説明

放射線検出パネル

【課題】温度変化に伴う構成部材の反り等の変形を防止し、放射線の検出に適した状態か否かの判断も容易にする。
【解決手段】電子カセッテ10の筐体14を構成する収納体16と蓋体18とは、筐体14の厚み方向へ相対変位可能とされ、照射された放射線を吸収して光を放出するシンチレータ34は収納体16側に取付けられ、シンチレータ34から放出された光を画像として検出する放射線検出部(TFT基板)42は蓋体18側に取付けられている。筐体14は、接続部22に接続される空気圧発生装置28から内部に供給される空気圧により、最大厚み状態((A)参照)又は最小厚み状態((B)参照)に切り替わる。電子カセッテ10の非使用時はシンチレータ34と放射線検出部42とが離間する最大厚み状態とされ、放射線画像の撮影時にシンチレータ34と放射線検出部42とが全面に亘って密着する最小厚み状態とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線検出パネルに係り、特に、被写体を透過した放射線を吸収して光を放出する光放出部及び当該光放出部から放出された光を検出する検出部を備えた放射線検出パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、照射されたX線やγ線、α線等の放射線を検出し、照射放射線量の分布を表す放射線画像のデータへ直接変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)が実用化されており、このFPD等のパネル型の放射線検出器と、画像メモリを含む電子回路及び電源部を内蔵し、放射線検出器から出力される放射線画像データを画像メモリに記憶する可搬型の放射線検出パネル(以下、電子カセッテともいう)も実用化されている。なお、上記の放射線感応層としては、例えば照射された放射線をCsI:Tl、GOS(GdS:Tb)等のシンチレータ(蛍光体層)で光に一旦変換し、シンチレータから放出された光をPD(Photodiode)等から成る光検出部によって電荷へ再変換して蓄積する構成(間接変換方式)が知られている。放射線検出パネルは可搬性に優れているので、ストレッチャーやベッドに載せたまま被撮影者を撮影できると共に、放射線検出パネルの位置を変更することで撮影部位の調整も容易であるため、動けない被撮影者を撮影する場合にも柔軟に対処することができる。
【0003】
上記に関連して特許文献1には、基板上に1次元又は2次元状に配置される複数の光電変換素子を有する光電変換部と、基板の外周部に配置される電極取り出し部を有するセンサパネルと、光電変換部上に配置され且つ放射線を光電変換素子が感知可能な光に変換する蛍光体から成るシンチレータパネルと、を有する放射線検出装置において、シンチレータパネルを交換可能とし、シンチレータパネルとセンサパネル面間を減圧密着させる機構を設けた技術が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、基板の上に2次元状に固体光検出素子が配されて成る固体光検出手段、固体光検出手段の外周に全周に亘り配置されたシール手段、シール手段を挟んで固体光検出手段と相対する側に配され、固体光検出手段及びシール手段と共に密閉空間を形成するカバー手段、及び、密閉空間内に配されたシンチレータが設けられた構成の放射線検出器において、密閉空間の内部を排気することでシンチレータと固体光検出素子とを密着させ、センサー面での鮮鋭度のばらつきを防止する技術が開示されている。
【0005】
また特許文献3には、上蓋と下蓋と密封部材とで囲まれた空間内を減圧し、前面増感紙と後面増感紙とでX線フィルムを密着保持するX線フィルム密着保持装置において、リンクを有する移動機構により、上蓋に対して下蓋を略平行状態で上方及び下方に移動可能に基台に支持し、上蓋に対し略平行に開閉可能とすることで、上蓋と下蓋とをその全周に亘って均一に密着させ、気密性の向上や小形化を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−257944号公報
【特許文献2】特開2006−337184号公報
【特許文献3】特開平5−113615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
間接変換方式の放射線検出パネルでは、シンチレータ(光放出部)とTFT基板から成る検出部を密着させる必要があり、放射線検出パネルの製造では、両者が貼り合わされた後に放射線検出パネルの筐体内に収容される。しかし、CsI等から成るシンチレータはアルミニウム等から成る基板に材料を蒸着することで形成される一方、TFT基板としてはガラス基板等が多用され、双方の基板材料の熱膨張率は著しく相違している。このため、温度変化に伴って基板の反り等の変形が生じ、放射線検出パネルによる放射線の検出精度が低下することがある、という問題があった。
【0008】
上記の問題に対し、特許文献1〜3に記載の技術は、何れも筐体内を負圧状態(減圧状態)とすることで光放出部と検出部とを密着させるものであり、光放出部と検出部とを貼り合わせていないので温度変化に伴って部材が変形することは回避できる。しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術では、一部部材の劣化等によって筐体の気密性が損なわれていると、光放出部と検出部との接触状態が変化して放射線の検出精度が低下する。そして、光放出部と検出部との接触状態が変化しても外観上の変化は生じないので、放射線の検出精度が低下した状態に気付かないまま放射線の検出が行われる事態が生じ得る、という問題がある。
【0009】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、温度変化に伴う構成部材の反り等の変形を防止することができ、放射線の検出に適した状態か否かの判断も容易な放射線検出パネルを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る放射線検出パネルは、上面及び底面を有する形状で、前記上面が形成された上面側部材と前記底面が形成された底面側部材とが、前記上面と前記底面との間隔が変化するように相対的に変位可能とされた筐体と、前記筐体内に配置されかつ前記上面側部材及び前記底面側部材の一方に取付けられ、被写体を透過して前記上面又は前記底面に照射された放射線を吸収して光を放出する光放出部と、前記筐体内に配置されかつ前記上面側部材及び前記底面側部材の他方に取付けられ、前記光放出部から放出された光を検出すると共に、前記上面と前記底面との間隔の変化に伴い、前記光放出部と接している第1状態又は前記光放出部と離間している第2状態に切り替わる検出部と、を含んで構成されている。
【0011】
請求項1記載の発明に係る放射線検出パネルは、筐体が上面及び底面を有する形状とされ、上面が形成された上面側部材と底面が形成された底面側部材とが、上面と底面との間隔が変化するように相対的に変位可能とされている。また、筐体内には光放出部が配置されており、光放出部は上面側部材及び底面側部材の一方に取付けられ、被写体を透過して上面又は底面に照射された放射線を吸収して光を放出する。更に、筐体内には検出部も配置されており、検出部は上面側部材及び底面側部材の他方に取付けられ、光放出部から放出された光を検出すると共に、上面と底面との間隔の変化に伴い、光放出部と接している第1状態又は光放出部と離間している第2状態に切り替わる。
【0012】
このように、請求項1記載の発明では、光放出部と検出部が貼り合わされておらず、筐体の上面と底面との間隔が拡大するように上面側部材と底面側部材とが相対的に変位されている状態(第2状態)では光放出部と検出部が離間しているので、温度変化に伴って構成部材(光放出部又は検出部)に反り等の変形が生じることが防止される。また、筐体の上面と底面との間隔が縮小するように上面側部材と底面側部材とが相対的に変位されると、光放出部と検出部とが接している第1状態、すなわち放射線の検出に適した状態になる。従って、請求項1記載の発明では、光放出部と検出部との距離が筐体の上面と底面との間隔に応じて変化し、光放出部と検出部とが接している第1状態、すなわち放射線の検出に適した状態になっているか否かを、筐体の外観(筐体の上面と底面との間隔)から容易に判断することができるので、放射線の検出精度が低下した状態に気付かないまま放射線の検出が行われることを未然に防止することができる。
【0013】
なお、請求項1記載の発明のように、筐体の上面と底面との間隔が変化するように、筐体を構成する上面側部材と底面側部材とを相対的に変位可能とした場合、筐体の構成によっては、上面側部材と底面側部材との相対変位に伴って、光放出部と検出部との相対位置が筐体の上面や底面におよそ平行な方向に変化する位置ずれが生ずる可能性がある。これを考慮すると、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、上面側部材は、一方の面が筐体の上面を成す上面部材の外縁に全周に亘り、上面部材とおよそ直交する方向に沿って壁部が立設された形状とされ、底面側部材は、一方の面が筐体の底面を成す底面部材の外縁に全周に亘り、底面部材とおよそ直交する方向に沿って壁部が立設された形状とされ、筐体は、上面部材と底面部材とがおよそ平行に向い合い、かつ、上面側部材の壁部と底面側部材の壁部とが、前記全周に亘り上面及び底面におよそ平行な方向に沿った間隙を隔てて対向するように、上面側部材及び底面側部材が配置されて構成されていることが好ましい。
