説明

放射線検出器

【課題】半導体素子の特性の劣化を抑制する放射線検出器を提供する。
【解決手段】放射線検出器は、基板11にCdTe半導体素子2を導電性接着剤によって接着されたものとなっているが、CdTe半導体素子2は、基板11と対向する面の端部に面取加工が施され、面取部23および面取部26を有するCdTe半導体素子2とすることで、CdTe半導体素子2の実装の際、基板11との接触を回避しつつ、接着による残留応力等で基板11に反りが生じた場合においても、基板11との接触を回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体放射線検出器として、基板の表面側にブロック状に形成された4つの半導体素子がほぼ隙間なく、2行2列のマトリックス状に設けられた半導体放射線検出器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体放射線検出器は、複数の半導体素子を隙間なく並べることで、分解能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−26419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る半導体放射線検出器は、半導体素子を基板に接着することによる残留応力に起因する基板の反り、及び組み立て時の外力による半導体素子の損傷を考慮していないので、半導体素子の特性が劣化する場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、半導体素子の特性の劣化を抑制する放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、基板と、放射線を検出し、基板と対向する面の少なくとも1つの辺に面取加工が施された面取部を有する半導体素子と、を備える放射線検出器が提供される。
【0008】
また、上記の半導体素子が、放射線を検出する検出面を有し、面取部が、基板と対向する面の検出面に垂直となる辺に形成されることが好ましい。
【0009】
また、上記の半導体素子が、基板と対向する面に電極を有し、面取部が、半導体素子に形成された第1の面取部と、電極に形成された第2の面取部と、からなることが好ましい。
【0010】
また、上記の面取部が、斜面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る放射線検出器によれば、半導体素子の特性の劣化を抑制する放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。
【図2】図2(a)は、第1の実施の形態に係るCdTe素子の基板に対向する面の図であり、(b)は、CdTe素子の底面図であり、(c)は、CdTe素子の側面図である。
【図3】図3(a)は、比較例に係るCdTe素子の実装に関する概略図であり、(b)は、第1の実施の形態に係るCdTe素子の実装に関する概略図である。
【図4】図4(a)は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の上面図であり、(b)は、放射線検出器の端部近傍の拡大図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、第1の実施の形態に係るCdTe素子の切り出し工程を示す概略図である。
【図6】図6は、第2の実施の形態に係るCdTe素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態の要約]
実施の形態に係る放射線検出器は、基板と、放射線を検出し、基板と対向する面の少なくとも1つの辺に面取加工が施された面取部を有する半導体素子と、を備える。
【0014】
[第1の実施の形態]
(放射線検出器1の構成の概要)
図1は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の斜視図である。図2(a)は、第1の実施の形態に係るCdTe素子の基板に対向する面の図であり、(b)は、CdTe素子の底面図であり、(c)は、CdTe素子の側面図である。なお、以下に示す各図は、概略図であり、各構成部材間の大きさの関係が、実際のものと異なる場合がある。
【0015】
本実施の形態に係る放射線検出器1は、γ線、X線等の放射線を検出する放射線検出器である。図1において放射線6は、紙面の上方から下方に沿って入射してくる。すなわち、放射線6は、放射線検出器1の半導体素子としてのCdTe素子2からカードホルダ14に向かう方向に沿って伝搬して放射線検出器1に入射する。そして、放射線検出器1は、CdTe素子2の検出面20a(つまり、図1の上方に面している面)に放射線6が入射する。したがって、CdTe素子2の側面が放射線6の検出面20aとなっている。このように、半導体素子の側面を放射線6の検出面20aとする放射線検出器を、エッジオン型の放射線検出器と称する。なお、放射線検出器1は、特定の方向(例えば、被検体から放射線検出器1に向かう方向)に沿って入射してくる放射線6が通過する複数の開口を有するコリメータを介して放射線6を検出する複数の放射線検出器1が並べられて構成されるエッジオン型の放射線検出装置用の放射線検出器1として構成することができる。また、本実施の形態に係る放射線検出器1は、カード型の形状を呈する。
