストグラムH1における画素値の各々が、置換目標ヒストグラムH2においてどのような画素値に変更されたかを対応付けた置換表Tを生成する。この置換表Tは、輝度補正部23に出力される。
【0040】
輝度補正部23は、置換表Tを基に元画像P0の構成する画素を置き換える(図2のステップS11参照)。こうして、狭いものとなっていた元画像P0における画素値の分布が、置き換えにより、広いものとなり、コントラストが視認に適した輝度補正画像P1が取得されるのである。なお、元画像P0における暗端dよりも暗い画素の画素値は、0に置換され、トリミング基準点tr1よりも明るい画素の画素値は、4,000に置換される。この輝度補正画像P1が表示部32に表示され一連の動作は終了となる。
【0041】
次に、図2のステップS7において、評価値D1が所定値よりも小さい場合について説明する。この場合、評価値取得部15は、評価領域を広げて評価値と設定値とを比較する。
【0042】
上述のように評価値D1が所定値よりも小さい場合とは、図7に示すように、領域N[図3(a)参照]に由来する部分nが複数のピークに分裂する場合である。この場合、第1極小点k1と明端bとに挟まれた評価領域R1の評価値D1は、所定値よりも小さいものとなる。この場合、評価値取得部15は、評価領域R1を拡張した別の領域を評価領域R2として認定する。この評価領域R2は、図7に示すように、極小点のうち第1極小点k1に次いで明端bに近い第2極小点k2から明端bまでの領域である。
【0043】
評価値取得部15は、この新たな評価領域R2について、評価値D2と、評価領域R2の重心点G2とを求める。比較部16は、評価値D2が所定値以上である場合、調整ヒストグラム生成部21にヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点の画素値G2とを送出する。調整ヒストグラムH1は、2×G2−画素値bで求められるトリミング基準点tr2から明端bまでをトリミング領域として認定する。調整ヒストグラム生成部21は、トリミング領域をヒストグラムH0から除去して調整ヒストグラムH1を生成する。図2のステップ10以降の動作は、上述の構成と同様である。
【0044】
また、評価値D2が所定値よりも小さかった場合、評価値取得部15は、評価領域の幅を決定する極小点を暗端d側に移動させながらその度ごとに評価値を算出し、比較部16は、これと所定値とを比較する。評価値が所定値以上となった時点で、比較部16は、ヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、これを基に調整ヒストグラムH1を生成するのである。
【0045】
極小点の全てについて評価領域を求めても、所定値以上とならなかった場合、評価値取得部15は、これ以上の評価値の算出をやめ、調整ヒストグラム生成部21にトリミングを行わない旨の指示を送出する(図2のステップS8参照)。調整ヒストグラムH1は、ヒストグラムH0と等しくなる。
【0046】
次に、調整ヒストグラム生成部21が行うトリミング領域について説明する。ヒストグラムに表れるピークは図8に示すように、ある程度の広がりを持って現れる。このピークは重心点Gを中心とした画素値ついて左右対称の形状をしているのが一般的である。そこで、このピークの重心点Gから明るい側の端部bとの距離と、ピークの重心点Gから暗い側の端部Trとの距離は、同じであると予想できる。実際のヒストグラムにおいて、ピーク同士が重なることで、各ピークの端部を予想することが難しい。しかし、重心点Gの画素値と端部のどちらか(例えば端部b)の画素値が分かれば、これを基に、もう一方の端部の位置を計算することができる(すなわち、Tr=2b−G)。トリミング基準点は、この予測される端部に相当する。
【0047】
以上のように、実施例1のX線撮影装置1は、元画像P0のヒストグラムH0の一部を除外して調整ヒストグラムH1を生成して、これを基に元画像P0の輝度補正を行う構成となっている。この調整ヒストグラムH1からは、元画像P0における被検体Mと無関係の領域に由来する成分が除かれている。したがって、調整ヒストグラムH1は、被検体Mが写りこんだ画素の画素値の分布を示したものとなっている。したがって、この調整ヒストグラムH1を用いて輝度補正を行えば、視認性に優れた輝度補正画像P1を取得することができる。
【0048】
また、実施例1の比較部16において、ヒストグラムH0の端を調整ヒストグラムH1から除外するかどうかは、評価領域Rの評価値Dが所定値以上であるかどうかで決定される。評価値Dは、評価領域Rに含まれるピークの鋭さを示す値である。つまり、実施例1の構成によれば、画素値が極端な鋭いピークが調整ヒストグラムH1から除去される。この様なピークは、被検体Mに由来するものではないと考えられる。被検体Mに由来する画素値は、ヒストグラムH0において幅広くなだらかに延在する傾向にあるからである。