【0014】
請求項2記載の発明では、上面部材の外縁に全周に亘って立設された上面側部材の壁部、及び、底面部材の外縁に全周に亘って立設された底面側部材の壁部が、筐体の上面と底面との間隔の変化方向に各々沿うことになる。そして、上面側部材の壁部と底面側部材の壁部とが、上面部材又は底面部材の全周に亘り上面及び底面におよそ平行な方向に沿った間隙を隔てて対向するように上面側部材及び底面側部材が配置されているので、上面側部材と底面側部材との相対変位において、上面側部材の壁部と底面側部材の壁部とが干渉することで、上面側部材と底面側部材との相対位置が筐体の上面や底面におよそ平行な方向へ変化することが抑制される。従って、請求項2記載の発明によれば、上面側部材と底面側部材との相対変位に伴って、光放出部と検出部とに前記位置ずれが生ずることを抑制することができる。
【0015】
また、請求項1又は請求項2記載の発明において、例えば請求項3に記載したように、光放出部には、放射線の照射面内又は光放出面内の第1位置に、照射面内の第1位置に照射される放射線又は光放出面内の第1位置から放出される光を遮蔽する遮蔽部が設けられており、検出部には、受光面内のうち第1位置に対して一定の位置関係の第2位置に、受光面内の第2位置に照射される光を遮光する遮光部が設けられていることが好ましい。これにより、検出部が光放出部から放出された光を画像として検出する場合、検出部によって検出された画像上の前記第1位置に対応する位置には遮蔽部による放射線又は光の遮蔽によって濃度変化が生じ、前記画像上の前記第2位置に対応する位置にも遮光部による遮光によって濃度変化が生じる。このため、画像に生じた双方の濃度変化の位置関係が、第1位置と第2位置との位置関係に対応している否かに基づいて、光放出部と検出部とに位置ずれが生じたか否かを判別したり、位置ずれの方向や位置ずれの量を検出することが可能となる。
【0016】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、例えば請求項4に記載したように、上面側部材と底面側部材との間隙を密封する密封手段と、筐体の内部と外部とを選択的に連通させる連通手段と、を設けることが好ましい。上記の密封手段によって上面側部材と底面側部材との間隙を密封することで、本発明に係る放射線検出パネルを手術時の撮影に用いたり、必要に応じて殺菌洗浄することが可能となる。但し、上面側部材と底面側部材との間隙を密封した場合、筐体の内部空間に密封された空気が、筐体の上面と底面との間隔が変化するように上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させる際の抵抗となる。これに対し、筐体の内部と外部とを選択的に連通させる連通手段を設けた場合、上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させる際にのみ筐体の内部と外部とを連通させることが可能となり、筐体の密閉性を維持しつつ上面側部材と底面側部材との相対的に変位させることも容易に実現することができる。
【0017】
なお、請求項1〜請求項4の何れかに記載の発明において、上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させ、光放出部と検出部とが接している第1状態又は光放出部と検出部とが離間している第2状態に切り替えることは、例えば請求項5に記載したように、上面側部材と底面側部材との間隙を密封する密封手段と、筐体の内部空間が空気圧発生装置と連通するように空気圧発生装置を接続するための接続部と、を設け、接続部に接続された空気圧発生装置によって発生された空気圧を接続部を介して筐体の内部空間に導入することによって実現することができる。この場合、筐体の内部空間に負圧を導入することで、上面側部材と底面側部材とは筐体の上面と底面の間隔が縮小する方向へ相対的に変位し、筐体の内部空間に正圧を導入することで、上面側部材と底面側部材とは筐体の上面と底面の間隔が拡大する方向へ相対的に変位することになる。
【0018】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の発明において、例えば請求項6に記載したように、筐体の上面と底面との間隔が拡大する方向へ上面側部材及び底面側部材を付勢する付勢手段を設けることが好ましい。上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させ、光放出部と検出部とが接している第1状態又は光放出部と検出部とが離間している第2状態に切り替えることは、請求項5に記載したように筐体の内部空間に空気圧を導入する以外に、上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させる力を手、或いは治具等によって上面側部材及び底面側部材の外面に加えることによっても実現可能であるが、特にこの態様で上記の付勢手段を設ければ、筐体の上面と底面との間隔が拡大する方向へ上面側部材及び底面側部材を相対的に変位させることを、付勢手段の付勢力によって容易に実現できるので好ましい。
【0019】
また、請求項1〜請求項6の何れかに記載の発明において、例えば請求項7に記載したように、少なくとも上面と底面との間隔が拡大する方向へ上面側部材と底面側部材とが相対的に変位された場合に、上面側部材と底面側部材との相対位置を、相対的に変位された後の相対位置に保持する保持手段が設けられていることが好ましい。
【0020】
上面側部材と底面側部材との相対位置を保持することは、例えば請求項5に記載したように、筐体の内部空間に導入した空気圧によって上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させる態様であれば、上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させた後も空気圧の導入を継続する等によっても実現可能であるが、本発明に係る放射線検出パネルが可搬性を有する構成である場合、空気圧発生装置との接続を解除できないために可搬性が損なわれるという問題が生ずる。これに対し、本発明に係る放射線検出パネルに上記の保持手段を設ければ、筐体の内部空間に導入した空気圧によって上面側部材と底面側部材とを相対的に変位させる態様であっても空気圧発生装置との接続を解除することが可能となり、本発明に係る放射線検出パネルに可搬性を持たせることが可能となる。
【0021】
また、請求項7記載の発明において、上面側部材と底面側部材との間隙を密封する密封手段と、筐体の内部と外部とを選択的に連通させる連通手段と、が設けられている場合、保持手段は、例えば請求項8に記載したように、上面側部材と底面側部材とが相対的に変位されている間は連通手段によって筐体の内部と外部とを連通させ、上面側部材と底面側部材とが相対的に変位された後は連通手段による筐体の内部と外部との連通を遮断することで、上面側部材と底面側部材との相対位置を前記相対的に変位された後の相対位置に保持するように構成することができる。
【0022】
また、請求項1、請求項3〜請求項8の何れかに記載の発明において、筐体は、例えば請求項9に記載したように、上面側部材と底面側部材との間に設けられ、上面側部材と底面側部材との間隙を密封すると共に、上面側部材と底面側部材との相対変位に伴う前記間隙の大きさの変化に応じて伸縮する伸縮部材が設けられた構成であってもよい。
【0023】
また、請求項1〜請求項9の何れかに記載の発明において、例えば請求項10に記載したように、光放出部と検出部との間には光放出部と検出部とを光学的に結合する光結合部材が設けられており、第1状態において、検出部は光結合部材を介して光放出部と接するように構成してもよい。
【0024】
また、請求項1〜請求項10の何れかに記載の発明において、例えば請求項11に記載したように、検出部が光放出部と接している第1状態での筐体の厚みが、照射された放射線を感光材料に画像として記録する構成のカセッテにおける筐体の厚みと同サイズとされていることが好ましい。これにより、本発明に係る放射線検出パネルを上記構成の旧来のカセッテと同様に取り扱うことができ、本発明に係る放射線検出パネルの取扱い性が向上する。
【0025】