【0016】
なお、本実施の形態に係る放射線検出器1は、コリメータを備えることができる。また、放射線検出器1は、コリメータを備えずに用いることもできる。コリメータを用いる場合、多孔平行コリメータ、ピンホールコリメータ等を用いることができる。本実施の形態では、一例として、多孔平行コリメータを用いるものとする。
【0017】
基板11は、金属導体等の導電性材料からなる導電性薄膜(例えば、銅箔)が表面に形成された薄肉基板(例えば、FR4等のガラスエポキシ基板)を、ソルダーレジスト等の絶縁材料からなる絶縁層で挟んで形成される。
【0018】
また、基板11は、図1に示すように、CdTe素子2が、基板11の第一の端部側であって、基板11の一方の面に4個、他方の面に4個、基板11に面対称となるように搭載可能に構成されている。さらに、基板11は、複数のCdTe素子2のそれぞれが搭載される第一の端部側の幅が、複数のCdTe素子2が搭載される第一の端部側の反対側の第二の端部側よりも広く形成される。なお、第二の端部側において基板11はカードホルダ13及びカードホルダ14によって支持される。また、第二の端部側には、放射線検出器1と外部の制御回路とを電気的に接続可能である複数のパターン111が設けられたカードエッジ部112が設けられる。また、後述する素子接続部とカードエッジ部112との間には、複数のCdTe素子2のそれぞれと、素子接続部を介して電気的に接続する抵抗、コンデンサ等の電子部品を搭載する複数の電子部品搭載部110が設けられる。なお、電子部品搭載部110に、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、Field Programmable Gate Array(FPGA)等を搭載することもできる。
【0019】
なお、基板11は、一例として、幅広の方向、すなわち長手方向は40mm程度の長さを有して形成される。そして、基板11は、幅広の部分の端部から幅が狭くなっている部分の端部まで、すなわち、素子接続部が設けられている部分の端からカードエッジ部112の端までの短手方向において、20mm程度の長さを有して形成される。
【0020】
さらに、基板11は、CdTe素子2のそれぞれの電極4a〜電極4hと電気的に接続する素子接続部と電子部品搭載部110との間に、基板11の表面からこの表面の法線方向に沿って突き出て形成される柱状の複数の基板端子11a〜基板端子11dを有する。本実施の形態では、一例として、基板11の一表面に4つの円柱状の基板端子11a〜基板端子11dが形成される。なお、基板端子11a〜基板端子11dは、断面が矩形の柱状にすることもできる。
【0021】
また、素子接続部と、基板端子11a〜基板端子11dと、電子部品搭載部110と、はそれぞれ、基板11の厚さ方向の中心に位置する導電性薄膜を対称面として、基板11の一方の表面と他方の表面とのそれぞれに設けられる。ここで、素子接続部と、電子部品搭載部110と、はそれぞれ、一方の表面と他方の表面とに基板を対称面として略対称の位置に設けられる。一方、複数の基板端子11a〜基板端子11dは、一方の面と他方の面とで互い違いになる位置に設けられる。
【0022】
基板11はカードホルダ13とカードホルダ14とに挟み込まれて支持される。カードホルダ13とカードホルダ14とはそれぞれ同一形状を有して形成され、カードホルダ13が有する溝付穴(図示しない)にカードホルダ14が有する突起部17が嵌め合わされると共に、カードホルダ14が有する溝付穴18にカードホルダ13が有する突起部19が嵌め合わされることにより基板11を支持する。
【0023】
放射線検出器1は、長手方向の両側面に弾性部材実装部15を有する。この弾性部材実装部15は、複数の放射線検出器1を支持する放射線検出器立てに放射線検出器1が挿入された場合に、放射線検出器1を放射線検出器立てに押し付けて固定する弾性部材16が設けられている。なお、放射線検出器立てはカードエッジ部112が挿入されるコネクタを有しており、放射線検出器1は、カードエッジ部112がコネクタに挿入され、コネクタとパターン111とが電気的に接続することにより外部の電気回路としての制御回路、外部からの電源線、グランド線等に電気的に接続される。
【0024】
放射線検出器1は、図1および図2(b)に示すように、一対のCdTe素子2の基板11の反対側に、各CdTe素子2の電極パターン30と基板11に設けられた複数の基板端子11a〜基板端子11dとのそれぞれを電気的に接続する配線パターン(図示しない)を有するフレキシブル基板12をさらに備える。
【0025】
フレキシブル基板12は、一対のCdTe素子2の一方のCdTe素子2側、及び他方のCdTe素子2側の双方に設けられる(本実施の形態においては、4組の一対のCdTe素子2の一方のCdTe素子2側のそれぞれと、他方のCdTe素子2側のそれぞれとの双方に、フレキシブル基板12がそれぞれ設けられる)。そして、フレキシブル基板12の複数の配線パターンの一端はそれぞれ、基板端子11a〜基板端子11dに電気的に接続する。
【0026】
(CdTe素子の詳細)
