説明

放射線検出器

【課題】放射線検出器1の小型化、低コスト化及び製造の簡単化を実現しつつ、放射線の入射位置を高分解能により特定できる。
【解決手段】側周面(光射出面21b)からシンチレーション光を射出する平板状のシンチレータ21と、前記シンチレータ21の周縁部を挟持する第1基板22及び第2基板23と、前記第1基板22又は第2基板23における前記シンチレータ21の側周面(光射出面21b)の外側に形成され、前記側周面(光射出面21b)からのシンチレーション光を検出する複数の光電変換素子24と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレータを用いた放射線検出器に関し、特にシンチレータへの放射線の入射位置を特定することができる放射線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の放射線検出器としては、例えば特許文献1に示すように、矩形状のシンチレータの側面に光電子増倍管を直接、或いは、光ファイバ等のライドガイドを介在させて配設してシンチレーション光を検出し、放射線の入射位置を特定等するものがある。
【0003】
しかしながら、シンチレータの側面に光電子増倍管を直接配設する場合には、各光電子増倍管が干渉してしまい、シンチレータを小型化することができない。また、入射位置の位置分解能が低くなってしまうという問題がある。
【0004】
一方、光ファイバ等のライトガイドを介在させて光電子増倍管を配設する場合には、シンチレータの側周面に光ファイバの光入射面を位置させるための取り付け部材が設けられる。この取り付け部材には、光ファイバが嵌め込まれる取り付け凹部又は取り付け孔が切削加工により形成されている。
【0005】
しかしながら、光ファイバを用いていることから、シンチレーション光を光検出器に導く導波路のサイズが光ファイバのサイズに制限されてしまい、導波路のサイズの自由度が小さいという問題がある。また、取り付け部材に取り付け凹部を形成し、その凹部に光ファイバを嵌め込む等の製作工程が、複雑で工数のかかる作業であるという問題がある。さらに、光ファイバを多数用いることから、コストも高くなってしまうという問題もある。
【0006】
加えて、放射線検出器の品質検査をする上でも、光ファイバを多数用いているので、外観検査は現実的には不可能であり、一度組み込んでしまうと、製造の最終工程でしか放射線検出器をチェックすることができないという問題もある。
【0007】
さらに、光ファイバが嵌め込まれる取り付け凹部を切削加工により形成しているので、加工精度の限界が数10μmであり、光を取り込む位置分解能が数10μmで限界となってしまう。そのため、数μmレベルでの位置分解能を得ることができないという問題がある。また、シンチレータの周囲に取り付け部材を用いて光ファイバを配置しているので、シンチレータの側周面と光ファイバとの間に隙間ができてしまう。その結果、ある光ファイバに入射すべきシンチレーション光が、隣接する光ファイバに入射してしまい、入射位置の誤差となってしまうという問題もある。
【0008】
そして、近時、特許文献2に示すように、シンチレータの放射線入射面又は放射線入射面の反対面に半導体基板を積層してその半導体基板上に、シンチレータからのシンチレーション光を検出するフォトダイオード及びスイッチング素子を形成したものがある。
【0009】
しかしながら、このようなものでは、シンチレータに入射する放射線が、フォトダイオード及びスイッチング素子に照射されてしまい、フォトダイオード及びスイッチング素子が機能しなくなってしまうという問題がある。また、フォトダイオード及びスイッチング素子を放射線から保護するため、鉛などの保護膜で被覆することが考えられるが、この場合、シンチレータに放射線が入射しなくなってしまう、又はシンチレータからのシンチレーション光がフォトダイオードに入射しなくなってしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2005−91035号公報