また、請求項1〜請求項11の何れかに記載の発明において、検出手段は、例えば請求項12に記載したように、光放出部に対して放射線の到来方向上流側に配置されていることが好ましい。上記のように、検出手段を光放出部に対して放射線の到来方向上流側に配置することで、検出手段を光放出部に対して放射線の到来方向下流側に配置した場合よりも検出手段の受光量が増大し、光放出部から放出された光を検出する検出手段における検出の感度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明は、上面及び底面を有する形状で、上面が形成された上面側部材と底面が形成された底面側部材とが、上面と底面との間隔が変化するように相対的に変位可能とされた筐体と、筐体内に配置されかつ上面側部材及び底面側部材の一方に取付けられ、被写体を透過した放射線を吸収して光を放出する光放出部と、筐体内に配置されかつ上面側部材及び底面側部材の他方に取付けられ、光放出部から放出された光を検出すると共に、筐体の上面と底面との間隔の変化に伴い、光放出部と接している第1状態又は光放出部と離間している第2状態に切り替わる検出部と、を備えているので、温度変化に伴う構成部材の反り等の変形を防止することができ、放射線の検出に適した状態か否かの判断も容易になる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態で説明した電子カセッテを一部破断して示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図3】(A)はシンチレータの光放出面上及び放射線検出器の受光面上の遮蔽部材の位置を示す斜視図、(B),(C)は放射線画像の一例を各々示すイメージ図である。
【図4】電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図5】コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図7】第3実施形態に係る電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図8】第4実施形態に係る電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図9】第5実施形態に係る電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図10】第5実施形態に係る電子カセッテの連通切替部の構成を示す側面図である。
【図11】第5実施形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0029】
〔第1実施形態〕
図1には、本発明に係る放射線検出パネルの一例としての電子カセッテ10が示されている。電子カセッテ10は、放射線Xを透過させる材料から成り、全体形状がおよそ直方体状で、矩形状の上面が被写体を透過した放射線Xが照射される照射面12とされた筐体14を備えている。筐体14内には、被写体を透過した放射線Xの到来方向に沿って、照射面12側から、本発明の検出手段としての放射線検出部(TFT基板)42や、本発明の光放出部としてのシンチレータ34等が順に配置されている。
【0030】
電子カセッテ10の照射面12には、複数個のLEDから成り、電子カセッテ10の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量の状態等の動作状態を表示するための表示部12Aが設けられている。なお、表示部12AはLED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部12Aは照射面12以外の部位に設けてもよい。
【0031】
図2に示すように、電子カセッテ10の筐体14は収納体16及び蓋体18を含んで構成されている。収納体16は例えばABS樹脂等から成り、矩形状で一方の面が筐体14の底面を成す底板16Aの外縁に、筐体14の底面とおよそ直交する方向に沿った第1側壁16Bが、底板16Aの外縁の全周に亘って立設されたおよそ箱型の形状である。また蓋体18についても、矩形状で一方の面が筐体14の上面(照射面12)を成す天板18Aの外縁に、かつ筐体14の上面とおよそ直交する方向に沿った第2側壁18Bが、天板18Aの外縁の全周に亘って立設されたおよそ箱型の形状である。なお、蓋体18の第2側壁18Bは例えばABS樹脂等から構成され、天板18Aは例えばカーボン等から構成される。これにより、天板18Aによる放射線Xの吸収を抑制しつつ、天板18Aの強度が確保される。
【0032】
なお、実施形態における「上」は底板16A側から見て天板18A側の方向を意味し、「下」は天板18A側から見て底板16A側の方向を意味する。
【0033】
また、蓋体18の天板18Aは収納体16の底板16Aよりもサイズが大きくされており、筐体14は、蓋体18の天板18Aによって収納体16の開口部が覆われ、収納体16の第1側壁16Bの外周側に位置する蓋体18の第2側壁18Bが、第1側壁16Bと間隙を隔てて対向するように、収納体16と蓋体18とが嵌め合わされた嵌め合い構造とされている。これにより、筐体14は上面と底面とがおよそ平行とされている。そして筐体14は、収納体16と蓋体18とが筐体14の上面及び底面とおよそ直交する筐体14の厚み方向(放射線Xの到来方向)に沿って相対的に変位可能とされており、収納体16と蓋体18との相対変位に伴い、図2(A)と図2(B)を比較しても明らかなように、筐体14の厚みが変化する。
【0034】
上記構成の筐体14は請求項2に記載の筐体の一例である。また、収納体16は本発明の底面側部材(より詳しくは請求項2に記載の底面側部材)の一例であり、底板16Aは請求項2に記載の底面部材の一例、第1側壁16Bは請求項2に記載の底面側部材の壁部の一例である。また、蓋体18は本発明の上面側部材(より詳しくは請求項2に記載の上面側部材)の一例であり、天板18Aは請求項2に記載の上面部材の一例、第2側壁18Bは請求項2に記載の上面側部材の壁部の一例である。
【0035】
また、収納体16の第1側壁16Bの上端部には、収納体16の外側へ向けて突出する突起16Cが設けられており、蓋体18の第2側壁18Bの下端部から所定距離隔てた位置には、蓋体18の内側へ向けて突出する突起18Cが設けられている。これにより、筐体14の上面と底面とが離間する方向への収納体16と蓋体18との相対変位は、突起16Cと突起18Cとが当接する位置(図2(A)に示す位置(最大厚み状態と称する))迄に制限されている。また、筐体14の上面と底面とが接近する方向への収納体16と蓋体18との相対変位は、収納体16の第1側壁16Bの上端部が蓋体18の天板18Aに当接する位置(図2(B)に示す位置(最小厚み状態と称する))迄に制限されている。なお、この状態での筐体14の厚みは、照射された放射線を感光材料に画像として記録する構成の旧来のカセッテにおける筐体の厚みと同サイズとされている(請求項11記載の発明に相当する構成)。
【0036】
また、本実施形態に係る電子カセッテ10では、筐体14内に配置された放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34が貼り合わされておらず、放射線検出部(TFT基板)42は蓋体18の天板18A(の裏面(照射面12と反対側の面))にスペーサ44を介して取付けられている一方、シンチレータ34は支持基板36上に形成され、この支持基板36は収納体16の底板16Aに取付けられた基台40の天板の上面に取付けられている。このため、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34との距離は収納体16と蓋体18との相対変位に応じて変化し、図2(A)に示すように筐体14が最大厚み状態の場合は、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが所定距離を隔てて離間し、図2(B)に示すように筐体14が最小厚み状態の場合は、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが全面に亘って密着される。なお、基台40の天板の下面には制御基板46が取付けられており、制御基板46と放射線検出部(TFT基板)42とはフレキシブルケーブル48を介して電気的に接続されている。
【0037】
なお、本実施形態では、筐体14が最小厚み状態のときに、収納体16の第1側壁16Bの上端部が蓋体18の天板18Aに当接し、かつ、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが密着しているが、収納体16の第1側壁16Bの上端部が蓋体18の天板18Aに当接することは必須ではなく、筐体14は、筐体14の上面と底面とが接近する方向への収納体16と蓋体18との相対変位が、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが密着する位置迄に制限されると共に、この最小厚み状態において、収納体16の第1側壁16Bの上端部が蓋体18の天板18Aに当接していない構成であってもよい。
【0038】