【0049】
実施例1のX線撮影装置1は、被検体Mに由来するものではない画素値が複数のピークに分裂してヒストグラムH0に現れたとしても、それを確実に除くことができる。つまり明端bに被検体Mに由来するものではないピークが複数に分裂しても、評価領域解析部14は評価領域Rを暗端d側に変更しながら次第に広げていき、評価値Dを算出する構成となっているので、被検体Mに由来するものではないピークをヒストグラムH0から確実に除去することができる。
【0050】
また、比較部16において、評価領域Rに存在するピークは、ピークの重心点における強度の値が大きく(ピークが高く),かつピークの幅が狭いほど鋭いピークであると認定される。つまり、評価値DをヒストグラムH0の重心点における強度の値から評価領域Rの幅を除算したものとすれば、評価領域Rに存するピークの鋭さが、確実に判別できるのである。なお、評価領域Rの一端は、極小点となっていることから、評価領域Rには、確実にピークが存在することになる。
【0051】
また、調整ヒストグラム生成部21において、ヒストグラムH0のどこを切り捨てて調整ヒストグラムH1とするかは、評価領域Rの重心点Gを基に決定される。すなわち、明端bから重心点Gまでの幅(基準幅)をピーク等(ピークまたは、ピーク群)の幅の半分であるものとして、ピーク等の全域が省かれるようにヒストグラムH0の除外範囲を決定するのである。すなわち、除外されるべきピーク等の明端b側の終端は、明端bであり、暗端d側の終端は、明端bから基準幅の2倍の幅だけ暗端dに近づいたトリミング基準点Trとなる。調整ヒストグラム生成部21がヒストグラムH0の2G―b(トリミング基準点Tr)からbまでの範囲を除外すれば、ヒストグラムH0において明端bからトリミング基準点Trまでの部分が確実に除去されることになる。
【0052】
また、実施例の構成によれば、元画像P0に表れた被検体Mが写りこんでいない領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。すなわち、鋭いピーク等の除去は、画素値の高い(明るい側)から行われる。元画像P0において被検体Mが写りこんでいない領域は、何ら障害物を通過しないで放射線がFPD4に入射した部分であるから、その画素値は、高いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムH0の画素値の明るい側で鋭いピーク等となっている部分が除去されて、調整ヒストグラムH1が生成されるので、確実に被検体Mと無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【0053】
本発明は、上述の構成に限られず、以下のように変形実施することができる。
【0054】
(1)上述の実施例1の構成によれば被検体が写りこんでいない明るい領域に影響されないで輝度補正を行うものであったが、本発明はこれに限られない。すなわち、被検体の体内に埋め込まれた金属の影に影響されない輝度補正を行う構成とすることもできる。元画像P0に被検体の金属が写りこんでいると、そのヒストグラムH0は、図9のように暗端d側に極端に鋭いピークが現れる。評価値取得部15は、暗端dに最も近い第1極小点k1と暗端dとに挟まれた領域を評価領域R1と認定し、評価領域R1の重心点G1を求め、ヒストグラムH0の重心点における強度の値Aを求める。評価領域R1の重心点の値をAとし、評価領域R1の画素値の幅をBとしたとき、評価値D1は、A/Bである。重心点G1とは、評価領域R1に存するヒストグラムH0の1部分の偏りを考慮した中心である。
【0055】
比較部16は、評価値D1が所定値以上であるか比較する(図2のステップS7参照)。比較部16は、評価値D1が所定値以上である場合、調整ヒストグラム生成部21にヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、明端bと、重心点G1とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、ヒストグラムH0における明端bから、重心点G1を含むトリミング領域を取り除いた調整ヒストグラムH1を生成する。すなわち、調整ヒストグラム生成部21は、G1+(G1−d)=2×G1−dで求められるトリミング基準点Tr1から暗い部分をトリミング領域と認定してこの部分をヒストグラムH0から除去することで調整ヒストグラムH1を生成する(図10参照)。
【0056】
また、評価値D1が所定値よりも小さい場合、評価値取得部15は、評価領域の幅を決定する極小点を明端b側に移動させながらその度ごとに評価値を算出し、比較部16はこれを所定値と比較する。評価値が所定値以上となった時点で、ヒストグラムH0のトリミングを行う旨の指示と、暗端dの値と、重心点G1とを送出する。調整ヒストグラム生成部21は、これを基に調整ヒストグラムH1を生成する。その様子は、図2におけるステップS5〜ステップS8と同様である。