【特許文献2】特開2007−170908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、放射線検出器の小型化、低コスト化及び製造の簡単化を実現し、光電変換素子を放射線から保護しつつ、放射線の入射位置を高分解能により特定することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係る放射線検出器は、側周面からシンチレーション光を射出する平板状のシンチレータと、前記シンチレータの周縁部を挟持する第1基板及び第2基板と、前記第1基板又は第2基板における前記シンチレータの側周面の外側に形成され、前記側周面からのシンチレーション光を検出する複数の光電変換素子と、を具備することを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、光ファイバ等のライトガイドを不要とすることで、シンチレータと光ファイバとの位置関係による位置分解能の劣化を防止することができ、位置分解能を向上させることができる。また、シンチレータを挟持する第1基板又は第2基板に光電変換素子を形成しているので、放射線検出器を小型化することができる。さらに、放射線検出器の部品点数を削減することができ、組み立てが容易となるだけでなく、低コスト化も実現することができる。また、シンチレータの側周面の外側に光電変換素子を形成しているので、放射線から光電変換素子を簡単に保護することができる。
【0013】
前記第1基板及び第2基板の具体的な実施の態様としては、前記第1基板及び第2基板が、前記シンチレータの面積よりも小さい開口面積の貫通孔を有し、当該貫通孔の開口縁部により前記シンチレータの周縁部を挟持するものであるが望ましい。
【0014】
部品点数を可及的に少なくするためには、前記第1基板の開口縁部が、前記シンチレータが収容される環状段部を備え、当該環状段部の底面と、前記第2基板の開口縁部とにより前記シンチレータを挟持するものであり、前記光電変換素子が、前記第2基板の開口縁部と前記環状段部の内側周面との間に形成されていることが望ましい。
【0015】
シンチレータからのシンチレーション光を光電変換素子に効率的に導くためには、前記第1基板の環状段部の内側周面が、前記第1基板に設けられた光電変換素子に向かってシンチレーション光を反射させる反射面を有することが望ましい。
【0016】
光電変換素子により反射された光が別の光電変換素子により検出される等の不具合を好適に防止するためには、前記環状段部が、隣接する光電変換素子を仕切る仕切り部を備えていることが望ましい。
【0017】
第1基板及び第2基板の加工を簡単化するためには、前記第1基板及び第2基板が、前記第1基板及び第2基板の間に前記シンチレータと同じ厚みを有するスペーサ基板を介在させることにより、前記シンチレータを挟持するものであり、前記光電変換素子が、前記第1基板又は第2基板の前記開口縁部と前記スペーサ基板との間に形成されていることが望ましい。
【0018】
シンチレータからのシンチレーション光を光電変換素子に効率的に導くためには、前記スペーサ基板の内側周面が、前記光電変換素子に向かってシンチレーション光を反射させる反射面を備えていることが望ましい。
【0019】
光電変換素子により反射された光が別の光電変換素子により検出される等の不具合を好適に防止するためには、前記スペーサ基板が、隣接する光電変換素子を仕切る仕切り部を備えていることが望ましい。
【0020】
前記シンチレータが、円盤状又は概略円盤状のものであることが望ましい。これならば、シンチレータの形状に起因した感度補正を不要として検出感度を向上させること、及び簡単に放射線の検出位置を特定することができるようになる。なお、シンチレータが矩形状のものであると、その隅部において、発生したシンチレーション光は、側面で複数回反射してしまい、入射領域近傍が一様に発光してぼやけてしまい入射位置を特定することが困難であるという問題がある。さらに、これにより、隅部の感度が低下してしまい、感度補正が必要となるという問題もある。
【0021】
入射位置の計算を簡単化するためには、前記光電変換素子が、前記シンチレータの周方向に等間隔に形成されていることが望ましい。
【0022】
放射線検出器の部品点数の更なる削減のためには、前記光電変換素子が形成された基板上に、前記光電子変換素子毎に対応して設けられたスイッチング素子、及び当該スイッチング素子の開閉を制御する駆動回路部が形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