また、蓋体18の第2側壁18Bの下端部のうち蓋体18の内側に相当する位置には、収納体16の第1側壁16Bに密着するシール部材20が取付けられている。シール部材20は、図2(A),(B)に示すように、収納体16と蓋体18とが相対変位された場合にも第1側壁16Bに密着している状態を維持する。このように、収納体16の第1側壁16Bと蓋体18の第2側壁18Bとの間隙がシール部材20によって密封されることで、筐体14の内部空間の防水性・気密性が確保されるので、本実施形態に係る電子カセッテ10を、血液やその他の雑菌が付着する可能性がある手術時の撮影に用いたり、必要に応じて殺菌洗浄することが可能となる。なお、上記のシール部材20は請求項4,5,8に記載の密封手段の一例である。
【0039】
また、収納体16の第1側壁16Bのうち底板16Aに近い位置には、電子カセッテ10を空気圧発生装置28と接続するための接続部22が設けられている。接続部22には筐体14内を筐体14外と連通するための孔が穿設されており、この孔に対し、筐体14の外側には、空気圧発生装置28と接続するホース30の先端部に取付けられたコネクタ32と嵌合するコネクタ24が取付けられており、筐体14の内側には、通常は閉鎖しておりピン26Aが押圧されている間のみ開放状態となるバルブ26が取付けられている。バルブ26のピン26Aはコネクタ24側へ突出しており、コネクタ32の内側には、コネクタ24と嵌合された状態でピン26Aを押圧する押圧部32Aが設けられている。
【0040】
これにより、コネクタ24とコネクタ32とが嵌合されると、押圧部32Aによってピン26Aが押圧されてバルブ26が開放状態となることで、筐体14の内部空間はホース30を介して空気圧発生装置28と連通される。本実施形態では、この状態で空気圧発生装置28によって筐体14の内部空間に負圧又は正圧が供給されることで、筐体14の上面と底面とが接近する方向又は上面と底面とが離間する方向へ収納体16と蓋体18とが相対的に変位される。また、コネクタ24とコネクタ32との嵌合が解除されると、押圧部32Aによるピン26Aの押圧も解除されることでバルブ26が閉鎖状態に戻り、筐体14の内部空間と空気圧発生装置28等の外部との連通も遮断される。
【0041】
なお、接続部22は請求項5に記載の接続部の一例であり、バルブ26は請求項4,8に記載の連通手段の一例、コネクタ32の押圧部32Aは請求項7(詳しくは請求項8)に記載の保持手段の一例である。
【0042】
また、シンチレータ34は、被写体を透過した筐体14の照射面12に照射され、蓋体18の天板18A及び放射線検出部(TFT基板)42を透過して照射された放射線Xを吸収して光を放出する。シンチレータ34としては、例えばCsI:Tlや、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、CsBr、GOS(GdS:Tb)を用いることができるが、これらの材料に限られるものではない。シンチレータ34としてCsI等を用いる場合には、シンチレータ34を柱状結晶構造部を有する構成とすることが好ましい。これにより、シンチレータ34が放射線を吸収することで発生された光は、柱状結晶構造部において、柱状結晶の間隙に案内されて放射線検出部(TFT基板)42側へ放出されることで、放出される光の拡散が抑制されるので、電子カセッテ10で検出される放射線画像のボケを抑制することができる。
【0043】
またシンチレータ34としてCsI等を用いる場合、シンチレータ34の形成にあたって蒸着を行う必要があるので、支持基板36としては耐熱性の高い材料が望ましく、例えば放射線の透過率が高くて低コストという観点からアルミニウムが好適である。一方、シンチレータ34としてGOSを用いる場合は、シンチレータ34の形成にあたって蒸着が不要となるので、支持基板36としては耐熱性の低い材料、例えば合成樹脂等も利用可能である。
【0044】
なお本実施形態では、例として図3(A)に示すように、シンチレータ34の放射線検出部(TFT基板)42との対向面(放射線Xが照射されかつ光を放出する照射/光放出面)のうちの端部に、照射/光放出面に照射される放射線及び照射/光放出面から放出される光の少なくとも一方を遮蔽する遮蔽部材38が設けられている。
【0045】
また放射線検出部42は、シンチレータ34から放出された光を画像として検出するものであり、図4に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等から成る光電変換部50、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)52及び蓄積容量(本実施形態では光電変換部50を構成する電極対が蓄積容量として機能する)を備えた画素部54が、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板56上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)で構成されている。
【0046】
なお本実施形態では、例として図3(A)に示すように、放射線検出部(TFT基板)42のシンチレータ34との対向面(シンチレータ34から放出された光を受光する受光面)のうち、シンチレータ34の照射/光放出面上の遮蔽部材38の配置位置に対応する位置(端部)に、照射面に照射される光を遮光する遮光部材58が設けられている。
【0047】
また、本実施形態では、シンチレータ34の放射線照射面側に放射線検出部(TFT基板)42が配置されているが、光放出部(シンチレータ)と検出部(放射線検出部)をこのような位置関係で配置する方式は「裏面照射」と称する(請求項12記載の発明に相当する構成)。「裏面照射」は、光放出部(シンチレータ)の放射線照射面と反対側に検出部(放射線検出部)を配置する「表面照射」と比較して、検出部(放射線検出部)の受光量が増大し、結果として放射線検出パネル(電子カセッテ)の感度が向上する。
【0048】
光電変換部50は、上部電極と下部電極との間に、シンチレータ34から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜が配置されて構成されている。光電変換膜を構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜をアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ34から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンから成る光電変換膜の形成には蒸着を行う必要があるので、絶縁性基板56としては耐熱性の高い基板、例えばガラス基板等を用いる必要がある。
【0049】
一方、光電変換膜を有機光電変換材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸波を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜によるシンチレータ34から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜で吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料から成る光電変換膜は、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。
【0050】
なお、光電変換膜に適用可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ34の材料としてCsI(Ti)を用いた場合には、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。光電変換膜に適用可能な有機光電変換材料については、特開2009−32854号公報に詳細に記載されているため説明を省略する。
【0051】
TFT52は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が間隔を隔てて形成されている。また、活性層は非晶質酸化物で構成されている。活性層を構成する非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。TFT52の活性層を非晶質酸化物で形成した場合、X線やγ線等の放射線を吸収しないか、吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0052】
また、絶縁性基板56は放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT52の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部50の光電変換膜を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板56としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板56には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0053】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板56を形成してもよい。