CdTe素子2は、図2(a)〜(c)に示すように、直方体形状を有し、基板11と対向する面20eに一定の間隔で、図2(a)の紙面の上方から下方に向けて複数の溝部28a〜溝部28gが形成されることにより、8つのピクセル27a〜ピクセル27hが形成される。つまり、溝部28a〜溝部28gで分けられるCdTe素子2の部分のそれぞれが、放射線を検出する1つの画素(ピクセル)に対応する。これにより、一のCdTe素子2は、複数の画素を有することになる。そして、1つの放射線検出器1が8つのCdTe素子2(4組の一対のCdTe素子2)を備え、1つのCdTe素子2がそれぞれ8つのピクセル27a〜ピクセル27hを有する場合、1つの放射線検出器1は、64ピクセルの解像度を有することになる。溝部28a〜溝部28gの数を増減させることにより、一のCdTe素子2のピクセル数を増減させることができる。よって素子接続部は、1つのピクセルごとに形成されるので、基板11の片面に32個の素子接続部が形成されることになる。
【0027】
このピクセル27a〜ピクセル27hには、図2(a)に示すように、それぞれ電極4a〜電極4hが形成されている。この電極4a〜電極4hは、基板11に形成された素子接続部と電気的に接続する。
【0028】
また、溝部28a〜溝部28gの幅は、一例として、0.2mmであり、2mm間隔で形成される。そして、CdTe素子2の厚さは、一例として、2mmである。さらに、一のピクセルの幅もCdTe素子2の厚さに等しい幅を有して形成される。また、本実施の形態においては、複数のCdTe素子2それぞれの溝部28a〜溝部28gの幅を、例えば、コリメータの開口径又は複数の開口を隔てる壁の厚さに応じて決定できる。
【0029】
CdTe素子2は、図2(a)の紙面の上の側面に検出面20aを有し、検出面20aの逆側に位置する底面20bは、カードホルダ13またはカードホルダ14に対向している。
【0030】
CdTe素子2は、図2(a)に示すように、基板11と対向する面20eであって、検出面20aに垂直となる辺に、面取部23および面取部26が形成されている。面取部23は、面20eと側面20cとの交差する位置に形成される。また、面取部24は、面20eと側面20dとの交差する位置に形成される。
【0031】
面取部23は、図2(b)に示すように、CdTe素子2に形成された第1の面取部21と、電極4aに形成された第2の面取部22と、からなる。また、面取部26は、図2(b)に示すように、CdTe素子2に形成された第1の面取部24と、電極4hに形成された第2の面取部25と、からなる。この面取部23および面取部26は、後述する面取加工により形成される。この面取加工は、例えば、CdTe素子2の面20eを斜め切りする加工である。なお、面取部23および面取部26の面取加工は、斜め切りする加工に限定されず、例えば、CdTe素子2の辺を切り欠いて曲面を形成するような加工等であっても良い。
【0032】
図3(a)は、比較例に係るCdTe素子の実装に関する概略図であり、(b)は、第1の実施の形態に係るCdTe素子の実装に関する概略図である。
【0033】
CdTe素子を実装するとき、CdTe素子と基板とが接触し、CdTe素子に微小なクラックが発生する場合がある。また、CdTe素子が後述する導電性接着剤により基板に固定されるとき、接着による残留応力等で基板に反りが生じ、その反りによってCdTe素子と基板とが接触することがある。
【0034】
比較例に係るCdTe素子7は、図3(a)に示すように、その角部70に面取加工が施されていない。このCdTe素子7を基板11に実装する際、図3(a)に示すように、基板11とCdTe素子7とが、平行からずれていると、CdTe素子7の角部70が基板11に接触してしまい、角部70に微小なクラックが入り、CdTe素子7の特性が劣化する。また、例えば、基板11の僅かな撓みがある場合においても、CdTe素子7の角部70が基板11に接触する可能性がある。
【0035】
一方、第1の実施の形態に係るCdTe素子2を基板11に実装する際、図3(b)に示すように、基板11とCdTe素子2とが、比較例と同じように、平行からずれていても、CdTe素子2に面取部23が形成されているため、基板11との接触を回避することができる。また、例えば、基板11の僅かな撓みがある場合においても、CdTe素子2に面取部23が形成されているため、基板11との接触を回避することができる。
【0036】
CdTe素子2は、図2(b)に示すように、フレキシブル基板12に対向する面20fに電極パターン30を有する。この電極パターン30は、フレキシブル基板12に形成された配線パターンと電気的に接続する。
【0037】
図4(a)は、第1の実施の形態に係る放射線検出器の上面図であり、(b)は、放射線検出器の端部近傍の拡大図である。図4(a)は、基板11の一方の側面に実装されたCdTe素子2を図示したものである。
【0038】
図4(a)に示す隣り合うCdTe素子2の間隔wは、一例として、0.1mmである。また、基板11の厚みtは、一例として、0.2mmである。
【0039】