このように構成した本発明によれば、放射線検出器の小型化、低コスト化及び製造の簡単化を実現し、光電変換素子を放射線から保護しつつ、放射線の入射位置を高分解能により特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図1は本実施形態に係る放射線検出器1の構成を模式的に示す平面図、図2はA−A線断面図、図3は第1基板22(下基板22)の斜視図、図4は第2基板23(上基板23)の斜視図、図5は分解斜視図、図6は放射線検出器1の演算装置3の機器構成図、図7は演算装置3の機能構成図である。
【0025】
本実施形態に係る放射線検出器1は、図1に示すように、放射線を光に変換して、その光を電気信号に変換して、その電気信号を出力するシンチレータユニット2と、当該シンチレータユニット2からの電気信号を受信して、所定演算を行う演算装置3と、当該演算装置3での演算結果を基に、放射線の二次元画像を表示する画像表示装置4とを備えている。なお、シンチレータユニット2は、外部からの光が侵入しないように、図示しない遮光膜で覆われている。
【0026】
以下に各部2〜4について説明する。
【0027】
シンチレータユニット2は、図1及び図2に示すように、円盤状のシンチレータ21と、当該シンチレータ21の周縁部を挟持する第1基板22(以下、本実施形態において「下基板22」という。)及び第2基板23(以下、本実施形態において「上基板23」という。)と、下基板22に設けられた複数の光電変換素子24と、を具備する。
【0028】
シンチレータ21は、放射線が入射するとシンチレーション光(蛍光)を発するものであり、本実施形態においては、γ線が入射するとシンチレーション光を発するNaI(Tl)シンチレータやCsI(Tl)シンチレータ等である。そして、シンチレータ21は、その一方の面にγ線などの放射線が入射する放射線入射面21aを有し、その側周面がそのシンチレーション光を射出する光射出面21bである。当該シンチレータ21は厚さが0.5mm程度の薄型のものである。このようなシンチレータ21を用いることによって、フラットパネル型の放射線検出器1を構成することができる。
【0029】
下基板22は、図1、図2及び図3に示すように、環状平板状のシリコン基板である。また、下基板22は、その中心にシンチレータ21の面積よりも開口面積の小さい貫通孔22Hを有する。
【0030】
そして、上基板23とシンチレータ21を挟持した状態において、貫通孔22Hの開口縁部が、シンチレータ21の周縁部に接触する。具体的には、下基板22の上面における開口縁部が、シンチレータ21下面の周縁部に接触する。
【0031】
また、下基板22は、シンチレータ21との接触面22a(以下、シンチレータ接触面22aという。)の周囲に形成された複数の光電変換素子24と、当該光電変換素子24毎に対応して形成されたスイッチング素子25と、各スイッチング素子25の開閉を制御する駆動回路部26とを備えている。
【0032】
光電変換素子24は、入射光を光電変換して信号電荷を蓄積するフォトダイオードを用いている。そして、フォトダイオード24は、下基板22の開口縁部の接触面周囲に周方向に等間隔に形成されている。つまり、フォトダイオード24は、シンチレータ21の側周面(光射出面21b)の外側において、周方向に等間隔に形成されている。なお、光電変換素子24としてフォトトランジスタを用いても良い。
【0033】
スイッチング素子25は、MOSFETを用いている。このMOSFET25は、下基板22上において、光電変換素子24毎に下基板22の径方向外側に形成されている。なお、スイッチング素子25は、MOSFET以外のトランジスタを用いても良い。
【0034】
駆動回路部26は、配線27によって各MOSFET25に接続され、MOSFET25の開閉を制御して、各フォトダイオード24の電気信号が順次シフトして出力されるようにするものである。具体的には、駆動回路部26は、シフトレジスタを用いたものであり、フォトダイオード24に隣接して形成されたMOSFET25のゲート電極に信号電荷を読み出すためにパルス信号を印加するものである。また、シフトレジスタ26は、コネクタ28に設けられた出力端子(図示しない)に配線27によって接続されている。これにより、各フォトダイオード24毎に外部に検出信号を出力する信号線を形成する必要がなく、下基板22の配線を簡単にすることができる。また、各フォトダイオード24で発生した電気信号を個別に取得することができるので、演算処理を簡単にすることができる。
【0035】
そして、シフトレジスタ26により選択されたフォトダイオード24からの電気信号は、コネクタ28に設けられた出力端子により、演算装置3に出力される。なお、本実施形態では、各光電変換素子24から出力された電気信号は、図示しない前置増幅器や主増幅器等の増幅器(アンプ)によりさらに増幅されるようにしている。