【0054】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて絶縁性基板56を薄型化できる。
【0055】
また、図4に示すように、放射線検出部(TFT基板)42には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT52をオンオフさせるための複数本のゲート配線60と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量(光電変換部50の上部電極と下部電極の間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT52を介して読み出すための複数本のデータ配線62が設けられている。
【0056】
放射線検出部42の個々のゲート配線60はゲート線ドライバ64に接続されており、個々のデータ配線62は信号処理部66に接続されている。被写体を透過した放射線(被写体の画像情報を担持した放射線)が電子カセッテ10に照射されると、シンチレータ34の照射/光放出面上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部54の光電変換部50では、シンチレータ34のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部54の蓄積容量(光電変換部50の上部電極と下部電極の間)に蓄積される。
【0057】
上記のようにして個々の画素部54の蓄積容量に電荷が蓄積されると、個々の画素部54のTFT52は、ゲート線ドライバ64からゲート配線60を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT52がオンされた画素部54の蓄積容量に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線62を伝送されて信号処理部66に入力される。従って、個々の画素部54の蓄積容量に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
【0058】
信号処理部66は、個々のデータ配線62毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線62を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。なお、上述したゲート線ドライバ64及び信号処理部66と、以下で説明する電子カセッテ10の各構成要素は制御基板46に各々搭載されている。
【0059】
信号処理部66には画像メモリ68が接続されており、信号処理部66のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ68に順に記憶される。画像メモリ68は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ68に順次記憶される。
【0060】
画像メモリ68は電子カセッテ10全体の動作を制御するカセッテ制御部70と接続されている。カセッテ制御部70はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU70A、ROM及びRAMを含むメモリ70B、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等から成る不揮発性の記憶部70Cを備えている。
【0061】
また、カセッテ制御部70には無線通信部72が接続されている。無線通信部72は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部70は、無線通信部72を介してコンソール80(後述)と無線通信が可能とされており、コンソール80との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0062】
また、カセッテ制御部70には筐体14の収納体16と蓋体18との変位を検出する変位検出部76が接続されており、変位検出部76による検出結果はカセッテ制御部70に入力される。変位検出部76は、少なくとも、筐体14の収納体16と蓋体18とが最小厚み状態に相当する位置関係か否かを検出可能な構成であればよく、例えば、収納体16の第1側壁16Bの上端部が蓋体18の天板18Aに当接しているか否かを検出するリミットスイッチ等で構成することができるが、これに限られるものではなく、例えば筐体14の収納体16と蓋体18との相対位置を連続的に検出可能なリニアエンコーダ等で構成することも可能である。
【0063】
また、電子カセッテ10には電源部74が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ64や信号処理部66、画像メモリ68、無線通信部72、カセッテ制御部70等)は電源部74と各々接続され(図示省略)、電源部74から供給された電力によって作動する。電源部74は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないようにバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。
【0064】
図5に示すように、コンソール80はコンピュータから成り、装置全体の動作を司るCPU104、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106、各種データを一時的に記憶するRAM108、及び、各種データを記憶するHDD110を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部132及び無線通信部118が接続され、ディスプレイ100がディスプレイドライバ112を介して接続され、更に、操作パネル102が操作入力検出部114を介して接続されている。
【0065】
通信I/F部132は接続端子80A、通信ケーブル82及び接続端子84Aを介して放射線発生装置84と接続されている。コンソール80(のCPU104)は、放射線発生装置84との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部132経由で行う。無線通信部118は電子カセッテ10の無線通信部72と無線通信を行う機能を備えており、コンソール80(のCPU104)は電子カセッテ10との間の画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部118経由で行う。また、ディスプレイドライバ112はディスプレイ100への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール80(のCPU104)はディスプレイドライバ112を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ100に表示させる。また、操作パネル102は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部114は操作パネル102に対する操作を検出し、検出結果をCPU104へ通知する。
【0066】
また、放射線発生装置84は、放射線源130と、コンソール80との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部132と、コンソール80から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧や管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、を備えている。
【0067】
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態に係る電子カセッテ10は放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34が貼り合わされておらず、また電子カセッテ10が撮影に使用されずに保管されている間、筐体14は図2(A)に示す最大厚み状態とされ、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とは所定距離を隔てて離間している状態で維持される。このため、放射線検出部42のTFT基板を構成する材料とシンチレータ34の支持基板36を構成する材料の熱膨張率が著しく相違していたとしても、温度変化に伴って何れかの基板に反り等の変形が生じることが防止される。また、筐体14が最大厚み状態となっていることで、電子カセッテ10の管理者(例えば放射線技師等)は、電子カセッテ10が保管に適した状態(放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが離間している状態)となっていることを、筐体14の外観(厚み寸法)から容易に認識することができる。
【0068】