【0057】
上述の構成によれば、元画像P0に表れた被検体Mに埋め込まれた金属の影が写りこんだ領域を確実に除外して輝度補正を行うことができる。この場合、鋭いピーク等の除去は、画素値の低い(暗い側)から行われる。元画像P0において金属の影が写りこんだ領域は、本来被検体Mではありえない程度に放射線を透過させないものであるから、その画素値は、極端に低いのである。上述の構成によれば、ヒストグラムH0の画素値の暗い側で鋭いピークとなっている部分が除去されて、調整ヒストグラムH1が生成されるので、確実に被検体Mと無関係の画素値を除外された輝度補正が可能となる。
【0058】
(2)上述の実施例1の構成によれば被検体が写りこんでいない明るい領域に影響されないで輝度補正を行うものであったが、本発明はこれに限られない。すなわち、実施例1に基づいてヒストグラムのトリミングを行った後、上述の変形例に基づいて、トリミングを行ってもよい。これにより、被検体が写りこんでいない領域、および被検体に埋め込まれた金属に影響されることなく、診断に好適な輝度の補正が行えるようになる。
【0059】
(3)上述した実施例1は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
【0060】
(4)上述した実施例1のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
【0061】
(5)上述した実施例1において所定値は、固定であったが、評価領域が更新されるたびに比較される所定値を変更する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
b 明端(第1端)
d 暗端(第2端)
G 重心点
H0 ヒストグラム
H1 調整ヒストグラム
T 置換表
3 X線管(放射線源)
4 FPD(放射線検出手段)
11 画像生成部(透視画像取得手段)
12 ヒストグラム取得部(ヒストグラム取得手段)
13 端部取得部(端部取得手段)
14 評価領域解析部(評価領域解析手段)
15 評価値取得部(評価値取得手段)
16 比較部(比較手段)
21 調整ヒストグラム生成部(第1調整ヒストグラム生成手段)
22 置換表生成部(置換表生成手段)
23 輝度補正部(輝度補正手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段から出力された検出信号を基に放射線透視画像を取得する透視画像取得手段と、
前記放射線透視画像のヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、
前記ヒストグラムの両端である第1端、第2端を取得する端部取得手段と、
前記ヒストグラムの第1端と、前記ヒストグラムが有する極小点のうち最も前記第1端に近い第1極小点とに挟まれた評価領域を認定して、前記評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、前記評価領域の幅を求める評価領域解析手段と、
前記ヒストグラムに現れるピークの高さと幅から、前記評価領域に含まれるピークの鋭さを示す評価値を取得する評価値取得手段と、
前記評価値と所定値とを比較する比較手段と、
前記評価値が所定値以上であるとき、前記ヒストグラムから前記重心点を含む部分を除外した調整ヒストグラムを生成する調整ヒストグラム生成手段と、
前記調整ヒストグラムをスケーリングして画素値の置換表を生成する置換表生成手段と、
前記置換表に基づいて、放射線透視画像の画素値を変換して輝度補正画像を生成する輝度補正手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記評価値が所定値未満であるとき、
前記評価領域解析手段は、前記ヒストグラムの第1端と、前記ヒストグラムが有する極小点のうち前記第1極小点に次いで前記第1端に近い第2極小点とに挟まれた領域を評価領域と認定して、前記評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、前記評価領域の幅を求めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
第1端と第2極小点とに挟まれた評価領域における前記評価値が、所定値未満であるとき、
前記評価領域解析手段は、前記評価領域の認定における極小点を前記第2端側に変更しながら前記評価領域を次第に広げてゆき、前記評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、前記評価領域の幅を求めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記評価値は、前記ヒストグラムの前記重心点における強度の値から前記評価領域の幅を除算したものであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重心点の画素値をGと、前記第1端の画素値をbとしたとき、