【0036】
上基板23は、図1、図2及び図4に示すように、前記下基板22と同様に、環状平板状のシリコン基板である。そして、上基板23は、その中心にシンチレータ21の面積よりも開口面積の小さい貫通孔23Hを有し、当該貫通孔23Hの開口縁部によりシンチレータ21の周縁部を挟持する。なお、上基板23の放射線入射側面(上面)23sには、X線などの放射線に対する鉛等からなる放射線保護膜が設けられている(図2参照)。
【0037】
具体的には、上基板23の開口縁部には、シンチレータ21が収容される環状段部231が形成されている。そして、この環状段部231の底面231aが、シンチレータ21の周縁部に接触する。
【0038】
環状段部231の厚み方向の深さは、シンチレータ21の厚みと略同一である。つまり、環状段部231内にシンチレータ21を収容させた状態において、シンチレータ21の下面と、上基板23の下面とが面一となる(図2参照)。また、その内側周面の内径は、前記シンチレータ21よりも大きく設定され、下基板22のシンチレータ接触面22aの周囲に隣接して設けられるフォトダイオード24を覆う程度の大きさである。つまり、下基板22において、その下基板22の開口縁部(シンチレータ接触面22a)と環状段部231の内側周面との間に、複数のフォトダイオード24が形成されることになる。
【0039】
また、環状段部231の内側周面には、図2及び図4に示すように、下基板22に設けられたフォトダイオード24に向かってシンチレーション光を反射させる反射面231bが形成されている。この反射面231bは、環状段部231の内側周面に形成された傾斜面に光反射膜が被膜されることにより構成されている。光反射膜は、シンチレーション光を反射する例えばアルミニウム(Al)膜などである。
【0040】
また、環状段部231の内側周面には、図1及び図4に示すように、隣接するフォトダイオード24を仕切る仕切り部232が設けられている。
【0041】
仕切り部232は、内側周面から放射状内側に突出して設けられ、その先端部が、シンチレータ21の側周面(光射出面21b)に接触するようにしている。また、仕切り部232の側面は、アルミニウム膜などの光反射膜により被膜されている。
【0042】
この上基板23は、微細加工技術により形成される。微細加工技術としては、例えば微小電子機械システム(MEMS)加工技術を利用したものであり、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)等のエッチングにより形成される。
【0043】
次に、シンチレータユニット2の製作方法について図5を参照して説明する。
【0044】
下基板22に、半導体プロセスにより、フォトダイオード24、MOSFET25及びシフトレジスタ26を一体形成する。また、上基板23は、MEMS加工技術により、環状段部231及び仕切り部232を形成する。また、上基板23の環状段部231及び仕切り部232には、アルミニウム膜を成膜する。さらに、上基板23の放射線入射面(上面)23sは、鉛などの放射線保護膜を取り付ける。そして、下基板22及び上基板23により、シンチレータ21の周縁部を挟持するように、具体的には、下基板22のシンチレータ接触面22aと上基板23の環状段部231の底面231aとによりシンチレータ21の周縁部を挟持するように、上基板23及び下基板22を接着剤などにより接着する。これにより、シンチレータユニット2を製作することができる。なお、シンチレータ21は潮解性を有するので、上記挟持する工程はドライ環境下で行う。
【0045】
演算装置3は、フォトダイオード24からの電気信号(検出信号)を受信して、放射線の入射位置を演算等するものであり、その機器構成は、図6に示すように、CPU301、内部メモリ302、入出力インタフェース303、AD変換器304等からなる汎用又は専用のコンピュータであり、前記内部メモリ302の所定領域に格納してあるプログラムに基づいてCPU301やその周辺機器等が作動することにより、図7に示すように、検出信号受付部31、入射位置特定部32等として機能する。
【0046】
検出信号受付部31は、各フォトダイオード24からシフトレジスタ26により順次出力される検出信号を受信して、その検出信号を入射位置特定部32に出力するものである。
【0047】