なお、電子カセッテ10が撮影に使用されずに保管されている間、コネクタ24にはコネクタ32が嵌合されないので、バルブ26は閉鎖状態で維持され、筐体14内の空気は筐体14内に密封された状態のまま維持される。これにより、電子カセッテ10が撮影に使用されずに保管されている間、筐体14の厚みを縮小しようとする外力が加わったとしても、筐体14内に密封された空気によって前記外力に抗する反力が生ずることで、筐体14の厚みが変化することが防止され、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とは離間している状態のまま維持される。
【0069】
また、電子カセッテ10を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者(例えば放射線技師等)は、放射線画像撮影の準備作業として、ホース30の先端部に取付けられたコネクタ32を撮影に使用する電子カセッテ10のコネクタ24に嵌合させることで、撮影に使用する電子カセッテ10を空気圧発生装置28と接続した後に、空気圧発生装置28によって負圧を発生させる。これにより、まずコネクタ32の押圧部32Aによってバルブ26のピン26Aが押圧され、バルブ26が開放状態に切り替わることで、筐体14の内部空間がホース30を介して空気圧発生装置28と連通される。そして、空気圧発生装置28によって発生された負圧が筐体14の内部空間に導入されることで、筐体14は、筐体14の上面と底面とが接近する方向へ収納体16及び蓋体18が相対的に変位されて図2(B)に示す最小厚み状態(厚みが旧来のカセッテにおける筐体の厚みと同サイズ)になり、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34が全面に亘って密着される。
【0070】
なお、電子カセッテ10の筐体14は、収納体16の第1側壁16Bと蓋体18の第2側壁18Bとが間隙を隔てて対向するように、収納体16と蓋体18とが嵌め合わされた嵌め合い構造である。また、第1側壁16Bと第2側壁18Bとの間隙にはシール部材20も設けられている。このため、収納体16及び蓋体18が筐体14の上面と底面とが接近する方向へ相対的に変位される際にも、収納体16と蓋体18とが上面や底面とおよそ平行な方向へ相対的に変位することは抑制され、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とはおよそ一定の位置関係で密着される。
【0071】
また、筐体14が最小厚み状態になると、撮影者は、電子カセッテ10が撮影に適した状態(放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが全面に亘って密着している状態)となったことを筐体14の外観(厚み寸法)から認識し、コネクタ24とコネクタ32との嵌合を解除することで、電子カセッテ10と空気圧発生装置28との接続を解除する。これにより、コネクタ32の押圧部32Aによるバルブ26のピン26Aの押圧が解除され、バルブ26が閉鎖状態に切り替わることで、筐体14内の空気は筐体14内に密封された状態となる。従って、電子カセッテ10が撮影に使用されている間、筐体14の厚みを拡大しようとする外力が加わったとしても、筐体14内に密封された空気によって前記外力に抗する反力が生ずることで、筐体14の厚みが変化することが防止され、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とは全面に亘って密着している状態のまま維持される。
【0072】
そして撮影者は、筐体14が最小厚み状態(筐体14の厚みが旧来のカセッテにおける筐体の厚みと同サイズ)となった電子カセッテ10を、今回の撮影部位に応じた位置・向きに配置する。これにより、放射線画像撮影の準備作業が完了する。
【0073】
一方、電子カセッテ10では、筐体14が最小厚み状態になると、筐体14が最小厚み状態になったことが変位検出部76によって検出され、この検出結果がカセッテ制御部70へ出力される。カセッテ制御部70では、筐体14が最小厚み状態になったことが変位検出部76によって検出されると、記憶部70Cに予め記憶されている自カセッテのカセッテIDを読み出し、読み出した自カセッテのカセッテIDを、撮影可能な状態になったことを表す準備完了信号と共に、無線通信部72を通じてコンソール80へ送信する。
【0074】
コンソール80では、電子カセッテ10からカセッテID及び準備完了信号を受信すると、受信したカセッテIDをHDD110等に登録した後に、曝射開始を指示する指示信号を放射線発生装置84へ送信する。これにより、放射線発生装置84は放射線源130から放射線を射出させる。
【0075】
放射線源130から射出された放射線は被写体を透過して電子カセッテ10の照射面12に照射され、蓋体18の天板18A及び放射線検出部(TFT基板)42を透過してシンチレータ34の照射/光放出面に照射される。シンチレータ34は照射/光放出面に照射された放射線を吸収し、吸収した放射線量に応じた光量の光を放出するが、シンチレータ34の照射/光放出面の端部には遮蔽部材38が設けられているので、遮蔽部材38に照射された放射線及び光の少なくとも一方が遮蔽部材38によって遮蔽される。これにより、電子カセッテ10を使用して撮影された放射線画像には、遮蔽部材38に対応するマークが端部に現れる。
【0076】
また、シンチレータ34から放出された光は放射線検出部(TFT基板)42の受光面に照射され、放射線検出部(TFT基板)42は受光面に照射された光を画像として検出するが、放射線検出部(TFT基板)42の受光面の端部には遮光部材58が設けられているので、遮光部材58に照射された光が遮光部材58によって遮光される。これにより、電子カセッテ10を使用して撮影された放射線画像には、遮光部材58に対応するマークも端部に現れる。
【0077】
本実施形態では、放射線検出部(TFT基板)42の受光面のうち、シンチレータ34の照射/光放出面上の遮蔽部材38の配置位置に対応する位置に遮光部材58が設けられている。このため、筐体14の上面や底面とおよそ平行な方向への位置ずれが生じていない状態で放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが密着された場合には、例として図3(A)に示すように、遮蔽部材38に対応するマークと遮光部材58に対応するマークとが放射線画像上で重なる。また、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34との密着に際して筐体14の上面や底面とおよそ平行な方向への位置ずれが生じていた場合には、例として図3(B)に示すように、遮蔽部材38に対応するマークの位置と遮光部材58に対応するマークの位置とにずれが生ずる。
【0078】
これにより、撮影者は、電子カセッテ10からコンソール80へ送信された放射線画像のデータに基づいてディスプレイ110に表示された放射線画像を視認することで、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34との位置ずれの有無を確認することができる。そして、位置ずれが生じていると判断した場合、撮影者は、例えば電子カセッテ10に空気圧発生装置28を再度接続し、筐体14を一旦最大厚み状態にした後に最小厚み状態に戻す等のように、位置ずれを解消するための対策を講ずることができる。
【0079】
なお、遮蔽部材38と遮光部材58との位置関係は、位置ずれが生じていない状態で対応するマークが放射線画像上で重なる位置関係に限られるものではなく、形状も図3に示したような矩形状に限られるものではない。遮蔽部材38及び遮光部材58の形状・位置関係は、放射線画像を目視して位置ずれの有無を確認可能であればよく、適宜変更可能である。
【0080】
また、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34との位置ずれは、シンチレータ34の照射/光放出面内における発光効率のばらつきに応じて放射線画像を補正する等の画像処理を行う場合に問題になる。このため、遮蔽部材38及び遮光部材58は、図3に示したような矩形状に代えて、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34との位置ずれの方向及び位置ずれ量を検出可能なように形状を相違させてもよい。この場合、放射線画像上の各マークの位置関係に基づいて位置ずれの方向及び位置ずれ量を検出し、シンチレータ34の発光効率のばらつきを画素単位で補正するための補正データを、検出結果に基づき放射線画像に対して相対的にずらして補正を行えばよい。これにより、位置ずれを解消するための対策を講ずることを省略することも可能となる。
【0081】
また、放射線画像の撮影が終了すると、撮影者は電子カセッテ10を空気圧発生装置28と再び接続し、空気圧発生装置28によって正圧を発生させる。これにより、筐体14の内部空間がホース30を介して空気圧発生装置28と連通される。また、空気圧発生装置28によって発生された正圧が筐体14の内部空間に導入されることで、筐体14の上面と底面とが離間する方向へ収納体16及び蓋体18が相対的に変位される。これにより、筐体14は電子カセッテ10の保管に適した最大厚み状態(図2(A)参照)に戻ることになる。