CdTe素子2は、図4(a)および(b)に示すように、基板11の素子接続部113に導電性接着剤5によって固定される。この導電性接着剤5は、一例として、銀ペーストである。素子接続部113の厚みtは、一例として、30μmである。また、導電性接着剤5の厚みtは、例えば、10〜20μmである。従って、CdTe素子2と基板11との間隔Wは、一例として、40〜50μmである。なお、電極パターン30および電極4a〜電極4hは、素子接続部113の厚みtと同様に、一例として、30μmである。
【0040】
本実施の形態において、半導体素子を構成する化合物半導体としては、例えば、CdTeを用いたがこれに限定されず、γ線等の放射線を検出するCdZnTe(CZT)素子、HgI素子等の化合物半導体素子を用いることもできる。
【0041】
(CdTe素子の切り出し工程)
図5(a)〜(d)は、第1の実施の形態に係るCdTe素子の切り出し工程を示す概略図である。以下では、主に、CdTe結晶200からCdTe素子2を切り出す工程について説明する。この工程の過程でCdTe素子に面取部が形成される。なお、CdTe結晶200は、板形状を有し、複数のCdTe素子2が切り出されるほど大きいとする。また、CdTe結晶200は、CdTe素子2の長手方向と平行な辺がCdTe結晶200の長手方向である。さらに、CdTe結晶200は、CdTe素子2の短手方向と平行な辺がCdTe結晶200の短手方向である。
【0042】
まず、CdTe結晶200を準備する。このCdTe結晶200には、一方の面に電極前駆体膜4が形成され、一方の面の反対側の面に電極前駆体膜3が形成されている。この電極前駆体膜4は、溝部28a〜溝部28gが形成されることで、電極4a〜電極4hとなる。また、電極前駆体膜3は、例えば、電極パターンが形成されているものとする。さらに、電極前駆体膜3は、CdTe結晶200からCdTe素子2が切り出されることにより、電極パターン30となる。
【0043】
次に、図5(a)に示すように、電極前駆体膜4が形成された面にブレード8aの先端部80を接触させながら、CdTe結晶200の短手方向を横断するように移動し、電極前駆体膜4およびCdTe結晶200を所定の深さまで削る(面取工程)。この面取工程は、切り出すCdTe素子2の数に応じて複数回行われる。この面取工程により、図5(b)に示すように、溝201が、CdTe結晶200の短手方向に複数形成される。この面取工程により、電極前駆体膜4およびCdTe結晶200に斜め切りされたような溝201が形成される。なお、面取工程における所定の深さとは、一例として、500〜600μmである。
【0044】
ここで、ブレード8aは、円板形状を有し、円板の円周に沿って先端部80が形成されている。先端部80の側面と、CdTe結晶200の表面に平行な面と、の角度θは、一例として、45°<θ<70°である。つまり、上記の角度を有するブレード8aを用いることにより、電極前駆体膜4の表面と溝201の側面の角度が鈍角となり、基板11に接触したとしても、チッピングが発生し難くなる。ブレード8aは、円板の中心を回転中心とし、回転しながら先端部80を対象物に接触させることにより、対象物を削ることができるように構成されている。なお、本実施の形態におけるブレード8aの先端部80は、断面が三角形状となるが、これに限定されず、断面の形状が丸形状であるものや、台形形状であるもの等であっても良い。
【0045】
次に、図5(c)に示すように、ブレード8aよりも厚みが薄いブレード8bを溝201の中央に接触させ、ブレード8bの先端部81がCdTe結晶200の溝201が形成された面の反対の面に到達するまで、電極前駆体膜4およびCdTe結晶200を削り、CdTe結晶200を切断する。この加工により、図5(d)に示すように、CdTe結晶200が2つに分割される。また、この加工により、切断された一方のCdTe結晶200に、第1の面取部21が形成され、電極前駆体膜4に第2の面取部22が形成され、第1の面取部21および第2の面取部22からなる面取部23が形成される。同時に、切断された他方のCdTe結晶200に、第1の面取部24が形成され、電極前駆体膜4に第2の面取部25が形成され、第1の面取部24および第2の面取部25からなる面取部26が形成される。
【0046】
次に、面取部を形成しないCdTe素子2の長手方向の辺を切断し、各断面を研磨して所望のCdTe素子2を得る。
【0047】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態に係る放射線検出器1によれば、CdTe素子2に面取部23および面取部26が形成されているので、形成されていない場合と比べて、CdTe素子2を基板11に実装する際のCdTe素子2の角部の接触によるクラックの発生を防止し、特性の劣化を抑制することができる。従って、放射線検出器1の特性が向上し、かつ、歩留まりが向上する。
【0048】
また、放射線検出器1は、面取部を形成する辺に対しては、2回に分けてCdTe結晶200に加工を行うので、一度で加工する場合と比べて、電極前駆体膜4の切断に伴うブレードの目詰まりが抑制され、ブレードの切断性能の低下によるチッピングの増大およびダイシング速度の低下を防止することができる。従って、CdTe素子2の切断効率が向上し、放射線検出器1の製造コストが低下する。
【0049】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、CdTe素子の全ての辺に面取加工を施す点で第1の実施の形態と異なっている。