入射位置特定部32は、フォトダイオード24からの検出信号に基づいて、シンチレータ21への放射線の入射位置を特定して、その位置特定信号を画像表示装置4に出力するものである。なお、画像表示装置4は、その位置特定信号に基づいてディスプレイ上に放射線の二次元画像を表示する。
【0048】
具体的に入射位置特定部32は、検出信号が最大光強度を示すフォトダイオード24から放射線の入射位置の角度方向を特定し、最大光強度と複数のフォトダイオード24からの検出信号が示す光強度の平均値とを比較して、放射線の入射位置の径方向の位置を特定する。
【0049】
まず、放射線の入射位置の角度方向(方位)の特定について説明する。図8に示すように、シンチレータ21の領域Pに放射線が入射したとすると、図9に示すように、領域Pから最短距離にあるフォトダイオードBが、全てのフォトダイオード24の中で、最大の光強度を示す検出信号を出力することになる。このことから、入射位置特定部32は、最大強度を示すフォトダイオードBを特定して、そのフォトダイオードBが入射位置から最も近いフォトダイオード24であると判断し、基準となるフォトダイオードAから前記フォトダイオードBが配設されている角度方向を特定する。
【0050】
次に、放射線の入射位置の径方向の位置(シンチレータ21の中心からの距離)の特定について説明する。入射位置特定部32は、前記フォトダイオードBの示す最大光強度と、全フォトダイオード24が示す光強度の平均値との比により放射線の入射位置の径方向の位置を特定する。
【0051】
具体的には、以下のようにして入射位置の径方向の位置を特定する。
【0052】
シンチレータ21の中央部分(中心O)に放射線が入射した際に発生したシンチレーション光の光強度をIとしたとき、フォトダイオードA及びフォトダイオードBで検出される光強度は同じである。その光強度をIとすると、光の減衰の関係から以下の式が成り立つ。但し、シンチレータ21の半径をrとする。
【0053】
=I×exp(−λ×r)・・・(式1)
【0054】
次に、シンチレータ21のある部分(領域P)に放射線が入射した際に発生したシンチレーション光は、放射線が上記(式1)の場合と同じエネルギであれば、Iである。そのとき、フォトダイオードBで検出される光強度をIとすると、光の減衰の関係から以下の式が成り立つ。但し、放射線の入射位置とフォトダイオードBとの最短距離をxとする。
【0055】
=I×exp(−λ×x)・・・(式2)
【0056】
この(式2)を変形して、
=I/exp(−λ×x)・・・(式3)
【0057】
そして、(式3)を(式1)に代入すると、
=I×exp(−λ×r)/exp(−λ×x)
=I×exp{λ(x−r)}
ln(I/I)=λx−λr
λx=λr+ln(I/I
x=r+ln(I/I)/λ
【0058】
したがって、I、I、λ、rから放射線の径方向の位置(フォトダイオードBからの最短距離x)が求められる。
【0059】
ところで、(式1)の状態でも(式2)の状態でも、全ての光検出器32の出力Iallは、同じであることから、フォトダイオード24の数をn個とすると、
=Iall/nとおける。
【0060】
このことから、(式1)を求めなくても、(式2)から、
x=r+ln{Iall/(n×I)}/λとすることにより、放射線の径方向の位置(フォトダイオードBからの最短距離x)が求められる。
【0061】
<本実施形態の効果>
【0062】
このように構成した本実施形態に係る放射線検出装置1によれば、光ファイバ等のライトガイドを不要とすることで、シンチレータ21と光ファイバとの位置関係による位置分解能の劣化を防止することができ、位置分解能を向上させることができる。また、シンチレータ21を挟持する下基板22又は上基板23にフォトダイオード24、MOSFET25及びシフトレジスタ26を形成しているので、放射線検出器1を小型化することができる。さらに、放射線検出器1の部品点数を削減することができ、組み立てが容易となるだけでなく、低コスト化も実現することができる。また、シンチレータ21の側周面21bの外側にフォトダイオード24、MOSFET25及びシフトレジスタ26を形成しているので、放射線からフォトダイオード24、MOSFET25及びシフトレジスタ26を簡単に保護することができる。
【0063】
また、円盤状のシンチレータ21を用いているので、従来の矩形シンチレータ21で必要であった隅部の補正処理を不要としつつ、検出感度を向上させることができる。