【0082】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
図6にしめすように、本第2実施形態に係る電子カセッテ150は、放射線検出部(TFT基板)42の受光面に光結合部材152が設けられている点で第1実施形態で説明した電子カセッテ10と相違している。本第2実施形態では、筐体14が最小厚み状態になると、シンチレータ34と放射線検出部(TFT基板)42とが光結合部材152を介して密着された状態(図6(B)に示す状態)となり、光結合部材152は、この状態でシンチレータ34と放射線検出部(TFT基板)42とを光学的に結合する。本実施形態では光結合部材152をゲル、オイルカップリング等の柔軟性を有する材料で構成している。
【0084】
本第2実施形態に係る電子カセッテ150は、光結合部材152が設けられていることで、シンチレータ34から放出された光を検出する放射線検出部(TFT基板)42による光検出効率が向上するので、第1実施形態で説明した電子カセッテ10よりも放射線の検出感度が向上する。なお、上記の光結合部材152は請求項10に記載の光結合部材の一例である。
【0085】
〔第3実施形態〕
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図7に示すように、本第3実施形態に係る電子カセッテ154は、シンチレータ34が形成された支持基板36が、蓋体18の天板18A(の裏面(照射面12と反対側の面))にスペーサ44を介して取付けられている。また、受光面に光結合部材152が設けられた放射線検出部(TFT基板)42は基台40の天板の上面に取付けられている。本第3実施形態に係る電子カセッテ154は、放射線検出部(TFT基板)42がシンチレータ34の放射線照射面と反対側に位置しており、「表面照射」に相当する位置関係となっている。このため、第1実施形態で説明した電子カセッテ10や第2実施形態で説明した電子カセッテ150(放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34が「裏面照射」に相当する位置関係の電子カセッテ)と比較して放射線の検出感度は低下するが、本発明はこのような構成も権利範囲に含まれる。
【0087】
〔第4実施形態〕
次に本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態とと同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
図8に示すように、本第4実施形態に係る電子カセッテ156は、蓋体18の天板18Aが収納体16の底板16Aとおよそ同じサイズとされており、第1〜第3実施形態では蓋体18の第2側壁18Bに設けられていた突起18Cが省略されている。また、第1〜第3実施形態では収納体16の第1側壁16Bの上端部に設けられていた突起16Cと、蓋体18の第2側壁18Bと収納体16の第1側壁16Bとの間に設けられていたシール部材20も省略されている。
【0089】
そして、蓋体18の第2側壁18Bの下端部と収納体16の第1側壁16Bの上端部との間には、蛇腹状の伸縮部材158が筐体14の側面の全周に亘って設けられている。伸縮部材158は、上端部が蓋体18の第2側壁18Bの下端部に密着され、下端部が収納体16の第1側壁16Bの上端部に密着されており、これにより、筐体14の内部空間の防水性・気密性が確保されている。なお、上記のシール部材20は請求項4,5,8に記載の密封手段の一例かつ請求項9に記載の伸縮部材の一例である。
【0090】
本第4実施形態に係る電子カセッテ156は、第1〜第3実施形態で説明した電子カセッテと比較して、収納体16及び蓋体18が筐体14の上面と底面とが接近する方向へ相対的に変位される際に、収納体16と蓋体18とが上面や底面とおよそ平行な方向へ相対的に変位し易く、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34との位置ずれが生じ易いが、本発明はこのような構成も権利範囲に含まれる。
【0091】
〔第5実施形態〕
次に本発明の第5実施形態について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0092】
図9に示すように、本第5実施形態に係る電子カセッテ160は接続部22が省略されている。また、収納体16の底板16Aと蓋体18の天板18Aの間には、筐体14の上面と底面とが離間する方向へ収納体16及び蓋体18を付勢する圧縮コイルばね162が、筐体14内の複数箇所に設けられている。なお、圧縮コイルばね162は請求項6に記載の付勢手段の一例である。
【0093】
また図10に示すように、本第5実施形態に係る電子カセッテ160は、収納体16の底板16Aに、テーパ状の傾斜面を有する孔164が穿設されており(図10(B)参照)、この孔164に対応する位置に連通切替部166が設けられている。連通切替部166は、孔164と同様にテーパ状の傾斜面が形成された栓部材168と、ソレノイド等から成り栓部材168を底板16Aにおよそ垂直な方向へ移動させるアクチュエータ170と、を備えている。
【0094】
アクチュエータ170は、非通電時には、図示しない付勢手段の付勢力により、栓部材168が孔164内へ入り込んで栓部材168の傾斜面が孔164の傾斜面に密着する第1位置(図10(A)参照)に栓部材168を位置させる。この状態では、筐体14の内部空間と筐体14の外部との連通が遮断され、筐体14内の空気は筐体14内に密封される。またアクチュエータ170は、通電されると、前記付勢手段の付勢力に抗して、栓部材168が孔164内から離脱して栓部材168の傾斜面が孔164の傾斜面と離間する第2位置(図10(A)参照)へ栓部材168を移動させる。この状態では、筐体14の内部空間と筐体14の外部とが連通される。
【0095】
図11に示すように、連通切替部166はカセッテ制御部70に接続されており、連通切替部166のアクチュエータ170の動作はカセッテ制御部70によって制御される。またカセッテ制御部70には操作部172も接続されている。操作部172は、筐体14の照射面12等に設けられ、筐体14の厚みを変化させる際に撮影者によって操作されるスイッチ(図示省略)を含んで構成されている。
【0096】
次に本第5実施形態の作用を説明する。本第5実施形態に係る電子カセッテ160は、撮影に使用されずに保管されている間、筐体14が図9(A)に示す最大厚み状態とされ、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とは離間状態で維持される。これにより、温度変化に伴って放射線検出部(TFT基板)42やシンチレータ34の支持基板36に反り等の変形が生じることが防止される。また、電子カセッテ160の管理者は、電子カセッテ160が保管に適した状態(放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とが離間している状態)となっていることを、筐体14の外観(厚み寸法)から容易に認識することができる。
【0097】
また、電子カセッテ160は、圧縮コイルばね162により、筐体14の上面と底面とが離間する方向へ収納体16及び蓋体18が付勢されている。また、電子カセッテ160が撮影に使用されずに保管されている間は、栓部材168が第1位置に位置され、筐体14内の空気は筐体14内に密封された状態のまま維持される。これにより、電子カセッテ160が撮影に使用されずに保管されている間、筐体14の厚みを縮小しようとする外力が加わっても、圧縮コイルばね162の付勢力や筐体14内に密封された空気によって生ずる反力により、筐体14の厚みが変化することが防止され、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とは離間している状態のまま維持される。
【0098】
電子カセッテ160を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者は、放射線画像撮影の準備作業として、電子カセッテ160の筐体14を把持し、操作部172のスイッチを押圧することでスイッチをオンしながら、筐体14の厚みを縮小する外力を加える操作を行う。カセッテ制御部70は、操作部172のスイッチがオンされている間、アクチュエータ170に通電する。これにより、撮影者が筐体14の厚みを縮小する外力を加えている間、栓部材168が第2位置(図10(B)参照)に位置し、筐体14の内部空間と筐体14の外部とが連通されている状態で維持され、撮影者が加えた外力によって筐体14の厚みが縮小される。
【0099】