前記調整ヒストグラム生成手段は、前記ヒストグラムの2G−bからbまでの範囲を除外して調整ヒストグラムを生成することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記第1端は、前記ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であり、前記第2端は、前記ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記第1端は、前記ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であり、前記第2端は、前記ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段から出力された検出信号を基に放射線透視画像を取得する透視画像取得手段と、
前記放射線透視画像のヒストグラムを取得するヒストグラム取得手段と、
前記ヒストグラムの両端である第1端、第2端を取得する端部取得手段と、
前記ヒストグラムの第1端と、前記ヒストグラムが有する極小点のうち最も前記第1端に近い第1極小点とに挟まれた評価領域を認定して、前記評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、前記評価領域の幅を求める評価領域解析手段と、
前記ヒストグラムに現れるピークの高さと幅から、前記評価領域に含まれるピークの鋭さを示す評価値を取得する評価値取得手段と、
前記評価値と所定値とを比較する比較手段と、
前記評価値が所定値以上であるとき、前記ヒストグラムから前記重心点を含む部分を除外した調整ヒストグラムを生成する調整ヒストグラム生成手段と、
前記調整ヒストグラムをスケーリングして画素値の置換表を生成する置換表生成手段と、
前記置換表に基づいて、放射線透視画像の画素値を変換して輝度補正画像を生成する輝度補正手段とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記評価値が所定値未満であるとき、
前記評価領域解析手段は、前記ヒストグラムの第1端と、前記ヒストグラムが有する極小点のうち前記第1極小点に次いで前記第1端に近い第2極小点とに挟まれた領域を評価領域と認定して、前記評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、前記評価領域の幅を求めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
第1端と第2極小点とに挟まれた評価領域における前記評価値が、所定値未満であるとき、
前記評価領域解析手段は、前記評価領域の認定における極小点を前記第2端側に変更しながら前記評価領域を次第に広げてゆき、前記評価領域内に存するヒストグラムの1部分の重心点と、前記評価領域の幅を求めることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記評価値は、前記ヒストグラムの前記重心点における強度の値から前記評価領域の幅を除算したものであることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記重心点の画素値をGと、前記第1端の画素値をbとしたとき、
前記調整ヒストグラム生成手段は、前記ヒストグラムの2G−bからbまでの範囲を除外して調整ヒストグラムを生成することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記第1端は、前記ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であり、前記第2端は、前記ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の放射線撮影装置において、
前記第1端は、前記ヒストグラムにおける画素が暗い側の端であり、前記第2端は、前記ヒストグラムにおける画素が明るい側の端であることを特徴とする放射線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−105924(P2012−105924A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259037(P2010−259037)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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