【0064】
また、最大光強度を示すフォトダイオード24の出力と、全フォトダイオード24の平均出力とを比較することにより放射線の入射位置を特定することができる。このことから、各フォトダイオード24において、放射線の入射位置と、その光強度との検量線を求める必要が無く、簡単に放射線の検出位置を特定することができる。
【0065】
<その他の変形実施形態>
【0066】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0067】
例えば、図10に示すように、下基板22及び上基板23の間に円環状のスペーサ基板29を挟み込んでシンチレータ21を挟持するものであっても良い。この場合、フォトダイオード24が、下基板22又は上基板において、下基板22の開口縁部(シンチレータ接触面22a)又は上基板23の開口縁部(シンチレータ接触面23a)とスペーサ基板29との間に形成される。また、スペーサ基板29の内側周面が、シンチレータ21からのシンチレーション光をフォトダイオード24に向かって反射させる反射面29aを備えている。さらに、スペーサ基板29の内側周面には、隣接するフォトダイオード24を仕切る仕切り部(図示しない)が形成されている。
【0068】
また、前記実施形態では、シンチレータ21の側周面(光射出面21b)の近傍に光電変換素子24を配設するものであったが、図11及び図12に示すように、シンチレータ21と光電変換素子24の間に導波路WGを設けても良い。この場合、下基板22又は上基板23の一方の接合面に凹溝Mを設け、他方の接合面により、当該凹溝Mを覆うことによって、導波路WGを形成する。また、凹溝Mは、MEMS加工技術を用いて形成する。これならば、シンチレータ21と光電変換素子24とを離間させることができ、光電変換素子24及びスイッチング素子25に放射線が照射することを確実に防止することができる。
【0069】
また、導波路を設ける場合には、当該導波路内にシンチレータと同一の物質を充填するようにしても良いし、シンチレータと屈折率の近い物質を充填するようにしても良い。
【0070】
さらに、前記実施形態では、下基板上にフォトダイオード、MOSFET及びシフトレジスタを形成したが、フォトダイオードのみを形成しても良い。
【0071】
さらに、前記各実施形態の放射線検出器(シンチレータユニット)を複数枚重ね合わせても良い。この場合、放射線の入射角度を算出することができる。
【0072】
例えば、前記実施形態では、シンチレータは円盤状のものであったが、その他、前記実施形態の効果を奏する程度の概略円盤状のものであっても良い。また、矩形状のものであってもよい。
【0073】
また、前記実施形態の放射線検出器は、γ線を検出するものであったが、その他、β線やX線等を検出するものであって良い。このとき、NaI(Tl)シンチレータやCsI(Tl)シンチレータの他に各種のシンチレータを用いることができる。
【0074】
加えて、シンチレータユニットの形状は、平面視円形状に限られず、平面視矩形状などであっても良い。
【0075】
その上、前記実施形態では、放射線検出器が、単一層のシンチレータから構成されているが、シンチレータを複数用いて多層構造としても良い。このようなものであれば、放射線の入射角度や放射線のエネルギ量などを検出することができるようになる。
【0076】
加えて、光検出部に同時計数回路を接続して、放射線計数を行えるようにしても良い。
【0077】
また、第2基板の下面に、シンチレータユニット2を補強するための補強板を設けても良い。この補強板は、平面視において、前記第1基板、第2基板と略同一の環状を成す金属基板である。この他、プラスチック等の機械的強度を有するものであっても良い。
【0078】
さらに、前記実施形態では、第1基板を下基板、第2基板を上基板としたが、逆であっても構わない。また、光電変換素子、スイッチング素子及び駆動回路部を何れの基板に形成しても良い。
【0079】
加えて、前記実施形態では、環状段部に反射面を形成したものであったが、反射面を形成しないものであっても良い。
【0080】
その上、環状段部に仕切り部を形成しないものであっても良い。この場合、シンチレータからのシンチレーション光は、所定の割合で各光電変換素子に検出されることになるので、補正処理を施す必要がある。