また撮影者は、筐体14が図9(B)に示す最小厚み状態になり、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34が全面に亘って密着されると、操作部172のスイッチの押圧を解除することでスイッチをオフさせる。カセッテ制御部70は、操作部172のスイッチがオフされるとアクチュエータ170への通電を停止させる。これにより、栓部材168が第1位置(図10(A)参照)へ移動され、筐体14の内部空間と筐体14の外部との連通が遮断されることで、筐体14内の空気は筐体14内に密封された状態となる。従って、電子カセッテ160が撮影に使用されている間、筐体14の厚みを拡大しようとする外力が加わったとしても、筐体14内に密封された空気によって前記外力に抗する反力が生ずることで、筐体14の厚みが変化することが防止され、放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34とは全面に亘って密着している状態のまま維持される。
【0100】
放射線画像の撮影が終了すると、撮影者は、操作部172のスイッチを押圧することでスイッチをオンさせる。この間、カセッテ制御部70はアクチュエータ170に通電し、栓部材168が第2位置(図10(B)参照)に位置し、筐体14の内部空間と筐体14の外部とが連通される。これにより、電子カセッテ160の筐体14は、圧縮コイルばね162の付勢力により、筐体14の上面と底面とが離間する方向へ収納体16及び蓋体18が相対的に変位され、図9(A)に示す最大厚み状態に戻る。そして筐体14が最大厚み状態に戻ると、撮影者は操作部172のスイッチの押圧を解除する。これにより、筐体14内の空気が筐体14内に密封され、電子カセッテ160は保管に適した状態(筐体14に外力が加わっても放射線検出部(TFT基板)42とシンチレータ34との離間が維持される状態)に戻ることになる。
【0101】
なお、第1〜第4実施形態で説明した電子カセッテ10, 150,154,156に、第5実施形態で説明した圧縮コイルばね162や連通切替部166を設け、筐体14の収納体16と蓋体18の相対変位を、空気圧発生装置28で発生した空気圧を筐体14内に導入すること、及び、撮影者等が筐体14に外力を加えること、の何れでも実現可能に構成してもよい。
【0102】
また、第1,2,4,5実施形態では、シンチレータ34が形成された支持基板36を基台40の天板の上面に取付ける一方、制御基板46を基台40の天板の下面に取付けた態様を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば基台40を省略し、シンチレータ34が形成された支持基板36及び制御基板46を、スペーサ等を介して収納体16の底板16Aに取付けるようにしてもよい。これにより、電子カセッテの筐体の厚みをより薄くすることも可能となる。
【0103】
但し、この構成ではシンチレータ34と制御基板46との距離がより小さくなるので、制御基板46から放射される熱がシンチレータ34に悪影響を及ぼす恐れがある(例えばシンチレータ34に温度むらが生じ、これに伴いシンチレータ34の発光効率にむらが生ずる等)。このため、シンチレータ34と制御基板46との間に、制御基板46からシンチレータ34への熱伝導を遮断する断熱性を有するシート材、或いは、制御基板46から放射された熱をシンチレータ34の受熱面と平行な方向へ伝導させて排熱する熱伝導異方性を有するシート材、或いは、制御基板46から放射された熱をシンチレータ34の受熱面の全面に亘っておよそ均一に伝導させるための熱伝導性の高いシート材を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0104】
10, 150,154,156,160 電子カセッテ
12 照射面
14 筐体
16 収納体
18 蓋体
20 シール部材
26 バルブ
28 空気圧発生装置
34 シンチレータ
38 遮蔽部材
42 放射線検出部
58 遮光部材
70 カセッテ制御部
152 光結合部材
158 伸縮部材
166 連通切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び底面を有する形状で、前記上面が形成された上面側部材と前記底面が形成された底面側部材とが、前記上面と前記底面との間隔が変化するように相対的に変位可能とされた筐体と、
前記筐体内に配置されかつ前記上面側部材及び前記底面側部材の一方に取付けられ、被写体を透過して前記上面又は前記底面に照射された放射線を吸収して光を放出する光放出部と、
前記筐体内に配置されかつ前記上面側部材及び前記底面側部材の他方に取付けられ、前記光放出部から放出された光を検出すると共に、前記上面と前記底面との間隔の変化に伴い、前記光放出部と接している第1状態又は前記光放出部と離間している第2状態に切り替わる検出部と、
を含む放射線検出パネル。
【請求項2】
前記上面側部材は、一方の面が前記上面を成す上面部材の外縁に全周に亘り、前記上面部材とおよそ直交する方向に沿って壁部が立設された形状とされ、
前記底面側部材は、一方の面が前記底面を成す底面部材の外縁に全周に亘り、前記底面部材とおよそ直交する方向に沿って壁部が立設された形状とされ、
前記筐体は、前記上面部材と前記底面部材とがおよそ平行に向い合い、かつ、前記上面側部材の前記壁部と前記底面側部材の前記壁部とが、前記全周に亘り前記上面及び前記底面におよそ平行な方向に沿った間隙を隔てて対向するように、前記上面側部材及び前記底面側部材が配置されて構成されている請求項1記載の放射線検出パネル。
【請求項3】
前記光放出部には、放射線の照射面内又は光放出面内の第1位置に、前記照射面内の前記第1位置に照射される放射線又は前記光放出面内の前記第1位置から放出される光を遮蔽する遮蔽部が設けられており、
前記検出部には、受光面内のうち前記第1位置に対して一定の位置関係の第2位置に、前記受光面内の前記第2位置に照射される光を遮光する遮光部が設けられている請求項1又は請求項2記載の放射線検出パネル。
【請求項4】
前記上面側部材と前記底面側部材との間隙を密封する密封手段と、
前記筐体の内部と外部とを選択的に連通させる連通手段と、
を更に備えた請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線検出パネル。
【請求項5】
前記上面側部材と前記底面側部材との間隙を密封する密封手段と、
前記筐体の内部空間が空気圧発生装置と連通するように前記空気圧発生装置を接続するための接続部と、
を更に備え、
前記接続部に接続された前記空気圧発生装置によって発生された空気圧が前記接続部を介して前記内部空間に導入されることで、前記上面側部材と前記底面側部材とが相対的に変位される請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線検出パネル。
【請求項6】
前記上面と前記底面との間隔が拡大する方向へ前記上面側部材及び前記底面側部材を付勢する付勢手段を更に備えた請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線検出パネル。
【請求項7】
少なくとも前記上面と前記底面との間隔が拡大する方向へ前記上面側部材と前記底面側部材とが相対的に変位された場合に、前記上面側部材と前記底面側部材との相対位置を、前記相対的に変位された後の相対位置に保持する保持手段を更に備えた請求項1〜請求項6の何れか1項記載の放射線検出パネル。
【請求項8】
前記上面側部材と前記底面側部材との間隙を密封する密封手段と、
前記筐体の内部と外部とを選択的に連通させる連通手段と、
を更に備え、
前記保持手段は、前記上面側部材と前記底面側部材とが相対的に変位されている間は前記連通手段によって前記筐体の内部と外部とを連通させ、前記上面側部材と前記底面側部材とが相対的に変位された後は前記連通手段による前記筐体の内部と外部との連通を遮断することで、前記上面側部材と前記底面側部材との相対位置を前記相対的に変位された後の相対位置に保持する請求項7記載の放射線検出パネル。
【請求項9】
前記上面側部材と前記底面側部材との間に設けられ、前記上面側部材と前記底面側部材との間隙を密封すると共に、前記上面側部材と前記底面側部材との相対変位に伴う前記間隙の大きさの変化に応じて伸縮する伸縮部材を更に備えた請求項1、請求項3〜請求項8の何れか1項記載の放射線検出パネル。
【請求項10】
前記光放出部と前記検出部との間には、前記光放出部と前記検出部とを光学的に結合する光結合部材が設けられており、前記第1状態において、前記検出部は前記光結合部材を介して前記光放出部と接する請求項1〜請求項9の何れか1項記載の放射線検出パネル。
【請求項11】
前記検出部が前記光放出部と接している前記第1状態での前記筐体の厚みが、照射された放射線を感光材料に画像として記録する構成のカセッテにおける筐体の厚みと同サイズとされている請求項1〜請求項10の何れか1項記載の放射線検出パネル。
【請求項12】
前記検出手段は、前記光放出部に対して放射線の到来方向上流側に配置されている請求項1〜請求項11の何れか1項記載の放射線検出パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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