【0050】
図6は、第2の実施の形態に係るCdTe素子の斜視図である。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と構成および機能が同じ部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は、省略するものとする。
【0051】
本実施の形態に係るCdTe素子2は、図6に示すように、CdTe素子2の長手方向の一方の辺に形成され、CdTe素子2に形成された第1の面取部21aと、電極4a〜電極4hに一様に形成された第2の面取部22aと、からなる面取部23aを有する。また、CdTe素子2は、CdTe素子2の長手方向の他方の辺に形成され、CdTe素子2に形成された第1の面取部24aと、電極4a〜電極4hに一様に形成された第2の面取部25aと、からなる面取部26aと、を有する。
【0052】
また、CdTe素子2の面20eには、一定の幅および間隔で溝部29a〜溝部29gが形成されている。この溝部29a〜溝部29gは、その断面形状がV字形状となっている。この形状は、先端の断面形状が三角形状であるブレードによって形成されたものである。以下に、CdTe結晶200からCdTe素子2を切り出す工程について説明する。
【0053】
(CdTe素子2の切り出し工程)
CdTe結晶200からのCdTe素子2の切り出しは、まず、面取加工に用いるブレード8aにより、切り出すCdTe素子2のサイズに合わせてCdTe結晶200を加工する。つまり、第1の実施の形態では、CdTe素子2の短手方向の辺のみに、面取加工が施されたが、本実施の形態では、長手方向の辺に対しても面取加工が施される。この際、ブレード8aにより、溝部29a〜溝部29gが形成される。
【0054】
次に、ブレード8bを用いて、切り出すCdTe素子2の周囲に沿って形成された溝を加工し、CdTe結晶200から複数のCdTe素子2を切り出す。続いて、各断面を研磨して所望のCdTe素子2を得る。
【0055】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態に係る放射線検出器1によれば、基板11に対向するCdTe素子2の辺の全てに面取加工を施すので、実装する際のCdTe素子2と基板11との接触を防ぐことができる。また、本実施の形態では、面取加工に用いるブレード8aを用いて、面取部23、面取部23a、面取部26、面取部26aおよび溝部29a〜溝部29gを形成するので、溝部を形成する際にブレードを代える場合と比べて、工程数が減り、製造コストを抑えられる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び変形例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0057】
1…放射線検出器
2…CdTe素子
2…半導体素子
3…電極前駆体膜
4…電極前駆体膜
4a…電極
4h…電極
5…導電性接着剤
6…放射線
7…CdTe素子
8a…ブレード
8b…ブレード
11…基板
11a〜11d…基板端子
12…フレキシブル基板
13…カードホルダ
14…カードホルダ
15…弾性部材実装部
16…弾性部材
17…突起部
18…溝付穴
19…突起部
20a…検出面
20b…底面
20c…側面
20d…側面
20e…面
20f…面
21…第1の面取部
21a…第1の面取部
22…第2の面取部
22a…第2の面取部
23…面取部
23a…面取部
24…第1の面取部
24a…第1の面取部
25…第2の面取部
25a…第2の面取部
26…面取部
26a…面取部
27a〜27h…ピクセル
28a〜28g…溝部
28a〜29g…溝部
30…電極パターン
70…角部
80…先端部
81…先端部
110…電子部品搭載部
111…パターン
112…カードエッジ部
113…素子接続部
200…CdTe結晶
201…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
放射線を検出し、前記基板と対向する面の少なくとも1つの辺に面取加工が施された面取部を有する半導体素子と、
を備える放射線検出器。
【請求項2】
前記半導体素子が、前記放射線を検出する検出面を有し、
前記面取部が、前記基板と対向する面の前記検出面に垂直となる辺に形成される請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記半導体素子が、前記基板と対向する面に電極を有し、
前記面取部が、前記半導体素子に形成された第1の面取部と、前記電極に形成された第2の面取部と、からなる請求項1または2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記面取部が、斜面である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−103036(P2012−103036A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249596(P2010−249596)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】