【0081】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1実施形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示す平面図。
【図2】シンチレータユニットのA−A線断面図。
【図3】第1基板の斜視図。
【図4】第2基板の斜視図。
【図5】シンチレータユニットの分解斜視図。
【図6】放射線検出器の演算装置の機器構成図。
【図7】放射線検出器の演算装置の機能構成図。
【図8】同実施形態における放射線入射位置の特定に関する図。
【図9】同実施形態における各光検出器の光強度を示す図。
【図10】変形実施形態に係るシンチレータユニットを示す断面図。
【図11】その他の変形実施形態に係るシンチレータユニットを示す平面図。
【図12】その他の変形実施形態に係るシンチレータユニットを示す断面図。
【符号の説明】
【0083】
1 ・・・放射線検出器
21b・・・側周面(光射出面)
21・・・シンチレータ
22・・・第1基板(下基板)
23・・・第2基板(上基板)
23H、22H・・・貫通孔
231・・・環状段部
231a・・・環状段部の底面
231b・・・反射面
24・・・光電変換素子(フォトダイオード)
25・・・スイッチング素子(MOSFET)
26・・・駆動回路部(シフトレジスタ)
232・・・仕切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側周面からシンチレーション光を射出する平板状のシンチレータと、
前記シンチレータの周縁部を挟持する第1基板及び第2基板と、
前記第1基板又は第2基板における前記シンチレータの側周面の外側に形成され、前記側周面からのシンチレーション光を検出する複数の光電変換素子と、を具備する放射線検出器。
【請求項2】
前記第1基板及び第2基板が、前記シンチレータの面積よりも小さい開口面積の貫通孔を有し、当該貫通孔の開口縁部により前記シンチレータの周縁部を挟持するものである請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記第1基板の開口縁部が、前記シンチレータが収容される環状段部を備え、当該環状段部の底面と前記第2基板の開口縁部とにより前記シンチレータを挟持するものであり、
前記光電変換素子が、前記第2基板の開口縁部と前記環状段部の内側周面との間に形成されている請求項2記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記第1基板の環状段部の内側周面が、前記第1基板に設けられた光電変換素子に向かってシンチレーション光を反射させる反射面を有する請求項3記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記環状段部が、隣接する光電変換素子を仕切る仕切り部を備えている請求項3又は4記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記第1基板及び第2基板が、前記第1基板及び第2基板の間に前記シンチレータと同じ厚みを有するスペーサ基板を介在させることにより、前記シンチレータを挟持するものであり、
前記光電変換素子が、前記第1基板又は第2基板の前記開口縁部と前記スペーサ基板との間に形成されている請求項2記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記スペーサ基板の内側周面が、前記光電変換素子に向かってシンチレーション光を反射させる反射面を備えている請求項6記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記スペーサ基板が、隣接する光電変換素子を仕切る仕切り部を備えている請求項5又は7記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記光電変換素子が形成された基板上に、前記光電子変換素子毎に対応して設けられたスイッチング素子、及び当該スイッチング素子の開閉を制御する駆動回路部が形成されている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−156782(P2009−156782A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337431(P2007−337431)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】